特許第6817043号(P6817043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817043
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ブラダー内添用離型剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/60 20060101AFI20210107BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20210107BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20210107BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
   B29C33/60
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-229654(P2016-229654)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-86728(P2018-86728A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松村 佳澄
(72)【発明者】
【氏名】武市 賢治
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−081892(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/154112(WO,A1)
【文献】 特開2012−092243(JP,A)
【文献】 特開2016−113584(JP,A)
【文献】 特開平09−029857(JP,A)
【文献】 特開2015−077720(JP,A)
【文献】 特開2015−036209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
C08L 3/00− 3/28
C08L 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び下記成分(B)から選ばれる少なくとも1種と、下記成分(C)とを含むブラダー内添用離型剤であって、上記成分(C)の重量と、上記成分(A)及び上記成分(B)から選ばれる少なくとも1種の合計重量との比〔C/(A+B)〕が0.05〜10である、ゴムのブラダーに用いられるブラダー内添用離型剤。
成分(A):ワックス
成分(B):金属石鹸
成分(C):多価アルコール
【請求項2】
前記成分(A)及び前記成分(B)が20℃で固体であり、前記成分(C)が20℃で粘度100mPa・s以上である、請求項1に記載の、ゴムのブラダーに用いられるブラダー内添用離型剤。
【請求項3】
前記成分(A)がパラフィンワックスを含み、前記成分(B)が炭素数10〜18の有機酸の非アルカリ金属塩を含む、請求項1又は2に記載の、ゴムのブラダーに用いられるブラダー内添用離型剤。
【請求項4】
前記成分(C)が、グリセリン及びポリグリセリンから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の、ゴムのブラダーに用いられるブラダー内添用離型剤。
【請求項5】
ゴム成分と、請求項1〜4のいずれかに記載のブラダー内添用離型剤とを含む、ブラダー。
【請求項6】
前記ゴム成分100重量部に対して、前記成分(A)及び前記成分(B)から選ばれる少なくとも1種の合計が0.1〜10重量部、前記成分(C)が0.1〜10重量部である、請求項5に記載のブラダー。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のブラダーを加熱膨張させて生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する加硫工程を含む、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラダー内添用離型剤に関する。より詳しくは、タイヤ加硫成型時に用いるブラダーゴム内に内添することによりタイヤとの間に潤滑、離型作用を発揮するブラダー内添型の離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの成型加硫に際して、ブラダーを成型加硫前の生タイヤの内側に挿入し、ブラダーを膨張させて、生タイヤを金型に押し付けて加熱加圧することで、成型加硫を行っている。この場合、ブラダーとタイヤ内面は、何れもゴムを素材としているために、両者の間に離型性が必要となってくる。
【0003】
従来、タイヤの成型加硫には、インサイドペイントと称する離型剤をグリーンタイヤの内面にその都度塗布する方法や、グリーンタイヤとブラダーとの間の剥離を良くするためにブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法が行われてきた。
特許文献1では、ジアルキルポリシロキサンとポリアルキレングリコールとの重合体および雲母またはタルクからなる粉末離型剤組成物が提案されている。しかしながら、インサイドペイントをグリーンタイヤの内面にその都度塗布する方法は、工程が煩雑になるとともに、塗布時に機器周辺の汚れが発生するという問題がある。
そこで、インサイドペイントとは異なる方法として、ブラダー表面に離型剤をコーティングする方法がある。
特許文献2では、オルガノポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン、シリカおよび金属の有機酸塩を含有するシリコーン組成物により表面処理された加硫用ブラダーを用いる方法が提案されている。しかしながら、離型剤被膜とブラダーとの接着性が不十分であるので、成型加硫工程時の離型性が弱く、連続的に成型加硫する場合、短時間で離型被膜が劣化し、ブラダー寿命が尽きるまで10回以上離型剤を塗布する必要がある。また、作業者のばらつきが大きく、均一に塗布することが難しく、安定な厚さの被膜を形成させることが難しいという欠点がある。
上記のように離型剤を塗布する工程を省略するのに、ブラダー製造時に離型剤を内添する方法も考えられている。
たとえば、特許文献3では、フッ素系樹脂を、ブラダーを構成するゴムに内添する方法が提案されている。しかしながら、フッ素樹脂粉末をゴム中に分散させているだけなので、離型性が十分ではない。また、フッ素樹脂の配合量が多くなってしまうと、ブラダーのゴム物性に悪影響が生じ、ブラダー寿命が縮まってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−86477号公報
【特許文献2】特開昭62−275711号公報
【特許文献3】特開平9−234744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤの成型加硫工程時における生タイヤとの繰り返し離型性に優れるブラダー内添用離型剤と、繰り返し離型性に優れるブラダーと、該ブラダー内添用離型剤を用いてなるタイヤの製造方法と、を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の2成分のうち少なくとも1種と、多価アルコール成分とを含有するブラダー内添用離型剤によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の、ゴムのブラダーに用いられるブラダー内添用離型剤は、下記成分(A)及び下記成分(B)から選ばれる少なくとも1種と、下記成分(C)とを含む。
成分(A):ワックス
成分(B):金属石鹸
成分(C):多価アルコール
【0007】
前記成分(A)及び前記成分(B)が20℃で固体であり、前記成分(C)が20℃で粘度100mPa・s以上であると好ましい。
前記成分(A)がパラフィンワックスを含み、前記成分(B)が炭素数10〜18の有機酸の非アルカリ金属塩を含むと好ましい。
前記成分(C)が、グリセリン及びポリグリセリンから選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
【0008】
本発明のブラダーは、ゴム成分と、上記ブラダー内添用離型剤とを含む。
【0009】
前記ゴム成分100重量部に対して、前記成分(A)及び前記成分(B)から選ばれる少なくとも1種の合計が0.1〜10重量部、前記成分(C)が0.1〜10重量部であると好ましい。
【0010】
本発明のタイヤの製造方法は、上記ブラダーを加熱膨張させて生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する加硫工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明のブラダー内添用離型剤は、繰り返し離型性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明のブラダー内添用離型剤に配合される各成分について説明する。
【0013】
〔成分(A):ワックス〕
本発明のブラダー内添用離型剤は、成分(A)であるワックス及び後述する成分(B)である脂肪酸石鹸から選ばれる少なくとも1種を含有する。
この成分(A)又は成分(B)は、ブラダー内添用離型剤の繰り返し離型性、すなわち、タイヤ成型を繰り返し行っても優れた離型性が保たれるという役割を果たしている。
当該成分(A)又は成分(B)が離型性に優れる要因としては、ブラダーに内添すると、経時的にブラダー表面にブルームすることでブラダー表面をコーティングし、タイヤ成型加硫の際にブラダーとタイヤとの間に介在して離型性が発揮されるためと推定している。
また、当該成分(A)又は成分(B)が繰り返し離型性に優れる要因としては、経時的にブラダー表面にブルームする速度が適度であるために、タイヤ成型時ごとにブラダー表面を適量分コーティングするためと推定している。
【0014】
成分(A)としては、ワックスであれば特に限定されないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタム等の石油系ワックス;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン等の合成ワックス;木蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ラノリン、ライスワックス、バナナワックス、サトウキビワックス等の動植物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス等が挙げられる。ワックスは、1種又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、繰り返し離型性の点から、石油系ワックス、合成ワックス、動植物系ワックス、鉱物系ワックスが好ましく、動植物系ワックス、石油系ワックス、合成ワックスがさらに好ましく、動植物系ワックス、石油系ワックスが特に好ましく、石油系ワックスの中でも、パラフィンワックスが最も好ましい。
【0015】
成分(A)が20℃で固体であると、離形性の観点から好ましい。ここでいう固体とは硬いか柔らかいかを問わず流動性のないものを意味する。
【0016】
〔成分(B):金属石鹸〕
成分(B)である金属石鹸は、繰り返し離型性を付与する成分である。本発明で使用する金属石鹸は、繰り返し離型性の観点から、炭素数10〜18の有機酸の非アルカリ金属塩であれば好ましく、1種又は2種以上を含んでも良い。
【0017】
金属石鹸を構成する有機酸については、特に限定はないが、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びアラキン酸から選ばれる1種であればよく、2種以上を含んでも良い。
【0018】
金属石鹸を構成する非アルカリ金属塩については、特に限定はないが、Al、Ag、Ba、Ca、Ce、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Hg、Mg、Mn、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Znから選ばれる1種であればよく、2種以上を含んでも良い。
【0019】
また、金属石鹸の平均粒径については、特に限定はないが、繰り返し離型性を考慮すると、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.1〜100μmである。
【0020】
〔成分(C):多価アルコール〕
本発明のブラダー内添用離型剤に用いる成分(C)は、多価アルコールであり、上記成分(A)又は上記成分(B)と併用することにより、繰り返し離型性に優れる成分である。
理由は定かではないが、成分(C)により、上記成分(A)又は上記成分(B)が経時的にブルーミングした際の、ブラダー表面へのコーティング形態をより連続離型性を発現しやすい形態に調整する機能を有しているため、と推定している。
多価アルコールの形態としては20℃で液状であるのが好ましく、20℃における粘度は、100mPa・s以上が好ましく、500mPa・s以上がより好ましい。粘度の好ましい上限値は、10万mPa・sである。
【0021】
2価アルコール(水酸基数2の多価アルコール)としては、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール等のポリエチレングリコール類;ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール等のポリプロピレング
リコール類;ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラブチレングリコール、ペンタブチレングリコール、ヘキサブチレングリコール等のポリブチレングリコール類;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール等の直鎖状アルキレン2価アルコール類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ジメチルペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等の分岐状アルキレン2価アルコール類;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール等の環状アルキレン2価アルコール類等を挙げることができる。
3価アルコール(水酸基数3の多価アルコール)としては、たとえば、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン等を挙げることができる。
【0022】
4価以上のアルコールとしては、たとえば、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリグリセリン類等を挙げることができる。
【0023】
〔ブラダー内添用離型剤〕
本発明のブラダー内添用離型剤は、上記成分(A)及び上記成分(B)から選ばれる少なくとも1種と、上記成分(C)とを含む。
上記成分(C)の重量と、上記成分(A)及び上記成分(B)から選ばれる少なくとも1種の合計重量との比〔C/(A+B)〕は、0.05〜10であり、0.1〜8が好ましく、0.2〜5がより好ましく、0.3〜3がさらに好ましい。0.05未満及び10超では、成分(A)及び成分(B)の合計量に対する成分(C)の量が適量でなく、本願効果を発揮できない。
本発明のブラダー内添用離型剤は、上記で説明した成分以外に必要に応じて、増粘剤、消泡剤、防腐剤等の添加剤を含有していてもよい。
本発明のブラダー内添用離型剤の製造方法については、上記成分(A)及び上記成分(B)、上記成分(C)を混合する工程を含むものであれば、混合順序や使用する混合設備等について特に限定はない。
【0024】
混合については、特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)およびハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を用いてもよい。他には、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミル等の乾式粉砕機を用いてもよい。
【0025】
本発明のブラダー内添用離型剤である上記成分(A)及び上記成分(B)、上記成分(C)は、混合後の製品安定性を維持できない場合もあるため、予め混合した形態である必要はない。ブラダーゴムを製造する際の、混練り工程において上記成分(A)及び上記成分(B)、上記成分(C)を別々に添加するのでも構わない。
【0026】
〔ブラダー〕
本発明のブラダーは、ゴム成分と、上記ブラダー内添用離型剤とを含む。すなわち、本発明のブラダーは、ゴム成分と、上記成分(A)及び上記成分(B)から選ばれる少なくとも1種と、上記成分(C)とを含む。場合によっては、補強用の短繊維を含む。補強用の短繊維は、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、天然セルロース等の繊維を使用することが好ましい。
上記成分(A)、上記成分(B)及び上記成分(C)については、ブラダー内添用離型剤で記載したものを援用できる。
ゴム成分は、ブチルゴム(IIR)および/またはハロゲン化ブチルゴムからなるブチル系ゴムを90質量部以上含むと好ましい。
ハロゲン化ブチルゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)が好ましい。
【0027】
(その他成分)
本発明のブラダーは、成分(A)〜(C)以外にも、亜鉛化合物、硫黄、オイル、カーボンブラック又はチアゾール類化合物等を含むのが好ましい。
亜鉛化合物としては、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。
硫黄としては、S8等を挙げることができる。
オイルとしては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸等を挙げることができる。
カーボンブラックとしては、例えば、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPFなどのファーネス系カーボンブラックやアセチレンブラック、チャンネル系カーボンブラック等を挙げることができる。
【0028】
チアゾール類化合物としては、例えば、促進剤TT(テトラメチルチウラムジスルフィド)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩(CMBT)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)等が挙げられ、これらチアゾール類化合物の中でも、促進剤TT(テトラメチルチウラムジスルフィド)、ジベンゾチアジルジスルフィドが特に好ましい。これらチアゾール類化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、従来市販されているものを利用することができる。
【0029】
ブラダーの形状等について、特に限定はない。その形状としては、たとえば、シート状、フィルム状、ホース状、チューブ状、スポンジ状、パッキン、ベルト等を挙げることができ、加硫成形時に空気を外に逃がすための溝が刻まれていてもよい。
【0030】
〔タイヤの製造方法〕
本発明のタイヤの製造方法は、まず、ブラダー製造工程を含む。
(ブラダー製造工程)
ブラダー製造工程は、
1)ゴム成分に、上記ブラダー内添用離型剤を添加し、亜鉛化合物等と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合する配合工程
2)混練り工程、3)熱入れ工程、4)押出工程を含む。
(タイヤの製造方法)
未加硫のゴムを主体にビードワイヤーやタイヤコード等の必要な部材を組み合わせ、これらを接着して、生タイヤと呼ばれるタイヤ原形を準備する。
本発明のタイヤの製造方法は、上記ブラダー製造工程で得られたブラダーを加熱膨張させて生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する加硫工程を含む製造方法であってもよく、本発明のタイヤの製造方法は、上記ブラダー内添用離型剤を含むブラダー及び/又は上記ブラダーを加熱膨張させて生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する加硫工程を含む製造方法であってもよい。
【実施例】
【0031】
以下に、ブラダー内添用離型剤の実施例、比較例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
最初に、ブラダー内添用離型剤の物性評価方法を説明する。
〔離型性評価〕
実施例で作製したブラダーと未加硫ゴムとを重ね合わせて、160℃、2MPaの条件で20分間プレス加硫した。加硫後にブラダーを室温まで冷却し、引張り試験機テンシロン(PT−200N型、ミネベア株式会社)を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/mm)を測定した。離型性の評価基準は以下のとおり。○を合格とした。
○:剥離抗力が0.01N/mm未満
×:剥離抗力が0.01N/mm以上
【0032】
〔繰り返し離型性評価〕
上記と同様の方法で加硫を繰り返し行い、離型性が何回まで持続するか測定した。繰り返し加硫できる回数が多いほど、繰り返し離型性に優れる。繰り返し離型性の評価基準は以下の通り。◎と○を合格とした。
◎:100回以上繰り返し加硫成型を行っても、持続して離型性が良好である。
○:30回以上100回未満の間、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
×:30回未満の間、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
【0033】
〔ブラダーゴム組成物の調整〕
以下に示す成分を所定量で混合し、ブラダーゴム組成物を調整した。一般的に、生タイヤ表面もブチルゴム主体であるため、このゴム組成物を未加硫ゴムとして離型性評価にも用いた。
ゴム成分
IIRゴム:100重量部
ゴム成分以外のブラダーゴム組成物
ZnO:3重量部
S8:2重量部
ステアリン酸:1重量部
オイルファーネスブラック:50重量部
促進剤TT(テトラメチルチウラムジスルフィド):1重量部
【0034】
〔実施例1〕
上記のブラダーゴム組成物157重量部(ゴム成分:100重量部、その他のゴム組成物:57重量部)に対して、カルシウムステアレート1重量部、グリセリン1重量部を配合し、混練したゴム組成物を準備し、その後、加硫することで、離型剤内添したブラダーを得た。このブラダーを用い、離型性、繰り返し離型性の評価を行った結果を表1に示す。離型性、繰り返し離型性に優れていた。
【0035】
〔実施例2〜21〕
実施例2〜21では、表1及び2に示すように離型剤組成をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様の方法で離型剤内添のブラダーを得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表1及び2に示す。それらは、離型性、繰り返し離型性に優れていた。
【0036】
〔比較例1〕
ブラダーゴム組成物157重量部(ゴム成分:100重量部、その他のゴム組成物:57重量部)に対し、カルシウムステアレート15重量部、グリセリン0.2重量部を配合し、混練したゴム組成物を準備し、加硫することで、離型剤内添したブラダーを得た。このブラダーを用い、離型性、繰り返し離型性の評価を行った結果を表2に示す。
【0037】
〔比較例2〜10〕
比較例2〜10では、比較例1において、表2に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、比較例1と同様に離型剤内添ブラダーを得て、物性等も比較例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
表1〜3から分かるように、実施例1〜21のブラダー内添用離型剤は、上記成分(A)及び上記成分(B)から選ばれる少なくとも1種と、上記成分(C)とを含むブラダー内添用離型剤であって、上記成分(C)の重量と、上記成分(A)及び上記成分(B)から選ばれる少なくとも1種の合計重量との比〔C/(A+B)〕が0.05〜10を満たしているので、本願の課題である離型性及び繰り返し離型成に優れる。
一方、成分(A)及び成分(B)から選ばれる1種と成分(C)とを含有するが、上記成分(C)の重量と、上記成分(A)及び上記成分(B)から選ばれる少なくとも1種の合計重量との比〔C/(A+B)〕が0.05〜10の範囲にない場合(比較例1〜3、7及び8)、多価アルコール(C)を含有しない場合(比較例2及び3)、成分(A)も成分(B)もどちらも含有しない場合(比較例4〜6、9及び10)には、本願の課題のいずれかが解決できていない。