特許第6817122号(P6817122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6817122溶接パス特定方法、プログラム、教示プログラム及び溶接ロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817122
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】溶接パス特定方法、プログラム、教示プログラム及び溶接ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4093 20060101AFI20210107BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20210107BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20210107BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20210107BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   G05B19/4093 H
   G05B19/42 J
   B25J9/22 A
   B23K37/00 Z
   B23K31/00 K
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-54688(P2017-54688)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-156566(P2018-156566A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】定廣 健次
(72)【発明者】
【氏名】焦 有卓
(72)【発明者】
【氏名】本田 修平
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 尊信
(72)【発明者】
【氏名】中尾 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村上 元章
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−321057(JP,A)
【文献】 特開2010−184278(JP,A)
【文献】 特開2001−282335(JP,A)
【文献】 特開平10−187223(JP,A)
【文献】 特開2002−035939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4093
B23K 31/00
B23K 37/00
B25J 9/22
G05B 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体を構成する部材である少なくとも二つの被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する溶接パス特定方法であって、
3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、配置関係および形状に基づいて前記少なくとも二つの被溶接部材それぞれの種類を特定し、前記少なくとも二つの被溶接部材それぞれの種類の組み合わせにより、互いに接触し得る第1の被溶接部材および第2の被溶接部材を特定するステップと、
前記第1の被溶接部材の一つの面に接触するとともに、当該一つの面の法線ベクトルに平行な法線ベクトルを有する前記第2の被溶接部材の第1の面を抽出するステップと、
前記第2の被溶接部材が有する面のうち、前記第1の面に直交する第2の面を抽出するステップと、
前記第1の面および前記第2の面が共有する共有エッジを抽出するステップと、
前記共有エッジに対応して、前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材を溶接する溶接パスを特定するステップと、
を含む溶接パス特定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接パス特定方法であって、
前記第1の面が前記第2の被溶接部材の板厚面であり、前記第2の面が前記第2の被溶接部材の主面である、溶接パス特定方法。
【請求項3】
船体を構成する部材である二つの被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する溶接パス特定方法であって、
3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、配置関係および形状に基づいて前記少なくとも二つの被溶接部材それぞれの種類を特定し、前記少なくとも二つの被溶接部材それぞれの種類の組み合わせにより、互いに接触し得る第1の被溶接部材および第2の被溶接部材を特定するステップと、
前記第1の被溶接部材に接触する前記第2の被溶接部材の第1の面を抽出するステップと、
前記第1の被溶接部材から、前記第1の面が接触する接触面を抽出するステップと、
前記第1の面から、前記接触面に重なるエッジを抽出するステップと、
前記エッジに対応して、前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材を溶接する溶接パスを特定するするステップと、
を含む溶接パス特定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の溶接パス特定方法であって、
前記第1の面が前記第2の被溶接部材の主面であり、前記接触面が前記第1の被溶接部材の主面である、溶接パス特定方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の溶接パス特定方法であって、
前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材が、船体用の外板、トランス、ガーダー、ロンジ、カラープレート、スチフナ、のうち少なくともいずれか一つである、溶接パス特定方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の溶接パス特定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の溶接パス特定方法により特定した溶接パスを溶接ロボットに教示するための教示プログラム。
【請求項8】
船体を構成する部材である少なくとも二つの被溶接部材を溶接する溶接ロボットと、
前記溶接ロボットの動作を、所定の動作プログラムに則って制御するコンピュータと、を含む溶接ロボットシステムであって、
前記コンピュータは、
3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、配置関係および形状に基づいて前記少なくとも二つの被溶接部材それぞれの種類を特定し、前記少なくとも二つの被溶接部材それぞれの種類の組み合わせにより、互いに接触し得る第1の被溶接部材および第2の被溶接部材を特定し、
前記第1の被溶接部材の一つの面に接触するとともに、当該一つの面の法線ベクトルに平行な法線ベクトルを有する前記第2の被溶接部材の第1の面を抽出し、
前記第2の被溶接部材が有する面のうち、前記第1の面に直交する第2の面を抽出し、
前記第1の面および前記第2の面が共有する共有エッジを抽出し、
前記共有エッジに対応して、前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する、
溶接ロボットシステム。
【請求項9】
船体を構成する部材である少なくとも二つの被溶接部材を溶接する溶接ロボットと、
前記溶接ロボットの動作を、所定の動作プログラムに則って制御するコンピュータと、を含む溶接ロボットシステムであって、
前記コンピュータは、
3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、配置関係および形状に基づいて前記少なくとも二つの被溶接部材それぞれの種類を特定し、前記少なくとも二つの被溶接部材それぞれの種類の組み合わせにより、互いに接触し得る第1の被溶接部材および第2の被溶接部材を特定し、
前記第1の被溶接部材に接触する前記第2の被溶接部材の第1の面を抽出し、
前記第1の被溶接部材から、前記第1の面が接触する接触面を抽出し、
前記第1の面から、前記接触面に重なるエッジを抽出し、
前記エッジに対応して、前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する、
溶接ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体の構造物の枠組みを組み立てるための、溶接パス特定方法、プログラム、教示プログラム及び溶接ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型船の枠組み構造物の一つである船殻平板ブロックは、平板状のパネルの表面に複数列のロンジを配置し、ロンジと直交する方向にトランスを一定間隔で配置し、パネルとロンジとトランスとで形成された三方又は四方で囲まれた構造物であり、パネルとロンジとトランスとが交差する部分を自動溶接ロボットで溶接する技術が知られている(特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1に記載された枠組構造物への位置決め装置は、枠組構造物の底板上を位置決め方向に走行できる走行輪を備えた位置決め台と、この位置決め台の位置決め方向両側に取付けられ両側に等圧等ストロークで伸縮されて枠組構造物の両側壁に押し当てることで当該位置決め台を位置決め方向中央に走行させる位置決めアームとからなり、大型の枠組構造物であっても簡単な装置で高精度に位置決めすることができることが開示されている。
【0004】
特許文献2に記載された大型枠組構造物の溶接装置は、1対のロンジと1又は1対のトランスで囲まれた升目形状の枠内を溶接対象領域とし、該溶接対象領域を跨いで大型枠組構造物に固定され、前記溶接対象領域の上部に位置する水平支持架台を有するロボット架台と、該水平支持架台の下面に取付けられ、前記升目形状枠内の全域にわたり溶接ヘッドを3次元的に数値制御して溶接可能な溶接ロボットとを備えており、パネル上にロンジとトランスが交差している大型の枠組構造物の交差部を本溶接することができ、本溶接が可能な溶接部位の制約が少なく、人手に頼る手溶接がほとんど不要であり、大型ガントリ構造による従来のマルチロボット溶接装置と比較して装置全体を小型化でき、複雑な制御システムが不要であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−228883号公報
【特許文献2】特開2010−253518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2には、溶接ロボットで船体を構成する部材同士を溶接することが開示されているが、船舶の大型化に伴い枠組み構造物が複雑化し、複数の溶接ロボットを同時にコントロールする要望に対応できない可能性がある。即ち、被溶接部材の種類と位置関係を正確に特定していないため、溶接パスに対して適切に溶接ロボットを位置決めすることが難しく、円滑な溶接作業が困難になるという課題がある。
【0007】
本発明は、溶接パスを特定して円滑な溶接作業を行うことができる溶接パス特定方法、プログラム、教示プログラム及び溶接ロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の溶接パス特定方法は、船体を構成する部材である少なくとも二つの被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する溶接パス特定方法であって、3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、互いに接触し得る第1の被溶接部材および第2の被溶接部材を特定するステップと、前記第1の被溶接部材の一つの面に接触するとともに、当該一つの面の法線ベクトルに平行な法線ベクトルを有する前記第2の被溶接部材の第1の面を抽出するステップと、前記第2の被溶接部材の第2の面を抽出するステップと、前記第1の面および前記第2の面が共有する共有エッジを抽出するステップと、前記共有エッジに対応して、前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材を溶接する溶接パスを特定するステップと、を含む。
【0009】
本発明の溶接パス特定方法は、船体を構成する部材である二つの被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する溶接パス特定方法であって、3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、互いに接触し得る第1の被溶接部材および第2の被溶接部材を特定するステップと、前記第1の被溶接部材に接触する前記第2の被溶接部材の第1の面を抽出するステップと、前記第1の被溶接部材から、前記第1の面が接触する接触面を抽出するステップと、前記第1の面から、前記接触面に重なるエッジを抽出するステップと、前記エッジに対応して、前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材を溶接する溶接パスを特定するするステップと、を含む。
【0010】
本発明のプログラムは、前記溶接パス特定方法をコンピュータに実行させる。
【0011】
本発明の教示プログラムは、前記溶接パス特定方法により特定した溶接パスを溶接ロボットに教示する。
【0012】
本発明の溶接ロボットシステムは、船体を構成する部材である少なくとも二つの被溶接部材を溶接する溶接ロボットと、前記溶接ロボットの動作を、所定の動作プログラムに則って制御するコンピュータと、を含む溶接ロボットシステムであって、前記コンピュータは、3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、互いに接触し得る第1の被溶接部材および第2の被溶接部材を特定し、前記第1の被溶接部材の一つの面に接触するとともに、当該一つの面の法線ベクトルに平行な法線ベクトルを有する前記第2の被溶接部材の第1の面を抽出し、前記第2の被溶接部材の第2の面を抽出し、前記第1の面および前記第2の面が共有する共有エッジを抽出し、前記共有エッジに対応して、前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する。
【0013】
本発明の溶接ロボットシステムは、船体を構成する部材である少なくとも二つの被溶接部材を溶接する溶接ロボットと、前記溶接ロボットの動作を、所定の動作プログラムに則って制御するコンピュータと、を含む溶接ロボットシステムであって、前記コンピュータは、3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、互いに接触し得る第1の被溶接部材および第2の被溶接部材を特定し、前記第1の被溶接部材に接触する前記第2の被溶接部材の第1の面を抽出し、前記第1の被溶接部材から、前記第1の面が接触する接触面を抽出し、前記第1の面から、前記接触面に重なるエッジを抽出し、前記エッジに対応して、前記第1の被溶接部材および前記第2の被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の溶接パス特定方法、プログラム、教示プログラム及び溶接ロボットシステムは、各被溶接部材を特定して、その位置関係から溶接パスを算出して正確に特定するため、複数台の溶接ロボットそれぞれが所定の位置で溶接を確実に行い、作業効率を向上させることができるため、特に被溶接部材数の多い大型船体の組立に適している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る溶接ロボットシステムの一例を示し、(a)全体の概念図、(b)コンピュータのブロック図の一例。
図2】本発明に係る溶接ロボットシステムにより溶接する船体の部材である各被溶接部材の配置の一例を示す正面斜視図。
図3】本発明に係る各被溶接部材の定義を説明する概念図、(a)外板(b)外板から除外されるケース、(c)トランス、ガーダー、ロッジ、(d)カラープレート。
図4】本発明に係る各被溶接部材の組合せの一例を示す表。
図5】本発明に係る溶接ロボットで溶接する被溶接部材の配置の実施例1で、(a)外板とトランスの接合を示す斜視図、(b)定義される面の説明図。
図6図5に続く実施例2で、(a)外板とカラープレートの接合を示す正面斜視図、(b)(a)の背面斜視図。
図7図6に続く一例で、(a)実施例3の正面斜視図、(b)実施例4の正面斜視図。
図8】本発明に係る溶接パス特定方法の第1実施形態を示すフローチャート図。
図9】本発明に係る溶接ロボットで溶接する被溶接部材の配置の実施例5で、(a)正面斜視図、(b)背面斜視図。
図10】本発明に係る溶接パス特定方法の第2実施形態を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る溶接パス特定方法、プログラム、教示プログラム及び溶接ロボットシステムの好適な実施形態を、図1図10に基づいて詳述する。
【0017】
図1は、本実施形態の溶接ロボットシステムの一例を示す概念図である。図2は、船体の部材である各被溶接部材の配置の一例を示す正面斜視図である。図1及び図2を用いて、本実施形態の溶接ロボットシステムを説明する。
【0018】
本実施形態の溶接ロボットシステムは、船体を作る工場100内に設置され、溶接ロボット1と、溶接ロボット1を制御するコンピュータ2とを備える。本実施形態では、複数の溶接ロボット1が、工場100内の天井クレーン101から左右上下方向に対して駆動自在に垂下され、溶接ロボット1を制御するコンピュータ2は、例えば、制御室102内に設置されている。また、工場100内の床近傍には、船体を構成する部材である被溶接部材10が複数配置されている。
【0019】
コンピュータ2は、溶接ロボットシステムを統括、制御する制御部3と、プログラムや各種データを記憶する記憶部4と、キーボードやタッチパネル等の入力部5と、プリンター等の出力部6を備える。また、入力部5と出力部6は、各溶接ロボット1を駆動させるために、各溶接ロボット1に備えられた端末機と制御信号、データ等を送受信する。各被溶接部材10同士を接合固定する溶接ロボット1の動作は、コンピュータ2の記憶部4に記憶された所定の動作プログラムに則って制御され、各被溶接部材10の所定の箇所を溶接する。尚、図1で示された構成は、一例であり、限定されない。
【0020】
「被溶接部材」とは構造物を構成する各構成部材であり、外板11、トランス12、ガーダー13、ロンジ14、カラープレート15、スチフナ16等である。これら各被溶接部材10の配列の一例を図2の正面斜視図に示している。外板11が工場100内床にシート状に配置され、外板11の上面11aに複数のトランス12が設置され、トランス12と直交する方向に複数のガーダー13が配置され、各ガーダー13間にガーダー13と平行に複数のロンジ14がそれぞれ配置され、トランス12とロンジ14との接合近傍であって、ロンジ14の下方に複数のカラープレート15、ロンジ14の上方にスチフナ16がそれぞれ配置されている。尚、当該配置関係は一例であり、限定されない。
【0021】
コンピュータ2で溶接ロボット1に溶接する箇所である溶接パスを指定するため、各被溶接部材10を定義する必要がある。図3図4を参照して、各被溶接部材10の定義を説明する。
【0022】
外板11は、スキンプレートとも呼ばれベースとなる鋼板パネルで、フェースグループで面積が最大となる被溶接部材10である(図3a)参照)。被溶接部材10が単一で最大面積である場合、グループで見ると大きな板が存在するため外板11とは定義しない(図3(b)参照)。
【0023】
トランス12、ガーダー13、ロンジ14、は、外板11の上面部材の内、それ以外(例えばカラープレート15など)と比較して、表面積が大きい被溶接部材10である。トランス12は、通常、船体の横方向(Transverse)に配置され、ロンジ14は、通常、船体の縦方向(Longitudinal)に配置される。ガーダー13は、トランス12と垂直方向に配置され、ロンジ14と平行な被溶接部材10である。
【0024】
そして、ロンジ14は、トランス12及びガーダー13に比較して、高さの違いで判断する。図3(c)に示す通り、所定の高さの規定値Lを基準として低い被溶接部材10をロンジ14、高い被溶接部材10をトランス12又はガーダー13とするが、ロンジ14と平行の被溶接部材10をガーダー13とする。
【0025】
トランス12と表面同士で接触する被溶接部材10をカラープレート15とする。また、スチフナ16は、トランス12とロンジ14と接合する被溶接部材10である。
【0026】
図4は、記憶部4に登録された各被溶接部材10の組合せ表である。表から、例えば、外板11は、トランス12とカラープレート15と接合し、トランス12はカラープレート15とスチフナ16と接合することが理解できる。
【0027】
溶接される各被溶接部材10の組合せの具体的一例を説明する。図5は、実施例1で、外板11とトランス12とを溶接する場合を示し、(a)は外板とトランスの接合を示す斜視図であり、(b)は定義される面の説明図である。
【0028】
外板11は、工場100内の床に載置され、外板11の上面11aにトランス12の下面が接合する。また、トランス12において、板厚方向の面を第1の面20、第1の面20と直交する面を第2の面21、第1の面20と第2の面が共有するエッジを共有エッジ22と定義する。
【0029】
第2の面21は、トランス12において面積が広い面であり主面でもある。また、外板11においても上面11aが主面である。
【0030】
外板11とトランス12の接合において、外板11の上面11aでは、上方向に法線ベクトルA(矢印A参照)が存在し、トランス12の第1の面20から下方向に法線ベクトルAと平行な法線ベクトルB(矢印B参照)が存在する。
【0031】
図6は、実施例2で、外板11とカラープレート15とを溶接する場合を示し、図6(a)は、正面斜視図、図6(b)は背面斜視図である。実施例1と同様に、外板11の上面11aにカラープレート15の下面が接合する。また、カラープレート15において、板厚方向の面を第1の面20、第1の面20と直交する面を第2の面21、第1の面20と第2の面が共有するエッジを共有エッジ22と実施例1と同様に定義する。また、同様に、カラープレート15の第1の面20から下方向に法線ベクトルAと平行な法線ベクトルBが存在する。
【0032】
図7(a)は、実施例3でトランス12とガーダー13とを溶接する場合を示す正面斜視図、(b)は、実施例4で、トランス12とスチフナ16とを溶接する場合を示す正面斜視図である。
【0033】
実施例3では、ガーダー13の主面13aにトランス12の第1の面20が接合し、第1の面20と直交する面を第2の面21、第1の面20と第2の面21が共有するエッジを共有エッジ22と実施例1と同様に定義する。また、同様に、トランス12の第1の面20から横方向に法線ベクトルAと平行な法線ベクトルBが存在する。
【0034】
実施例4では、トランス12の主面12aにスチフナ16の第1の面20が接合し、第1の面20と直交する面を第2の面21、第1の面20と第2の面が共有するエッジを共有エッジ22と実施例1と同様に定義する。また、同様に、スチフナ16の第1の面20から横方向に法線ベクトルAと平行な法線ベクトルBが存在する。
【0035】
本実施形態の溶接パスの特定方法は、船体を構成する少なくとも二つの被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する方法であり、第1実施形態の特定方法は、以下のステップで行われる。実施例1から実施例4は、当該ステップで行われ、実施例1の外板11とトランス12の組合せを例として説明する。フローチャート図は、図8を参照。
【0036】
コンピュータ2の記憶部4に記憶された3次元CADデータにおける被溶接部材10の形状から、制御部3は、図4に示された組合せ表を参酌して、互いに接触し得る二つの被溶接部材10である外板(第1の被溶接部材)11とトランス(第2の被溶接部材)12を特定する(ステップS1)。そして、コンピュータ2に制御される溶接ロボット1は、当該二つの被溶接部材10を溶接する自動溶接機である。
【0037】
次に、制御部3は、外板11の一つの面(上面11a)に接触するとともに、一つの面の法線ベクトルAに平行な法線ベクトルBを有するトランス12の第1の面20を抽出する(ステップS2)。即ち、トランス12の面の内、外板11と面接触する面(第1の面20)を取得する。取得方法は、法線ベクトルに着目し互いに平行な法線ベクトル(A及びB)のある面(第1の面20)を特定する。
【0038】
そして、制御部3は、トランス12の第2の面21を抽出する(ステップS3)。
【0039】
さらに、制御部3は、第1の面20および第2の面21が共有する共有エッジ22を抽出する(ステップS4)。
【0040】
そして、制御部3は、共有エッジに22対応して、外板11およびトランス12を溶接する溶接パス30を特定する(ステップS5)。
【0041】
図9は、実施例5で、トランス12とカラープレート15を溶接する場合を示し、(a)は正面斜視図、(b)は背面斜視図である。図9(a)ではトランス12の側面である主面12aにカラープレート15の第1の面20が接触する。第1の面20に接触するトランス12の主面12aを接触面23、接触面23に重なる部分をエッジ24と定義する。また、図9(b)では、カラープレート15の側面である主面15aにトランス12の第1の面20が接触する。第1の面20に接触するカラープレート15の主面15aを接触面23、接触面23に重なる部分をエッジ24と定義する。
【0042】
本実施形態の溶接パスの特定方法は、船体を構成する少なくとも二つの被溶接部材を溶接する溶接パスを特定する方法であり、第2実施形態の特定方法は、以下のステップで行われる。実施例5は、当該ステップで行われ、実施例5のトランス12とカラープレート15の組合せに関し図9(a)を例として説明する。フローチャート図は、図10を参照。
【0043】
コンピュータ2の記憶部4に記憶された3次元CADデータにおける被溶接部材の形状から、制御部3は、図4に示された組合せ表を参酌して、互いに接触し得るトランス(第1の被溶接部材)12およびカラープレート(第2の被溶接部材)15を特定する(ステップS10)。
【0044】
次に、制御部3は、トランス12に接触するカラープレート15の第1の面20である主面を抽出する(ステップS11)。即ち。カラープレート15の面の内、トランス12と面接触する面(第1の面20)を取得する。取得方法は、法線ベクトルに着目し互いに平行な法線ベクトルのある面(第1の面20)を特定する。
【0045】
そして、制御部3は、トランス12から、第1の面20が接触する接触面23を抽出する(ステップS12)。接触面23は、トランス12の主面12aでもある。
【0046】
さらに、制御部3は、第1の面20から、接触面23に重なるエッジ24を抽出する(ステップS13)。
【0047】
そして、制御部3は、エッジ24に対応して、トランス12およびカラープレート15を溶接する溶接パス30を特定する(ステップS14)。即ち、カラープレート15の第1の面20において、トランス12接触面23に乗っているエッジ24を溶接パス候補エッジとする。
【0048】
第1実施形態及び第2実施形態として説明した上述のステップは、溶接パスの特定方法をコンピュータ2に実行させるプログラムであり、溶接ロボット1に教示するための教示プログラムでもある。当該ステップは容易であり、複数の溶接ロボット1を同時並行的に駆動させる場合、有利である。
【0049】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る溶接パス特定方法、プログラム、教示プログラム及び溶接ロボットシステムは、少なくとも二つの被溶接部材を正確に特定し、溶接する溶接パスを特定し、複数の溶接ロボットを円滑に駆動させる分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 溶接ロボット
2 コンピュータ
3 制御部
4 記憶部
10 被溶接部材
11 外板
12 トランス
13 ガーダー
14 ロンジ
15 カラープレート
16 スチフナ
20 第1の面
21 第2の面
22 共有エッジ
23 接触面
30 溶接パス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10