(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置などに用いられる建築物の1つの形式として、複数の柱と、各柱に掛け渡された桁材とにより骨組みとなる構造体が形成され、この構造体を取り囲むように外壁が設けられた構成の鉄骨造の建築物がある。
【0003】
この種の鉄骨造の建築物では、外壁を構築するための外壁材として、薄い鋼板製の波板状のパネルが用いられることがある。
【0004】
このようなパネルを外壁材として用いる場合は、隣接する柱の外側に、横方向に延びる胴縁を、上下方向に設定された間隔で複数段に架け渡すように取り付ける。更に、所定の上下寸法および幅寸法を備えた前記パネルを、前記胴縁の側面に沿わせて横方向に並べて配置して、各パネルを胴縁に取付手段を介して固定した構成とされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、建築基準法における耐火建築物には、学校、体育館、病院等の他、機械式駐車装置のような自動車車庫も含まれる。このため、機械式駐車装置は、建築基準法の耐火建築物の基準を満たすために、建築基準法上に規定されている主要構造部としての柱や外壁などに耐火被覆を設けて、耐火構造にする必要がある。
【0006】
前記機械式駐車装置のような鉄骨造の建築物における柱や外壁などを耐火被覆する手法としては、吹付け方式の耐火被覆施工方法が一般的に採用されている。
【0007】
機械式駐車装置について吹付け方式の耐火被覆施工方法を実施する場合は、機械式駐車装置の外壁を完成させた状態で、ポンプにより圧送されるロックウールとセメントなどの硬化材とを含有する吹付け用の耐火被覆材を、ノズルから柱の周囲や外壁の内面に吹付けて、耐火被覆材を所望する耐火性能に必要とされる厚さ、密度で付着させるようにしている。
【0008】
ところで、前記機械式駐車装置のコーナ部は、柱の2方向の側部に、それぞれ胴縁を介して外壁材となるパネルが取り付けられている。そのため、前記コーナ部では、外壁とその内側に配置された柱との間に、平面形状がL字状の空間部が形成されている。
【0009】
しかし、この空間部は、建築物の内外方向に沿う方向の幅寸法が胴縁の太さに対応する寸法しかないため、この空間部に臨む配置とされている外壁の内面や柱の側面には、耐火被覆材を吹付けるためのノズルを対面するように配置することが難しい。
【0010】
そのため、前記コーナ部の空間部に臨む外壁の内面および柱の側面に耐火被覆を施工する場合は、コーナ部の空間部に耐火被覆材を吹き込んで、該空間部全体に耐火被覆材を充填する手法が採られている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1乃至
図6(a)(b)(c)(d)は、耐火被覆施工方法の実施形態として、建築物としての機械式駐車装置の建屋のコーナ部に対する耐火被覆施工に適用する場合の例を示すものである。
【0024】
図1は、機械式駐車装置の建屋を示すもので、屋根の部分の記載を省略した概略平面図である。
図2(a)は、
図1の建屋のコーナ部を拡大して示す平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のコーナ部の構造を簡略化したモデル図である。
図3は、
図2(a)のA−A方向矢視図である。
【0025】
図4は、耐火被覆施工方法の実施に使用する器具を示すもので、
図4(a)は、閉止具の概略斜視図、
図4(b)は、こての概略斜視図である。
【0026】
図5は、耐火被覆施工方法の手順を示すもので、
図5(a)は、コーナ部の空間部の第1の区画に耐火被覆材の1回目の吹き込み処理を行った状態を示す図、
図5(b)は、第1の区画における1回目の押圧処理を示す図、
図5(c)は、第1の区画に耐火被覆材が充填された状態を示す図である。
【0027】
図6は、耐火被覆施工方法の
図5に続く手順を示すもので、
図6(a)は、コーナ部の空間部の第2の区画に耐火被覆材の1回目の吹き込み処理を行った状態を示す図、
図6(b)は、第2の区画における1回目の押圧処理を示す図、
図6(c)は、第2の区画に耐火被覆材が充填された状態を示す図、
図6(d)は、コーナ部における柱および外壁の内面に耐火被覆が施工された状態を示す図である。
【0028】
先ず、
図1、
図2(a)(b)、
図3を用いて、耐火被覆施工の対象となる機械式駐車装置の建屋について、概略を説明する。
【0029】
機械式駐車装置の建屋は、
図1に示すように、建屋の四隅となる位置に立設された柱1と、柱1同士を繋ぐ梁2とにより構成された骨組構造体3を備えている。隣接する柱1には、建屋の外側に臨む配置となる側部に、横方向に延びる胴縁4が、設定された間隔で上下方向に複数段配置され、各胴縁4が各柱1に架け渡すように取り付けられている。この胴縁4の柱1への取り付けは、たとえば、
図2(a)、
図3に示すように、ブラケットのような取付部材5を介して行われている。
【0030】
更に、外壁材として、所定の上下寸法および幅寸法を備えた薄い鋼板製の波板状のパネル6が、胴縁4の側面に沿わせて横方向に並べて配置され、各パネル6が胴縁4に図示しない取付手段を介して固定されている。これにより、建屋の外壁7は、骨組構造体3を取り囲むように配置されたパネル6の集合体として構築されている。
【0031】
したがって、建屋のコーナ部には、
図2(a)、
図3に示すように、コーナ部に配置された柱1と、その外側に配置された外壁7との間で、且つ上下に隣接する胴縁4の間となる個所に、空間部8が形成されている。
【0032】
図2(b)は、空間部8をより明確に示すために、
図2(a)と同じコーナ部について柱1と外壁7の構成を簡略化して示すモデル図である。なお、
図2(b)では、胴縁4と取付部材5の記載は省略してある。
【0033】
空間部8は、その平面形状が、
図2(b)に二点鎖線で示すように、柱1の2方向の側部9a,9bに沿ってL字状に屈曲した形状となっている。
【0034】
本実施形態では、後述する耐火被覆施工方法の手順を説明する必要上、コーナ部の各構成について、以下のようにいうものとする。
【0035】
図2(b)に示すように、コーナ部の外壁7において、柱1の第1の側部9aの外側に、該第1の側部9aに沿う姿勢で配置されている壁面は、第1の側壁10aという。柱1の第2の側部9bの外側に、該第2の側部9bに沿う姿勢で配置されている壁面は、第2の側壁10bという。
【0036】
空間部8については、
図2(b)に一点鎖線で示すように、L字状に屈曲した平面形状における一方の辺に沿う領域と、角部の領域とを合わせた領域、すなわち、
図2(b)では、柱1の第1の側部9aと、この第1の側部9aを第2の側壁10bに達するまで延長した仮想の面と、第1の側壁10aの内面と、第2の側壁10bの内面とにより囲まれる領域を、第1の区画8aという。また、
図2(b)に破線で示すように、空間部8にて、L字状に屈曲した平面形状における他方の辺に沿う領域、すなわち、
図2(b)では、柱1の第2の側部9bと、第2の側壁10bの内面と、柱1の第1の側部9aを第2の側壁10bに達するまで延長した仮想の面とにより囲まれる領域は、第2の区画8bという。
【0037】
したがって、空間部8は、柱1の第1の側部9aを第2の側壁10bに達するまで延長した仮想の面の位置で、第1の区画8aと第2の区画8bとに分割される。
【0038】
更に、柱1の第1の側部9aにおけるコーナ部の頂点から遠い側の端辺と、第1の側壁10aと、上下の胴縁4(
図3参照)との内側に形成されて、第1の区画8aに連通している開口部は、第1の開口部11aという。したがって、第1の区画8aは、第1の開口部11aから、第1の側部9aと、第1の側壁10aとの間を通して、第2の側壁10bに突き当たる位置まで直線的に延びる略直方体形状の空間となる。
【0039】
また、柱1の第2の側部9bにおけるコーナ部の頂点から遠い側の端辺と、第2の側壁10bと、上下の胴縁4(
図3参照)との内側に形成されて、第2の区画8bに連通している開口部は、第2の開口部11bという。したがって、第2の区画8bは、第2の開口部11bから、第2の側部9bと、第2の側壁10bとの間を通して、第1の区画8aに突き当たる位置まで直線的に延びる略直方体形状の空間となる。
【0040】
なお、本実施形態では、建屋の柱1は、
図2(a)に示すように、H形鋼製とされている。そのため、柱1は、H形鋼における一対のフランジ12とウェブ13との内側に形成される2つの凹部14a,14bのうちの一方の凹部14aが、第1の区画8aまたは第2の区画8bに臨む配置とされている。
図2(a)では、凹部14aが第2の区画8bに臨む配置とされた構成が示してある。
【0041】
ところで、本実施形態の耐火被覆施工方法は、後述するように、第1の区画8aと第2の区画8bの双方で、各区画8a,8bに吹き込まれた耐火被覆材15(
図5(a)参照)を個別に押圧する工程を有している。そのため、第2の区画8bに吹き込まれた耐火被覆材15がH形鋼の凹部14aに進入可能となっている場合は、第2の区画8b内で耐火被覆材15を押圧する処理が困難になる。
【0042】
そこで、柱1は、第2の区画8bに臨む配置とされる凹部14aを、ラス16により塞いだ構成としてある。凹部14aをラス16で塞ぐ構成は、たとえば、凹部14aの両側のフランジ12の間に、柱1の長手方向に設定された間隔で配置された複数の力骨17を取り付け、この力骨17に、第2の側部9bの外形に沿う位置に配置したラス16を取り付けることで実現すればよい。
【0043】
なお、ラス16は、
図2(a)では平らな形状のものとして示したが、平ラスに限定されるものではなく、こぶラスや波形ラスなどの平ラス以外のラスを用いてもよいことは勿論である。また、柱1の凹部14aを塞ぐようにラス16を取り付けることができれば、ラス16の取り付け手法や取付構造は、図示した以外のいかなる構成を採用してもよいことは勿論である。
【0044】
この柱1の凹部14aに対するラス16の取り付けは、柱1を機械式駐車装置の建屋の建設現場に搬入する前に工場などで行ってもよいし、建設現場で行ってもよい。また、建設現場でラス16の取り付けを行う場合は、凹部14aに対する取り付け作業が実施可能な期間であれば、柱1の立設前と立設後のいずれに行ってもよい。
【0045】
なお、柱1がH形鋼製の場合について説明したが、柱1がI形鋼製や溝形鋼製である場合にも、形鋼の凹部が第1の区画8aや第2の区画8bに臨む配置とされる場合は、該凹部をラス16で塞ぐようにすればよい。
【0046】
次に、本実施形態の耐火被覆施工方法を実施する際に使用する器具について説明する。本実施形態の耐火被覆施工方法では、
図4(a)に示す如き閉止具18と、
図4(b)に示す如き押え具としてのこて19とを使用する。
【0047】
閉止具18は、
図2(a)に二点鎖線で示すように、第1の区画8aと第2の区画8bとの境界となる個所(
図2(b)参照)に配置して第1の区画8a側に露出させる端面18aを備える器具である。閉止具18は、たとえば、
図4(a)に示すように、一方の面が閉止具18における端面18aとなる矩形の板状部材20と、板状部材20の他方の面に設けられた持ち手21とを備えた構成とされている。
【0048】
板状部材20は、第2の開口部11bから第2の区画8bへ挿入し、
図2(a)に二点鎖線で示すように、第1の区画8aと第2の区画8bとの境界となる個所(
図2(b)参照)に、第1の区画8aと第2の区画8bとを仕切る姿勢で設置するためのものである。そのため、板状部材20は、第2の開口部11bから前記所定の設置個所まで第2の区画8b内を通すことが可能な範囲内で、長辺方向の寸法が、前記設置個所の上下に配置されている胴縁4同士の間隔にできるだけ近い寸法に設定され、短辺方向の寸法が、前記設置個所の両側に配置されている柱1と外壁7との間隔にできるだけ近い寸法に設定されている。
【0049】
なお、持ち手21の形状にもよるが、板状部材20は、前記第2の区画8bを通すときには、前記設置個所に配置するときの姿勢から傾けてもよいことは勿論である。したがって、板状部材20の長辺方向の寸法は、第2の区画8bの上下方向寸法が最小となる部分の寸法に対応させてもよいが、それに制限されるものではない。同様に、板状部材20の短辺方向の寸法は、第2の区画8bの建屋内外方向の寸法が最小となる部分の寸法に対応させてもよいが、それに制限されるものではない。
【0050】
持ち手21は、本実施形態では、一方向に延びる棒状の部材として、長手方向の一端側が板状部材20に取り付けられた構成としてある。持ち手21の長さは、第2の開口部11bから、板状部材20の前記所定の設置個所までの距離よりも長く設定されている。
【0051】
以上の構成としてある閉止具18は、図示しない作業者が、持ち手21を持った状態で、板状部材20を、第2の開口部11bから第2の区画8bへ挿入し、前記所定の設置個所へ配置する操作を行うことができる。前記所定の設置個所へ配置された閉止具18は、端面18aにより、第1の区画8aにおける第2の区画8bとの境界となる個所(
図2(b)参照)を仕切ることができる。
【0052】
なお、作業者が持ち手21を持った状態で、板状部材20を第2の開口部11bから第2の区画8bへ挿入し、前記所定の設置個所へ配置する操作を行うことができれば、持ち手21は、図示した以外の任意の形状としてもよいことは勿論である。
【0053】
こて19は、
図4(b)に示すように、矩形の板状部材22と、板状部材22の片面側に設けられた持ち手23とを備えた構成とされている。
【0054】
板状部材22は、長辺方向の寸法が、各区画8a,8bの上下方向寸法が最小となる部分の寸法よりも小さく設定され、短辺方向の寸法が、各区画8a,8bの建屋内外方向の寸法が最小となる部分の寸法よりも小さく設定されている。
【0055】
持ち手23は、本実施形態では、コの字形の棒状の部材として、両端側が板状部材22に取り付けられた構成としてある。
【0056】
以上の構成としてあるこて19は、図示しない作業者が、持ち手23を持った状態で、各開口部11a,11bから対応する各区画8a,8bへ挿入することができる。更に、こて19は、各区画8a,8b内では、板状部材22を、建屋内外方向に延びる鉛直面に沿う姿勢に配置することができ、この姿勢のまま、板状部材22を開口部11a,11bと近接離反する方向へ移動させる操作を行うことができる。
【0057】
なお、作業者が持ち手23を持った状態で、板状部材22を各区画8a,8b内で前記所定の方向へ移動させる操作を行うことができれば、持ち手23は、図示した以外の任意の形状としてもよいことは勿論である。
【0058】
本実施形態の耐火被覆施工方法を実施する場合は、第1の区画8aへの耐火被覆材15の吹き込みを複数回に分けて行う回数と、第2の区画8bへの耐火被覆材15の吹き込みを複数回に分けて行う回数とが設定される。なお、この耐火被覆材15の各区画8a,8bへの吹き込みの回数の設定は、各区画8a,8bへ耐火被覆材15の吹き込みを開始する前であれば、いつ行ってもよい。なお、耐火被覆材15の各区画8a,8bへの吹き込みの回数は、各区画8a,8bへ耐火被覆材15を施工する途中で、現場の状況などに応じて適宜調整してもよい。
【0059】
本実施形態の耐火被覆施工方法では、先ず、閉止具設置工程を行う。
【0060】
閉止具設置工程では、閉止具18を用いて、
図2(a)に二点鎖線で示すように、板状部材20を、第2の開口部11bから第2の区画8bへ挿入して、第1の区画8aと第2の区画8bとの境界となる個所に設置する。この状態で、閉止具18は、持ち手21をクランプなどの図示しない固定手段を介して柱1やその他の固定部に取り外し可能に固定する。これにより、閉止具18は仮設される。また、空間部8は、端面18aにより、第1の区画8aと第2の区画8bとに分割される。
【0061】
閉止具18の板状部材20の設置が終了すると、第1の区画8aに耐火被覆材15を充填する第1の充填工程を開始する。
【0062】
第1の充填工程では、先ず、
図5(a)に示すように、第1の開口部11aから、第1の区画8aへ吹付け用の耐火被覆材15の1回目の吹き込み処理を行う。この耐火被覆材15の吹き込みは、従来と同様に、図示しないポンプにより圧送される耐火被覆材15を図示しないノズルから噴射することで行うようにすればよい。
【0063】
また、1回目の吹き込み処理で第1の区画8aへ吹き込む耐火被覆材15の量は、設計情報等から予め判断した第1の区画8aの容積を、第1の区画8aについて設定された耐火被覆材15の吹き込みの回数で割って得られる値に対応する量とすればよい。
【0064】
このように第1の区画8aに所定の量の耐火被覆材15が吹き込まれると、耐火被覆材15は、ノズルから噴射された勢いにより、その大部分が第1の区画8aにおける第1の開口部11aから離反する端部側に付着する。
【0065】
この際、第1の区画8aにおける第2の区画8bとの境界となる個所には、閉止具18の端面18aを形成する板状部材20が配置されていて、第1の区画8aと第2の区画8bとの境界はほとんど板状部材20によって閉止されている。たとえ第1の区画8aから第2の区画8bに連通する隙間があるとしても、その隙間は、板状部材20の外周側に限定されている。
【0066】
そのため、第1の区画8aに吹き込まれた耐火被覆材15が第2の区画8bに吹き抜ける現象は、従来のように前記境界に板状部材20が配置されていない場合に比して大幅に抑制される。
【0067】
したがって、1回目の吹き込み処理では、第1の区画8aに吹き込まれた耐火被覆材15は、ほぼ全量を第1の区画8aの内部に付着させることができる。
【0068】
1回目の吹き込み処理が終了すると、第1の区画8aでは、
図5(b)に示すように、こて19を用いて、第1の区画8a内に付着した耐火被覆材15を、第1の開口部11aから離反する方向へ押圧する1回目の押圧処理を行う。この押圧処理は、第1の区画8aに吹き込まれた耐火被覆材15の硬化が生じる前に行うようにすればよい。
【0069】
これにより、耐火被覆材15は、第1の区画8aにおける第1の開口部11aから離反する端部側に充填される。
【0070】
この際、こて19により押圧された耐火被覆材15は、成形されると共に圧密されるので、自重による下方への自由な流動が防止される。しかも、1回目の吹き込み処理で第1の区画8aに吹き込まれた耐火被覆材15の自重は、第1の区画8a全体に充填される耐火被覆材15の重量に比して少ないため、耐火被覆材15の自重による下方への流動自体が、従来に比して抑制される。このため、1回目の押圧処理では、第1の区画8aの上部まで耐火被覆材15を充填することができる。
【0071】
1回目の押圧処理が終了した後は、第1の区画8aに対し、1回目の吹き込み処理と同様の耐火被覆材15の吹き込み処理と、1回目の押圧処理と同様の押圧処理とを、設定された回数で交互に繰り返して行う。
【0072】
この際、2回目以降の吹き込み処理を行うときには、それ以前に行われた吹き込み処理と押圧処理とにより、第1の区画8aにおける第1の開口部11aから離反する端部側に、圧密された耐火被覆材15の層が形成されている。このため、耐火被覆材15が第1の区画8aから第2の区画8bへ吹き抜ける現象は、より確実に防止される。
【0073】
したがって、2回目以降の吹き込み処理では、第1の区画8aに吹き込まれた耐火被覆材15は、吹き抜けを生じさせることなく第1の区画8aの内部に付着させることができる。この第1の区画8aの内部に付着した耐火被覆材15は、続いて行う押圧処理により、1回目の押圧処理と同様に、第1の区画8aにおける第1の開口部11aから離反する端部側へ、圧密しながら充填することができる。
【0074】
なお、最後の回の吹き込み処理を行うときには、第1の区画8aにて第1の開口部11aから離反する側の領域に既に耐火被覆材15が充填されている。よって、最後の回の吹き込み処理では、第1の開口部11aから耐火被覆材15を吹き込むべき距離が短くなっている。そのため、最後の回の吹き込み処理では、それ以前の回の吹き込み処理に比して、耐火被覆材15の充填状態の管理が容易なため、最後の回の吹き込み処理の後は、こて19を用いる1回目の押圧処理と同様の押圧処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0075】
以上により、
図5(c)に示すように、第1の区画8aには、耐火被覆材15が充填される。耐火被覆材15が第1の開口部11aからはみ出る程度まで充填されると、本実施形態の耐火被覆施工方法では、第1の充填工程を終了する。
【0076】
第1の充填工程が終了した後は、仮設されていた閉止具18を取り外して撤去する閉止具撤去工程を行う。これにより、空間部8では、第1の区画8aと第2の区画8bとの境界に配置されていた板状部材20が除去される。
【0077】
本実施形態の耐火被覆施工方法では、閉止具撤去工程が終了すると、第2の区画8bに耐火被覆材15を充填する第2の充填工程を開始する。
【0078】
第2の充填工程では、先ず、
図6(a)に示すように、第2の開口部11bから、第2の区画8bへ耐火被覆材15の1回目の吹き込み処理を行う。この吹き込み処理は、第1の区画に対する1回目の吹き込み処理と同様に行うようにすればよい。
【0079】
また、1回目の吹き込み処理で第2の区画8bへ吹き込む耐火被覆材15の量は、設計情報等から予め判断した第2の区画8bの容積を、第2の区画8bについて設定された耐火被覆材15の吹き込みの回数で割って得られる値に対応する量とすればよい。
【0080】
このように第2の区画8bに所定の量の耐火被覆材15が吹き込まれると、耐火被覆材15は、ノズルから噴射された勢いにより、その大部分が第2の区画8bにおける第2の開口部11bから離反する端部側に付着する。
【0081】
この際、第1の区画8aには、既に耐火被覆材15が充填されているため、第2の区画8bに吹き込まれた耐火被覆材15は、吹き抜けを生じさせることなく第2の区画8bの内部に付着させることができる。
【0082】
1回目の吹き込み処理が終了すると、第2の区画8bでは、
図6(b)に示すように、こて19を用いて、第2の区画8b内に付着した耐火被覆材15を、第2の開口部11bから離反する方向へ押圧する1回目の押圧処理を行う。この押圧処理は、第1の区画8aにおける押圧処理と同様に行うようにすればよい。
【0083】
この際、柱1には凹部14aを塞ぐラス16が取り付けてあるため、耐火被覆材15を押圧するときには、耐火被覆材15が柱1の凹部14aに進入することはなく、よって、耐火被覆材15に押圧による力を確実に作用させることができる。
【0084】
これにより、耐火被覆材15は、第2の区画8bにおける第2の開口部11bから離反する端部側に充填される。この第2の区画8bにおける押圧処理によっても、第1の区画8aにおける押圧処理と同様に、耐火被覆材15の自重による下方への流動を防止して、第2の区画8bの上部まで耐火被覆材15を充填することができる。
【0085】
1回目の押圧処理が終了した後は、第2の区画8bに対し、1回目の吹き込み処理と同様の耐火被覆材15の吹き込み処理と、1回目の押圧処理と同様の押圧処理とを、設定された回数で交互に繰り返して行う。それぞれの処理は、第1の区画に対する処理と同様に行うようにすればよい。
【0086】
以上により、
図6(c)に示すように、第2の区画8bには、耐火被覆材15が充填される。よって、本実施形態の耐火被覆施工方法では、第2の充填工程を終了する。
【0087】
その後は、
図6(d)に示すように、柱1の各フランジ12とウェブ13における建屋の内側に向けて露出している個所と、外壁7の内面における建屋の内側に向けて露出している個所に、耐火被覆材15を、柱1や外壁7に所望する耐火性能に必要とされる厚さ、密度で付着させる処理を行う。
【0088】
以上により、機械式駐車装置の建屋における柱1の周囲と、外壁7の内面全面に耐火被覆が形成される。
【0089】
このように、本実施形態の耐火被覆施工方法によれば、機械式駐車装置の建屋にて、柱1と外壁7との間に空間部8が存在しているコーナ部について、耐火被覆材15の空間部8への充填による耐火被覆を施工することができる。
【0090】
また、コーナ部の空間部8に耐火被覆材15を充填するときには、耐火被覆材15が吹き抜けることを防止できるため、耐火被覆の施工に使用する耐火被覆材15の量は、従来に比して、コーナ部の空間部8の容積に近い量とすることができる。
【0091】
更に、本実施形態の耐火被覆施工方法は、第1の区画8aと第2の区画8bにそれぞれ耐火被覆材15を充填するときに、耐火被覆材15の吹き込み処理を複数回に分けて行い、吹き込み処理を一回行うと、耐火被覆材15の押圧処理を行うようにしてあるため、耐火被覆材15が自重により下方へ流動することを防止できる。このため、充填した耐火被覆材15の流動によって空間部の上端側に充填不足の部分が生じることを防止でき、このことによっても、耐火被覆の施工に使用する耐火被覆材15の量は、従来に比して、コーナ部の空間部8の容積に近い量とすることができる。
【0092】
しかも、従来生じていた耐火被覆材15の吹き抜けや、流動に伴う充填不足といった現象は、空間部8のサイズや、耐火被覆材15の吹き込みを行うときの条件など、施工現場ごとに異なる影響を受ける。そのため、従来は、施工現場に応じた耐火被覆材15の使用量の管理を精度よく実施することが難しかった。これに対し、本実施形態の耐火被覆施工方法は、前記吹き抜けや流動に伴う充填不足の現象をほぼ考慮しなくてよいので、耐火被覆材15の使用量は、施工現場に応じてより精度よく管理することができる。このため、本実施形態の耐火被覆施工方法は、従来に比して施工性の向上化を図る効果も得ることができる。
【0093】
本実施形態では、第1の区画8aに対して耐火被覆材15を充填する第1の充填工程の後、空間部8から閉止具18を撤去し、その後、第2の区画8bに対して耐火被覆材15を充填する第2の充填工程を開始するようにしてあるので、閉止具18が空間部に残ることはない。よって、閉止具18は、板状部材20の材質の選択性を高めることができて、閉止具18の製作を容易なものとすることができる。
【0094】
なお、本発明は、前記実施形態のみに限定されるものではない。
【0095】
たとえば、第1の区画8a対して耐火被覆材15の吹き込み処理を行う回数と、第2の区画8bに対して吹き込み処理を行う回数とは、同数であってもよいし、異なっていてもよい。
【0096】
更に、第1の区画8aと第2の区画8bに対して耐火被覆材15の吹き込み処理を行う回数は、それぞれ1回としてもよい。この場合は、第1の区画8aと第2の区画8bとの境界に設置した閉止具18による吹き抜けの防止の効果と、それに伴う耐火被覆材15の使用量を従来に比してコーナ部の空間部8の容積に近い量とすることができるという効果を得ることができる。
【0097】
閉止具18は、第1の区画8aと第2の区画8bの境界に配置する板状部材20を、第2の充填工程を行う前に撤去しなくてもよい。この場合、閉止具18は、耐火被覆に埋め込まれることになるので、板状部材20のみの構成とすればよい。このように撤去を行わない閉止具18は、機械式駐車装置の建屋を建設する際に、柱1あるいは胴縁4に取り付けておくようにしてもよい。
【0098】
閉止具18は、第1の区画8aと第2の区画8bとの境界となる個所(
図2(b)参照)に配置可能な端面18aを備えていれば、たとえば、直方体形状、三角柱形状、半円柱形状など、図示した以外の形状や構成を備えていてもよい。これらの閉止具18は、金属製、樹脂製、木製、段ボールのような紙製など、材質は特に限定されない。また、閉止具18は、中空構造とされていてもよいし、発泡樹脂や段ボールなどによる中実構造とされていてもよい。
【0099】
更に、閉止具18は、弾性を備える材質により形成した直方体形状のものとして、柱1の第2の側部9bと、第2の側壁10bの内面との間に押し込んで配置することで、第1の区画8aと第2の区画8bとの境界となる個所に第1の区画8a側に露出する端面を形成するものとしてもよい。
【0100】
また、閉止具18の端面18aは、平らな面でなくてもよい。
【0101】
前記実施形態では、押え具としては、こて19を例示した。これに対し、押え具は、耐火被覆材15の吹き込み処理によって、第1の区画8aや第2の区画の内部に付着した耐火被覆材15を、対応する開口部11a,11bから離反する方向へ押圧する押圧処理を行うことができる形状、剛性、強度を備えていれば、こて19以外の任意の形状や構造のものを採用してもよい。たとえば、押え具は、角パイプや角柱などを使用してもよい。また、押え具の材質は、金属製、樹脂製、木製、段ボールのような紙製など、さまざまな材質を採用してよい。
【0102】
柱1は、平面形状が正方形と長方形のいずれの方形であってもよい。また、柱1は、形鋼製とする例を示したが、中空の角管状の柱1や、中実の角棒状の柱1であってもよい。なお、柱1の平面形状は、角が丸められていてもよい。
【0103】
柱1におけるラス16が取り付けられている側部側に、先に耐火被覆材15を充填する第1の区画8aを形成するようにしてもよい。
【0104】
本発明の耐火被覆施工方法は、
図2(a)に示したと同様に、柱1と外壁7との間に空間部8がある構成のコーナ部を備えた建築物であれば、機械式駐車装置の建屋以外のいかなる建築物に適用してもよい。
【0105】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。