特許第6817044号(P6817044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817044
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】車輌用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/32 20180101AFI20210107BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20210107BHJP
   F21S 41/365 20180101ALI20210107BHJP
   F21V 7/09 20060101ALI20210107BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20210107BHJP
【FI】
   F21S41/32
   F21S41/25
   F21S41/365
   F21V7/09 510
   F21W102:00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-230147(P2016-230147)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-88319(P2018-88319A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(74)【代理人】
【識別番号】100114122
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086841
【弁理士】
【氏名又は名称】脇 篤夫
(72)【発明者】
【氏名】達川 正士
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−022912(JP,A)
【文献】 特開2016−178055(JP,A)
【文献】 特開2002−358806(JP,A)
【文献】 特開2006−324102(JP,A)
【文献】 実開平06−084601(JP,U)
【文献】 米国特許第06015220(US,A)
【文献】 特開2001−035218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/32
F21S 41/25
F21S 41/365
F21V 7/09
F21W 102/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光が透過される投影レンズと、
前記光源と前記投影レンズの間に位置され前記光源から出射された光の一部を前記投影レンズへ向けて反射する反射板とを備え、
前記反射板で反射された少なくとも一部の光の前記投影レンズからの出射方向が前記投影レンズから出射され配光パターンを形成する光の出射方向に対して異なる方向にされ
前記反射板の左右方向における幅が、前記反射板で反射される光が入射される前記投影レンズの左右方向における出射領域の幅以上にされた
車輌用前照灯。
【請求項2】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光が透過される投影レンズと、
前記光源と前記投影レンズの間に位置され前記光源から出射された光の一部を前記投影レンズへ向けて反射する反射板とを備え、
前記反射板で反射された少なくとも一部の光の前記投影レンズからの出射方向が前記投影レンズから出射され配光パターンを形成する光の出射方向に対して異なる方向にされ
前記光源から出射された光を前記投影レンズへ向けて反射するリフレクターが設けられ、
前記光源から出射された光のうち前記リフレクターで反射しない光が前記反射板に入射され、
前記リフレクターで反射しない光を少なくとも前記反射板へ向けて反射する反射部材が設けられ、
前記光源と前記投影レンズの間に前記光源から出射された光の一部を遮蔽するシェードが設けられ、
前記シェードに少なくとも前記反射板へ向けて光を反射する反射面が形成され、
前記反射部材で反射された光が前記反射板と前記反射面に入射される
車輌用前照灯。
【請求項3】
前記投影レンズとして、配光パターンを形成するための第1の投影レンズと、前記反射部材と前記反射板で順に反射された光が入射される第2の投影レンズとが設けられた
請求項2に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】
前記反射板で反射される光が前記投影レンズの略全体に入射される
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車輌用前照灯。
【請求項5】
前記反射板で反射された一部の光の前記投影レンズからの出射方向が前記配光パターンを形成する光の前記投影レンズからの出射方向に対して上向きにされた
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の車輌用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光を出射する光源と光源から出射された光が透過される投影レンズとを備えた車輌用前照灯についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に、光源や投影レンズが配置された所謂プロジェクター型の車輌用前照灯がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような車輌用前照灯においては、光源から出射された光が投影レンズによって略平行光となるように制御され、投影レンズから出射され所定の配光パターンに形成された光が外部へ向けて照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−108727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、投影レンズを有するプロジェクター型の車輌用前照灯においては、光源から出射された光が略平行光として外部へ向けて出射される。
【0006】
従って、歩行者や他の車輌の搭乗者等が夜間等において車輌の存在に気付いたときに、車輌に対する視認角度によっては、投影レンズから出射される光(略平行光)が目に入り難いため、投影レンズの一部のみが光って見えたり、投影レンズが部分的に光って見えてしまい、被視認性が劣ってしまう。特に、歩行者等においては、車輌を上斜め方向から視認する場合も多く、被視認性の低下を来し易い状況にある。
【0007】
そこで、本発明車輌用前照灯は、上記した問題点を克服し、車輌用前照灯に対する被視認性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1に、本発明に係る車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、光を出射する光源と、前記光源から出射された光が透過される投影レンズと、前記光源と前記投影レンズの間に位置され前記光源から出射された光の一部を前記投影レンズへ向けて反射する反射板とを備え、前記反射板で反射された少なくとも一部の光の前記投影レンズからの出射方向が前記投影レンズから出射され配光パターンを形成する光の出射方向に対して異なる方向にされ、前記反射板の左右方向における幅が、前記反射板で反射される光が入射される前記投影レンズの左右方向における出射領域の幅以上にされたものである。
【0009】
これにより、反射板で反射された少なくとも一部の光が配光パターンを形成する光に対して投影レンズから異なる方向へ出射される。また、反射板の左右方向における反射領域が投影レンズの左右方向における出射領域以上になる。
【0010】
第2に、本発明に係る車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、光を出射する光源と、前記光源から出射された光が透過される投影レンズと、前記光源と前記投影レンズの間に位置され前記光源から出射された光の一部を前記投影レンズへ向けて反射する反射板とを備え、前記反射板で反射された少なくとも一部の光の前記投影レンズからの出射方向が前記投影レンズから出射され配光パターンを形成する光の出射方向に対して異なる方向にされ、前記光源から出射された光を前記投影レンズへ向けて反射するリフレクターが設けられ、前記光源から出射された光のうち前記リフレクターで反射しない光が前記反射板に入射され、前記リフレクターで反射しない光を少なくとも前記反射板へ向けて反射する反射部材が設けられ、前記光源と前記投影レンズの間に前記光源から出射された光の一部を遮蔽するシェードが設けられ、前記シェードに少なくとも前記反射板へ向けて光を反射する反射面が形成され、前記反射部材で反射された光が前記反射板と前記反射面に入射されるものである。
【0011】
これにより、反射板で反射された少なくとも一部の光が配光パターンを形成する光に対して投影レンズから異なる方向へ出射される。また、リフレクターで反射する光が配光パターンを形成する光として用いられると共にリフレクターで反射しない光が反射板で反射する光として用いられる。また、リフレクターで反射しない光が反射部材で反射されて反射板に入射される。また、シェードによって光源から出射された光の遮蔽と反射が行われる。
【0016】
第3に、上記した本発明に係る車輌用前照灯においては、前記投影レンズとして、配光パターンを形成するための第1の投影レンズと、前記反射部材と前記反射板で順に反射された光が入射される第2の投影レンズとが設けられることが望ましい。
【0017】
これにより、第1の投影レンズを透過される光によって配光パターンが形成されると共に反射部材と反射板で順に反射された光が第2の投影レンズに入射される。
【0020】
第4に、前記反射板で反射される光が前記投影レンズの略全体に入射されることが望ましい。
【0021】
これにより、光源から出射された光の一部が反射板で反射され、投影レンズの略全体に入射されて投影レンズの略全体から光が出射される。
【0022】
第5に、前記反射板で反射された一部の光の前記投影レンズからの出射方向が前記配光パターンを形成する光の前記投影レンズからの出射方向に対して上向きにされることが望ましい。
【0023】
これにより、反射板で反射された少なくとも一部の光が、配光パターンを形成する光に対して投影レンズから上向きに出射される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光源から出射された光の一部が反射板で反射され、反射板で反射された少なくとも一部の光が配光パターンを形成する光に対して投影レンズから異なる方向へ出射されるため、車輌用前照灯に対する被視認性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図2乃至図4と共に本発明車輌用前照灯の実施の形態を示すものであり、本図は、側方から見た状態で示す第1の実施の形態に係る車輌用前照灯の断面図である。
図2】上方から見た状態で示す第1の実施の形態に係る車輌用前照灯の断面図である。
図3】側方から見た状態で示す第2の実施の形態に係る車輌用前照灯の断面図である。
図4】上方から見た状態で示す第3の実施の形態に係る車輌用前照灯の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0027】
先ず、第1の実施の形態に係る車輌用前照灯1について説明する(図1及び図2参照)。
【0028】
車輌用前照灯1は、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0029】
車輌用前照灯1は前端に開口を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口を閉塞するカバー3とを備えている。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部が灯室4aとして形成されている。
【0030】
灯室4aには灯具ユニット5が配置されている。灯具ユニット5は光を出射する光源6と光源6から出射される光を前方へ向けて反射するリフレクター7と光源6から出射される光が透過される投影レンズ8とを有している。灯室4aには光源6から出射された光の一部を遮蔽する図示しないシェードが配置されている。
【0031】
灯室4aには光源6と投影レンズ8の間に反射部材9が配置されている。反射部材9は、例えば、リフレクター7の前側における上側に位置され、略下方に凹の曲面状に形成されている。反射部材9の内面(下面)は曲面状の光反射面9aとして形成されている。
【0032】
灯室4aにはリフレクター7と投影レンズ8の間に反射板10が配置されている。反射板10は、例えば、投影レンズ8の後側における下側に位置され、平板状に形成されている。反射板10の上面にはシボや蒸着や艶消し等の表面処理が施され、反射板10の上面は反射制御面10aとして形成されている。従って、反射制御面10aに入射された光は制御されて所定の方向へ向けて反射され、シボ等の拡散可能な表面処理が施されている場合には拡散されて所定の方向へ向けて反射される。
【0033】
反射板10の左右方向における幅は投影レンズ8の左右方向における出射領域の幅以上にされている。
【0034】
上記のように構成された車輌用前照灯1において、光源6から光が出射されると、出射された光は一部を除いてリフレクター7で反射され投影レンズ8へ向かう(図2に点線の矢印で示す光)。
【0035】
リフレクター7で反射されて投影レンズ8へ向かった光は、投影レンズ8に入射され投影レンズ8によって制御されて略平行光とされ、投影レンズ8とカバー3を透過されて外部へ向けて照射される。このとき光源6から出射された光は、一部がシェードによって遮蔽され所定の配光パターンに形成された光として外部へ向けて照射される。
【0036】
一方、光源6から光が出射されたときには、リフレクター7へ向かわない光が存在する。このようなリフレクター7へ向かわなかった光の一部は、反射部材9に入射され光反射面9aで反射板10へ向けて反射される(図2に一点鎖線の矢印で示す光)。反射板10へ向けて反射された光は反射制御面10aで反射されて投影レンズ8の略全体に入射される。このとき反射制御面10aに入射された光は反射制御面10aで反射されたときに拡散され、投影レンズ8の略全体に入射される。
【0037】
反射板10の反射制御面10aで反射されて投影レンズ8の略全体に入射された光は、投影レンズ8の略全体から出射されカバー3を透過されて外部へ向けて照射される。このとき反射板10で反射されて投影レンズ8に入射された光の少なくとも一部は、配光パターンを形成する光とは異なる角度で投影レンズ8から出射され、例えば、斜め上方や斜め下方や斜め側方へ向けて出射される。
【0038】
尚、配光パターンとして形成される光(略平行光)は、上方側においては投影レンズ8の光軸に対して上側5度未満までの範囲で投影レンズ8から出射され、反射板10で反射されて投影レンズ8から出射される上向きの光は、例えば、上側5度以上の範囲で出射される。
【0039】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、光源6から出射された光の一部が反射板10で反射され、反射板10で反射された少なくとも一部の光が配光パターンを形成する光に対して投影レンズ8から異なる方向へ出射される。
【0040】
従って、歩行者や他の車輌の搭乗者等が夜間等において車輌用前照灯1を備えた車輌の存在に気付いたときに、車輌に対する視認角度によって投影レンズ8の一部のみが光って見えたり投影レンズ8が部分的に光って見えてしまうことが少なくなり、車輌に対する視認角度に拘わらず投影レンズ8の略全体が光って見え易く、車輌用前照灯1に対する被視認性の向上を図ることができる。
【0041】
また、光源6から出射された光を投影レンズ8へ向けて反射するリフレクター7が設けられており、光源6から出射された光のうちリフレクター7で反射しない光が反射板10に入射される。
【0042】
従って、リフレクター7で反射する光が配光パターンを形成する光として用いられると共にリフレクター7で反射しない光が反射板10で反射する光として用いられるため、光源6から出射される光に関し配光に影響を与えることなく利用効率の向上を図ることができる。
【0043】
さらに、リフレクター7で反射しない光を反射板10へ向けて反射する反射部材9が設けられているため、リフレクター7で反射しない光が反射部材9で反射されて反射板10に入射され、光源6の数を増やすことなく反射板10への光の入射を確実に行うことができる。
【0044】
さらにまた、反射板10の左右方向における幅が投影レンズ8の左右方向における出射領域の幅以上にされているため、反射板10の左右方向における反射領域が投影レンズ8の左右方向における出射領域以上になり、反射板10で反射された光を投影レンズ8の略全体に確実に入射させることができる。
【0045】
尚、上記には、反射板10の左右方向における幅が投影レンズ8の左右方向における出射領域の幅以上にされた例を示したが、反射板10の左右方向における幅は投影レンズ8の左右方向における出射領域の、例えば、70%以上にされていることが望ましい。反射板10の左右方向における幅が投影レンズ8の左右方向における出射領域の70%以上にされている場合にも、例えば、反射制御面10aに拡散処理等を施すことにより反射板10で反射された光を投影レンズ8の略全体に入射させることが可能である。
【0046】
また、反射板10で反射される光が投影レンズ8の略全体に入射されるため、光源6から出射された光の一部が反射板10で反射され、投影レンズ8の略全体に入射されて投影レンズ8の略全体から光が出射され、光の有効活用及び被視認性の向上を図ることができる。
【0047】
さらに、反射板10で反射された一部の光の投影レンズ8からの出射方向が配光パターンを形成する光の投影レンズ8からの出射方向に対して上向きにされている。
【0048】
従って、反射板10で反射された少なくとも一部の光が、配光パターンを形成する光に対して投影レンズ8から上向きに出射されるため、特に、歩行者等において車輌を上斜め方向から視認する場合においても、被視認性を確実に向上させることができる。
【0049】
次に、第2の実施の形態に係る車輌用前照灯1Aについて説明する(図3参照)。
【0050】
尚、以下に示す車輌用前照灯1Aは、上記した車輌用前照灯1と比較して、反射面を有するシェードが配置されていることのみが相違するため、車輌用前照灯1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については車輌用前照灯1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0051】
車輌用前照灯1Aにおいては灯具外筐4の灯室4aに灯具ユニット5Aが配置されている。灯具ユニット5Aは光源6とリフレクター7と投影レンズ8とシェード11を有している。シェード11は、例えば、リフレクター7の前側における下側に位置され、上下方向を向く板状のベース部12とベース部12の前端部から前斜め下方に突出された傾斜部13とを有している。傾斜部13のうちベース部12の上面の前端に連続する面は反射面13aとして形成されている。従って、反射面13aは上斜め前方を向く面として形成されている。
【0052】
反射板10はシェード11の前側に配置されている。
【0053】
上記のように構成された車輌用前照灯1Aにおいて、光源6から光が出射されると、出射された光は一部を除いてリフレクター7で反射され投影レンズ8へ向かう(図3に点線の矢印で示す光)。
【0054】
リフレクター7で反射されて投影レンズ8へ向かった光は、投影レンズ8に入射され投影レンズ8によって制御されて略平行光とされ、投影レンズ8とカバー3を透過されて外部へ向けて照射される。このとき光源6から出射された光は、一部がシェード11によって遮蔽され所定の配光パターンに形成された光として外部へ向けて照射される。
【0055】
一方、光源6から光が出射されたときには、リフレクター7へ向かわない光が存在する。このようなリフレクター7へ向かわなかった光の一部は、反射部材9に入射され光反射面9aで反射板10とシェード11の反射面13aとへ向けて反射される(図3に一点鎖線の矢印で示す光)。反射板10へ向けて反射された光と反射面13aへ向けて反射された光は、反射制御面10aと反射面13aでそれぞれ反射されて投影レンズ8の略全体に入射される。このとき反射制御面10aに入射された光は反射制御面10aで反射されたときに拡散され、投影レンズ8の略全体に入射される。
【0056】
尚、反射面13aにおいてもシボや蒸着や艶消し等の表面処理が施されていてもよく、反射面13aにシボ等の拡散可能な表面処理が施されている場合には反射面13aに入射された光も反射面13aで反射されたときに拡散され、投影レンズ8の略全体に入射される。
【0057】
反射板10の反射制御面10aとシェード11の反射面13aとで反射されて投影レンズ8の略全体に入射された光は、投影レンズ8の略全体から出射されカバー3を透過されて外部へ向けて照射される。このとき反射制御面10aと反射面13aで反射されて投影レンズ8に入射された光の少なくとも一部は、配光パターンを形成する光とは異なる角度で投影レンズ8から出射され、例えば、斜め上方や斜め下方や斜め側方へ向けて出射される。
【0058】
このように、車輌用前照灯1Aにあっては、光源6から出射された光の一部が反射板10とシェード11で反射され、反射板10で反射された少なくとも一部の光が配光パターンを形成する光に対して投影レンズ8から異なる方向へ出射される。
【0059】
従って、歩行者や他の車輌の搭乗者等が夜間等において車輌用前照灯1Aを備えた車輌の存在に気付いたときに、車輌に対する視認角度によって投影レンズ8の一部のみが光って見えたり投影レンズ8が部分的に光って見えてしまうことが少なくなり、車輌に対する視認角度に拘わらず投影レンズ8の略全体が光って見え易く、車輌用前照灯1Aに対する被視認性の向上を図ることができる。
【0060】
また、車輌用前照灯1Aにおいては、シェード11が設けられており、シェード11に投影レンズ8と反射板10へ向けて光を反射する反射面13aが形成され、反射部材9で反射された光が反射板10と反射面13aに入射される。
【0061】
従って、シェード11によって光源6から出射された光の遮蔽と反射が行われ、機能性の向上を図った上で投影レンズ8の略全体に光を入射させることができる。
【0062】
さらに、反射部材9で反射された光が反射板10と反射面13aの双方に向かい反射板10と反射面13aの双方で光が反射されて投影レンズ8に向かうため、投影レンズ8に入射される光の量を増やすことが可能になり、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0063】
次に、第3の実施の形態に係る車輌用前照灯1Bについて説明する(図4参照)。
【0064】
尚、以下に示す車輌用前照灯1Bは、上記した車輌用前照灯1と比較して、投影レンズと反射部材がそれぞれ二つずつ設けられていることのみが相違するため、車輌用前照灯1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については車輌用前照灯1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0065】
車輌用前照灯1Bにおいては灯具外筐4の灯室4aに灯具ユニット5Bが配置されている。灯具ユニット5Bは光源6とリフレクター7と第1の投影レンズ8Xと第2の投影レンズ8Yを有している。
【0066】
第1の投影レンズ8Xと第2の投影レンズ8Yは、例えば、左右に離隔して配置され、リフレクター7の真正面に第1の投影レンズ8Xが配置され、第2の投影レンズ8Yの真後ろに反射板10が配置されている。
【0067】
灯室4aには第1の反射部材9Xと第2の反射部材9Yが左右に離隔して配置されている。第1の反射部材9Xはリフレクター7と第1の投影レンズ8Xの間に配置され、第2の反射部材9Yは反射板10の後側に配置されている。第1の反射部材9Xと第2の反射部材9Yは互いに向き合う方向(略側方)に凹の曲面状に形成され、互いに向き合う凹面がそれぞれ曲面状の光反射面9x、9yとして形成されている。
【0068】
上記のように構成された車輌用前照灯1Bにおいて、光源6から光が出射されると、出射された光は一部を除いてリフレクター7で反射され第1の投影レンズ8Xへ向かう(図4に点線の矢印で示す光)。
【0069】
リフレクター7で反射されて第1の投影レンズ8Xへ向かった光は、第1の投影レンズ8Xに入射され第1の投影レンズ8Xによって制御されて略平行光とされ、第1の投影レンズ8Xとカバー3を透過されて外部へ向けて照射される。このとき光源6から出射された光は、一部がシェードによって遮蔽され所定の配光パターンに形成された光として外部へ向けて照射される。
【0070】
一方、光源6から光が出射されたときには、リフレクター7へ向かわない光が存在する。このようなリフレクター7へ向かわなかった光の一部は、第1の反射部材9Xに入射され光反射面9xで第2の反射部材9Yへ向けて反射され、第2の反射部材9Yの光反射面9yで反射板10へ向けて反射される(図4に一点鎖線の矢印で示す光)。反射板10へ向けて反射された光は反射制御面10aで反射されて第2の投影レンズ8Yの略全体に入射される。このとき反射制御面10aに入射された光は反射制御面10aで反射されたときに拡散され、第2の投影レンズ8Yの略全体に入射される。
【0071】
反射板10の反射制御面10aで反射されて第2の投影レンズ8Yの略全体に入射された光は、第2の投影レンズ8Yの略全体から出射されカバー3を透過されて外部へ向けて照射される。このとき反射板10で反射されて第2の投影レンズ8Yに入射された光の少なくとも一部は、第1の投影レンズ8Xから出射される配光パターンを形成する光とは異なる角度で第2の投影レンズ8Yから出射され、例えば、斜め上方や斜め下方や斜め側方へ向けて出射される。
【0072】
このように、車輌用前照灯1Bにあっては、光源6から出射された光の一部が反射板10で反射され、反射板10で反射された少なくとも一部の光が配光パターンを形成する光に対して第2の投影レンズ8Yから異なる方向へ出射される。
【0073】
従って、歩行者や他の車輌の搭乗者等が夜間等において車輌用前照灯1Bを備えた車輌の存在に気付いたときに、車輌に対する視認角度によって第2の投影レンズ8Yの一部のみが光って見えたり第2の投影レンズ8Yが部分的に光って見えてしまうことが少なくなり、車輌に対する視認角度に拘わらず第2の投影レンズ8Yの略全体が光って見え易く、車輌用前照灯1Bに対する被視認性の向上を図ることができる。
【0074】
また、車輌用前照灯1Bにあっては、配光パターンを形成するための第1の投影レンズ8Xと、第1の反射部材9Xと第2の反射部材9Yと反射板10で順に反射された光が入射される第2の投影レンズ8Yとが設けられている。
【0075】
従って、第1の投影レンズ8Xを透過される光によって配光パターンが形成されると共に第1の反射部材9Xと第2の反射部材9Yと反射板10で順に反射された光が第2の投影レンズ8Yに入射されるため、光源6から出射される光に関し配光に影響を与えず光源の数を増やすことなく光の有効活用を図ることができる。
【0076】
尚、車輌用前照灯1Bにあっても、車輌用前照灯1、1Aと同様に、第1の投影レンズ8Xとリフレクター7の間に反射板10を配置し、光源6から出射された光の一部を反射板10で反射させ、反射板10で反射された光を配光パターンを形成する光とは異なる角度で第1の投影レンズ8Xから出射させる構成にすることも可能である。
【0077】
このような構成にすることにより、車輌に対する視認角度によって第1の投影レンズ8Xの一部のみが光って見えたり第1の投影レンズ8Xが部分的に光って見えてしまうことが少なくなり、車輌に対する視認角度に拘わらず第1の投影レンズ8Xの略全体が光って見え易く、車輌用前照灯1Bに対する一層の被視認性の向上を図ることができる。
【0078】
尚、上記には、車輌用前照灯1、1A、1Bにおいて、一つの光源6が設けられた例を示したが、光源6は複数が設けられていてもよい。複数の光源6が設けられることにより、投影レンズ8、第1の投影レンズ8X、第2の投影レンズ8Yから出射される光の出射領域における明暗差の発生を抑制することができる。
【0079】
また、複数の光源6が設けられる場合には、少なくとも一つの光源6を配光パターンを形成するための専用の光源6として用い、別の少なくとも一つの光源6を反射板10に光を入射させるための専用の光源6として用いることも可能である。
【0080】
さらに、反射板10の反射制御面10aや反射面13aに対するシボ等の表面処理によって、反射板10又は反射面13aから投影レンズ8、第2の投影レンズ8Yの略全体に入射される光の量の調整や投影レンズ8の各部毎に入射される光の量の調整を行い、投影レンズ8が光る見え方を自由に調整することが可能である。
【0081】
さらにまた、反射板10は各種の材料によって形成することが可能であり、反射板10は、例えば、樹脂材料又は金属材料の何れの材料によって形成されていてもよい。反射板10が金属材料によって形成されることにより、投影レンズ8又は第2の投影レンズ8Yを介して太陽光が反射板10に入射されたときに、反射板10の溶融を防止することができる。一方、反射板10が樹脂材料によって形成されることにより、反射板10が軽量になり車輌用前照灯1、1A、1Bの全体としての軽量化を図ることができる。
【0082】
尚、反射板10が樹脂材料又は金属材料の何れの材料によって形成される場合においても、反射板10が、例えば、灯室4aに配置される各部材やランプハウジング2と一体に形成されていてもよい。また、反射部材9、第1の反射部材9X、第2の反射部材9Yも同様に、灯室4aに配置される各部材やランプハウジング2と一体に形成されていてもよい。
【0083】
また、反射板10や反射部材9、第1の反射部材9X、第2の反射部材9Yは、例えば、灯室4aに配置される各部を遮蔽するエクステンションの一部として設けられていてもよい。
【0084】
さらに、反射板10、反射部材9、第1の反射部材9X、第2の反射部材9Y等の配置角度や反射板10の反射制御面10a、シェード11の反射面13aに対するシボ等の表面処理の処理状態によって、投影レンズ8、第1の投影レンズ8X、第2の投影レンズ8Yから出射される光による先行車輌や対向車輌等の搭乗者に対する幻惑光の発生を防止することが可能である。
【0085】
また、上記には、リフレクター7を有する所謂反射光学系の車輌用前照灯1、1A、1Bを例として示したが、本発明はリフレクターを有さない直射光学系の車輌用前照灯に適用することも可能である。直射光学系の車輌用前照灯においては、光源から出射され反射板に達しない光によって配光パターンが形成されると共に光源から出射され配光パターンを形成しない光の一部が反射板で反射されて投影レンズの略全体に入射される。
【符号の説明】
【0086】
1…車輌用前照灯、6…光源、7…リフレクター、8…投影レンズ、9…反射部材、10…反射板、1A…車輌用前照灯、11…シェード、13a…反射面、1B…車輌用前照灯、8X…第1の投影レンズ、8Y…第2の投影レンズ
図1
図2
図3
図4