特許第6817055号(P6817055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6817055車両用電力供給システム及び電動発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817055
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】車両用電力供給システム及び電動発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20210107BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20210107BHJP
   B60L 53/24 20190101ALI20210107BHJP
   B60L 58/20 20190101ALI20210107BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20210107BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
   B60L50/60
   B60L53/24
   B60L58/20
   H02M3/155 H
   H02J7/00 P
   H02J7/00 303C
   H02J7/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-245865(P2016-245865)
(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公開番号】特開2018-102038(P2018-102038A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】北島 康彦
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−025518(JP,A)
【文献】 特開平07−087616(JP,A)
【文献】 特開2006−060912(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0217973(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102216112(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/44−7/98
H02M 3/00− 3/44
B60L 1/00− 3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
50/00−58/40
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動系(1)に設けられる多相交流のモータジェネレータ(110)と、
前記モータジェネレータ(110)へ電力を供給可能な高電圧バッテリ(21)と、
前記モータジェネレータ(110)と前記高電圧バッテリ(21)との間に接続され、
前記モータジェネレータ(110)の駆動及び発電を制御するインバータ(130)と、
前記モータジェネレータ(110)と比較して定格電圧が低い低電圧負荷へ電力を供給
可能な低電圧バッテリ(23)と、
を備える車両用電力供給システム(30)であって、
前記インバータ(130)は、前記モータジェネレータ(110)の各相のコイルとそれぞれ接続される複数のアーム回路(135a、135b、135c)を含み、
前記低電圧バッテリ(23)の高電圧側は、前記アーム回路(135a、135b、135c)と前記モータジェネレータ(110)のコイル(111u、111v、111w)との接続部のうちの少なくとも一つと電気的に接続され、
前記インバータ(130)及び前記モータジェネレータ(110)のコイルによって、降圧回路及び昇圧回路のうちの少なくとも一方が形成され
前記低電圧バッテリ(23)の高電圧側は、前記アーム回路(135a、135b、135c)と前記モータジェネレータ(110)のコイル(111u、111v、111w)との接続部と、電流の向きを双方向に切り替え可能な双方向スイッチ(155a、155b、155c)を介して電気的に接続され、
前記双方向スイッチ(155a、155b、155c)により電流の向きが切り替えられることによって、前記降圧回路が形成される状態と前記昇圧回路が形成される状態とが切り替えられる
車両用電力供給システム。
【請求項2】
前記低電圧バッテリ(23)の高電圧側は、前記アーム回路(135a、135b、135c)と前記モータジェネレータ(110)のコイル(111u、111v、111w)との接続部の各々と電気的に接続され、
前記低電圧バッテリ(23)は、前記モータジェネレータ(110)へ電力を供給可能である
請求項1に記載の車両用電力供給システム。
【請求項3】
車両の駆動輪を駆動するための動力を出力可能、かつ、前記車両の減速時に前記駆動輪の運動エネルギを用いて発電可能な多相交流のモータジェネレータ(110)と、
前記モータジェネレータ(110)へ電力を供給可能な高電圧バッテリ(21)と前記モータジェネレータ(110)との間に接続され、前記モータジェネレータ(110)の駆動及び発電を制御するインバータ(130)と
を備える電動発電装置(100)であって、
前記インバータ(130)は、前記モータジェネレータ(110)の各相のコイル(111u、111v、111w)とそれぞれ接続される複数のアーム回路(135a、135b、135c)を含み、
前記アーム回路(135a、135b、135c)と前記モータジェネレータ(110)のコイル(111u、111v、111w)との接続部のうちの少なくとも一つは、前記モータジェネレータ(110)と比較して定格電圧が低い低電圧負荷へ電力を供給可能な低電圧バッテリ(23)の高電圧側と電気的に接続され、
前記インバータ(130)及び前記モータジェネレータ(110)のコイル(111u、111v、111w)によって、降圧回路及び昇圧回路のうちの少なくとも一方が形成され
前記低電圧バッテリ(23)の高電圧側は、前記アーム回路(135a、135b、135c)と前記モータジェネレータ(110)のコイル(111u、111v、111w)との接続部と、電流の向きを双方向に切り替え可能な双方向スイッチ(155a、155b、155c)を介して電気的に接続され、
前記双方向スイッチ(155a、155b、155c)により電流の向きが切り替えられることによって、前記降圧回路が形成される状態と前記昇圧回路が形成される状態とが切り替えられる
電動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電力供給システム及び電動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費の向上や排気ガスの低減を目的として、エンジンの出力のアシスト及び車両の減速時における回生発電を実行可能なモータジェネレータを搭載するハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)が知られている。
【0003】
このようなハイブリッド自動車では、モータジェネレータの定格電圧に対応する高電圧バッテリが設けられる。またモータジェネレータと比較して定格電圧が低いスタータモータ等の低電圧負荷へ電力を供給可能な低電圧バッテリが設けられる。また高電圧バッテリと低電圧バッテリとの間での送電を実行するための電圧調整装置として、DCDCコンバータが設けられる。
【0004】
特許文献1では、エンジンとトルク授受可能に連結された発電電動機と、発電電動機に電力授受可能に接続される高圧蓄電装置と、低圧電気負荷に給電する低圧蓄電装置と、両蓄電装置を双方向電力授受可能に接続するDCDCコンバータとを備える二電源系を有するハイブリッド自動車の駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−176704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで特許文献1に開示されているDCDCコンバータは、降圧機能及び昇圧機能の双方を有する。よって高電圧バッテリと低電圧バッテリとの間での双方向の送電を実行可能である。DCDCコンバータが有する降圧機能及び昇圧機能は、磁気エネルギを蓄積及び放出するコイルを含む回路によって実現される。
【0007】
ここで磁気エネルギを蓄積及び放出するコイルは比較的大型であるため、このDCDCコンバータを備える駆動装置が大型化するという課題がある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、駆動系の小型化を実現し得る車両用電力供給システム及び電動発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、駆動系に設けられる多相交流のモータジェネレータと、高電圧バッテリと、モータジェネレータと高電圧バッテリとの間に接続されるインバータと、低電圧バッテリとを備える車両用電力供給システムであって、インバータは、モータジェネレータの各相のコイルとそれぞれ接続される複数のアーム回路を備え、低電圧バッテリの高電圧側は、アーム回路とモータジェネレータのコイルとの接続部と電気的に接続され、インバータ及びモータジェネレータのコイルによって、降圧回路又は昇圧回路が形成される車両用電力供給システムが提供される。
【0010】
また本発明によれば、多相交流のモータジェネレータと、高電圧バッテリとモータジェネレータとの間に接続されるインバータとを備える電動発電装置であって、インバータは、モータジェネレータの各相のコイルとそれぞれ接続される複数のアーム回路を備え、アーム回路とモータジェネレータのコイルとの接続部は、低電圧バッテリの高電圧側と電気的に接続され、インバータ及びモータジェネレータのコイルによって、降圧回路又は昇圧回路が形成される電動発電装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動系の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態における駆動系の概略構成図である。
図2】従来の駆動系の概略構成図である。
図3】従来の電力供給システムの構成図である。
図4】本実施の形態における電力供給システムの構成図である。
図5】インバータ及びモータジェネレータのコイルによって形成される降圧回路及び昇圧回路について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態における駆動系1の概略構成図である。駆動系1は、例えばハイブリッド自動車に設けられる。駆動系1は、エンジン11、動力伝達系15、駆動輪19、スタータモータ25、電動発電装置としてのBRM(Boost Recuperation Machine)100、高電圧バッテリ21、低電圧バッテリ23及び制御装置200を備える。
【0015】
このような駆動系1では、BRM100と、高電圧バッテリ21と、低電圧バッテリ23と、制御装置200とを備える電力供給システム30が構成される。電力供給システム30は、駆動系1における電力の供給に関するシステムである。
【0016】
エンジン11は、ガソリン等を燃料として動力を出力する内燃機関である。エンジン11の出力軸であるクランクシャフトは、動力伝達系15の入力側と接続される。動力伝達系15の出力側は、駆動輪19と接続される。
【0017】
動力伝達系15は、自動変速機構としてのCVT(Continuously Variable Transmission)や動力を伝達するための動力伝達軸を備えて構成される。動力伝達系15は、エンジン11から出力される動力について、回転数を変換して駆動輪19に伝達する。
【0018】
BRM100は、駆動輪19を駆動する駆動モータとしての機能と、車両の減速時に駆動輪19の運動エネルギを用いて回生発電を行う発電機としての機能とを有する。
【0019】
なおBRM100は、本発明に係る電動発電装置に相当する。BRM100は、多相交流のモータジェネレータ(MG)110と、モータジェネレータ110の駆動及び発電を制御するインバータ(INV)130とを備える。モータジェネレータ110がインバータ130によって制御されることによって、BRM100が有する上記の各機能が実現される。
【0020】
モータジェネレータ110は、インバータ130を介して高電圧バッテリ21と接続されており、高電圧バッテリ21から供給される電力を用いて駆動する。またモータジェネレータ110の出力軸は、エンジン11のクランクシャフトと接続される。モータジェネレータ110から出力される動力は、エンジン11のクランクシャフトを介して駆動輪19に伝達される。
【0021】
BRM100を駆動モータとして機能させる場合、インバータ130は、高電圧バッテリ21から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ110を駆動する。
【0022】
車両の減速時には、駆動輪19の運動エネルギは、エンジン11のクランクシャフトを介してモータジェネレータ110の出力軸に伝達される。
【0023】
BRM100を発電機として機能させる場合、インバータ130は、モータジェネレータ110で発電された交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリ21に充電する。
【0024】
高電圧バッテリ21は、高電圧の電力供給源である。高電圧バッテリ21の定格電圧は、具体的には確実な絶縁が要求される程度に高い電圧と比較して低い略60V以下の電圧であり、例えば48Vである。高電圧バッテリ21は、インバータ130を介してモータジェネレータ110と接続され、モータジェネレータ110に電力を供給可能である。
【0025】
スタータモータ25は、エンジン11を始動させるためのモータである。スタータモータ25は、低電圧バッテリ23と接続されており、低電圧バッテリ23から供給される電力を用いて駆動される。スタータモータ25の出力軸は、エンジン11のクランクシャフトに接続される。
【0026】
スタータモータ25から出力される動力は、エンジン11のクランクシャフトに伝達される。それにより、エンジン11の始動が実現される。スタータモータ25は、BRM100に設けられるモータジェネレータ110と比較して定格電圧が低い低電圧負荷に相当する。
【0027】
低電圧バッテリ23は、低電圧の電力供給源である。低電圧バッテリ23の定格電圧は、高電圧バッテリ21の定格電圧と比較して低い電圧であり、例えば12Vである。低電圧バッテリ23は、モータジェネレータ110と比較して定格電圧が低い低電圧負荷と接続され、低電圧負荷に電力を供給可能である。
【0028】
具体的には低電圧バッテリ23は、上述したように、低電圧負荷としてのスタータモータ25と接続され、スタータモータ25へ電力を供給可能である。なお低電圧バッテリ23は、その他の低電圧負荷に相当する車両に搭載される各種装置とも接続され得る。
【0029】
本実施の形態における電力供給システム30では、低電圧バッテリ23はBRM100を介して高電圧バッテリ21と接続される。具体的には低電圧バッテリ23の高電圧側がBRM100におけるインバータ130とモータジェネレータ110との接続部と電気的に接続される。
【0030】
それによりBRM100によって降圧回路及び昇圧回路のうちの少なくとも一方が形成される。BRM100によって降圧機能及び昇圧機能のうちの少なくとも一方が実現される。なお電力供給システム30における各装置間での電気的な接続の詳細については、後述する。
【0031】
このように本実施の形態における電力供給システム30によれば、二電源系を有するハイブリッド自動車に設けられ得るDCDCコンバータの機能をBRM100によって実現することができる。よって電力供給システム30にDCDCコンバータを設けることなく、高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電を行うことができる。
【0032】
例えば高電圧バッテリ21の出力電圧を降圧して低電圧バッテリ23へ電力を供給することによって、低電圧バッテリ23を充電することができる。車両においてDCDCコンバータが占める比較的大きな空間を省略することができるので、車両において装置が搭載される空間を省スペース化し、駆動系の小型化を実現することができる。
【0033】
制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。
【0034】
制御装置200は、電力供給システム30を構成する各装置の動作を制御する。制御装置200は、具体的にはBRM100のスイッチング素子の動作を制御することによって、高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電、並びに、モータジェネレータ110の駆動及び発電を制御する。
【0035】
また制御装置200は、各装置から出力された情報を受信する。例えば高電圧バッテリ21及び低電圧バッテリ23には各バッテリの残存容量SOCを検出する検出装置がそれぞれ含まれ、制御装置200は検出装置から出力される各バッテリの残存容量SOCの検出結果を受信してもよい。
【0036】
また制御装置200は、他の制御装置から出力される各種指令値を示す情報を受信してもよい。制御装置200と各装置との通信は、例えばCAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0037】
ここで、本発明の意義をより明確にするために、図2及び図3を参照して、従来の駆動系8について説明する。
【0038】
図2は、従来の駆動系8の概略構成図である。駆動系8は、本実施の形態の駆動系1と比較して、DCDCコンバータ61を備える点で異なる。
【0039】
DCDCコンバータ61は、高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電を実行する。またDCDCコンバータ61は、降圧機能及び昇圧機能の双方を有する。よって高電圧バッテリと低電圧バッテリとの間での双方向の送電を実行することができる。例えば高電圧バッテリ21の出力電圧を降圧して低電圧バッテリ23へ電力を供給し、低電圧バッテリ23を充電することができる。
【0040】
DCDCコンバータ61は、複数のスイッチング素子及びコイルを含む回路を備える。DCDCコンバータ61の各スイッチング素子の動作は、制御装置900によって制御される。低電圧バッテリ23はDCDCコンバータ61を介して高電圧バッテリ21と接続される。
【0041】
図3は、従来の電力供給システム60の構成図である。DCDCコンバータ61の一側は低電圧バッテリ23と接続される。一方でDCDCコンバータ61の他側は、高電圧バッテリ21と接続される。このように低電圧バッテリ23は、DCDCコンバータ61を介して高電圧バッテリ21と接続される。
【0042】
DCDCコンバータ61は、いわゆるチョッパ方式の回路を備える。回路は複数のスイッチング素子及びコイルを備える。各スイッチング素子が制御装置900により制御されることによって、降圧機能及び昇圧機能を実現することができる。それにより高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電を実行することができる。
【0043】
高電圧バッテリ21は、BRM800のインバータ130に接続される。またインバータ130の複数のアーム回路は、モータジェネレータ110の各相のコイルにそれぞれ接続される。このようにインバータ130は、モータジェネレータ110と高電圧バッテリ21との間に接続される。
【0044】
電力供給システム60では、低電圧バッテリ23の高電圧側は、BRM800におけるインバータ130とモータジェネレータ110との接続部と電気的に接続されない。
【0045】
電力供給システム60では、高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電を実行するために、DCDCコンバータ61が設けられる。またDCDCコンバータ61において形成される回路に設けられるコイルは、上述したように、比較的大型である。
【0046】
よって車両においてDCDCコンバータ61の占める空間が大きくなり、駆動系8全体が大型化するという問題がある。
【0047】
また制御装置900は、BRM800及びDCDCコンバータ61に対して動作指示をそれぞれ出力することによって、高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電、並びに、モータジェネレータ110の駆動及び発電を制御する。
【0048】
これに対し本実施の形態の制御装置200は、BRM100に動作指示を出力することによって、高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電、並びに、モータジェネレータ110の駆動及び発電を制御することができる。よって本実施の形態によれば、高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電、並びに、モータジェネレータ110の駆動及び発電の制御についての応答性を向上させることができる。この場合、低電圧バッテリ23の充電をより迅速に行うことができるので、低電圧バッテリ23の容量を小型化することができる。
【0049】
続いて、図4及び図5を参照して、本実施の形態における電力供給システム30について、より詳細に説明する。
【0050】
図4は、本実施の形態における電力供給システム30の構成図である。以下では、理解をより容易にするために、モータジェネレータ110が三相交流である例について説明するが、BRM100に設けられるモータジェネレータ110は多相交流であればよく、相数は特に限定されない。例えばBRM100に設けられるモータジェネレータ110は五相交流であってもよい。
【0051】
電力供給システム30において高電圧バッテリ21は、BRM100のインバータ130と接続される。またインバータ130は複数のアーム回路を備え、モータジェネレータ110は各相のコイルを備える。インバータ130の複数のアーム回路はモータジェネレータ110の各相のコイルとそれぞれ接続される。このようにインバータ130は、モータジェネレータ110と高電圧バッテリ21との間に接続される。
【0052】
インバータ130は、具体的にはモータジェネレータ110のu相、v相及びw相のコイル111u、111v及び111wとそれぞれ対応するアーム回路135a、アーム回路135b及びアーム回路135cを備える。なお以下では、コイル111u、111v及び111wを特に区別しない場合には単にコイル111と呼ぶ。またアーム回路135a、135b及び135cをそれぞれ特に区別しない場合には、単にアーム回路135と称する。
【0053】
各アーム回路135は、高電圧バッテリ21の高電圧側と接続される上アームと、高電圧バッテリ21の低電圧側と接続される下アームとを含む。また各アーム回路135について、上アーム及び下アームには、ダイオードが逆並列に接続されたスイッチング素子がそれぞれ設けられる。
【0054】
具体的にアーム回路135の上アームには、ダイオード133a、133b及び133cが逆並列に接続されたスイッチング素子131a、131b及び131cがそれぞれ設けられる。また下アームには、ダイオード134a、134bcが逆並列に接続されたスイッチング素子132a、132b及び132cがそれぞれ設けられる。
【0055】
なお、アーム回路135に設けられる各スイッチング素子として、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が適用され得る。
【0056】
モータジェネレータ110のu相のコイル111uは、アーム回路135aにおける上アームと下アームとの接続部120aと電気的に接続される。またv相のコイル111v及びw相のコイル111wはそれぞれ、アーム回路135b及び135cにおける上アームと下アームとの接続部120b及び120cと電気的に接続される。なおこれ以降、接続部120a、120b及び120cを特に区別しない場合には、単に接続部120と称する。
【0057】
モータジェネレータ110の駆動及び発電は、インバータ130のアーム回路135に設けられる各スイッチング素子の動作が制御装置200により制御されることによって、制御される。またBRM100には、高電圧バッテリ21と並列に平滑コンデンサ140が設けられてもよい。
【0058】
本実施の形態の電力供給システム30では、低電圧バッテリ23の高電圧側は、BRM100におけるインバータ130のアーム回路135とモータジェネレータ110のコイル111との接続部のうちの少なくとも一つと電気的に接続される。
【0059】
例えば低電圧バッテリ23の高電圧側は、アーム回路135aとu相のコイル111uとの接続部に相当する接続部120a、アーム回路135bとv相のコイル111vとの接続部に相当する接続部120b及びアーム回路135cとw相のコイル111wとの接続部に相当する接続部120cの各々と電気的に接続される。
【0060】
また低電圧バッテリ23の高電圧側は、接続部120a、120b及び120cと、双方向スイッチ155a、155b及び155cを介して電気的に接続される。なお以下では双方向スイッチ155a、155b及び155cをそれぞれ特に区別しない場合には、単に双方向スイッチ155と称する。
【0061】
各双方向スイッチ155は、例えばダイオードが逆並列にそれぞれ接続された2つのスイッチング素子が逆直列に接続されたスイッチであってもよい。具体的には、双方向スイッチ155a、155b及び155cは、ダイオード153a、153b及び153cが逆並列に接続されたスイッチング素子151a、151b及び151cと、ダイオード154a、154b及び154cが逆並列に接続されたスイッチング素子152a、152b及び152cとが逆直列に接続されたスイッチである。
【0062】
なお双方向スイッチ155に設けられる各スイッチング素子として、例えば、MOSFET又はIGBT等が適用され得る。また各双方向スイッチ155は、電流の向きを双方向に切り替え可能なスイッチであれば、他の構成を有してもよい。
【0063】
このような双方向スイッチ155は、BRM100に含まれ、双方向スイッチ155に設けられる各スイッチング素子の動作は制御装置200により制御される。それにより、双方向スイッチ155による電流の向きの切り替えが制御される。
【0064】
具体的には、各双方向スイッチ155において、一方のスイッチング素子がONであり他方のスイッチング素子がOFFである状態から一方のスイッチング素子がOFFであり他方のスイッチング素子がONである状態へ切り替えられることによって、電流の向きの切り替えが実現される。またBRM100には、低電圧バッテリ23と並列に平滑コンデンサ160が設けられてもよい。
【0065】
本実施の形態における電力供給システム30では、上述したように低電圧バッテリ23がBRM100を介して高電圧バッテリ21と接続されることにより、BRM100によって降圧回路及び昇圧回路のうちの少なくとも一方が形成される。具体的にはインバータ130及びモータジェネレータ110のコイル111によって、降圧回路及び昇圧回路の双方が形成される。
【0066】
図5は、インバータ130及びモータジェネレータ110のコイル111によって形成される降圧回路及び昇圧回路について説明するための説明図である。図5では、高電圧バッテリ21、インバータ130のアーム回路135a、モータジェネレータ110のコイル111u及びコイル111v、双方向スイッチ155b、並びに低電圧バッテリ23についての電気的な接続が示されている。
【0067】
高電圧バッテリ21の高電圧側は、アーム回路135aの上アームのスイッチング素子131a(上アームスイッチング素子131a)と接続される。また高電圧バッテリ21及び低電圧バッテリ23の低電圧側は、アーム回路135aの下アームのスイッチング素子132a(下アームスイッチング素子132a)と接続される。また低電圧バッテリ23の高電圧側は、双方向スイッチ155bのスイッチング素子151b(一側スイッチング素子151b)及びスイッチング素子152b(他側スイッチング素子152b)と、コイル111v及びコイル111uとを介して、アーム回路135aにおける上アームと下アームとの接続部120aと電気的に接続される。
【0068】
双方向スイッチ155bのスイッチング素子151bがONでありスイッチング素子152bがOFFであるときには、コイル111から低電圧バッテリ23の高電圧側へ向かう一方向に電流の向きが規制される。この場合、高電圧バッテリ21の出力電圧を降圧して低電圧バッテリ23へ電力を供給可能な降圧回路がアーム回路135aと、コイル111u及びコイル111vとによって形成される。
【0069】
高電圧バッテリ21から低電圧バッテリ23への送電は、降圧回路が形成される状態において実行される。高電圧バッテリ21から低電圧バッテリ23への送電は、インバータ130のアーム回路135aに設けられる各スイッチング素子の動作が制御装置200により制御されることによって実行される。スイッチング素子132aをOFFとし、スイッチング素子131aにスイッチング動作(換言すると、ONとOFFが繰り返される動作)を行わせることによって、高電圧バッテリ21の出力電圧が降圧されて低電圧バッテリ23へ電力が供給される。
【0070】
高電圧バッテリ21から低電圧バッテリ23への送電では、スイッチング素子131aがONであるときにコイル111u及びコイル111vへ磁気エネルギが蓄積され、スイッチング素子131aがOFFであるときにコイル111u及びコイル111vから磁気エネルギが放出される。
【0071】
一方、双方向スイッチ155bのスイッチング素子151bがOFFでありスイッチング素子152bがONであるときには、低電圧バッテリ23の高電圧側からコイル111へ向かう一方向に電流の向きが規制される。この場合、低電圧バッテリ23の出力電圧を昇圧して高電圧バッテリ21へ電力を供給可能な昇圧回路がアーム回路135aと、コイル111u及びコイル111vとによって形成される。
【0072】
低電圧バッテリ23から高電圧バッテリ21への送電は、昇圧回路が形成される状態において実行される。低電圧バッテリ23から高電圧バッテリ21への送電は、インバータ130のアーム回路135aに設けられる各スイッチング素子の動作が制御装置200により制御されることによって実行される。スイッチング素子131aをOFFとし、スイッチング素子132aにスイッチング動作を行わせることによって、低電圧バッテリ23の出力電圧が昇圧されて高電圧バッテリ21へ電力が供給される。
【0073】
低電圧バッテリ23から高電圧バッテリ21への送電では、スイッチング素子132aがONであるときにコイル111u及びコイル111vへ磁気エネルギが蓄積され、スイッチング素子132aがOFFであるときにコイル111u及びコイル111vから磁気エネルギが放出される。
【0074】
このように、双方向スイッチ155bによる電流の向きを切り替えることにより、アーム回路135aと、コイル111u及びコイル111vとによって降圧回路が形成される状態と昇圧回路が形成される状態とを切り替え、降圧回路及び昇圧回路の双方を形成することが可能となる。
【0075】
なおBRM100では他のコイル111によっても同様に降圧回路及び昇圧回路を形成し得る。例えば、双方向スイッチ155cによる電流の向きを切り替えることにより、アーム回路135aと、コイル111u及びコイル111wとによって降圧回路が形成される状態と昇圧回路が形成される状態とを切り替えることができる。またBRM100では他のアーム回路135によっても同様に降圧回路及び昇圧回路を形成し得る。例えば、双方向スイッチ155aによる電流の向きを切り替えることにより、アーム回路135bと、コイル111v及びコイル111uとによって降圧回路が形成される状態と昇圧回路が形成される状態とを切り替えることができる。
【0076】
またBRM100の構成から双方向スイッチ155は省略されてもよい。例えば、BRM100と低電圧バッテリ23の高電圧側との間において、一方向へのみ電流が流れ得るように構成されてもよい。そのような場合には、インバータ130のアーム回路135と、モータジェネレータ110のコイル111とによって降圧回路及び昇圧回路のうちのいずれか一方のみが形成され得る。
【0077】
また低電圧バッテリ23の高電圧側をアーム回路135とモータジェネレータ110のコイル111との接続部の各々と電気的に接続することによって、低電圧バッテリ23を各相のコイル111と電気的に接続することができる。この場合、低電圧バッテリ23はモータジェネレータ110へ電力を供給可能となる。ゆえに、低電圧バッテリ23に蓄えられた電力を用いてモータジェネレータ110を駆動することができる。
【0078】
具体的には、スイッチング素子152a及び132b、スイッチング素子152b及び132c並びにスイッチング素子152c及び132aがONである状態のときに、電流はコイル111u及び111v、コイル111v及び111w並びにコイル111w及び111uをそれぞれ通過する。これらの各状態が順に切り替えられることによって、低電圧バッテリ23に蓄えられた電力を用いたモータジェネレータ110の駆動が実現される。
【0079】
また制御装置200は、具体的には、各種情報に基づいて電圧指令及びキャリア信号を生成し、電圧指令及びキャリア信号からPWM制御信号を生成し、PWM制御信号をBRM100へ出力することによって、BRM100のスイッチング素子の動作を制御し得る。それにより、高電圧バッテリ21と低電圧バッテリ23との間での送電、並びに、モータジェネレータ110の駆動及び発電を制御することができる。
【0080】
ここで、制御装置200は、各種情報に基づいて、BRM100を制御してもよい。例えば、制御装置200は、低電圧バッテリ23の残存容量SOCが比較的少ない場合に、高電圧バッテリ21から低電圧バッテリ23への送電を実行してもよい。それにより、低電圧バッテリ23の電力が枯渇するより前に、低電圧バッテリ23を充電することができる。
【0081】
また制御装置200は、スタータモータ25等の低電圧負荷への電力の供給量の指令値が比較的大きい場合に、高電圧バッテリ21から低電圧バッテリ23への送電を実行してもよい。それにより、低電圧バッテリ23の容量が比較的小さい場合であっても、低電圧負荷へ継続的に電力を供給することができる。
【0082】
また制御装置200は、車両の出力トルクの指令値が比較的大きい場合に、高電圧バッテリ21からモータジェネレータ110への電力の供給に加えて低電圧バッテリ23からモータジェネレータ110へ電力を供給することによって、高電圧バッテリ21及び低電圧バッテリ23の各々に蓄えられた電力を用いてモータジェネレータ110を駆動してもよい。それにより、車両の出力トルクの指令値が比較的大きい場合に、モータジェネレータ110の出力を効果的に増大させることができる。
【0083】
高電圧バッテリ21及び低電圧バッテリ23の各々に蓄えられた電力を用いてモータジェネレータ110を駆動する場合、制御装置200は、具体的には、双方向スイッチ155a、155b及び155cのスイッチング素子152a、152b及び152cがONであるときに、アーム回路135a、135b及び135cの上アームのスイッチング素子131a、131b及び131cがそれぞれONとなるように、各スイッチング素子の動作を制御する。
【0084】
また制御装置200は、高電圧バッテリ21の残存容量SOCが比較的少ない場合に、低電圧バッテリ23から高電圧バッテリ21への送電を実行してもよい。それにより、高電圧バッテリ21の電力が枯渇するより前に、高電圧バッテリ21を充電することができる。
【0085】
なお制御装置200は、車両の出力トルクの測定値やBRM100の各箇所における電流値及び電圧値の測定値等の情報に基づいてBRM100を制御してもよい。
【0086】
また低電圧バッテリ23とBRM100との間での物理的な接続については特に限定されない。具体的には、低電圧バッテリ23の高電圧側は、BRM100におけるインバータ130のアーム回路135とモータジェネレータ110のコイル111との接続部のうちの少なくとも一つと電気的に接続されていればよい。例えば、低電圧バッテリ23の高電圧側は、アーム回路135における上アームと下アームとの接続部120と物理的に接続されなくともよい。換言すると、低電圧バッテリ23の高電圧側は、アーム回路135における上アームと下アームとの間の部分又はアーム回路135とコイル111との間の部分のうち接続部120と異なる部分と物理的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 駆動系
11 エンジン
15 動力伝達系
19 駆動輪
21 高電圧バッテリ
23 低電圧バッテリ
25 スタータモータ
30 電力供給システム
100 BRM
110 モータジェネレータ(MG)
111,111u,111v,111w コイル
120,120a,120b,120c 接続部
130 インバータ(INV)
135,135a,135b,135c アーム回路
140 平滑コンデンサ
155,155a,155b,155c 双方向スイッチ
160 平滑コンデンサ
200 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5