【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの分解組立方法において、前記ガスタービンは、ロータディスクに対して軸方向における一方側に設けられるシール板と、前記ロータディスクに対する前記シール板の前記ロータディスクの径方向の移動を規制するシール板移動規制部と、を備え、前記分解組立方法は、前記軸方向における他方側から前記シール板移動規制部を操作することで、前記シール板移動規制部が前記シール板の前記径方向の移動を規制しないシール板非規制状態と、前記シール板移動規制部の少なくとも一部が前記シール板から前記軸方向における前記他方側に向けて突出して前記シール板の前記径方向の移動を規制するシール板規制状態とを切り替えるシール板規制状態切替ステップを備える。
【0014】
上記(1)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、シール板規制状態切替ステップにおいて、軸方向における他方側すなわちシール板に対してシール板移動規制部の突出方向側(軸方向においてシール板に対してロータディスク側)からシール板移動規制部を操作することで、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替えられる。
【0015】
このため、ガスタービンの分解時や組立時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側から、シール板移動規制部の状態がシール板規制状態であるかシール板非規制状態であるかを目視により確認しながら、シール板規制状態とシール板非規制状態とを切り替えることができる。これにより、シール板規制状態とシール板非規制状態とをロータディスクを挟んでシール板と反対側から適切に切り替えることが容易となる。
【0016】
したがって、ガスタービンの分解時又は組立時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からシール板と動翼との係合状態と非係合状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0017】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記軸方向における前記一方側は前記軸方向における燃焼ガス流れの下流側であり、前記軸方向における前記他方側は前記軸方向における燃焼ガス流れの上流側である。
【0018】
上記(2)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、ガスタービンの分解時や組立時において、ロータディスクの下流側に設けられたシール板組立体について、ロータディスクの上流側から、シール板移動規制部の状態がシール板規制状態であるかシール板非規制状態であるかを目視により確認しながら、シール板規制状態とシール板非規制状態とを切り替えることができる。これにより、ロータディスクの下流側に設けられたシール板組立体について、ロータディスクの上流側からシール板規制状態とシール板非規制状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0019】
したがって、ガスタービンの分解時又は組立時において、ロータディスクの下流側に設けられたシール板組立体について、ロータディスクの上流側からシール板と動翼との係合状態と非係合状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0020】
また、ガスタービンのケーシングが当該ロータディスクの上流側に開口部(例えば燃焼器の取り付け開口や、作業員の出入り口)を有する構成においては、ガスタービンのケーシングを取り外すことなくロータディスクに対する動翼の取り付け又は取外しをロータディスクの上流側から行うことが可能となる。このため、ガスタービンのメンテナンス性が向上する。
【0021】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板規制状態切替ステップでは、互いに隣接する二つの動翼のプラットフォームに対して前記径方向の内側において該二つの動翼の間を通って前記シール板移動規制部を操作することで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0022】
上記(3)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、互いに隣接する二つの動翼のプラットフォームに対して前記径方向の内側において該二つの動翼の間には、後述する理由から、比較的広い空間を確保できる場合がある。このため、この比較的広い空間を通ってシール板移動規制部を操作することで、シール板非規制状態とシール板規制状態との切り替え作業が容易となる。
【0023】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記ロータディスクは、前記軸方向に沿って延在する貫通口を含み、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記貫通口を介して前記シール板移動規制部を操作することで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0024】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板移動規制部と前記ロータディスクとが係合しない状態と、前記シール板移動規制部と前記ロータディスクとが係合する状態とを前記シール板移動規制部を前記軸方向に沿って移動させて切り替えることで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0025】
上記(5)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、シール板規制状態切替ステップにおいて、シール板移動規制部を軸方向に沿って移動させることで、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替えられる。
【0026】
このため、例えばガスタービンロータのターニング中における振動によって、又は、ガスタービンロータのターニング中におけるロータディスクの回転の加減速に起因してロータディスクの外周面とシール板移動規制部との間に生じる摩擦力によって、上記シール板移動規制部にその軸方向と異なる方向の力が作用しても、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わりにくい。
【0027】
したがって、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制することができる。
【0028】
また、シール板移動規制部とロータディスクとの係合状態及び非係合状態を切り替えることによりシール板非規制状態とシール板規制状態とを切り替えるため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0029】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板移動規制部と前記ロータディスクとが前記軸方向において重ならない位置と、前記シール板移動規制部と前記ロータディスクとが前記軸方向において重なる位置との間で前記シール板移動規制部を移動させることで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0030】
上記(6)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0031】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板移動規制部に設けられた雌ねじ又は雄ねじの一方に、前記シール板に設けられた前記雌ねじ又は前記雄ねじの他方が螺合した状態で、前記シール板移動規制部を回動させることで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0032】
上記(7)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、雄ねじと雌ねじとが螺合した状態でシール板移動規制部を回動させることでシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わるため、シール板移動規制部に軸方向の力が作用しても、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わりにくい。このため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0033】
また、シール板移動規制部を回動させない限りシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わらないため、例えばシール板非規制状態を維持したままシール板を径方向に移動させるといった作業が容易となる。
【0034】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れか1項に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板移動規制部を付勢する付勢部の付勢力に抗して前記シール板移動規制部を前記軸方向に沿って移動させることで、前記シール板規制状態を前記シール板非規制状態に切り替える。
【0035】
上記(8)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、付勢部の付勢力より弱い力がシール板移動規制部に作用しても、シール板規制状態がシール板非規制状態に切り替わらない。このため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0036】
また、上記(8)に記載のガスタービンの分解組立方法が上記(7)に記載の分解組立方法である場合には、ねじの緩みを付勢部の付勢力によって抑制することができるため、この点においても、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0037】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板移動規制部と前記シール板とが係合しない状態と、前記シール板移動規制部と前記シール板とが係合する状態とを切り替えることで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0038】
上記(9)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、シール板移動規制部とシール板との係合状態及び非係合状態を切り替えることによりシール板非規制状態とシール板規制状態とを切り替えるため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0039】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板移動規制部は前記軸方向に沿って延在するシール板落ち止めピンであり、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板落ち止めピンの先端と前記シール板に形成された凹部とが係合しない状態と、前記シール板落ち止めピンの先端と前記シール板に形成された凹部とが係合する状態とを切り替えることで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0040】
上記(10)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、シール板落ち止めピンを凹部に対してその軸線方向に沿って直線的に移動させることでシール板非規制状態とシール板規制状態とを切り替えることができるため、シール板非規制状態とシール板規制状態との切り替え作業が容易である。
【0041】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板移動規制部はシール板落ち止めピースであり、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板に形成された凹部に装着された前記シール板落ち止めピースを前記凹部から取り外すことにより、又は、前記凹部に前記シール板落ち止めピースを装着することにより、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0042】
上記(11)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、シール板の凹部に対するシール板落ち止めピースの取り外し又は装着によってシール板非規制状態とシール板規制状態とを切り替えるため、シール板非規制状態とシール板規制状態との切り替え作業が容易である。
【0043】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記ロータディスクに設けられた雌ねじに前記シール板移動規制部に設けられた雄ねじが螺合した状態で、前記シール板移動規制部を回動させることで、前記シール板非規制状態と前記シール板非規制状態とを切り替える。
【0044】
上記(12)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、雄ねじと雌ねじとが螺合した状態でシール板移動規制部を回動させることでシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わるため、シール板移動規制部に軸方向の力が作用しても、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わりにくい。このため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0045】
また、シール板移動規制部を回動させない限りシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わらないため、例えばシール板非規制状態を維持したままシール板を径方向に移動させるといった作業が容易となる。
【0046】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板と前記シール板移動規制部とは一体的に構成されており、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板移動規制部を塑性変形させることで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0047】
上記(13)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、シール板移動規制部の塑性変形によってシール板非規制状態とシール板規制状態とを切り替えるため、簡素な構成のシール板組立体について、シール板非規制状態とシール板規制状態との切り替え作業を容易に行うことができる。
【0048】
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板規制状態切替ステップでは、前記シール板移動規制部に設けられた雄ねじに、前記シール板を貫通する貫通孔に設けられた雌ねじが螺合した状態で、前記シール板移動規制部を回動させることで、前記シール板非規制状態と前記シール板規制状態とを切り替える。
【0049】
上記(14)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、雄ねじと雌ねじとが螺合した状態でシール板移動規制部を回動させることでシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わるため、シール板移動規制部に軸方向の力が作用しても、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わりにくい。このため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0050】
また、シール板移動規制部を回動させない限りシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わらないため、例えばシール板非規制状態を維持したままシール板を径方向に移動させるといった作業が容易となる。
【0051】
(15)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(14)の何れか1項に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板を前記径方向に移動させることで、前記シール板が動翼の前記軸方向に沿った移動を規制しない動翼非規制状態と、前記シール板が前記動翼の前記軸方向に沿った移動を規制する動翼規制状態とを切り替える動翼規制状態切替ステップを更に備える。
【0052】
上記(15)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、上記(1)に記載のシール板規制状態切替ステップを含むため、シール板規制状態とシール板非規制状態とをロータディスクを挟んでシール板と反対側から適切に切り替えることが容易となる。したがって、ガスタービンの分解時又は組立時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側から動翼非規制状態と動翼規制状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0053】
(16)幾つかの実施形態では、上記(15)に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記シール板のうち前記軸方向における前記他方側を向く面には、治具が係合可能な治具係合用凹部又は治具係合用凸部が形成されており、前記動翼規制状態切替ステップは、前記治具係合用凹部又は前記治具係合用凸部に前記治具を係合させた状態で前記シール板を前記径方向に移動させることで、前記動翼非規制状態と前記動翼規制状態とを切り替える。
【0054】
上記(16)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、動翼規制状態切替ステップにおいて、治具によって容易にシール板を径方向に移動させることができる。したがって、ガスタービンの分解時又は組立時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側から動翼非規制状態と動翼規制状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0055】
(17)幾つかの実施形態では、上記(15)又は(16)に記載のガスタービンの分解組立方法において、前記動翼と前記ロータディスクとが嵌合しない動翼非嵌合状態と、前記動翼と前記ロータディスクとが嵌合する動翼嵌合状態とを切り替える動翼嵌合状態切替ステップを更に備える。
【0056】
上記(17)に記載のガスタービンの分解組立方法によれば、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からの操作のみによって、シール板が動翼の軸方向に沿った移動を規制する動翼規制状態と、動翼とロータディスクとが嵌合しない動翼非嵌合状態とを適切かつ容易に切り替えることができる。
【0057】
(18)本発明の少なくとも一実施形態に係るシール板組立体は、ガスタービンの動翼のためのシール板組立体であって、ロータディスクに対して軸方向における一方側に設けられるように構成されたシール板と、前記ロータディスクに対する前記シール板の前記ロータディスクの径方向の移動を規制するためのシール板移動規制部と、を備え、前記シール板移動規制部は、前記シール板移動規制部の少なくとも一部が前記シール板から前記軸方向における他方側に向けて突出して前記シール板の前記径方向の移動を規制するシール板規制状態と、前記シール板の前記径方向の移動を規制しないシール板非規制状態と、の間で切替可能に構成される。
【0058】
上記(18)に記載のシール板組立体によれば、軸方向における他方側すなわちシール板に対してシール板移動規制部の突出方向側(軸方向においてシール板に対してロータディスク側)からシール板移動規制部を操作することで、シール板非規制状態とシール板規制状態とを切り替えることができる。
【0059】
このため、ガスタービンの分解時や組立時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側から、シール板移動規制部の状態がシール板規制状態であるかシール板非規制状態であるかを目視により確認しながら、シール板規制状態とシール板非規制状態とを切り替えることができる。これにより、シール板規制状態とシール板非規制状態とをロータディスクを挟んでシール板と反対側から適切に切り替えることが容易となる。
【0060】
したがって、ガスタービンの分解時又は組立時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からシール板と動翼との係合状態と非係合状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0061】
(19)幾つかの実施形態では、上記(18)に記載のシール板組立体において、前記軸方向における一方側は前記軸方向における下流側であり、前記軸方向における他方側は前記軸方向における上流側である。
【0062】
上記(19)に記載のシール板組立体によれば、ガスタービンの分解時や組立時において、ロータディスクの下流側に設けられたシール板組立体について、ロータディスクの上流側から、シール板移動規制部の状態がシール板規制状態であるかシール板非規制状態であるかを目視により確認しながら、シール板規制状態とシール板非規制状態とを切り替えることができる。これにより、ロータディスクの下流側に設けられたシール板組立体について、ロータディスクの上流側からシール板規制状態とシール板非規制状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0063】
したがって、ガスタービンの分解時又は組立時において、ロータディスクの下流側に設けられたシール板組立体について、ロータディスクの上流側からシール板と動翼との係合状態と非係合状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0064】
また、ガスタービンのケーシングが当該ロータディスクの上流側に開口部を有する構成においては、ガスタービンのケーシングを取り外すことなくロータディスクに対する動翼の固定又は取外しを行うことが可能となる。このため、ガスタービンのメンテナンス性が向上する。
【0065】
(20)幾つかの実施形態では、上記(18)又は(19)に記載のシール板組立体において、前記シール板は、前記軸方向に沿って延在する雌ねじ又は雄ねじの一方を含み、前記シール板移動規制部は、前記雌ねじ又は雄ねじの一方に螺合する前記雌ねじ又は雄ねじの他方を含む。
【0066】
上記(20)に記載のシール板組立体によれば、雄ねじと雌ねじとが螺合した状態でシール板移動規制部を回動させることでシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わるため、シール板移動規制部に軸方向の力が作用しても、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わりにくい。このため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0067】
また、シール板移動規制部を回動させない限りシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わらないため、例えばシール板非規制状態を維持したままシール板を径方向に移動させるといった作業が容易となる。
【0068】
(21)幾つかの実施形態では、上記(20)に記載のシール板組立体において、前記シール板移動規制部と前記シール板との間に配置された座金を更に備える。
【0069】
上記(21)に記載のシール板組立体によれば、座金によってねじの緩みを抑制することができるため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0070】
(22)幾つかの実施形態では、上記(18)乃至(21)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記シール板移動規制部のうち前記軸方向における他方側の端部は、前記シール板移動規制部を回動させるための治具が係合可能な治具係合部を有する。
【0071】
上記(22)に記載のシール板組立体によれば、治具係合部に治具を係合させてシール板移動規制部を回動させることで、シール板非規制状態とシール板規制状態とを切り替えることができる。
【0072】
(23)幾つかの実施形態では、上記(18)乃至(22)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記シール板移動規制部を前記軸方向における前記他方側に付勢する付勢部を更に備える。
【0073】
上記(23)に記載のシール板組立体によれば、付勢部の付勢力より弱い力がシール板移動規制部に作用しても、シール板規制状態がシール板非規制状態に切り替わらない。このため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0074】
また、上記(23)に記載のシール板組立体が上記(20)に記載のシール板組立体である場合には、ねじの緩みを付勢部の付勢力によって抑制することができるため、この点においても、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0075】
(24)幾つかの実施形態では、上記(23)に記載のシール板組立体において、前記付勢部は、皿ばね、コイルばね、又は板バネを含む。
【0076】
上記(24)に記載のシール板組立体によれば、付勢部として皿ばねを用いる場合、付勢部に亀裂等が生じても軸方向における付勢部の大きさが小さくなりにくいため、シール板移動規制部を比較的安定的に付勢することができる。
【0077】
(25)幾つかの実施形態では、上記(18)乃至(24)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記シール板は、前記径方向に延在する板状部と、前記シール板移動規制部を少なくとも部分的に収容するための収容室を形成する収容室形成部とを含み、前記シール板移動規制部は、前記収容室形成部のうち前記軸方向における前記他方側に形成された開口部から前記シール板移動規制部の一部が突出可能に構成される。
【0078】
上記(25)に記載のシール板組立体によれば、シール板移動規制部を少なくとも部分的に収容する収容室形成部を設けたことにより、シール板のシール性能の低下を抑制しつつ、上記(18)乃至(24)の何れか1項に記載のシール板組立体の奏する効果を得ることができる。
【0079】
(26)幾つかの実施形態では、上記(25)に記載のシール板組立体において、前記収容室形成部は、前記板状部に対して前記軸方向における前記一方側に突出するように構成される。
【0080】
上記(26)に記載のシール板組立体によれば、シール板移動規制部の移動できる空間を確保しつつ、上記(25)に記載のシール板組立体の奏する効果を得ることができる。
【0081】
(27)幾つかの実施形態では、上記(26)に記載のシール板組立体において、前記収容室形成部は、前記ロータディスクの周方向における前記シール板移動規制部が存在する範囲と存在しない範囲の両方において、前記板状部に対して前記軸方向における前記一方側に突出するように構成される。
【0082】
仮に、周方向においてシール板移動規制部が存在する範囲のみ軸方向における一方側に突出するように収容室形成部を形成すると、ガスタービンの運転に伴うガスタービンロータの回転時に、収容室形成部の突出部分に起因する風損が生じ、ガスタービンの効率低下を招いてしまう。
【0083】
このため、上記(27)に記載のように、周方向におけるシール板移動規制部が存在する範囲と存在しない範囲の両方において、板状部に対して軸方向における一方側に突出するように収容室形成部を構成することにより、上記風損の増大を抑制することができる。
【0084】
(28)幾つかの実施形態では、上記(26)又は(27)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記収容室形成部は、前記周方向における前記シール板の80%以上の範囲に亘って、前記板状部に対して前記軸方向における前記一方側に突出するように構成される。
【0085】
上記(28)に記載のシール板組立体によれば、周方向における大部分に亘って収容室形成部が板状部に対して軸方向における一方側に突出するように構成されているため、周方向における収容室形成部の突出範囲が局所的である場合と比較して、上記風損の増大を抑制することができる。
【0086】
(29)幾つかの実施形態では、上記(25)乃至(28)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記収容室形成部のうち前記軸方向における前記一方側の端面は、前記軸方向に直交する平面に沿って形成される。
【0087】
上記(29)に記載のシール板組立体によれば、上記(25)乃至(28)に記載のシール板組立体おける風損の増大を抑制する効果を高めることができる。
【0088】
(30)幾つかの実施形態では、上記(25)乃至(29)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記収容室形成部は、前記シール板のうち前記径方向における外側寄りに設けられる。
【0089】
上記(30)に記載のシール板組立体によれば、シール板の重心を径方向における外側よりにすることができる。
【0090】
(31)幾つかの実施形態では、上記(25)乃至(30)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記収容室形成部は、前記収容室とは異なる位置に肉抜き部を有する。
【0091】
上記(31)に記載のシール板組立体によれば、肉抜き部を設けることによってシール板の剛性を調整することができる。シール板の剛性を調整することにより、動翼の固有振動数を調整することができる。動翼の固有振動数を調整することにより、動翼の共振の発生を抑制することができる。
【0092】
(32)幾つかの実施形態では、上記(25)乃至(31)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記板状部は、厚さの異なる2以上の部分を含む。
【0093】
上記(32)に記載のシール板組立体によれば、厚さの異なる2以上の部分を板状部に設けてシール板の剛性を調整することができる。シール板の剛性を調整することにより、動翼の固有振動数を調整することができる。動翼の固有振動数を調整することにより、動翼の共振の発生を抑制することができる。
【0094】
(33)幾つかの実施形態では、上記(18)乃至(32)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記シール板又は前記シール板移動規制部の一方は、前記軸方向に沿って延在する筒状部を含み、前記筒状部の内周面に雌ねじが形成されており、前記シール板又は前記シール板移動規制部の他方は、前記雌ねじに螺合する雄ねじを含み、前記シール板移動規制部は、鍔部と、前記鍔部から前記軸方向における前記他方側へ向けて突出する突出部と、を含み、前記シール板組立体は、前記筒状部の外周側に設けられるとともに前記鍔部を前記軸方向における前記他方側に付勢するように構成された皿バネを更に備え、前記シール板は、前記軸方向における前記他方側への前記鍔部の移動を規制するように前記鍔部に対して前記軸方向における前記他方側に設けられた鍔部移動規制部を含む。
【0095】
上記(33)に記載のシール板組立体によれば、雄ねじと雌ねじとが螺合した状態でシール板移動規制部を回動させることでシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わるため、シール板移動規制部に軸方向の力が作用しても、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わりにくい。このため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0096】
また、シール板移動規制部を回動させない限りシール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替わらないため、例えばシール板非規制状態を維持したままシール板を径方向に移動させるといった作業が容易となる。また、付勢部の付勢力より弱い力がシール板移動規制部に作用しても、シール板規制状態がシール板非規制状態に切り替わらない。このため、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。
【0097】
また、ねじの緩みを付勢部の付勢力によって抑制することができるため、この点においても、意図しないタイミングでシール板と動翼との係合状態と非係合状態とが切り替わることを抑制する効果を高めることができる。また、付勢部として皿ばねを用いることにより、付勢部に亀裂等が生じても軸方向における付勢部の大きさが小さくなりにくいため、シール板移動規制部を比較的安定的に付勢することができる。
【0098】
(34)幾つかの実施形態では、上記(18)乃至(33)の何れか1項に記載のシール板組立体において、前記シール板のうち前記軸方向における前記他方側を向く面には、前記ロータディスクの周方向における長さが前記ロータディスクの径方向における長さよりも長い少なくとも一つの長穴が形成される。
【0099】
一般に、動翼は、ロータディスクの軸方向に対して傾斜した方向に延在する翼溝に挿入される。このため、動翼のプラットフォームより径方向内側において動翼の間に形成された空間に棒状の治具を通して、その治具によってシール板を径方向に移動させる場合、上記(34)に記載の形状を有する長穴であれば、シール板のうち軸方向における上記他方側を向く面に対して棒状の冶具を傾斜させた状態で棒状の治具を容易に係合させることができる。このため、シール板の径方向への移動作業が容易となる。
【0100】
(35)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンロータは、ロータディスクと、前記ロータディスクに装着された複数の動翼と、前記動翼のための少なくとも一つのシール板組立体と、を備え、前記少なくとも一つのシール板組立体は、上記(18)乃至(34)の何れか1項に記載のシール板組立体を含む。
【0101】
上記(35)に記載のガスタービンロータによれば、上記(18)乃至(34)の何れか1項に記載のシール板組立体を含むため、ガスタービンの分解時又は組立時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からシール板と動翼との係合状態と非係合状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0102】
(36)幾つかの実施形態では、上記(35)に記載のガスタービンロータにおいて、前記ロータディスクの端面との間に前記シール板を保持するためのロッキングプレートと、前記ロッキングプレートを前記ロータディスクの前記端面側に押し付けるように構成されたロッキングピースと、を更に備える。
【0103】
上記(36)に記載のシール板組立体によれば、シール板組立体に対してロータディスクと反対側からシール板と動翼との係合状態及び非係合状態を切り替える場合に、ロッキングピース及びロッキングプレートの装着又は取外しによって、当該切り替え作業を容易に行うことができる。
【0104】
(37)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンロータは、ロータディスクと、前記ロータディスクに装着された複数の動翼と、前記動翼のための少なくとも一つのシール板組立体と、を備え、前記少なくとも一つのシール板組立体は、前記ロータディスクの周方向において互いに隣接する一対のシール板組立体を含み、前記一対のシール板組立体の各々は、上記(18)乃至(34)の何れか1項に記載のシール板組立体である。
【0105】
上記(37)に記載のガスタービンロータによれば、互いに隣接する一対のシール板組立体を上記(18)乃至(34)の何れか1項に記載のシール板組立体であるため、ガスタービンの分解時又は組立時において、この一対のシール板組立体の各々について、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からシール板と動翼との係合状態と非係合状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0106】
また、この一対のシール板組立体に対応する一対の動翼をロータディスクから取り外すことにより生じたスペースから、この一対のシール板組立体とは異なる位置に設けられた他のシール板を周方向に移動させて動翼から容易に取り外すことができる。このため、ガスタービンの分解作業を効率的に行うことができる。
【0107】
(38)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンロータは、ロータディスクと、前記ロータディスクに装着された複数の動翼と、前記動翼のための少なくとも一つのシール板組立体と、を備え、前記少なくとも一つのシール板組立体は、前記ロータディスクの回転中心に対して対称位置に配置される複数のシール板組立体を含み、前記対称位置に配置される複数のシール板組立体の各々は、上記(18)乃至(34)の何れか1項に記載のシール板組立体である。
【0108】
上記(38)に記載のガスタービンロータによれば、ロータディスクの回転中心に対して対称位置に配置される複数のシール板組立体が上記(18)乃至(34)の何れか1項に記載のシール板組立体であるため、ガスタービンの分解時又は組立時において、上記複数のシール板組立体の各々について、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からシール板と動翼との係合状態と非係合状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0109】
また、上記複数のシール板組立体に対応する複数の動翼をロータディスクから取り外すことにより生じたスペースから、上記複数のシール板組立体とは異なる位置に設けられた他のシール板を周方向に移動させて動翼から容易に取り外すことができる。
また、上記複数のシール板組立体に対応する複数の動翼をロータディスクから取り外すことにより生じるスペースが、ロータディスクの回転中心に対して対称位置に位置するため、上記他のシール板を周方向に移動させる際に、短い移動距離で動翼から取り外すことができる。このため、ガスタービンの分解作業を効率的に行うことができる。
【0110】
(39)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、上記(35)乃至(38)の何れか1項に記載のガスタービンロータと、前記ガスタービンロータを覆うケーシングとを備える。
【0111】
上記(39)に記載のガスタービンによれば、上記(35)乃至(38)の何れか1項に記載のガスタービンロータを含むため、ガスタービンの分解時又は組立時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からシール板と動翼との係合状態と非係合状態とを適切に切り替えることが容易となる。
【0112】
(40)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの製造方法において、前記ガスタービンは、ロータディスクに対して軸方向における一方側に設けられたシール板と、前記ロータディスクに対する前記シール板の前記ロータディスクの径方向の移動を規制するシール板移動規制部と、を備え、前記製造方法は、前記軸方向における他方側から前記シール板移動規制部を操作することで、前記シール板移動規制部が前記シール板の前記径方向の移動を規制しないシール板非規制状態から、前記シール板移動規制部の少なくとも一部が前記シール板から前記軸方向における前記他方側に向けて突出して前記シール板の前記径方向の移動を規制するシール板規制状態へ切り替えるシール板規制状態切替ステップを備える。
【0113】
上記(40)に記載のガスタービンの製造方法によれば、シール板規制状態切替ステップにおいて、軸方向における他方側すなわちシール板に対してシール板移動規制部の突出方向側(軸方向においてシール板に対してロータディスク側)からシール板移動規制部を操作することで、シール板非規制状態とシール板規制状態とが切り替えられる。
【0114】
このため、ガスタービンの製造時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側から、シール板移動規制部の状態がシール板規制状態であるかシール板非規制状態であるかを目視により確認しながら、シール板非規制状態をシール板規制状態に切り替えることができる。これにより、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からシール板非規制状態をシール板規制状態に適切に切り替えることが容易となる。
【0115】
したがって、ガスタービンの製造時において、ロータディスクを挟んでシール板と反対側からシール板と動翼との非係合状態を係合状態に切り替えることが容易となる。