特許第6817118号(P6817118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817118
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ロータリダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/48 20060101AFI20210107BHJP
   F16F 9/14 20060101ALI20210107BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20210107BHJP
   F16F 9/44 20060101ALI20210107BHJP
   B61D 33/00 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
   F16F9/48
   F16F9/14 A
   F16F9/32 H
   F16F9/44
   !B61D33/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-50362(P2017-50362)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-155269(P2018-155269A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮平
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−210802(JP,A)
【文献】 特許第3808122(JP,B2)
【文献】 特開2000−120748(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第1148384(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D17/00−49/00
F16F9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室を有するケースと、
前記円筒室内に配置され、当該円筒室を仕切る扇形の仕切り部と、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の内周面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の内周面と近接するベーンを有し、前記加えられた回転力により回転するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記円筒室の底面に配され、当該円筒室の底面と前記ベーンとの隙間を塞ぐ円板と、
前記円板の前記ベーンとの対向面に設けられ、前記ロータの回転方向における前記ベーンの厚みより長い溝からなる迂回路と、を有し、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面が前記迂回路内に位置している場合、前記ベーンおよび前記仕切り部によって仕切られる前記円筒室内の領域のうち、前記ロータの回転方向に対して前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側に位置する領域とが前記迂回路を介して連結され、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動可能となり、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面のうちの少なくともいずれか一方が前記迂回路外に位置している場合、前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側とが前記迂回路を介して連結されず、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動不可能となり、
前記ケースは、
前記円筒室の底面に形成された挿入孔をさらに有し、
前記円板は、
前記ケースの前記挿入孔に挿入され、先端部が前記ケースから外部に露出した操作部を有し、当該操作部を操作することにより回転可能である
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室を有するケースと、
前記円筒室内に配置され、当該円筒室を仕切る扇形の仕切り部と、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の内周面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の内周面と近接するベーンを有し、前記加えられた回転力により回転するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記蓋の裏面に配され、当該蓋の裏面と前記ベーンとの隙間を塞ぐ円板と、
前記円板の前記ベーンとの対向面に設けられ、前記ロータの回転方向における前記ベーンの厚みより長い溝からなる迂回路と、を有し、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面が前記迂回路内に位置している場合、前記ベーンおよび前記仕切り部によって仕切られる前記円筒室内の領域のうち、前記ロータの回転方向に対して前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側に位置する領域とが前記迂回路を介して連結され、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動可能となり、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面のうちの少なくともいずれか一方が前記迂回路外に位置している場合、前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側とが前記迂回路を介して連結されず、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動不可能となり、
前記蓋は、
前記蓋の裏面に形成された挿入孔有し、
前記円板は、
前記蓋の前記挿入孔に挿入され、先端部が前記蓋から外部に露出した操作部を有し、当該操作部を操作することにより回転可能である
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項3】
粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室を有するケースと、
前記円筒室内に配置され、当該円筒室を仕切る扇形の仕切り部と、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の内周面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の内周面と近接するベーンを有し、前記加えられた回転力により回転するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記円筒室内に挿入され、当該円筒室の内周面と前記ベーンおよび前記仕切り部各々との隙間を塞ぐ円筒と、
前記円筒の内周面に設けられ、前記ロータの回転方向における前記ベーンの厚みより長い溝からなる迂回路と、を有し、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面が前記迂回路内に位置している場合、前記ベーンおよび前記仕切り部によって仕切られる前記円筒室内の領域のうち、前記ロータの回転方向に対して前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側に位置する領域とが前記迂回路を介して連結され、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動可能となり、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面のうちの少なくともいずれか一方が前記迂回路外に位置している場合、前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側とが前記迂回路を介して連結されず、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動不可能となり、
前記蓋は、
前記蓋の裏面に形成された挿入孔有し、
前記円筒は、
前記挿入孔に挿入され、先端部が前記ケースあるいは蓋から外部に露出した操作部を有し、当該操作部を操作することにより回転可能である
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のロータリダンパであって、
前記仕切り部および/または前記ロータの前記ベーンに設けられ、当該仕切り部および前記ベーンによって仕切られる前記円筒室内の領域間を連結する流路をさらに有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項5】
請求項に記載のロータリダンパであって、
前記ロータが前記円筒室に対して相対的に第一の回転方向へ回転した場合に、前記流路を閉門し、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に前記第一の回転方向の逆回転方向である第二の回転方向へ回転した場合に、前記流路を開門する逆止弁をさらに有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリダンパに関し、特に、制動トルクの発生タイミングを設定可能なロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパが知られている。例えば、特許文献1には、正転方向の回転に対して強い制動トルクを発生させる一方、反転方向の回転に対しては弱い制動トルクを発生させる、いわゆる一方向性のロータリダンパが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のロータリダンパは、円筒室を備えたケースと、円筒室内に回転自在に収容されたロータと、円筒室内に充填された粘性流体と、ケースの開口側端面に取り付けられて円筒室内にロータを粘性流体とともに封じ込める蓋と、を備えている。
【0004】
ロータは、円筒形状のロータ本体と、円筒室の内周面と僅かな隙間を形成するようにロータ本体の外周面から径方向外方に突出して形成されたベーンと、を有している。ベーンには、ロータの回転方向におけるベーンの両端面を繋ぐ流路が形成されている。また、ロータの径方向におけるベーンの先端面(円筒室の内周面と対向する面)には、円筒室の内周面との僅かな隙間を塞ぐシール材が取り付けられている。このシール材は、ベーンに形成された流路の開閉を行う弾性体の逆止弁を有している。また、円筒室の内周面には、ロータ本体の外周面と僅かな隙間を形成するように、径方向内方に突出した仕切り部が形成されている。
【0005】
以上のような構成において、特許文献1に記載のロータリダンパは、ロータの回転方向におけるベーンの両端面のうちの一方の端面(第一端面と呼ぶ)から他方の端面(第二端面と呼ぶ)へ向かう方向(正転方向)に回転させる力がロータに加わると、円筒室内の粘性流体によって逆止弁がベーンの第二端面に押し付けられて、流路が逆止弁で塞がれる。これにより、粘性流体の移動が、円筒室の仕切り部とロータ本体の外周面との隙間およびケースの閉口側端面(底面)とベーンの下面(ケースの閉口側端面と対向する面)との隙間を介してのみに制限され、ベーンの第二端面側の粘性流体に対する圧力が高まる。このため、正転方向へのロータの回転開始とともに強い制動トルクが発生する。一方、ベーンの第二端面から第一端面へ向かう方向(反転方向)に回転させる力がロータに加わると、ベーンの第一端面側の粘性流体が流路に流入して逆止弁を押し上げて流路を開放する。したがって、粘性流体の移動がベーンに形成された流路においても行われるため、ベーンの第一端面側の粘性流体に対する圧力は高くならない。このため、反転方向へのロータの回転開始とともに弱い制動トルクが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−301272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のロータリダンパは、正転方向の回転力がロータに加わると、直ちに逆止弁が流路を塞いで、強い制動トルクを発生させる。しかしながら、ロータリダンパの用途によっては、正転方向の回転力がロータに加わった直後に強い制動トルクを発生させるのではなく、強い制動トルクの発生タイミングを遅らせたい場合がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、制動トルクの発生タイミングを設定可能なロータリダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、円筒室の底面側、内周面側もしくは蓋の裏面側に、ロータの回転方向におけるベーンの厚みより長い溝からなる迂回路を設け、ロータの回転方向におけるベーンの両端面が迂回路内に位置している場合、ロータの回転方向に対してベーンの上流側と下流側とが迂回路を介して連結され、これらの領域内の粘性流体が迂回路を介して移動可能となり、ロータの回転方向におけるベーンの両端面の少なくともいずれか一方が迂回路外に位置している場合、ロータの回転方向に対してベーンの上流側と下流側とが迂回路を介して連結されず、これらの領域内の粘性流体が迂回路を介して移動不可能となるようにした。
【0010】
例えば、本発明の一態様は、粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室を有するケースと、
前記円筒室内に配置され、当該円筒室を仕切る扇形の仕切り部と、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の内周面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の内周面と近接するベーンを有するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記円筒室の底面に配され、当該円筒室の底面と前記ベーンとの隙間を塞ぐ円板と、
前記円板の前記ベーンとの対向面に設けられ、前記ロータの回転方向における前記ベーンの厚みより長い溝からなる迂回路と、を有し、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面が前記迂回路内に位置している場合、前記ベーンおよび前記仕切り部によって仕切られる前記円筒室内の領域のうち、前記ロータの回転方向に対して前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側に位置する領域とが前記迂回路を介して連結され、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動可能となり、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面のうちの少なくともいずれか一方が前記迂回路外に位置している場合、前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側とが前記迂回路を介して連結されず、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動不可能となり、
前記ケースは、
前記円筒室の底面に形成された挿入孔をさらに有し、
前記円板は、
前記ケースの前記挿入孔に挿入され、先端部が前記ケースから外部に露出した操作部を有し、当該操作部を操作することにより回転可能である。
また、本発明の他の態様は、粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室を有するケースと、
前記円筒室内に配置され、当該円筒室を仕切る扇形の仕切り部と、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の内周面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の内周面と近接するベーンを有し、前記加えられた回転力により回転するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記蓋の裏面に配され、当該蓋の裏面と前記ベーンとの隙間を塞ぐ円板と、
前記円板の前記ベーンとの対向面に設けられ、前記ロータの回転方向における前記ベーンの厚みより長い溝からなる迂回路と、を有し、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面が前記迂回路内に位置している場合、前記ベーンおよび前記仕切り部によって仕切られる前記円筒室内の領域のうち、前記ロータの回転方向に対して前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側に位置する領域とが前記迂回路を介して連結され、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動可能となり、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面のうちの少なくともいずれか一方が前記迂回路外に位置している場合、前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側とが前記迂回路を介して連結されず、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動不可能となり、
前記蓋は、
前記蓋の裏面に形成された挿入孔を有し、
前記円板は、
前記蓋の前記挿入孔に挿入され、先端部が前記蓋から外部に露出した操作部を有し、当該操作部を操作することにより回転可能である。
また、本発明のさらに他の態様は、粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室を有するケースと、
前記円筒室内に配置され、当該円筒室を仕切る扇形の仕切り部と、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の内周面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の内周面と近接するベーンを有し、前記加えられた回転力により回転するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記円筒室内に挿入され、当該円筒室の内周面と前記ベーンおよび前記仕切り部各々との隙間を塞ぐ円筒と、
前記円筒の内周面に設けられ、前記ロータの回転方向における前記ベーンの厚みより長い溝からなる迂回路と、を有し、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面が前記迂回路内に位置している場合、前記ベーンおよび前記仕切り部によって仕切られる前記円筒室内の領域のうち、前記ロータの回転方向に対して前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側に位置する領域とが前記迂回路を介して連結され、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動可能となり、
前記ロータの回転方向における前記ベーンの両端面のうちの少なくともいずれか一方が前記迂回路外に位置している場合、前記ベーンの上流側に位置する領域と下流側とが前記迂回路を介して連結されず、当該上流側に位置する領域および下流側に位置する領域内の前記粘性流体が前記迂回路を介して移動不可能となり、
前記蓋は、
前記蓋の裏面に形成された挿入孔を有し、
前記円筒は、
前記挿入孔に挿入され、先端部が前記ケースあるいは蓋から外部に露出した操作部を有し、当該操作部を操作することにより回転可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、円筒室の底面側、内周面側もしくは蓋の裏面側に設けられ、ロータの回転方向におけるベーンの厚みより長い溝からなる迂回路により、ロータの回転方向におけるベーンの両端面が迂回路内に位置している間、ロータの回転方向に対してベーンの上流側と下流側とが迂回路を介して連結され、これらの領域内の粘性流体が迂回路を介して移動可能とたるため、ロータに加えられた回転力に対して強い制動トルクは発生しない。一方、ロータの回転方向におけるベーンの両端面の少なくともいずれか一方が迂回路外となった場合、ロータの回転方向に対してベーンの上流側と下流側とが迂回路を介して連結されず、これらの領域内の粘性流体が迂回路を介して移動不可能となるため、ロータに加えられた回転力に対して強い制動トルクが発生する。したがって、迂回路を構成する溝の長さ、配置位置を変更することにより、ロータに加えられた回転力に対する制動トルクの発生タイミングを任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)、図1(B)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の概略構成を示す外観図および部分断面図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の部品展開図である。
図3図3(A)は、ケース2の正面図であり、図3(B)は、図3(A)に示すケース2のA−A断面図であり、図3(C)は、ケース2の背面図である。
図4図4(A)は、仕切り部3の正面図であり、図4(B)は、図4(A)に示す仕切り部3のB−B断面図であり、図4(C)は、仕切り部2の背面図であり、図4(D)は、図4(A)に示す仕切り部3のC−C断面図(仕切りブロック30aの上面図)である。
図5図5(A)〜図5(C)は、逆止弁4の正面図、上面図および下面図である。
図6図6(A)、図6(B)は、ロータ5の正面図および側面図であり、図6(C)は、図6(A)に示すロータ5のD−D断面図である。
図7図7(A)〜図7(C)は、蓋7の正面図、側面図および背面図であり、図7(D)は、図7(A)に示す蓋7のE−E断面図である。
図8図8(A)〜図8(C)は、トルク調整板8の正面図、側面図および背面図であり、図8(D)は、図8(A)に示すトルク調整板8のF−F断面図である。
図9図9(A)および図9(B)は、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合の動作原理を説明するための図である。
図10図10は、ケース2に対してロータ5が第二回転方向R2に相対的に回転した場合の動作原理を説明するための図である。
図11図11(A)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の第一の変形例1Aの概略断面図であり、図11(B)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の第二の変形例1Bの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
【0014】
図1(A)および図1(B)は、本実施の形態に係るロータリダンパ1の概略構成を示す外観図および部分断面図である。また、図2は、本実施の形態に係るロータリダンパ1の部品展開図である。
【0015】
図示するように、本実施の形態に係るロータリダンパ1は、ケース2と、一対の仕切り部3と、一対の逆止弁4と、ロータ5と、ケース2内に充填されたオイル、シリコン等の粘性流体6と、蓋7と、トルク調整板8と、を備えている。
【0016】
ケース2は、それぞれ逆止弁4が取り付けられた一対の仕切り部3、ロータ5、およびトルク調整板8を、粘性流体6とともに収容する。
【0017】
図3(A)は、ケース2の正面図であり、図3(B)は、図3(A)に示すケース2のA−A断面図であり、図3(C)は、ケース2の背面図である。
【0018】
図示するように、ケース2内には、一端が開口した円筒室(底付き円筒状の空間)200が形成されており、この円筒室200には、内周面203および外周面205を貫く挿入孔208a、208bが、円筒室200内に収容される仕切り部3毎に形成されている。仕切り部3は、挿入孔208a、208bに挿入された固定ボルト90によって、円筒室200内に取り付けられる。
【0019】
また、円筒室200の底部201には、この底部201から軸方向外方に向けて筒状の開口部202が形成されている。トルク調整板8は、後述する操作部802(図8参照)がこの開口部202に挿入されることにより、トルク調整板8の中心線830が円筒室200の中心線220と一致して、ケース2に対して相対的に回転可能となるように、円筒室200内に収容される(図1および図2参照)。開口部202には、内周面209および外周面210を貫く一対のネジ孔204が形成されている。トルク調整板8は、ネジ孔204に取り付けられた規制ネジ91によって、ケース2に対する相対的な回転が規制される。
【0020】
円筒室200の底部201と開口部202との連結部分(開口部202の軸方向内方側端部)には、開口部202の内周面209とトルク調整板8の操作部802との隙間を塞いで、円筒室200内の粘性流体6が外部に漏れるのを防止するOリング等のシール材を装着するための装着部211が形成されている。
【0021】
円筒室200の内周面203の開口側206には、蓋7の後述する雄ネジ部702(図7参照)と螺合する雌ネジ部207が形成されている。
【0022】
仕切り部3は、外周面300がケース2の円筒室200の内周面203と接触し、内周面301がケース2の円筒室200に収容されたロータ5の後述するロータ本体500の外周面504(図6参照)と近接する扇形の柱状部材である。一対の仕切り部3は、ケース2の円筒室200の中心線220に沿って、この中心線220に対して軸対称となるように、内周面301を円筒室200の径方向内方に向けて配置され、これにより、円筒室200内を2つの領域216a、216b(図9図10参照)に仕切る。
【0023】
図4(A)は、仕切り部3の正面図であり、図4(B)は、図4(A)に示す仕切り部3のB−B断面図であり、図4(C)は、仕切り部3の背面図であり、図4(D)は、図4(A)に示す仕切り部3のC−C断面図(仕切りブロック30aの上面図)である。
【0024】
図示するように、仕切り部3は、2つの仕切りブロック30a、30bがケース2の円筒室200の中心線220に沿って積み重ねられて構成される。仕切りブロック30a、30bの外周面300には、固定ボルト90と螺合するボルト穴304a、304bがそれぞれ形成されている。
【0025】
仕切り部3には、円周方向の両端面305、306を貫いて、この仕切り部3によって仕切られたケース2の円筒室200内の領域216a、216b(図9図10参照)間を連結する流路303が形成されている。流路303の第一回転方向R1(図9図10参照)の上流側(仕切り部3の端面306側)には、逆止弁4の脱落を防止するためのストッパ307が形成されている。
【0026】
流路303は、仕切りブロック30aの上面に形成された溝と、仕切りブロック30bの下面に形成された溝とを対向させて、両仕切りブロック30a、30bを積み重ねることにより形成される。
【0027】
上記構成の仕切り部3は、例えばつぎのようにして、逆止弁4が取り付けられた状態でケース2の円筒室200内に収容される。まず、仕切りブロック30aをケース2の円筒室200の底面201上に配置する。それから、ケース2の挿入孔208aを介して、固定ボルト90を仕切りブロック30aの外周面300に形成されたボルト孔304aに螺合させ、これにより仕切りブロック30aをケース2の円筒室200に取り付ける。その後、逆止弁4を、仕切り部3の端面306側に、流路303のストッパ307に係止させつつ配置する。
【0028】
つぎに、仕切りブロック30bをケース2の円筒室200内に配置された仕切りブロック30a上に配置する。それから、ケース2の挿入孔208bを介して、固定ボルト90を仕切りブロック30bの外周面300に形成されたボルト孔304bに螺合させ、これにより仕切りブロック30bをケース2の円筒室200に取り付ける。以上のようにして、逆止弁4が取り付けられた仕切り部3を円筒室200内に配置する。
【0029】
逆止弁4は、仕切り部3の端面306側において、流路303を開閉する。
【0030】
図5(A)〜図5(C)は、逆止弁4の正面図、上面図、および下面図である。
【0031】
図示するように、逆止弁4は、円板状の弁部400と、係止部401と、弁部400および係止部401を連結する円柱状の連結部402と、を有する。
【0032】
弁部400は、仕切り部3の端面306における流路303の開口(流路303の第一回転方向R1の上流側の開口)の直径D1(図4(E)参照)よりも大きな直径D3を有し、逆止弁4が移動することにより仕切り部3の端面306における流路303の開口を開閉する。
【0033】
係止部401は、仕切り部3の端面306における流路303の開口の直径D1より長く、かつ流路303の直径D2より短い長さL1と、仕切り部3の端面306における流路303の開口の直径D1より狭い幅Wと、を有する板状部材であり、弁部400が仕切り部3の端面306における流路303の開口を開く方向に移動した場合に、流路303のストッパ307と係止して、逆止弁4の流路303からの脱落を防止する。
【0034】
連結部402は、仕切り部3の端面306における流路303の開口の直径D1よりも小さい直径D4を有する円柱状部材である。逆止弁4の連結部402の長さL2は、係止部401が流路303のストッパ307と係止したときに、弁部400が流路303を開門し、かつ弁部400が流路303を閉門したときに、係止部401が流路303の側壁面に当接することなく、自由に移動できる長さに設定される。
【0035】
上記構成の逆止弁4は、弁部400が仕切り部3の端面306側の外部に位置し、かつ係止部401がストッパ307よりも流路303側に位置するように取り付けられる。
【0036】
ロータ5は、ケース2の円筒室200に対して相対的に回転可能となるように円筒室200内に収容される。
【0037】
図6(A)および図6(B)は、ロータ5の正面図および側面図であり、図6(C)は、図6(A)に示すロータ5のD−D断面図である。
【0038】
図示するように、ロータ5は、円筒状のロータ本体500と、ロータ本体500の回転軸520に対して軸対称に形成された一対のベーン(回転翼)501と、を有する。
【0039】
ベーン501は、ロータ5の回転軸520に沿って形成され、ロータ本体500の外周面504から径方向外方へ突出し、先端面505がケース2の円筒室200の内周面203と近接して、円筒室200を仕切る。ベーン501には、ベーン501の先端面505と円筒室200の内周面203との間、ベーン501の上面507と蓋7の下面704(図7参照)との間、およびベーン501の下面506とトルク調整板8の上面803(図8参照)との間を塞ぐシール材として機能する摺動部材508が必要に応じて装着される(図1図2参照)。摺動部材508の素材には、ポリアミド等の摺動性に優れた樹脂が用いられる。
【0040】
ロータ本体500には、外部からの回転力をロータ5に伝達する六角シャフト(不図示)を挿入するための貫通孔509が、回転軸520を中心にして形成されている。そして、ロータ本体500の上端部502は、蓋7の開口部700(図8参照)に回転可能に挿入され、ロータ本体500の下端部503は、ケース2の円筒室200の底部201に配置されたトルク調整板8の開口部800(図8参照)に回転可能に挿入される(図2参照)。なお、トルク調整板8の開口部800から粘性流体6が外部に漏れないようにするために、Oリング等のシール材(不図示)を、ロータ本体500の下端部503とトルク調整板8の開口部800との間に介在させてもよい。
【0041】
蓋7は、それぞれ逆止弁4が取り付けられた一対の仕切り部3、ロータ5、およびトルク調整板8を、粘性流体6とともにケース2内に封じ込める。
【0042】
図7(A)〜図7(C)は、蓋7の正面図、側面図、および背面図であり、図7(D)は、図7(A)に示す蓋7のE−E断面図である。
【0043】
図示するように、蓋7には、ケース2の円筒室200の底部201に形成された開口部202と対向する位置に、蓋7の上面703および下面704を貫く開口部700が形成されている。この開口部700には、ロータ5のロータ本体500の上端部502が挿入される。また、蓋7の外周面701には、ケース2の円筒室200の内周面203の開口側206に形成された雌ネジ部207と螺合する雄ネジ部702が形成されている。なお、蓋7の開口部700から粘性流体6が外部に漏れないように、Oリング等のシール材(不図示)を、ロータ5のロータ本体500の上端部502と蓋7の開口部700との間に介在させてもよい。同様に、蓋7の雄ネジ部702とケース2の円筒室200の雌ネジ部207との螺合部分から粘性流体6が外部に漏れないように、Oリング等のシール材(不図示)を、蓋7の外周面701とケース2の円筒室200の内周面203との間に介在させてもよい。
【0044】
トルク調整板8は、ケース2の円筒室200の底部201に配置され、円筒室200の底部201とロータ5のベーン501との隙間を塞ぐ。
【0045】
図8(A)〜図8(C)は、トルク調整板8の正面図、側面図および背面図であり、図8(D)は、図8(A)に示すトルク調整板8のF−F断面図である。
【0046】
図示するように、トルク調整板8は、中央にロータ5のロータ本体500の下端部503が挿入される開口部800が形成された円板状のトルク調整板本体801と、トルク調整板本体801の下面(ケース2の円筒室200の底部201と対面する側の面)804において開口部800と連結された筒状の操作部802と、を有する。
【0047】
トルク調整板本体801は、ケース2の円筒室200の内径より僅かに小さな外径を有し、その上面805には、ロータ5の回転方向におけるベーン501の厚みL4よりも長い長さL3を円周方向に有する一対の溝状の迂回路805が、トルク調整板8の中心線830に対して軸対称となるように形成されている。
【0048】
操作部802は、ケース2の開口部200の長さL6よりも長い長さL5を有し、ケース2の開口部202に挿入され、その先端部806がケース2の開口部202から露出する(図1参照)。操作者は、この露出した先端部806を操作することにより、ケース2に対してトルク調整板本体801を相対的に回転させることができ、これにより、迂回路805を任意の位置に配置することができる。そして、ケース2の開口部202のネジ孔204に規制ネジ91を螺合させ、規制ネジ91の先端を操作部802に押し付けることにより、トルク調整板本体801のケース2に対する相対的な回転が規制され、これにより、迂回路805を任意の位置に固定することができる。
【0049】
つぎに、ロータリダンパ1の動作原理を説明する。
【0050】
図9(A)および図9(B)は、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合の動作原理を説明するための図である。また、図10は、ケース2に対してロータ5が第二回転方向R2に相対的に回転した場合の動作原理を説明するための図である。
【0051】
まず、図9(A)および図9(B)に示すように、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合、ロータ5のベーン501と仕切り部3の第一回転方向R1の上流側に位置する端面306との間の領域217が圧縮される。
【0052】
その結果、領域217内の粘性流体6の圧力によって、逆止弁4が流路303を閉門するため、領域217からロータ5のベーン501と仕切り部3の第一回転方向R1の下流側に位置する端面305との間の領域218への流路303経由による粘性流体6の移動は行われない。しかしながら、図9(A)に示すように、ロータ5の回転方向におけるベーン501の両端面508a、508bが円周方向において迂回路805内に位置している場合、領域217および領域218が迂回路805を介して連結され、この迂回路805を介して領域217から領域218への移動が行われる。このため、領域217内の粘性流体6の圧力はそれほど高くならず、このロータ5の第一回転方向R1の回転力に対して弱い制動トルクを発生させる。
【0053】
その後、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1にさらに相対的に回転し、図9(B)に示すように、ロータ5の回転方向におけるベーン501の両端面508a、508bの少なくとも一方が円周方向において迂回路805外に位置している場合、迂回路805による領域217および領域218間の連結が分断され、領域217から領域218への迂回路805経由による粘性流体6の移動は行われない。これにより、粘性流体6の移動が、仕切り部3の外周面300とロータ5のロータ本体500の外周面504との隙間、トルク調整板8の上面803とロータ5のベーン501の下面506との隙間、および蓋7の下面704とロータ5のベーン501の上面507との隙間を介してのみに制限され、領域217内の粘性流体6の圧力が高まる。このため、このロータ5の第一回転方向R1の回転力に対して強い制動トルクを発生させる。
【0054】
一方、図10に示すように、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1の逆回転方向である第二回転方向R2に相対的に回転した場合、ロータ5のベーン501と仕切り部3の第二回転方向R2の上流側に位置する端面305との間の領域218が圧縮される。
【0055】
その結果、この領域218内の粘性流体6が流路303に流れ込む。この流路303内に流れ込んだ粘性流体6の力により、逆止弁4が流路303を開門し、領域218から流路303内に流れ込んだ粘性流体6は、領域217へ排出される。このため、領域218内の粘性流体6の圧力はそれほど高くならず、このロータ5の第二回転方向R2の回転力に対して弱い制動トルクを発生させる。
【0056】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0057】
本実施の形態では、ケース2の円筒室200の底部201に、円筒室200の底部201とロータ5のベーン501との隙間を塞ぐトルク調整板8を配置するとともに、このトルク調整板8のトルク調整板本体801の上面803に、ロータ5の回転方向におけるベーン501の厚みL4よりも長い長さL3を円周方向に有する溝状の迂回路805を形成している。そして、ロータ5がケース2に対して第一回転方向R1へ相対的に回転した場合、ロータ5の回転方向におけるベーン501の両端面508a、508bが迂回路805内に位置しているならば、ロータ5の第一回転方向R1に対してベーン501の上流側の領域218と下流側の領域217とが迂回路805を介して連結され、粘性流体6の領域217から領域218への迂回路805経由での移動が可能となる。このため、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対して強い制動トルクは発生しない。
【0058】
その後、ロータ5がケース2に対して第一回転方向R1へさらに相対的に回転し、ロータ5の回転方向におけるベーン501の両端面508a、508bの少なくともいずれか一方が迂回路805外となったならば、ロータ5の第一回転方向R1に対してベーン501の上流側の領域218と下流側の領域217とが迂回路805を介して連結されず、粘性流体6の領域217から領域218への迂回路805経由での移動が不可能となる。このため、ロータ5に加えられた第一回転方向R1の回転力に対して強い制動トルクが発生する。
【0059】
したがって、本実施の形態によれば、迂回路805を構成する溝の長さ、配置位置を変更することにより、ロータ5に加えられた回転力に対する強い制動トルクの発生タイミングを任意に設定することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、トルク調整板8に、ケース2の開口部202の長さL6よりも長い長さL5を有し、ケース2の開口部202に挿入され、その先端部806がケース2の開口部202から露出する操作部802を設けている。このため、操作者は、この露出した先端部806を操作することにより、ケース2に対してトルク調整板本体801を相対的に回転させることができ、これにより、迂回路805を任意の位置に配置することができる。そして、ケース2の開口部202のネジ孔204に規制ネジ91を螺合させ、規制ネジ91の先端を操作部802に押し付けることにより、トルク調整板本体801のケース2に対する相対的な回転が規制され、これにより、迂回路805を任意の位置に固定することができる。
【0061】
また、本実施の形態において、ロータ5のベーン501に、ベーン501の先端面505と円筒室200の内周面203との間、ベーン501の下面506と円筒室200の底部201との間、およびベーン501の上面507と蓋7の下面704との間を塞ぐシール材として機能する摺動部材508を装着することにより、これらの隙間を塞ぎつつ摺動性を向上させることができる。このため、ロータ5に加えられた回転力に対して、より高い制動トルクを実現しつつ、外部からの回転力をロータ5に伝達する六角シャフトを滑らかに回転させることができる。
【0062】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0063】
例えば、上記の実施の形態では、ケース2の円筒室200の底部201にトルク調整板8を配置することにより、円筒室200の底部201側に迂回路805を形成している。しかし、本発明はこれに限定されない。迂回路を蓋7の下面704側に形成してもよいし、あるいは、円筒室200の内周面203側に形成してもよい。
【0064】
図11(A)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の第一の変形例1Aの概略断面図である。
【0065】
図11(A)に示すロータリダンパ1Aが本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1と異なる点は、トルク調整板8が、操作部802を蓋7の開口部700に挿入し、トルク調整板本体801の迂回路805が形成された面を円筒室200に向けて、蓋7の裏面704に配置され、蓋7の下面704とロータ5のベーン501との隙間を塞いでいる点、蓋7の上面703において開口部700の周囲に、蓋7の厚みを加えた合計長がトルク調整板8の操作部802の長さより短い環状凸部705を形成し、トルク調整板8の操作部802の先端部806を環状凸部705から露出させた点、および、この環状凸部705に規制ネジ91と螺合する一対のネジ孔を形成した点である。その他の構成は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1と同様である。
【0066】
本実施の形態においても、操作者は、蓋7の上面703に形成された環状凸部705から露出したトルク調整板8の操作部802の先端部806を操作することにより、ケース2に対してトルク調整板本体801を相対的に回転させることができ、これにより、迂回路805を任意の位置に配置することができる。そして、この環状凸部705のネジ孔に規制ネジ91を螺合させ、規制ネジ91の先端を操作部802に押し付けることにより、トルク調整板本体801のケース2に対する相対的な回転が規制され、これにより、迂回路805を任意の位置に固定することができる。その他の効果は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1と同様である。
【0067】
図11(B)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の第二の変形例1Bの概略断面図である。
【0068】
図11(B)に示すロータリダンパ1Bが本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1と異なる点は、仕切り部3の外周面300とケース2の円筒室200の内周面203との間に隙間が形成されるようにして、仕切りブロック30a、30bが、円筒室200の底部201に積み重ねられ、円筒室200の底部201に設けられた貫通孔を介して固定ボルト92で固定されることにより、仕切り部3が、逆止弁4が取り付けられた状態で円筒室200内に収容されている点、トルク調整板8に代えてトルク調整筒82を設けた点、蓋7の上面703において開口部700の周囲に環状凸部705を形成した点、および、この環状凸部705に規制ネジ91と螺合する一対のネジ孔を形成した点である。その他の構成は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1と同様である。
【0069】
トルク調整筒82は、下端側が開口し、上端側にロータ5のロータ本体500の上端部502が挿入される開口部820を有する端面822が形成されたトルク調整筒本体821と、トルク調整筒本体821の端面822の反対側の面824において開口部820と連結された筒状の操作部823と、を有する。
【0070】
トルク調整筒本体821は、ケース2の円筒室200の内径より僅かに小さな外径と、仕切り部3の外周面300およびロータ5のベーン501の先端面505を含む円の直径より僅かに大きな外径と、を有し、円筒室の内周面203と仕切り部3の外周面300およびベーン501の先端面505のそれぞれとの隙間を塞ぐように、円筒室200に装着される。トルク調整筒本体821の側面827には、ロータ5の回転方向におけるベーン501の厚みL4よりも長い長さを円周方向に有する一対のスリット状の迂回路825が、トルク調整筒8の中心線840に対して軸対称となるように形成されている。
【0071】
操作部823は、蓋7の厚みおよび環状凸部705の長さの合計長より長く、蓋7の開口部700に挿入され、その先端部826が蓋7の環状凸部705から露出する。
【0072】
本実施の形態においても、操作者は、蓋7の上面703に形成された環状凸部705から露出したトルク調整筒82の操作部823の先端部826を操作することにより、ケース2に対してトルク調整筒本体821を相対的に回転させることができ、これにより、迂回路825を任意の位置に配置することができる。そして、この環状凸部705のネジ孔に規制ネジ91を螺合させ、規制ネジ91の先端を操作部823に押し付けることにより、トルク調整筒本体821のケース2に対する相対的な回転が規制され、これにより、迂回路825を任意の位置に固定することができる。その他の効果は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1と同様である。
【0073】
また、上記の実施の形態では、規制ネジ91によりトルク調整板8のケース2に対する相対的な回転を規制しているが、本発明はこれに限定されない。ケース2に対してトルク調整板8を相対的に回転させて、迂回路805を任意の位置に配置した後、接着剤等のその他の手段によりトルク調整板8をケース2に固定して、トルク調整板8のケース2に対する相対的な回転を規制してもよい。
【0074】
また、上記の実施の形態では、トルク調整板8を用いて迂回路805を形成する場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。ケース2の円筒室200の底部201、内周面203、もしくは蓋7の下面704に、ロータ5の回転方向におけるベーン501の厚みL4よりも長い長さを円周方向に有する一対の溝状の迂回路を直接形成してもよい。
【0075】
また、上記の実施の形態では、流路303を仕切り部3に形成した場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。ロータ5のベーン501に領域217および領域218間を繋ぐ流路を形成してもよい。
【0076】
また、上記の実施の形態では、ケース2の円筒室200に一対の仕切り部3を設けるとともに、ロータ5に一対のベーン501を設けた場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。仕切り部3およびベーン501は、互いに同数であれば、1または3以上形成されていてもよい。この場合、迂回路805も同数形成する。
【0077】
また、上記の実施の形態では、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1に相対的に回転した場合に強い制動トルクを発生させ、第一回転方向R1の逆回転方向である第二回転方向R2に相対的に回転した場合には弱い制動トルクを発生させる、いわゆる一方向性のロータリダンパを例にとり説明した。しかし、本発明は、ケース2に対してロータ5が第一回転方向R1および第二回転方向R2のいずれの方向に相対的に回転した場合でも強い制動トルクを発生させる、いわゆる双方向性のロータリダンパにも適用可能である。
【0078】
本発明に係るロータリダンパは、例えば、自動車、鉄道車両、航空機、船舶等で用いられるリクライニング機能付きの座席シートに広く適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1、1A、1B:ロータリダンパ、 2:ケース、 3:仕切り部、 4:逆止弁、 5:ロータ、 6:粘性流体、 7:蓋、 8:トルク調整板、30a、30b:仕切りブロック、 82:トルク調整筒、 200:円筒室、 201:円筒室200の底部、 202:円筒室200の開口部、 203:円筒室の内周面、 204:ネジ孔、 205:円筒室の外周面、 206:円筒室200の開口側、 207:円筒室200の雌ネジ部、208a、208b:挿入孔、 209:開口部202の内周面、 210:開口部202の外周面、 211:装着部、 220:円筒室200の中心線、 300:仕切り部3の外周面、 301:仕切り部3の内周面、 303:流路、 304a、304b:ボルト穴、 305、306:仕切り部3の端面、 307:ストッパ、 400:弁部、 401:係止部、 402:連結部、 500:ロータ本体、 501:ベーン、 502:ロータ本体500の上端部、 503:ロータ本体500の下端部、 504:ロータ本体500の外周面、 505:ベーン501の先端面、 506:ベーン501の下面、 507:ベーン501の上面、 508:シール材、 509:ロータ本体500の貫通孔、 520:ロータ5の回転軸、 700:蓋7の開口部、 701:蓋7の外周面、 702:蓋7の雄ネジ部、 703:蓋7の上面、 704:蓋7の下面、 705:環状凸部、 800:トルク調整板8の開口部、 801:トルク調整板本体、 802:トルク調整板8の操作部、 803:トルク調整板本体801の上面、 804:トルク調整板本体801の下面、 805:迂回路、 806:操作部802の先端部、 820:トルク調整筒82の開口部、 821:トルク調整筒本体、 822:トルク調整筒82の端面、 823:トルク調整筒82の操作部、 824:トルク調整筒本体821の端面822の反対側の面、 825:迂回路、 826:操作部823の先端部、 827:トルク調整筒本体821の側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11