(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電子顕微鏡の実施の形態例について、
図1〜
図6を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、説明は以下の順序で行うが、本発明は、必ずしも以下の形態に限定されるものではない。
【0013】
1.第1の実施の形態例
1−1.電子顕微鏡の構成
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる電子顕微鏡について
図1を参照して説明する。
図1は、本例のカートリッジ保持装置を示す概略構成図である。
【0014】
図1に示す電子顕微鏡100は、透過型電子顕微鏡(TEM)である。すなわち、電子顕微鏡100は、試料を透過した電子で結像して、透過電子顕微鏡像(TEM像)を取得する装置である。また、電子顕微鏡100は、後述するように、電子線(電子プローブ)S1を走査するための走査コイル105を備えており、走査透過電子顕微鏡(STEM)としても機能する。さらに、電子顕微鏡100は、試料を凍結させて観察を行うクライオ電子顕微鏡である。
【0015】
電子顕微鏡100は、鏡筒101と、電子線源102と、ライナーチューブ103と、集束レンズ104と、走査コイル105と、対物レンズ106と、中間レンズ107と、検出器109と、撮像部110とを備えている。また、電子顕微鏡100は、試料を移動可能に保持する試料移動装置1を有している。
【0016】
鏡筒101は、筒状に形成されている。鏡筒101は、振動を吸収する除振器112を介して架台111に設置されている。鏡筒101には、電子線源102、ライナーチューブ103、集束レンズ104、走査コイル105、対物レンズ106、中間レンズ107、検出器109、撮像部110及び試料移動装置1が設置されている。
【0017】
電子線源102は、電子線S1を発生させる。電子線源102は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線S1を放出する。電子線源102としては、例えば、電子銃を用いることができる。
【0018】
電子線源102に下側、すなわち電子線S1の下流側には、集束レンズ104が配置されている。集束レンズ104は、電子線源102で発生した電子線S1を集束して試料に照射するためのレンズである。
【0019】
集束レンズ104の下流側には、走査コイル105が配置されている。走査コイル105は、電子線S1を偏光させて、集束レンズ104及び対物レンズ106で集束された電子線で試料上を走査するためのコイルである。走査コイル105は、電子顕微鏡100の不図示の制御部で生成された走査信号に基づき、電子線で試料上を走査する動作を行う。電子顕微鏡100では、試料を透過した電子線の共同信号を走査信号に同期させて、画像化し、走査透過電子顕微鏡像(STEM像)を取得する。
【0020】
走査コイル105の下流側には、対物レンズ106が配置されている。対物レンズ106、試料を透過した電子線S1で結像するための初段のレンズである。電子顕微鏡100が走査透過電子顕微鏡として機能する場合には、対物レンズ106は、電子プローブを形成するためのレンズとして用いられる。対物レンズ106は、図示はしないが、上部磁極(ポールピースの上極)、および下部磁極(ポールピースの下極)を有している。対物レンズ106では、上部磁極と下部磁極との間に磁場を発生させて電子線S1を集束させる。
【0021】
また、走査コイル105と対物レンズ106の間には、凍結された試料を保持する試料移動装置1が配置されている。試料移動装置1の詳細な構成については、後述する。
【0022】
中間レンズ107は、対物レンズ106の下流側に配置されている。投影レンズ108は、中間レンズ107の下流側に配置されている。中間レンズ107および投影レンズ108は、対物レンズ106によって結像された像をさらに拡大し、撮像部110に結像させる。また、中間レンズ107、および投影レンズ108は、試料を透過した電子線を検出器109に導くこともできる。電子顕微鏡100では、対物レンズ106、中間レンズ107、および投影レンズ108によって、結像系が構成されている。
【0023】
検出器109は、試料を透過した電子線を検出する。検出器109で検出された電子線の検出信号を走査信号に同期させて画像化することで、STEM像が得られる。検出器109は、試料で所定の角度で散乱された電子を検出する暗視野STEM検出器としても機能する。
【0024】
撮像部110は、結像系によって結像された透過電子顕微鏡像(TEM像)を撮影する。撮像部110は、例えば、CCDカメラや、CMOSカメラ等のデジタルカメラである。
【0025】
ライナーチューブ103は、鏡筒101内に配置されている。ライナーチューブ103は、集束レンズ104、走査コイル105等の照射系が配置された鏡筒101内の領域と、対物レンズ106、中間レンズ107、投影レンズ108等の結像系が配置された鏡筒101内の領域と、にそれぞれ配置されている。ライナーチューブ103は、内部が電子線S1の経路となる。ライナーチューブ103の内部は、真空排気装置(図示せず)によって真空排気されて真空状態となる。ライナーチューブ103によって、電子顕微鏡100を構成している集束レンズ104と、走査コイル105と、対物レンズ106と、中間レンズ107等を真空外に配置しつつ、電子線EBの経路を真空とすることができる。
【0026】
1−2.試料移動装置1の構成例
次に、
図2及び
図3を参照して試料移動装置1の構成について説明する。
図2は、試料移動装置1を示す断面図である。
【0027】
図2に示すように、試料移動装置1は、中空の筐体10と、ゴニオステージ2と、ゴニオメータ3と、試料ホルダー5と、冷却タンク20と、供給配管8と、排出配管9とを有している。筐体10は、鏡筒101の壁面に接続されている(
図1参照)。筐体10における鏡筒101の壁面と反対側には、試料ホルダー5を挿入するための開口部10aが形成されている。筐体10には、開口部10aを密閉するカバー11が設けられている。カバー11は、筐体10に開閉可能に取り付けられている。このカバー11により、筐体10の内部空間が密封され、筐体10内の気圧を一定に保つことができる。
【0028】
筐体10には、供給ポート12と、排出ポート13が設けられている。供給ポート12及び排出ポート13は、筒状に形成されている。供給ポート12は、筐体10の上下方向の上部に配置されている。供給ポート12における筐体10とは反対側の端部の開口は、供給側封止部材14により密閉されている。供給側封止部材14には、後述する供給配管8が接続される。
【0029】
また、排出ポート13は、筐体10の上下方向の下部に配置されている。排出ポート13における筐体10とは反対側の端部の開口は、排出側封止部材15により密閉されている。排出側封止部材15には、後述する排出配管9が接続される。
【0030】
ゴニオステージ2は、円環状に形成されている。ゴニオステージ2は、鏡筒101内において、走査コイル105と対物レンズ106の間に配置されている。ゴニオステージ2には、ゴニオメータ3が設けられている。
【0031】
ゴニオメータ3は、筐体10における開口部10aとは反対側の端部に配置されている。そして、ゴニオメータ3は、筐体10とゴニオステージ2を接続するように配置される。ゴニオメータ3には、試料ホルダー5が挿入される。そして、ゴニオメータ3は、挿入された試料ホルダー5を互いに直交する3軸方向に回転及び移動可能に支持する。
【0032】
試料ホルダー5は、棒状の部材により形成されている。試料ホルダー5の先端部には、凍結された試料を保持する保持部4が設けられている。試料ホルダー5は、ゴニオメータ3に挿入されることで、筐体10内に収容される。また、試料ホルダー5をゴニオメータ3に挿入した際、保持部4は、ゴニオステージ2の開口部に配置される。また、試料ホルダー5における保持部4と反対側の端部には、冷却タンク20が設けられている。そして、保持部4に保持された試料は、冷却タンク20に充填された液体窒素により冷却される。
【0033】
冷却タンク20は、試料ホルダー5と共に筐体10内に収容されている。冷却タンク20は、容器部6と、蓋部材7とを有している。容器部6は、中空の容器状に形成されており、内部に液体窒素が充填される。また、容器部6には、口部6aが形成されている。蓋部材7は、口部6aを塞ぐようにして容器部6に着脱可能に取り付けられている。
【0034】
図3は、冷却タンク20の蓋部材7を拡大して示す断面図である。
図3に示すように、蓋部材7には、供給孔7aと、排出孔7bが設けられている。供給孔7a及び排出孔7bは、蓋部材7を貫通し、容器部6の内部と連通している。供給孔7aには、タンク側接続部材16を介して供給配管8が接続されている。そして、供給配管8は、蓋部材7の供給孔7aを介して容器部6の内部と連通する。また、排出孔7bには、タンク側接続部材18を介して排出配管9が接続されている。排出配管9は、蓋部材7の排出孔7bを介して容器部6の内部と連通する。
【0035】
タンク側接続部材16、18としては、例えば、シールテープ等の封止部材が用いられる。これにより、供給配管8と供給孔7aとの接続箇所及び、排出配管9と排出孔7bとの接続箇所の気密が保たれている。その結果、供給配管8と供給孔7aとの接続箇所及び、排出配管9と排出孔7bとの接続箇所から気化した液体窒素が筐体10内に漏れ出ることを防ぐことができる。
【0036】
また、蓋部材7の外周面には、溝部7cが形成されている。溝部7cには、Oリング21が取り付けられている。Oリング21は、口部6aの内壁に気密に当接する。このOリング21により、蓋部材7の外周面と口部6aの内壁との隙間から気化した液体窒素が漏れ出ることを防ぐことができる。
【0037】
図2に戻り、供給配管8の一端は、タンク側接続部材16を介して蓋部材7の供給孔7aに接続されている。供給配管8の他端は、ポート側接続部材17を介して供給側封止部材14に接続されている。なお、ポート側接続部材17としては、タンク側接続部材16と同様に、シールテープ等の封止部材が用いられている。これにより、供給配管8と供給側封止部材14との接続箇所から気化した液体窒素が筐体10内に漏れ出ることを防ぐことができる。
【0038】
また、供給配管8の他端には、供給口8aが設けられている。この供給口8aは、供給側封止部材14の外側に配置される。供給口8aには、液体窒素が供給される。供給口8aから供給された液体窒素は、供給配管8を通り、
図3に示すように、蓋部材7の供給孔7aを介して容器部6の内部に充填される。
【0039】
さらに、供給口8aには、キャップ23が着脱可能に取り付けられている。キャップ23は、供給配管8の供給口8aを気密的に封止する。これにより、供給配管8の供給口8aから気化した液体窒素が漏れ出ることを防ぐことができる。
【0040】
排出配管9の一端は、タンク側接続部材18を介して蓋部材7の排出孔7bに接続されている。そして、排出配管9には、気化した液体窒素が蓋部材7の排出孔7bを介して排出される。排出配管9の他端は、ポート側接続部材19を介して排出側封止部材15に接続されている。なお、ポート側接続部材19としては、タンク側接続部材18と同様に、シールテープ等の封止部材が用いられている。これにより、排出配管9と排出側封止部材15との接続箇所から気化した液体窒素が筐体10内に漏れ出ることを防ぐことができる。
【0041】
また、排出配管9の他端には、排出口9aが設けられている。この排出口9aは、排出側封止部材15の外側に排出される。そして、排出口9aから、排出配管9を通過した窒素(気化した液体窒素)が排出される。
【0042】
また、供給配管8及び排出配管9としては、可撓性を有する部材により形成される。これにより、冷却タンク20が試料ホルダー5と共にゴニオメータ3により移動する際に、供給配管8及び排出配管9によってその移動が妨げられることを防ぐことができる。
【0043】
また、本例の試料移動装置1では、冷却タンク20を、容器部6と蓋部材7により構成し、蓋部材7に供給配管8及び排出配管9と接続する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、冷却タンク20として内部が密封された容器部のみで構成し、この容器部に直接供給配管8及び排出配管9を接続するようにしてもよい。
【0044】
1−3.試料ホルダーの設置方法
次に、上述した構成を有する試料移動装置1における試料ホルダー5の設置方法について説明する。
まず、試料ホルダー5に接続された冷却タンク20の容器部6に液体窒素を充填する。このとき、蓋部材7は、容器部6から取り外されており、筐体10内に配置されている。また、蓋部材7には、予め供給配管8及び排出配管9が接続されている。
【0045】
次に、筐体10のカバー11を開き、試料ホルダー5及び容器部6を筐体10内に収容させ、試料ホルダー5をゴニオメータ3に挿入する。これにより、保持部4に保持された試料は、ゴニオステージ2の開口部に配置され、電子顕微鏡100の鏡筒101内に挿入される。
【0046】
次に、容器部6の口部6aに蓋部材7を取り付ける。これにより、容器部6の内部空間と、供給配管8及び排出配管9が連通する。このように、冷却タンク20を、液体窒素を収容する容器部6と、供給配管8及び排出配管9が接続される蓋部材7で別々に構成したことで、供給配管8及び排出配管9を冷却タンク20に接続する作業や取り外す作業を容易に行うことができる。
【0047】
そして、カバー11を閉じ、筐体10の開口部10aを密閉する。これにより、試料ホルダー5の設置作業が完了する。なお、カバー11を閉じることで、筐体10の内部の圧力が一定に保たれる。さらに、口部6aの内壁と蓋部材7の間はOリング21により気密に保たれているため、気化した液体窒素が筐体10内に漏れ出すおそれがない。
【0048】
また、気化した液体窒素は、排出配管9を通り、排出口9aから筐体10の外部に排出される。このように、気化した液体窒素は、排出口9aを介して筐体10の外側に排出されるため、筐体10内に気化した液体窒素が溜まることを防ぐことができる。その結果、カバー11を閉じた状態で試料の観察を行うことができ、筐体10内の気圧を一定に保つことができ、気化した液体窒素や大気圧の変動によって試料ホルダー5に保持された試料が移動することを防ぐことができる。
【0049】
さらに、容器部6内の液体窒素の量が少なくなった場合には、キャップ23を外すことで、供給口8aから液体窒素を容器部6に供給することができる。これにより、カバー11を開けることなく、液体窒素を容器部6に容易に充填することができ、大気圧の変動による試料の移動を防ぐことができと共に長時間の観察を行うことができる。
【0050】
また、供給配管8及び排出配管9における封止部材14、15及び蓋部材7との接続箇所は、接続部材16、17、18、19により気密が保たれている。これにより、供給配管8を介して液体窒素を供給する際や、排出配管9から気化した液体窒素が排出される際に、筐体10内に漏れ出ることを防ぐことができる。
【0051】
また、排出口9aが配置される排出ポート13を筐体10の上下方向の下部に配置している。そのため、排出口9aから排出された窒素(気化した液体窒素)は、排出口9aから筐体10の上下方向の下方に排出される。その結果、排出された窒素(気化した液体窒素)によって試料移動装置1が冷却されることを防ぐことができ、温度変化によって生じる誤差を抑制することができる。
【0052】
2.第2の実施の形態例
次に、
図4を参照して本発明の試料移動装置の第2の実施の形態例について説明する。
図4は、第2の実施の形態例にかかる試料移動装置の断面図である。
【0053】
この第2の実施の形態例にかかる試料移動装置30が、第1の実施の形態例にかかる試料移動装置1と異なる点は、温度センサを設けた点である。そのため、ここでは、温度センサについて説明し、第1の実施の形態例にかかる試料移動装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図4に示すように、試料移動装置30は、筐体10と、ゴニオステージ2と、ゴニオメータ3と、試料ホルダー5と、冷却タンク40と、供給配管8と、排出配管9と、温度モニタ31と、第1温度センサ32と、第2温度センサ33とを有している。
【0055】
第1温度センサ32及び第2温度センサ33としては、例えば、熱電対が適用される。第1温度センサ32及び第2温度センサ33は、温度モニタ31に接続されている。温度モニタ31は、第1温度センサ32及び第2温度センサ33が検知した温度を表示する。
【0056】
第1温度センサ32及び第2温度センサ33は、供給ポート12から筐体10内に挿入されている。また、第1温度センサ32及び第2温度センサ33は、冷却タンク40の蓋部材37を貫通して、容器部6の内部に挿入されている。
【0057】
また、冷却タンク40の蓋部材37には、第1ハーメチックシール34が設けられている。第1ハーメチックシール34は、蓋部材37の上面部に、例えば、接着剤により接着固定されている。この第1ハーメチックシール34は、第1温度センサ32の第1端子32aと、第2温度センサ33の第1端子33aを封着している。
【0058】
さらに、供給側封止部材14には、第2ハーメチックシール35が設けられている。第2ハーメチックシール35は、第1温度センサ32及び第2温度センサ33における温度モニタ31側の第2端子32b、33bを封着している。これにより、第1温度センサ32及び第2温度センサ33の端子から気化した液体窒素が漏れ出ることを防ぐことができる。
【0059】
また、第1温度センサ32における容器部6内に挿入された検知部は、容器部6の底部の近傍に配置されている。これに対し、第2温度センサ33における容器部6内に挿入された検知部は、第1温度センサ32よりも口部6a側、すなわち上下方向の上部に配置されている。そして、第1温度センサ32が検知した温度変化により、冷却タンク40に充填された液体窒素の量の下限値を検知する。また、第2温度センサ33が検知した温度変化により、冷却タンク40に充填された液体窒素の量の上限値を検知する。
【0060】
これにより、第1温度センサ32が液体窒素の温度(−190℃)よりも高い温度を検知した場合、容器部6内の液体窒素が枯渇していることを検知することができる。その結果、使用者は、容器部6を筐体10から取り外すことなく、液体窒素の量を検知することができ、液体窒素が枯渇する前に液体窒素を充填することができる。
【0061】
さらに、液体窒素を充填する際に、第2温度センサ33が液体窒素の温度(−190℃)を検知した場合、液体窒素が容器部6の口部6aまで充填されたことを検知することができる。これにより、充填する液体窒素の量を容易に検知することができ、液体窒素が容器部6からあふれ出ることを防ぐことができる。
【0062】
このように、第1温度センサ32の検知部と第2温度センサ33の検知部を容器部6内で異なる位置に配置することで、容器部6内に収容された液体窒素の量を容易に検知することができる。
【0063】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる試料移動装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する試料移動装置30によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる試料移動装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
3.第3の実施の形態例
次に、
図5及び
図6を参照して本発明の試料移動装置の第3の実施の形態例について説明する。
図5は、第3の実施の形態例にかかる試料移動装置の断面図、
図6は、第3の実施の形態例にかかる試料移動装置の蓋部材を拡大して示す断面図である。
【0065】
この第3の実施の形態例にかかる試料移動装置50は、第2の実施の形態例にかかる試料移動装置30に真空ポンプ及び電磁弁を設けたものである。そのため、第1の実施の形態例にかかる試料移動装置1及び第2の実施の形態例にかかる試料移動装置30と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0066】
図5及び
図6に示すように、試料移動装置50は、筐体10Aと、ゴニオステージ2と、ゴニオメータ3と、試料ホルダー5と、冷却タンク40と、供給配管8と、排出配管9と、温度モニタ31と、第1温度センサ32と、第2温度センサ33とを有している。また、試料移動装置50は、液体窒素を貯蔵する貯蔵タンク55と、真空ポンプ56と、電磁弁57とを有している。貯蔵タンク55、真空ポンプ56及び電磁弁57は、筐体10Aの外側に配置されている。
【0067】
筐体10Aの上下方向の上部には、供給排出ポート12Aが設けられている。この供給排出ポート12Aには、封止部材14Aが取り付けられている。そして、供給排出ポート12Aには、供給配管8及び排出配管9が挿通している。供給配管8及び排出配管9は、封止部材14Aに気密的に接続されている。
【0068】
また、封止部材14Aには、第2ハーメチックシール35が設けられている。第2ハーメチックシール35には、第1温度センサ32及び第2温度センサ33における温度モニタ31側の第2端子32b、33bが封着されている。
【0069】
また、供給配管8の供給口は、貯蔵タンク55に接続されている。この貯蔵タンク55から供給配管8を介して冷却タンク40の容器部6に液体窒素が供給される。
【0070】
排出配管9の排出口は、真空ポンプ56に接続されている。また、排出配管9と真空ポンプ56の間には、電磁弁57が設けられている。液体窒素を供給する際は、電磁弁57を閉めると共に、真空ポンプ56を作動させる。そのため、排出配管9、供給配管8及び容器部6内の圧力が低下する。これにより、貯蔵タンク55から液体窒素が、供給配管8を通り、容器部6内に供給される。
【0071】
また、真空ポンプ56を停止させることで、冷却タンク40への液体窒素の供給を任意に停止することができる。なお、真空ポンプ56を停止した後は、電磁弁57を開く。これにより、排出配管9から排出される気化した液体窒素は、電磁弁57から筐体10Aの外部に排出される。なお、第2温度センサ33の温度変化を検知することで、容器部6内に液体窒素が上限まで充填されたことを検知することができる。真空ポンプ56を停止し、電磁弁57を開くタイミングを容易に判断することができる。
【0072】
また、真空ポンプ56及び電磁弁57の動作は、使用者が手動により行ってもよい。または、真空ポンプ56及び電磁弁57の動作を制御する制御部を設け、第1温度センサ32及び第2温度センサ33が検知した温度情報を制御部に出力するようにしてもよい。そして、制御部は、第1温度センサ32が検知した温度が、所定の温度(例えば、液体窒素の温度である−190℃)以上に達した場合、容器部6内の液体窒素の量が下限値に達したと判断する。制御部は、電磁弁57と閉じると共に、真空ポンプ56を動作させて、容器部6に液体窒素を供給する。
【0073】
そして、制御部は、第2温度センサ33が検知した温度が、所定の温度以下に達した場合、容器部6内に液体窒素が上限値まで充填されたと判断する。制御部は、真空ポンプ56の動作を停止させて液体窒素の供給を停止させると共に、電磁弁57を開く。これにより、液体窒素の供給及び停止作業を自動で行うことができる。
【0074】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる試料移動装置1及び第2の実施の形態例にかかる試料移動装置30と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する試料移動装置50によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる試料移動装置1及び第2の実施の形態例にかかる試料移動装置30と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0076】
また、上述した実施の形態例では、電子顕微鏡として電子線を試料に透過させる透過型電子顕微鏡(TEM)及び走査透過電子顕微鏡(STEM)を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。電子顕微鏡としては、電子線を試料に照射し、反射した電子を観察する走査型電子顕微鏡(SEM)を適用してもよい。