(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817129
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6554 20140101AFI20210107BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20210107BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20210107BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20210107BHJP
H01M 10/647 20140101ALN20210107BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01M10/613
H01M2/10 E
H01M2/10 S
!H01M10/625
!H01M10/647
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-66636(P2017-66636)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-170168(P2018-170168A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏文
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/133708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M2/10
H01M10/42−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなるケースと、角型又はパウチ型である複数の単電池を連結し、ケース底面と接触して配置し、大面積の側面を互いに対向させ、積層した電池群と、電池群を固定し、金属を含む固定部材と、を備え、
固定部材の断面形状がC形状又はO形状であり、固定部材が、電池群上部と電池群下部とから、ケース側面への2つの伝熱経路を有することを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
電池群および/または単電池と固定部材間に絶縁材料が配置されていることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
固定部材の断面形状が、O形状である場合、その内部に中間放熱経路を有することを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境規制を背景に車載用二次電池への需要が高まっている。この中で、リチウムイオン二次電池は一般に、鉛電池やニッケル水素電池などに比べて電圧が高いため、小型・高エネルギー密度化が可能であるため有望視されている。本格適用に向けてリチウムイオン二次電池に求められる点には例えば、更なる高エネルギー密度化、高出力密度化、長寿命化等があげられる。電池を高出力化するためには高電圧化とともに、例えば、大電流を電池から入・出力させる事が有効である。しかし大電流を電池から入・出力させる場合、電池の内部抵抗に由来する発熱が電池内部で生じる。発生した熱を十分に電池から取り除く事ができなかった場合、電池温度が上昇する。リチウムイオン電池の電池容量や内部抵抗等の電池特性は、電池温度によって劣化傾向が異なり、特に電池温度が高ければ高いほど劣化が進行する場合が多い。そこで、電池の放熱性能を向上させ、電池温度を低下させる技術開発が必要となっている。
【0003】
そこで、複数の単電池が組み合わされて形成された電池群において、単電池の温度上昇を抑制する技術が知られている。特許文献1には、冷却プレートの熱交換面上で絶縁性を有するセパレーターを間に挟んで複数の電池を前後に配列し、これら電池列の前後および左右に保持プレートを宛がい、保持プレート同士を締結して各電池を保持し、前記セパレーターが複数の電池を一体に並列に保持可能に各々独立した電池収納部を横並びに備えた構成が記載されている。本構成によれば、電池の冷却性能を低下させることが無くなると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−94312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術においては、電池群内の単電池の配置に依存して発生する隙間により冷却性が低下することがない電池パックが得られる。しかし、電池群内の熱伝導性だけでは電池群の冷却はできず、電池パック外部への放熱性経路を確保することが重要である。本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、単電池から発生した熱量を電池パックのケースを経由して電池パック外に排出する効果を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電池パックは、
金属からなるケースと、
角型又はパウチ型である複数の単電池を連結し
、ケース底面と接触して配置
し、大面積の側面を互いに対向させ、積層した電池群と、電池群を固定
し、金属を含む固定部材と
、を備え、固定部材
の断面形状がC形状又はO形状であり、固定部材が、電池群上部と電池群下部とから、ケース側面への2つの伝熱経路を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単電池から発生する熱を効率的に外部へ放熱できるため、電池群内にある単電池間の温度上昇を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本実施形態は以下の内容に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施可能である。
【0010】
図1はケース10と、単電池20が組み合わされて形成された電池群21と、単電池間を電気的に接続する端子30および電池群とケース外部を電気的に接続する外部端子31とからなる電池パック100の構成図である。これらの他に、図示しない制御基板や電圧、電流、温度の測定機構、電流遮断機構、単電池20の加圧機構がケース内部に収納されていても良い。
【0011】
電池群21はケース10の底面10aに接触して設置されており、電池群21の側面は少なくとも一部がケース10と接触していない。
図1は該直方体形状の電池群21において側面の4面がケース10の側面(10b1、10b2)と接触していない場合を図示した図である。
【0012】
図2は
図1で示した電池パックの上面図である。固定部材40が、電池群21の長辺部の2面に設置されている場合を示す。なお、固定部材40は、電池群21とケース10が接触していないいずれの面に設置してもよい。本発明の特徴はこの固定部材40の形状に関するものである。以下、固定部材40の形状について各実施例で説明をしていく。
【0013】
図3から
図8はそれぞれ、様々な固定部材40を用いた場合の
図2のA―A断面である。
【0014】
(実施例1)
図3は実施例1の電池パック101の断面図であり、固定部材40の形状をC形状にしたものである。本実施例では、固定部材40の形状をケース側面10b2までの上経路40Aと下経路40Bとの2つを有する形状とし、電池群21に対し、電池群上部と電池群下部からケース側面10b2へ直接伝熱経路を設けた。他の実施例と比較し、簡易で軽量な構成である。本構成は固定部材を曲げ加工で簡易に製作可能な特徴がある。
【0015】
(実施例2)
図4は実施例2の電池パック102の断面図であり、固定部材40の形状をO形状にしたものである。実施例2は、実施例1と同様の考えで固定部材40の形状をケース側面10b2までの上経路40Aと下経路40Bとの2つを有する形状としたうえで、固定部材40のケース側面10b2と接触する部分を延伸した構成となっている。
【0016】
そのため本実施例では実施例1と比較して、電池群21からケース側面10b2への伝熱経路は同等であるが、固定部材とケース側面との接触面積が増加しており、放熱性が向上する特徴がある。
【0017】
(実施例3)
図5は実施例3の電池パック103の断面図であり、固定部材40の形状をO形状とした上でさらに内部に中間放熱経路40Cを設けたものである。実施例3は、実施例2と同様の考えで固定部材40の形状をケース側面10b2までの上経路40Aと下経路40Bとの2つを有する形状とし、固定部材40のケース側面10b2と接触する部分を延伸した構成とした上で、さらにケース側面10b2までの伝熱経路を増やした形状としている。
【0018】
そのため、実施例2と比較して、固定部材とケース側面との接触面積は同等であるが、電池群21からケース側面10b2への伝熱経路が増加するため、放熱性が向上する特徴がある。
【0019】
(実施例4)
図6は実施例4の電池パック104の断面図であり、固定部材40の形状をO形状とした上でさらに内部に中間放熱経路40D(40D1、40D2)を複数個設けたものである。実施例4は、実施例3の固定部材40に電池群21からケース側面10b2への伝熱経路を複数個追加した構成(伝熱経路40D1、40D2を追加した構成)である。実施例3と比較して、固定部材とケース側面との接触面積は同等であるが、電池群21からケース側面10b2への伝熱経路がさらに増加するため、放熱性が向上する特徴がある。
【0020】
(比較例1)
図7は比較例1の電池パック201の断面図である。電池群21側面に取り付けた固定部材をケース底面10aに固定することで電池群21をケース内部へ固定する構成としており、固定部材401がケース側面10b2までの上経路と下経路との2つを有していない構造となっている。
【0021】
(比較例2)
図8は比較例2の電池パック202の断面図である。電池群21に対し、電池群21下部からケース側面10b2へ直接伝熱経路を設けた固定部材402としており、固定部材402がケース側面10b2までの上経路を有していない形状となっている。
【0022】
以下、実施例と比較例の結果に基づき本特許の効果を説明する。
【0023】
本実施例や比較例に示す構成で電池群21の発熱を模擬した結果、電池群21の温度は上昇し定常状態に達した。
図9は、実施例1、比較例1、比較例2の電池群中の最高温度と環境温度の差を示した図である。
【0024】
比較例1は、電池群21で発生した熱量が一旦ケース底面10aへ移動し、ケース側面10bへ伝熱する。比較例2は、比較例1に電池群で発生した熱量が電池群下部からケース側面10b2への直接の伝熱経路を設けた場合であり、伝熱経路の増加にかかわらず、比較例1と同様の結果となった。
【0025】
実施例1は比較例2に電池群21上部からケース側面への直接の伝熱経路を追加した場合であり、伝熱経路の増加分は比較例1に対する比較例2と同様であるが、電池群21上部へ伝熱経路を追加することで、約14倍の温度上昇抑制効果が得られた。
【0026】
実施例2から4は、断面形状から実施例1以上の温度上昇抑制効果が得られるため、省略した。
【0027】
電池群21は単電池20が互いに連結され、ケース底面10aに接触して配置されている場合、主な伝熱経路がケース底面10aとなるため、電池群21上部からケース側面10b2への伝熱経路を追加した場合に、単電池形状が円筒形でも角型でもパウチ型でも同様の効果が得られる。一方、電池群21内部の伝熱性を考慮すると、該直方体形状の角型電池またはパウチ型電池を積層する場合が、単電池間の接触面積を確保できるので好ましい。
【0028】
固定部材40は、伝熱性と電池群21を固定するための強度があれば金属や樹脂など任意の材料を使用可能である。高い熱伝導と強度を有する金属部分を内部に含むのが好ましい。金属を用いる場合でかつ単電池との絶縁を確保する必要がある場合には、単電池20と固定部材40間または固定部材40とケース間に絶縁性のある材料を介在させることが好ましく、より単電池20に近い単電池20と固定部材40間に介在させるのがなお好ましい。
【0029】
ケース10の材質は伝熱性と電池群21を固定するための強度があれば金属や樹脂など任意の材料を使用可能である。高い熱伝導と強度を有する金属部分を内部に含むのが好ましい。
【0030】
さらに、本明細書では、単電池の端子が上部になるよう電池を立てて配置した場合について記載した。単電池の端子が側面に位置するよう電池を平置きした状態で電池群を構成し、電池群をケース底面と接触するよう電池パックを構成しても良く、ケース底面から遠い電池群の上部からケース側面への伝熱経路の効果は同様に得られると考えられる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 ケース
20 単電池
21 電池群
30 端子
31 外部端子
40 固定部材