(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、被介護者の背中に当接する当接部の回動を規制する規制機構への負荷を低減することが可能な移乗支援装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、被介護者の背中に当接することで、当該背中を支える保持機構を具備する移乗支援装置であって、前記保持機構は、前記背中に当接可能な当接部と、前記当接部を回動可能に支持すると共に、前方に対して左右外側に広がる方向に延びるように形成される回動軸を具備し、前記当接部の回動によって前記当接部の前記背中への前後における当接位置を調整する調整部と、前記当接部の回動を規制可能な規制機構と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記規制機構は、前記当接部に対して前記被介護者の体重がかかると、前記当接部の回動を規制するものである。
【0010】
請求項3においては、前記規制機構は、前記当接部の回動に応じて連動動作する連動部材と、前記当接部及び前記連動部材と連動しない第一固定部材と、前記当接部に対して前記被介護者の体重がかかると、前記連動部材の前記第一固定部材に対する相対運動を規制する第一規制部と、を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記連動部材は、前記当接部に対して前記被介護者の体重がかかると、前記第一固定部材に接近し、前記第一規制部は、前記連動部材の前記第一固定部材への接近に伴って、前記相対運動を規制するための制動力を生じさせるものである。
【0012】
請求項5においては、前記規制機構は、前記連動部材を前記第一固定部材から離間する方向へ付勢する付勢部材をさらに具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記連動部材を挟んで前記第一固定部材の反対側に配置され、前記当接部及び前記連動部材と連動しない第二固定部材と、前記連動部材の前記第二固定部材への接近に伴って、前記連動部材の前記第二固定部材に対する相対運動を規制するための制動力を生じさせる第二規制部と、をさらに具備するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、被介護者の背中に当接する当接部の回動を規制する規制機構への負荷を低減することができる。
【0016】
請求項2においては、当接部の回動を規制するための特別な操作を行うことなく当接位置を維持できる。
【0017】
請求項3においては、簡単な構成で当接部の回動を規制することができる。
【0018】
請求項4においては、簡単な構成で当接部の回動を規制することができる。
【0019】
請求項5においては、当接位置の調整中にその調整が阻害されるのを抑制できる。
【0020】
請求項6においては、当接部を背中に当接させていない場合に当接部がぐらつくのを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0023】
以下では、
図1から
図4までを参照して、本実施形態に係る移乗支援装置1について説明する。
【0024】
図1に示す移乗支援装置1は、被介護者P(介護を受ける者)を乗せて移動することにより、当該被介護者Pの移乗(例えば、ベッドとトイレ間の移乗、ベッドと車椅子間の移乗や、移乗支援装置1自体への移乗等)を支援するものである。移乗支援装置1は、主として台車部2、支持部3及び上体保持部10を具備する。
【0025】
台車部2は、地面(床面)上を移動することができる。台車部2の上部には、支持部3が設けられる。
【0026】
支持部3は、台車部2との間に設けられるシリンダ(不図示)の伸縮により、台車部2に対して前後に揺動可能に連結される。支持部3の後部には、移乗支援装置1に搭乗する被介護者Pが着座可能な着座部3aが設けられる。支持部3の前部には、被介護者Pの膝を受ける膝受け部3bや被介護者Pが掴むための把手部3cが設けられる。
【0027】
上体保持部10は、被介護者Pの身体(上体)を保持する部分である。
図1及び
図2に示すように、上体保持部10は、主として正面保持部11、側面保持部12及び背面保持機構20を具備する。
【0028】
正面保持部11は、被介護者Pの胸部から腹部に亘る部分を保持する部分である。正面保持部11は、略直方体状に形成され、その後面で被介護者Pの上体を胸側から保持する。当該後面は、後上方に向けて配置される。
【0029】
側面保持部12は、被介護者Pを脇下の左右両側方から保持する部分である。側面保持部12は、正面保持部11から後上方へ延びるような略直方体状に形成される。側面保持部12は、左右方向において正面保持部11を挟むようにして左右一対設けられる。
【0030】
背面保持機構20は、被介護者Pの背中を支えるためのものである。背面保持機構20は、左右一対の側面保持部12にそれぞれ連結されて左右一対設けられる。
図2及び
図3に示すように、背面保持機構20は、当接部30、回動軸40及び規制機構50を具備する。なお、以下においては、左側の背面保持機構20について説明し、右側の背面保持機構20の説明は省略する。また、以下において、左側の背面保持機構20は、
図2に示すような当接部30が被介護者Pの背中に当接した状態(以下、「当接状態」と称する)であるものとする。
【0031】
当接部30は、被介護者Pの背中に後方から当接する部分である。当接部30は、側面保持部12の後方に配置される。当接部30は、ベース31及びクッション32を具備する。
【0032】
ベース31は、当接部30の後部であり、略直方体状に形成される。ベース31は、当接状態において、側面保持部12の後端部から被介護者Pの背中へ(右前方へ)延びるように形成される。ベース31は、樹脂等の硬質な材料で構成される。
【0033】
クッション32は、背中を支えた際に被介護者Pにかかる負荷を軽減するためのものであり、ウレタン等の軟質な材料で構成される。クッション32は、ベース31の前面に貼り付けられる。
【0034】
回動軸40は、当接部30を回動可能に支持するためのものである。回動軸40は、当接部30から左前方へ延びるように形成され、側面保持部12に回動可能に支持される。また、回動軸40は、側面保持部12に対してその軸線方向(左前方及び右後方)に相対的に移動可能に構成される。このような回動軸40には、当接部30の左後部が固定される。これにより、回動軸40は、当接部30を回動可能、かつ、自身の軸線方向に移動可能に支持する。
【0035】
なお、以下においては、当接部30のうち、回動軸40から離れた部分(
図2では右前部)を「先端部30a」と称する。
【0036】
規制機構50は、所定の場合に当接部30の回動を規制するためのものである。
図4に示すように、規制機構50は、ケース51、連動板52、可動ブレーキ部53、固定ブレーキ部54及びバネ55を具備する。
【0037】
ケース51は、略箱状の部材である。ケース51は、側面保持部12内に固定される(
図2参照)。ケース51には、回動軸40が挿通される。このようなケース51は、回動軸40(当接部30)の回動に伴って回動しないように構成される。また、ケース51は、回動軸40(当接部30)の軸線方向への移動に伴って移動しないように構成される。
【0038】
連動板52は、略板状の部材である。連動板52は、ケース51内に設けられる。連動板52は、回動軸40に固定され、ケース51の内側面に対して隙間を空けて配置される。このような連動板52は、回動軸40の回動に伴って一体的に回動すると共に、回動軸40の軸線方向への移動に伴って一体的に移動する。
【0039】
可動ブレーキ部53は、略環状の部材である。可動ブレーキ部53は、連動板52の後面に固定され、ケース51の内側面及び回動軸40に対して隙間を空けて配置される。可動ブレーキ部53は、連動板52よりも摩擦係数の高い材料によって構成される。このような可動ブレーキ部53は、連動板52と同様に、回動軸40の動作(回動及び移動)に伴って一体的に動作する。
【0040】
固定ブレーキ部54は、可動ブレーキ部53と略同一形状に形成される部材である。固定ブレーキ部54は、ケース51よりも摩擦係数の高い材料によって構成される。本実施形態に係る固定ブレーキ部54は、可動ブレーキ部53と同一材料によって構成される。固定ブレーキ部54は、ケース51の内側面(右後部)に固定され、可動ブレーキ部53の右後方に配置される。固定ブレーキ部54は、可動ブレーキ部53と対向する。このような固定ブレーキ部54は、ケース51と同様に、回動軸40の動作(回動及び移動)に伴って動作しないように構成される。
【0041】
バネ55は、連動板52及び可動ブレーキ部53を左前方(固定ブレーキ部54から離間する方向)へ付勢するものである。バネ55は、ケース51内に設けられ、その一端部が連動板52の後面と当接すると共にその他端部がケース51の内側面と当接する。
【0042】
次に、
図2、
図5から
図9までを参照して、背面保持機構20で背中を支える動作について説明する。なお、
図5に示すように、被介護者Pは、動作前の状態において、その上体が正面保持部11及び側面保持部12で保持されているものとする。また、当接部30は、動作前の状態において、先端部30aが上方を向いているものとする。当該先端部30aは、被介護者Pの背中の左後方に位置している。
【0043】
まず、当接部30は、先端部30aが左右内側(右側)へ向かうように回動される。この際、当接部30は、回動軸40を中心として回動し、先端部30aが被介護者Pの背中の後方に位置するように、先端部30aの左右位置が調整される。
【0044】
回動軸40は、前方に対して左右外側へ広がる方向(
図5に示す仮想線L参照)に延びるように形成されている。このため、当接部30は、左右内側への回動によって、先端部30aが前方へ迫り出す(右前方へ移動する)こととなる。これによって、
図2に示すように、当接部30の先端部30aは、被介護者Pの背中に接近して当接される。このような構成によれば、被介護者Pの体格(厚み)の違いに簡単に対応することができる。
【0045】
例えば、当接部30を大きく回動させれば(回動量を大きく増やせば)、先端部30aを大きく前方へ迫り出させることができる。これによって、
図2に示すような体格が小さい被介護者Pの背中に先端部30aを当接させることができる。また、
図6に示すように、当接部30を少し回動させれば、先端部30aを少し前方へ迫り出させて(
図6に示す符号C参照)、体格が大きい被介護者Pの背中に先端部30aを当接させることができる。以上のように、背面保持機構20は、当接部30の回動量に応じて先端部30aの前後位置(背中への前後における当接位置)を調整できるため、被介護者Pの体格に関わらず、当接部30を回動させれば先端部30aを被介護者Pの背中に当接させることができる。これによれば、当接部30の回動(先端部30aの左右位置を調整する操作)とは別に先端部30aの前後位置を調整する操作を行わなくても済むため、被介護者Pの体格の違いに簡単に対応することができる。
【0046】
また、当接部30は、先端部30aが被介護者Pの背中に当接された後も回動され、先端部30aが背中に押し付けられる。この際、
図7に示すように、当接部30には、後方への荷重Fが作用する。当該荷重Fは、右後方への荷重F1と左後方への荷重F2とに分解される。当接部30は、回動軸40の軸線方向(左前方及び右後方)へ移動可能に構成されるため、当該右後方への荷重F1により右後方へ移動する。
図4に示す連動板52及び可動ブレーキ部53は、当該移動に伴って一体的に右後方へ移動する。これにより、連動板52及び可動ブレーキ部53は、当接部30と一体的に回動しながら固定ブレーキ部54に接近する。また、バネ55は、連動板52と固定ブレーキ部54との間で圧縮される。
【0047】
当接部30がさらに回動されると、
図8に示すように、可動ブレーキ部53は、固定ブレーキ部54と接触する。この状態で当接部30を回動しようとすると、可動ブレーキ部53と固定ブレーキ部54と間に摩擦力が発生する。当該摩擦力によって、可動ブレーキ部53、連動板52、回動軸40及び当接部30の回動が規制される。このように当接部30の回動が規制されるまで先端部30aを被介護者Pの背中に押し当てることで、背面保持機構20(当接部30)で背中を支える動作が完了する。
【0048】
ここで、被介護者Pの背中を支えた当接部30には、当該被介護者Pの体重がかかる場合がある。このような場合としては、例えば、介護者が移乗支援装置1を誤って急発進させてしまった場合等がある。このような場合において、規制機構50は、当接部30の回動を規制して先端部30aの前後位置を維持する。
【0049】
具体的には、当接部30は、被介護者Pの体重がかかると後方への荷重Fが作用し、当該荷重Fの影響でトルクがかかって先端部30aが左右外側へ向かうように回動しようとする。また、当接部30は、後方への荷重Fが作用すると、当該荷重の影響(
図7に示す右後方への荷重F1参照)で右後方へ移動しようとする。以上のように、当接部30は、被介護者Pの体重がかかると、回動しながら右後方へ移動しようとする。この際、可動ブレーキ部53と固定ブレーキ部54とが強く接触して摩擦力が発生する。規制機構50は、当該摩擦力によって、可動ブレーキ部53及び当接部30等の回動を規制する。
【0050】
このように、本実施形態に係る規制機構50は、被介護者Pが当接部30に体重をかけることで生じた後方への荷重Fにより摩擦力(制動力)を発生させて、当接部30の回動を規制できる。これによれば、規制機構50は、背面保持機構20で背中を支える動作が完了すれば(当接部30を回動させれば)、被介護者Pの体重がかかった際の当接部30の回動を規制可能となる。これにより、規制機構50は、特別な操作(例えば、左右一対の当接部30同士をベルトで連結したり、回動軸40が回動しないように適宜固定したりする操作)を行うことなく、当接部30の回動を規制できる。
【0051】
また、本実施形態においては、回動軸40を前方に対して左右外側へ広がる方向に延びるように形成することで、左前方及び右後方を回動軸方向として当接部30を回動させるようにしている。これによれば、被介護者Pが当接部30に体重をかけた場合に(後方への荷重Fがかかった場合に)、当接部30にかかるトルクを小さくすることができる。
【0052】
具体的には、
図9に示すように、左前方及び右後方を回動軸方向として回動する当接部30の回転軌跡L1は、背面視(右後方視)略円状となる。また、当接部30の先端部30aは、被介護者Pの背中に押し当てられた際に、主に回動軸40の右上方に位置する。このような状態において、当接部30の回転軌跡L1の接線方向(先端部30aが位置する部分における回転軌跡L1の接線方向、すなわちトルクがかかり易い方向)は、左上方及び右下方となる。
【0053】
これに対して、被介護者Pは当接部30に対して後方へ体重をかけることとなるので、当接部30には後方へ大きな荷重F(
図7参照)が作用する。本実施形態において、当該荷重Fは、回転軌跡L1の接線方向とは異なる方向に作用することとなる。このような構成によれば、被介護者Pが当接部30に体重をかけた際に回転軌跡L1の接線方向に作用する荷重を小さくすることができる。これにより、被介護者Pが体重をかけた際に生じるトルクを小さくできるため、規制機構50は、小さい摩擦力で当接部30の回動を規制することができる。これによって、規制機構50にかかる負荷を低減することができる。また、規制機構50に求められる制動力(制動トルク)を小さくできるため、規制機構50の構成を簡素化できる。
【0054】
また、規制機構50は、バネ55によって可動ブレーキ部53を固定ブレーキ部54から離間する方向へ付勢している。これによれば、当接部30を被介護者Pの背中に当接させる最中に、可動ブレーキ部53が固定ブレーキ部54に接触するのを抑制することができる。これによって、当接部30を被介護者Pの背中に当接させる最中に、当接部30の回動が規制されるのを抑制できる。
【0055】
以上の如く、本実施形態に係る移乗支援装置1は、被介護者Pの背中に当接することで、当該背中を支える背面保持機構20(保持機構)を具備する移乗支援装置1であって、前記背面保持機構20は、前記背中に当接可能な当接部30と、前記当接部30を回動可能に支持すると共に、前方に対して左右外側に広がる方向に延びるように形成される回動軸40を具備し、前記当接部30の回動によって前記当接部30の前記背中への前後における当接位置を調整する調整部と、前記当接部30の回動を規制可能な規制機構50と、を具備するものである。
【0056】
このように構成することにより、被介護者Pが当接部30に体重をかけた際に当接部30にかかるトルクを小さくすることができる。これにより、小さい力(可動ブレーキ部53と固定ブレーキ部54との間に生じる摩擦力)で当接部30の回動を規制できるため、当接部30の回動を規制する規制機構50への負荷を低減することができる。
【0057】
また、前記規制機構50は、前記当接部30に対して前記被介護者Pの体重がかかると、前記当接部30の回動を規制するものである。
【0058】
このように構成することにより、被介護者Pが当接部30に体重をかけることによって生じる荷重(後方への荷重F)により、当接部30の回動を規制して当接位置(先端部30aの前後位置)を維持できる。これによれば、当接部30の回動を規制するための特別な操作を行うことなく当接位置を維持できる。
【0059】
また、前記規制機構50は、前記当接部30の回動に応じて連動動作(回動)する連動板52(連動部材)と、前記当接部30及び前記連動板52と連動しないケース51の右後部(第一固定部材)と、前記当接部30に対して前記被介護者Pの体重がかかると、前記連動板52の前記ケース51の右後部に対する相対運動(回動)を規制する可動ブレーキ部53及び固定ブレーキ部54(第一規制部)と、を具備するものである。
【0060】
このように構成することにより、簡単な構成で当接部30の回動を規制することができる。
【0061】
また、前記連動板52は、前記当接部30に対して前記被介護者Pの体重がかかると、前記ケース51の右後部に接近し、前記可動ブレーキ部53及び固定ブレーキ部54は、前記連動板52の前記ケース51の右後部への接近に伴って、前記相対運動を規制するための制動力(可動ブレーキ部53と固定ブレーキ部54との間の摩擦力)を生じさせるものである。
【0062】
このように構成することにより、簡単な構成で当接部30の回動を規制することができる。
【0063】
また、前記規制機構50は、前記連動板52を前記ケース51の右後部から離間する方向へ付勢するバネ55(付勢部材)をさらに具備するものである。
【0064】
このように構成することにより、当接位置(先端部30aの前後位置)の調整中に当接部30の回動が規制されるのを抑制できる。これにより、当接位置の調整中にその調整が阻害されるのを抑制できる。
【0065】
なお、本実施形態に係る背面保持機構20は、本発明に係る保持機構の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る連動板52は、本発明に係る連動部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るケース51の右後部は、本発明に係る第一固定部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る可動ブレーキ部53及び固定ブレーキ部54は、本発明に係る第一規制部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るバネ55は、本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
【0066】
また、可動ブレーキ部53及び固定ブレーキ部54は、互いに同一形状、かつ、同一材料で構成されるものである。このように構成することにより、可動ブレーキ部53及び固定ブレーキ部54に同一の部品を用いることができるため、部品の種類を減らしてコストを低減することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、背面保持機構20は、移乗支援装置1に適用されるものとしたが、これに限定されるものではなく、他の装置に適用されるものであってもよい。
【0069】
また、規制機構50は、被介護者Pの背中を支えた当接部30の回動を規制可能な構成であれば、その構成は本実施形態に限定されるものではない。規制機構50は、例えば、当接部30で被介護者Pの背中を支えた状態で回動軸40に係合されて回動を規制するようなピン等であってもよい。
【0070】
また、規制機構50は、必ずしも可動ブレーキ部53及び固定ブレーキ部54によって、被介護者Pが体重をかけた際の当接部30の回動を規制する必要はない。この場合、規制機構50は、例えば、ケース51及び連動板52を摩擦係数の高い材料によって構成し、被介護者Pが体重をかけた際に連動板52をケース51の内側面に接触させることで当接部30の回動を規制してもよい。このように構成することで、ケース51内に設ける部品(可動ブレーキ部53及び固定ブレーキ部54)を減らすことができるため、ケース51を小型化することができ、ひいては、規制機構50を小型化することができる。
【0071】
また、背面保持機構20の構成は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、
図10に示す変形例に係る背面保持機構120のように、前側可動ブレーキ部61及び前側固定ブレーキ部62を具備するような構成であってもよい。前側可動ブレーキ部61は、連動板52の前面に固定される。前側可動ブレーキ部61は、その摩擦係数が連動板52よりも高く、かつ、可動ブレーキ部53よりも低い材料によって構成される。前側固定ブレーキ部62は、前側可動ブレーキ部61と同一形状に形成される。前側固定ブレーキ部62は、前側可動ブレーキ部61の左前方に配置され、ケース51の内側面(左前部)に固定される。前側固定ブレーキ部62は、その摩擦係数がケース51よりも高く、かつ、固定ブレーキ部54よりも低い材料によって構成される。変形例において、前側固定ブレーキ部62は、前側可動ブレーキ部61と同一材料によって構成される。
【0072】
このような変形例に係る前側可動ブレーキ部61は、
図10(a)に示すように、当接部30が被介護者Pの背中に当接していない場合に、バネ55の付勢力によって左前方へ付勢され、前側固定ブレーキ部62と接触する。このような構成によれば、当接部30が被介護者Pの背中に当接していない場合に、当接部30がその自重によって回動しようとすると、前側可動ブレーキ部61と前側固定ブレーキ部62との間に摩擦力を発生させることができる。これにより、変形例に係る背面保持機構120は、当接部30が被介護者Pの背中に当接していない場合に、当接部30が自身の重さでぐらつくのを抑制できる。なお、
図10(b)に示すように、前側可動ブレーキ部61は、当接部30が被介護者Pの背中に押し付けられると、バネ55の付勢力に抗して前側固定ブレーキ部62から離間する。
【0073】
以上の如く、変形例に係る背面保持機構20は、前記連動板52を挟んで前記ケース51の右後部の反対側に配置され、前記当接部30及び前記連動板52と連動しないケース51の左前部(第二固定部材)と、前記連動板52の前記ケース51の左前部への接近に伴って、前記連動板52の前記ケース51の左前部に対する相対運動を規制するための制動力を生じさせる前側可動ブレーキ部61及び前側固定ブレーキ部62(第二規制部)と、をさらに具備するものである。
【0074】
このように構成することにより、当接部30が背中に当接していない場合に、前側可動ブレーキ部61及び前側固定ブレーキ部62によって当接部30を回動し難くすることができる。これにより、当接部30が背中に当接していない場合に当接部30がぐらつくのを抑制できる。
【0075】
なお、変形例に係るケース51の左前部は、本発明に係る第二固定部材の実施の一形態である。
また、変形例に係る前側可動ブレーキ部61及び前側固定ブレーキ部62は、本発明に係る第二規制部の実施の一形態である。
【0076】
このような変形例に係る背面保持機構120においても、前側可動ブレーキ部61及び前側固定ブレーキ部62を互いに同一形状、かつ、同一材料で構成することにより、前側可動ブレーキ部61及び前側固定ブレーキ部62に同一の部品を用いることができる。このため、コストを低減することができる。