特許第6817239号(P6817239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817239
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】成分含有量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20210107BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20210107BHJP
【FI】
   G01N21/27 A
   G01N21/3563
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-25833(P2018-25833)
(22)【出願日】2018年2月16日
(65)【公開番号】特開2019-144005(P2019-144005A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591006298
【氏名又は名称】JFEテクノリサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】山口 壮二朗
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝司
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2013/002291(JP,A1)
【文献】 特開2014−215177(JP,A)
【文献】 特開2016−080429(JP,A)
【文献】 特開平08−304295(JP,A)
【文献】 特開2017−146246(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02853883(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105136738(CN,A)
【文献】 国際公開第2017/145562(WO,A1)
【文献】 特開2000−135268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して近赤外線を照射する照射部と、
前記測定対象物で反射された前記近赤外線の反射光を取得し、前記反射光を分光してスペクトルデータを出力する撮影部と、
前記撮影部から出力されるスペクトルデータをもとに、前記複数の測定対象物それぞれに含まれる所定成分の含有量を検出する処理部と、を備え、
前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され、
前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、同一の測定対象物から前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、
前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出することを特徴とする成分含有量測定装置。
【請求項2】
前記測定対象物は前記一の方向に沿って一列に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の成分含有量測定装置。
【請求項3】
前記測定対象物は錠剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成分含有量測定装置。
【請求項4】
前記複数の測定対象物を前記一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送する搬送機を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の成分含有量測定装置。
【請求項5】
前記搬送機は、前記複数の測定対象物を保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記複数の測定対象物を一定の姿勢に保持することを特徴とする請求項4に記載の成分含有量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分含有量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錠剤の製造工程においては、品質管理が行われており、例えば、錠剤に近赤外帯域の照射光を照射し、錠剤により反射された照射光を用いて成分含有量を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4707452号公報
【特許文献2】特許第5798400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の方法の成分含有量の測定方法にあっては、錠剤上の測定点からの反射光を取得し、これに基づき成分含有量を測定している。
ここで、錠剤中の各成分は均一に混合されてはいるものの、成分分布にはある程度のばらつきがある。特に主薬成分が少ない場合には、成分分布のばらつきが顕著になることが多い。
このように一つの錠剤中において、成分分布にばらつきが生じている場合、錠剤上のある測定点からの反射光のみに基づき成分含有量を測定する方法では、主薬成分の多い測定点からの反射光に基づき成分含有量を測定した場合と、主薬成分の少ない測定点からの反射光に基づき成分含有量を測定した場合とでは、同一の錠剤であっても、得られる成分含有量にばらつきが生じる。つまり、測定点からの反射光に基づき取得した成分含有量を、錠剤全体の成分含有量相当値として適用するにはばらつきが大きく、錠剤全体の成分含有量の測定精度が低下することになる。
本発明は、上記未解決の問題に着目してなされたものであり、成分含有量の測定精度をより向上させることの可能な成分含有量測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、一の方向に沿って列状に並んだ状態で一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して近赤外線を照射する照射部と、測定対象物で反射された近赤外線の反射光を取得し、反射光を分光してスペクトルデータを出力する撮影部と、撮影部から出力されるスペクトルデータをもとに、複数の測定対象物それぞれに含まれる所定成分の含有量を検出する処理部と、を備え、撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、視野領域の長手方向と一の方向とが斜めに交差するように配置され、撮影部の撮影間隔及び視野領域の大きさは、測定対象物が視野領域内を通過する間に、同一の測定対象物から反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、処理部は、同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点でのスペクトルデータを統合して、同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出する成分含有量測定装置、が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、成分含有量の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の成分含有量測定装置の一例を示す概略構成図である。
図2】錠剤搬送部の一例を示す構成図である。
図3】錠剤上の撮影領域を説明するための説明図である。
図4】錠剤上の撮影領域を説明するための説明図である。
図5】成分含有量測定装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る成分含有量測定方法を説明するためのスペクトルデータの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかである。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
成分含有量測定装置100は、例えば、図1(a)に示すように、打錠機1で成型された錠剤Mを搬送する搬送機2の側に配置される。なお、ここでは、測定対象物として錠剤Mを適用し、錠剤の成分含有量を測定する場合について説明するが、錠剤Mに限るものではなく、測定対象物として任意の物体を適用することができる。
【0010】
搬送機2は、図2に示すように、シート状の錠剤搬送部2aを一定方向に連続的に搬送し、錠剤搬送部2aが搬送される過程で、打錠機1で成型された錠剤Mが、錠剤搬送部2aに形成されたポケット(保持部)2bに収容されて搬送される。ポケット2bは、錠剤搬送部2aの搬送方向に沿って一列に等間隔で形成され、ポケット2bは、ポケット2b内に収容された錠剤Mが、搬送に伴って振動したり、錠剤搬送部2a上において回転したり移動する、振動する等、錠剤Mの姿勢が変化しないように錠剤Mを保持する。図2において、(a)は錠剤搬送部2aの上面図、(b)は図2(a)のA−A′断面図である。なお、搬送中、錠剤Mが錠剤搬送部2a上で回転したり、移動したり、振動したりしないように錠剤Mを保持する方法としては、ポケット2bに錠剤Mを収容する方法に限るものではなく、どのような方法であってもよい。
【0011】
なお、形状の異なる錠剤Mの成分含有量を測定する場合には、例えば、搬送機2において、錠剤搬送部2aを交換可能に構成し、形状の異なる錠剤Mの成分含有量を測定する場合には、測定対象の錠剤Mの形状に合ったポケット2bを有する錠剤搬送部2aを用いて搬送すればよい。また、ポケット2bは必ずしも等間隔で配置されていなくともよい。
搬送機2は、錠剤搬送部2aを搬送方向に搬送し、これによって、錠剤Mが、搬送方向に一列に並んで等間隔で搬送される。
【0012】
成分含有量測定装置100は、図1に示すように、錠剤Mに対して近赤外線を照射する照明部(照射部)11と、分光画像を撮影する分光カメラ(撮影部)12と、分光カメラ12により撮影した分光画像をもとに成分含有量を検出する処理部13と、を備える。
照明部11は、錠剤搬送部2aに収容された複数の錠剤Mに対して同時に近赤外線を照射可能な位置に配置される。また、分光カメラ12は、矩形状の長尺の視野領域ARを有し、視野領域ARの長手方向と錠剤搬送部2aの搬送方向とが斜めに交差し、且つ錠剤搬送部2a上の複数の錠剤Mを視野領域AR内に含む位置に配置される。例えば、図1中に示すように、視野領域AR内に錠剤搬送部2a上の7個の錠剤Mを含むとき、視野領域ARの一端側の錠剤M1は搬送方向左端側のみが視野領域AR内に含まれ、視野領域ARの他端側の錠剤M2は搬送方向右端側のみが視野領域AR内に含まれるようになっている。
【0013】
分光カメラ12は、例えば搬送機2からトリガ信号が入力されるタイミングで撮影を開始し、以後、予め設定した周期で撮影を行う。分光カメラ12は、例えば近赤外イメージング分光器を含んで構成され、矩形状の長尺の視野領域ARに含まれる錠剤Mからの反射光を分光し、分光した分光画像をCCDやCMOS等の撮像素子により撮影し、スペクトルデータを出力する。
処理部13は、分光カメラ12から出力されるスペクトルデータを記憶部13aに記憶すると共に、異なる撮影タイミングで得られた、同一の錠剤Mに対応するスペクトルデータを統合し、統合したスペクトルデータをもとに、錠剤Mに含まれる一又は複数の所定成分の含有量を測定する。
搬送機2は、予め設定した一定速度で錠剤搬送部2aを搬送し、搬送速度等に基づいて、分光カメラ12の視野領域ARと錠剤Mとの相対位置を検出し、分光カメラ12での撮影を開始するタイミングを指示するトリガ信号を分光カメラ12に出力する。なお、搬送機2の搬送速度は一定でなくともよく、要は、スペクトルデータを取得することができればよい。
【0014】
図3は、錠剤M上の、分光カメラ12による撮影領域を説明するための説明図である。
図1に示すように、視野領域ARは、搬送方向に沿って並ぶ複数の錠剤Mの列に対して斜めに交差する。
そのため、図3の時点t1に示すように錠剤M1のみが視野領域ARに含まれる状態では、錠剤M1のうち視野領域ARに含まれる領域のみが撮影される。つまり、錠剤M1のうち視野領域ARと重なる搬送方向左端側の領域のみが撮影される。
続いて時点t2に示すように、錠剤M1及びM2が視野領域ARに含まれる状態では、視野領域ARが、その長手方向と、錠剤Mの搬送方向とが交差するように配置されているため、錠剤M1については、視野領域ARに含まれる領域つまり撮影領域が、時点t1における撮影領域とは異なり、時点t1における撮影領域よりも搬送方向右側に移動する。錠剤M2については、視野領域ARに含まれる、搬送方向左端側の領域のみが撮影される。
【0015】
続いて時点t3に示すように、錠剤M1からM3が視野領域ARに含まれる状態では、錠剤M1、M2については、視野領域ARに含まれる領域が搬送方向右側にずれるため、錠剤M1、M2上の時点t2での撮影領域とは異なる領域が撮影され、新たに視野領域ARに含まれた錠剤M3については、搬送方向左端の一部の領域のみが撮影される。
以後、同様に、時点t4〜t7に示すように、錠剤M1からM7のいずれかが視野領域ARに含まれる状態では、各時点で、視野領域ARに含まれる領域が搬送方向右側に順にずれて、錠剤M上の、一つ前の時点での撮影領域とは異なる領域が撮影され、新たに視野領域ARに含まれた錠剤については搬送方向左端側の領域のみが撮影される。
【0016】
そして、時点t8に示すように、錠剤M1が視野領域ARから外れた状態では、今度は錠剤M2からM8が視野領域ARに含まれるため、これら錠剤M2からM8それぞれの一部が撮影されることになる。
ここで、錠剤M1のみに着目すると、時点t1から時点t7では、それぞれ錠剤M1上の異なる領域を撮影しているため、時点t1から時点t7で、錠剤M1の略全体を網羅して撮影が行われたことになる。つまり、時点t1から時点t7の各時点で得られたスペクトルデータにおいて、錠剤M1に対応するスペクトルデータを抽出し、錠剤M1に対応するスペクトルデータを統合することによって、図4に示すように、平面視で錠剤M1をほぼ網羅するスペクトルデータを得ることができることになる。
【0017】
したがって、この統合したスペクトルデータを用いて所定成分の含有量を測定すれば、錠剤M1において成分分布にばらつきが生じていたとしても、実際の成分分布に則して、錠剤M1に含まれる成分含有量を検出することができる。つまり、成分分布にばらつきがあったとしても、錠剤M1の複数領域のスペクトルデータを統合して得たスペクトルデータを用いて含有量を検出することにより、成分分布のばらつきを平均化することができ、錠剤M1全体の成分含有量の測定精度を向上することができる。
【0018】
ここで、搬送機2による搬送速度と、分光カメラ12による撮影間隔とは、例えば、錠剤M1を複数時点で撮影した撮影領域と、錠剤M1の表面とを対応させたときに、複数時点における撮影領域が錠剤M1の表面全体を覆い、且つ、各時点の撮影領域が重畳しないように設定すればよい。このように錠剤M1全体を覆い且つ撮影領域が重畳しないように設定することによって、錠剤M1の全体における所定成分の含有量を高精度に検出することができる。また、撮影間隔と視野領域ARとを、例えば、錠剤M1が視野領域AR内を通過する間に、錠剤M1の一部を複数回撮影することのできる撮影間隔と視野領域ARの大きさとに設定してもよい。
【0019】
なお、撮影領域が重畳しないようにする場合に限るものではなく、例えば、撮影領域が重畳するように撮影してもよい。このように撮影領域が重畳する場合には、同一錠剤Mの各撮影タイミングにおけるスペクトルデータを統合する際に重畳する領域を考慮して統合すればよい。また、逆に撮影領域が重畳しないように撮影するようにしてもよい。このように錠剤M全体が撮影されない場合には、同一錠剤Mの各撮影タイミングにおけるスペクトルデータを統合する際に撮影されていない領域を考慮して統合すればよく、例えば補完する等して統合したスペクトルデータを取得すればよい。
【0020】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
図5は、成分含有量測定装置100での処理手順の一例を示すフローチャートである。
搬送機2では、打錠機1で成型された錠剤Mを錠剤搬送部2aのポケット2bに収容し、予め設定された一定速度で錠剤Mを搬送する。また、搬送機2は、例えば、錠剤Mの搬送速度等に基づいて予め設定した撮影タイミングでトリガ信号を分光カメラ12に出力する。
成分含有量測定装置100では、搬送機2からトリガ信号を入力すると、撮影処理を開始し、以後、予め設定した周期で撮影を行う。これにより視野領域AR内に含まれる複数の錠剤Mそれぞれの一部のみが撮影され、分光カメラ12からスペクトルデータが出力される(ステップS1)。
【0021】
処理部13は、分光カメラ12からスペクトルデータを入力すると、データ抽出処理を開始し、入力されたスペクトルデータから、錠剤M毎にそれぞれに対応するスペクトルデータを抽出し、錠剤Mと対応するスペクトルデータとを対応付けて記憶部13aに記憶する(ステップS2)。以後、処理部13では、分光カメラ12からスペクトルデータを入力する毎に錠剤Mと対応するスペクトルデータとを対応付けて記憶部13aに記憶する。
【0022】
ここで、視野領域ARは、図3に示すように複数の錠剤Mを含み、錠剤Mどうしは例えば一定間隔等、所定間隔で一列に並んでいるため、得られるスペクトルデータの波形から、錠剤Mが存在する部分と、錠剤Mが存在しない部分とを切り分けることができる。また、錠剤Mの搬送速度及び撮影タイミングから、視野領域AR内における錠剤Mが存在する部分が、どの錠剤に対応するのかを対応付けることができる。したがって、分光カメラ12から得られたスペクトルデータから、錠剤M毎に対応するスペクトルデータを抽出することができる。
【0023】
続いて、処理部13では、視野領域AR外となり、スペクトルデータの取得が終了した錠剤Mが存在するか否かを判断し(ステップS3)、視野領域AR外となった錠剤Mが存在するときにはステップS4に移行して、含有量検出処理を行う。すなわち、記憶部13aに記憶されている同一の錠剤Mに対応する複数時点におけるスペクトルデータを統合し、統合したスペクトルデータに基づき、この錠剤M中の所定成分の含有量を検出する。
そして、検出した含有量を外部に通知する通知処理を行い(ステップS5)、例えば、含有量を外部に通知する、或いは、含有量が許容範囲を超える場合等含有量に異常がある場合には、含有量が異常であることを外部に通知する等の処理を行う。そして、ステップS3に戻り、同様にして、新たに視野領域AR外となり、スペクトルデータの取得が終了した錠剤Mについて所定成分の含有量の測定を行う。
【0024】
ステップS4での含有量の検出は、統合したスペクトルデータに対し、例えば、平滑化処理、平均化処理、標準化処理、吸光度変換処理、一次微分処理、二次微分処理、ベースライン補正処理、波長データの選択処理等といった、波形処理を行い、波形処理により得た波形処理スペクトルデータに基づき、PCA(Principle Component Analysis)やPLS(Partial Least Squares regression)といった多変量解析を用いて、錠剤Mの主薬成分の含有量を決定する。
【0025】
以上の処理を行うことによって、例えば図3の場合には、時点t8で錠剤M1が視野領域AR外となったときに、錠剤M1に対する所定成分の含有量の検出が行われ、次の時点で錠剤M2が視野領域AR外となったときに、錠剤M2に対する所定成分の含有量の検出が行われる。
ここで、錠剤Mにおいて成分分布にばらつきが生じている場合、錠剤M上の一点のみからスペクトルデータを取得して含有量を求める方法にあっては、ある成分の含有量が比較的大きい地点のスペクトルデータを取得して解析を行って含有量を求めた場合と、含有量が比較的少ない地点のスペクトルデータを取得して解析を行って含有量を求めた場合とでは、得られる含有量が異なる。つまり、得られるスペクトルデータが図6(a)に示すように異なるため、それぞれのスペクトルデータに基づき得られる含有量は異なる。すなわち、錠剤M上のスペクトルデータを取得する地点によって含有量が異なることになり錠剤M全体の含有量の測定精度がその分低下することになる。
【0026】
これに対し、本実施形態に係る成分含有量測定装置100では、図3に示すように、一つの錠剤Mに対して、錠剤M全体を網羅するように複数回に分けて複数領域におけるスペクトルデータを取得しているため、図6(b)に示すように、複数領域におけるスペクトルデータを統合したスペクトルデータから得られる含有量は、錠剤Mにおける成分分布が平均化された含有量となる。つまり、錠剤M全体の含有量の測定精度を向上させることができる。
また、仮に、矩形状の視野領域ARの長手方向と錠剤Mの搬送方向とが直交するように分光カメラ12を配置した場合、錠剤Mの全面を撮影するには、錠剤Mが視野領域ARの短手方向の幅だけ進む周期で分光カメラ12での撮影を行う必要があり、撮影可能な周期には制約があることから、搬送速度が制約を受けることになる。
【0027】
これに対し、本実施形態における成分含有量測定装置100では、図3に示すように、視野領域ARの長手方向と錠剤Mの搬送方向とが同一方向となり、且つ視野領域ARと錠剤Mの搬送方向とが斜めに交差するように分光カメラ12を配置している。そのため、錠剤Mの全面を撮影するためには、錠剤M上において視野領域ARと重なる領域が視野領域ARの短手方向の幅だけずれた状態となる位置、つまり、図3の場合には、時点t1から時点t2の位置まで錠剤M1が移動する周期で分光カメラ12での撮影を行えばよい。したがって、視野領域ARの長手方向と錠剤Mの搬送方向とが直交する方向に分光カメラ12が配置され、視野領域ARの短手方向の幅だけ移動する周期で撮影する場合に比較して、撮影周期はより長い。そのため、搬送速度の自由度をより大きくすることができ、言い換えれば、高い処理性能を有する処理装置を用いなくとも、所定成分の含有量を容易に検出することができる。
【0028】
また、上記実施形態においては、打錠機で成型した後の搬送路において、成分含有量測定装置100による成分含有量の測定を行う場合について説明したが、これに限るものではなく、錠剤Mが一列に搬送される搬送路であれば適用することができる。また、成分含有量の測定を行うために、錠剤Mを一列に搬送する搬送路を別途設け、この搬送路において成分含有量の測定を行うようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施形態においては、錠剤Mが搬送方向に沿って一列に搬送される搬送路において成分含有量の測定を行う場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、錠剤Mが搬送方向に沿って二列等複数列に並んだ状態で搬送される搬送路において、成分含有量の測定を行うことも可能である。錠剤Mが複数列に並んだ状態で搬送される場合には、全ての列それぞれに含まれる錠剤Mが同時に視野領域AR内に含まれるように、分光カメラ12を、その視野領域ARの長手方向と錠剤Mの搬送方向とが斜めに交差するように配置すればよい。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0030】
1 打錠機
2 搬送機
11 照明部
12 分光カメラ
13 処理部
13a 記憶部
100 成分含有量測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6