特許第6817244号(P6817244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817244
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/04 20190101AFI20210107BHJP
【FI】
   F15B21/04
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-48643(P2018-48643)
(22)【出願日】2018年3月15日
(65)【公開番号】特開2019-158077(P2019-158077A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】稲元 昭
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−118150(JP,A)
【文献】 実開昭51−034995(JP,U)
【文献】 特開2000−227101(JP,A)
【文献】 特開2013−124693(JP,A)
【文献】 特開2003−013913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00−21/12
F15B 1/00− 7/00
F15B 11/00−11/22;21/14
E02F 3/42− 3/43; 3/84− 3/85; 9/20− 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体本体、前記機体本体に取り付けられ油圧アクチュエータを搭載したアタッチメントを装着した作業機、前記機体本体に設けた原動機、前記機体本体に設けた作動油タンク、前記原動機で駆動されて前記作動油タンクから作動油を吸い込んで圧油として吐出する少なくとも1つの油圧ポンプ、及び前記油圧ポンプから吐出された圧油を制御して前記油圧アクチュエータに供給するコントロール弁を有する建設機械において、
前記コントロール弁を経由して前記作動油タンクに接続するタンク管路と、
前記コントロール弁及び前記作動油タンクの間に位置するように前記タンク管路に設けたオイルクーラと、
前記コントロール弁をバイパスする第1バイパス管路と、
前記油圧アクチュエータの戻り油管路の接続先を前記タンク管路及び前記第1バイパス管路のいずれかに切り換える電磁駆動式の第1切換弁と、
前記第1切換弁を切り換え操作する第1操作装置と、
前記第1バイパス管路に設けたフィルタと、
前記フィルタの下流側から前記オイルクーラをバイパスして前記作動油タンクに接続する第2バイパス管路と、
前記オイルクーラの上流側で前記フィルタの下流側から前記タンク管路に合流する合流管路と、
前記フィルタの下流側に位置するように前記第1バイパス管路に設けられ、前記第1バイパス管路の接続先を前記合流管路及び前記第2バイパス管路のいずれかに切り換える電磁駆動式の第2切換弁と
前記第2切換弁を切り換え操作する第2操作装置と
を備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記油圧ポンプは第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプであり、
前記第1油圧ポンプの吐出油への前記第2油圧ポンプの吐出油の合流及び遮断を切り換える合流遮断弁とを備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、前記フィルタ及び前記第2切換弁の間に位置するように前記第1バイパス管路にアキュムレータが設けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の油圧アクチュエータ付きのアタッチメントが作業機に装着される建設機械に関し、特に機種毎に異なる仕様に柔軟に対応して種々のアタッチメントを装着して作業することができる建設機械に係る。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダ等の建設機械には作業機に様々なアタッチメントが装着される。作業機に装着されるアタッチメントには、バケットのようにそれ自身は作動しない非作動型のものもあるが、破砕機やブレーカ等のように油圧アクチュエータを搭載して自身が作動する作動型のもの(油圧アタッチメント)も多い。作動型のアタッチメントを駆動する建設機械のアタッチメント駆動回路として、アタッチメントの油圧アクチュエータを駆動した作動油をオイルクーラに通し、昇温した作動油を冷却してからオイルタンクに戻すように構成したものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−118150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械に装着される作動型のアタッチメントにも様々なものがあり、例えばブレーカのようにチゼル部から油圧系統に異物が混入し得るものもあり、また駆動するために大流量の作動油を要するものもあれば、小流量の作動油で駆動できるものもある。油圧系統に混入した異物は油圧機器に有害であるため除去する必要がある。また、小流量の作動油で駆動できるアタッチメントの場合、その油圧アクチュエータを駆動した作動油の温度上昇の程度が軽微で、オイルタンクに戻す前に冷却する必要性は必ずしもない。この場合、油圧アクチュエータからの戻り油を一律にオイルクーラに導く構成では、油圧アクチュエータの背圧によってはオイルクーラの強度との兼ね合いでオイルクーラの傷みを必要以上に早め兼ねない。
【0005】
本発明の目的は、機種毎に異なる仕様に柔軟に対応して種々のアタッチメントを装着して作業することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、機体本体、前記機体本体に取り付けられ油圧アクチュエータを搭載したアタッチメントを装着した作業機、前記機体本体に設けた原動機、前記機体本体に設けた作動油タンク、前記原動機で駆動されて前記作動油タンクから作動油を吸い込んで圧油として吐出する少なくとも1つの油圧ポンプ、及び前記油圧ポンプから吐出された圧油を制御して前記油圧アクチュエータに供給するコントロール弁を有する建設機械において、前記コントロール弁を経由して前記作動油タンクに接続するタンク管路と、前記コントロール弁及び前記作動油タンクの間に位置するように前記タンク管路に設けたオイルクーラと、前記コントロール弁をバイパスする第1バイパス管路と、前記油圧アクチュエータの戻り油管路の接続先を前記タンク管路及び前記第1バイパス管路のいずれかに切り換える電磁駆動式の第1切換弁と、前記第1切換弁を切り換え操作する第1操作装置と、前記第1バイパス管路に設けたフィルタと、前記フィルタの下流側から前記オイルクーラをバイパスして前記作動油タンクに接続する第2バイパス管路と、前記オイルクーラの上流側で前記フィルタの下流側から前記タンク管路に合流する合流管路と、前記フィルタの下流側に位置するように前記第1バイパス管路に設けられ、前記第1バイパス管路の接続先を前記合流管路及び前記第2バイパス管路のいずれかに切り換える電磁駆動式の第2切換弁と、前記第2切換弁を切り換え操作する第2操作装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装着するアタッチメントを駆動するための作動油の流量の大小、つまり油圧アクチュエータから排出された戻り油の昇温の程度に応じて、オイルクーラをバイパスする回路と経由する回路を選択することができる。例えば要求流量の小さい作動型アタッチメントを用いる場合、作動油温の上昇の程度が小さいためオイルクーラを迂回して油圧アクチュエータから作動油タンクに戻り油を導く回路が選択できる。作動油タンクを迂回することで油圧アクチュエータの背圧を低減できるので、許容背圧が小さなアタッチメントでも使用することができる。オイルクーラをバイパスして油圧アクチュエータからの戻り油を作動油タンクに戻すことで、オイルクーラの傷みの進行を抑制できる。反対に、要求流量が大きな作動型アタッチメントを用いる場合は作動油温の上昇の程度が大きいが、この場合にはオイルクーラを経由して油圧アクチュエータから作動油タンクに戻り油を導く回路が選択できる。これにより要求流量の大きなアタッチメントを使用する場合でも作動油温の上昇を抑制できる。また、第1切換弁によりコントロール弁をバイパスさせて第1バイパス管路に油圧アクチュエータの戻り油を導くことで、戻り油をフィルタに通すことができる。これによりアタッチメントに例えばブレーカを用いた場合、チゼル部から油圧系統に混入した異物をフィルタで除去することができ、油圧系統に混入した異物から油圧機器を保護することができる。よって、機種毎に異なる仕様に柔軟に対応して種々のアタッチメントを装着して作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の側面図
図2図1の建設機械に備えられた作業機の側面図
図3図1の建設機械に備えられたアタッチメント駆動回路の油圧回路図
図4図3の油圧回路でオイルクーラを迂回させた場合の背圧の変化を表す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
−建設機械−
図1は本発明の一実施形態に係る建設機械の側面図である。以降、運転席に座った操作者の前方(図1における左側)を旋回体12の前方とする。同図では運転室を一部透視して作業機を図示してある。図1にはいわゆるショートリーチ型油圧ショベル(以下、ショートリーチ)を建設機械として例示している。図示した建設機械は、機体本体10及び作業機20を備えている。機体本体10は走行体11及び旋回体12からなる。
【0011】
走行体11は建設機械の基部構造体をなすものであり、ホイール式の走行体でも良いが本実施形態では左右の履帯13を備えたクローラ式の走行体が用いてある。基部構造体としては、走行体に限らず、船体や地面に固定された架台が用いられる場合もある。左右の履帯13はそれぞれ左右の走行駆動装置14により駆動される。走行駆動装置14は油圧モータと減速機からなる。旋回体12は、走行体11上に旋回輪15を介して設けられており、旋回輪15を旋回モータ(不図示)で駆動することによって、鉛直に延びる軸を中心にして走行体11に対して旋回する。旋回モータは油圧モータであるが、電動モータが用いられる場合の他、油圧モータと電動モータが併用される場合もある。
【0012】
旋回体12は、旋回フレーム16、運転室17、機械室18、カウンタウェイト19等を含んで構成されている。旋回フレーム16は旋回体12のベースフレームであり、旋回体12に搭載される各機器を支持している。運転室17は旋回フレーム16の前部における左右方向の一方側に位置し、本例では左側に位置しているが右側に配置される場合もある。運転室17内には、操作者が座る運転席(不図示)、操作者が操作する操作装置(例えば図3の操作装置6)等が配置されている。カウンタウェイト19は作業機20との重量バランスをとる錘であり、旋回フレーム16の後端に支持されている。旋回体12の前後方向と走行体11の走行方向が一致した状態(図1に示した状態)で、カウンタウェイト19は走行体11の後端よりも前方に位置している。これにより旋回体12の最大旋回半径が、例えば走行体11の車幅と同程度かそれよりも若干(例えば20%)大きい程度に抑えられている。そのため制限された狭い作業空間で旋回体12を旋回させたときに、旋回体12の後端が車幅と同程度の旋回半径で旋回して小回りが利き、周囲の障害物との接触が抑えられるようになっている。こうした油圧ショベルを後方小旋回機と呼んでいる。このように旋回体12の後部の寸法が制限されていることから旋回体12上に配置される機器レイアウトは密であり、例えば原動機1は上から見て旋回輪15に一部重なるように配置されている。
【0013】
機械室18は旋回フレーム16における運転室17の後側(運転室17とカウンタウェイト19の間の位置)に配置されている。機械室18には、原動機1、油圧ポンプ2、コントロール弁(図3のコントロール弁3a,3b等)、熱交換器類等が収容されている。また、図示していないが旋回フレーム16の前部における作業機20を挟んで運転室17と反対側にタンク類が配置してある。タンク類には、燃料タンク、作動油タンク4(図3)等が含まれる。原動機1にはエンジン(内燃機関)が用いられるが、電動モータが用いられる場合もある。油圧ポンプ2は少なくとも1つ(図3では2つの油圧ポンプ2a,2bを図示)設けられ、原動機1により駆動され、作動油タンク4から作動油を吸い込んで圧油として吐出する。コントロール弁は、油圧ポンプ2から吐出された圧油の方向や流量を制御して、対応する油圧アクチュエータに供給する。熱交換器類には、エンジン冷却水を冷却するラジエータや作動油を冷却するオイルクーラ5(図3)等が含まれる。
【0014】
−作業機−
図2は作業機の側面図である。作業機20は、ブーム21、アーム22、アタッチメント23、ブームシリンダ24、アームシリンダ25、及びアタッチメントシリンダ26を含む多関節型のフロント作業装置であり、機体本体10に取り付けられている。
【0015】
ブーム21は作業機20の基礎構造体であり、後部21a(基端側の部分)に対して屈曲部21bを介して前部21c(先端側の部分)が前傾するように折れ曲がっており、側面視で上に凸のブーメラン型に構成されている。このブーム21は、旋回フレーム16の前部における運転室17の側方(本例では右側)の位置に設けたブラケット16aに、左右に延びるピン21pを介して上下方向に回動自在に連結されている。本実施形態では運転室17の右側にブーム21が配置されているが、運転室17が旋回体12の前部における右側に配置され、運転室17の左側にブーム21が配置される場合もある。アーム22はブーム21と異なり全体として直線的な形状をしており、左右に延びるピン22pを介してブーム21の先端に前後に回動可能に連結されている。アタッチメント23はアーム22の先端に左右に延びるピン23pを介して回動可能に連結されている。アタッチメント23は油圧アクチュエータ27を搭載した作動型の作業具(油圧アタッチメント)であり、図1及び図2では解体対象物をカニ鋏のように挟んで砕く破砕機をアタッチメント23としてアーム22に装着した場合を例示している。アタッチメント23はブレーカ等の油圧アクチュエータ付きの他の作動型アタッチメントの他、バケット等の油圧アクチュエータを搭載していない非作動型アタッチメントとも交換可能である。
【0016】
なお、以下の説明において、ブーム21の外壁面のうち作業機20を前に延ばした姿勢で上を向く面(ブーム上げ方向を向いた面)をブーム21の背側面、下を向く面(ブーム下げ方向を向いた面)をブーム21の腹側面と適宜記載する。また、アーム22の外壁面のうち作業機20を前に延ばした姿勢で上を向く面(アームダンプ方向を向いた面)をアーム22の背側面、下を向く面(アームクラウド方向を向いた面)をアーム22の腹側面と適宜記載する。ブーム21の前部21cの左右の側面には、左右から見て前部21cの背側面と腹側面との間に全部が位置するように前照灯28(図2)が設けられている。
【0017】
ブームシリンダ24はブーム21を駆動して上下に回動させる油圧シリンダであり、ブーム21の左右に1本ずつ設けられている。これら左右のブームシリンダ24の基端部(本例ではボトム側の端部)は、左右に延びるピン24pを介して旋回フレーム16のブラケット16aに回動自在に連結されている。ブームシリンダ24の先端部(本例ではロッド側の端部)は、左右に延びるピン24qを介してブーム21の前部21cの中間部(前照灯28よりも基端側)の側面に回動自在に連結されている。
【0018】
アームシリンダ25はアーム22を駆動して前後に回動させる油圧シリンダであり、ブーム21及びアーム22の腹側面側(下側)に配置されている。このアームシリンダ25の基端部(本例ではボトム側の端部)は、左右に延びるピン25pを介してブーム21の後部21aの腹側面に設けたブラケット21xに回動自在に連結されている。アームシリンダ25の先端部(本例ではロッド側の端部)は、左右に延びるピン25qを介してアーム22の腹側面に設けたブラケット22xに回動自在に連結されている。アームシリンダ25はシリンダの受圧面積の比較で出力的に有利な伸長動作時に負荷の大きなアームクラウド動作が行われるようにすることが一般的であるところ、あえて収縮動作によりアームクラウド動作が行われる構成としてある。制約された作業空間で作業範囲を拡大するためである。アームシリンダ25がトンネルの天井等の上方の障害物に干渉することがなく、トンネルの天井付近を掘削する際等にアームシリンダ25が邪魔にならない。またブーム21及びアーム22の腹側面側に配置することで、ブーム21やアーム22によって作業時の落下物からアームシリンダ25が保護される。
【0019】
アタッチメントシリンダ26はアタッチメント23を駆動して回動させる油圧シリンダであり、本実施形態ではアーム22の背側面側に配置されている。アタッチメントシリンダ26の基端部(本例ではボトム側の端部)は、アーム22の基部側の背側面に左右に延びるピン26pを介して回動自在に連結されている。アタッチメントシリンダ26の基端側を支持するこのピン26pは、アーム22とブーム21とを連結するピン22pよりもアーム22の基端側に位置する。アタッチメントシリンダ26の先端部(本例ではロッド側の端部)は、リンク29を介してアーム22の先端及びアタッチメント23に連結されている。アタッチメントシリンダ26の先端とリンク29は左右に延びるピン26qで連結されている。図示していないが、アーム22の背側面側には、アタッチメントシリンダ26の左右両側及び上側(アーム22と反対側)を覆い保護するカバーが設けられる場合もある。
【0020】
本実施形態における作業機20はショートリーチ仕様であり、同程度の車格の一般的な油圧ショベルの作業機に比べて特にブーム21及びアーム22を短尺にすることでリーチが短くしてある。例えば、ブーム21の全長(ピン21p,22p間距離)は、機体本体10の全長(走行体11の前後長)より短い。同じくアーム22の全長(ピン22p,23p間距離)も機体本体10の全長より短い。また、ブームシリンダ24の最伸長状態でもブーム21の後部21aが鉛直を越えて後傾することがないように、ブーム21の動作範囲が限定される場合がある。またブーム21の前部21cの背側面を水平にした姿勢で、この前部21cの背側面が運転室17の上面と同程度の高さとなるように旋回体12上におけるブーム21と運転室17との位置関係が設定されている。ブーム21やアーム22が上方の障害物に干渉し難くするためである。
【0021】
−油圧回路−
図3はアタッチメント駆動回路の油圧回路図である。本実施形態において、アタッチメント駆動回路とは、アタッチメント23に搭載された油圧アクチュエータ27を駆動する油圧回路のことをいう。このアタッチメント駆動回路は、油圧ポンプ2a,2b、パイロットポンプ2c、コントロール弁3a、作動油タンク4、オイルクーラ5、操作装置6、第1切換弁V1、フィルタ7、第2切換弁V2、アキュムレータ8a,8b等で構成されている。なお、図3に示した要素は、アタッチメント23の油圧アクチュエータ27とこれに接続する油圧配管(供給管路L27a及び戻り油管路L27b)の一部を除いて旋回体12に搭載されている。
【0022】
・ポンプ
油圧ポンプ2a,2b及びパイロットポンプ2cは、原動機1の出力軸に駆動軸が連結されており、原動機1により回転駆動される。油圧ポンプ2a,2bは作動油タンク4から吸い込んだ作動油を圧油として吐出管路L2a,L2bに吐出する油圧ポンプである。これら油圧ポンプ2a,2bは本実施形態では可変容量型のポンプである。油圧ポンプ2a,2bが吐出する圧油により対応する油圧アクチュエータ(図3の回路図では油圧アクチュエータ27のみ図示)が駆動される。パイロットポンプ2cは作動油タンク4から吸い込んだ作動油を吐出管路L2cに吐出する固定容量型の油圧ポンプである。パイロットポンプ2cが吐出する作動油により対応するコントロール弁(同図の回路図ではコントロール弁3a,3b)が駆動される。
【0023】
・コントロール弁
コントロール弁3aは、圧油を遮断する中立位置及び互いに異なる方向に圧油を流通させる2つの切換位置を有する3位置切換弁であるが、圧油の遮断及び流通が切り換えられれば足りる(流通方向の切り換えが不要な)場合には2位置切換弁でも良い。コントロール弁3aのポンプポートPには、油圧ポンプ2aの吐出管路L2aが接続している。コントロール弁3aの二次側のポートAは、供給管路L27aを介してアタッチメント23の油圧アクチュエータ27の一方側のポートCに接続している。コントロール弁3aの二次側のポートBは、戻り油管路L27b及びタンク管路LT1介して油圧アクチュエータ27の他方側のポートDに接続している。但し、戻り油管路L27bは油圧アクチュエータ27のポートDに、タンク管路LT1はコントロール弁3aのポートBに接続している。コントロール弁3aのタンクポートTは、タンク管路LT2を介して作動油タンク4に接続している。つまり、タンク管路LT1,LT2はコントロール弁3aを経由して作動油タンク4に接続している。なお、図1及び図2ではアタッチメント23として破砕機を図示したが、図3ではチゼルで対象物を打撃して破砕するブレーカを例示している。
【0024】
ここで、図3に示したコントロール弁3bは、作業機20に搭載された油圧アクチュエータ27以外の油圧アクチュエータ(例えばアタッチメントシリンダ26)に供給する圧油の方向や流量を制御する3位置切換弁である。コントロール弁3bには油圧ポンプ2bの吐出管路L2bが接続されるが、この吐出管路L2bから分岐した分岐管路L2b2が油圧ポンプ2aの吐出管路L2aに合流している。分岐管路L2b2には合流遮断弁V3が設けられている。合流遮断弁V3はノーマルクローズタイプであり、分岐管路L2b2の開通及び遮断を切り換えて油圧ポンプ2aの吐出油への油圧ポンプ2bの吐出油の合流及び遮断を切り換える。合流遮断弁V3は、通常は分岐管路L2b2の流路を遮断しており、油圧信号が入力されると分岐管路L2b2の流路を開通し吐出管路L2aを流れる油圧ポンプ2aの吐出油に油圧ポンプ2bの吐出油を合流させる。このように油圧ポンプ2aの吐出油に油圧ポンプ2bの吐出油を合流させることで、油圧アクチュエータ27として要求流量が大きなものがアタッチメント駆動回路に接続された場合に対応できるようになっている。合流遮断弁V3への油圧信号の入り切りはノーマルクローズタイプの電磁弁SVで切り換えられる。電磁弁SVはパイロット弁6a(後述)からコントロール弁3aのパイロット室に繋がるパイロットラインL6aから分岐して合流遮断弁V3のパイロット室に接続するパイロットラインL6a2に設けられている。操作装置SW3を入り操作しておくことで電気信号が入力されて電磁弁SVが開通位置に切り換わる。これにより、操作部材6c(後述)が操作されてパイロット弁6aから油圧信号が出力されると合流遮断弁V3のパイロット室が加圧され、合流遮断弁V3が開通位置に切り換わる。操作装置SW3は運転室17の内部に配置され得るが、運転中に操作できるようにする必要がなければ運転室17の外部(旋回体12の適宜の場所)に設けることもできる。操作装置SW3が切り操作されれば電磁弁SVが遮断位置に切り換わり、パイロット室への加圧が停止されてばね力によって合流遮断弁V3が遮断位置に戻る。なお、油圧ポンプ2a,2bの吐出管路L2a,L2bには、吐出管路L2a,L2bの最大圧を規定するリリーフ弁V2a,V2bが設けられている。
【0025】
・操作装置
操作装置6はアタッチメント23の油圧アクチュエータ27を操作するための操作装置であり、一対のパイロット弁(減圧弁)6a,6bとこれらを操作するための操作部材6cを備えている。パイロット弁6a,6bの一次側にはパイロットポンプ2cが接続しており、二次側はコントロール弁3aのパイロット室に接続している。操作部材6cが操作されると、操作方向に対応してパイロット弁6a,6bのいずれかでパイロットポンプ2cから吐出された作動油の圧力(一次圧)が操作量に応じて減圧されて油圧信号(二次圧)が生成される。この油圧信号はコントロール弁3aの対応するパイロット室に作用する。例えば操作部材6cによりパイロット弁6aが操作されると、操作量に応じた油圧信号がコントロール弁3aのパイロット室に作用し、コントロール弁3aが図中の右側の切換位置に切り換わる。これによりコントロール弁3aのポンプポートPがポートAに接続し、油圧ポンプ2aから吐出された圧油が油圧アクチュエータ27のポートCに供給されてアタッチメント23が作動する。その際、操作装置SW3が入り操作されて電磁弁SVが開通位置に切り換わっている場合には、パイロット弁6aで生成された油圧信号が合流遮断弁V3のパイロット室にも作用する。この場合、合流遮断弁V3が開通位置に切り換わり、油圧ポンプ2bから吐出された圧油も油圧ポンプ2aから吐出された圧油に合流し、コントロール弁3aを介して油圧アクチュエータ27のポートCに供給される圧油の流量が増す。
【0026】
・オイルクーラ
オイルクーラ5は油圧アクチュエータ27からの戻り油を冷却するものであり、コントロール弁3a及び作動油タンク4の間に位置するようにタンク管路LT2に設けられている。上記の通りオイルクーラ5は機械室18に配置されており、原動機1により駆動されるファン(不図示)による冷却風で作動油を冷却する。前述したリリーフ弁V2a,V2bは、本実施形態ではタンク管路LT2に対してオイルクーラ5よりも上流側の位置で接続している。
【0027】
・第1切換弁
第1切換弁V1は、油圧アクチュエータ27の戻り油管路L27bの接続先をタンク管路LT1及び第1バイパス管路L1のいずれかに切り換える例えば電磁駆動式の三方切換弁である。第1バイパス管路L1はコントロール弁3aをバイパスする管路である。第1切換弁V1は通常時は(消磁状態では)戻り油管路L27bをタンク管路LT1に接続し、操作装置SW1が入り操作されて電気信号が入力される(ソレノイドが励磁される)と作動し、戻り油管路L27bを第1バイパス管路L1に接続する。操作装置SW1が切り操作されてソレノイドが消磁されると、第1切換弁V1は通常の状態に復帰し、戻り油管路L27bの接続先をタンク管路LT1に戻す。操作装置SW1は運転室17の内部に配置され得るが、運転中に操作できるようにする必要がなければ運転室17の外部(旋回体12の適宜の場所)に設けることもできる。第1切換弁V1の操作方法や機能、操作を要する場面については、運転室17又は操作装置SW1の設置場所、或いは建設機械の取扱説明書等に必要に応じて模式的な油圧配線図と共に記載しておくことが望ましい。
【0028】
・フィルタ
フィルタ7は油圧アクチュエータ27からの戻り油に混入した塵埃等の異物を捕集して除去する例えばラインフィルタであり、作動油タンク4の内部でタンク管路LT2の出口付近に設けたフィルタ4aとは別に、第1バイパス管路L1に設けられている。例えば図3のようにアタッチメント23にブレーカを用いた場合、油圧アクチュエータ27にはチゼル部を介して異物が混入し易い。このような異物が混入し易いアタッチメントを用いる場合、前述した操作装置SW1を入り操作して戻り油管路L27bを第1バイパス管路L1に接続することで、戻り油がフィルタ7を通る回路に切り換わる。
【0029】
・第2切換弁
第2切換弁V2は第1バイパス管路L1の接続先を合流管路L3及び第2バイパス管路L2のいずれかに切り換える例えば電磁駆動式の三方切換弁である。この第2切換弁V2は、フィルタ7の下流側に位置するように第1バイパス管路L1に設けられている(第1バイパス管路L1の下流端に接続されている)。上記合流管路L3はオイルクーラ5の上流側の位置でフィルタ7の下流側からタンク管路LT2に合流する管路である。また、上記第2バイパス管路L2はフィルタ7の下流側からオイルクーラ5をバイパスして作動油タンク4に接続する管路である。第2切換弁V2は通常時は(消磁状態では)第1バイパス管路L1を第2バイパス管路L2に接続し、操作装置SW2が入り操作されて電気信号が入力される(ソレノイドが励磁される)と作動し、第1バイパス管路L1を合流管路L3に接続する。操作装置SW2が切り操作されてソレノイドが消磁されると、第2切換弁V2は通常の状態に復帰し、第1バイパス管路L1の接続先を第2バイパス管路L2に戻す。操作装置SW2は運転室17の内部に配置され得るが、運転中に操作できるようにする必要がなければ運転室17の外部(旋回体12の適宜の場所)に設けることもできる。第2切換弁V2の操作方法や機能、操作を要する場面については、運転室17又は操作装置SW2の設置場所、或いは建設機械の取扱説明書等に必要に応じて模式的な油圧配線図と共に記載しておくことが望ましい。
【0030】
・アキュムレータ
アキュムレータ8aは油圧アクチュエータ27への圧油の供給管路L27aに例えばストップ弁(不図示)を介して設けた高圧アキュムレータである。例えばアタッチメント23がブレーカである場合に、ストップ弁を開放してアキュムレータ8aを供給管路L27aに接続することで、ブレーカの作動により供給管路L27aを流れる圧油に生じる脈動が吸収される。これにより油圧アクチュエータ27への圧油の供給経路上に配置されたコントロール弁3a等の油圧機器の損傷が抑制される。
【0031】
アキュムレータ8bはフィルタ7及び第2切換弁V2の間に位置するように第1バイパス管路L1に例えばストップ弁(不図示)を介して設けた低圧アキュムレータである。例えばアタッチメント23がブレーカである場合に、ストップ弁を開放してアキュムレータ8bを第1バイパス管路L1に接続することで、ブレーカの作動により第1バイパス管路L1を流れる戻り油に生じる脈動が吸収される。これにより戻り油の流通経路上に配置された第1切換弁V1、フィルタ7、第2切換弁V2、オイルクーラ5等の油圧機器の損傷が抑制される。
【0032】
−動作−
(A)小要求流量、低許容背圧のブレーカの装着時の例
油圧ポンプ2aの吐出油のみで駆動可能で許容背圧が小さな(例えばオイルクーラ5による戻り油の圧力損失よりも低い)ブレーカをアタッチメント23として作業機20に取り付けて使用する場合を説明する。この場合、まず事前の回路設定作業として、ブレーカの要求流量が小さく油圧ポンプ2aの吐出流量のみで油圧アクチュエータ27を駆動することができるので、操作装置SW3は切り操作して電磁弁SV及び合流遮断弁V3を遮断位置にしておく。また、コントロール弁3aをバイパスしてフィルタ7に油圧アクチュエータ27の戻り油を導くべく、操作装置SW1は入り操作して第1切換弁V1により油圧アクチュエータ27の戻り油管路L27bを第1バイパス管路L1に接続しておく。更には、油圧アクチュエータ27は要求流量が小さいことから圧力損失が小さく、戻り油の昇温の程度が小さい。そのため油圧アクチュエータ27の戻り油をオイルクーラ5に通す必要性は低い。またブレーカの許容背圧も小さい。従ってオイルクーラ5を迂回して油圧アクチュエータ27からの戻り油を作動油タンク4に導くべく、操作装置SW2は切り操作して第2切換弁V2により第1バイパス管路L1を第2バイパス管路L2に接続しておく。
【0033】
事前の回路設定作業を終え、アタッチメント23を作動させる場合、操作部材6cによりパイロット弁6aを操作し、コントロール弁3aのポンプポートPをAポートに、タンクポートTをBポートに接続させる。合流遮断弁V3は閉じているため油圧ポンプ2aから吐出された圧油のみが油圧アクチュエータ27のポートCに導かれ、アタッチメント23が駆動される。油圧アクチュエータ27からの戻り油は、第1切換弁V1を介して第1バイパス管路L1に流れ込み、コントロール弁3aを迂回する。第1バイパス管路L1を流れる戻り油はフィルタ7を通過して異物を除去され、第2切換弁V2を介して第2バイパス管路L2に流れ込み、オイルクーラ5を迂回して作動油タンク4に戻る。また、油圧アクチュエータ27の供給管路L27aを流れる圧油の脈動はアキュムレータ8aで、第1バイパス管路L1を流れる戻り油の脈動はアキュムレータ8bで吸収される。
【0034】
この間の作業においては、油圧アクチュエータ27を駆動した戻り油は全て第1バイパス管路L1に流れ込み、コントロール弁3aをバイパスしてフィルタ7を通過する。従って、作業時にチゼルから油圧系統に混入した異物がフィルタ7で除去され、戻り油の流通経路上の各油圧機器の損傷が抑制される。またブレーカの要求流量が小さく油圧アクチュエータ27の圧力損失が小さいので、戻り油の温度上昇の程度が小さい。そのためオイルクーラ5をバイパスして油圧アクチュエータ27の戻り油を作動油タンク4に導く回路が選択できるので、オイルクーラ5の圧力損失の分だけ油圧アクチュエータ27の背圧を低減でき(図4)、オイルクーラ5の負担も軽減できる。油圧アクチュエータ27の背圧が抑えられるので、許容背圧が大きなブレーカであっても支障なく使用できる。
【0035】
(B)小要求流量、高許容背圧のブレーカの装着時の例
油圧ポンプ2aの吐出油のみで駆動可能で許容背圧が大きな(例えばオイルクーラ5による戻り油の圧力損失よりも高い)ブレーカをアタッチメント23として作業機20に取り付けて使用する場合を説明する。この場合、油圧ポンプ2aの吐出油のみで駆動可能なブレーカであるため、操作装置SW1,SW3の入り切り(第1切換弁V1及び合流遮断弁V3の切換位置)は上記(A)の例と同じくする。但し、この例の場合、油圧アクチュエータ27の要求流量が小さいことから油圧アクチュエータ27の戻り油をオイルクーラ5に通す必要性は低いが、上記(A)の例と異なりブレーカの許容背圧が大きい。つまり油圧アクチュエータ27の戻り油はオイルクーラ5をバイパスさせても良いが、許容背圧の観点ではオイルクーラに通しても支障ない。従って、操作装置SW2の入り切り(第2切換弁V2の切換位置)については、作動油を冷却するメリットと作動油タンク4の負担を軽減するメリットを比較衡量して決めれば良い。
【0036】
オイルクーラ5を迂回して油圧アクチュエータ27からの戻り油を作動油タンク4に戻す場合の作動油の流れは上記の(A)の例と同様である。オイルクーラ5を経由して油圧アクチュエータ27からの戻り油を作動油タンク4に戻す場合、(A)の場合に比べて作動油の温度上昇が抑えられ、油圧系統に使用されるゴム等の劣化を抑制できる。
【0037】
(C)大要求流量、低許容背圧のブレーカの装着時の例
油圧ポンプ2aの吐出油のみでは駆動不能で許容背圧が小さなブレーカをアタッチメント23として作業機20に取り付けて使用する場合を説明する。この場合、ブレーカの要求流量が大きいので、操作装置SW3は入り操作して電磁弁SV及び合流遮断弁V3を開通位置にしておく。操作装置SW1については入り操作して第1切換弁V1により油圧アクチュエータ27の戻り油管路L27bを第1バイパス管路L1に接続しておく。但し、油圧アクチュエータ27は要求流量が大きいことから油圧アクチュエータ27から第1バイパス管路L1に導かれる流量が多くなり戻り油の昇温の程度が大きくなる。この戻り油の昇温の抑制を優先する場合には、油圧アクチュエータ27の戻り油はオイルクーラ5に通す。従って、操作装置SW2については入り操作して第2切換弁V2により第1バイパス管路L1を合流管路L3に接続しておく。周囲温度が低い作業環境で作動する場合は、特に作動の初期時等に第1バイパス管路L1の背圧が高くなるため、例えば操作装置SW2を切り操作して第2切換弁V2を消磁状態(図3の通常位置)とし、第1バイパス管路L1を第2バイパス管路L2に接続する。オイルクーラ5をバイパスして戻り油を作動油タンク4に戻すことで背圧が抑制される。
【0038】
その後アタッチメント23を作動させる場合、(A)の例と同じく操作部材6cによりパイロット弁6aを操作し、コントロール弁3aのポンプポートPをAポートに、タンクポートTをBポートに接続させる。その際、パイロット弁6aで生成された油圧信号は電磁弁SVを介して合流遮断弁V3のパイロット室にも入力され、合流遮断弁V3が開通する。これにより油圧ポンプ2a,2bの吐出油が合流して油圧アクチュエータ27のポートCに導かれ、大流量の圧油でアタッチメント23が駆動される。油圧アクチュエータ27から排出された戻り油は、第1切換弁V1、フィルタ7、第2切換弁V2、オイルクーラ5を経由して作動油タンク4に戻る。
【0039】
この作業においては、油圧アクチュエータ27を駆動した戻り油は全てフィルタ7及びオイルクーラ5を通過する。(A)の例と異なりブレーカの要求流量が大きく油圧アクチュエータ27の圧力損失が大きいが、オイルクーラ5を経由することで戻り油の温度上昇が抑えられる。
【0040】
(D)破砕機等(ブレーカ以外のアタッチメント)の装着時の例
例えばアタッチメント23として作業機20に破砕機や小割り機等、ブレーカ以外のアタッチメント(以下、破砕機で代表する)を取り付けた場合、操作装置SW1を切り操作して油圧アクチュエータ27の戻り油管路L27bをタンク管路LT1に接続しておく。操作装置SW3については、油圧アクチュエータ27の要求流量が特に大きくなければ切り操作して合流遮断弁V3を閉じておく。またアキュムレータ8a,8bによる油圧脈動の吸収の必要がなければ、ブレーカの場合と異なりアキュムレータ8a,8bのストップ弁(不図示)は閉止しておく。
【0041】
その後破砕機を作動させる場合、操作部材6cによりパイロット弁6a,6bを適宜操作する。これにより油圧ポンプ2a(又は油圧ポンプ2a,2b)の吐出油が油圧アクチュエータ27のポートC及びポートDのいずれかに選択的に供給される。ポートC,Dのどちらから油圧アクチュエータ27に圧油が供給されても、油圧アクチュエータ27からの戻り油はコントロール弁3a及びタンク管路LT2を介してオイルクーラ5に導かれ、オイルクーラ5を通過して作動油タンク4に戻る。
【0042】
この間の作業においては、油圧アクチュエータ27を駆動した戻り油は全てコントロール弁3aを介してタンク管路LT2に流れ込み、オイルクーラ5を通過して作動油タンク4に戻る。作動油の温度上昇が抑制できるので、油圧系統のゴム等の寿命減少が抑えられる。
【0043】
−効果−
(1)本実施形態によれば、装着するアタッチメント23を駆動するための作動油の流量の大小、つまり油圧アクチュエータ27から排出された戻り油の昇温の程度に応じて、オイルクーラ5をバイパスする回路と経由する回路を選択することができる。上記(A)の例のように要求流量の小さいアタッチメント23の場合、作動油温の上昇の程度が小さいためオイルクーラ5を迂回して油圧アクチュエータ27から作動油タンク4に戻り油を導く回路が選択できる。作動油タンク4を迂回することで油圧アクチュエータ27の背圧を低減できるので、許容背圧が小さなアタッチメント23でも使用することができる。オイルクーラ5をバイパスして油圧アクチュエータ27からの戻り油を作動油タンク4に戻すことで、オイルクーラ5の傷みの進行を抑制できる。反対に、上記(C)の例のように要求流量が大きなアタッチメント23の場合は作動油温の上昇の程度が大きいが、この場合にはオイルクーラ5を経由して油圧アクチュエータ27から作動油タンク4に戻り油を導く回路が選択できる。これにより要求流量の大きなアタッチメント23を使用する場合でも作動油温の上昇を抑制できる。
【0044】
また、第1切換弁V1によりコントロール弁3aをバイパスさせて第1バイパス管路L1に油圧アクチュエータ27の戻り油を導くことで、戻り油をフィルタ7に通すことができる。これによりアタッチメント23に例えばブレーカを用いた場合、チゼル部から油圧系統に混入した異物をフィルタ7で除去することができ、油圧系統に混入した異物から油圧機器を保護することができる。
【0045】
従って、アタッチメント23の機種毎に異なる油圧アクチュエータ27の要求流量や背圧制限等の仕様に柔軟に対応することができ、種々のアタッチメント23を装着して作業することができる。
【0046】
図3の油圧回路は、一般的な油圧ショベルやホイールローダを含め、油圧アクチュエータ27を搭載した作動型のアタッチメント23(油圧アタッチメント)を作業機20に装着し得る建設機械に適用できるが、特にショートリーチに適用する意義が大きい。ショートリーチは、建築物の地下空間内やトンネル内等、高さが制約された空間での作業に用いられる。ショートリーチはブーム21やアーム22の長さを抑えて作業機を短くすることで、例えばトンネルの壁面、剥き出しの梁や柱の鉄筋等、周囲の様々な障害物との干渉を避けつつ、硬い地山を力強く掘削したり建物等を解体したりすることができる。ショートリーチは小型機種であるが、岩盤掘削、構造物の破砕や解体等の負荷の大きな作業に用いられることが少なくない。そのため、トンネル内の掘削作業等の高負荷作業を効率良く実施したいとの要望から、アタッチメント23として車格に相応したものよりも大型のものを用いる場合がある。アタッチメント23を車格に相応したサイズより大型のものに交換すると、一般的には油圧アクチュエータ27の許容背圧が原因で作動させられない場合が多い。このような実情を抱えるショートリーチにあっては、上記の通りオイルクーラ5をバイパスし、アタッチメント駆動回路における油圧アクチュエータ27の背圧を下げることで大型のアタッチメント23が作動させられることの有用性が大きい。
【0047】
(2)コントロール弁3aをバイパスさせた場合、油圧アクチュエータ27の戻り油は第2切換弁V2の切り換え状態によらず第1バイパス管路L1を通る。この第1バイパス管路L1にアキュムレータ8bを設けるに当たってフィルタ7と第2切換弁V2との間に配置することで、第2切換弁V2の切り換え状態によらず戻り油が必ず通る経路において極力下流の領域にアキュムレータ8bを設けることができる。これによりアキュムレータ8bを作動油タンク4の近くに配置することができる。作動油タンク4に近い程戻り油の圧力損失が小さくなるので、アキュムレータ8bに容量が小さいものを用いても効率的に油圧脈動を抑えることができる。但し、本質的な上記効果(1)を得る上では、アキュムレータ8bの位置は必ずしも限定されず、例えばフィルタ7よりも上流側に設けても良い。
【0048】
(3)操作装置SW1〜SW3の操作場面やその際の油圧配線図等を運転室17や取扱説明書等のオペレータが参照できるところに表記しておくことで、装着するアタッチメント23の種類や仕様に応じてオペレータ等が油圧回路を適正に設定することができる。このように油圧回路な適正な設定を支援することで、アタッチメント23や油圧回路の保護にも繋がる。
【0049】
−変形例−
第1切換弁V1及び第2切換弁V2には単純な2位置切換弁を用いることができるが、油圧信号の大きさに応じて段階的又は連続的に開度が変化する比例式の切換弁を用いても良い。例えば操作装置SW2をオンオフスイッチの代わりに3つ以上の切り換えポジションを備えたスイッチを用い、第2切換弁V2に比例電磁切換弁を用いた場合、第2切換弁V2を中間開度にすることで第2バイパス管路L2と合流管路L3に戻り油を分流できる。この場合、例えば許容背圧が比較的低いものの戻り油の一部をオイルクーラ5に通しても作動させられる仕様のアタッチメント23を用いる場合に、背圧が許容値を超えない範囲で戻り油をオイルクーラ5に通し作動油温の上昇を抑制できる。
【0050】
また、油圧アクチュエータ27の要求流量に応じて油圧ポンプ2aの吐出油に油圧ポンプ2bの吐出油を合流させたり遮断したりできる構成を図3に例示したが、常時油圧ポンプ2aの吐出油のみで油圧アクチュエータ27を駆動する回路構成としても良い。例えば油圧ポンプ2aの吐出流量の可変範囲で油圧アクチュエータの種々の要求流量に対応できる場合には、油圧ポンプ2bの吐出油を油圧ポンプ2aの吐出油に合流させる回路(合流遮断弁V3を含む)は省略しても良い。この場合、必要に応じてロードセンシングを適用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1…原動機、2,2a,2b…油圧ポンプ(第1油圧ポンプ、第2油圧ポンプ)、3a,3b…コントロール弁、4…作動油タンク、5…オイルクーラ、7…フィルタ、8a,8b…アキュムレータ、10…機体本体、20…作業機、23…アタッチメント、27…油圧アクチュエータ、L1…第1バイパス管路、L2…第2バイパス管路、L3…合流管路、L27b…戻り油管路、LT1,LT2…タンク管路、V1…第1切換弁、V2…第2切換弁、V3…合流遮断弁
図1
図2
図3
図4