【実施例】
【0025】
以下の実施例によって様々な実施形態がさらに明確になるであろう。
【0026】
実施例1
塩化アルミニウムのDMF内1M溶液を含むゾルゲルをHPFD(登録商標)ガラス基板上に被着し、層をアニールするため、MAPP/空気炎で約2000℃に加熱した。このプロセスを5層の溶液が被着されてアニールされるまで反復した。この結果、ガラス基板上に厚さが150nmと200nmの間の非晶質酸化アルミニウム層が得られた。次いで、酸化アルミニウム層を融解するため、酸化アルミニウム層を、手動タイプのチェックボックス内の大気雰囲気条件の下でほぼ30秒、水素/酸素炎で約3200℃に局所加熱した。次いで、融解酸化アルミニウム層を冷却し、結晶化して、厚さが約150nmと200nmの間のα−酸化アルミニウム(コランダム)にした。コランダムの存在は、GIXRD(斜入射X線回折)を用いて確認した。
図3は、コランダムが存在することを示す、2θ(°)対強度(カウント)のプロットとしてのGIXRD分析のプロットである。
【0027】
実施例2
1M硝酸溶液と1:1の比で混合した塩化アルミニウムのDMF内1M溶液を含むゾルゲルをEAGLE XG(登録商標)ガラス基板上にスピンコーティングし、層をアニールするため、MAPP/空気炎で約2000℃に加熱した。このプロセスを15層の溶液が被着されてアニールされるまで反復した。この結果、ガラス基板上に厚さが1000nmと1200nmの間の非晶質酸化アルミニウム層が得られた。次いで、酸化アルミニウム層を融解するため、酸化アルミニウム層を、手動タイプのチェックボックス内の大気雰囲気条件の下でほぼ30秒、水素/酸素炎で約3200℃に局所加熱した。次いで、融解酸化アルミニウム層を冷却し、結晶化して、厚さが1000nmと1200nmの間のα−酸化アルミニウム(コランダム)にした。コランダムの存在は、GIXRD(斜入射X線回折)を用いて確認した。
図4は、コランダムが、またムライトも、存在することを示す、2θ(°)対強度(カウント)のプロットとしてのGIXRD分析のプロットである。しかし、水素/酸素炎の高熱によりガラス基板がある程度融解し、得られた結晶化層は、実施例1で形成された結晶化層よりも、結晶粒径が大きくなり、曇っていた。非晶質酸化アルミニウム層が厚くなるほど、非晶質酸化アルミニウム層を融解するに必要な熱が多くなり、したがってガラス基板が融解する可能性が一層高くであろうと考えられる。また大きくなった厚さ及び増大した熱によりコランダムの内のいくらかの、結晶化層に曇りを生じさせる、ムライトへの転換が可能になることも考えられる。
【0028】
上記のプロセスを反復して、ほぼ300nm(5層)、ほぼ500nm(10層)及びほぼ900nm(16層)の非晶質酸化アルミニウム層を形成した。500nm以下の非晶質酸化アルミニウム層では、基板構造または最終コランダムマクの純度に有意な影響を与えない、ガラス上の非晶質酸化アルミニウム層の容易な融解が可能になることが分かった。ガラス基板の軟化または融解と結晶化層の厚さの間の均衡の結果、擦傷を特に受け難い透明なコランダムの外層を有するガラス基板が得られる。
【0029】
実施例3
実施例1のプロセスにしたがって、14層コランダム膜及び6層コランダム膜を形成した。16層コランダム膜では、
図5に示されるように、マクロスケール(200μm及び100μm)及びマイクロスケール(50μm及び20μm)のいずれにおいてもかなりのマッドクラックの発生を示した。しかし、6層コランダム膜では、
図6に示されるように、マッドクラックの発生はほとんど全く示されなかった。すなわち、コランダム層の厚さはコランダム層にわたる表面硬度の変動度に影響し、層が厚くなるほど変動度が大きくなる。
【0030】
本発明の精神または範囲を逸脱することなく様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0032】
実施形態1
結晶化層を形成するための方法において、
基板の表面上に形成された、酸化物、窒化物、炭化物及び酸窒化物からなる群から選ばれる前駆体層を融解する工程であって、前記前駆体層を局所加熱する工程を含む工程、及び
前記融解前駆体層が結晶化して結晶化層を形成するように前記融解前駆体層を冷却する工程、
を含む方法。
【0033】
実施形態2
前記局所加熱する工程が約0.25cm/秒〜約2cm/秒の範囲にある速度で実施される、実施形態1に記載の方法。
【0034】
実施形態3
前記局所加熱する工程が前記前駆体層をレーザで加熱する工程を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0035】
実施形態4
前記局所加熱する工程が前記前駆体層をトーチで加熱する工程を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0036】
実施形態5
前記トーチが水素−酸素トーチである、実施形態4に記載の方法。
【0037】
実施形態6
前記前駆体層が、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化タンタル及び酸化クロムからなる群から選ばれる酸化物である、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
【0038】
実施形態7
前記前駆体層が非晶質酸化アルミニウムである、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
【0039】
実施形態8
前記非晶質酸化アルミニウムが結晶化してコランダムになる、実施形態7に記載の方法。
【0040】
実施形態9
前記非晶質酸化アルミニウムが結晶化してルビーになる、実施形態7に記載の方法。
【0041】
実施形態10
前記基板が、ガラス、セラミック、ガラス−セラミック及び金属からなる群から選ばれる、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
【0042】
実施形態11
前記基板上に前記前駆体層を被着する工程をさらに含む、実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
【0043】
実施形態12
前記被着する工程が、スロットダイコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、テープキャスティング、原子層堆積、プラズマ強化化学的気相成長、化学的気相成長、分子ビームエピタキシー、蒸着及びスパッタリングからなる群から選ばれる、実施形態11に記載の方法。
【0044】
実施形態13
前記結晶化層の硬度が15GPa以上である、実施形態1から12のいずれかに記載の方法。
【0045】
実施形態14
前記結晶化層の光透過率が400nm〜800nmの波長において85%以上である、実施形態1から13のいずれかに記載の方法。
【0046】
実施形態15
前記基板をロールで提供する工程及び前記融解する工程と前記冷却する工程を連続プロセスとして実施する工程をさらに含む、実施形態1から14のいずれかに記載の方法。
【0047】
実施形態16
結晶化層を形成するための方法において、
基板上に酸化物層を被着する工程、
前記酸化物層を融解するために前記酸化物層を局所加熱する工程、及び
前記融解酸化物層が結晶化して結晶化層を形成するように前記融解酸化物層を冷却する工程、
を含む方法。
【0048】
実施形態17
前記酸化物層が、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化タンタル及び酸化クロムからなる群から選ばれる、実施形態16に記載の方法。
【0049】
実施形態18
前記被着する工程が前記基板にゾルゲルを塗布する工程を含む、実施形態16または17に記載の方法。
【0050】
実施形態19
前記被着されたゾルゲルをアニールする工程をさらに含む、実施形態18に記載の方法。
【0051】
実施形態20
複数の酸化物層を形成するために前記被着する工程及び前記アニールする工程を反復する工程をさらに含む、実施形態19に記載の方法。
【0052】
実施形態21
前記酸化物層が非晶質酸化アルミニウムである、実施形態16から20のいずれかに記載の方法。
【0053】
実施形態22
前記非晶質酸化アルミニウムが結晶化してコランダムになる、実施形態21に記載の方法。
【0054】
実施形態23
前記局所加熱する工程が約0.25cm/秒〜約2cm/秒の範囲にある速度で実施される、実施形態16から22のいずれかに記載の方法。
【0055】
実施形態24
前記局所加熱する工程が前記層をレーザで加熱する工程を含む、実施形態16から23のいずれかに記載の方法。
【0056】
実施形態25
前記局所加熱する工程が前記層をトーチで加熱する工程を含む、実施形態16から23のいずれかに記載の方法。
【0057】
実施形態26
前記トーチが水素−酸素トーチである、実施形態25に記載の方法。
【0058】
実施形態27
前記基板が、ガラス、セラミック、ガラス−セラミック及び金属からなる群から選ばれる、実施形態16から26のいずれかに記載の方法。
【0059】
実施形態28
前記被着する工程が、スロットダイコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、テープキャスティング、原子層堆積、プラズマ強化化学的気相成長、化学的気相成長、分子ビームエピタキシー、蒸着及びスパッタリングからなる群から選ばれる、実施形態16から27のいずれかに記載の方法。
【0060】
実施形態29
前記結晶化層の硬度が15GPa以上である、実施形態16から28のいずれかに記載の方法。
【0061】
実施形態30
前記結晶化層の光透過率が400nm〜800nmの波長において85%以上である、実施形態16から29のいずれかに記載の方法。
【0062】
実施形態31
前記基板をロールで提供する工程及び前記融解する工程と前記冷却する工程を連続プロセスとして実施する工程をさらに含む、実施形態16から30のいずれかに記載の方法。
【0063】
実施形態32
前記結晶化層が約1000nm以下の厚さを有する、実施形態16から31のいずれかに記載の方法。
【0064】
実施形態33
物品において、
基板、及び
前記基板の表面上に形成された、コランダムを含み、15GPa以上の硬度を有する、結晶化層、
を有する物品。
【0065】
実施形態34
前記耐擦傷性結晶化層が約2000nm以下の厚さを有する、実施形態33に記載の物品。
【0066】
実施形態35
前記耐擦傷性結晶化層が約1000nm以下の厚さを有する、実施形態33に記載の物品。
【0067】
実施形態36
前記耐擦傷性結晶化層が約600nm以下の厚さを有する、実施形態33に記載の物品。
【0068】
実施形態37
前記耐擦傷性結晶化層の光透過率が400nm〜800nmの波長において85%以上である、実施形態33から36のいずれかに記載の物品。