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特許6817135糖化タンパク質の分析方法、分析試薬、分析キットおよび分析用試験片
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817135
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】糖化タンパク質の分析方法、分析試薬、分析キットおよび分析用試験片
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/52 20060101AFI20210107BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20210107BHJP
   C12Q 1/28 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
   G01N33/52 A
   G01N33/66 Z
   G01N33/52 C
   !C12Q1/28
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-81508(P2017-81508)
(22)【出願日】2017年4月17日
(65)【公開番号】特開2017-198670(P2017-198670A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-87040(P2016-87040)
(32)【優先日】2016年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】中村 勤
(72)【発明者】
【氏名】濱 隆志
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−210100(JP,A)
【文献】 特開平07−151761(JP,A)
【文献】 特表平11−503522(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/016430(US,A1)
【文献】 特開2007−289096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
C12Q 1/00− 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される発色剤と生体試料とを反応させる反応工程、および、
前記発色剤の発色反応を測定する測定工程を含むことを特徴とする、糖化タンパク質の分析方法。
【化1】

前記式(1)中、
Xは、アルカリ金属イオンである。
【請求項2】
前記生体試料が、血液試料である、請求項1記載の分析方法。
【請求項3】
前記血液試料が、血清試料または血漿試料である、請求項2記載の分析方法。
【請求項4】
前記反応工程において、乾燥状態の前記発色剤に、液体状態の前記生体試料を添加することにより、両者を反応させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項5】
前記糖化タンパク質はフルクトサミンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項6】
下記式(1)で表される発色剤を含み、
請求項1から5のいずれか一項に記載の生体試料中の糖化タンパク質の分析方法に使用することを特徴とする、糖化タンパク質の分析試薬。
【化2】

前記式(1)中、
Xは、アルカリ金属イオンである。
【請求項7】
請求項6記載の分析試薬を含み、
請求項1から5のいずれか一項に記載の生体試料中の糖化タンパク質の分析方法に使用することを特徴とする、糖化タンパク質の分析キット。
【請求項8】
基板を含み、
前記基板が、試料供給領域と、反応領域とを有し、
前記試料供給領域と前記反応領域とが、流路で連結され、
前記反応領域に、請求項6記載の分析試薬が配置され、
前記基板における前記反応領域が、透明部材であることを特徴とする、糖化タンパク質の分析用試験片。
【請求項9】
前記基板が、上基板と下基板とを含む積層体であり、
前記積層体の内部が、第1空間、第2空間、および、前記第1空間と前記第2空間とを連通する前記流路を有し、
前記上基板は、前記第1空間に対応する箇所に開口部を有し、
前記上基板の前記開口部と前記第1空間とが、前記試料供給領域であり、
前記開口部が、試料供給口であり、
前記第2空間が、前記反応領域であり、
前記第2空間に対応する前記上基板の領域および前記下基板の領域の少なくとも一方に、
前記分析試薬が配置されている、請求項8記載の分析用試験片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖化タンパク質の分析方法、分析試薬、分析キットおよび分析用試験片に関する。
【背景技術】
【0002】
短期間の血糖コントロールの指標として、血中の糖化タンパク質が利用されている。血中のタンパク質は、そのN末端または側鎖のアミノ基にグルコースのアルデヒド基が結合し、さらにアマドリ転移によってアマドリ化合物である糖化タンパク質が生成される。生成された糖化タンパク質は、側鎖がフルクトース構造を取るためにフルクトサミンとも称されている。フルクトサミンは血中に存在する糖化タンパク質の総称である。
糖化タンパク質は還元性物質であることから、還元性物質との反応により発色する基質(例えば、2−(4−インドフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロライド(INT)等)を使用し、基質の発色の度合いによって糖化タンパク質が測定されている。しかし、前記基質は、糖化タンパク質以外の血中還元性物質(例えば、尿酸等)も測定するため、血中の糖化タンパク質の正確な値が得られないという問題がある。
【0003】
そこで、糖化タンパク質以外の還元性物質の影響を回避するために、以下の方法が報告されている。第1の方法は、試料について、糖化タンパク質を含む血中還元性物質と反応する第1試薬を用いて吸光度変化量を測定し、他方、糖化タンパク質以外の血中還元性物質と反応する第2試薬を用いて吸光度変化量を測定し、前者から後者を引くことにより、糖化タンパク質の正味の吸光度変化を求める方法である(特許文献1)。第2の方法は、尿酸を分解するウリカーゼや不溶性担体であるグリコサミノグリカン等による試料の前処理によって、糖化タンパク質以外の血中還元性物質の影響を回避する方法である(特許文献2および3)。
【0004】
しかしながら、第1の方法は、試料について、異なる試薬を用いた2種類の反応系(2反応系)が必要であり、手間がかかり、コスト高となる。また、第2の方法の場合、ウリカーゼの使用では、反応液に濁りが生じて、吸光度測定に影響を及ぼすという問題があり、また、前記不溶性担体であるグリコサミノグリカンの使用では、その固定化が必要であり、洗浄や反応停止等のために操作が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−308129号公報
【特許文献2】特開平07−151761号公報
【特許文献3】特開平08−226920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、糖化タンパク質を、より簡便且つ正確に分析できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の糖化タンパク質の分析方法は、下記式(1)で表される発色剤と生体試料とを反応させる反応工程、および、前記発色剤の発色反応を測定する測定工程を含むことを特徴とする。
【化1】

前記式(1)中、
Xは、アルカリ金属イオンである。
【0008】
本発明の糖化タンパク質の分析試薬は、下記式(1)で表される発色剤を含み、前記本発明の分析方法に使用することを特徴とする。
【化2】

前記式(1)中、
Xは、アルカリ金属イオンである。
【0009】
本発明の糖化タンパク質の分析キットは、前記本発明の分析試薬を含み、前記本発明の分析方法に使用することを特徴とする。
【0010】
本発明の糖化タンパク質の分析用試験片は、
基板を含み、
前記基板が、試料供給領域と、反応領域とを有し、
前記試料供給領域と前記反応領域とが、流路で連結され、
前記反応領域に、前記本発明の分析試薬が配置され、
前記基板における前記反応領域が、透明部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記式(1)で表される発色剤を使用することにより、より簡便且つ正確に、糖化タンパク質を分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の分析用試験片の一例であり、(A)は、前記分析用試験片の平面図であり、(B)は、前記(A)に示す前記分析用試験片のI−I方向からみた断面図である。
図2図2は、本発明の実施例1における吸光度の結果を示すグラフである。
図3図3は、本発明の比較例1における吸光度の結果を示すグラフである。
図4図4は、本発明の比較例2における吸光度の結果を示すグラフである。
図5A図5Aは、本発明の実施例2における吸光度の結果を示すグラフである。
図5B図5Bは、本発明の実施例2における吸光度の結果を示すグラフである。
図6A図6Aは、本発明の実施例2における吸光度の結果を示すグラフである。
図6B図6Bは、本発明の実施例2における吸光度の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の糖化タンパク質の分析方法は、例えば、前記生体試料が、血液試料である。
【0014】
本発明の糖化タンパク質の分析方法は、例えば、前記血液試料が、血清試料または血漿試料である。
【0015】
本発明の糖化タンパク質の分析方法は、例えば、前記反応工程において、乾燥状態の前記発色剤に、液体状態の前記生体試料を添加することにより、両者を反応させる。
【0016】
本発明の糖化タンパク質の分析用試験片は、例えば、
前記基板が、上基板と下基板とを含む積層体であり、
前記積層体の内部が、第1空間、第2空間、および、前記第1空間と前記第2空間とを連通する前記流路を有し、
前記上基板は、前記第1空間に対応する箇所に開口部を有し、
前記上基板の前記開口部と前記第1空間とが、前記試料供給領域であり、
前記開口部が、試料供給口であり、
前記第2空間が、前記反応領域であり、
前記第2空間に対応する前記上基板の領域および前記下基板の領域の少なくとも一方に、前記本発明の分析試薬が配置されている。
【0017】
(生体試料中の糖化タンパク質の分析方法)
本発明の糖化タンパク質の分析方法(以下、「本発明の分析方法」という。)は、前述のように、下記式(1)で表される発色剤と生体試料とを反応させる反応工程、および、前記発色剤の発色反応を測定する測定工程を含むことを特徴とする。
【化3】

前記式(1)中、
Xは、アルカリ金属イオンである。
【0018】
本発明によれば、理由は不明であるが、前記テトラゾリウム塩として前記発色剤を使用することにより、還元性物質である尿酸の影響を回避して、生体試料中の糖化タンパク質との反応を行うことができる。このため、例えば、生体試料中に糖化タンパク質の他に尿酸が共存する場合であっても、尿酸との反応により見掛けの発色が増加することを抑制でき、これによって、前記試料中に含まれる糖化タンパク質の量に対応した発色の度合いを測定できる。また、本発明は、例えば、尿酸の影響を排除するために、前述のような、2種類以上の試薬を用いた2反応系での測定が不要であり、少なくとも1反応系のみの測定で足りる(しかし、2種類以上の試薬を用いた二反応系での測定を本発明から除外する意図はない)。また、本発明は、例えば、前記発色剤の他に、尿酸の影響を回避するための前記ウリカーゼや前記不溶性担体を併用することも不要である。
【0019】
血中の糖化タンパク質は、血中に含まれるタンパク質が体内を循環する間に血中のグルコースによって糖化されて生成するアマドリ化合物であり、前記発色剤の使用によって糖化タンパク質の還元力が測定される。つまり、前記発色剤を使用することにより測定できる糖化タンパク質には血中において糖化され得るすべてのタンパク質の糖化物が含まれている。このような糖化タンパク質としては、糖化アルブミン、糖化ヘモグロビンおよび糖化グロブリンなどが挙げられる。
本発明にかかる分析方法、分析試薬、分析キットおよび分析用試験片の分析の対象は、糖化タンパク質全量(つまり、フルクトサミン)だけではなく、個別のまたは特定の糖化タンパク質のグループを含む。例えば、試料を前処理することによって、分析対象以外の糖化タンパク質を試料から除くか、または前記発色剤と反応しないようにすることによって、目的とする特定の糖化タンパク質を測定することも、本発明の範囲に含まれる。
【0020】
本発明の分析方法は、前記反応工程において、前記発色剤と生体試料とを反応させることを特徴とし、その他の工程および条件は、特に制限されない。
【0021】
本発明の分析方法は、例えば、糖化タンパク質の有無を分析する定性分析でもよいし、糖化タンパク質の量を分析する定量分析でもよい。また、本発明の分析方法は、例えば、糖化タンパク質の測定方法ということもできる。
【0022】
前記発色剤は、前述のように、Xが、アルカリ金属イオンである。前記アルカリ金属イオンは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、フランシウムイオンがあげられるが、好ましくは、ナトリウムイオン(Na)である。
【0023】
前記発色剤の具体例は、例えば、下記式(2)で表される2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−3−〔4−(4−スルホフェニルアゾ)−2−スルホフェニル〕−2H−テトラゾリウム、ナトリウム塩(「WST−9」ともいう)があげられる。
【0024】
【化4】
【0025】
前記反応工程において、前記生体試料に対する前記発色剤の添加割合は、特に制限されない。前記生体試料1μLに対して、前記発色剤は、例えば、1〜20nmol、1〜10nmol、1〜7.5nmolである。
【0026】
本発明の分析方法において、前記生体試料は、特に制限されず、例えば、糖化タンパク質の存在が予想される試料があげられ、糖化タンパク質含有の試料であってもよいし、糖化タンパク質非含有の試料であってもよい。前記生体試料は、例えば、血液試料等があげられる。前記血液試料は、例えば、赤血球、全血、血清、血漿等の試料があげられる。前記血液試料は、例えば、血球を含む場合、溶血試料でもよい。
【0027】
前記反応工程において、前記発色剤と前記生体試料との反応系は、例えば、さらに、その他の添加成分を含んでもよい。前記添加成分は、例えば、緩衝剤、界面活性剤、賦形剤、酵素等があげられる。
【0028】
前記反応系のpHは、特に制限されず、例えば、前記発色剤に応じて適宜決定できる。前記反応系のpHは、例えば、9.5〜11.5であり、前記発色剤がWST−9の場合、前記反応系のpHは、例えば、9.5〜11.5である。前記反応系のpHは、例えば、前記緩衝剤によって調整できる。緩衝剤としては、従来知られている緩衝剤を適宜使用することができ、例えば、CHES(N-Cyclohexyl-2-aminoethanesulfonic acid)、CAPS(N-Cyclohexyl-3-aminopropanesulfonic acid)、炭酸ナトリウム緩衝剤などがあげられる。
【0029】
前記酵素は、例えば、アスコルビン酸オキシダーゼ等の酸化還元酵素があげられる。
【0030】
前記界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレン ソルビタン アルキルエステル(Tween系界面活性剤等)、タウロデオキシコール酸ナトリウム、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナート、ラウリル酸アミドプロピルベタイン、オクチルフェノールエトキシレート、ドデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルおよびコール酸ナトリウム等があげられる。前記Tween系界面活性剤は、例えば、商品名Tween−20(ナカライテスク社製)があげられ、前記タウロデオキシコール酸ナトリウムは、例えば、商品名タウロデオキシコール酸ナトリウム(ナカラテスク社製)があげられ、前記3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナートは、例えば、商品名CHAPS(同仁化学研究所社製)があげられ、前記ラウリル酸アミドプロピルベタインは、例えば、商品名AmphItol 20AB(花王社製)があげられ、前記オクチルフェノールエトキシレートは、例えば、商品名TrItonX−100(ナカライテスク社製)があげられ、前記ドデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩は、例えば、商品名カプリリルスルホベタイン(東京化成工業社製)があげられ、前記ポリオキシエチレンラウリルエーテルは、例えば、商品名BrIg35(和光純薬工業社製)があげられる。
【0031】
前記賦形剤は、例えば、ソルビトール、スクロースおよびキシリトール等があげられる。
【0032】
本発明の分析方法は、前述のように、前記ウリカーゼや前記不溶性担体(例えば、グルコサミノグルカン)が不要である。このため、本発明の分析方法は、例えば、前記ウリカーゼの非存在下で行われ、具体的には、前記分析対象の生体試料に由来しない外部からのウリカーゼの非添加状態で、行われることが好ましい。また、本発明の分析方法は、例えば、前記不溶性担体(例えば、グルコサミノグルカン)の非存在下で行われることが好ましい。
【0033】
本発明の分析方法は、前記反応工程における前記発色剤と前記生体試料との反応を、例えば、ウェット系で行ってもよいし、ドライ系で行ってもよい。前者は、例えば、前記発色剤を含む液中における反応であり、後者は、例えば、前記発色剤を配置した試験片における反応である。本発明の分析方法は、前述のように、1反応系での測定が可能であること、また、前記ウリカーゼや前記不溶性担体(例えば、グルコサミノグルカン)が不要であることから、特に、後者のドライ系に適している。
【0034】
以下、本発明の分析方法について、ドライ系の形態を例示する。なお、本発明は、これには制限されない。また、本発明の分析方法がドライ系の場合、例えば、後述する本発明の分析用試験片を使用することができる。
【0035】
本発明の分析方法がドライ系の場合、例えば、前記反応工程において、前記発色剤を含む乾燥試薬に、液体状態の前記生体試料を添加することにより、両者を反応させる。この形態によれば、例えば、前記乾燥試薬に前記生体試料を添加することで、両者が混合され、前記乾燥試薬中の前記発色剤と前記生体試料とを反応させることができる。
【0036】
前記反応工程の前記乾燥試薬は、例えば、前記発色剤を含む1種類の乾燥試薬でもよいし、2種類以上の乾燥試薬の併用でもよい。例えば、2種類以上の乾燥試薬を併用する場合、前記発色剤を含む乾燥試薬と試料とを反応させる前に、他の乾燥試薬と試料とを接触させ、pHの調整または酵素反応等の前処理を行うこともできる。
【0037】
前記1種類の乾燥試薬の場合、前記乾燥試薬は、前記発色剤を含み、さらに、前記添加成分を含んでもよい。前記乾燥試薬は、例えば、前記発色剤と任意の前記添加成分とを含む液体試薬を調製し、前記液体試薬を乾燥することによって調製できる。前記液体試薬は、例えば、前記発色剤に適したpHに設定することが好ましく、前記pHは、例えば、緩衝液によって調整できる。前記pHは、例えば、9.5〜11.5であり、前記緩衝液としては、例えば、炭酸ナトリウム緩衝液が好ましい。
【0038】
前記2種類以上の乾燥試薬を使用する場合、少なくとも1種類の乾燥試薬が、前記発色剤を含んでいればよい。例えば、前記2種類の乾燥試薬として、第1乾燥試薬および第2乾燥試薬を併用する場合、前記第1乾燥試薬は、例えば、少なくとも前記発色剤と、少なくとも1種類の前記添加成分とを含み、前記第2乾燥試薬は、例えば、少なくとも1種類の前記添加成分を含む。
【0039】
前記第1乾燥試薬は、前記添加成分として、例えば、緩衝剤、前記界面活性剤、前記賦形剤、および前記酵素(例えば、アスコルビン酸オキシダーゼ)の少なくとも1種類を含むことが好ましい。前記第1乾燥試薬は、例えば、前記発色剤と前記添加成分とを含む第1液体試薬を調製し、前記第1液体試薬を乾燥することによって調製できる。前記第1乾燥試薬における前記緩衝剤は、例えば、前記第1液体試薬に含まれる前記緩衝液が乾燥したものである。前記第1液体試薬は、例えば、前記発色剤に適したpHに設定でき、pHは、例えば、5.5〜6.5である。pHを5.5〜6.5の範囲とすることによって、前記第1液体試薬に含まれる成分の安定性を高めることができる。前記pHは、例えば、緩衝液によって調整でき、前記緩衝液としては、例えば、MES−KOH緩衝液等が使用できる。
前記2種類以上の乾燥試薬を使用する場合、反応系において発色剤に適したpH、例えば9.5〜11.5になるように、緩衝剤を前記2種類以上の乾燥試薬に配合すればよい。当業者は、目標とするpHに応じて緩衝剤の種類及び濃度を選択することができる。
【0040】
前記第1乾燥試薬において、前記界面活性剤は、例えば、乾燥時における平滑性を向上させる観点から、ポリオキシエチレン ソルビタン アルキルエステル(Tween系界面活性剤等)、タウロデオキシコール酸ナトリウム、n−オクタノイル−N−メチル−D−グルカミン、オクチルフェノールエトキシレートおよび3−〔(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕プロパンスルホナート等があげられる。前記Tween系界面活性剤は、例えば、商品名Tween−20(ナカライテスク社製)があげられ、前記タウロデオキシコール酸ナトリウムは、例えば、商品名タウロデオキシコール酸ナトリウム(ナカラテスク社製)があげられ、前記n−オクタノイル−N−メチル−D−グルカミンは、例えば、商品名MEGA8(同仁化学研究所社製)があげられ、前記オクチルフェノールエトキシレートは、例えば、商品名TrItonX−100(ナカライテスク社製)があげられ、前記3−〔3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナートは、例えば、商品名CHAPS(同仁化学研究所社製)があげられる。前記第1試薬において、前記賦形剤は、例えば、ソルビトール、スクロースおよびキシリトール等があげられる。
【0041】
前記第2乾燥試薬は、前記添加成分として、例えば、緩衝剤、前記界面活性剤、前記賦形剤の少なくとも1種類を含むことが好ましい。前記第2乾燥試薬は、前記第1乾燥試薬と同様に、例えば、前記添加成分を含む第2液体試薬を調製し、前記第2液体試薬を乾燥することによって調製できる。前記第2乾燥試薬における前記緩衝剤は、例えば、前記第2液体試薬に含まれる前記緩衝液が乾燥したものである。前記第2液体試薬のpHは、特に制限されず、例えば、9.5〜11.5である。前記pHは、例えば、緩衝液によって調整でき、前記緩衝液としては、例えば、炭酸ナトリウム緩衝液等が使用できる。
【0042】
前記第2乾燥試薬において、前記界面活性剤は、例えば、乾燥時における平滑性および反応の特異性を向上させる観点から、n-オクタノイル-N-メチル-D-グルカミン、ラウリル酸アミドプロピルベタイン、タウロデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、3−〔(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ドデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩およびポリオキシエチレン ソルビタン アルキルエステル(Tween系界面活性剤等)等があげられる。前記n-オクタノイル-N-メチル-D-グルカミンは、例えば、商品名MEGA−8(同仁化学研究所社製)があげられ、前記ラウリル酸アミドプロピルベタインは、例えば、商品名AmphItol 20AB(花王社製)があげられ、前記タウロデオキシコール酸ナトリウムは、例えば、商品名タウロデオキシコール酸ナトリウム(ナカラテスク社製)があげられ、前記3−〔3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホナートは、例えば、CHAPS(同仁化学研究所社製)があげられ、前記ポリオキシエチレンラウリルエーテルは、例えば、BrIg35(和光純薬工業社製)があげられ、前記ドデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩は、例えば、商品名カプリリルスルホベタイン(東京化成工業社製)があげられ、前記Tween系界面活性剤等は、例えば、Tween−20(ナカライテスク社製)があげられる。前記第2乾燥試薬において、前記賦形剤は、例えば、ソルビトール、スクロースおよびキシリトール等があげられる。
【0043】
前記乾燥試薬は、例えば、担体に配置されていることが好ましく、前記担体としては、例えば、後述するような基板があげられる。前記2種類以上の乾燥試薬を使用する場合、前記基板の同じ部位に、前記2種類以上の乾燥試薬を配置してもよいし、前記基板の異なる部位に、前記2種類以上の乾燥試薬を配置してもよい。後者の場合、前記生体試料の添加により、前記生体試料と前記全乾燥試薬とが混合されるように、前記2種類以上の乾燥試薬が配置されることが好ましい。
【0044】
前記測定工程において、前記発色反応の測定とは、例えば、前記発色反応により生じた前記発色剤の発色の測定である。前記発色は、例えば、光学シグナルとして測定することができる。前記光学シグナルは、特に制限されず、例えば、吸光度、反射率、透過率等があげられ、好ましくは、吸光度である。
【0045】
前記測定工程において、前記発色反応の測定は、例えば、前記発色剤の発色がピークを示す波長範囲で行うことが好ましい。前記波長範囲は、例えば、前記発色剤の種類に応じて、適宜決定できる。前記発色剤がWST−9である場合、測定波長は、例えば、400〜700nm、450〜660nm、500〜610nmの範囲である。
【0046】
本発明の測定方法において、前記測定工程において測定した前記発色反応の測定値は、前記生体試料中における糖化タンパク質と相対関係にあるといえる。このため、前記測定
工程における測定結果を、そのまま、前記生体試料における糖化タンパク質量または糖化タンパク質濃度を間接的に示す値としてもよいし、前記測定工程における測定結果から前記生体試料における糖化タンパク質量または糖化タンパク質濃度を算出してもよい。後者の場合、例えば、前記発色反応の測定結果(例えば、光学シグナルの測定値)と前記生体試料中の糖化タンパク質濃度との相関関係に基づき、算出できる。
【0047】
前記発色反応の測定は、例えば、乾式臨床化学分析装置(商品名:スポットケムEZ、スポットケムD−Concept、スポットケムII 糖化タンパク質単項目測定装置、アークレイ社製)等を使用できる。前記装置は、例えば、ドライ系において前記分析用試験片を使用する場合に利用できる。
【0048】
本発明の分析方法が、ウェット系の場合、前記乾燥試薬に代えて前記液体試薬を使用する以外は、前記ドライ系の方法および条件を援用し、同様にして行うことができる。
【0049】
(糖化タンパク質の分析試薬)
本発明の糖化タンパク質の分析試薬(以下、「本発明の分析試薬」という。)は、前記発色剤を含み、前記本発明の分析方法に使用することを特徴とする。本発明の分析試薬は、前記発色剤を含むことが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。例えば、後述する糖化タンパク質の分析用試験片の構造とは異なる構造を有する試験片も、前記発色剤を含んでいれば本発明の分析試薬に包含される。本発明の分析試薬は、例えば、前記本発明の分析方法における前記乾燥試薬または前記液体試薬であり、前述の記載を援用できる。
【0050】
(糖化タンパク質の分析キット)
本発明の生体試料中の糖化タンパク質の分析キット(以下、「本発明の分析キット」という。)は、前記本発明の分析試薬を含み、前記本発明の分析方法に使用することを特徴とする。本発明の分析キットは、前記分析試薬を含むことが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の分析キットは、例えば、さらに、使用説明書を含んでもよい。本発明の分析キットは、例えば、前記本発明の分析方法における前記乾燥試薬および前記液体試薬の記載を援用できる。
【0051】
(糖化タンパク質の分析用試験片)
本発明の糖化タンパク質の分析用試験片(以下、「本発明の分析用試験片」という。)は、
基板を含み、
前記基板が、試料供給領域と、反応領域とを有し、
前記試料供給領域と前記反応領域とが、流路で連結され、
前記反応領域に、前記本発明の分析試薬が配置され、
前記基板における前記反応領域が、透明部材であることを特徴とする。
【0052】
本発明の分析用試験片は、前記本発明の分析試薬が前記反応領域に配置されていることが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。
【0053】
本発明の分析用試験片の一例を、図1に示す。図1(A)は、分析用試験片1の平面図であり、図1(B)は、図1(A)のI−I方向から見た断面図である。
【0054】
図1(A)および(B)に示すように、分析用試験片1は、上基板2aと下基板2bとが積層した基板2、および、本発明の分析試薬を有する。基板2の内部は、第1空間3b、第2空間4、および、第1空間3bと第2空間4とを連通する流路5aを有する。上基板2aは、第1空間3bに対応する箇所に開口部3aを有し、上基板2aの開口部3aと第1空間3bとが、試料供給領域3であり、開口部3aが、試料供給口である。第2空間4が、反応領域4であり、反応領域4に対応する基板2の領域が、検出領域を兼ねる。また、基板2は、開口部5c、および、第2空間4と開口部5cとを連通する流路5bを有し、開口部5cは、空気口となる。
【0055】
分析用試験片1において、前記本発明の分析試薬は、例えば、前記乾燥試薬である。前記分析試薬の配置部位は、例えば、反応領域4であり、第2空間4に対応する上基板2aの領域および下基板2bの領域の少なくとも一方に配置されている。本発明の分析試薬が、前述のように、2種類以上の乾燥試薬の場合、例えば、第2空間4に対応する上基板2aの領域および下基板2bの領域に、各乾燥試薬が、それぞれ配置されることが好ましい。
【0056】
基板2の材料は、特に制限されず、例えば、ガラス製、樹脂製等の基板があげられる。基板2における、具体的には、基板2(上基板2aおよび下基板2b)における反応領域に対応する部位が、検出領域を兼ねることから、透明部材で形成されていることが好ましい。前記透明部材としては、例えば、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリアクリル樹脂)等があげられる。上基板2aおよび下基板2bの材料は、同じであってもよいし異っていてもよい。
【0057】
本発明の分析用試験片において、例えば、前記本発明の分析試薬の配置方法は、特に制限されず、本発明の分析方法におけるドライ系の説明を援用できる。すなわち、本発明における前記液体試薬を、前記基板の所望の位置に点着した後、乾燥させることにより、前記乾燥試薬を配置できる。
【0058】
本発明の分析用試験片は、例えば、以下のように用いることができる。まず、開口部3aから第一空間3bに、前記生体試料を供給する。前記生体試料は、第一空間3bから、流路5aを通って第2空間4(反応領域)に到達する。そして、第2空間4において、前記生体試料と前記配置された前記本発明の分析試薬とが混合され、前記生体試料と前記分析試薬とが反応し、前記発色剤の発色反応が生じる。この発色を、反応領域4に対応する上基板2a側から、または、反応領域4に対応する下基板2b側から、測定する。
【0059】
本発明の分析用試験片の大きさは、特に制限されず、例えば、以下の条件が例示できる。なお、以下、長手方向とは、前記試料供給領域から前記反応領域に向かう方向であり、幅方向とは、前記長手方向に垂直な方向であり、厚み方向とは、上基板から下基板に向かう方向である。
長手方向の長さ(全長):5〜20mm(10mm)
幅方向の長さ(幅):3〜10mm(5.1mm)
厚み方向の長さ(厚み):0.25〜3mm(1mm)
試料供給領域3の大きさ:
直径1〜8mm(2.5mm) 深さ0.1〜1.0mm(0.25mm)
反応領域4の大きさ:
直径1〜8mm(2.5mm) 深さ0.1〜1.0mm(0.25mm)
流路5aの長手方向の長さ:0.2〜10mm
【実施例】
【0060】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0061】
[実施例1]
本発明の糖化タンパク質の分析方法について、血中還元性物質である尿酸の影響を受けずに、糖化タンパク質濃度を測定可能であることをフルクトサミンの測定によって確認した。
【0062】
(1)試料
フルクトサミン濃度198.5μmol/Lの血清1(尿酸未添加−)およびフルクトサミン濃度503μmol/Lの血清2(尿酸未添加−)と、前記血清1および前記血清2に、それぞれ、20mg/100mLとなるように尿酸を添加した血清1(尿酸添加+)および血清2(尿酸添加+)を、血清試料として準備した。
【0063】
(2)分析用試薬片の作製
下記組成の第1液体試薬および第2液体試薬を用いて、以下に示すように、前記図1に示す実施例の分析用試験片を作製した。
【0064】
<第1試薬>
炭酸ナトリウム緩衝液(pH11.0) 500mmol/L
(和光純薬工業社製)
ソルビトール 15%(w/V)
ラウリル酸アミドプロピルベタイン 0.005%(w/V)
(商品名:Amphitol 20AB、花王社製)
n−オクタノイル−N−メチル−D−グルカミン 0.25%(w/V)
(商品名:MEGA−8、同仁化学研究所社製)
【0065】
<第2試薬>
MES−KOH緩衝液(pH6.0) 10mmol/L
(ナカライテスク社製)
発色剤 5mmol/L
(商品名:WST−9、同仁化学研究所社製)
ソルビトール 10%(w/v)
スクロース 5%(w/v)
Tween系界面活性剤 0.02%(w/v)
(商品名:Tween−20、ナカライテスク社製)
タウロデオキシコール酸ナトリウム 0.5%(w/v)
(商品名:タウロデオキシコール酸ナトリウム、ナカライテスク社製)
アスコルビン酸オキシダーゼ 200U/mL
(商品名:Ascorbate Oxidase、ロシュ社製)
【0066】
上基板2aの下基板2bへの対向面であって、反応領域4に対応する領域に、前記第2試薬1.5μLを点着した。また、下基板2bの上基板2aへの対向面であって、反応領域4に対応する領域に、前記第1試薬1.5μLを点着した。そして、上基板2aおよび下基板2bを、20℃、相対湿度1%の条件下、20時間乾燥処理を施した。この乾燥処理によって、上基板2aに、第2乾燥試薬を、下基板2bに、第1乾燥試薬を、それぞれ配置した。そして、上基板2aと下基板2bとを積層し、両者を貼り合わせ、図1に示す分析用試験片1を作製した。
【0067】
分析用試験片1の大きさおよび材質は、以下の通りとした。

上基板および下基板の材質:ポリスチレン(透明部材)
長手方向の長さ(全長):10mm
幅方向の長さ(幅):5.1mm
厚み方向の長さ(厚み):1.2mm
試料供給領域3の大きさ:直径2.5mm×深さ0.25mm
反応領域4の大きさ:直径2.5mm×深さ0.25mm
流路5aの長手方向の長さ:1mm
【0068】
(3)フルクトサミン濃度の測定
前記血清試料を、分析用試験片1の試料供給領域3に添加し、分析用試験片1を乾式臨床化学分析装置(商品名スポットケムEZ、アークレイ社製)にセットした。そして、前記試料の添加から480秒後を測定開始として、分析用試験片1における反応領域4について、測定波長550nmにおける吸光度を経時的に測定した。さらに、単位時間あたりの吸光度の変化量を、測定時間xの吸光度(Ax)から測定時間yの吸光度の差分(Ay−Ax)により算出した。なお、同条件で吸光度を二回測定した場合は、前記差分の平均値を、単位時間当たりの吸光度の変化量として算出した。
【0069】
他方、比較例1として、発色剤WST−9に代えて、2−(4−インドフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロライド(INT、同仁化学研究所社製)を使用した以外は、同様にして、分析用試験片1を作製した。比較例2として、発色剤WST−9に代えて、2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(WST−8、同仁化学研究所製)を使用した以外は、同様にして、分析用試験片1を作製した。また、比較例1に対しては、フルクトサミン濃度198.5μmol/Lの血清1(尿酸未添加−)およびフルクトサミン濃度786μmol/Lの血清3(尿酸未添加−)と、前記血清1および前記血清3に、それぞれ、20mg/100mLとなるように尿酸を添加した血清1(尿酸添加+)および血清3(尿酸添加+)を、血清試料として準備した。比較例2に対しては、前記(1)と同様の血清を、血清試料として準備した。そして、比較例1および比較例2の分析用試験片1と、前記各血清試料とを用いて、同様にして、吸光度の測定を行った。比較例1の分析用試験片1については、測定波長を550nmとし、比較例2の分析用試験片1については、測定波長を450nmとした。
【0070】
これらの結果を、図2図4に示す。図2図4は、各分析用試験片を用いた前記発色反応の吸光度の結果を示すグラフである。図2は、実施例1の分析用試験片を用いた結果であり、図3および4は、それぞれ、比較例1および2の分析用試験片を用いた結果を示す。各図において、左列のグラフが、経時的な吸光度を示すグラフであり、右列のグラフが、単位時間当たりの吸光度変化量を示すグラフである。
【0071】
図2において、(A)は、実施例1の分析用試験片を用いて血清1を分析した結果であり、(B)は、実施例1の分析用試験片を用いて血清2を分析した結果である。図2(A)および(B)に示すように、WST−9を使用した実施例1の場合、尿酸を添加しても、尿酸未添加と同様に、左のグラフにおいて、経過時間と高い相関を示す吸光度の増加が確認でき、また、右のグラフにおいて、単位時間あたりの吸光度変化量にも変動がないことが確認できた。
【0072】
他方、図3において、(A)は、比較例1の分析用試験片を用いて血清1を分析した結果であり、(B)は、比較例1の分析用試験片を用いて血清3を分析した結果である。また、図4において、(A)は、比較例2の分析用試験片を用いて血清1を分析した結果であり、(B)は、比較例2の分析用試験片を用いて血清2を分析した結果である。図3および4に示すように、左のグラフにおいて、尿酸添加の血清試料は、尿酸未添加の血清試料よりも高い吸光度を示し、また、右のグラフにおいて、尿酸添加の血清試料は、尿酸未添加の血清試料よりも、単位時間あたりの吸光度変化量が減少していくという変動が確認された。
【0073】
これらの結果から、発色剤として、WST−9を使用することによって、尿酸の影響を回避して、優れた精度でフルクトサミンを分析できることがわかった。
【0074】
[実施例2]
本発明の糖化タンパク質の分析方法について、複数のWST−9濃度において、血中還元性物質である尿酸の影響を受けずに、糖化タンパク質濃度を測定可能であることをフルクトサミンの測定によって確認した。
【0075】
実施例2として、前記第2液体試薬中における発色剤WST−9の濃度を、それぞれ、1mmol/L、2.5mmol/L、5mmol/L、7.5mmol/L、10mmol/Lおよび20mmol/Lとした以外は、前記実施例1(2)と同様にして、それぞれ、WST−9濃度が異なる6種類の分析用試験片1を作製した。また、血清試料として、フルクトサミン濃度220.3μmol/Lの血清4(尿酸未添加−)およびフルクトサミン濃度486.5μmol/Lの血清5(尿酸未添加−)と、前記血清4および前記血清5に、それぞれ、20mg/100mLとなるように尿酸を添加した血清4(尿酸添加+)および血清5(尿酸添加+)を準備した。そして、前記WST−9濃度が異なる6種類の分析用試験1と、前記各血清試料とを用いて、前記実施例1と同様にして、吸光度の測定を行った。
【0076】
これらの結果を、図5および図6に示す。図5Aおよび図5Bは、血清4について、各WST−9濃度における経時的な吸光度を示し、図6Aおよび図6Bは、血清5について、各WST−9濃度における経時的な吸光度を示す。
【0077】
図5A図5B図6Aおよび図6Bに示すように、いずれのWST−9濃度においても、尿酸を添加しても、尿酸未添加と同様に、経過時間と高い相関を示す吸光度の増加が確認できた。
【0078】
これらの結果から、複数のWST−9濃度において、血中還元性物質である尿酸の影響を受けずに、フルクトサミン濃度を測定可能であることがわかった。
【0079】
同じように、糖化アルブミン、糖化ヘモグロビンおよび糖化グロブリン等の糖化タンパク質においても血中還元性物質である尿酸の影響を受けずに、濃度を測定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明によれば、前記発色剤を含むことにより、血中還元性物質である尿酸の影響を受けずに、糖化タンパク質濃度を測定できる。このため、本発明は、医薬、診断薬、測定等の分野において、極めて有用と言える。
【符号の説明】
【0081】
1 分析用試験片
2 基板
2a 上基板
2b 下基板
3 試料供給領域
3a、5c 開口部
3b 第1空間
4 第2空間
5a、5b 流路
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B