(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオールが、少なくとも5wt%及び最大で40wt%の前記少なくとも一つのフランジカルボン酸残基を含む、請求項1又は2のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー。
前記ポリオール中の、ダイマー脂肪残基対フランジカルボン酸残基の重量比が、少なくとも4:1かつ最大で20:1である、請求項1、2、又は3のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示において使用される量又は範囲限界の上限又は下限は、独立に組み合わせることができると理解される。
【0014】
置換基において炭素原子の数(例えば「C1からC6」)を記載する際には、数は、分枝基において存在するものも含んでいる、置換基内に存在する炭素原子の総数を言及していると理解される。さらに、例えば脂肪酸において、炭素原子の数を記載する際には、これはカルボン酸の炭素原子及び分枝基において存在するものも含む炭素原子の総数を言及している。
【0015】
本発明のポリオール又はポリウレタンを作製するために使用することができる化学物質の多くは、天然源から得ることができる。この様な化学物質は、それらの天然起源により、通常は化学種の混合物を含む。この様な混合物の存在により、本開示で定義する様々なパラメーターは、平均値であってよく、また非整数であってよい。
【0016】
用語「ポリオール」は、当技術分野において周知であり、かつ一より多いヒドロキシル基を含んでいる分子を言及している。用語「活性水素」は、ポリオールのヒドロキシル基の一部として存在する水素原子を言及している。
【0017】
本開示において使用される用語「ポリエステル」は、一より多いエステル結合を有する分子又は基を言及している。
【0018】
本開示において分子又は分子の一部に関して使用される用語「官能性」は、その分子又は分子の一部における官能基の数を言及している。「官能基」は、分子中の基であって、化学反応に関与しうる基を言及している。例えば、カルボン酸基、ヒドロキシル基、及びアミン基は、全て官能基の例である。例えば、(2つのカルボン酸基を有する)二酸、及び(2つのヒドロキシル基を有する)ジオールは、共に2の官能性を有し、かつ三酸及びトリオオールは、共に3の官能性を有する。
【0019】
本開示で使用される用語「ダイマー脂肪残基」は、別に定義されない限り、ダイマー脂肪酸(ダイマー脂肪二酸ともいう)の残基又はダイマー脂肪二酸誘導体の残基、例えばダイマー脂肪ジオール又はダイマー脂肪ジアミンの残基を言及している。
【0020】
用語「ダイマー脂肪酸」(ダイマー脂肪二酸ともいう)は、当技術分野において周知であり、かつモノ又はポリ不飽和脂肪酸の二量体化物及び/又はそれらのエステルを言及している。関連する用語「トリマー脂肪酸」は、同様に、モノ又はポリ不飽和脂肪酸の三量体化物及び/又はそれらのエステルを言及している。
【0021】
ダイマー脂肪酸は、J.I.Kroschwitz(ed.),Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology 第4版,Wily, New York,1993,Vol.8,pp.223−237のT.E.Breuer,‘Dimer Acids’に記載されている。これらは、圧力下で脂肪酸を重合させ、その後、反応しなかった脂肪酸出発原料の多くを蒸留によって除去することにより製造される。最終産物は、通常は少量のモノ脂肪酸及びトリマー脂肪酸を含むが、ほとんどはダイマー脂肪酸からなる。得られる生成物は、所望により種々の脂肪酸の様々な比率で製造することができる。
【0022】
ダイマー脂肪酸対トリマー脂肪酸の比率は、処理条件、及び/又は不飽和脂肪酸原料を変えることにより変えることができる。ダイマー脂肪酸は、当分野において周知の精製技術を使用することにより、生成物の混合物から実質的に純粋な形態で単離することができ、又は代わりに、ダイマー脂肪酸及びトリマー脂肪酸混合物を利用することができる。
【0023】
本発明に使用されるダイマー脂肪酸又はダイマー脂肪残基は、好ましくはC10からC30脂肪酸の二量体化生成物から得られることが好ましく、より好ましくはC12からC24脂肪酸、特にC14からC22脂肪酸、さらに好ましくはC16からC20脂肪酸及びとりわけC18脂肪酸の二量体化生成物から得られる。したがって、得られるダイマー脂肪酸は、好ましくは20から60、より好ましくは24から48、特に28から44、さらに好ましくは32から40の範囲内、及び特に36の炭素原子を含む。
【0024】
ダイマー脂肪酸が得られる脂肪酸は、直鎖又は分枝鎖の不飽和脂肪酸から選択することができる。不飽和脂肪酸は、シス/トランス配置のいずれを有する脂肪酸からも選択することができ、1つの又は1より多い不飽和二重結合を有してよい。
【0025】
好ましくは、使用される脂肪酸は、直鎖状モノ不飽和脂肪酸である。
【0026】
ダイマー脂肪酸は、水素化してもよい。ダイマー脂肪酸は、水素化しなくてもよい。(二酸、ジオール、又はジアミンから)水素化されたダイマー脂肪残基は、より良い酸化的又は熱的安定性を有していてよく、これは、コポリマーポリオールから生成されるポリウレタンにおいて望ましい場合がある。
【0027】
好適なダイマー脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、又はエライジン酸の二量体化生成物から得られる(すなわち、これらの二量体等価物である)ことが好ましい。特に、好適なダイマー脂肪酸は、オレイン酸から得られる。
【0028】
ダイマー脂肪酸は、天然脂肪及びオイル、例えばヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、ナタネ油、綿実油、又はトール油、の加水分解により得られる不飽和脂肪酸混合物の二量体化生成物であってよい。
【0029】
ダイマー脂肪酸の分子量(重量平均)は、好ましくは450から690の範囲内であり、より好ましくは500から640、特に530から610、とりわけ550から590の範囲内である。
【0030】
ダイマー脂肪酸に加えて、二量体化は、通常は様々な量のトリマー脂肪酸(いわゆるトリマー)、及びオリゴマーの脂肪酸、並びに単量体の脂肪酸(いわゆるモノマー)の残留物、又はそれらのエステルが存在するものとなる。モノマーの量は、例えば蒸留によって
減少させることができる。
【0031】
同様に、任意選択的なトリマー脂肪酸は、ダイマー脂肪酸に関して言及した原料の三量体化生成物から得られることが好ましく、好ましくはC10からC30、より好ましくはC12からC24、特にC14からC22、さらに特にはC16からC20、特にC18のトリマーである。したがって、トリマー脂肪酸は、好ましくは30から90、より好ましくは36から72、特に42から66、さらに特には48から60の範囲内、及びとりわけ54の炭素原子を含む。
【0032】
トリマー脂肪三酸の分子量(重量平均)は、好ましくは750から950の範囲内、より好ましくは790から910、特に810から890、及びとりわけ830から870の範囲内である。
【0033】
本発明の一つの実施形態において、テトラマー脂肪酸及びそれより大きいオリゴマー(以下、共にオリゴマー酸という)は、ダイマー脂肪酸の製造中に生成される。したがって、この様なオリゴマー酸は、本発明に使用されるダイマー脂肪酸においても、トリマー脂肪酸及び/又はダイマー脂肪酸、及び/又はモノ脂肪酸単量体と合わせて存在する場合がある。
【0034】
オリゴマー酸は、好ましくはC10からC30、より好ましくはC12からC24、特にC14からC22、とりわけC18脂肪酸から得られる4以上のユニットを含んでいるオリゴマーである。オリゴマー酸の分子量(重量平均)は、好適には1000より大きく、好ましくは1200から1800、より好ましくは1300から1700、特に1400から1600、とりわけ1400から1550の範囲内である。
【0035】
本発明において使用されるダイマー脂肪酸は、好ましくは60wt%より多い、より好ましくは70wt%より多い、特に80wt%より多い、及びとりわけ85wt%より多いダイマー脂肪酸(又はダイマー)の含量を有してよい。ダイマー脂肪酸のダイマー含量は、90wt%から99wt%の範囲内であることが、最も好ましい。
【0036】
代替的な実施態様において、ダイマー脂肪酸は、ダイマー脂肪酸(又はダイマー)含量を70wt%から96wt%の範囲内に有することが好ましい。この含量は、特に二成分系又は架橋系において適用しうる。
【0037】
加えて、特に好ましいダイマー脂肪酸は、40wt%未満、より好ましくは30wt%未満、特に20wt%未満、及びとりわけ15wt%未満のトリマー脂肪酸(又はトリマー)含量を有してよい。トリマー脂肪酸含量は、1wt%未満であってよい。
【0038】
さらに、ダイマー脂肪酸は、好ましくは10wt%未満、より好ましくは6wt%未満、特に4wt%未満、及びとりわけ3.5wt%未満のモノ脂肪モノ酸(又はモノマー)を有する。
【0039】
上記の重量パーセント値の全ては、重合された脂肪酸及び存在するモノ脂肪酸の総重量に基づいている。
【0040】
ダイマー脂肪二酸(又はダイマー脂肪酸)は、当技術分野において周知のように、ダイマー脂肪ジオールに変換することができる。例えば、ダイマー脂肪ジオールは、対応するダイマー脂肪酸の水素化によって生成されてよい。ダイマー脂肪ジオールではダイマー脂肪二酸の酸基がヒドロキシル基に置換されていることを除いて、ダイマー脂肪ジオールは、ダイマー脂肪二酸(又はダイマー脂肪酸)に関して本開示で記載されている特性を有してよい。同様の方法により、トリマー脂肪酸は、トリマー脂肪トリオールに変換することができ、このトリマー脂肪トリオールは、トリマー脂肪酸に関して本開示に記載される特性を有してよい。
【0041】
ダイマー脂肪ジオールは、水素化することができる。ダイマー脂肪ジオールは、水素化しなくてもよい。
【0042】
ダイマー脂肪二酸(又はダイマー脂肪酸)は、当技術分野において周知のように、ダイマー脂肪ジアミンに変換することができる。ダイマー脂肪ジアミンではダイマー脂肪二酸の酸基がアミン基に置換されていることを除いて、ダイマー脂肪ジアミンは、ダイマー脂肪二酸(又はダイマー脂肪酸)に関して本開示で記載されている特性を有してよい。同様の方法により、トリマー脂肪酸は、トリマー脂肪トリアミンに変換することができ、このトリマー脂肪トリアミンは、トリマー脂肪酸に関して本開示に記載される特性を有してよい。
【0043】
ダイマー脂肪ジアミンは、水素化することができる。ダイマー脂肪ジアミンは、水素化しなくてもよい。
【0044】
本発明の第1の態様のポリウレタンエラストマーは、ポリオール及びイソシアネートを反応させることにより得ることができる。
【0045】
本開示において記載されるポリオールは、本発明の第2の態様のポリオールであってよい。
【0046】
ポリオールの構成成分の1つは、
a)ダイマー脂肪二酸残基、ダイマー脂肪ジオール残基、及びダイマー脂肪ジアミン残基から選択される、少なくとも一つのダイマー脂肪残基
である。
【0047】
少なくとも一つのダイマー脂肪残基は、ダイマー脂肪二酸、ダイマー脂肪ジオール、又はダイマー脂肪ジアミンに関して本開示に記載された特性又は選択性を含むことができる。
【0048】
少なくとも一つのダイマー脂肪残基は、飽和又は不飽和であってよい。少なくとも一つのダイマー脂肪残基は、飽和であることが好ましい。
【0049】
ダイマー脂肪残基は、性質上脂肪であり、この性質はポリオールの疎水性を増加し得る。ダイマー脂肪残基の存在は、ポリオールをより非晶質、非結晶、又は実質的に非結晶にし得る。非晶質性は、ポリオールから生成されるポリウレタンの柔軟性を増加させ、及び/又は引張強度を低下させ得る。
【0050】
ポリオールは、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは30wt%のダイマー脂肪残基を含有してよい。ポリオールは、最大で80wt%、好ましくは最大で70wt%のダイマー脂肪残基を有してよい。ポリオールは、少なくとも20wt%から最大で80wt%の少なくとも一つのダイマー脂肪残基を含有することが好ましい。
【0051】
少なくとも一つのダイマー脂肪残基は、ダイマー脂肪二酸残基、及びダイマー脂肪ジアミン残基から選択されてよい。
【0052】
少なくとも一つのダイマー脂肪残基は、ダイマー脂肪二酸残基であってよい。
【0053】
ポリオールは、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも20wt%、及びより好ましくは少なくとも30wt%のダイマー脂肪二酸残基を含有してよい。ポリオールは、最大で80wt%、好ましくは最大で70wt%のダイマー脂肪二酸残基を含有してよい。
【0054】
ポリオールは、ダイマー脂肪ジオール残基を含まなくてよい。
【0055】
ダイマー脂肪残基のこれらの量は、ポリオールから生成されたポリウレタンの引張強度又は硬度を過度に減少することなく、ポリオールに好適な量の疎水性及び/又は非晶質性をもたらすことができる。
【0056】
ポリオールの構成成分の一つは、
b)少なくとも一つのフランジカルボン酸残基
である。
【0057】
ポリオールを製造するために使用されるフランジカルボン酸は、2,3−、3,4−、2,5−フランジカルボン酸、若しくはそれらの混合、又は対応するアルキルエステル、例えばメチル、及び/若しくはエチルモノ及び/若しくはジエステル、又は対応するハロゲン化物、例えば対応する塩化物、臭化物、及び/若しくはヨウ化物であってよい。フランジカルボン酸は、2,5−フランジカルボン酸であることが好ましい。フランジカルボン酸残基は、好ましくはフランジカルボン酸アルキルエステル、より好ましくはメチルエステル、例えばメチルジエステルから得られる。
【0058】
少なくとも一つのフランジカルボン酸残基は、2,3−、3,4−、若しくは2,5−フランジカルボン酸残基、又はこれらの混合であることが好ましい。少なくとも一つのフランジカルボン酸残基は、2,5−フランジカルボン酸残基であることがより好ましい。
【0059】
フランベースのモノマー、例えば2,5−フランジカルボン酸は、Avantium社より商品名「YXY」として入手可能である。代替的に、フランジカルボン酸は、国際公開第2011/043660号に開示される方法により製造することができる。
【0060】
ポリオール中のフランジカルボン酸残基の存在は、ポリオールをより結晶化することができる。結晶性の増加は、ポリオールから生成されるポリウレタンエラストマーの引張強度及び/又は硬度を増加させることができる。
【0061】
ポリオールは、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも5wt%、より好ましくは少なくとも8wt%、さらにより好ましくは少なくとも10wt%のフランジカルボン酸残基を有する。ポリオールは、最大で50wt%、好ましくは最大で40wt%、より好ましくは最大で30wt%、さらにより好ましくは最大で20wt%、それよりももっと好ましくは最大で15wt%のフランジカルボン酸残基を有する。ポリオールは、少なくとも5wt%かつ最大で40wt%の少なくとも一つのフランジカルボン酸残基を有することが好ましい。
【0062】
フランジカルボン酸残基のこれらの量は、ポリオールから生成されるポリウレタンの柔軟性を過度に減少することなく、ポリオールに好適な量の結晶性を与えることができる。
【0063】
ポリオールが最大で20wt%のフランジカルボン酸残基を有する場合、20wt%より多いフランジカルボン酸残基を有するポリオールと比較して、ポリオールは、ポリウレタンエラストマーを製造する際に、向上した加工性を有するようにできる。向上した加工性は、ポリオールの融点(Tm)の減少の形態であってよく、これは、ポリウレタンエラストマーを製造する際に有利となりうる。
【0064】
フランジカルボン酸残基は、再生可能資源及び/又はバイオベース資源由来であることが好ましい。この由来のレベルは、
14C放射性同位体による年代測定を利用した試料のバイオベース含量を測定するための規格化された分析方法であるASTM D6866によって測定することができる。ASTM D6866は、バイオベース資源由来の炭素を、化石ベース資源由来の炭素と区別する。この規格を使用して、試料の炭素の総量から、再生可能資源由来の炭素のパーセンテージを計算することができる。
【0065】
フランジカルボン酸残基は、ASTM D6866を使用して測定したときに、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも65wt%、より好ましくは80wt%の再生可能な炭素含量を有してよい。
【0066】
ポリオール中のダイマー脂肪残基対フランジカルボン酸残基の重量比は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1、さらにより好ましくは少なくとも4:1であってよい。ポリオール中のダイマー脂肪残基対フランジカルボン酸残基の重量比は、最大で20:1、好ましくは最大で15:1、より好ましくは最大で10:1であってよい。ポリオール中のダイマー脂肪残基対フランジカルボン酸残基の重量比は、少なくとも4:1かつ最大で20:1であることが好ましい。
【0067】
ポリオール中のダイマー脂肪残基対フランジカルボン酸残基の低い重量比は、フランジカルボン酸残基が多量に存在するため、ポリオールが増加した融点(Tm)を有する原因となりうる。
【0068】
少なくとも4:1のポリオール中のダイマー脂肪残基対フランジカルボン酸残基の重量比は、ポリウレタンエラストマーを製造する際に、ポリオールが向上した加工性を有する原因となりうる。向上した加工性は、ポリオールの融点(Tm)の減少の形態であってよく、これは、ポリウレタンエラストマーを製造する際に有利となりうる。
【0069】
ポリオールは、ダイマー脂肪二酸又はフランジカルボン酸でないジカルボン酸(本開示において非ダイマー・非FDCA二酸という)の残基を少なくとも一つ有してよい。
【0070】
非ダイマー・非FDCA二酸は、脂肪族又は芳香族(例えば、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸)であってよく、ジカルボン酸及びそれらのエステル、好ましくはそれらのアルキルエステルを含んでよい。
【0071】
非ダイマー・非FDCA二酸は、4から12炭素原子の範囲内の炭素鎖を有する鎖状ジカルボン酸、例えばアジピン酸、グルタル酸、コハク酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、へプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、及びドデカンジカルボン酸であってよい。アジピン酸が特に好ましい。
【0072】
ポリオールは、少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも10wt%、より好ましくは少なくとも20wt%の非ダイマー・非FDCA二酸を含んでよい。ポリオールは、最大で50wt%、好ましくは最大で40wt%、より好ましくは最大で30wt%の非ダイマー・非FDCA二酸を含んでよい。
【0073】
ポリオールは、ダイマー脂肪ジオールでない1又はそれより多いジオール(本開示において、非ダイマージオールという)の残基を少なくとも1つ含んでよい。非ダイマージオールは、好ましくは2から10炭素原子、より好ましくは5から8炭素原子を有する。
【0074】
好適な非ダイマージオールは、直鎖状脂肪族ジオール、分鎖状脂肪族ジオール、又はこれらの組合せから独立的に選択できる。
【0075】
好適な非ダイマージオールとして、直鎖状脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−へキシレングリコール(ヘキサンジオールとしても知られる)、及びこれらの混合、分鎖状脂肪族ジオール、例えば、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタングリコール、1,2−プロピレングリコール、及びこれらの混合、並びに環状ジオール、例えば、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及び1,4−シクロヘキサン−ジメタノール、及びこれらの混合が挙げられる。
【0076】
好ましい直鎖状脂肪族ジオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール(1,3−プロパンジオールとしても知られる)、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びこれらの混合から独立的に選択することができる。
【0077】
好ましい分鎖状脂肪族ジオールは、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、メチルプロパンジオール、及びこれらの混合から独立的に選択することができる。
【0078】
非ダイマージオールは、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルプロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、及びこれらの混合から選択されることができる。
【0079】
ヘキサンジオールは、非ダイマージオールとして特に好ましい。
【0080】
ポリオールは、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも20wt%の非ダイマージオールを含んでよい。ポリオールは、最大で50wt%、好ましくは最大で40wt%、より好ましくは最大で30wt%の非ダイマージオールを含んでよい。
【0081】
ポリオールは、さらに、
c)少なくとも1つのC2からC10のジオールの残基
を含んでよい。
【0082】
少なくとも1つのC2からC10のジオールの残基は、本開示において記載される非ダイマージオールであってよい。ポリオールは、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも20wt%のC2からC10のジオールを含んでよい。ポリオールは、最大で50wt%、好ましくは最大で40wt%、より好ましくは最大で30wt%のC2からC10のジオールを含んでよい。ポリオールは、少なくとも10wt%及び最大で50wt%の少なくとも一つのC2からC10のジオールの残基を含むことが好ましい。
【0083】
少なくとも1つのC2からC10のジオールの残基は、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルプロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール及びこれらの混合から選択することができる。
【0084】
ポリオールは、少なくとも500、好ましくは少なくとも800、より好ましくは少なくとも1000、さらにより好ましくは少なくとも1500、特に好ましくは少なくとも1800の分子量(数平均)を有してよい。
【0085】
ポリオールは、最大で5000、好ましくは最大で4000、より好ましくは最大で3000、さらにより好ましくは最大で2500、特に好ましくは最大で2200の分子量(数平均)を有してよい。
【0086】
ポリオールは、少なくとも500g/mol及び最大で5000g/molの数平均分子量を有することが好ましい。
【0087】
分子量(数平均)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって、又は末端基定量法によって測定することができる。分子量(数平均)は、末端基定量法によって測定されることが好ましい。
【0088】
ポリオール中のより大きい分子量(数平均)は、ポリオールから作られるエラストマーがより低いモジュラス(例えば、低い100%モジュラス又は300%モジュラス)を有する原因となりうる。最大で5000の分子量(数平均)のポリオールは、向上した(より高い)モジュラスを有するポリウレタンエラストマーを製造するために、有利に使用することができる。
【0089】
ポリオール中のより大きい分子量(数平均)は、所定の温度においてポリオールが高い粘度を有する原因となりうる。最大で4000の分子量(数平均)のポリオールは、数平均分子量が4000より大きいポリオールと比較したときに、ポリウレタンエラストマーを製造する際に向上した加工性を有しうる。この向上した加工性は、最大で4000の分子量(数平均)のポリオールの所定の温度におけるより低い粘度に起因する場合がある。
【0090】
ポリオールは、最大で−30℃、好ましくは最大で−40℃、より好ましくは最大で−50℃のガラス転移温度(Tg)を有しうる。ポリオールは、少なくとも−100℃、より好ましくは少なくとも−80℃、さらに好ましくは少なくとも−60℃のガラス転移温度を有しうる。ポリオールは、少なくとも−100℃及び最大で−30℃のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。
【0091】
ポリオールが少なくとも−100℃及び最大で−30℃のガラス転移温度(Tg)を有する場合、ポリオールから製造されるポリウレタンエラストマーが柔軟性及び剛性の向上したバランスを有する原因となりうる。
【0092】
ガラス転移温度は、DSC(示差走査型カロリメトリー)により測定することができる。DSCは、Mettler Toledo計器モジュール:DSC822を使用して実施することができる。
【0093】
ポリオールは、最大で125℃、好ましくは最大で100℃、より好ましくは最大で80℃の融点温度(Tm)を有しうる。ポリオールは、少なくとも−30℃、好ましくは少なくとも−10℃、より好ましくは少なくとも+10℃の融点温度(Tm)を有しうる。
【0094】
ポリオールが最大で80℃の融点温度(Tm)を有する場合、融点温度が80℃より大きいポリオールと比較したときに、ポリウレタンエラストマーを製造する際にポリオールが向上した加工性を有する原因となりうる。
【0095】
融点温度(Tm)は、DSC(示差走査型カロリメトリー)により測定することができる。DSCは、Mettler Toledo計器モジュール:DSC822を使用して実施することができる。
【0096】
ポリオールは、縮合反応によって生成することができる。ポリオールは、重縮合体であってよい。
【0097】
ポリオールは、少なくとも2個のエステル結合、好ましくは少なくとも3個のエステル結合、より好ましくは少なくとも4個のエステル結合、さらにより好ましくは少なくとも5個のエステル結合を含むことができる。
【0098】
ポリオールは、最大で10個のエステル結合、好ましくは最大で8個のエステル結合、より好ましくは最大で7個のエステル結合を含むことができる。
【0099】
ポリオールは、ポリエステルであってよい。
【0100】
ポリオールは、少なくとも1個のエーテル結合を含むことができる。ポリオールは、ポリエステルエーテルであってよい。代替的に、ポリオールはエーテル結合を有しなくてもよい。
【0101】
ポリオールは、少なくとも1個のアミド結合を含むことができる。ポリオールは、少なくとも1個のダイマー脂肪ジアミン残基を含むことができる。代替的に、ポリオールはアミド結合を含まなくてよい。
【0102】
ポリオールは、ポリエステルアミドであってよい。ポリオールは、ポリエステルエーテルアミドであってよい。
【0103】
ポリオールは、モル比が好ましくは1:1から1:5、より好ましくは1:1.05から1:3、特に好ましくは1:1.1から1:1.2、及びとりわけ好ましくは1:1.2から1:1.4の範囲内のジカルボン酸対ジオールの出発材料から生成される。したがって、ポリオール内のジオールの量は、両末端がヒドロキシル基で終了するポリオールが得られるように、過剰モル量存在することが好ましい。ポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシル末端基を含んでよい。ポリオールは、2個のヒドロキシル末端基を含むことができる。
【0104】
ポリオールは、好ましくは10mgKOH/gから100mgKOH/g、より好ましくは30mgKOH/gから90mgKOH/g、さらにより好ましくは40mgKOH/gから70mgKOH/g、及び特に好ましくは50mgKOH/gから60mgKOH/gの(本開示において記載されるように測定される)ヒドロキシル価を有する。
【0105】
さらに、ポリオールは、好ましくは2mgKOH/g未満、より好ましくは1.7mgKOH/g未満、特に好ましくは1.3mgKOH/g未満、及び特に好ましくは1.0mgKOH/g未満の(本開示において記載されるように測定される)酸価を有する。
【0106】
本発明の第2の態様のポリオールは、本発明の第1の態様のポリウレタンエラストマーに関連して記載されるポリオールに関して本開示に記載される任意の特徴を含んでよい。
【0107】
本発明の第1の態様によると、本発明は、ポリオールとイソシアネートを反応させることにより得ることができるポリウレタンエラストマーを提供し、ここで、ポリオールは、以下を含む:
a)ダイマー脂肪二酸残基、ダイマー脂肪ジオール残基、及びダイマー脂肪ジアミン残基から選択される少なくとも一つのダイマー脂肪残基、及び
b)少なくとも一つのフランジカルボン酸残基。
【0108】
ポリウレタンエラストマーは、ポリオールをイソシアネートと反応させることにより、得ることができる。
【0109】
ポリウレタンエラストマーは、ポリオールをポリイソシアネートと反応させて、
(i)ポリウレタンエラストマー、又は
(ii)その後鎖延長剤と反応されてポリウレタンエラストマーを生成する、イソシアネート末端プレポリマー
を生成することにより、得ることができ、かつ得られることが好ましい。
【0110】
本発明の第3の態様によると、本発明は、本発明の第2の態様のポリオールをイソシアネートと反応させて:
(i)ポリウレタンエラストマー、又は
(ii)その後鎖延長剤と反応されてポリウレタンエラストマーを生成する、イソシアネート末端プレポリマー
を生成することを含む、ポリウレタンエラストマーを製造する方法を提供する。
【0111】
本発明のポリウレタンエラストマーは、プレポリマー及び鎖延長剤の反応生成物であってよい。本開示において用いられているように、用語「プレポリマー」は、少なくとも一つのポリオールとイソシアネートとの反応生成物を意味する。イソシアネート末端プレポリマーは、イソシアネート末端プレポリマー、一定量の未反応イソシアネート、及び任意選択的に1又はそれより多くの溶剤、可塑剤、又は他の添加剤を含むプレポリマー混合物に含まれてよい。本開示において用いられているように、用語「未反応イソシアネート」は、ポリウレタンプレポリマーの生成後にプレポリマー混合物中にある、未反応の、又は残余のイソシアネートモノマーを言及している。
【0112】
ポリウレタンエラストマーは、固体であってよい。ポリウレタンエラストマーは、非粘着性であってよい。ポリウレタンエラストマーは、実質的に粘着特性を有しなくてよい。ポリウレタンエラストマーは、表面を含んでよい。ポリウレタンエラストマーの表面は、実質的に粘着特性を有しなくてよい。粘着性の欠如は、ポリウレタンエラストマーが含まれている物体の他の構成要素に貼り付かないため、ポリウレタンエラストマーにおいて望ましい場合がある。
【0113】
イソシアネートは、ポリイソシアネートであってよい。イソシアネートは、ジイソシアネートであってよい。
【0114】
ポリウレタンエラストマー又はプレポリマーのイソシアネート成分は、少なくとも2の官能基性を有する少なくとも1つのイソシアネートであることが好ましい。
【0115】
イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、例えばヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)であってよい。イソシアネートは、好ましくは芳香族イソシアネート、より好ましくは芳香族ジイソシアネートである。芳香族イソシアネートは、ポリウレタンエラストマーを製造するのに好ましく、これは、脂肪族イソシアネートと比較して、芳香族イソシアネートは、その芳香族構造により向上した剛性及び強度をエラストマーに与えることができるためである。
【0116】
好適な芳香族イソシアネートは、トルエンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、又はこれらの修飾された化合物、例えばこれらのウレトンイミン修飾化合物から選択されてよい。
【0117】
上記のイソシアネートモノマーは、単体で、又はこれらの混合物として使用できる。好ましい実施態様において、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が単体で使用され、又はより好ましくはMDI及びウレトンイミン修飾4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(修飾化MDI)の混合物が使用される。
【0118】
プレポリマー反応混合物は、好ましくは5%NCOから30%NCOの範囲内のイソシアネート含量(本開示のように測定される)、より好ましくは15%NCOから23%NCO、特に17%NCOから20%NCO、及びとりわけ18%NCOから19%NCOを有している。
【0119】
本発明の一つの実施態様において、上記のイソシアネートの少なくとも一つが第1又は第2の態様のポリオールと反応して、プレポリマーを生成する。
【0120】
混合して反応することによりプレポリマーが生成される、イソシアネート対ポリオールの出発材料の比率は、重量比で、好ましくは20〜80:20〜80、より好ましくは35〜75:25〜65、特に45〜70:30〜55、及びとりわけ55〜60:35〜45の範囲内である。
【0121】
イソシアネート末端プレポリマー及び十分な未反応イソシアネートを含んでいる反応混合物が得られるように、イソシアネートはポリオールのヒドロキシル基含量に対して過剰なモル量で使用されることが好ましく、これにより、後の鎖延長剤の添加は、さらなるイソシアネートを加える必要がなくポリウレタンを生成する反応を生じさせることができる。
【0122】
プレポリマーは、ポリオールをイソシアネートと効率よく混合することにより製造することができる。
【0123】
ポリウレタンの合成において、用いられるNCO/OHモル比率は、好ましくな1〜1.2:1、より好ましくは1〜1.1:1、及び特に1〜1.03:1の範囲内である。
【0124】
ポリオールとイソシアネートは高温で反応させることができる。前記高温は、50℃から80℃の範囲内であってよい。60℃から75℃の範囲内であることが好ましい。
【0125】
鎖延長剤は、ポリウレタンを生成するために任意選択的に存在してもよい。ポリウレタンは、さらに鎖延長剤を含むことができる。鎖延長剤は、鎖延長剤組成物の形態であってよい。鎖延長剤組成物は、例えば鎖延長剤、本発明の第1又は第2の態様のポリオール、及び他の添加剤(例えば発泡剤、及び/又はウレタン触媒、及び/又は顔料、及び/又はフィラー及び/又は発泡剤)の単純なプレミキシングによって調製されてよい。
【0126】
ポリウレタンの生成に使用される鎖延長剤成分として、2つ以上の活性水素基を有する低分子量化合物、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンチレングリコール、メチルペンタンジオール、イソソルビド(及びその他のイソ−ヘキサイド)、1,6−へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒドロキノンエーテルアルコキシレート、レゾルシノールエーテルアルコキシレート、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、及びデキストロース、並びにダイマー脂肪ジオール、並びに脂肪族多価アミン、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、及びイソホロンジアミン、並びに芳香族多価アミン、例えばメチレン−ビス(2−クロロアニリン)、メチレンビス(ジプロピルアニリン)、ジエチルトルエンジアミン、及びトリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエート、並びにアルカノールアミン、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びジイソプロパノールアミンが好適に挙げられる。
【0127】
発明の好ましい実施形態において、鎖延長剤は、ジオール、特に1から10、及びとりわけ3から5の範囲内の炭素原子を有する脂肪族炭素直鎖を有するジオールである。好ましいジオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、及び1,5−ペンチレングリコールが挙げられる。1,4−ブチレングリコールが、特に好ましい。
【0128】
用いられる鎖延長剤対発明の第1又は第2の態様のポリオールのモル比は、好ましくは1〜10:1、より好ましくは1.5〜8:1、特に2〜5:1、及びとりわけ2.5〜4:1の範囲内である。
【0129】
本発明において、ポリウレタン組成物は、任意選択的に他の添加剤、例えば発泡剤、ウレタン促進触媒、顔料、フィラー、発泡剤、界面活性剤、及び安定化剤を含んでよい。
【0130】
好適な発泡剤として、水及びフッ化炭素、例えばトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、及びトリクロロジフルオロエタンが挙げられる。発泡剤は、単体で、又はこれらの混合物として使用できる。
【0131】
ウレタン触媒の例として、3級アミン、例えばトリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン(DABCO)、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジメチルイミダゾール、並びにスズ化合物、例えばスズ(II)アセテート、スズ(II)オクタノエート、スズ(II)ラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレアート、ジオクチルスズジアセテート、及びジブチルスズジクロライドが挙げられる。触媒は、単体又はこれらの混合物として使用することができる。
【0132】
好適な界面活性剤として、シリコーン界面活性剤、例えばジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール修飾ジメチルポリシロキサン、及びアルキレングリコール修飾ジメチルポリシロキサン;並びに陰イオン界面活性剤、例えば脂肪酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、及びスルホナートが挙げられる。
【0133】
安定化剤の例として、ヒンダードフェノールラジカル捕捉剤、例えばジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びイソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、並びに抗酸化剤、例えば亜リン酸化合物、例えばトリフェニルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、及びトリフェニルホスフィン、並びに紫外線吸収剤、例えば2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール及びメチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物が挙げられる。
【0134】
好適な顔料として、無機顔料、例えば遷移金属塩;有機顔料、例えばアゾ化合物;及び炭素粉末が挙げられる。好適なフィラーとして、無機フィラー、例えばクレイ、チョーク、及びシリカが挙げられる。
【0135】
ポリウレタンエラストマーのダイマー脂肪残基含量は、好ましくは5重量%〜50重量%、より好ましくは8重量%〜40重量%、特に12重量%〜30重量%、及びとりわけ15重量%〜20重量%の範囲内である。
【0136】
ポリウレタンエラストマーは、再生可能資源及び/又はバイオベース資源から得られることが好ましい。このレベルは、本開示に記載されるASTM D6866により測定することができる。
【0137】
ポリウレタンエラストマーは、ASTM D6866を用いて測定したときに、好ましくは少なくとも50%の再生可能炭素含量を有することが好ましい。少なくとも65%がより好ましい。少なくとも80%が最も好ましい。
【0138】
公知のポリエステルポリオールの使用により、ポリウレタンエラストマーが加水分解又はUV/熱酸化により分解されやすくなることが、発見された。これらの短所は、従来のポリウレタンエラストマーの適用可能性を制限する。本発明の第1の態様によるポリウレタンエラストマーは、良好な熱酸化安定性及びUV安定性を有することが発見された。さらに、前記ポリウレタンエラストマーは、良好な熱安定性、及び良好な加水分解安定性を有することができ、それにより、酸、アルカリ、及びアルコールによる攻撃への耐性を与える。
【0139】
ポリウレタンエラストマーは、固体エラストマー又はマイクロセルエラストマーであってよい。エラストマーは、強化エラストマーであってもよい。強化エラストマーは、強化ファイバー又はファイバーマットを含んでもよい。強化ファイバーは、ガラスファイバー、カーボンファイバー、又はポリエステルファイバーを含んでよい。
【0140】
ポリウレタンエラストマーは、ISO 527−2基準で測定される、少なくとも7MPa、好ましくは少なくとも9MPa、より好ましくは少なくとも10MPaの破断点引張強度を有してよい。ISO 527−2基準で測定される引張強度は、標準的なエラストマー試料を測定する標準的な測定法である。破断点引張強度は最大で30MPaであってよい。
【0141】
ポリウレタンエラストマーは、ISO 527−2による少なくとも400%、好ましくは430%、より好ましくは450%の(最大)伸びを有してよい。エラストマーは、最大で900%の(最大)伸びを有してよい。
【0142】
モジュラスは、所定の伸び(歪み)を得るために必要な力(応力)を表していると理解される。例えば、100%モジュラスの場合、これは100%の伸びにおける引張強度の測定である。より高いモジュラスを有する化合物は、より弾性があり、押し出し加工により耐性があると理解される。
【0143】
ポリウレタンエラストマーは、少なくとも3MPa、好ましくは少なくとも3.5MPa、より好ましくは少なくとも4MPaの100%モジュラス値を有してよい。ポリウレタンエラストマーは、最大で20MPaの100%モジュラス値を有してよい。
【0144】
ポリウレタンエラストマーは、少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも6MPa、より好ましくは少なくとも7MPaの300%モジュラス値を有してよい。ポリウレタンエラストマーは、最大で30MPaの300%モジュラス値を有してよい。
【0145】
ポリウレタンエラストマーは、さらに良好な硬度特性を示してよい。エラストマーの硬度は、永久押込み(permanent indentation)への材料の抵抗力として定義できる。ポリウレタンエラストマーは、少なくとも60ショアA、好ましくは少なくとも70ショアA、より好ましくは少なくとも80ショアAのショアA硬度を有してよい。ショアA硬度は、ISO 868基準により測定できる。ポリウレタンエラストマーは、最大で120ショアAのショアA硬度を有してよい。
【0146】
本開示に記載される全ての特徴は、任意の上記の態様と、任意の組合せで組み合わせることができる。
【実施例】
【0147】
本発明は、単なる例示である下記の例を参照してさらに説明される。特段の記載がない限り、全ての部及びパーセントは、重量で与えられる。挙げられる全ての試験及び物理的特性は、ここで特に定めない限り、又は参照試験方法及び工程において定めない限り、大気圧下及び室温(すなわち、約20°)にて測定されたと理解される。
【0148】
下記の例において使用された化合物は、以下のとおりである:
・1,4−ブタンジオール(BDO)−バイオベースのものは、BioAmber社より入手可能である。
・1,6−ヘキサンジオール(HDO)
・アジピン酸(C
6ジカルボン酸)−バイオベースのものは、Verdezyne社より入手可能である。
・2,5−フランジカルボン酸(FDCA)−「YXY」の商品名で、Avantium社より入手可能である。
・PRIOL1006(TM)ダイマー脂肪二酸−元Croda社が販売する、水素化されたC
36ダイマージカルボン酸
・4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)
【0149】
下記の例において使用された試験方法は、下記のとおりである:
・数平均分子量は、ヒドロキシル価に関して末端基定量法によって測定された。
・重量平均分子量は、ヒドロキシル価に関して末端基定量法によって測定された。
・ヒドロキシル価は、1gの試料のヒドロキシル含量と当量の水酸化カリウムのmgの数値として定義し、アセチル化後に過剰の無水酢酸の加水分解を行うことにより測定した。生成した酢酸を、続いて水酸化カリウムエタノール溶液で滴定した。
・酸価は、1gの試料中の遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmgの数値として定義し、水酸化カリウム標準液による直接滴定によって測定した。
・イソシアネート(NCO)価又は含量は、試料中のイソシアネートの重量%含量として定義し、過剰ジブチルアミンと反応させ、塩酸による逆滴定によって測定した。
・硬度は、ISO868により、10mm厚の試料にショアAメーターを使用することによって測定した。10測定の平均値を計算した。
・伸びは、ISO527−2基準により、インストロン引張試験機を使用して測定した。
・引張強度は、ISO527−2基準により、インストロン引張試験機を使用して測定した。
・モジュラスは、所定の伸びを達成するために必要な引張強度として計算した。
【0150】
《比較例P1:ポリオール1(FDCAベースのポリオール)の生成》
これは、本発明によるものではない比較例である。100重量部の2,5−フランジカルボン酸及び106重量部のヘキサンジオールを、スターラー、温度計、ガス入口、及びコンデンサーを備える反応器に入れた。さらに、触媒としての0.1重量%の第1スズオクトエートを、反応器に加えた。反応器内の温度を、窒素雰囲気下、常圧で220〜230℃に上げた。所望の酸価及びヒドロキシル価が得られるまで、エステル化反応をこれらの条件で行った。得られたポリエステルポリオールの評価結果は、1mgKOH/g未満の酸価、56mgKOH/gのヒドロキシル価を与え、約2000g/molの数平均分子量に等しかった。
【0151】
《例P2からP5:ポリオール2から5(FDCA/ダイマーベースのポリオール)の生成》
ポリオール2から5を、下記の一般的な方法により製造した。ポリオール2から5を製造するために使用したA−PRIPOL1006、B−2,5−フランジカルボン酸、及びC−ヘキサンジオールの特定の量を、下記の表1に与える。
【0152】
〈例P2から5についての一般的方法〉
A重量部のPRIPOL1006及びC重量部のヘキサンジオールを、スターラー、温度計、ガス入口、及びコンデンサーを備える反応器に入れた。反応器内の温度を、窒素雰囲気下、常圧で180℃に上げた。初期の酸価が50%減少するまで、エステル化反応をこれらの条件で行った。その後、温度は160℃まで下げられ、B重量部の−2,5−フランジカルボン酸、及び触媒としての0.1重量%の第1スズオクトエートを、反応器に加えた。温度を、窒素雰囲気下、常圧で220〜230℃に上げた。所望の酸価及びヒドロキシル価が得られるまで、エステル化反応をこれらの条件で行った。得られたポリオール2から5の評価結果は、1mgKOH/g未満の酸価、56mgKOH/gのヒドロキシル価を与え、約2000g/molの数平均分子量に等しかった。
【0153】
【表1】
【0154】
《比較例P6:ポリオール6(ダイマーベースのポリオール)の生成》
これは、本発明によるものではない比較例である。100重量部のPRIPOL1006及び28重量部のヘキサンジオールを、スターラー、温度計、ガス入口、及びコンデンサーを備える反応器に入れた。さらに、触媒としての0.1重量%の第1スズオクトエートを、反応器に加えた。反応器内の温度を、窒素雰囲気下、常圧で220〜230℃に上げた。所望の酸価及びヒドロキシル価が得られるまで、エステル化反応をこれらの条件で行った。得られたポリエステルポリオールの評価結果は、1mgKOH/g未満の酸価、56mgKOH/gのヒドロキシル価を与え、約2000g/molの数平均分子量に等しかった。
【0155】
《比較例P7:ポリオール7(ダイマー/アジピンベースのポリオール)の生成》
これは、本発明によるものではない比較例である。100重量部のPRIPOL1006、11.1重量部のアジピン酸、及び38重量部のヘキサンジオールを、スターラー、温度計、ガス入口、及びコンデンサーを備える反応器に入れた。さらに、触媒としての0.1重量%の第1スズオクトエートを、反応器に加えた。反応器内の温度を、窒素雰囲気下、常圧で220〜230℃に上げた。所望の酸価及びヒドロキシル価が得られるまで、エステル化反応をこれらの条件で行った。得られたポリエステルポリオールの評価結果は、1mgKOH/g未満の酸価、56mgKOH/gのヒドロキシル価を与え、約2000g/molの数平均分子量に等しかった。
【0156】
《例T1:ポリオール1から6のサーモグラフィー分析》
ポリオールのガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を測定するために、ポリオール1から6のサーモグラフィー分析を行った。分析は、下記の方法及び計器設定で、DSC(示差走査熱量計)を使用して行った。
【0157】
〈計器〉
モジュール:DSC822(名称:DSC822−LT)
製造者:Mettler Toledo社
【0158】
〈方法1:−150(10)...200(2x)/20 N2=30〉
温度プログラム:
等温部分1:−150℃、10分
動的部分2:
開始温度:−150℃
終了温度:200℃
加熱速度:20℃/分
等温部分3:200℃、1分
動的部分4:
開始温度:200℃
終了温度:−150℃
加熱速度:−20℃/分
等温部分5:−150℃、10分
動的部分6:
開始温度:−150℃
終了温度:200℃
加熱速度:20℃/分
【0159】
〈方法2:−100(10)...200(2x)/20 N2=30〉
温度プログラム:
等温部分1:−100℃、10分
動的部分2:
開始温度:−100℃
終了温度:200℃
加熱速度:10℃/分
等温部分3:200℃、1分
動的部分4:
開始温度:200℃
終了温度:−100℃
加熱速度:−10℃/分
等温部分5:−100℃、10分
動的部分6:
開始温度:−100℃
終了温度:200℃
加熱速度:10℃/分
【0160】
〈雰囲気〉
パージガス:N2
流量:30ml/分
【0161】
〈試料〉
サイズ:〜15mg
パン:自動突き刺し可能な蓋を有する40μlアルミニウム坩堝
【0162】
各ポリオールについて、方法1及び方法2の結果の平均を得て、示差走査熱量分析の平均結果を、下記の表2に与える。
【0163】
【表2】
【0164】
《例E5、E6及びE7:ポリオール5、6、及び7から生成したポリウレタンエラストマー》
ポリウレタンエラストマーを、例P5(E5)のポリオール5、比較例P6(E6)のポリオール6、及び比較例P7(E7)のポリオール7から製造した。E5、E6、及びE7のポリウレタンエラストマーは、1重量部のポリオール5、6、又は7、鎖延長剤としての2重量部の1,4−ブタンジオール(BDO)、及び3.1重量部の4,4’−5ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を使用して、ワンショット法により製造した。エラストマー生成のため、ポリオール5、6、又は7、及び1,4−ブタンジオール(BDO)鎖延長剤をブレンドして50℃で予熱して、脱ガス槽で脱ガスした。ポリオール及びBDOを完全に混合し、その後、融解した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を加えた。反応混合物を効率的に撹拌し、著しい粘度の増加が起こるまで、数分間脱ガス槽に移した。その後、混合物を100℃に予熱した鋼鋳型に注いだ。鋳型を閉じ、100℃のオーブンに移した。2時間後、エラストマーを鋳型から外し、100℃で18時間、さらに硬化した。各エラストマーE5、E6、及びE7の物理的特性を測定し、下記の表3に示す。
【0165】
【表3】
【0166】
ポリオール5をベースとする、発明によるポリウレタンエラストマーE5が、比較例E6及びE7と比較してより高いショアA硬度を示すことが、上記の表の結果からわかる。さらに、エラストマーE5は、ダイマー/アジピン含有比較ポリオール7によるエラストマーE7と比較して、より高い引張強度及び伸びを示す。エラストマーE5は、ポリオール5中のFDCAの含有に関連すると思われる、エラストマーE6及びE7よりも増加した引張強度を示すが、しかし、ダイマーのみの比較ポリオール6によるエラストマーE6と同等の伸びを維持する。
【0167】
上記の実施形態は例として記載されているのみであり、本発明は上記実施形態の詳細に限定されないことが、理解される。様々な変形が可能である。
なお、本開示には、以下の態様[1]〜[18]の開示も含まれる。
[1]
ポリオールとポリイソシアネートを反応させることにより得ることができるポリウレタンエラストマーであって、
前記ポリオールは、
a)ダイマー脂肪二酸残基、ダイマー脂肪ジオール残基、及びダイマー脂肪ジアミン残基から選択される少なくとも一つのダイマー脂肪残基、
b)少なくとも一つのフランジカルボン酸残基、及び
c)少なくとも10wt%のC2からC10のジオール
を含む、粘着特性を有しないポリウレタンエラストマー。
[2]
前記ポリオールが、少なくとも20wt%及び最大で80wt%の前記少なくとも一つのダイマー脂肪残基を含む、[1]に記載のポリウレタンエラストマー。
[3]
前記ポリオールが、少なくとも5wt%及び最大で40wt%の前記少なくとも一つのフランジカルボン酸残基を含む、[1]又は[2]のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー。
[4]
前記ポリオール中の、ダイマー脂肪残基対フランジカルボン酸残基の重量比が、少なくとも4:1かつ最大で20:1である、[1]、[2]、又は[3]のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー。
[5]
前記ポリオールが、少なくとも500及び最大で5000の数平均分子量を有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
[6]
前記ポリオールが、少なくとも−100℃及び最大で−30℃のガラス転移(Tg)温度を有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
[7]
前記ポリオールが、最大で80℃の融点(Tm)温度を有する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
[8]
前記ポリオールが、少なくとも10wt%から最大で50wt%の前記C2からC10のジオールを含む、[7]に記載のポリウレタンエラストマー。
[9]
鎖延長剤をさらに含み、前記鎖延長剤が、ジオールである、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
[10]
ISO527−2によって測定したときに、少なくとも7MPaの破断点引張強度を有する、[1]〜[9]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
[11]
ISO868によって測定したときに、少なくとも60のショアA硬度を有する、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
[12]
ISO527−2によって測定したときに、少なくとも3MPaの100%モジュラスを有する、[1]〜[11]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマー。
[13]
ポリウレタンエラストマーを製造するために使用されるポリオールであって、
前記ポリオールは、
a)ダイマー脂肪二酸残基、及びダイマー脂肪ジアミン残基から選択される少なくとも一つのダイマー脂肪残基、
b)少なくとも一つのフランジカルボン酸残基、及び
c)少なくとも10wt%のC2からC10のジオール
を含むポリオール。
[14]
前記ポリオールが、少なくとも500及び最大で5000の数平均分子量を有する、[13]に記載のポリオール。
[15]
前記ポリオールが、少なくとも−100℃及び最大で−30℃のガラス転移(Tg)温度を有する、[13]又は[14]のいずれかに記載のポリオール。
[16]
ダイマー脂肪残基対フランジカルボン酸残基の重量比が、少なくとも4:1かつ最大で20:1である、[13]〜[15]のいずれか一項に記載のポリオール。
[17]
[13]〜[16]のいずれか一項に記載のポリオールをイソシアネートと反応させて、
(i)ポリウレタンエラストマー又は
(ii)後に鎖延長剤と反応してポリウレタンエラストマーを生成する、イソシアネート末端プレポリマー
を生成することを含む、ポリウレタンエラストマーを製造する方法。
[18]
[13]〜[16]のいずれか一項に記載のポリオールの、ポリウレタンを生成するための使用。