特許第6817265号(P6817265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817265
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】金属溶湯浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 43/00 20060101AFI20210107BHJP
   B22D 35/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B22D43/00 C
   B22D35/00 C
   B22D35/00 D
【請求項の数】43
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-182816(P2018-182816)
(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公開番号】特開2020-49528(P2020-49528A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年6月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593059223
【氏名又は名称】高橋 謙三
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙三
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−021539(JP,A)
【文献】 特開昭59−066968(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/097799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 33/00−47/02,1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に対向する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は、
−前記流通路の内部に設けられる電極体であって、浄化対象とする金属溶湯の電気抵抗値よりも大きな電気抵抗値を有する導電性部材で構成され、前記流通路に設けられた状態において、金属溶湯流通体の幅方向に対向する一対の電極と、それらの電極をつなぐ底壁と、前記一対の電極と前記底壁とによって構成されるフィルター収納空間と、を有し、浄化対象とする金属溶湯を介して前記一対の電極間に電流が流れ得るように構成された、電極体と、
−前記フィルター収納空間に収納される、非導電性のフィルターと、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記一対の電極間に流れる電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ことを特徴とする、金属溶湯浄化装置。
【請求項2】
前記金属溶湯流通体は、金属溶湯を搬送するための溶湯搬送樋である、又は、金属溶湯を浄化するための収納体である、ことを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項3】
前記電極体が前記金属溶湯流通体に対して着脱可能に構成されていること、及び、
前記フィルターは前記電極体の前記フィルター収納空間に着脱可能に構成されていること、の少なくとも一方を満足するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項4】
前記フィルターは、1層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項5】
前記フィルターは、複数層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項6】
前記フィルターにおいては、複数層のフィルターユニットにおける隣合う一対のフィルターユニットは、金属溶湯の流入側のフィルターユニットの編み目よりも流出側のフィルターユニット編み目が小さくなるように、配置されている、ことを特徴とする請求項5に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項7】
前記外部部材は、永久磁石又は電磁石で構成されていることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項8】
前記電極体に電流を供給する電源装置をさらに備え、前記電源装置は、供給電力可変でパルス電流供給可能な直流電流源、又は供給電力及び周波数可変な交流電流源であることを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項9】
幅方向に対向する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は、
−前記流通路の内部に設けられる電極体であって、浄化対象とする金属溶湯の電気抵抗値よりも大きな電気抵抗値を有する導電性部材で構成され、前記流通路に設けられた状態において、金属溶湯流通体の幅方向に対向する一対の電極と、それらの電極をつなぐ底壁と、前記一対の電極と、を有し、浄化対象とする金属溶湯を介して前記一対の電極間に電流が流れ得るように構成された、電極体と、
−前記流通路の内部に設けられる非導電性の一対のフィルターであって、前記一対のフィルターは前記電極体を挟むように、前記流通路における流通方向に互いに離間した位置に設けられている、一対のフィルターと、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記一対の電極間に流れる電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ことを特徴とする、金属溶湯浄化装置。
【請求項10】
前記金属溶湯流通体は、金属溶湯を搬送するための溶湯搬送樋、又は、金属溶湯を浄化するための収納体であることを特徴とする請求項9に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項11】
前記フィルターが前記金属溶湯流通体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項12】
前記電極体が前記金属溶湯流通体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項13】
前記フィルターは、1層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項9乃至12の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項14】
前記フィルターは、複数層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項15】
前記フィルターにおいては、複数層のフィルターユニットにおける隣合う一対のフィルターユニットは、金属溶湯の流入側のフィルターユニットの編み目よりも流出側のフィルターユニット編み目が小さくなるように、配置されている、ことを特徴とする請求項14に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項16】
前記外部部材は、永久磁石又は電磁石で構成されていることを特徴とする請求項9乃至15の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項17】
前記電極体に電流を供給する電源装置をさらに備え、前記電源装置は、供給電力可変でパルス電流供給可能な直流電流源、又は供給電力及び周波数可変な交流電流源であることを特徴とする請求項9乃至16の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項18】
幅方向に対向する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は、
−前記流通路の内部に着脱可能に設けられる、ほぼ矩形体状のものとして構成された、非導電性のフィルターであって、前記フィルターは、前記流通路を構成する前記一対の側壁の内面とそれぞれ接する両端面に、前記両端面から中心に向けて部分的に窪んだ状態に、電極収納空間が形成された、フィルターと、
−前記フィルターの両端面の前記電極収納空間にそれぞれ設けられる一対の電極と、を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記一対の電極間に流れる電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ことを特徴とする、金属溶湯浄化装置。
【請求項19】
前記金属溶湯流通体は、金属溶湯を搬送するための溶湯搬送樋、又は、金属溶湯を浄化するための収納体であることを特徴とする請求項18に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項20】
前記フィルターが前記金属溶湯流通体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項18又は19に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項21】
前記一対の電極が前記フィルター及び前記金属溶湯流通体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項18又は19に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項22】
前記フィルターは、1層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項18乃至21の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項23】
前記フィルターは、複数層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項20又は21に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項24】
前記フィルターにおいては、複数層のフィルターユニットにおける隣合う一対のフィルターユニットは、金属溶湯の流入側のフィルターユニットの編み目よりも流出側のフィルターユニットの編み目が小さくなるように、配置されている、ことを特徴とする請求項23に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項25】
前記外部部材は、永久磁石又は電磁石で構成されていることを特徴とする請求項18乃至24の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項26】
前記一対の電極に電流を供給する電源装置をさらに備え、前記電源装置は、供給電力可変でパルス電流供給可能な直流電流源、又は供給電力及び周波数可変な交流電流源であることを特徴とする請求18乃至25の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項27】
幅方向に対向する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は導電性のフィルターとして構成され、前記フィルターは、
−前記流通路を構成する前記一対の側壁の内面とそれぞれ接し、フィルター支持枠を兼ねる一対の電極と、
−前記一対の電極間に挟持された状態に支持される導電性のフィルター本体と、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記一対の電極間に流れる電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ことを特徴とする、金属溶湯浄化装置。
【請求項28】
前記金属溶湯流通体は、金属溶湯を搬送するための溶湯搬送樋、又は、金属溶湯を浄化するための収納体であることを特徴とする請求項27に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項29】
前記フィルターが前記金属溶湯流通体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項27又は28に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項30】
前記フィルター本体は、1層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項27乃至29の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項31】
前記フィルター本体は、複数層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項27乃至29の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項32】
前記フィルター本体においては、複数層のフィルターユニットにおける隣り合う一対のフィルターユニットは、金属溶湯の流入側のフィルターユニットの編み目よりも流出側のフィルターユニットの編み目が小さくなるように、配置されている、ことを特徴とする請求項31に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項33】
前記外部部材は、永久磁石又は電磁石で構成されていることを特徴とする請求項27乃至32の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項34】
前記一対の電極に電流を供給する電源装置をさらに備え、前記電源装置は、供給電力可変でパルス電流供給可能な直流電流源、又は供給電力及び周波数可変な交流電流源であることを特徴とする請求27乃至33の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項35】
幅方向に対向する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は、
−前記流通路に設けられた状態において、金属溶湯流通体の幅方向に対向し、浄化対象とする金属溶湯を介して電流が流れ得るように構成された、一対の電極と、
−前記流通路の内部に設けられる非導電性の一対のフィルターであって、前記一対のフィルターは前記一対の電極を挟むように、前記流通路における流通方向に互いに離間した位置に設けられている、一対のフィルターと、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記一対の電極間に流れる電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ことを特徴とする、金属溶湯浄化装置。
【請求項36】
前記金属溶湯流通体は、金属溶湯を搬送するための溶湯搬送樋、又は、金属溶湯を浄化するための収納体であることを特徴とする請求項35に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項37】
前記フィルターが前記金属溶湯流通体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項35又は36に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項38】
前記一対の電極が前記金属溶湯流通体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項35又は36に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項39】
前記フィルターは、1層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項35乃至38の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項40】
前記フィルターは、複数層のフィルターユニットにより構成されていることを特徴とする請求項35乃至38の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項41】
前記フィルターにおいては、複数層のフィルターユニットにおける隣合う一対のフィルターユニットは、金属溶湯の流入側のフィルターユニットの編み目よりも流出側のフィルターユニット編み目が小さくなるように、配置されている、ことを特徴とする請求項40に記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項42】
前記外部部材は、永久磁石又は電磁石で構成されていることを特徴とする請求項35乃至41の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【請求項43】
前記一対の電極に電流を供給する電源装置をさらに備え、前記電源装置は、供給電力可変でパルス電流供給可能な直流電流源、又は供給電力及び周波数可変な交流電流源であることを特徴とする請求35乃至42の1つに記載の金属溶湯浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属溶湯浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性(伝導性)を有する金属の溶湯、即ち、非鉄金属(例えば、Al,Cu,Zn又はSi、あるいはこれらのうちの少なくとも2つの合金、あるいはMg合金等)の溶湯又は非鉄金属以外の金属の溶湯によって、例えば、鋳造品を製造すること等が行われている。
【0003】
鋳造品を得るに当たっては、例えば、溶解炉から出湯した金属溶湯を樋により導いて次段のモールド(鋳型)に流し込むことが行われる。
【0004】
前記溶湯中には不純物が含まれていることも少なくない。このような場合には前記不純物を除去して浄化する必要がある。除去のためには従来は例えばフィルターを用いたいわゆる「ろ過」が行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、独自に、以下のような課題を持っていた。これらの課題は本発明者以外の当業者は持っておらず、本発明者に独自のものであると本発明者は思料する。
【0006】
上記ろ過において浄化精度を上げるにはフィルターの編み目をできるだけ細かくすれば良い。しかしながら、編み目を細かくすればするほど、溶湯がフィルターを通過する通過速度(濾過速度)が遅くなり、製品の生産性が落ちてしまうという課題が生じる。フィルターを使用した場合には、この課題に加えて目詰まりという課題も生じる。即ち、フィルターを用いた場合にはフィルター自体に目詰まりが発生し、この目詰まりによっても金属溶湯Mがフィルターを通過する速度が遅くなってしまう。目詰まりが進むとやがては金属溶湯がフィルターを通過しなくなり、運転継続ができなくなってしまう。これを避けるためには、フィルターの目を粗いものとすれば良い。しかし、こうすると当然不純物のろ過が不十分となり、浄化能力自体が落ちて、通過した金属溶湯で作られる製品の品質が落ちてしまう。
【0007】
このように、本発明者は、従来のフィルターを用いた浄化手法には、上述のように各種の技術的な課題があるとの認識を独自に持っていた。
【0008】
また、本発明者は、従来のフィルターを用いた手法を経済的な観点からみても以下のような課題があるということを独自に懸念していた。即ち、フィルター自体は非常に高価である。それにも拘わらず、使用により実際には短時間で上述のような目詰まりを起こしてしまう。このことから、頻繁に、古いフィルターを新しいフィルターに交換し、古いフィルターは廃棄しなければならなかった。さらに、交換作業中は製品の生産が停止するため収益性が落ちるだけでなく、当然交換作業自体も煩雑で時間の掛かる作業である。さらに、上述のように従来は目詰まりしたフィルターは使い捨て(廃棄)せざるを得ず、経済性も悪かった。つまり、従来の手法では各種の観点からコスト高となるのが避けられなかった。
【0009】
上述のように、本発明者は、本発明者以外の当業者と異なり、独自に以上の課題をもっていた。
【0010】
つまり、金属溶湯から不純物を除去するために従来のフィルターを用いる手法には、金属溶湯がフィルターを通過する速度が落ちるだけでなく、効率の良い金属溶湯の浄化が実際上難しく、頻繁にフィルターを交換しなければならないため作業が煩雑であり、これらの種々の理由によって製品の生産性が低下し、さらにはフィルター自体が高価であることと相俟って、浄化後の金属溶湯により製造される製品のコストが高くなるのが避けらなかった。
【0011】
本発明は、本発明者の独自の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、金属溶湯の浄化性能の向上を図り、製品の生産性を上げ得るとともに、フィルタリングコストの低減を可能とした金属溶湯浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
幅方向に対抗する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は、
−前記流通路の内部に設けられる電極体であって、浄化対象とする金属溶湯の電気抵抗値よりも大きな電気抵抗値を有する導電性部材で構成され、前記流通路に設けられた状態において、金属溶湯流通体の幅方向に対向する一対の電極と、それらの電極をつなぐ底壁と、前記一対の電極と前記底壁とによって構成されるフィルター収納空間と、を有し、浄化対象とする金属溶湯を介して前記一対の電極間に電流が流れ得るように構成された、電極体と、
−前記フィルター収納空間に収納される、非導電性のフィルターと、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ことを特徴とする、
ものとして構成される。
【0013】
本発明は、
幅方向に対抗する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は、
−前記流通路の内部に設けられる電極体であって、浄化対象とする金属溶湯の電気抵抗値よりも大きな電気抵抗値を有する導電性部材で構成され、前記流通路に設けられた状態において、金属溶湯流通体の幅方向に対向する一対の電極と、それらの電極をつなぐ底壁と、前記一対の電極と、を有し、浄化対象とする金属溶湯を介して前記一対の電極間に電流Iが流れ得るように構成された、電極体と、
−前記流通路の内部に設けられる非導電性の一対のフィルターであって、前記一対のフィルターは前記電極体を挟むように、前記流通路における流通方向に互いに離間した位置に設けられている、一対のフィルターと、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ものとして構成される。
【0014】
本発明は、
幅方向に対抗する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は、
−前記流通路の内部に着脱可能に設けられる、ぼぼ矩形体状のものとして構成された、非導電性のフィルターであって、前記フィルターは、前記流通路を構成する前記一対の側壁の内面とそれぞれ接する両端面に、前記両端面から中心に向けて部分的に窪んだ状態に、電極収納空間が形成された、フィルターと、
−前記電極収納空間に設けられる電極と、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ものとして構成される。
【0015】
本発明は、
幅方向に対抗する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は導電性のフィルターとして構成され、前記フィルターは、
−前記流通路を構成する前記一対の側壁の内面とそれぞれ接する両端における一対のフィルター支持枠を兼ねる電極と、
−前記一対の電極間に挟持された状態に支持される導電性のフィルター本体と、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記電流Iと、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ものとして構成される。
【0016】
本発明は、
幅方向に対抗する一対の側壁と、それらの側壁をつなぐ底壁と、によって、浄化対象とする金属溶湯が流通可能な流通路が形成された金属溶湯流通体を流通する金属溶湯を浄化するための金属溶湯浄化装置であって、
前記金属溶湯流通体の内部に設けられる内部部材と、前記金属溶湯流通体の外部に設けられる外部部材と、を備え、
前記内部部材は、
−前記流通路に設けられた状態において、金属溶湯流通体の幅方向に対向し、浄化対象とする金属溶湯を介して電流が流れ得るように構成された、一対の電極と、
−前記流通路の内部に設けられる非導電性の一対のフィルターであって、前記一対のフィルターは前記一対の電極を挟むように、前記流通路における流通方向に互いに離間した位置に設けられている、一対のフィルターと、
を有するものとして構成され、
前記外部部材は、上面側がN極又はS極に磁化された磁場装置として構成され、前記N極から出る磁力線又は前記S極へ入る磁力線と、前記電流と、が交叉して、浄化対象とする金属溶湯を前記流通路における流通方向に沿った方向に駆動するローレンツ力を発生させるように、前記金属溶湯流通体の下方に配置されている、
ものとして構成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1(a)】本発明の第1の実施形態の金属溶湯浄化装置の平面図。
図1(b)】図1(a)のI(b)−I(b)線に沿った断面説明図。
図1(c)】本発明の第1の実施形態の金属溶湯浄化装置において電流Iの流れる一態様を示す説明図。
図1(d)】本発明の第1の実施形態の金属溶湯浄化装置において電流Iの流れる別の態様を示す説明図。
図1(e)】本発明の第1の実施形態の金属溶湯浄化装置において電流Iの流れるさらに別の態様を示す説明図。
図2(a)】本発明の第2の実施形態の装置の金属溶湯浄化装置の平面図。
図2(b)】図2(a)のII(b)−II(b)線に沿った断面説明図。
図3(a)】本発明の第3の実施形態の金属溶湯浄化装置の平面図。
図3(b)】図3(a)のIII(b)−III(b)線に沿って断面した端面説明図。
図4(a)】本発明の第4の実施形態の装置の金属溶湯浄化装置の平面図。
図4(b)】図4(a)のIV(b)−IV(b)線に沿った断面説明図。
図5(a)】本発明の第5の実施形態の装置の金属溶湯浄化装置の平面図。
図5(b)】図4(a)のV(b)−V(b)線に沿った断面説明図。
図6(a)】第1及び第2の実施形態に用いるフィルターの一例を示す平面図。
図6(b)】図6(a)の側面図。
図7(a)】第1及び第2の実施形態に用いるフィルターの他の例を示す平面図。
図7(b)】図7(a)の側面図。
図8(a)】第3の実施形態に用いるフィルターの一例を示す平面図。
図8(b)】図8(a)の側面図。
図9(a)】第3の実施形態に用いるフィルターの他の例を示す平面図。
図9(b)】図9(a)の側面図。
図10(a)】第4の実施形態に用いるフィルターの一例を示す平面図。
図10(b)】図10(a)の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の理解を容易にすべく、本発明者のみが独自に本発明をなすことができるようになった経緯を説明する。
【0019】
上述のように、従来は、金属溶湯をフィルターを通過させると、フィルターを通過する金属溶湯の速度が落ちるだけでなく、目詰まりに起因して、フィルターが高価であるにも拘わらず頻繁に交換しなければならなかった。本発明者以外の当業者はこれらのことは当然のこととして何ら疑問を持っていなかったと思われるが、本発明者は独自にこのことは大きな技術的な課題であるとの認識を持っていた。このことから、本発明者は、金属溶湯がフィルターを通過する速度が落ちるのを防ぎ得るとともに、さらには上げることもでき、且つ、金属溶湯の浄化精度を従来のものと同様に維持しつつもフィルターの寿命を伸ばすことができること等を技術的な目標に掲げ、独自に各種の実験、技術開発を継続して行った。
【0020】
その過程において、本発明者は、目詰まりにより交換し、今までは廃棄されていた数多くの使用済みのフィルターを詳細に観察した。これによって、本発明者は以下のことを独自に知得した。
【0021】
即ち、例えば、目詰まりをした例えば厚さが50mmのフィルターを観察した。その結果、フィルターへ金属溶湯が流れ込む流入側のフィルター表面から1〜5mm程度内部までには、多くの非導電性の不純物(不純物粒子)がトラップされて流入側が激しく目詰まりしていた。これに対し、流入側の表面から40〜45mmの部分、つまり流出側においては、不純物粒子のトラップがほとんど行われておらず、実質的に目詰まりは起こっていなかった。つまり、本発明者は、フィルターの目詰まりは、フィルターの流入側に集中して起こっており、流出側には実質的には起こっていない、ということを独自に知得した。
【0022】
本発明者は、この独自の知得に基づき、不純物粒子のトラップがフィルターの流入側から流出側にかけての厚さ全体に均一に起きるようにすれば、フィルターの目詰まり密度が緩和されて、フィルターの寿命を大幅に伸ばし、交換作業を頻繁に行わなくても良くなり、ひいてフィルターを継続して長期間使用することができるのではないか、という技術的なひらめきを独自に得た。本発明者は、この独自のひらめきによって得たことが技術的に正しいがどうかを確かめるために、さらに考えを推し進め、実際に各種の装置を作り、さまざまな実験を重ねた。
【0023】
つまり、先ず本発明者が考えたのは、汎用の各種の金属溶湯ポンプ等によって金属溶湯の全体に圧力を掛けて、不純物粒子をより深くフィルターの厚さ方向に押し込みつつ、金属溶湯をフィルターを通過させるという技術手法。しかしながら、この技術手法では、不純物粒子をフィルターのある程度より深い位置まで到達させることができるものの、金属溶湯がフィルターを通過する速度は遅くなり、実用上満足できる装置は得られないことが、本発明者には技術的に予想された。それは、前記ポンプ等を用いた場合は、金属溶湯だけでなく不純物粒子にも圧力がかかるため、不純物粒子が強力にフィルターの目を塞ぎ、これによりかえって金属溶湯がフィルターの編み目を通りにくくなるであろう、ことが本発明者には技術的に予想されたからである。
【0024】
そこで本発明者はさらに思考して、金属溶湯を駆動する手段としてポンプに代えてローレンツ力を用いることを考えた。しかし、たとえローレンツ力を用いたとしても、ポンプを用いた場合と同様に、不純物粒子がフィルターの編み目を塞ぎ、金属溶湯はフィルターを十分な速度で通過できないことが技術的に予想された。
【0025】
本発明者は、この技術的な予想が実際的に正しいであろうことを確認するために、各種の実験を独自に行った。それは、各種の実験を行えば、それらの実験を通して何らかの解決策が得られるかも知れないとの期待もあったからである。
【0026】
しかるに、フィルターを通過する金属溶湯にローレンツ力を加える実験を本発明者が実際に行ったところ、予想に反して、金属溶湯はフィルターを予想よりも速い速度で通過した。本発明者は、このことの理由を探るべく、さらに各種の実験と分析、解析を繰り返した。
【0027】
これにより、本発明者は、以下のことを独自に知得した。即ち、不純物粒子を除去しようとする金属溶湯の中には、その金属溶湯が高温であることから、自己の酸化物が含まれており、それらの酸化物は非導電性である。しかも、これらの非導電性の酸化物が、金属溶湯中に含まれている不純物の割合としては高い。このため、金属溶湯にローレンツ力を加えた場合には、金属溶湯は導電性を有するが故に金属溶湯には駆動力が加わるが、その中に含まれている不純物粒子は非導電性であるが故にそれらの不純物粒子には駆動力が加わらない。
【0028】
より詳しくは、ローレンツ力によって金属溶湯を駆動すると、その中に存在する不純物粒子も金属溶湯とともに流れて、フィルターの内部に入り込むのは避けられない。このため、結果的に不純物粒子はフィルターの厚さ方向に均一に分散することになる。しかしながら、不純物粒子にはそれが非導電性であるため直接ローレンツ力が加わってはいない。このため、不純物粒子はフィルターの目を強力に塞いではいない。而して、金属溶湯にはローレンツ力が直接的に加わっている。このため、金属溶湯は直接的に不純物粒子の影響を受けることなくフィルターを通過する。
【0029】
上述のように、金属溶湯がフィルターを通過する速度が落ちるのを防ぐには、本発明者以外の当業者は、先ず、前記ポンプを使うという技術的思想を採用すると思われる。しかしながら、ポンプを用いても所期の目的を達することはできないことは、本発明者以外の当業者にも予想される。さらに、ポンプに代えてローレンツ力を加えても、ポンプを用いた場合と同様に、所期の目的は達成できないことが、当業者には予想される。このため、本発明者以外の当業者は、金属溶湯を駆動するのにローレンツ力を用いることも断念すると思われる。しかるに、本発明者は、自己が独自に行った実験から、ローレンツ力を用いれば、一般の当業者の予想とは異なり、金属溶湯がフィルターを通過する速度の低下を防ぐことができ、さらには速い速度でフィルターを通過させることができるのを独自に知得した。本発明者は本発明者が独自に得た前記知得から、本発明者以外の当業者は決して採用し得ないであろう、ローレンツ力で金属溶湯を駆動する、ことを内容の一部とする本発明を独自になし得るに至った。
【0030】
このように、本発明者による独自の実験と分析、解析によって本発明の実施形態の金属溶湯浄化装置が得られた。この金属溶湯浄化装置によれば、不純物の浄化精度を維持したまま、後述するところからも分かるように、以下のような特徴が得られることが確認された。
(1) フィルター内の金属溶湯通過速度の低下を避けることができる。
(2) フィルターは再生により繰り返し使用することが可能である。
(3) 金属溶湯浄化装置の製造には市販のフィルターを用いることができる。
【0031】
上述のように、ローレンツ力をフィルターを通過する金属溶湯に加えるという技術的な発想は、本発明者が実験と分析、解析により独自に得た技術的思想であり、本発明者が行った各種の実験を行わなかった本発明者以外の当業者には決して至り得なかった技術的な思想である。
【0032】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1(a)及び図1(b)は、本発明の第1の実施形態の金属溶湯浄化装置の平面図及び図1(a)のI(b)−I(b)線に沿った断面説明図である。この金属溶湯浄化装置はアルミニウム等の金属溶湯を浄化するものとして構成されたものである。
【0034】
図1(a)において、金属溶湯は、耐火物製の溶湯搬送樋(金属溶湯搬送体)1の搬送路(流通路)1a中を、矢印AR方向に、図中右側にある溶解炉等の金属溶湯源(図示せず)から図中左側にある鋳造装置等の搬送先装置(図示せず)に向けて、溶湯搬送樋1の傾きに起因する重力と、フィルター装置4によるローレンツ力Fと、の合力により流れる。このときの流れる速度は、前記ローレンツ力Fにより調節可能である。つまり、それまでよりも速度を落とすことなく、あるいはそれまでよりもさらに加速、減速されつつ、フィルター3を通過させることができる。この際、金属溶湯Mが前記ローレンツ力Fによって付勢されるため、あるいは、フィルター3自体の構造に基づいて、不純物粒子はフィルター3の厚さの全般にわたってトラップされる。いずれにしても、このようにして、金属溶湯M中から不純物が除去され、次段の搬送先装置に送られる。なお、図1(b)におけるFLは、この金属溶湯浄化装置により処理しようとする金属溶湯Mの液面の高さの一例を示している。
【0035】
より詳しくは、特に図1(a)から分かるように、溶湯搬送樋1の途中に能動的な、つまり、金属溶湯の駆動能力を有するフィルター装置4が設置されている。このフィルター装置4は、溶湯搬送樋1の内部に設けられる内部部材4Aと、外部に設けられる外部部材4Bと、前記内部部材4Aに電流Iを供給する電源装置8と、を有する。このフィルター装置4は、前記内部部材4Aと前記外部部材4Bとの協同により得られるローレンツ力Fで、金属溶湯Mを、図1(a)の矢印AR方向に(あるいはその逆の方向に)、駆動可能としたものである。
【0036】
前記内部部材4Aは、特に図1(b)から分かるように、着脱可能に且つ密着状態に搬送路1a内に埋め込まれるほぼチャンネル鋼型の電極体6と、この電極体6内にさらに着脱可能に設置されるほぼ板状の前記フィルター3と、を有する。前記電極体6は当然導電性を有する材料で構成される。例えば、前記電極体6を構成する導電材としては、黒鉛やホウ化チタン(TiB)等の導電性の他に耐熱性、耐火性をも兼ね備えた材料を採用することができる。また、前記フィルター3はセラミックス等の非磁性材によって構成されている。このフィルター3の平面図及び側面説明図は図6(a)、(b)に示される。
【0037】
前記電極体6は、特に図1(b)からわかるように、幅方向に対向する一対の側壁(電極)6a、6bを有する。これらの一対の側壁(電極)6a、6bには電源装置8が接続されている。この電源装置8は、電流値及び電圧値が可変な直流電流源及び交流電流源として機能可能に構成されている。直流電流源としては、極性も切り替え可能に構成されている。また、パルス電流つまり瞬間的に大電流を流し得るように構成することもできる。このパルス電流は、後述するように、それまでとは逆向きに電流を流してローレンツ力の向きを変えて、一旦フィルターにトラップされた不純物粒子をフィルターから除去、離脱させる際に有用である。交流電流源としては、周波数も可変に構成されており、例えば、1−5Hz等の交流電流を供給可能とされている。
【0038】
前記電極体6は、上述したところからも分かるように、フィルター3を支持するいわゆるフィルター支持体としての機能も備える。電極体6は、前述の通り、特に図1(b)から分かるように、導電材により、横断面がほぼU字型のいわゆるチャンネル綱型に構成されている。この電極体6の内部空間に対して前記フィルター3が着脱可能に収納されている。これにより、前記フィルター3は、所定期間使用後等に交換可能である。
【0039】
電極体6は、金属溶湯Mの有無によって、自動的に、電流Iの流路を切り替え得る(バイパスし得る)ようにするため、アルミニウム等の対象とする金属溶湯の電気抵抗値よりも大きな電気抵抗値を有する材料で構成される。つまり、予め、対象とする全ての金属溶湯Mの種類を特定し、それら全ての金属溶湯Mの電気抵抗値よりも大きな電気抵抗値の材料を選択しておけば良い。これにより、例えば、図1(b)の液面FLで示すように、溶湯搬送樋1中を十分の金属溶湯が流れているとき(つまり、溶湯搬送樋1に金属溶湯が十分存在しているとき)には、電流Iは、電気抵抗値の大小に応じて、結果的に図1(c)のような流路(パス1)を流れる。
【0040】
より詳しくは、例えば、前記電源装置8が直流電源装置として機能し、端子8aが正端子、端子8bが負端子である場合には、電流Iは、正の端子8aから出て、電極体6の一方の側壁(電極)6aの上部に至り、その後、この側壁(電極)6aよりも電気抵抗値の小さな、前記フィルター3内に存在している、金属溶湯M中に流れ込み、金属溶湯M中を図中左方向に流れ、この後他方の側壁(電極)6bの上部に至り、やがて負の端子8bから電源装置8に戻る。なお、図1(c)においては、図を見やすくするために、フィルター3の図示は省略している。
【0041】
前記外部部材4Bは、特に図1(b)から分かるように、前記溶湯搬送樋1の外部下方で且つ内部部材4Aと上下に対向する位置に、配置されている。外部部材4Bは、実質的には磁場装置であり、永久磁石又は電磁石で構成することができる。この外部部材(磁場装置)4Bは、上部がN極に且つ下部がS極(又はこれとは逆に上部をS極に、下部をN極に)磁化されている。これにより、外部部材(磁場装置)4Bからの磁力線MLは、特に図1(c)から分かるように、溶湯搬送樋1、電極体6を図中下から上に貫通して、電極体6内の金属溶湯Mを貫くこととなる。この磁力線MLは先に説明した図1(c)中を横向き(左方向)に走る電流Iと交差することになる。これにより、金属溶湯Mには、ローレンツ力Fが働き、図1(a)に示すように、金属溶湯Mは矢印ARに沿って駆動されることになる。ただし、ほとんどの不純物粒子には、それは非導電性であるため、ローレンツ力Fが加わることがない。よって、例えば図1(a)において説明すると、フィルター装置4の上流側において、金属溶湯Mのみにローレンツ力Fが掛かり、ほとんどの不純物粒子にはローレンツ力Fが加わらない。このため、フィルター3が存在することと相俟って、実質的に金属溶湯Mのみがフィルター装置4を通過することになる。つまり、ローレンツ力Fを加えてもその力Fはほとんどの不純物粒子には加わらない。このため、ローレンツ力Fを作用させるようにしているとはいえ、ほとんどの不純物粒子までもがローレンツ力Fによってフィルター装置4を通過するのは実質的に避けられる。
【0042】
このローレンツ力Fにより金属溶湯Mは、フィルター3内に、圧の掛かった状態で押し込まれるようにして流入する。これにより、金属溶湯M中の不純物粒子はフィルター3の厚さ方向全体に実質的に均等に分散した状態にトラップされる。これにより、フィルター3は目詰まりが遅くなり、より長期間にわたり交換することなく使用できるようになる。
【0043】
上記の金属溶湯浄化装置の上記の動作及びその他の動作についてより詳しく説明する。
【0044】
特に図1(c)から分かるように、電源装置8からの電流Iが金属溶湯Mを図中横向きに走り、磁場装置4Bからの磁力線MLと交差する。これにより得られるローレンツ力Fが、金属溶湯Mを図1(a)に示す矢印AR方向に駆動する。このローレンツ力Fにより、金属溶湯Mはフィルター3中に圧力を掛けて押し込まれ、金属溶湯M中の不純物粒子はフィルター3の厚さ方向の全般にわたりトラップされる。これにより、フィルター3全体に不純物粒子のトラップが行われるようにしてので、いわゆる目詰まりするのを遅らせることができる。これにより、フィルター3全体が目詰まり状態となるまでの時間を長くして、より長時間の運転継続が可能となる。
【0045】
また、目詰まり後にあっては、フィルター3に、それを電極体6(溶湯搬送樋1)に装着したままで、電流Iを上記とは逆に流すこと等により、ローレンツ力Fを矢印ARとは逆方向に加えることで、金属溶湯をそれまでとは逆流させて、フィルター3から不純物粒子を離脱、除去させて、フィルター3をいわゆる再生することができる。あるいは、フィルター3のみを又はフィルター3を電極体6と一緒に溶湯搬送樋1から取り外し、別置きのタンク又は容器等(収納体)に設けた、実質的に図1(a)、(b)のような構成の再生装置に組み込むことにより、上記のようにして、フィルター3から不純物粒子を除去してフィルター3を再生することができる。
【0046】
このフィルター装置4による金属溶湯Mの駆動についてさらに詳しく説明する。
【0047】
電源装置8から流れる電流Iの値を大小調節することにより、ローレンツ力Fの大きさを加減調節して、フィルター3を通過する金属溶湯Mの速度を調節することができる。例えば、前記電流Iの値を大きくすれば、ろ過速度を上げて、ろ過に要する時間を短縮することができる。また、ローレンツ力Fによりろ過能力を向上させたため、同じろ過能力の従来装置に比べれば小型化できる。
【0048】
前記電流Iの値の調節は各種のパラメータに応じて行うことができる。即ち、例えば、対象とする金属溶湯Mの種類や温度等に起因する金属溶湯Mの粘性、天候や気候に起因する溶湯搬送樋1の温度、溶湯搬送樋1における金属溶湯Mの流れ易さ、フィルター3の材質、フィルター3の編み目の大き、フィルター3の厚さ、等の各種のパラメータが変化した場合においても、前記電流Iの値を調節することにより、金属溶湯Mがフィルター3を通過する速度を、一定に維持したり、早めたり、遅めたりする、各種の調節が可能である。
【0049】
金属溶湯Mに加えるローレンツ力Fの大小を調節するには、前記電流Iの値を変えることの他、磁場装置4Bの磁場強度を変えることによっても可能である。即ち、磁場装置4Bが永久磁石である場合には磁場強度の異なる別の磁場装置4Bに交換することによって可能である。また、図1(c)から分かるように、溶湯搬送樋1と永久磁石製の磁場装置4Bとの相対的な上下の距離を調節可能な構成としておき、必要に応じて調節することによっても可能である。また、磁場装置4Bとして電磁石を用いた場合には供給電流を変えることによって可能である。
【0050】
また、本発明の実施形態の金属溶湯浄化装置を、本運転する前に試験運転をして、試験運転後のフィルター3を観察し、不純物粒子のフィルター3へのトラップ状態、つまり、不純物粒子がフィルター3のどの厚さまで入り込んでいるかを知得し、これにより適切な電流値を帰納的に得て、この後に本運転をすることもできる。
【0051】
また、電源装置8における端子8a、8bの極性を切り替えれば、図1(a)において、金属溶湯Mの流れる方向を、矢印ARとは逆向きにすることができる。これは、後述するように、フィルター3への不純物粒子のトラップをフィルター3の厚さ方向全般に均一なトラップを行わせるためや、使用後のフィルター3を再生する時等に採用可能である。
【0052】
さらに、電源装置8を、交流電流装置として用いれば、金属溶湯Mは、図1(a)から分かるように、矢印ARとその逆方向に、交互に流れあるいは流れようとする。交流電流の周波数を例えば1−5Hz等に設定すれば、金属溶湯Mはあたかも振動するような動きをする。この後、ローレンツ力Fを矢印ARのものとすれば、金属溶湯M中の不純物粒子をフィルター3のより厚さの深いところまで侵入させてトラップさせることができる。また、前記矢印ARと反対方向にローレンツ力Fを加えるようにすれば、一旦フィルター3にトラップされた不純物をフィルター3から離脱、除去をより容易にさせてクリーニングすることもできる。この際、離脱させた不純物粒子を多く含む金属溶湯Mは適宜採取、廃棄すればよい。このように、交流電流を流すことにより、不純物粒子をフィルター3のより深くにトラップさせ、あるいは、一旦トラップされた不純物粒子のフィルター3からの離脱を容易に行わせることができる。このようなクリーニングの際には電源装置8からの電流としては、ろ過の際の電流よりもより大きな電流、例えば2−3倍位の電流を流せばよい。さらには、パルス電流とすればより有効である。
【0053】
フィルター装置4の運転により、不純物粒子がフィルター3の全般にトラップされた後には、沢山の不純物粒子がトラップされた古いフィルター3を電極体6から取り外し、新しいフィルター3に交換すれば良い。または、フィルター3をそれを収納支持した電極体6と一緒に溶湯搬送樋1から取り外し、交換することもできる。一定期間の運転によりフィルター3だけでなく、電極体6も消耗することもあり得るからである。
【0054】
また、上述のように、フィルター3等の交換に代えて、トラップさせ終えた古いフィルター3を前記電極体6に装着したままの状態で、再生させて再度使用可能とすることもできる。つまり、フィルター3を電極体6(溶湯搬送樋1)に設置したままの状態で上記のような動作をさせれば、フィルター3からそれにトラップしていた不純物粒子を取り除くことができる。
【0055】
上述の本発明の実施形態の金属溶湯浄化装置は、溶湯搬送樋1中の金属溶湯Mの量が減ってきた場合(金属溶湯Mの液面LFの高さが下がってきた場合、図1(b)参照)も、安全に運転可能である。よって、例えば、モールドを連続運転モードで使用した場合の他、間欠運転モードで使用した場合にも使用可能である。つまり、間欠運転モード時においては、その都度、溶湯搬送樋1の搬送路1a中に金属溶湯Mが徐々に少なくなり、前記液面FLが下がり、最終的には全く存在しなくなる。金属溶湯Mが全く存在しなくなった場合にあっても、図1(d)から分かるように、電流Iは自動的に流路を図示の流路(パス2)に切り替える。つまり、電流Iは、電極6a、6b間を、電極体6の底壁6cを介して、適正に流れ、放電が起きることはない。よって、とりたてて安全運転のための手段を採用しなくても、大きな事故等を引き起こすことはなく、安全に動作させることが可能である。特に、金属溶湯Mの温度は1000℃位のものも少なくないため、作業員の安全の観点から、この特徴は現場においては極めて有用である。
【0056】
また、図1(e)から分かるように、電極体6の底面に少しの金属溶湯Mが残った場合には、電流Iは、図示の如く、底壁6cの一方から残存の金属溶湯M1中に流れ、再び底壁6cの他方へ流れる。残存の金属溶湯M1中の電流Iと前記磁場装置4Bからの磁力線MLとが交差してローレンツ力が発生する。これにより、その残存の金属溶湯M1も、溶湯搬送樋1が傾斜していることと相俟って、次段の搬送先装置へ向けて確実に搬送される。
【0057】
前記した金属溶湯浄化装置に用いるフィルター3は、市販のものを用いることができ、装置の構成部材の選択の幅が広いだけでなく、コストも安価に抑えることができる。
【0058】
前記フィルター3としては、前述のように、例えば、図6(a)、図6(b)に示すような、汎用の、セラミックス製の1層のフィルター3を用いることができる。
【0059】
また、フィルターとして、図7(a)、図7(b)に示すような多層型のフィルター3Aを用いることもできる。これらの図では3層型としているが特には3層に限定されるものではない。図7(a)、図7(b)におけるフィルター3Aでは、1層目を金属溶湯流入側の粗目フィルターユニット3a、2層目を真ん中の中目フィルターユニット3b、3層目を流出側の細目フィルターユニット3cの3層構造としている。つまり、フィルター3Aを、流入側から流出側に向かって徐々に編み目の大きさが小さくなる複数のフィルターユニットで構成することができる。このようなフィルター3Aを用いれば、不純物の粒子の小さいものは1層目及び2層目を通過し3層目で、中ぐらいのものは1層目を通過し2層目で、大きいものは1層目で、それぞれトラップされる。これにより、ローレンツ力Fを加えることと相俟って、フィルター3Aの厚さ全体でより均一に不純物粒子をトラップさせて、より高精度に不純物の取り除かれた金属溶湯Mを次段の例えばモールド等に送ることができる。
【0060】
また、多層型のフィルターにあっても、編み目の大きさは、必ずしも、上記のように、フィルターの一面から他面に向かって、編み目を大きくする必要はない。場合によっては、編み目の大きさは各層(各ユニット)において自由に設定することもできる。
【0061】
なお、上述のように、上記の多層構造のフィルター3Aにあっても、十分に不純物をトラップしたのちにはいわゆる目詰まり状態となるのが避けられない。この際には、本発明の実施形態の装置では、フィルター3Aであっても、不純物を除去して目詰まり状態を解消するいわゆる再生動作を行うことができる。この再生は、1層構造のフィルター3と同様に、ローレンツ力Fにより、例えば、金属溶湯Mをそれまでとは逆向きにフィルター3Aに流すことにより行われる。つまり、前述のように、不純物は粒子の大きさに応じて、細目フィルターユニット3c、中目フィルターユニット3b、粗目フィルターユニット3aにトラップされている。このため、この再生作業においては、金属溶湯Mをフィルター3Aに逆向きに流すことにより、小径、中径、大径のいずれの不純物粒子も確実にフィルター3Aの各フィルターユニット3a、3b、3cの編み目を逆向きに通過してフィルター3Aから取り除かれる。
【0062】
以上の説明では、本発明を溶湯搬送樋1に適用した例で説明したが、適用する対象は溶湯搬送樋1にこだわるものではない。例えば、金属溶湯Mを浄化したり、一旦目詰まりしたフィルターを再生するための容器等(収納体)を別に配置し、本発明を適用することもできる。
【0063】
以上には第1の実施形態の金属溶湯浄化装置について説明したが、これらの説明の動作、作用、利点等は以下に説明する第2の実施形態以下の実施形態の金属溶湯浄化装置についても、技術的な矛盾のない限りにおいて、同様に当てはまる。また、第2の実施形態以下の各実施形態での説明も、技術的な矛盾がない限り、上位の実施形態に適用可能である。
【0064】
図2(a)及び図2(b)は、本発明の第2の実施形態の装置の金属溶湯浄化装置の平面図及び図2(a)のII(b)−II(b)線に沿った断面説明図である。
【0065】
この第2の実施形態が前記第1の実施形態と異なる点は、非磁性材製のフィルター3として2枚のフィルター3(1)、3(2)を用いたこと、2枚のフィルター3(1)、3(2)を電極体6に装着するのではなく、2枚のフィルター3(1)、3(2)で電極体6を隙間を介して挟んだこと、それにより後述のように一対の側壁(電極)6a、6bを幅方向には互いに金属溶湯Mのみを介して直接向かい合わせたこと、にある。その他の構成は第1の実施形態とほぼ同様である。よって構成についての詳しい説明は省略する。
【0066】
この第2の実施形態においては、電極体6の幅方向に向かい合う一対の電極6a、6b間にはフィルターは存在させていない。このため、一対の側壁(電極)6a、6bは幅方向には互いに金属溶湯Mのみを介して直接向かい合うことになる。このため、金属溶湯Mを通じて一方の電極6aから他方の電極6bへ流れる電流Iは、効率良く高密度で流れることとなる。本発明者の実験によれば、図1(a)等に示す例に比べて、一対の電極6a、電極6b間に流れる電流Iは、実験前の予想を遙かに超えるほど大きなものとして得られた。これにより、電流Iと磁力線MLとの交差により得られるローレンツ力Fも予想を超えるより大きなものとして得ることができた。このローレンツ力Fは金属溶湯Mの流れに対し順方向(矢印AR)及び逆方向のいずれの方向のものとしても得ることができ、いずれの方向のものとして得た場合も、上述のように、それぞれ有用なものとして働かせることができる。
【0067】
つまり、この第2の実施形態の装置は、前述の第1の実施形態の装置の場合と同様に動作し、ローレンツ力Fによって、フィルター3(1)、3(2)への不純物粒子の均一なトラップやフィルター3(1)、3(2)からの離脱による浄化等を行わせることができるのは当然である。この第2の実施形態における各フィルター3(1)、3(2)としても、図6(a)、図6(b)のフィルター3の他に、図7(a)、(b)のような複数のフィルターユニットからなるフィルター3Aを用いることができるのも当然である。
【0068】
さらに、この第2の実施形態においては、2枚のフィルター3(1)、3(2)を用いている。このため、例えば一定時間使用した後に、フィルター3(1)とフィルター3(2)の互いの位置を交換することもできる。これにより、各フィルター3(1)、3(2)への不純物粒子のトラップ状態の均一化が図られ、特別フィルターの浄化処理をしなくてもより長期間使用可能な場合も生じる。また、2つのフィルター3(1)、3(2)のうちのより多くの不純物粒子をトラップした方のみを新しいフィルターに交換することもできる。
【0069】
図3(a)及び図3(b)は、本発明の第3の実施形態の金属溶湯浄化装置の平面図及び図3(a)のIII(a)−III(a)線に沿って切断した端面説明図である。
【0070】
この第3の実施形態が前記第1の実施形態と異なる点は、図1(d)等に示すU字型の一体の電極体6に代えて別体の2本の電極6A(1)、6A(2)を用いたこと、非磁性のフィルター3Bの幅方向両端に前記電極6A(1)、6A(2)を隙間をもって収納する電極収納空間11(1)、11(2)を形成したこと等にある。このフィルター3Bは溶湯搬送樋1に対して着脱可能に収納される。その他の構成は第1の実施形態等とほぼ同様である。よって構成についての詳しい説明は省略する。
【0071】
前記フィルター3Bの平面図を図8(a)に、その側面図を図8(b)に示す。
【0072】
また、前記フィルター3Bとして複数のフィルターユニットからなるフィルター3B(1)用いることができる。フィルター3B(1)の平面図を図9(a)に、その右側面図を図9(b)に示す。この例は、フィルター3B(1)を、図7(a)、図7(b)に示すのと同様の、多層型のフィルターとして構成したものである。このフィルター3B(1)は、幅方向両端に電極収納空間11(1)、11(2)を備えることの他は、図7(a)、図7(b)のフィルター3と同様の構成であり、よって詳しい説明は省略する。
【0073】
この第3の実施形態においては、金属溶湯Mの存在下において、電源装置8から電流Iを流せば、第1の実施形態と同様に、電流Iは、一方の電極6A(1)から、フィルター3B、3B(1)の編み目に入り込んでいる金属溶湯Mを介して、他方の電極6A(2)へ流れる。これによる動作等は前記第1の実施形態と同様であるため詳しい説明は省略する。
【0074】
この第3の実施形態は、電極体を備えない分、構造が簡単で、製造、メンテナンス等が容易で、安価なものとして得ることができる。
【0075】
図4(a)及び図4(b)は、本発明の第4の実施形態の装置の金属溶湯浄化装置の平面図及び図4(a)のIV(a)−IV(a)線に沿った断面説明図である。
【0076】
この第4の実施形態が前述の第1の実施形態と異なる点は、フィルター本体3Ccを導電体材料によって構成したこと、このフィルター本体3Ccの電気抵抗値は対象とする金属溶湯の電気抵抗値よりも小さくしたこと、フィルター本体3Ccを幅方向左右のフィルター支持枠(電極)3Ca、3Cbで支持してフィルター3Cとしたこと、フィルター3Cを溶湯搬送樋1に着脱可能に収納したこと、等にある。この第4の実施形態においても、その他の構成は第1の実施形態等とほぼ同様である。よって詳しい説明は省略する。
【0077】
前述のように、前記フィルター3Cは、図10(a)の平面図及び図10(b)の側面図から分かるように、幅方向両端の一対の前記フィルター支持枠(電極)3Ca、3Cbと、それらによって支持された前記フィルター本体3Ccと、を有する。フィルター支持枠3Ca、3Cb及びフィルター本体3Ccはともに耐熱性、耐火性を有する導電性を有する材料で構成される。
【0078】
この第4の実施形態においては、電流Iは、金属溶湯Mの有無によって以下のように流れる。
【0079】
まず、金属溶湯Mが存在しないときには、例えば、電源装置8の一方の正の端子8aから、フィルター3Cの一方のフィルター支持枠3Ca、フィルター本体3Cc、他方のフィルター支持枠3Cbを介して、他方の負の端子8bに戻る流路を流れる。この際、フィルター本体3Ccはジュール熱により自己発熱し、金属溶湯Mの温度低下、固化を防ぐ等の機能を有することとなる。
【0080】
また、金属溶湯Mが存在するときは、金属溶湯Mはフィルター本体3Ccの各小さい編み目に位置する。このため、電流Iは、フィルター本体3Ccの電気抵抗値よりも金属溶湯Mの電気抵抗値が小さいことに起因して、フィルター本体3Ccを構成する導電性部材から編み目中の金属溶湯Mへ流れ、次いで再び前記フィルター本体3Ccの導電性部材に至り、これを順次繰り返して、一方のフィルター支持枠3Caから他方のフィルター支持枠3Cbへ至る。
【0081】
前記フィルター3Cの目の大きさ(目開き)は、例えば、0.1−0.2mmΦとすることができる。これにより、前記電流Iの流れの過程で、微小空間である前記編み目に存在する金属溶湯Mに電流Iが集中するために電流密度が上がり、結果として金属溶湯の単位重量当たりの電磁力(ローレンツ力)が大きくなり、フィルター3Cの詰まりの抑制、逆洗浄効果の向上等の利点が得られる。
【0082】
つまり、金属溶湯Mの存在下においては、電流Iは、上述のように、フィルター本体3Ccの編み目に存在する金属溶湯Mを流れるが、この電流Iと、下方の磁場装置4Bからの磁力線MLとが交差する。これによりローレンツ力Fを発生させる。このローレンツ力Fにより、前述の第1の実施形態の場合と同様に、金属溶湯Mが矢印ARのように駆動される。その他の動作は第1の実施形態等の場合とほぼ同様であるので詳しい説明は省略する。
【0083】
図5(a)及び図5(b)は、本発明の第5の実施形態の装置の金属溶湯浄化装置の平面図及び図5(a)のV(b)−V(b)線に沿った断面説明図である。
【0084】
この第5の実施形態では、前述の第2の実施形態と同様に、フィルターとして非磁性材製の2枚のフィルター3(1)、3(2)を用いている。第2の実施形態と異なる点は、第2の実施形態ではほぼU字型の電極体6を用いているが、第5の実施形態では、互いに別体の一対の電極6a、6bを用いた点にある。その他の構成は第2の実施形態とほぼ同様である。よって詳しい説明は省略する。
【0085】
この第5の実施形態における動作は、実質的に第2の実施形態と同様である。即ち、第5の実施形態においては、一対の電極6a、6bが金属溶湯Mのみを介して互いに直接的幅方向に対向する。このため、これらの電極6a、6b間には高密度に電流Iが流れる。その他の動作は第2の実施形態の場合とほぼ同様であるので詳しい説明は省略する。
【0086】
以上に説明した各実施形態には以下のような利点等が得られる。
(1) 第1の実施形態は、間欠溶湯浄化(バッチ式)にも対応できる。スパークが起きないからである。
(2) 大きな不純物除去能力が得られる。特に、図7(a)、(b)の多層のフィルター3Aの場合は顕著である。
(3) フィルターの交換を容易に行うことができる。
(4) フィルターの寿命を大幅(例えば、従来比2−3倍等)に伸ばすことができる。これにより、ランニングコストを大幅に削減できる。
(5) フィルター交換に起因するダウンタイムを大幅に減少することができる。
(6) 第4の実施形態においては、事前にフィルター本体3Ccに通電して加熱しておけば自己発熱するため、フィルター本体3Ccの余熱の必要がない。
(7) 第4の実施形態においては、金属溶湯Mの温度低下が抑制できる。
(8) フィルターの繰り返し使用が可能となる。
(9) 図7(a)、図7(b)、図9(a)、図9(b)に示す編み目の大きさの異なる多層のフィルターを用いれば、トラップ対象とする不純物粒子の粒径のマージンを広げることができる。
(10)チャンネル鋼型の電極体を使用した場合において、本運転前に予め通電しておけば、電極体自体が加熱発熱により高温となるため、その後に急に高温の金属溶湯が流れてきてもヒートショックは起きず、電極破損が起きるのを防ぐことができる。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図9(a)】
図9(b)】
図10(a)】
図10(b)】