(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817156
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】機器固定装置および前記機器固定装置を使用した機器の固定方法
(51)【国際特許分類】
F16M 11/14 20060101AFI20210107BHJP
F16M 11/00 20060101ALI20210107BHJP
F16M 13/00 20060101ALI20210107BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20210107BHJP
F16C 11/06 20060101ALI20210107BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20210107BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
F16M11/14 Z
F16M11/00 Z
F16M13/00 S
H04N5/64 521P
F16C11/06 F
F16C11/06 B
F16C11/10 B
B60K35/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-126946(P2017-126946)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-11774(P2019-11774A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一成
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−093638(JP,A)
【文献】
特開2013−096574(JP,A)
【文献】
特開2003−333461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 11/14
B60K 35/00
F16C 11/06
F16C 11/10
F16M 11/00
F16M 13/00
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に固定される可動調節部材と、前記可動調節部材を支持する支持部材とを有する機器固定装置において、
前記可動調節部材と前記支持部材の少なくとも一方に、両部材の当接部の少なくとも一部に位置する球面部が形成されて、前記可動調節部材が前記支持部材に対して傾き自在に支持されており、
前記可動調節部材と前記支持部材のそれぞれを貫通する貫通穴に固定軸が挿入され、それぞれの前記貫通穴の内径が前記固定軸の外径よりも大きく形成されて、前記可動調節部材および前記支持部材の双方と、前記固定軸とが、前記固定軸に直交する平面内で相対的に移動可能であり、
前記固定軸の一方の端部にフランジ部が設けられ、前記固定軸の他方の端部が固定基板に固定されて、前記固定基板と前記フランジ部とで、前記可動調節部材と前記支持部材とが挟持されていることを特徴とする機器固定装置。
【請求項2】
前記可動調節部材に形成された前記貫通穴と前記固定軸との間に形成される隙間の範囲内で、前記可動調節部材が、前記固定軸と平行な中心線が倒れる方向へ傾き自在である請求項1記載の機器固定装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記固定基板側に位置する第1支持部材と、前記固定基板から離れた側に位置する第2支持部材とを有し、
前記可動調節部材と前記第1支持部材との当接部と、前記可動調節部材と前記第2支持部材との当接部の、双方に前記球面部が設けられており、
前記第1支持部材と前記第2支持部材に前記貫通穴が形成され、前記第1支持部材と前記第2支持部材の間に前記可動側調節部材が位置し、前記固定基板と前記フランジ部とで、前記第1支持部材と前記第2支持部材および前記可動側調節部材が挟持されている請求項1または2記載の機器固定装置。
【請求項4】
前記第1支持部材よりも前記固定基板側に高さ調節部材が設けられており、前記第1支持部材と前記高さ調節部材との間に、前記固定軸と平行な中心線を中心とする相対的な回動によって前記第1支持部材と前記高さ調節部材との前記中心線方向の距離を変化させる調節段差が設けられている請求項3記載の機器固定装置。
【請求項5】
前記高さ調節部材に貫通穴が形成されており、前記固定軸の外径よりも前記高さ調節部材に形成された前記貫通穴の内径が大きい請求項4記載の機器固定装置。
【請求項6】
前記高さ調節部材に回転止め突起が設けられ、前記固定基板に前記回転止め突起が挿入される規制穴が開口しており、前記回転止め突起の外径よりも前記規制穴の内径が大きい請求項5記載の機器固定装置。
【請求項7】
前記第2支持部材の上に回動操作部材が設けられ、前記第1支持部材と前記回動操作部材との間に連結部が設けられ、前記回動操作部材を操作することで前記第1支持部材の回動調節が可能とされた請求項6記載の機器固定装置。
【請求項8】
機器に固定される可動調節部材と、前記可動調節部材を支持する支持部材の少なくとも一方に、両部材の当接部の少なくとも一部に位置する球面部が形成された機器固定装置を使用し、
前記可動調節部材と前記支持部材のそれぞれを貫通する貫通穴の内径を、固定軸の外径よりも大きくし、それぞれの前記貫通穴に前記固定軸を挿入して、前記固定軸の先部に形成された雄ねじ部を固定基板に螺着し、
前記球面部で前記両部材を摺動させて、前記可動調節部材を前記支持部材に対して傾かせる傾き調節と、それぞれの前記貫通穴と前記固定軸との間の隙間の範囲内で、前記可動調節部材と前記支持部材の双方を、前記固定軸に直交する平面内で移動させる移動調節とを行い、
前記傾き調節と前記移動調節の後に、前記固定軸を前記固定基板に締め付けて、前記可動調節部材と前記支持部材とを互いに当接させた状態で固定基板に固定することを特徴とする機器固定装置を使用した機器の固定方法。
【請求項9】
前記傾き調節では、前記可動調節部材に形成された前記貫通穴と前記固定軸との間に形成される隙間の範囲内で、前記可動調節部材を、前記固定軸と平行な中心線が倒れる方向へ傾かせる請求項8記載の機器固定装置を使用した機器の固定方法。
【請求項10】
前記支持部材として、前記固定基板側に位置する第1支持部材と、前記固定基板から離れた側に位置する第2支持部材とを使用し、
前記可動調節部材と前記第1支持部材とを前記球面部で当接させ、前記可動調節部材と前記第2支持部材とを前記球面部で当接させ、
前記第1支持部材と前記第2支持部材に形成された前記貫通穴と、前記可動調節部材に形成された前記貫通穴に前記固定軸を挿通させて、前記可動側調節部材を前記第1支持部材と前記第2支持部材とで挟んだ状態で、前記固定基板に固定する請求項8または9記載の機器固定装置を使用した機器の固定方法。
【請求項11】
前記第1支持部材よりも前記固定基板側に高さ調節部材を設け、前記第1支持部材と前記高さ調節部材を、前記固定軸と平行な中心線を中心として相対的に回動させて、前記第1支持部材と前記高さ調節部材との間に設けられた調節段差の当接状態を切換えて、前記第1支持部材と前記高さ調節部材の前記中心線方向の距離を変化させて高さ調節を行う請求項10記載の機器固定装置を使用した機器の固定方法。
【請求項12】
前記高さ調節部材に形成された貫通穴の内径を、前記固定軸の外径よりも大きくし、前記第2支持部材と共に前記高さ調節部材の前記移動調節を可能とする請求項11記載の機器固定装置を使用した機器の固定方法。
【請求項13】
前記高さ調節部材に回転止め突起を設け、前記固定基板に前記回転止め突起の外径よりも内径が大きい規制穴を形成し、
前記回転止め突起を、前記規制穴内に挿入し、前記高さ調節部材の回動を規制するとともに、前記高さ調節部材の前記移動調節を可能とする請求項12記載の機器固定装置を使用した機器の固定方法。
【請求項14】
前記第2支持部材の上に回動操作部材を設け、前記第1支持部材と前記回動操作部材とを連結部を介して連結し、前記回動操作部材を操作して前記第1支持部材を回動させて、前記第1支持部材と前記高さ調節部材との相対回動角度を変化させる請求項13記載の機器固定装置を使用した機器の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイなどの機器を固定する機器固定装置および前記機器固定装置を使用した機器の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車載用のブラケット装置に関する発明が記載されている。
このブラケット装置は、第1ブラケット体と第2ブラケット体を有している。第1ブラケット体には、球面部と、前記球面部を貫通する円錐面部とが形成されている。第2ブラケット体の2か所に支持部が形成されており、2個の支持部が対向する空間内に、凹状球面部を有する2個の軸受が設けられている。前記球面部が2個の軸受の間に挟まれた状態で、前記軸受の通孔と前記円錐部内に軸体が挿通され、軸体の両端部が前記支持部に固定されている。
【0003】
第1ブラケット体がフロントウインドガラスに固定され、ドライブレコーダが第2ブラケット体に装着される。前記軸体を中心として前記軸受が回動し、2個の軸受の内部で球面部が回動することで、ドライブレコーダの向きを互いに直交する3軸回りに回動させて変化させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−93638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたブラケット装置は、フロントウインドガラスに第1ブラケット体が固定された状態で、第2ブラケット体に装着されたドライブレコーダを、3軸を中心とする回動方向へ傾けることができる。しかし、ドライブレコーダの姿勢を、3軸を中心とする回動方向以外の向きに変化させることができず、例えばフロントウインドガラスの表面に沿う方向へ移動させ、またはフロントウインドガラスの表面に垂直な方向へ移動させることはできない。
【0006】
そのため、前記ブラケット装置を使用して、機器の位置をさらに精密に調節することは難しい。例えば、ブラケット装置を用いて装着する機器がヘッドアップディスプレイの場合に、運転席の前方に結像する虚像を運転者の視野の範囲内に位置させることが必要である。しかし、虚像を形成するための画角が大きくなると、虚像が前記視野の範囲から外れやすくなるため、画角を大きくしたヘッドアップディスプレイを、前記前記ブラケット装置で支持して、虚像を視野範囲内に確実に位置させるための調節を行うことは難しい。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、機器の向きを、3軸を中心とする回動方向以外の向きに移動させて調節することが可能となり、例えばヘッドアップディスプレイのような精密光学機器などの各種機器の向きを高精度に調節することができる機器固定装置および前記機器固定装置を使用した機器の固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、機器に固定される可動調節部材と、前記可動調節部材を支持する支持部材とを有する機器固定装置において、
前記可動調節部材と前記支持部材の少なくとも一方に、両部材の当接部の少なくとも一部に位置する球面部が形成されて、前記可動調節部材が前記支持部材に対して傾き自在に支持されており、
前記可動調節部材と前記支持部材のそれぞれを貫通する貫通穴に固定軸が挿入され、それぞれの前記貫通穴の内径が前記固定軸の外径よりも大きく形成されて、前記可動調節部材および前記支持部材の双方と、前記固定軸とが、前記固定軸に直交する平面内で相対的に移動可能であり、
前記固定軸の一方の端部にフランジ部が設けられ、前記固定軸の他方の端部が固定基板に固定されて、前記固定基板と前記フランジ部とで、前記可動調節部材と前記支持部材とが挟持されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の機器固定装置は、前記可動調節部材に形成された前記貫通穴と前記固定軸との間に形成される隙間の範囲内で、前記可動調節部材が、前記固定軸と平行な中心線が倒れる方向へ傾き自在である。
【0010】
本発明の機器固定装置は、前記支持部材が、前記固定基板側に位置する第1支持部材と、前記固定基板から離れた側に位置する第2支持部材とを有し、
前記可動調節部材と前記第1支持部材との当接部と、前記可動調節部材と前記第2支持部材との当接部の、双方に前記球面部が設けられており、
前記第1支持部材と前記第2支持部材に前記貫通穴が形成され、前記第1支持部材と前記第2支持部材の間に前記可動側調節部材が位置し、前記固定基板と前記フランジ部とで、前記第1支持部材と前記第2支持部材および前記可動側調節部材が挟持されているものとして構成できる。
【0011】
本発明の機器固定装置は、前記第1支持部材よりも前記固定基板側に高さ調節部材が設けられており、前記第1支持部材と前記高さ調節部材との間に、前記固定軸と平行な中心線を中心とする相対的な回動によって前記第1支持部材と前記高さ調節部材との前記中心線方向の距離を変化させる調節段差が設けられていることが好ましい。
【0012】
上記機器固定装置は、前記高さ調節部材に貫通穴が形成されており、前記固定軸の外径よりも前記高さ調節部材に形成された前記貫通穴の内径が大きいものとして構成される。
【0013】
さらに前記機器固定装置は、前記高さ調節部材に回転止め突起が設けられ、前記固定基板に前記回転止め突起が挿入される規制穴が開口しており、前記回転止め突起の外径よりも前記規制穴の内径が大きいものとして構成される。
【0014】
本発明の機器固定装置は、前記第2支持部材の上に回動操作部材が設けられ、前記第1支持部材と前記回動操作部材との間に連結部が設けられ、前記回動操作部材を操作することで前記第1支持部材の回動調節が可能とされることが好ましい。
【0015】
次に、本発明の機器固定装置を使用した機器の固定方法は、機器に固定される可動調節部材と、前記可動調節部材を支持する支持部材の少なくとも一方に、両部材の当接部の少なくとも一部に位置する球面部が形成された機器固定装置を使用し、
前記可動調節部材と前記支持部材のそれぞれを貫通する貫通穴の内径を、固定軸の外径よりも大きくし、それぞれの前記貫通穴に前記固定軸を挿入して、前記固定軸の先部に形成された雄ねじ部を固定基板に螺着し、
前記球面部で前記両部材を摺動させて、前記可動調節部材を前記支持部材に対して傾かせる傾き調節と、それぞれの前記貫通穴と前記固定軸との間の隙間の範囲内で、前記可動調節部材と前記支持部材の双方を、前記固定軸に直交する平面内で移動させる移動調節とを行い、
前記傾き調節と前記移動調節の後に、前記固定軸を前記固定基板に締め付けて、前記可動調節部材と前記支持部材とを互いに当接させた状態で固定基板に固定することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の機器固定装置を使用した機器の固定方法は、前記傾き調節では、前記可動調節部材に形成された前記貫通穴と前記固定軸との間に形成される隙間の範囲内で、前記可動調節部材を、前記固定軸と平行な中心線が倒れる方向へ傾かせることが可能である。
【0017】
本発明の機器固定装置を使用した機器の固定方法は、前記支持部材として、前記固定基板側に位置する第1支持部材と、前記固定基板から離れた側に位置する第2支持部材とを使用し、
前記可動調節部材と前記第1支持部材とを前記球面部で当接させ、前記可動調節部材と前記第2支持部材とを前記球面部で当接させ、
前記第1支持部材と前記第2支持部材に形成された前記貫通穴と、前記可動調節部材に形成された前記貫通穴に前記固定軸を挿通させて、前記可動側調節部材を前記第1支持部材と前記第2支持部材とで挟んだ状態で、前記固定基板に固定するものとして構成される。
【0018】
本発明の機器固定装置を使用した機器の固定方法は、前記第1支持部材よりも前記固定基板側に高さ調節部材を設け、前記第1支持部材と前記高さ調節部材を、前記固定軸と平行な中心線を中心として相対的に回動させて、前記第1支持部材と前記高さ調節部材との間に設けられた調節段差の当接状態を切換えて、前記第1支持部材と前記高さ調節部材の前記中心線方向の距離を変化させて高さ調節を行うことが好ましい。
【0019】
上記機器固定装置を使用した機器の固定方法では、前記高さ調節部材に形成された貫通穴の内径を、前記固定軸の外径よりも大きくし、前記第2支持部材と共に前記高さ調節部材の前記移動調節を可能とする。
【0020】
さらに、前記機器固定装置を使用した機器の固定方法は、前記高さ調節部材に回転止め突起を設け、前記固定基板に前記回転止め突起の外径よりも内径が大きい規制穴を形成し、
前記回転止め突起を、前記規制穴内に挿入し、前記高さ調節部材の回動を規制するとともに、前記高さ調節部材の前記移動調節を可能とする。
【0021】
本発明の機器固定装置を使用した機器の固定方法は、前記第2支持部材の上に回動操作部材を設け、前記第1支持部材と前記回動操作部材とを連結部を介して連結し、前記回動操作部材を操作して前記第1支持部材を回動させて、前記第1支持部材と前記高さ調節部材との相対回動角度を変化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の機器固定装置および機器固定装置を使用した機器の固定方法は、機器に固定される可動調節部材と支持部材とが固定軸によって固定基板に固定可能とされている。そして、可動調節部材が支持部材に対して傾きを調節自在であるとともに、可動調節部材と支持部材が、固定軸に対して、固定軸と直交する平面内で移動調節自在である。そのため、ヘッドアップディスプレイのような精密光学機器やその他の電子機器などの機器本体の姿勢を多方向へ調節して固定することが可能になる。
【0023】
また、可動調節部材および支持部材(さらには高さ調節部材)に、1本の固定軸を挿通した状態で、傾き調節と、固定軸と直交する平面内での移動調節を行うことができ、各調節の後に、固定軸を締め付けることで固定作業を完了できる。調節作業と固定作業を一連の動作で行うことができるため、組立調節作業を効率良く行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態の機器固定装置を使用して、機器としてのヘッドアップディプレイを車両に固定した状態を示す説明図、
【
図2】ヘッドアップディスプレイの画像表示動作を示す説明図、
【
図3】本発明の実施の形態の機器固定装置を示す斜視図、
【
図5】
図3に示す機器固定装置をV−V線で切断した平断面図、
【
図6】本発明の実施の形態の機器固定装置に設けられた第1支持部材と回動操作部材および高さ調節部材を示す分解斜視図、
【
図7】本発明の実施の形態の機器固定装置に設けられた第1支持部材と回動操作部材および高さ調節部材を示す側面図、
【
図8】
図3に示す機器固定装置をX−Z平面と平行な面で切断した中央縦断面図、
【
図9】可動調節部材と支持部材および高さ調節部材を水平方向へ移動調節する動作を示す
図8と同じ中央縦断面図、
【
図10】可動調節部材を、固定軸と平行な中心線が倒れ方向へ傾き調節する動作を示す
図8と同じ中央縦断面図、
【発明を実施するための形態】
【0025】
<ヘッドアップディスプレイ50の構造>
図1には、機器の一例であるヘッドアップディスプレイ50が、本発明の実施の形態の機器固定装置10を使用して、自動車1に固定された状態が示されている。
【0026】
自動車1は、ボンネット部2と天井部3との間にウインドシールドガラス4が装着されており、ウインドシールドガラス4で、車室空間5と、車両の前方の外部空間6とが仕切られている。ウインドシールドガラス4は湾曲している。
【0027】
車室空間5には運転席8が設けられ、その前方にステアリングホイールおよびダッシュボード9が設けられている。このダッシュボード9の内部に、ヘッドアップディスプレイ50が埋め込まれている。ヘッドアップディスプレイ50は、
図3に示す筐体51を有している。筐体51には固定ブラケット51aが一体にまたは別体に設けられている。固定ブラケット51aは、X−Y平面内の3か所に設けられている。
【0028】
ヘッドアップディスプレイ50の筐体51の内部に各種光学部品および電子回路が内蔵されている。
図2に示すように、筐体51の内部に、プロジェクタ59と中間像スクリーン54および反射部材55が設けられている。プロジェクタ59は、画像生成部材52と投影レンズ53とを有している。画像生成部材52は、例えば、DLP(Digital Light Processing)素子(DLPは登録商標)である。DLP素子は、光源と、光源からの光を画素毎に制御するデジタルミラーデバイス(DMD)を備えている。また、三原色の光源を備え、あるいはカラーフィルターを備えて、多色表示の画像を生成できるようになっている。
【0029】
投影レンズ53は、画像生成部材52の前方に位置し、非球面の凸レンズで構成され、または複数のレンズを組み合わせて構成されている。プロジェクタ59の前方の合焦位置に中間像スクリーン54が設けられている。中間像スクリーン54は、マイクロレンズアレイやデフューザで構成される。反射部材55は、中間像スクリーン54の前方に設けられ、凹面が反射面となった拡大鏡である。ウインドシールドガラス4の一部は、反射部材55の上方に対向している。
【0030】
ヘッドアップディスプレイ50は、プロジェクタ59に設けられたDLP素子である画像生成部材52で表示画像が生成され、この表示画像が投影レンズ53によって、中間像スクリーン54に投影されて中間像が生成される。中間像スクリーン54で中間像を生成した表示光は、中間像スクリーン54を透過し、拡大凹面鏡である反射部材55で画角が拡大されながら全反射されて、ウインドシールドガラス4に向けられる。
【0031】
ウインドシールドガラス4はハーフミラーとして機能し、反射部材55で全反射された光の一部が、ウインドシールドガラス4で反射されて視認者(運転者)61の眼62に向けられる。その結果、眼62によって、ウインドシールドガラス4の前方の外部空間6に結像する虚像63を目視することが可能になる。なお、ダッシュボード9の上に、ウインドシールドガラス4の内側に対向するコンバイナーを配置し、反射部材55からの反射光を投影するハーフミラーとしてコンバイナーを使用することも可能である。
【0032】
ヘッドアップディスプレイ50では、投影レンズ53の焦点距離と拡大倍率、および反射部材55の拡大倍率などによって、虚像63の結像位置および画角が決められる。ここで、ヘッドアップディスプレイ50の筐体51の内部では、画像生成部材52と投影レンズ53との光学距離が短く、投影レンズ53と中間像スクリーン54との光学距離、および投影レンズ53と反射部材55との光学距離も短くなっている。そのため、筐体51の姿勢が少し変化するだけで、虚像63の結像位置が大きく変動することになる。そのため、視認者61の視野の範囲内に虚像63の位置を収めるためには、ダッシュボード9内で筐体51の取付け姿勢を精密に調節することが必要である。特に、投影レンズ53と反射部材55の拡大倍率を高くして、虚像63の画角を広くしようとすると、筐体51の姿勢のわずかな変化で、虚像63の結像位置が大きく動くようになる。よって、筐体51の取付け姿勢の調節範囲(調節しろ)を多方向に設定することが必要になる。
【0033】
<機器固定装置10の構造>
そこで、
図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ50の筐体51の3箇所に設けられた固定ブラケット51aを、本発明の実施の形態の機器固定装置10を使用して固定基板56に固定することで、筐体51の姿勢を多方向に調節することが可能になる。
図3に示す固定基板56は、ダッシュボード9の内部に位置する車体構造物の一部であり、鉄製である。
【0034】
図3に示す機器固定装置10は、
図4の分解斜視図に示される各部材から構成されている。これら部材は、合成樹脂材料を使用した射出成型、または軽金属材料を使用したダイキャスト成型によって製造されている。ただし、固定軸40は金属棒から切削加工されて形成されている。
【0035】
機器固定装置10に可動調節部材11が設けられている。可動調節部材11には、固定部12が突出している。
図3に示すように、機器であるヘッドアップディスプレイ50の筐体51に設けられた固定ブラケット51aが、固定部12に重ねられて固定ねじなどで固定されている。なお、可動調節部材11は機器の筐体51に固定されていればよく、例えば、筐体51を構成する一部品である固定ブラケット51aに、可動調節部材11が一体に形成されていてもよい。
【0036】
可動調節部材11の外面の一部は、下方(Z2方向)に向けられた下側凸球面部13aと、上方(Z1方向)に向けられた上側凸球面部13bとなっている。下側凸球面部13aと上側凸球面部13bは、曲率中心が互いに一致している。
図5にも示すように、可動調節部材11には、上下に貫通する貫通穴14が形成されている。
図6と
図7および
図10に、貫通穴14の中心線O1が示されている。この中心線O1は前記曲率中心を通過している。
【0037】
図3と
図4に示すように、可動調節部材11の下側に第1支持部材15が設けられ、可動調節部材11の上側に第2支持部材16が設けられている。第1支持部材15には、上方に開口する下側凹球面部17aが形成され、第2支持部材16には、下方に開口する上側凹球面部17bが形成されている。下側凹球面部17aと上側凹球面部17bは、その曲率半径が、可動調節部材11の下側凸球面部13aおよび上側凸球面部13bとほぼ一致している。
【0038】
図8に示すように、可動調節部材11は、第1支持部材15と第2支持部材16との間に配置され、下側凸球面部13aと下側凹球面部17aとが当接して下側当接部が形成され、上側凸球面部13bと上側凹球面部17bとが当接して上側当接部が形成されている。下側当接部と上側当接部での球面部どうしの摺動により、可動調節部材11は、第1支持部材15と第2支持部材16に対して、互いに直交するX軸とY軸およびZ軸の3軸のそれぞれを中心とする回動方向へ相対的に傾き調節可能となっている。
【0039】
なお、第1支持部材15と第2支持部材16に対して、可動調節部材11を、3軸を中心とする回動方向へ傾き可能とするためには、可動調節部材11と第1支持部材15の少なくとも一方、および可動調節部材11と第2支持部材16の少なくとも一方に球面部が形成されており、また、可動調節部材11と第1支持部材15との当接部の少なくとも一部に球面部が形成され、可動調節部材11と第2支持部材16との当接部の少なくとも一部に球面部が形成されていればよい。
【0040】
図8に示すように、第1支持部材15には、下向きに突出する嵌合突部15aが形成されており、この嵌合突部15aを上下に貫通する貫通穴18aが形成されている。第2支持部材16にも上下に貫通する貫通穴18bが形成されている。
図8に示すように、第1支持部材15と第2支持部材16との間に可動調節部材11が挟まれた状態で、第1支持部材15に形成された貫通穴18aと第2支持部材16に形成された貫通穴18bは、上下方向(Z1−Z2方向)において同一線上に位置している。
【0041】
図3と
図4および
図8に示すように、第2支持部材16の上側に回動操作部材21が設けられている。回動操作部材21の下面21aは平面である。第2支持部材16の上面にも平面部19が形成されており、回動操作部材21の下面21aが、第2支持部材16の平面部19の上に載せられている。第1支持部材15には、下側連結部24が一体に形成されている。第1支持部材15の外周面と下側連結部24との間に連結貫通部24aが形成されている。回動操作部材21には、側方に上側連結部22が下向きに一体に形成されており、上側連結部22に、弾性変形可能な連結爪23が一体に形成されている。
【0042】
図8に示すように、可動調節部材11の下側凸球面部13aが第1支持部材15の下側凹球面部17aの内部に入り込み、可動調節部材11の上側凸球面部13bが第2支持部材16の上側凹球面部17bは入り込んだ状態で、第2支持部材16の平面部19の上に回動操作部材21が設置される。
【0043】
図8に示すように、回動操作部材21から下向きに延びる上側連結部22が、第1支持部材15の連結貫通部24a内に挿入され、上側連結部22に形成された連結爪23が、第1支持部材15に形成された下側連結部24の下端部24bに掛止される。この連結爪23の係止により、第1支持部材15と回動操作部材21とが中心線O1に沿う方向で互いに離れないように連結される。また、
図5に示すように、上側連結部22が連結貫通部24a内に回転方向に隙間なく嵌入することで、第1支持部材15と回動操作部材21は、相対的に回動できないように一体化される。
【0044】
その結果、下側凸球面部13aと上側凸球面部13bとが、下側凹球面部17aと上側凹球面部17bとの間に嵌合した状態で、可動調節部材11と第2支持部材16が、第1支持部材15と回動操作部材21との間に挟まれる。これにより、可動調節部材11と第1支持部材15と第2支持部材16および回動操作部材21が、互いに離れることなく組み合わされる。
【0045】
図4と
図8に示すように、回動操作部材21には、上下に貫通する貫通穴25が形成されており、貫通穴25の周囲に十字状に形成された操作溝26が形成されている。可動調節部材11と第1支持部材15と第2支持部材16および回動操作部材21が組み合わされた状態で、操作溝26に治具を挿入して、第2支持部材16の上に位置する回動操作部材21を回動させると、回動操作部材21と第1支持部材15とをZ軸を中心として回動させることができる。
【0046】
第1支持部材15の下側に高さ調節部材31が設けられている。高さ調節部材31は円板である。
図4と
図6および
図7に示すように、高さ調節部材31の上面に下側調節段差32が設けられ、第1支持部材15の下面には、上側調節段差33が形成されている。
図6と
図7に、第1支持部材15と回動操作部材21および高さ調節部材31とが組み合わされた状態でのZ1−Z2方向に延びる中心線O2が示されている。この中心線O2は、可動調節部材11が傾いていないときの中心線O1(
図10参照)と一致する。
【0047】
図6と
図7に示すように、高さ調節部材31に設けられた下側調節段差32には、上方から見たときに中心線O2を中心とする反時計方向に向かうにしたがって、Z1方向へ順に高くなるように多段に形成された階段面33aが形成されている。第1支持部材15に設けられた上側調節段差33には、上方から見たときに、中心線O2に対する反時計回り方向にしたがってZ1方向へ向けて順に低くなるように多段に形成された階段面33aが形成されている。
【0048】
図7に示すように、下側調節段差32では、隣り合う階段面32aの境界となる段差部32bが、中心線O2と平行な線に対して反時計方向へα1の角度を有して傾斜している。上側調節段差33でも、隣り合う階段面33aの境界となる段差部33bが、中心線O2と平行な線に対して反時計方向へα2の角度を有して傾斜している。角度α1と角度α2はほぼ一致している。
【0049】
図4と
図6および
図8に示すように、高さ調節部材31には、Z2方向に延びる一対の回転止め突起34が一体に形成されている。固定基板56には、回転止め突起34が入り込む規制穴57が形成されている。
図4と
図8に示すように、規制穴57の内径は、回転止め突起34の外径よりも十分に大きく形成されている。
【0050】
また、高さ調節部材31には、上下方向(Z1−Z2方向)に貫通する貫通穴35が形成されている。
図8に示すように、第1支持部材15に形成された嵌合突部15aを貫通穴35に嵌合させることで、第1支持部材15と高さ調節部材31とを連結させることが可能である。
【0051】
図4と
図8に示すように、機器固定装置10に固定軸40が設けられている。固定軸40は金属製である。固定軸40は、下端部(他方の端部)に雄ねじ部41が形成されている。固定軸40の上端部(一方の端部)には操作頭部42とその下に位置するフランジ部43が一体に形成されている。また、固定基板56には前記雄ねじ部41が螺合する雌ねじ穴58が形成されている。なお、フランジ部43が固定軸40とは別体に形成されたリング形状であり、固定軸40の軸部がフランジ部43の中心部の穴に挿入されてもよい。
【0052】
図8の断面図に、各部材の寸法の相対関係が示されている。
図5にも示すように、固定軸40のフランジ部43よりも下側部分の外径D1に対し、可動調節部材11に形成された貫通穴14の内径D2が十分に大きく形成されている。
図8に示すように、第1支持部材15に形成された貫通穴18aの内径D3と第2支持部材16に形成された貫通穴18bの内径D4も、固定軸40の外径D1よりも十分に大きく形成されている。高さ調節部材31に形成されている貫通穴35には、第1支持部材15の嵌合突部15aが嵌合しているため、貫通穴35の内径D5も固定軸40の外径D1よりも十分に大きく形成されている。また、回動操作部材21に形成されている貫通穴25の最大径部分25aの内径D6は、固定軸40の一部であるフランジ部43の外径よりも十分に広く形成されている。
【0053】
<機器の固定方法>
次に、前記機器固定装置10を使用したヘッドアップディスプレイ50の筐体51の固定方法を説明する。
【0054】
図3と
図8に示すように、第1支持部材15と第2支持部材16との間に可動調節部材11を挟んだ状態で、第2支持部材16の上に回動操作部材21を設置する。回動操作部材21から延びる上側連結部22を、第1支持部材15に形成された連結貫通部24aに挿入し、上側連結部22に形成された連結爪23を、第1支持部材15に形成された下側連結部24の下端部24bに掛止させて、第1支持部材15と回動操作部材21とを連結する。これにより、第1支持部材15と回動操作部材21との間に、第2支持部材16と可動調節部材11とが挟まれて、各部材が互いに離れないように組み立てられる。
【0055】
その後、第1支持部材15の下面の嵌合突部15aに高さ調節部材31を嵌合させ、固定軸40を、回動操作部材21の貫通穴25、第2支持部材16の貫通穴18b、可動調節部材11の貫通穴14、第1支持部材15の貫通穴18a、および高さ調節部材31の貫通穴35内に挿入し、固定軸40の下端の雄ねじ部41を固定基板56の雌ねじ穴58に螺着させる。このとき、高さ調節部材31から下向きに突出する回転止め突起34を、固定基板56に形成された規制穴57に入り込ませる。
【0056】
固定軸40を固定基板56に螺着する前の行程または後の行程で、可動調節部材11の固定部12をヘッドアップディスプレイ50の筐体51に設けられた固定ブラケット51aに固定する。固定ブラケット51aは、X−Y平面内の3か所に設けられ、機器固定装置10も3個使用されて、それぞれが固定基板56に取付けられる。
【0057】
可動調節部材11が傾いていないときに、貫通穴14の中心を通る
図10に示す中心線O1と、
図6と
図7に示す第1支持部材15と回動操作部材21の中心を通過する中心線O2は、共に固定軸40の軸中心と平行である。
【0058】
(傾き調節)
機器固定装置10では、固定軸40の雄ねじ部41を固定基板56の雌ねじ穴58に螺着し、ただし完全に締め付けていない弛み状態の下で、第1支持部材15と第2支持部材16を基準として、可動調節部材11を、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)のそれぞれを中心とする回動方向に向けて傾かせて調節することが可能である。
図5と
図8に示すように、可動調節部材11に形成された貫通穴14の内径D2は固定軸40の外径D1よりも十分に大きく、貫通穴14の内面と固定軸40の外面との間に大きな隙間が形成されている。そのため、
図10に示すように、可動調節部材11を、中心線O1が傾く方向へ、すなわちX軸とY軸を中心とする回動方向へ傾かせることが可能である。
この傾き調節により、ヘッドアップディスプレイ50の筐体51を傾かせる調節作業が可能になる。
【0059】
(移動調節)
図8に示すように、可動調節部材11に形成された貫通穴14の内径D2、第1支持部材15に形成された貫通穴18aの内径D3、第2支持部材16に形成された貫通穴18bの内径D4、高さ調節部材31に形成された貫通穴35の内径D5は、いずれも固定軸40の外径D1よりも十分に大きく、回動操作部材21の貫通穴25の最大径部分25aの内径D6は固定軸40のフランジ部43の外径よりも大きい。さらに、高さ調節部材31に設けられた回転止め突起34の外径よりも、固定基板56に形成された規制穴57の内径が十分に大きい。
【0060】
そのため、固定軸40を完全に締め付けない弛み状態の下で、第1支持部材15と第2支持部材16と可動調節部材11および回動操作部材21と高さ調節部材31の全ての部材を互いに離れることなく組み合わせて、固定軸40と直交する平面、すなわちX−Y平面に沿って移動させる調節が可能である。
図9には、第1支持部材15と第2支持部材16と可動調節部材11および回動操作部材21と高さ調節部材31の全ての部材を、X1方向へ移動した調節状態が示されている。
この移動調節によって、ヘッドアップディスプレイ50の筐体51の固定位置を、X−Y平面に沿う方向で調節することが可能になる。
【0061】
(高さ調節)
固定軸40を完全に締め付けない弛み状態の下で、最上部に設けられた回動操作部材21の操作溝26に治具を嵌合させてZ軸(中心線O2)を中心として回動させると、下側連結部24と上側連結部22とで互いに連結されている第1支持部材15が、回動操作部材21と共に回動する。これにより、高さ調節部材31に形成された下側調節段差32と、第1支持部材15に形成された上側調節段差33との当接状態が切換えられる。高さ調節部材31に設けられた回転止め突起34が、規制穴57の内部に位置しているため、回動操作部材21を回動させたときに、高さ調節部材31の回動を規制した状態で、第1支持部材15を回動させることが可能である。
【0062】
図7に示すように、下側調節段差32では隣り合う階段面32aの境界となる段差部32bが、上方から見たときの反時計方向へ角度α1で傾き、上側調節段差33でも、隣り合う階段面33aの境界となる段差部33bが反時計方向へ角度α2で傾いている。そのため、固定軸40を弛めた状態で、回動操作部材21を、上方から見た反時計方向へ回動させたときに、階段面32aと階段面33aの当接状態が滑らかに切換えられて、高さ調節部材31と第1支持部材15とが、中心線O1に沿って互いに離れる方向へ調節される。
【0063】
逆に、回動操作部材21と共に第1支持部材15を上方から見た時計方向へ回動させると、高さ調節部材31と第1支持部材15は、中心線O1に沿って互いに接近する方向へ調節される。
【0064】
機器固定装置10では、最上部に位置する回動操作部材21を上方から操作して回動させることで、第1支持部材15と高さ調節部材31との相対回動角度を変えることができるので、高さ調節作業が容易である。
【0065】
この高さ調節作業で、
図3に示す筐体51に設けられた固定ブラケット51aのZ1−Z2方向の高さ位置を調節することが可能になる。
【0066】
(固定作業)
前記傾き調節と移動調節および高さ調節を組み合わせて行った後に、固定軸40の操作頭部42に治具を嵌合させて、固定基板56の雌ねじ穴58に締め付けると、固定軸40に設けられたフランジ部43で、第2支持部材16と可動調節部材11と第1支持部材15および高さ調節部材31が固定基板56に押し付けられ、それぞれの部材が相互に動くことのないように固定される。
【0067】
前記調節作業で、筐体51の位置を多方向に調節することができるため、
図1と
図2に示す虚像63を、視認者61の眼62の視野内に収めるための調節が可能になる。また、投影レンズ53と反射部材55の拡大倍率を大きくして、虚像63の画角を大きくしたとしても、虚像63を視野内に収める調節が可能になる。
【0068】
なお、本発明での機器はヘッドアップディスプレイに限られるものではなく、他の精密光学装置や電子装置であってもよい。機器固定装置10を使用することにより、これらの各種装置の位置決め調節を高精度に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0069】
1 自動車
4 ウインドシールドガラス
9 ダッシュボード
10 機器固定装置
11 可動調節部材
13a 下側凸球面部
13b 上側凸球面部
14 貫通穴
15 第1支持部材
16 第2支持部材
17a 下側凹球面部
17b 上側凹球面部
18a,18b 貫通穴
21 回動操作部材
22 上側連結部
23 連結爪
24 下側連結部
24a 連結貫通部
25 貫通穴
31 高さ調節部材
32 下側調節段差
33 上側調節段差
40 固定軸
41 雄ねじ部
43 フランジ部
50 ヘッドアップディスプレイ(機器)
51 筐体