(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る有機電界発光装置および有機電界発光装置の製造方法について、その実施形態を示す図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0011】
[有機電界発光装置(第1の実施形態)]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光装置1における構成を示す概略断面図である。
図1に示す有機電界発光装置1は、トップエミッション型である。なお、以下においてはトップエミッション型の有機電界発光装置を例に挙げて説明するが、本発明に係る有機電界発光装置はトップエミッション型に限られるものではなく、ボトムエミッション型の有機電界発光装置であってもよい。
【0012】
まず、本実施形態に係る有機電界発光装置1が酸素および水分に対する優れた遮蔽性を有すると共に、狭ベゼル化が達成されるメカニズムについて、
図2および
図3を参照しながら説明する。
図2は、従来の有機電界発光装置の一例における水分の透過を説明するための概略断面図であり、
図3は、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光装置の一例における水分の透過を説明するための概略断面図である。なお、
図2および
図3では、バリア層12およびパッシベーション層14(いずれも詳細は後述する)の図示を省略している。
【0013】
図2に示す従来の例では、ダム材16が樹脂17と球形のゲッター材19とから構成されている。ゲッター材19が球形であるため、水分が有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向(
図2中における左方向)に移動する際に遮る効果が小さい。したがって、水分はダム材16中においてほぼ最短の経路を取り得ることから、水分に対する遮蔽性が低く、充分な遮蔽性を発揮するためにはダム材16の幅方向(
図2中における左右方向)の厚みを大きくする必要がある。このため、優れた遮蔽性を達成するには狭ベゼル化を犠牲にしなくてはならない。従来の有機電界発光装置におけるベゼル幅(厚み)は、4.5mm以上である。
【0014】
これに対して
図3に示す本実施形態では、
図2に示す従来の例に加えて、板状フィラー18がダム材16中に含まれている。また、板状フィラー18は、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向(
図3中における左右方向)に対して非平行に配向しており、特に
図3においては端面に鉛直な方向に対して垂直に(
図3中における上下方向に)配向している。本実施形態では、板状フィラー18が球形ではないため、有機電界発光層13等がその内部に密閉された空間に向かって水分が移動する際に、遮る効果が大きい。したがって、水分はダム材16中において最短の経路を取り得ず、最短経路から大きく逸れた複雑で非常に長い経路を辿って密閉空間に至る。この結果、本実施形態の有機電界発光装置1は優れた遮蔽性を有し、狭ベゼル化を達成できる。
【0015】
<有機電界発光装置1の全体構成>
本実施形態の有機電界発光装置1は、基板11と、基板11上の有機電界発光層13と、有機電界発光層13上の対向基板20と、有機電界発光層13の周囲を封止するダム材16と、を備え、ダム材16は、樹脂17と、板状フィラー18と、を含む。板状フィラー18は、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して非平行に配向してなる。
【0016】
図1に示す例では、ダム材16がゲッター材19を含む。また、基板11の上面(基板11と有機電界発光層13との間)にはバリア層12が設けられている。さらに、有機電界発光層13の上面および側面はパッシベーション層14が設けられ、ダム材16と基板11と対向基板20とで囲まれた密閉空間には充填材15が充填されている。
なお、
図1に示す例では、ダム材16が基板11および対向基板20の間に設けられている構成となっているが、本発明はかかる構成に限られるものではない。すなわち、ダム材16が有機電界発光層13の周囲(側面)を封止できる構成であればいかなる構成であってもよい。例えば、詳細を後述する第2の実施形態(
図4参照)のように、対向基板(金属層41)および有機電界発光層の双方の側面を、基板上に形成されたダム材が封止する構成であってもよい。
以下、有機電界発光装置1を構成する各要素について順に説明する。
【0017】
<基板11>
基板11は、その上に有機電界発光層13等を積層形成可能なものであれば特に制限はなく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板である。
【0018】
<バリア層12>
基板11上にはバリア層12が形成されている。バリア層12の材料としては、酸素および水分に対する遮蔽性を有する材料であれば特に制限はなく、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アルミナ等が挙げられる。また、バリア層12は単層であってもよく、2層以上の積層構成であってもよい。
また、バリア層12上には有機電界発光層13を駆動する駆動回路を構成する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)を含むTFT層(不図示)が形成されている。
【0019】
<有機電界発光層13>
TFT層上には有機電界発光層13が形成されている。有機電界発光層13は、アノード(陽極)と、アノード上に形成された有機化合物層と、有機化合物層上に形成されたカソード(陰極)と、を有する。また、有機化合物層は、アノード側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層を有する。
有機電界発光層13を構成する各層は、公知の材料を用いて形成できる。
【0020】
アノードとしては、例えば、アルミニウム、銀、プラチナ、クロム等の反射率の高い材料の薄膜からなる反射電極、および、これらの薄膜上にITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電性酸化物の薄膜を形成した反射電極が挙げられる。
【0021】
有機化合物層は、例えば、ピクセルを構成するサブピクセルに応じて、赤色光を発光するR用有機化合物層と、緑色光を発光するG用有機化合物層と、青色光を発光するB用有機化合物層とを含んでいる。R,G,B用有機化合物層は、それぞれの発光色に応じた公知の材料により構成されている。
【0022】
カソードとしては、例えば、銀、銀合金、ITO、IZO等の薄膜からなる半透明電極または透明電極が用いられる。
【0023】
<パッシベーション層14>
有機電界発光層13上には、パッシベーション層14が形成されている。パッシベーション層14は、有機電界発光層13を覆うように、有機電界発光層13の上面および側面に形成されている。
パッシベーション層14は、透湿性の低い無機膜からなり、有機電界発光層13を酸素および水分から保護する保護膜として機能する。パッシベーション層14としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等が用いることができる。
【0024】
<ダム材16>
有機電界発光層13の周囲のバリア層12上には、有機電界発光層13を含むパネルの周囲を囲むようにダム材16が形成されている。すなわち、ダム材16は、基板11上にマトリクス状に形成された複数の有機電界発光層13を含むパネルの周囲を囲むように形成されている。
ダム材16が形成された基板11上には、基板11に対向するように対向基板20が設けられ、本実施形態における対向基板20はダム材16によって基板11上に対向状態で固定されている。すなわち、ダム材16は基板11(バリア層12)と対向基板20との間に設けられており、ダム材16、基板11および対向基板20によって密閉空間が形成されている。有機電界発光層13は、基板11、対向基板20およびダム材16によって囲まれた気密な密閉空間内に封止されている。
【0025】
ダム材16は、樹脂17と、板状フィラー18と、を含み、ゲッター材19、弾性スペーサ71をさらに含むことが好ましい。これらの詳細については後述する。
【0026】
ダム材16の幅は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。3mm以下であると狭ベゼル化によってさらなる非表示領域の低減、デザイン性の向上、小型化および軽量化が達成できる。
なお、ダム材16の幅とは、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向における長さを意味する。換言すると、ダム材16の幅とは、ダム材16の各位置において、当該ダム材16の周方向に対して垂直であり、且つ、基板11の主面に対して平行な方向の長さである。すなわち、
図1における左右方向(水平方向)の長さである。
【0027】
<<樹脂17>>
樹脂17としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。より具体的には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。
また、後述する板状フィラー18を所望の配向とすべく、樹脂17に液晶モノマーまたはアゾベンゼンを添加してもよい。
液晶モノマーを配向させることで、ダム材16に含有される板状フィラー18の配向も制御することができる。
また、アゾベンゼンはシス体、トランス体の配座異性体が存在し、光の照射によって配座を制御することができる。このため、光を照射して異性化(シス体からトランス体)を促すことで、ダム材16に含有された板状フィラー18の配向を制御することができる。
【0028】
<<板状フィラー18>>
板状フィラー18は、ダム材16中において、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して非平行に配向してなる。板状フィラー18が有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して平行であると、端面から浸透してくる水分および酸素等を遮蔽する効果が極めて小さいため、充分な遮蔽性をもたらすためにはベゼルの幅を大きくする必要がある。一方、板状フィラー18が有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して非平行であると、端面から浸透してくる水分および酸素等が最短経路で内部の密閉空間に到達することを効果的に遮るため、遮蔽効果が大きく、狭ベゼル化に大きく寄与する。
【0029】
板状フィラー18の配向方向は、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して非平行であればよいが、端面に鉛直な方向に対して垂直方向に近づくことがより好ましい。理想的には、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して全ての板状フィラー18が垂直方向に配向してなる配向状態であるが、生産性およびコスト面が悪化するという側面もあるため、その用途にあわせて所望のオーダーパラメータとすることが好ましい。
なお、ここでいう配向とは、板状フィラーがランダムに存在している状態(何ら配向制御がなされていない状態)から、各々の板状フィラーについて、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して垂直方向側に配向するように制御されていればよい。したがって、必ずしも全ての板状フィラーが同一の方向に配向されていることを要するものではない。
【0030】
ダム材16中の板状フィラー18のオーダーパラメータは、0.5以上であることが好ましく、0.5以上0.8以下であることがより好ましい。
オーダーパラメータはSEM(Scanning Electron Microscope:電子顕微鏡)で観察するなど、周知慣用されている方法で測定することができる。
【0031】
板状とは、例えば、角板状および円板状が挙げられるが、板状であれば特に形状に制限はない。
板状フィラー18の材料としては、アスペクト比が高い板状材料が好ましく、例えば、クレイ、マイカ、タルク等が挙げられる。
板状フィラー18のアスペクト比は、10以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましく、100以上であることが特に好ましい。アスペクト比の上限については特に制限はないが、ハンドリング性の観点から、例えば10万以下である。アスペクト比が10以上であると、水分および酸素に対する遮蔽性がより高まる。
【0032】
板状フィラー18の大きさに特に制限はないが、例えば、長径が10nm以上10μm以下である。
【0033】
<<ゲッター材19>>
本実施形態では、ダム材16はゲッター材19を含有する。ゲッター材19はダム材16中に必ずしも含まれている必要はないが、浸透してくる水分、酸素等を吸着することで遮蔽性をより高められるため、含まれていることが好ましい。
ゲッター材19としては、化学吸湿材、物理吸着材を用いることができる。化学吸湿材としては、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケル等が挙げられる。また、物理吸着材としては、例えば、ゼオライト、多孔質シリカ、活性炭等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0034】
<<弾性スペーサ71>>
ダム材16は、弾性スペーサ71(
図7参照)をさらに含むことが好ましい。弾性スペーサ71の材料としては、弾性を有する材料であれば特に制限はなく、例えば、弾性を有する樹脂が挙げられる。弾性スペーサ71をダム材16用の塗工液に含有させることで、基板11と対向基板20との間隔を簡易に調整することができる。また、弾性を有するスペーサであるため、基板11と対向基板20とを貼り合わせる際に、所定の応力を付与して弾性変形させて確実に貼り合わせた後に、応力を緩和または取り除くことでこの弾性変形を回復させることができる。弾性変形が回復すると、弾性変形によって生じたダム材16用の塗工液中の板状フィラー18の配向の乱れを、元の配向した状態に近づけることができる。
【0035】
なお、板状フィラー18の配向を高めるべく弾性スペーサ71によって位置調整をすると、基板11上に塗布された塗工液(硬化してダム材16となる)は、貼り付けの際に応力が付与されて潰れた状態となるため、この状態から応力が緩和または取り除かれると、その上下方向の中心付近がくぼんだ形状となる。すなわち、ダム材16は内壁および外壁が凹んだ形状となる。
【0036】
<<添加剤>>
また、ダム材16には、周知慣用されている各種添加剤、例えば、シランカップリング材などを添加してもよい。
【0037】
<対向基板20>
対向基板20は、例えば、ガラス基板である。対向基板20として透明基板を用いることにより、トップエミッション型の表示装置を構成することができる。対向基板20は、基板11に対向するように配置されている。基板11に対向するように配置された本実施形態の対向基板20は、ダム材16に接着されてダム材16上に固定されている。
【0038】
<充填材15>
また、基板11、対向基板20およびダム材16により囲まれた、有機電界発光層13を封止する気密な密閉空間には、充填材15が充填されている。充填材15は、有機電界発光層13を埋め込んでいる。充填材15の材料としては、例えば、吸湿機能を有する透明樹脂を用いることができる。
【0039】
[有機電界発光装置の適用例]
本実施形態に係る有機電界発光装置は、表示装置に適用してもよく、照明装置に適用してもよい。
表示装置は、その表示方式に特に制限はなく、例えば、RGB(レッド・グリーン・ブルー)それぞれに発光する3種類の有機電界発光層が塗り分けられていてもよく、青色(B)に発光する発光層に色変換膜およびカラーフィルターをそれぞれ設けてRGBの発色を得てもよい。また、白色発光の有機電界発光層と、カラーフィルターと、を用いてRGBの発色を得てもよい。
照明装置は、その用途に特に制限はなく、例えば、室内用照明、屋外用照明として用いてもよく、液晶表示装置のバックライトなど電子デバイス用照明としても用いてもよい。
【0040】
以上の本実施形態に係る有機電界発光装置によれば、酸素および水分に対する優れた遮蔽性を有すると共に、狭ベゼル化が達成される。狭ベゼル化によってフレキシブルな有機電界発光装置、透明な有機電界発光装置に適用することもできる。また、板状フィラーを所定の配向とすることで優れた遮蔽性を有することから、ダム材中のフィラー量が少量であっても長寿命化、高信頼性が確保できると共に、相対的に樹脂量が増えることで接着力を向上させることができる。さらに、狭ベゼル化によってデザイン性が向上する。
【0041】
[有機電界発光装置の変形例(第2の実施形態)]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光装置における構成の一例を示す概略断面図である。
図4に示す第2の実施形態では、第1の実施形態と比較して、第1の実施形態における充填材15および対向基板20の代わりに、対向基板として機能する金属層41を設けている。ここで、ダム材16は、パッシベーション層14の側面だけでなく、金属層41の側面にまで延在する形で設けられている。
以上の点を除き、第2の実施形態に係る有機電界発光装置は、第1の実施形態の実施形態に係る有機電界発光装置と同様の構成であるため、他の説明については省略する。
【0042】
第2の実施形態に係る有機電界発光装置によれば、上記した第1の実施形態に係る有機電界発光装置と同様の効果が得られる。
【0043】
[有機電界発光装置の製造方法(第3の実施形態)]
次に、本発明の第3の実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法について説明する。本実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法は、上述した第1の実施形態に係る有機電界発光装置を製造する方法である。
すなわち、本実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法は、
(3−1)基板11上に有機電界発光層13を形成する工程と、
(3−2)基板11上の有機電界発光層13の周囲に、樹脂17および板状フィラー18を含む塗工液を塗布して未硬化ダム材66を形成する工程と、
(3−3)有機電界発光層13上に対向基板20を設ける工程と、
(3−4)未硬化ダム材66を硬化させてダム材16とする工程と、を備える。
ここで、上記(3−2)の未硬化ダム材66を形成する工程は、板状フィラー18を、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して非平行に配向させる。
【0044】
以下、本実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法のうち、上記(3−2)〜(3−4)の工程について、
図5〜
図7を参照しながらさらに詳細に説明する。
なお、上記(3−1)の基板11上に有機電界発光層13を形成する工程は、周知慣用されている製法によって形成することができ、例えば、有機電界発光層13を構成する各層の材料を塗布または蒸着等の手段によって順次積層形成すればよい。
【0045】
<(3−2)未硬化ダム材を形成する工程>
基板11上に未硬化ダム材66を形成する際には、樹脂17および板状フィラー18、必要に応じて添加されるゲッター材19、溶媒等を含む塗工液を、基板11上の有機電界発光層13の周囲の所定の位置に塗布して形成する。このとき、板状フィラー18を有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して非平行に配向させる。板状フィラー18を有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して非平行に配向させる方法については特に制限はなく、有機電界発光装置1の機能を損なわない範囲であればいかなる方法を用いてもよい。
板状フィラー18を配向させる好ましい方法について、以下に具体例を挙げて説明する。
【0046】
<<第1のフィラーの配向方法>>
図5は、本発明の第3の実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法における第1のフィラーの配向方法について説明する図であって、スリット状の吐出口を有する吐出装置の外観図である。
吐出装置51は、複数のスリット状の吐出口53を有し、吐出口53から、樹脂17および板状フィラー18を含む塗工液を基板11(バリア層12)上に吐出する。このとき、細い開口であるスリット状の吐出口53から塗工液が吐出されることで、塗工液に含有される板状フィラー18が所定の方向に配向される。こうして基板11上に所定の配向状態の板状フィラー18を含む塗工液(未硬化ダム材66)が形成される。
【0047】
<<第2のフィラーの配向方法>>
図6は、本発明の第3の実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法における第2のフィラーの配向方法について説明する図である。
図6(a)は電場印加ノズルと、基板上の未硬化ダム材との関係を示す俯瞰図であり、
図6(b)は、摺擦時における電場印加ノズルと、基板上の未硬化ダム材との関係を示す断面外略図であり、
図6(c)は、電場印加ノズルの要部拡大図である。
【0048】
図6では、吐出される塗工液に対して電場を印加可能な電場印加ノズル61を用いて、基板11上に未硬化ダム材66を形成している。
まず、電場印加ノズル61のノズル部を通過する際に、塗工液中の板状フィラー18が印加される電場によって所定の方向に配向される。電場印加ノズル61には絶縁部63が設けられており、内部を通過して吐出される塗工液に電場を印加できる構成となっている。
ついで、基板11上に塗布された未硬化ダム材66は、さらに所望の配向となるように、電場印加ノズル61に備え付けられている摺擦部材65によって上面が摺擦される。矢印方向に電場印加ノズル61を移動させながら塗工液を吐出することで、摺擦部材65が未硬化ダム材66の上面を摺擦できる構成となっている。
そして、基板11上に所定の配向状態の板状フィラー18を含む未硬化ダム材66が形成される。
【0049】
<(3−3)対向基板を設ける工程>
図7は本発明の第3の実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法における基板と対向基板との貼り合わせ方法について説明する図であって、
図7(a)は圧着時を示す概略図であり、
図7(b)は緩和時を示す概略図であり、
図7(c)は硬化時を示す概略図である。
【0050】
第3の実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法では、上述した第1の実施形態に係る有機電界発光装置1を製造する方法であって、用意した対向基板20を貼り合わせることで、有機電界発光層13上に対向基板20を設ける。
基板11と対向基板20との貼り合わせをする際には、上記(3−2)の未硬化ダム材66を形成する工程において所定の配向状態となった板状フィラー18の配向状態を、可能な限り乱さずに貼り合わせを行うことが好ましい。
そこで、本実施形態におけるダム材16形成用の塗工液は、樹脂17および板状フィラー18に加えて、弾性スペーサ71を含む。
【0051】
まず、基板11と対向基板20とを貼り合わせる際には、治具73によって対向基板20に所定の応力を付与することで、基板同士を確実に貼り合わせる(
図7(a)参照)。このとき、弾性スペーサ71にも応力が及ぶため、弾性変形する。なお、本実施形態では対向基板20に応力を付与したが、基板11側に応力を付与してもよく、基板11および対向基板20の双方に応力を付与してもよい。
この応力を付与した圧着時では、未硬化ダム材66中の板状フィラー18は、圧着前の配向状態と比較すると、配向状態が幾分乱れた状態となっている。
【0052】
つぎに、治具73による応力を緩和することでこの弾性変形を回復させる(
図7(b)参照)。なお、本実施形態では対向基板20に付与した応力を緩和しているが、応力を完全に取り除いてもよい。
このとき、弾性スペーサ71の弾性変形が回復するため、圧着時(
図7(a))に生じた未硬化ダム材66中の板状フィラー18の配向の乱れを、元の所望の配向した状態に近づけることができる。
【0053】
そして、板状フィラー18を元の所望の配向した状態としたまま、光の照射等によって未硬化ダム材66に硬化反応を生じさせて、ダム材16を介して基板11と対向基板20とが接着される(
図7(c)参照;硬化工程)。
【0054】
<(3−4)未硬化ダム材を硬化させる工程;硬化工程>
未硬化ダム材66を硬化させてダム材16とする工程は、周知慣用の方法によって硬化すればよく、例えば、熱を付与する手段、光を照射する手段によって未硬化ダム材66の構成材料を硬化させればよい。
なお、例えば、対向基板20側から光を照射する場合(
図7(c)参照)、対向基板20上を照射手段(不図示)が走査して硬化を行うが、板状フィラー18が所望の配向状態となるような流れを誘起させるように走査条件を調整することが好ましい。
【0055】
以上の本実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法によれば、酸素および水分に対する優れた遮蔽性を有すると共に、狭ベゼル化が達成された有機電界発光装置を得ることができる。
【0056】
[有機電界発光装置の製造方法(第4の実施形態)]
次に、本発明の第4の実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法について説明する。本実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法は、上述した第2の実施形態に係る有機電界発光装置を製造する方法である。
すなわち、本実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法は、
(4−1)基板11上に有機電界発光層13を形成する工程と、
(4−2)有機電界発光層13上に対向基板として金属層41を設ける工程と、
(4−3)基板11上の有機電界発光層13および金属層41の周囲に、樹脂17および板状フィラー18を含む塗工液を塗布して未硬化ダム材66を形成する工程と、
(4−4)未硬化ダム材66を硬化させてダム材16とする工程と、を備える。
ここで、上記(4−2)の未硬化ダム材66を形成する工程は、板状フィラー18を、有機電界発光装置1の端面に鉛直な方向に対して非平行に配向させる。
【0057】
第4の実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法と、第3の実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法と、の対応関係はつぎのとおりである。
上記(4−1)と、上記(3−1)と、が対応しており、これらは同様の工程で実施できる。
上記(4−2)と、上記(3−3)と、が対応している。ただし、上記(3−3)は用意した対向基板20を貼り合せているが、本実施形態では有機電界発光層13上に対向基板として金属層41を形成している。金属層41は従来公知の方法によって形成することができる。
上記(4−3)と上記(3−2)とが対応しており、本実施形態、すなわち上記(4−3)では対向基板として機能する金属層41の側面にまで延在させて未硬化ダム材66を形成する点を除き、上記(3−2)と同様の工程で実施できる。
上記(4−4)と上記(3−4)とが対応しており、これらは同様の工程で実施できる。
【0058】
以上の本実施形態に係る有機電界発光装置の製造方法によれば、酸素および水分に対する優れた遮蔽性を有すると共に、狭ベゼル化が達成された有機電界発光装置を得ることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
表1に記載のフィラー種(形状、長さL[nm]、厚さt[nm]、L/2t)、フィラー体積分率、ゲッター材種(形状)、ゲッター材体積分率、樹脂種(WVTR)、樹脂体積分率の条件に従い、組成物のWVTR(Water Vapor Transmission Rate;水蒸気透過度)をシミュレーションにより算出した。このとき、オーダーパラメータは0.5(平均配列角度55度)とした。また、ゲッター材は1nmの球状とした。
【0061】
シミュレーションは下記のNielsen Eq.を用いて計算した。
【数1】
ここで、Pnは組成物のガス透過度、Ppは樹脂のガス透過度、φpは樹脂の体積分率、φcはフィラーの体積分率、Lは単一のフィラーの平均長さ、tは単一のフィラーの平均厚さである。
【0062】
【表1】
【0063】
シミュレーションによって得られた組成物のWVTRと、樹脂単体(5mm幅)のWVTRとを比較し、その比率を上昇比として算出した。算出した値を表1に示す。
実施例1〜9および比較例1〜6によれば、所定の配向状態の板状フィラーを含有する実施例1〜9は、これを含有しない比較例1〜6に比べて、極めて高い遮蔽性を有することがわかった。例えば、板状フィラーの体積分率が30%である実施例3の場合、樹脂単体のものと比較して34倍の遮蔽性を有する。
また、少ないフィラーの体積分率であっても、非常に優れた遮蔽性を発揮することがわかった。
【0064】
次に、実施例4〜9について、従来のゲッター材80%、5mm幅のダム材と同等の遮蔽性を有し得るには、どの程度のベゼル幅(ダム材の幅)を要するかを算出した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
実施例4〜9のいずれも従来の5mm幅の半分以下のベゼル幅となることがわかった。特に、実施例5〜6および実施例8〜9は約1mmもしくはそれ以下のベゼル幅を達成できた。
【0067】
また、オーダーパラメータの影響について、表3に記載の条件に従ってシミュレーションにより算出した。シミュレーションは上述した実施例1〜9および比較例1〜6と同様である。すなわち、フィラー種(形状、長さL[nm]、厚さt[nm]、L/2t)、フィラー体積分率、ゲッター材種(形状)、ゲッター材体積分率、樹脂種(WVTR)、樹脂体積分率の条件に従い、組成物のWVTR(Water Vapor Transmission Rate;水蒸気透過度)を表3に記載の条件とし、Nielsen Eq.を用いて計算した。
【0068】
【表3】
【0069】
シミュレーションによって得られた各組成物のWVTRについて、オーダーパラメータが0.0のWVTRと比較し、その比率を上昇比として算出した。算出した値を表3に示す。
表3の参考例1〜7によれば、オーダーパラメータが0.5の組成物は、オーダーパラメータが0.0の組成物と比較して、実に10倍もの非常に優れた遮蔽性を発揮することがわかった。