(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リブは、前記異形縦フィンの傾動に伴い、前記湾曲部の前記上流端部が前記シート側縦壁部に最も近づけられたとき、同湾曲部の上流で、同湾曲部の前記上流端部と前記シート側縦壁部との間の隙間を塞ぐ長さを有している請求項1に記載の空調用レジスタ。
前記異形縦フィンの傾動に伴い、前記湾曲部の前記上流端部が前記シート側縦壁部に最も近づけられたとき、前記リブは、下流側ほど前記シート側縦壁部から遠ざかるように、同シート側縦壁部に対し傾斜した状態となる請求項2に記載の空調用レジスタ。
【背景技術】
【0002】
車両用の空調用レジスタとして、車両用シートの斜め前方に配置される筒状のリテーナと、リテーナ内に配置される複数の板状の縦フィンとを備えるものが知られている。
図8に示すように、リテーナ71は、車幅方向(
図8の上下方向)に互いに対向する一対の縦壁部と、両縦壁部間に形成される空調用空気A1の通風路72とを有している。空調用空気A1の流れ方向における通風路72の下流端部は、吹出口を構成している。縦フィンは、空調用空気A1の流れ方向を調整するためのものであり、通風路72の車幅方向に互いに離間した複数箇所に配置され、リテーナ71に対し、それぞれ車幅方向へ傾動可能に支持されている。
【0003】
さらに、両縦壁部のうち車両用シート(乗員P1)に近い側の縦壁部は、シート側縦壁部73によって構成されている。複数の縦フィンのうち、シート側縦壁部73に隣接する縦フィンは、異形縦フィン本体75を有する異形縦フィン74によって構成されている。異形縦フィン本体75の上記流れ方向における少なくとも上流部は、シート側縦壁部73に向けて膨らむように湾曲する湾曲部76によって構成されている。そのため、
図8において実線で示すように、上記流れ方向における異形縦フィン74の下流端部74bが上流端部74aよりも乗員P1側(シート側縦壁部73に近づく側)に位置するように異形縦フィン74が傾動された場合、上流端部74aを含む湾曲部76の上流部が隣の縦フィン77の上流に位置する。表現を変えると、湾曲部76の一部が隣の縦フィン77の上流で同縦フィン77に対し車幅方向にオーバラップする。なお、異形縦フィン74を上記のように傾動させる操作は、空調用空気A1を乗員P1に当てたいときになされる。
【0004】
従って、異形縦フィン74が、
図8において太い二点鎖線で示すように湾曲しておらず、同異形縦フィン74の全体が平板状をなしていて、隣の縦フィン77に対し車幅方向にオーバラップしていないと、空調用空気A1の一部が二点鎖線の矢印Bで示すように、異形縦フィン74と縦フィン77との間をシート側縦壁部73に沿って真っ直ぐに流れる。この空調用空気A1が、実線の矢印Cで示すように、縦フィン77に沿って斜めに流れようとする空調用空気A1と干渉する。
【0005】
しかし、上記のように異形縦フィン本体75に湾曲部76が形成されることで、その湾曲部76が、上記矢印Bで示す空調用空気A1の流れを妨げ、流れ方向の異なる空調用空気A1同士の上記干渉を抑制することができる。空調用空気A1を、吹出口から乗員P1に向けて斜めに吹出させることができる。
【0006】
なお、空調用空気A1の流れ方向における少なくとも上流部に湾曲部を有する縦フィンは、例えば、特許文献1に記載された空調用レジスタで用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来の空調用レジスタでは、
図8において二点鎖線で示すように、異形縦フィン74の下流端部74bが上流端部74aよりも反乗員側(シート側縦壁部73から遠ざかる側)に位置するように同異形縦フィン74が傾動された場合、湾曲部76とシート側縦壁部73との間に比較的大きな隙間G1が生ずる。異形縦フィン74を上記のように傾動させる操作は、空調用空気A1を乗員P1に当てたくないときになされる。空調用空気A1の一部は、矢印Eで示すように、上記隙間G1を通り抜けた後、シート側縦壁部73に沿って真っ直ぐ吹出され、空調用空気A1に当たりたくない乗員P1に当たってしまい、その乗員P1に不快感を与えるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、空調用空気が乗員から遠ざかる側へ向けて斜めに吹出されるように縦フィンが傾動された場合に、空調用空気がシート側縦壁部に沿って真っ直ぐ吹出されるのを抑制することのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する空調用レジスタは、車両に設置された車両用シートの斜め前方に配置される筒状のリテーナを備え、前記リテーナは、車幅方向に互いに対向する一対の縦壁部と、両縦壁部間に形成される空調用空気の通風路とを有しており、前記通風路の車幅方向に互いに離間した複数箇所には、空調用空気の流れ方向を調整するための板状の縦フィンが配置され、各縦フィンは前記リテーナに対し車幅方向へ傾動可能に支持されており、両縦壁部のうち前記車両用シートに近い側の縦壁部はシート側縦壁部により構成され、複数の前記縦フィンのうち、前記シート側縦壁部に隣接する縦フィンは、異形縦フィン本体を有する異形縦フィンにより構成され、前記異形縦フィン本体の前記流れ方向における少なくとも上流部が、前記シート側縦壁部に向けて膨らむように湾曲する湾曲部により構成された空調用レジスタであって、前記異形縦フィンは、複数の前記縦フィンが、前記空調用空気を前記通風路の下流端部の吹出口から両縦壁部に沿って真っ直ぐ吹出させる中立状態にされたときには、前記流れ方向における前記湾曲部の上流端部から前記シート側縦壁部に沿って上流へ延びる状態となる板状のリブを備えている。
【0011】
上記の構成によれば、複数の縦フィンが中立状態にされると、空調用空気はこれらの縦フィン及び両縦壁部に沿って流れ、通風路の下流端部の吹出口から真っ直ぐ吹出される。この中立状態では、リブは、空調用空気の流れ方向における湾曲部の上流端部からシート側縦壁部に沿って上流へ延びる状態となる。そのため、リブがシート側縦壁部に対し傾斜する場合に比べ、同リブが空調用空気の流れ方向に及ぼす影響は小さい。
【0012】
空調用空気を乗員に当てたくないときには、上記流れ方向における異形縦フィンの下流端部が上流端部よりも反乗員側(シート側縦壁部から遠ざかる側)に位置するように同異形縦フィンが傾動されて、湾曲部とシート側縦壁部との間に隙間が生ずる。しかし、異形縦フィンの上記傾動は、異形縦フィン本体における湾曲部よりも上流のリブを伴ってなされる。そのため、上記流れ方向におけるリブの上流端部によって構成される異形縦フィンの上流端部とシート側縦壁部との間の隙間は、リブが設けられない場合の異形縦フィンの上流端部(湾曲部の上流端部)とシート側縦壁部との間の隙間よりも小さくなる。
【0013】
従って、空調用空気が、異形縦フィン本体とシート側縦壁部との隙間を通り抜けて同シート側縦壁部に沿って吹出口から真っ直ぐ吹出されて乗員に当たる現象が抑制される。
上記空調用レジスタにおいて、前記リブは、前記異形縦フィンの傾動に伴い、前記湾曲部の前記上流端部が前記シート側縦壁部に最も近づけられたとき、同湾曲部の上流で、同湾曲部の前記上流端部と前記シート側縦壁部との間の隙間を塞ぐ長さを有していることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、リブが上記の条件を満たす長さを有することで、異形縦フィンの傾動に伴い、湾曲部の上流端部がシート側縦壁部に最も近づけられたとき、リブが同湾曲部の上流で、湾曲部の上流端部とシート側縦壁部との隙間を塞ぐ。そのため、異形縦フィンの上流端部(リブの上流端部)とシート側縦壁部との間の隙間が最も小さくなり、同隙間を通り抜ける空調用空気の量が最も少なくなる。
【0015】
上記空調用レジスタにおいて、前記異形縦フィンの傾動に伴い、前記湾曲部の前記上流端部が前記シート側縦壁部に最も近づけられたとき、前記リブは、下流側ほど前記シート側縦壁部から遠ざかるように、同シート側縦壁部に対し傾斜した状態となることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、上記流れ方向における異形縦フィンよりも上流をシート側縦壁部に沿って流れる空調用空気は、リブに当たると、そのリブに沿って流れることで、湾曲部へスムーズに導かれる。
【0017】
上記空調用レジスタにおいて、前記異形縦フィンの傾動に伴い、前記湾曲部の前記上流端部が前記シート側縦壁部に最も近づけられたとき、前記リブ
の上流端部は前記シート側縦壁部から離間することが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、異形縦フィンの傾動に伴い、湾曲部の上流端部がシート側縦壁部に最も近づけられたとき、リブの上流端部がシート側縦壁部から離間される。そのため、リブにおける上流端部のシート側縦壁部との接触に伴う異音の発生が抑制される。
【0019】
上記空調用レジスタにおいて、前記リブは、前記湾曲部の前記上流端部から遠ざかるに従い薄くなるように形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、複数の縦フィンが上記中立状態にされたときには、空調用空気の一部は、異形縦フィンを通過する際、最初に、上記流れ方向における異形縦フィン本体の最上流部を構成するリブを境として、車幅方向の両側に分かれて流れる。分かれた空調用空気は、湾曲部の上流端部に近づくに従い徐々に厚くなるリブに沿って流れることにより、同湾曲部にスムーズに導かれる。
【0020】
上記空調用レジスタにおいて、前記リブは、前記湾曲部に繋がった状態で同湾曲部に一体に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、異形縦フィンの製造時には、リブが、湾曲部に繋がった状態で同湾曲部と同時に形成される。そのため、リブが湾曲部とは別の部材によって形成される場合とは異なり、リブを湾曲部に接続する工程が不要となる。その分、異形縦フィンの製造工数が少なくなり、生産性が向上する。
【0021】
上記空調用レジスタにおいて、前記湾曲部の前記上流端部は、前記異形縦フィンの傾動に伴い、前記シート側縦壁部から最も遠ざけられたとき、隣の縦フィンの上流に位置するものであることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、空調用空気を乗員に当てたいときには、上記流れ方向における異形縦フィンの下流端部が上流端部よりも乗員側(シート側縦壁部に近づく側)に位置するように同異形縦フィンが傾動される。この傾動により、湾曲部の上流端部が隣の縦フィンの上流に位置し、同上流端部を含む湾曲部の上流部が縦フィンに対し車幅方向にオーバラップする。
【0023】
従って、仮に、リブが設けられておらず、しかも、異形縦フィンが湾曲しておらず、上流端部が隣の縦フィンの上流に位置していない(オーバラップしていない)と、空調用空気の一部が、異形縦フィンと隣の縦フィンとの間をシート側縦壁部に沿って真っ直ぐに流れ、隣の縦フィンに沿って斜めに流れようとする空調用空気と干渉する。しかし、異形縦フィン本体に湾曲部が形成されることで、同湾曲部が、真っ直ぐ流れる上記空調用空気の流れの妨げとなり、流れ方向の異なる空調用空気同士の干渉が抑制される。空調用空気は、吹出口から乗員に向けて斜めに吹出されて、その乗員に当たる。さらに、リブが追加されることで、隣の縦フィンに対する車幅方向のオーバラップ量が多くなるため、上記の効果がさらに大きくなる。
【発明の効果】
【0024】
上記空調用レジスタによれば、空調用空気が乗員から遠ざかる側へ向けて斜めに吹出されるように縦フィンが傾動された場合に、空調用空気がシート側縦壁部に沿って真っ直ぐ吹出されるのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、空調用レジスタの一実施形態について、
図1〜
図7を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車両の幅方向(車幅方向)であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、車幅方向を規定するために、乗員を基準として、乗員に近づく側を「乗員側」といい、乗員から遠ざかる側を「反乗員側」という場合がある。
【0027】
図1に示すように、車両10の車幅方向の両側部は、ドア、ピラー等からなる側壁部11,12によって構成されている。車両10の室内(車室内)の前部には、一対の車両用シート13,14が、前席として車幅方向に並べられた状態で配置されている。側壁部11に近い側の車両用シート13は運転席として機能するものであり、ここに乗員P1が着座する。側壁部12に近い側の車両用シート14は助手席として機能するものであり、ここに乗員P2が着座する。
【0028】
車室内において、両車両用シート13,14の前方にはインストルメントパネル15が配置され、その車幅方向の両側部及び中央部には空調用レジスタ16,17,18,19が組込まれている。
【0029】
各空調用レジスタ16〜19は、車両用シート13,14に対し斜め前方に位置している。例えば、空調用レジスタ16は、インストルメントパネル15の左側部であって側壁部11に隣接する箇所に組込まれている。この空調用レジスタ16の位置は、車両用シート13に対し車外側の斜め前方となる。空調用レジスタ16〜19は基本的には同様の構成を有しているため、本実施形態では空調用レジスタ16についてのみ説明し、他の空調用レジスタ17〜19については説明を省略する。
【0030】
図2及び
図3に示すように、空調用レジスタ16は、リテーナ20、複数のフィン、シャットダンパ50及び操作ノブ55を備えている。次に、空調用レジスタ16を構成する各部について説明する。
【0031】
<リテーナ20>
リテーナ20は、樹脂によって形成された複数の部材からなり、全体として、両端が開放された筒状をなしている。空調用レジスタ16のリテーナ20は、インストルメントパネル15において、車両用シート13の斜め左前方に組込まれている。
【0032】
リテーナ20の内部空間は、図示しない送風ダクトを通じて空調装置から送られてくる空調用空気A1の流路である通風路21を構成している。ここで、通風路21での空調用空気A1の流れ方向について、空調装置に近い側(
図2及び
図3では右側)を上流とし、同空調装置から遠い側(
図2及び
図3では左側)を下流とする。以下の記載における「上流」及び「下流」は、この空調用空気A1の流れ方向における上流及び下流をいうものとする。
【0033】
通風路21の下流端部は、空調用空気A1の吹出口22を構成している。通風路21は、リテーナ20の4つの壁部によって取り囲まれている。これらの4つの壁部は、車幅方向に互いに対向する一対の縦壁部と、上下方向に互いに対向する一対の横壁部25とからなる。ここで、両縦壁部を区別するために、車両用シート13から遠い側である左側の縦壁部を単に縦壁部23といい、車両用シート13に近い側である右側の縦壁部をシート側縦壁部24というものとする。
【0034】
<フィン>
フィンは、空調用空気A1の流れ方向を調整するためのものであり、複数の横フィン26及び複数の縦フィンからなる。これらの横フィン26及び縦フィンは、いずれも樹脂によって形成されている。
【0035】
複数の横フィン26は、通風路21における吹出口22の上流近傍において、上下方向へ互いに離間した状態で配置されている。各横フィン26は、板状のフィン本体27と、同フィン本体27の車幅方向の両側で、同方向へ延びる一対のフィン軸28とを備えている。各横フィン26は、両フィン軸28において縦壁部23及びシート側縦壁部24に対し、上下方向へ傾動可能に支持されている。
【0036】
各フィン本体27において、一方(
図3の上方)のフィン軸28から上流へ偏倚した箇所には、連結軸29が同フィン軸28に平行に設けられている。横フィン26毎の連結軸29は、上下方向へ延びる長尺状の連結ロッド30によって連結されている。そして、これらのフィン本体27、フィン軸28、連結軸29及び連結ロッド30により、全ての横フィン26を同期した状態で傾動させる平行リンク機構LM1が構成されている。
【0037】
複数の縦フィンは、通風路21の上記横フィン26よりも上流において、車幅方向へ互いに離間した複数箇所に配置された3つの縦フィン31,32,33と、2つの異形縦フィン38,39とによって構成されている。各縦フィン31〜33は、フィン本体34と、同フィン本体34の上下両側で上下方向へ延びる一対のフィン軸35とを備えている。
【0038】
縦フィン33は、他の縦フィン31,32とは異なり、フィン本体34に切欠き部36及び伝達軸部37を有している。切欠き部36は、フィン本体34の下流部に形成されている。伝達軸部37は、フィン本体34の下流端部において、両フィン軸35に沿って上下方向へ延びている。各縦フィン31〜33は、両フィン軸35において、両横壁部25に対し車幅方向へ傾動可能に支持されている。
【0039】
両異形縦フィン38,39は、複数の縦フィンのうち、シート側縦壁部24に隣接する縦フィンと、その隣の縦フィンとを構成している。各異形縦フィン38,39は、いずれも異形縦フィン本体41と、同異形縦フィン本体41の上下両側で上下方向へ延びる一対のフィン軸42とを備えている。
【0040】
各異形縦フィン本体41の下流部は、平坦に形成された平板部43によって構成されている。各異形縦フィン本体41の上流部は、シート側縦壁部24に向けて膨らむように湾曲する湾曲部44によって構成されている。
【0041】
湾曲部44は、下記条件1を満たすように形成されている。
条件1:湾曲部44の上流端部44aが、
図4に示すように、異形縦フィン39の傾動に伴い、シート側縦壁部24から最も遠ざかったとき、隣の異形縦フィン38の上流に位置すること。
【0042】
各異形縦フィン38,39は、両フィン軸42において、両横壁部25に対し車幅方向へ傾動可能に支持されている。
図2及び
図3に示すように、各フィン本体34及び各異形縦フィン本体41において、一方(
図2の上方)のフィン軸35,42から上流へ偏倚した箇所には、連結軸46が同フィン軸35,42に平行に設けられている。縦フィン31〜33毎及び異形縦フィン38,39毎の連結軸46は、車幅方向に延びる長尺状の連結ロッド47によって連結されている。そして、これらのフィン本体34、異形縦フィン本体41、フィン軸35,42、連結軸46及び連結ロッド47により、縦フィン31〜33及び異形縦フィン38,39を同期した状態で傾動させる平行リンク機構LM2が構成されている。
【0043】
<シャットダンパ50>
シャットダンパ50は、ダンパ本体51と、シール部52と、同ダンパ本体51の車幅方向の両側で同方向へ延びる一対のダンパ軸53とを備えている。ダンパ本体51は、通風路21の縦フィン31〜33及び異形縦フィン38,39よりも上流に配置されている。ダンパ本体51及び両ダンパ軸53は、樹脂によって形成されている。シール部52は、ダンパ本体51及び両ダンパ軸53よりも軟質の材料、例えばスポンジ等の軟質の発泡体によって形成されており、ダンパ本体51の周囲に装着されている。シール部52は、縦壁部23及びシート側縦壁部24に対し常に接触している。
【0044】
シャットダンパ50は、両ダンパ軸53において、縦壁部23及びシート側縦壁部24に支持されており、開位置と閉位置との間で傾動可能である。シャットダンパ50は、開位置では、
図2において実線で示すように、両横壁部25に対し略平行となって、通風路21を大きく開放する。シャットダンパ50は、閉位置では、
図2において二点鎖線で示すように、両横壁部25に対し大きく傾斜し、各シール部52において両横壁部25に接触し、通風路21を閉鎖する。
【0045】
なお、図示はしないが、リテーナ20には、シャットダンパ50を傾動させる際に操作される操作ダイヤルが回動可能に支持されている。操作ダイヤルと、一方のダンパ軸53とは、リンク機構、ギヤ機構等によって動力伝達可能に連結されている。
【0046】
<操作ノブ55>
図2及び
図3に示すように、操作ノブ55は、吹出口22からの空調用空気A1の吹出し方向を調整する際に乗員P1によって操作される部材である。操作ノブ55は、上下方向における中央部の横フィン26のフィン本体27に対し、車幅方向へスライド可能に装着されている。
【0047】
操作ノブ55の上流部にはフォーク56が連結されている。フォーク56は、互いに車幅方向へ離間した状態で上流へ延びる一対の伝達片56aを有している。両伝達片56aは、縦フィン33における伝達軸部37を車幅方向の両側から挟み込んでいる。
【0048】
空調用レジスタ16の上記基本構成に加え、本実施形態では、シート側縦壁部24に隣接する異形縦フィン39が、下記条件2〜条件4を満たす樹脂製の板状のリブ45を備えている。
【0049】
条件2:
図3に示すように、縦フィン31〜33及び異形縦フィン38,39が、空調用空気A1を吹出口22から縦壁部23及びシート側縦壁部24に沿って真っ直ぐ吹出させる中立状態にされたとき、リブ45が湾曲部44の上流端部44aからシート側縦壁部24に沿って上流へ延びる状態となること。
【0050】
条件3:
図7に示すように、リブ45は、異形縦フィン39の傾動に伴い、湾曲部44の上流端部44aがシート側縦壁部24に最も近づけられたとき、同湾曲部44の上流で、上流端部44aとシート側縦壁部24との間の隙間G1を塞ぐ長さL1を有していること。
【0051】
条件4:リブ45は、
図7に示すように、異形縦フィン39の傾動に伴い、湾曲部44の上流端部44aがシート側縦壁部24に最も近づけられたとき、下流側ほどシート側縦壁部24から遠ざかるように、同シート側縦壁部24に対し傾斜した状態となること。
【0052】
なお、リブ45が隙間G1を塞ぐ状態とは、リブ45がシート側縦壁部24に接触しない(僅かに離間する)ように同シート側縦壁部24に最も接近した状態をいう。本実施形態では、上流端部45aがシート側縦壁部24から、1mm程度の距離D1だけ離れた状態を、上記隙間G1を塞ぐ状態としている。
【0053】
また、上記リブ45は、湾曲部44の上流端部44aから遠ざかるに従い徐々に薄くなるように形成されている。さらに、リブ45は、湾曲部44に繋がった状態で同湾曲部44に一体に形成されている。
【0054】
なお、複数の縦フィンのうち、側壁部11側に位置する縦フィン31(32)は、異形縦フィンによって構成されていない。これは、空調用レジスタ16に対し車外側となる箇所には車両用シートが配置されておらず、空調用空気A1を同車外側へ向けて斜めに吹出させる必要がないからである。
【0055】
上記のようにして本実施形態の空調用レジスタ16が構成されている。次に、この空調用レジスタ16の作用及び効果について説明する。
図2において二点鎖線で示すように、シャットダンパ50が閉位置にあるときには、通風路21が同シャットダンパ50によって閉塞される。シャットダンパ50よりも下流での空調用空気A1の流通が遮断され、吹出口22からの空調用空気A1の吹出しが停止される。このとき、シール部52が両横壁部25に接触することで、シャットダンパ50と各横壁部25との間がシールされる。
【0056】
これに対し、
図2において実線で示すように、シャットダンパ50が開位置にあるときには、各通風路21が全開となり、空調用空気A1がシャットダンパ50を境として、上下両側に分かれて流れる。シャットダンパ50を通過した空調用空気A1は、縦フィン31〜33、異形縦フィン38,39及び横フィン26に沿って流れた後、吹出口22から吹出される。
【0057】
シャットダンパ50の閉位置から開位置への切替え、及び開位置から閉位置への切替えは、操作ダイヤルの回動操作を通じて行なわれる。
図2及び
図3に示すように、シャットダンパ50が開位置にあるときに、操作ノブ55が、上下方向における中央の横フィン26のフィン本体27上を車幅方向へスライド操作されると、その操作ノブ55の動きがフォーク56及び伝達軸部37を通じて縦フィン33に伝達される。この縦フィン33が両フィン軸35を支点として操作ノブ55のスライド方向と同一傾向の方向(車幅方向)へ傾動させられる。縦フィン33の傾動は、平行リンク機構LM2を介して縦フィン31,32及び異形縦フィン38,39に伝達される。その結果、縦フィン33に連動して、縦フィン31,32及び異形縦フィン38,39がフィン軸35,42を支点として、縦フィン33と同一方向へ傾動させられる。
【0058】
これに対し、シャットダンパ50が開位置にあるときに、操作ノブ55に対し、その厚み方向に向かう力が加えられると、その力が、操作ノブ55の設けられた横フィン26に伝達される。この横フィン26がフィン軸28を支点として傾動させられる。横フィン26の上記傾動は、平行リンク機構LM1を介して残りの横フィン26に伝達される。その結果、操作された横フィン26に連動して、残りの横フィン26が両フィン軸28を支点として、操作された横フィン26と同一方向へ傾動させられる。このときには、フォーク56の動きは伝達軸部37に伝達されず、縦フィン33は傾動させられない。
【0059】
図4及び
図5に示すように、各フィン本体34と各異形縦フィン本体41の平板部43とが、それらの上流端部を通過する前の空調用空気A1の流れ方向に対し傾斜している場合には、空調用空気A1は各フィン本体34及び各異形縦フィン本体41に沿って流れることで流れ方向を変えられる。これに対し、
図3に示すように、各フィン本体34と各異形縦フィン本体41の平板部43とがそれらの上流端部を通過する前の空調用空気A1の流れ方向に対し傾斜していない場合には、空調用空気A1は各フィン本体34及び各異形縦フィン本体41を通過する際に流れ方向をほとんど変えられない。
【0060】
横フィン26のフィン本体27についても、上記フィン本体34及び異形縦フィン本体41と同様にして、傾きに応じて空調用空気A1の流れ方向が決定される。そして、各横フィン26を通過した空調用空気A1は吹出口22から吹出される。
【0061】
ところで、縦フィン31〜33及び異形縦フィン38,39が上記
図3の中立状態にされると、空調用空気A1はフィン本体34、異形縦フィン本体41、縦壁部23及びシート側縦壁部24に沿って流れ、吹出口22から真っ直ぐ吹出される。
【0062】
空調用空気A1のうち異形縦フィン39を通過するものは、その通過に際し、同異形縦フィン39の最上流部を構成するリブ45を境として、車幅方向の両側に分かれて流れる。この際、リブ45は、シート側縦壁部24に沿って上流側へ延びている。そのため、リブ45がシート側縦壁部24に対し傾斜するものに比べ、同リブ45が空調用空気A1の流れ方向に及ぼす影響は小さい。
【0063】
そして、空調用空気A1は、湾曲部44の上流端部44aに近づくに従い徐々に厚くなる同リブ45に沿って流れることにより、湾曲部44にスムーズに導かれる。湾曲部44に沿って流れた空調用空気A1は、平板部43に沿って真っ直ぐ流れる。
【0064】
乗員P1は、空調用空気A1を同乗員P1に当てたいときには、
図4に示すように、操作ノブ55を右方へスライド操作する。このスライド操作により、異形縦フィン39は、下流端部が上流端部よりも乗員P1側(シート側縦壁部24に近づく側)に位置するように傾動される。この傾動により、異形縦フィン39の湾曲部44のうち、上流端部44aを含む上流部が隣の異形縦フィン38の上流側に位置する。
【0065】
ここで、仮に、リブ45が設けられておらず、しかも、
図6において太い二点鎖線で示すように、異形縦フィン39の上流部が湾曲しておらず、上流端部44aが隣の異形縦フィン38の上流に位置しないと、異形縦フィン39は異形縦フィン38に対し車幅方向にオーバラップしない。この場合、シート側縦壁部24に沿って流れる空調用空気A1の一部が、異形縦フィン38,39間を二点鎖線の矢印Bで示すように真っ直ぐに流れようとする。この空調用空気A1が、実線の矢印Cで示すように、異形縦フィン38に沿って斜めに流れる空調用空気A1と干渉するおそれがある。
【0066】
しかし、本実施形態では、異形縦フィン39に湾曲部44を設けることで、上流端部44aを含む湾曲部44の上流部が異形縦フィン38の上流に位置し、同異形縦フィン38に対し車幅方向にオーバラップしている。そのため、上記矢印Bで示すように空調用空気A1がシート側縦壁部24に沿って真っ直ぐ流れることが、湾曲部44によって妨げられる。流れ方向の異なる空調用空気A1同士の上記干渉が抑制される。さらに、本実施形態では、リブ45が追加されることで、異形縦フィン39の異形縦フィン38に対する車幅方向のオーバラップ量が多くなるため、上記の効果がさらに大きくなる。
【0067】
隣の異形縦フィン38における異形縦フィン本体41は、上記異形縦フィン39と同様に湾曲部44を有する構成を採っている。そのため、異形縦フィン38も、異形縦フィン39と同様の作用及び効果を発揮する。
【0068】
その結果、空調用空気A1は、吹出口22から乗員P1に向けて斜めに吹出されて、その乗員P1に当たる。このように、本実施形態では、空調用空気A1を、狙った方向へ吹出させることができ、空調用空気A1の指向性を向上させることができる。
【0069】
これに対し乗員P1は、空調用空気A1を同乗員P1に当てたくないときには、
図5に示すように、操作ノブ55を左方へスライド操作する。このスライド操作により、異形縦フィン39は、下流端部が上流端部よりも反乗員側(シート側縦壁部24から遠ざかる側)に位置するように傾動される。この傾動に伴い、上流端部44aがシート側縦壁部24に近づけられる。上流端部44aがシート側縦壁部24に最も近づけられたとき、
図7に示すように、湾曲部44とシート側縦壁部24との間に隙間G1が生ずる。しかし、異形縦フィン39の上記傾動は、異形縦フィン本体41における湾曲部44よりも上流のリブ45を伴ってなされる。
【0070】
リブ45の上流端部45aによって構成される異形縦フィン39の上流端部と、シート側縦壁部24との間に形成される隙間G2は、リブ45が設けられない場合の異形縦フィン39の上流端部(湾曲部44の上流端部44a)とシート側縦壁部24との間に形成される隙間G1よりも小さくなる。
【0071】
そのため、空調用空気A1が、異形縦フィン39とシート側縦壁部24との隙間G2,G1を通り抜けて、シート側縦壁部24に沿って吹出口22から真っ直ぐ吹出される現象を抑制することができる。その結果、吹出口22から真っ直ぐ吹出された空調用空気A1が乗員P1に当たって、その乗員P1に不快感を与えるのを抑制することができる。
【0072】
特に、本実施形態では、リブ45が上記条件3を満たす長さL1を有することで、異形縦フィン39の傾動に伴い、湾曲部44の上流端部44aがシート側縦壁部24に最も近づけられたとき、リブ45が同湾曲部44の上流で上記隙間G1を塞ぐ。そのため、異形縦フィン39の上流端部(リブ45の上流端部45a)とシート側縦壁部24との間の隙間G2が最も小さくなる。隙間G2,G1を通り抜けて、シート側縦壁部24に沿って吹出口22から真っ直ぐ吹出される空調用空気A1の量を最少にすることができる。乗員P1に到達する空調用空気A1の量を最少にし、同空調用空気A1が乗員P1に当たるのを効果的に抑制することができる。
【0073】
また、このときには、リブ45は、下流側ほどシート側縦壁部24から遠ざかるように、同シート側縦壁部24に対し傾斜した状態となる。異形縦フィン39よりも上流をシート側縦壁部24に沿って流れる空調用空気A1は、リブ45に当たると、そのリブ45に沿って流れる。従って、この空調用空気A1をリブ45の下流の湾曲部44へスムーズに導くことができる。
【0074】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・異形縦フィン39の製造時には、リブ45を、湾曲部44に繋がった状態で同湾曲部44と同時に形成することができる。そのため、リブ45が湾曲部44とは別の部材によって形成される場合とは異なり、その形成の後にリブ45を湾曲部44に接続する工程が不要となる。その分、異形縦フィン39の製造工数を少なくして、生産性の向上を図ることができる。
【0075】
・異形縦フィン39の傾動に伴い、湾曲部44の上流端部44aがシート側縦壁部24に最も近づけられたとき、リブ45の上流端部45aをシート側縦壁部24から僅かに離間させている。そのため、上流端部45aのシート側縦壁部24との接触に伴う異音の発生を抑制することができる。
【0076】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<フィンについて>
・縦フィン31〜33及び異形縦フィン38,39が、横フィン26よりも下流側に配置されてもよい。
【0077】
・複数の縦フィンのうち、異形縦フィンによって構成されるものの数が変更されてもよい。例えば、異形縦フィン38の全体が、他の縦フィン31〜33と同様に平板状に形成されることで、上記数が異形縦フィン39のみの1つに変更されてもよい。
【0078】
・異形縦フィン38における異形縦フィン本体41の全体が湾曲部44によって構成されてもよい。
・リブ45が湾曲部44とは別の部材として形成され、その形成の後に湾曲部44に接続されてもよい。
【0079】
・リブ45は、湾曲部44と同一種類の樹脂材料によって形成されてもよいし、湾曲部44とは異なる種類の樹脂材料によって形成されてもよい。
・
図7におけるリブ45の長さL1は、上記実施形態よりも短く設定されてもよい。この場合であっても、異形縦フィン39の上流端部(リブ45の上流端部45a)とシート側縦壁部24との間の隙間G2は、リブ45が設けられない場合の異形縦フィン39の上流端部(湾曲部44の上流端部44a)とシート側縦壁部24との間の隙間G1よりも小さくなる。従って、空調用空気A1が、異形縦フィン39とシート側縦壁部24との隙間G2,G1を通り抜けて、シート側縦壁部24に沿って吹出口22から真っ直ぐ吹出されて乗員P1に当たる現象を抑制する効果が得られる。
【0080】
<適用箇所について>
・上記空調用レジスタ16の構造は、他の空調用レジスタ17〜19にも適用可能である。例えば、上記構造が空調用レジスタ19に適用された場合、各縦フィンは、上記実施形態における各縦フィンに対し線対称の関係となるように配置される。これは、一対の縦壁部のうち、側壁部12から遠い側に位置するものが、シート側縦壁部24を構成するからである。
【0081】
・上記空調用レジスタは、車室内においてインストルメントパネル15とは異なる箇所、例えばダッシュボードに組込まれる空調用レジスタにも適用可能である。