特許第6817108号(P6817108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817108
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】電気化学反応構造体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/247 20160101AFI20210107BHJP
   C25B 9/73 20210101ALI20210107BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20210107BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20210107BHJP
【FI】
   H01M8/247
   C25B9/20
   C25B9/00 A
   !H01M8/12 101
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-41386(P2017-41386)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-147709(P2018-147709A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】眞邉 健太
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/143318(WO,A1)
【文献】 実開昭62−055875(JP,U)
【文献】 特開2008−257939(JP,A)
【文献】 特開2003−313689(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101838815(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第107146904(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0089029(US,A1)
【文献】 実開昭54−111259(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/247
C25B 9/00
C25B 9/20
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位と、
前記第1の方向に延びる軸部と、前記軸部に対して前記第1の方向の一方側に位置するフランジ部と、を含む締結部材と、
を備える、電気化学反応構造体において、さらに、
前記複数の電気化学反応単位と前記締結部材の前記フランジ部との間に配置された導電性部材であって、前記締結部材の前記軸部が挿入された孔が形成された導電性部材と、
前記締結部材の前記フランジ部における前記第1の方向の他方側の面である第1の面と、前記導電性部材における前記第1の方向の前記一方側の面である第2の面との間に配置され、かつ、前記第1の面と前記第2の面との両方に接する環状の絶縁部材と、を備え、
前記第1の方向視で、前記締結部材の前記フランジ部における前記第1の面の外形は円形状であり、
前記フランジ部は、
前記締結部材の前記軸部における前記第1の方向の前記一方側の端部に接合されているナット部であって、ナット本体と、前記ナット本体における前記第1の方向の前記他方側に配置され、外周が全周にわたって前記ナット本体の外周より外側に位置している突出部と、を有するナット部と、
前記ナット部とは別体であり、前記ナット部と前記絶縁部材との間に配置された環状の座金であって、内径が前記ナット部における前記第1の方向の前記他方側の面であるナット面の外径より小さく、外径が前記絶縁部材の内径より大きい座金と、を含むことを特徴とする、電気化学反応構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応構造体において、
前記座金の外径は、前記ナット部の外径より大きいことを特徴とする、電気化学反応構造体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応構造体において、
前記第1の方向視で、前記絶縁部材の内周は、全周にわたって、前記座金の内周より前記軸部側に位置していることを特徴とする、電気化学反応構造体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応構造体において、
前記第1の方向視で、前記絶縁部材の外周は、全周にわたって、前記締結部材の前記フランジ部における前記第1の面の外周より前記軸部とは反対側に位置していることを特徴とする、電気化学反応構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCは、一般に、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に並べて配置された複数の発電単位を備える燃料電池スタックの形態で利用される。発電単位は、発電の最小単位であり、電解質層と電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
一般に、燃料電池スタックには、複数の発電単位にわたって第1の方向に延びる複数のボルト孔が形成されており、複数のボルト孔のそれぞれに挿入されたボルトと、各ボルトに嵌められた断面六角形のナットとによって締結される。また、この燃料電池スタックでは、ナットと、燃料電池スタックを構成する部材(例えばエンドプレート)との間に、例えばマイカにより形成された環状の絶縁部材が配置されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/118866号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の構成では、ナットの内、絶縁部材に接する面の外形が六角形であるため、ナットの面の周縁の角部に、締結部材による締結応力が集中するため、絶縁部材が破損しあり局所的に変形したりするおそれがあり、これによってナットと上記部材との間の絶縁性が低下したり、締結力が減少してガス漏れや接触不良を引き起こすおそれがある。
【0006】
なお、このような課題は、燃料電池スタックに限らず、例えば、該燃料電池スタックに加えて補助器を備える発電モジュールにおける燃料電池スタックと補助器との締結部分に共通の課題である。以下、燃料電池スタックと発電モジュールとをまとめて燃料電池構造体という。また、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」ともいう)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックや電解モジュール等にも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池構造体と電解セルスタックや電解モジュール等とをまとめて電気化学反応構造体という。
【0007】
本明細書では、上述した課題の少なくとも1つを解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応構造体は、第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位と、前記第1の方向に延びる軸部と、前記軸部に対して前記第1の方向の一方側に位置するフランジ部と、を含む締結部材と、を備える、電気化学反応構造体において、さらに、前記複数の電気化学反応単位と前記締結部材の前記フランジ部との間に配置された導電性部材であって、前記締結部材の前記軸部が挿入された孔が形成された導電性部材と、前記締結部材の前記フランジ部における前記第1の方向の他方側の面である第1の面と、前記導電性部材における前記第1の方向の前記一方側の面である第2の面との間に配置され、かつ、前記第1の面と前記第2の面との両方に接する環状の絶縁部材と、を備え、前記第1の方向視で、前記締結部材の前記フランジ部における前記第1の面の外形は円形状である。本電気化学反応構造体によれば、締結部材のフランジ部における第1の面の外形が多角形など角部を有する形状である場合に比べて、フランジ部の第1の面の周縁が絶縁部材に突き当たることによって絶縁部材が破損することを抑制することができる。
【0010】
(2)上記電気化学反応構造体において、前記フランジ部は、前記締結部材の前記軸部における前記第1の方向の前記一方側の端部に接合されているナット部と、前記ナット部とは別体であり、前記ナット部と前記絶縁部材との間に配置された環状の座金であって、内径が前記ナット部における前記第1の方向の前記他方側の面であるナット面の外径より小さく、外径が前記絶縁部材の内径より大きい座金と、を含む構成としてもよい。本電気化学反応構造体によれば、締結部材のナット部と絶縁部材との間に、両者とは別体の座金が配置されているため、導電性部材に対するナット部の回転量が、座金に対するナット部の回転量と、絶縁部材に対する座金の回転量とに分散される。これにより、別体の座金が配置されていない場合に比べて、ナット部の回転に伴う絶縁部材の破損を抑制することができる。
【0011】
(3)上記電気化学反応構造体において、前記座金の外径は、前記ナット部の外径より大きい構成としてもよい。本電気化学反応構造体によれば、座金の外径がナット部の外径以下である場合に比べて、フランジ部と絶縁部材との接触面積が大きい分だけ、絶縁部材への応力集中を抑制することができ、その結果、絶縁部材が破損することを、より効果的に抑制することができる。
【0012】
(4)上記電気化学反応構造体において、前記第1の方向視で、前記絶縁部材の内周は、全周にわたって、前記座金の内周より前記軸部側に位置している構成としてもよい。本電気化学反応構造体によれば、絶縁部材の破損を抑制しつつ、座金の内周から導電性部材までの絶縁距離を長く確保することができる。
【0013】
(5)上記電気化学反応構造体において、前記第1の方向視で、前記絶縁部材の外周は、全周にわたって、前記締結部材の前記フランジ部における前記第1の面の外周より前記軸部とは反対側に位置していることを特徴とする構成としてもよい。本電気化学反応構造体によれば、絶縁部材の破損を抑制しつつ、フランジ部の外周から導電性部材までの絶縁距離を長く確保することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、複数の燃料電池単位を備える燃料電池スタック、燃料電池スタックを備える発電モジュール、発電モジュールを備える燃料電池システム、複数の電解セル単位を備える電解セルスタック、電解セルスタックを備える水素生成モジュール、水素生成モジュールを備える水素生成システム等(電気化学反応構造体)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
図2図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図3図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図6図2の領域X1におけるナット24とエンドプレート104との締結部分のXZ断面構成を示す説明図である。
図7】ナット24とエンドプレート104との締結部分の上側のXY平面構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0017】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、発電単位102は、特許請求の範囲における電気化学反応単位に相当し、燃料電池スタック100は、特許請求の範囲における電気化学反応構造体に相当する。
【0018】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108という場合がある。上側のエンドプレート104は、特許請求の範囲における導電性部材に相当し、上側のエンドプレート104に形成された連通孔108は、特許請求の範囲における締結部材の軸部が挿入された孔であり、該軸部の周囲を囲むように導電性部材に形成された貫通孔に相当する。
【0019】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。
【0020】
各ボルト22の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0021】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0022】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0023】
図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側の表面(以下、「プレート面104A」という)との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側の表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、上述した各連通孔108やガス通路部材27の本体部28の孔に連通する孔が形成された環状の部材である。絶縁シート26により、絶縁シート26を挟んで配列方向に互いに隣り合う2つの導電性部材(例えば、ナット24と上側のエンドプレート104)が電気的に絶縁される。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤、サーミキュライト等により構成される。絶縁シート26は、特許請求の範囲における絶縁部材に相当する。ナット24と上側のエンドプレート104との締結部分の詳細構成については後述する。
【0024】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0025】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0026】
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0027】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0028】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112の上下方向の一方側(下側)に配置された燃料極(アノード)116と、電解質層112の上下方向の他方側(上側)に配置された空気極(カソード)114とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0029】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物であるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を含むように形成されている。すなわち、電解質層112は、Zr(ジルコニウム)とY(イットリウム)とを含んでいる。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、Sr(ストロンチウム)を含む組成物で形成されている。空気極114の構成については、後に詳述する。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0030】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0031】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0032】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0033】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0034】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されているとしてもよい。また、空気極側集電体134は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0035】
A−2.ナット24と上側のエンドプレート104との締結部分の詳細構成:
図6には、図2の領域X1におけるナット24と上側のエンドプレート104との締結部分のXZ断面構成が示されている。図7には、該締結部分の上側のXY平面構成を示す説明図である。図6および図7に示すように、ナット24は、ナット本体24Aと突出部24Bとを含む。
【0036】
Z方向視で、ナット本体24Aの外形は六角形状である。以下、単に「外形」「外径」という場合には、Z方向視における各部材の外形や外径を意味するものとする。突出部24Bは、ナット本体24Aの下側(エンドプレート104側)に配置され、突出部24Bの外形は円形状である。また、突出部24Bの外径D2は、ナット本体24Aの外径D1(ナット本体24Aの全ての角部に内接する円の直径)より大きく、また、突出部24Bの外周は、全周にわたって、ナット本体24Aの外周(ナット本体24Aの全ての角部に内接する円)より外側(ボルト22とは反対側)に位置している。ナット24(突出部24B)の下側の表面(以下、「ナット面24C」という)に、ねじ穴が形成されており、このねじ穴に、ボルト22においてねじ部が形成された上側端部が螺合される。なお、突出部24Bの外径D2は、上側のエンドプレート104に形成された連通孔108の径D7より大きい。
【0037】
ナット24のナット面24Cと、上側のエンドプレート104のプレート面104Aとの間には、座金25が配置されている。座金25は、円環状の平板部材(ワッシャ)である。座金25は、金属(例えば鉄やステンレス)により形成されており、導電性を有する。座金25の内径D6は、ナット24のナット面24Cの外径D2より小さく、座金25の外径D3は、上側のエンドプレート104に形成された連通孔108の径D7より大きく、また、ナット24(突出部24B)の外径より大きい。座金25の上側の面25Aは、ナット24のナット面24Cに接している。
【0038】
絶縁シート26は、座金25の下側の面(以下、「座面25B」という)と、上側のエンドプレート104のプレート面104Aとの間に配置されている。絶縁シート26の内径D5は、上側のエンドプレート104に形成された連通孔108の径D7より小さく、また、座金25の内径D6より小さい。絶縁シート26の外径D4は、突出部24Bの外径D2より大きく、また、座金25の外径D3より大きい。絶縁シート26の上側の面26Aは、座金25の座面25Bに接しており、絶縁シート26の下側の面26Bは、エンドプレート104のプレート面104Aに接している。
【0039】
また、Z方向視で、絶縁シート26の内周は、全周にわたって、座金25の内周より内側(ボルト22側)に位置している。また、Z方向視で、絶縁シート26の外周は、全周にわたって、ナット24(突出部24B)の外周および座金25の外周より外側(ボルト22とは反対側)に位置している。本実施形態では、絶縁シート26は、弾性体であり、絶縁シート26の弾性係数は、該絶縁シート26に接するエンドプレート104および座金25の少なくとも一方の弾性係数より小さい。なお、ナット24は、特許請求の範囲におけるナット部に相当し、座面25Bは、特許請求の範囲における第1の面に相当し、プレート面104Aは、特許請求の範囲における第2の面に相当する。また、ナット24および座金25は、特許請求の範囲におけるフランジ部に相当する。また、ナット24、座金25およびボルト22は、特許請求の範囲における締結部材に相当する。
【0040】
なお、ナット24およびガス通路部材27の締結部分において、ナット24と座金25と絶縁シート26とガス通路部材27に形成された孔との形状やサイズ関係等は、ナット24と上側のエンドプレート104との締結部分と同じである。また、ボルト22やナット24は、JIS B 119、JIS B 1190等に準拠するものが好ましい。例えば、座金25の厚み(上下方向の寸法)は、1.3(mm)〜3.6(mm)であり、絶縁シート26の厚み(上下方向の寸法)は、0.3(mm)〜1.5(mm)である。
【0041】
A−3.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0042】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0043】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0044】
A−4.本実施形態の効果:
仮に、絶縁シート26の上側の面26Aに接している座金25の座面25Bの外形が、角部を有する多角形である場合(比較例)、座面25Bの角部に、ボルト22およびナット24による締結応力が集中する。特に、絶縁シート26が弾性体である場合、座面25Bからの押圧力によって、座面25Bが、絶縁シート26を弾性変形させるように絶縁シート26を押圧する。これにより、絶縁シート26における該角部が突き当たっている部位(以下、「突き当たり部位」という)が、該突き当たり部位の周辺部分よりも凹んだ状態になる。このため、特に、座面25Bの角部に、ボルト22およびナット24による締結応力が集中する。座面25Bの角部に締結応力が集中すると、絶縁シート26の突き当たり部位が破損したり局所的に変形したりするおそれがあり、これによってナット24とエンドプレート104との間の絶縁性が低下したり、ボルト22およびナット24による締結力が低下してガス漏れや接触不良を引き起こすおそれがある。例えば、燃料電池スタック100の製造段階において、ナット24を回転させて締め付ける場合、ナット24の回転に伴って、座面25Bの角部が絶縁シート26の上側の面26Aを擦りつつ移動する。これにより、絶縁シート26が破損等するおそれがある。また、製造された燃料電池スタック100について発電動作の開始と停止との繰り返しによる温度変化によって例えばエンドプレート104が変形する際、座面25Bの角部に、ボルト22およびナット24による締結応力が集中する。また、比較例では、発電動作時に、座面25Bの角部に電界が集中することによって放電し易くなるため、ナット24とエンドプレート104とがショートする可能性が高くなる。
【0045】
これに対して、本実施形態によれば、絶縁シート26の上側の面26Aに接している座金25の座面25Bの外形は、角部を有しない円形状である。このため、上記比較例に比べて、ボルト22およびナット24による締結応力が絶縁シート26の特定部位に集中することが抑制されるため、絶縁シート26が破損等することを抑制することができる。また、ナット24における電界の集中に起因してナット24とエンドプレート104とがショートすることを抑制することができる。
【0046】
また、仮に、本実施形態に対して、座金25が無く、ナット24と絶縁シート26とが接している場合、ナット24の締め付け作業により、絶縁シート26が破損等し易くなる。すなわち、締め付け作業により、ナット24をエンドプレート104に対して例えば第1の回転角度θ1だけ回転させる場合、ナット24が絶縁シート26に対して同じく第1の回転角度θ1だけ回転する。すなわち、絶縁シート26に接するナット24が、該絶縁シート26に対して、締め付けによるナット24の回転量と同じ回転量だけ回転する。
【0047】
これに対して、本実施形態によれば、ナット24と絶縁シート26との間に、両者とは別体の座金25が配置されている。このため、締め付け作業において、ナット24とエンドプレート104との間に配置された部材同士のすべり箇所が、ナット24と座金25との間と、座金25と絶縁シート26との間との2箇所になる。これにより、ナット24をエンドプレート104に対して第1の回転角度θ1だけ回転させる場合、絶縁シート26に接する座金25が絶縁シート26に対して回転するだけでなく、ナット24が座金25に対して回転する。すなわち、図7に模式的に示すように、エンドプレート104に対するナット24の回転量(第1の回転角θ1)が、座金25に対するナット24の回転量(第2の回転角度θ2)と、絶縁シート26に対する座金25の回転量(第3の回転角度θ3)とに分散される。これにより、別体の座金25が配置されていない場合に比べて、絶縁シート26に対し、該絶縁シート26に接する部材(座金25)の回転量が低減するため、ナット24の回転に伴う絶縁シート26の破損等を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、座金25の外径D3は、ナット24(突出部24B)の外径D2より大きい。このため、座金25の内径D6が同じである前提において、座金25の外径D3がナット24の外径D2以下である場合に比べて、座金25と絶縁シート26との接触面積が大きくなる。このため、ボルト22およびナット24による締結応力が絶縁シート26の特定部位に集中することを抑制することができ、その結果、絶縁シート26が破損等することを、より効果的に抑制することができる。
【0049】
なお、上記実施形態のように、連通孔108がボルト22の挿入穴とマニホールドとを兼ねる場合、ボルト22とエンドプレート104との間の絶縁性を確保するために、特に、ボルト22の外周面と連通孔108の内周面との間の空間(クリアランス)を広く確保することが好ましい。同空間を広く確保するほど、Z方向視で、ナット24とエンドプレート104とが重なる領域の面積が小さくなるため、ナット24とエンドプレート104との間に介在する絶縁シート26の特定部位に、ボルト22およびナット24による締結応力が集中し易くなる。これに対して、本実施形態によれば、ナット24と絶縁シート26との間に介在する座金25の外周は、全周にわたって、ナット24の外周の外側に位置し、かつ、座金25の内周は、全周にわたって、連通孔108より内側(ボルト22側)に位置する。すなわち、Z方向視で、座金25とエンドプレート104とが重複する領域の面積は、ナット24とエンドプレート104とが重複する領域の面積より大きい。これにより、絶縁シート26の特定部位に締結応力が集中することを抑制することができ、その結果、絶縁シート26が破損等することを、より効果的に抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、Z方向視で、絶縁シート26の内周は、全周にわたって、座金25の内周より内側に位置している。これにより、絶縁シート26の内周の少なくとも一部が、座金25の内周より外側に位置する場合に比べて、絶縁シート26の破損等を抑制しつつ、座金25の内周からエンドプレート104までの絶縁距離を長く確保することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、Z方向視で、絶縁シート26の外周は、全周にわたって、フランジ部(突出部24B)の外周および座金25の外周より外側に位置している。これにより、絶縁シート26の外周の少なくとも一部が、座金25の外周より内側に位置する場合に比べて、絶縁シート26の破損等を抑制しつつ、フランジ部の外周からエンドプレート104までの絶縁距離を長く確保することができる。
【0052】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記実施形態では、ナット24の突出部24Bの外径は、円形状であったが、多角形(例えば六角形)状であるとしてもよい。但し、上記実施形態のように、ナット24のナット面24Cの外径が、角部を有しない円形状であれば、ボルト22およびナット24による締結応力がナット24と座金25との接触部分の一部分に集中することに起因して座金25が破損等することを抑制することができる。なお、本明細書において「円形状」とは、真円だけに限定されず、楕円でもよく、要するに、角部を有しない形状であればよい。
【0054】
上記実施形態では、ナット部として、突出部24Bを含むナット24を例示したが、ナット部は、これに限定されず、突出部を含まないナットでもよい。但し、上記実施形態では、ナット24が突出部24Bを含むため、突出部24Bを含まない場合に比べて、ナット24と座金25との接触面積が大きくなる。このため、ナット24から座金25への押圧力が分散されることによって座金25の破損等を抑制できるとともに、ボルト22およびナット24による締結の安定性を高めることができる。なお、ナット部における第1の方向視の外径は、六角形以外の多角形状(例えば四角形状)であるとしてもよい。
【0055】
上記実施形態では、軸部として、ねじ部が軸部の両端部に形成されたボルト22を例示したが、軸部は、これに限定されず、ねじ部が軸部の一方の端部だけに形成されたものであるとしてもよい。例えば、上記実施形態において、上側のナット24とボルト22とは一体に形成されているとしてもよい。なお、ボルト22と各ナット24とが、螺合以外の手段(例えば溶接)によって結合されることによって締結可能であれば、軸部にねじ部が形成されていないとしてもよい。
【0056】
上記実施形態では、フランジ部として、ナット24および座金25を含むものを例示したが、フランジ部は、これに限定されず、座金25を含まず、ナット24のナット面24Cが絶縁シート26の上側の面26Aに接しているとしてもよい。要するに、フランジ部は、第1の方向視で外径が導電性部材における軸部が挿入された孔より大きく、かつ、絶縁部材と対向する第1の面の外径が円形状であればよい。なお、フランジ部の外周を挟む締め付け具(例えばオープンエンドレンチ)を使用する場合、フランジ部の第1の面とは反対側の面側における第1の方向視の外形は、多角形であることが好ましい。一方、ナット部に六角穴が形成されており、六角レンチで締め付ける場合、フランジ部の第1の面とは反対側の面側における第1の方向視の外形は、円形状でもよい。
【0057】
上記実施形態では、座金25は、導電性を有するとしたが、これに限定されず、例えばゴム、シリコンやプラスチック等により形成されており、絶縁性を有するとしてもよい。座金25が絶縁性を有することにより、ナット24とエンドプレート104との間の絶縁性をより確実に確保することができる。
【0058】
上記実施形態において、座金25の外径D3は、ナット24の外径D2以下であるとしてもよい。また、絶縁シート26の内周の少なくとも一部が、座金25の内周より外側(ボルト22とは反対側)に位置するとしてもよい。また、絶縁シート26の外周の少なくとも一部が、座金25の外周より内側に位置するとしてもよい。
【0059】
上記実施形態において、Z方向視で、座金25の外周が、全周にわたって、絶縁シート26の外周の内側であって、かつ、絶縁シート26の内周の外側に位置するが、これに限定されない。例えば座金25の外周の一部が、絶縁シート26の外周の内側であって、かつ、絶縁シート26の内周の外側に位置するとしてもよい。すなわち、Z方向視で、絶縁シート26(絶縁部材)の少なくとも一部が、フランジ部の第1の面の外周に重複していればよい。
【0060】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0061】
また、上記実施形態では、ボルト22の両側にナット24が嵌められているとしているが、ボルト22が頭部を有し、ナット24はボルト22の頭部の反対側にのみ嵌められているとしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、エンドプレート104,106が出力端子として機能するとしているが、エンドプレート104,106の代わりに、エンドプレート104,106のそれぞれと接続された別部材(例えば、エンドプレート104,106のそれぞれと発電単位102との間に配置された導電板)が出力端子として機能するとしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
【0065】
また、上記実施形態において、空気極側集電体134と、それに隣接するインターコネクタ150とが別部材であってもよい。また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
【0068】
本明細書において、部材(または部材のある部分、以下同様)Aを挟んで部材Bと部材Cとが互いに対向するとは、部材Aと部材Bまたは部材Cとが隣接する形態に限定されず、部材Aと部材Bまたは部材Cとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に他の層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
【0069】
上記実施形態では、本発明の適用される電気化学反応構造体として、ナット24およびエンドプレート104の締結部分と、ナット24およびガス通路部材27の締結部分とに適用した形態を例示したが、これに限定されず、例えば、燃料電池スタック100の下側のエンドプレート106に、締結部材を介して、ガス管の一体に接続された接続部材(ガス通路部材27等)が固定される形態において、本発明を、エンドプレート106とガス管との締結部分に適用するとしてもよい。この場合、該接続部材が、特許請求の範囲における導電性部材に相当する。また、燃料電池スタック100と補助器(図示せず)とを備える発電モジュールにおいて、本発明を、燃料電池スタック100と補助器との締結部分に適用するとしてもよい。この場合、該補助器における締結部が、特許請求の範囲における導電性部材に相当する。なお、補助器は、例えば、燃料電池スタック100から排出されたガスを燃焼させる燃焼室と、原燃料ガスを改質して燃料電池スタック100に供給する燃料ガスを生成する改質室と、の少なくとも一方が形成されたものである。
【0070】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100は複数の平板形の単セル110が積層された構成であるが、本発明は、他の構成、例えば国際公開第2012/165409号に記載されているように、複数の略円筒形の燃料電池単セルが直列に接続された構成(例えば燃料電池単セルとガス管との締結部分)にも同様に適用可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位を、複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号公報に記載されているように公知であるため、ここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セルスタックや、該電解セルスタックを備える水素生成モジュール等に、本発明を適用すれば、フランジ部の第1の面の周縁が絶縁部材に突き当たることによって絶縁部材が破損することを抑制することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解単セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
22:ボルト 24:ナット 24A:ナット本体 24B:突出部 24C:ナット面 25:座金 25A:上側の面 25B:座面 26:絶縁シート 26A:上側の面 26B:下側の面 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104,106:エンドプレート 104A:プレート面 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 D1:外径 D2:外径 D3:外径 D4:外径 D5:内径 D6:内径 D7:径 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス X1:領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7