(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817369
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】緊結式足場における安全手摺
(51)【国際特許分類】
E04G 5/14 20060101AFI20210107BHJP
E04G 7/34 20060101ALI20210107BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20210107BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
E04G5/14 302A
E04G7/34 301A
E04G21/32 D
A62B35/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-97521(P2019-97521)
(22)【出願日】2019年5月24日
(62)【分割の表示】特願2015-122821(P2015-122821)の分割
【原出願日】2015年6月18日
(65)【公開番号】特開2019-167815(P2019-167815A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】夛田 朋幸
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−191517(JP,A)
【文献】
特開2012−215033(JP,A)
【文献】
特開2015−068145(JP,A)
【文献】
特開2015−004261(JP,A)
【文献】
特開2006−328652(JP,A)
【文献】
特開2010−255202(JP,A)
【文献】
特開2004−285791(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/033278(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0012584(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00−7/34
E04G 21/24−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊結式足場の隣り合う一対の支柱(1)(1)の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材(2)と、該水平材の撓曲可能領域(F)の両端に形成した連結部(4)に固着された下向きのブラケット(5)と、該ブラケットに設けられた係脱固着手段(6)を備える安全手摺であり、
前記係脱固着手段(6)を前記支柱(1)の固定手段(9)に着脱自在に固定することにより前記安全手摺を足場に取付け、前記水平材(2)からブラケット(5)を介して係脱固着手段(6)に向かう凹入空間(20)が形成された状態で、前記安全手摺の水平材(2)に作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具(11)を摺動自在に係止することにより高所作業を行う構成において、
前記金属パイプ製の水平材は、両端部に左右から押圧変形された板状部(4a)を形成し、前記ブラケット(5)に延設した嵌入片(5a)を前記板状部に嵌入固着することにより前記連結部(4)を構成すると共に、水平材の押圧変形されていない隣接管部(2c)と前記板状部(4a)の間に被着管部(2b)を備え、
前記板状部(4a)に隣接する水平材の被着管部(2b)に短管(25)を外挿固着することにより、前記連結部(4)と、ブラケット(5)と、被着管部(2b)と、該被着管部に連なる隣接管部(2c)とを含む領域により前記撓曲可能領域(F)よりも高剛性とされた剛性部(G)を構成しており、
前記水平材に沿って摺動するフック付き係止具(11)を受止める係止手段(22)を前記連結部(4)の反対側に臨む前記短管(25)の端部(25a)により形成して成ることを特徴とする緊結式足場における安全手摺。
【請求項2】
緊結式足場の隣り合う一対の支柱(1)(1)の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材(2)と、該水平材の撓曲可能領域(F)の両端に形成した連結部(4)に固着された下向きのブラケット(5)と、該ブラケットに設けられた係脱固着手段(6)を備える安全手摺であり、
前記係脱固着手段(6)を前記支柱(1)の固定手段(9)に着脱自在に固定することにより前記安全手摺を足場に取付け、前記水平材(2)からブラケット(5)を介して係脱固着手段(6)に向かう凹入空間(20)が形成された状態で、前記安全手摺の水平材(2)に作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具(11)を摺動自在に係止することにより高所作業を行う構成において、
前記金属パイプ製の水平材は、両端部に左右から押圧変形された板状部(4a)を形成し、前記ブラケット(5)に延設した嵌入片(5a)を前記板状部に嵌入固着することにより前記連結部(4)を構成すると共に、水平材の押圧変形されていない隣接管部(2c)と前記板状部(4a)の間に被着管部(2b)を備え、
前記板状部(4a)に隣接する水平材の被着管部(2b)に金具(26)を固着し、該金具の上壁(26a)から垂設された一対の側壁(26b)を前記被着管部に挟着状態として固着することにより、前記連結部(4)と、ブラケット(5)と、被着管部(2b)と、該被着管部に連なる隣接管部(2c)とを含む領域により前記撓曲可能領域(F)よりも高剛性とされた剛性部(G)を構成しており、
前記水平材に沿って摺動するフック付き係止具(11)を受止める係止手段(22)を前記連結部(4)の反対側に臨む前記金具(26)の端部(26c)により形成して成ることを特徴とする緊結式足場における安全手摺。
【請求項3】
緊結式足場の隣り合う一対の支柱(1)(1)の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材(2)と、該水平材の下方で相互に交差する一対の斜材(3)(3)により構成された安全手摺であり、
前記水平材の撓曲可能領域(F)の両端に形成した連結部(4)に下向きのブラケット(5)を固着し、一対の斜材(3)の上端に設けた係脱固着手段(6)をそれぞれ前記ブラケットの下向き延長端(5b)に枢結しており、一対の斜材の係脱固着手段(6)の下向き挿入片(6b)を一対の支柱(1)の固定手段(9)の楔孔(9a)に挿入固定することにより前記安全手摺を足場に取付け、
前記水平材(2)の両端からブラケット(5)を介して係脱固着手段(6)に向かう凹入空間(20)が形成された状態で、前記安全手摺の水平材(2)に作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具(11)を摺動自在に係止することにより高所作業を行う構成において、
前記金属パイプ製の水平材は、両端部に左右から押圧変形された板状部(4a)を形成し、前記ブラケット(5)に延設した嵌入片(5a)を前記板状部に嵌入固着することにより前記連結部(4)を構成すると共に、水平材の押圧変形されていない隣接管部(2c)と前記板状部(4a)の間に被着管部(2b)を備え、
前記板状部(4a)に隣接する水平材の被着管部(2b)に短管(25)を外挿固着することにより、前記連結部(4)と、ブラケット(5)と、被着管部(2b)と、該被着管部に連なる隣接管部(2c)とを含む領域により前記撓曲可能領域(F)よりも高剛性とされた剛性部(G)を構成しており、
前記水平材に沿って摺動するフック付き係止具(11)を受止める係止手段(22)を前記連結部(4)の反対側に臨む前記短管(25)の端部(25a)により形成して成ることを特徴とする緊結式足場における安全手摺。
【請求項4】
緊結式足場の隣り合う一対の支柱(1)(1)の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材(2)と、該水平材の下方で相互に交差する一対の斜材(3)(3)により構成された安全手摺であり、
前記水平材の撓曲可能領域(F)の両端に形成した連結部(4)に下向きのブラケット(5)を固着し、一対の斜材(3)の上端に設けた係脱固着手段(6)をそれぞれ前記ブラケットの下向き延長端(5b)に枢結しており、一対の斜材の係脱固着手段(6)の下向き挿入片(6b)を一対の支柱(1)の固定手段(9)の楔孔(9a)に挿入固定することにより前記安全手摺を足場に取付け、
前記水平材(2)の両端からブラケット(5)を介して係脱固着手段(6)に向かう凹入空間(20)が形成された状態で、前記安全手摺の水平材(2)に作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具(11)を摺動自在に係止することにより高所作業を行う構成において、
前記金属パイプ製の水平材は、両端部に左右から押圧変形された板状部(4a)を形成し、前記ブラケット(5)に延設した嵌入片(5a)を前記板状部に嵌入固着することにより前記連結部(4)を構成すると共に、水平材の押圧変形されていない隣接管部(2c)と前記板状部(4a)の間に被着管部(2b)を備え、
更に、前記板状部(4a)に隣接する水平材の被着管部(2b)に金具(26)を固着し、該金具の上壁(26a)から垂設された一対の側壁(26b)を前記被着管部に挟着状態として固着することにより、前記連結部(4)と、ブラケット(5)と、被着管部(2b)と、該被着管部に連なる隣接管部(2c)とを含む領域により前記撓曲可能領域(F)よりも高剛性とされた剛性部(G)を構成しており、
前記水平材に沿って摺動するフック付き係止具(11)を受止める係止手段(22)を前記連結部(4)の反対側に臨む前記金具(26)の端部(26c)により形成して成ることを特徴とする緊結式足場における安全手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊結式足場における先行手摺等の安全手摺に関し、作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具が手摺から脱落することを防止したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場等における仮設足場の構築に関して、作業者の安全のため、手摺先行工法が推奨されており、上層作業床を設置する前に下層作業床から作業安全のための先行手摺が設置される。この際、上層作業床の設置作業に際し、作業者は、身体から延びる安全帯のフック付き係止具を先行手摺に係止し、万一、足を滑らせる等により作業床から落下した際の安全を確保している。
【0003】
フック付き係止具は、ワンタッチの係脱操作を可能とする開閉機構を備えており、作業者の移動を可能とするため、先行手摺の水平材に係止した状態で摺動自在とされている。従って、安全帯のフック付き係止具が先行手摺の水平材に係止されている限り、作業者の安全が確保できる。
【0004】
ところで、作業者の落下時に係止具が先行手摺から外れるおそれがないとする保証はないから、この点の安全対策が重要であり、このため、本出願人は、特許文献1及び2に示すような枠組み足場における先行手摺の安全装置を提案したところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−68145公報
【特許文献2】特開2015−68146公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、枠組み足場とは異なる楔緊結式等の緊結式足場に使用される先行手摺の場合は、手摺の水平材に沿ってフック付き係止具を摺動させながら作業中の作業者が誤って作業床から落下したとき、上記の特許文献で説明した枠組み足場の場合とは顕著に相違する特有の現象を生起する。
【0007】
このため、枠組み足場における先行手摺の場合とは異なる視点から緊結式足場の先行手摺に特有の問題を究明し、新たに工夫した安全装置を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、緊結式足場の先行手摺に特有の問題を探求した結果、フック付き係止具の離脱等を最も効果的に防止可能とした手摺を提供するものであり、その第1の手段として構成したところは、緊結式足場の隣り合う一対の支柱の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材と、該水平材の撓曲可能領域の両端に形成した連結部に固着された下向きのブラケットと、該ブラケットに設けられた係脱固着手段を備える安全手摺であり、前記係脱固着手段を前記支柱の固定手段に着脱自在に固定することにより前記安全手摺を足場に取付け、前記水平材からブラケットを介して係脱固着手段に向かう凹入空間が形成された状態で、前記安全手摺の水平材に作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具を摺動自在に係止することにより高所作業を行う構成において、前記金属パイプ製の水平材は、両端部に左右から押圧変形された板状部を形成し、前記ブラケットに延設した嵌入片を前記板状部に嵌入固着することにより前記連結部を構成
すると共に、該水平材の押圧変形されていない隣接管部と前記板状部の間に被着管部を備え、前記板状部に隣接する水平材の被着管部に短管を外挿固着することにより、前記連結部と、ブラケットと、被着管部と、該被着管部に連なる隣接管部とを含む領域により前記撓曲可能領域よりも高剛性とされた剛性部を構成しており、前記水平材に沿って摺動するフック付き係止具を受止める係止手段を前記連結部の反対側に臨む前記短管の端部により形成した点にある。
【0009】
また、本発明が第2の手段として構成したところは、緊結式足場の隣り合う一対の支柱の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材と、該水平材の撓曲可能領域の両端に形成した連結部に固着された下向きのブラケットと、該ブラケットに設けられた係脱固着手段を備える安全手摺であり、前記係脱固着手段を前記支柱の固定手段に着脱自在に固定することにより前記安全手摺を足場に取付け、前記水平材からブラケットを介して係脱固着手段に向かう凹入空間が形成された状態で、前記安全手摺の水平材に作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具を摺動自在に係止することにより高所作業を行う構成において、前記金属パイプ製の水平材は、両端部に左右から押圧変形された板状部を形成し、前記ブラケットに延設した嵌入片を前記板状部に嵌入固着することにより前記連結部を構成
すると共に、該水平材の押圧変形されていない隣接管部と前記板状部の間に被着管部を備え、前記板状部に隣接する水平材の被着管部に金具を固着し、該金具の上壁から垂設された
一対の側壁を前記被着管部に
挟着状態として固着することにより、前記連結部と、ブラケットと、被着管部と、該被着管部に連なる隣接管部とを含む領域により前記撓曲可能領域よりも高剛性とされた剛性部を構成しており、前記水平材に沿って摺動するフック付き係止具を受止める係止手段を前記連結部の反対側に臨む前記金具の端部により形成した点にある。
【0010】
そして、本発明が第3の手段として構成したところは、緊結式足場の隣り合う一対の支柱の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材と、該水平材の下方で相互に交差する一対の斜材により構成された安全手摺であり、前記水平材の撓曲可能領域の両端に形成した連結部に下向きのブラケットを固着し、一対の斜材の上端に設けた係脱固着手段をそれぞれ前記ブラケットの下向き延長端に枢結しており、一対の斜材の係脱固着手段の下向き挿入片を一対の支柱の固定手段の楔孔に挿入固定することにより前記安全手摺を足場に取付け、前記水平材の両端からブラケットを介して係脱固着手段に向かう凹入空間が形成された状態で、前記安全手摺の水平材に作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具を摺動自在に係止することにより高所作業を行う構成において、前記金属パイプ製の水平材は、両端部に左右から押圧変形された板状部を形成し、前記ブラケットに延設した嵌入片を前記板状部に嵌入固着することにより前記連結部を構成
すると共に、該水平材の押圧変形されていない隣接管部と前記板状部の間に被着管部を備え、前記板状部に隣接する水平材の被着管部に短管を外挿固着することにより、前記連結部と、ブラケットと、被着管部と、該被着管部に連なる隣接管部とを含む領域により前記撓曲可能領域よりも高剛性とされた剛性部を構成しており、前記水平材に沿って摺動するフック付き係止具を受止める係止手段を前記連結部の反対側に臨む前記短管の端部により形成した点にある。
【0011】
更に、本発明が第4の手段として構成したところは、緊結式足場の隣り合う一対の支柱の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材と、該水平材の下方で相互に交差する一対の斜材により構成された安全手摺であり、前記水平材の撓曲可能領域の両端に形成した連結部に下向きのブラケットを固着し、一対の斜材の上端に設けた係脱固着手段をそれぞれ前記ブラケットの下向き延長端に枢結しており、一対の斜材の係脱固着手段の下向き挿入片を一対の支柱の固定手段の楔孔に挿入固定することにより前記安全手摺を足場に取付け、前記水平材の両端からブラケットを介して係脱固着手段に向かう凹入空間が形成された状態で、前記安全手摺の水平材に作業者の身体から延びる安全帯のフック付き係止具を摺動自在に係止することにより高所作業を行う構成において、前記金属パイプ製の水平材は、両端部に左右から押圧変形された板状部を形成し、前記ブラケットに延設した嵌入片を前記板状部に嵌入固着することにより前記連結部を構成
すると共に、該水平材の押圧変形されていない隣接管部と前記板状部の間に被着管部を備え、前記板状部に隣接する水平材の被着管部に金具を固着し、該金具の上壁から垂設された
一対の側壁を前記被着管部に
挟着状態として固着することにより、前記連結部と、ブラケットと、被着管部と、該被着管部に連なる隣接管部とを含む領域により前記撓曲可能領域よりも高剛性とされた剛性部を構成しており、前記水平材に沿って摺動するフック付き係止具を受止める係止手段を前記連結部の反対側に臨む前記金具の端部により形成した点にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、緊結式足場に使用される安全手摺において、水平材2の両端に位置する連結部4とブラケット5を含む剛性部Gに位置して、水平材2を摺動するフック付き係止具11を受止める係止手段22を設けているので、下向きブラケット5により形成された凹入空間20にフック付き係止具11が落ち込むことはなく、従って、従来技術のように、作業中の作業者は、凹入空間20に落ち込んだフック付き係止具11を水平材2に向けて戻さなければならないという煩雑な作業から解放される。
【0013】
そして、フック付き係止具11を水平材2に摺動自在に係止させた状態で、万一、作業者が手摺の外部空間に転落したときは、緊張させられる親綱により水平材2に沿って摺動させられるフック付き係止具11を剛性部Gの上で係止手段22により受止めるので、転落した作業者を吊持状態で安全に保護することができるという効果がある。
【0014】
この際、請求項1及び3に記載の本発明によれば、連結部4の板状部4aに隣接する水平材2の被着管部2bに短管25を外挿し溶接等で固着することにより、該被着管部2bを強化すると共に、該被着管部2bに連なる隣接管部2cを撓曲困難として高剛性を保持させるので、該隣接管部2cを含んで剛性部Gを構成することができる。
【0015】
そして、前記連結部4の反対側に臨む前記短管25の端部25aにより係止手段22を形成しているので、水平材2を摺動するフック付き係止具11を前記端部25aにより受止め、剛性部Gを構成する前記隣接管部2cの上で停止させることが可能になる。
【0016】
また、請求項2及び4に記載の本発明によれば、連結部4を構成する板状部4aに隣接する水平材2の被着管部2bに門形金具26の側壁26bを溶接等で固着することにより、該被着管部2bを強化すると共に、該被着管部2bに連なる隣接管部2cを撓曲困難として高剛性を保持させるので、該隣接管部2cを含んで剛性部Gを構成することができる。
【0017】
そして、前記連結部4の反対側に臨む前記門形金具26の端部26cにより係止手段22を形成しているので、水平材2を摺動するフック付き係止具11を前記端部26cにより受止め、剛性部Gを構成する前記隣接管部2cの上で停止させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の緊結式足場における先行手摺の1例を示す正面図である。
【
図2】斜材の係脱固着手段を支柱のフランジ式固定手段に固着する方法を示しており、(A)は固着前の状態を示す正面図、(B)は固着後の状態を示す正面図である。
【
図3】緊結式足場に取付けられた先行手摺とフック付き係止具の関係を示す斜視図である。
【
図4】一般的なフック付き係止具に関して、(A)は開閉機構を閉止した状態の正面図、(B)は開閉機構を開放した状態の正面図である。
【
図5】従来技術の問題を示しており、フック付き係止具が凹入空間に落ち込んだ状態で作業者が手摺の外部空間に転落したときの状態を示す斜視図である。
【
図6】従来技術の水平材に突起を設けた比較例を示しており、フック付き係止具が突起に当接した状態で作業者が手摺の外部空間に転落したときの状態を示す斜視図である。
【
図7】従来技術の問題を解決するために本発明が知見した手摺の剛性構造を示しており、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態を示しており、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態を示しており、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(従来技術と問題点の解明)
本発明の実施形態を説明する前に、従来の緊結式足場における先行手摺とその問題点を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1ないし
図6に示すように、従来の緊結式足場において使用される先行手摺(以下、単に「手摺」という。)は、足場の隣り合う一対の支柱1、1の間に配置される撓曲可能な金属パイプ製の水平材2と、該水平材2の下方で相互に交差する一対の斜材3、3により構成されている。
【0021】
前記水平材2は、両端に連結部4を介して金属板製とされた下向きのブラケット5を固着している。連結部4は、水平材2を構成する金属パイプの両端部を左右から押圧変形することにより形成された板状部4aと、ブラケット5を構成する金属板に延設された嵌入片5aとから成り、前記嵌入片5aを前記板状部4aに嵌入すると共に、溶接等で固着することにより構成されている。
【0022】
前記斜材3、3は、上端に係脱固着手段6を設け、下端に楔付きの緊結手段7を設けており、前記係脱固着手段6を水平材2の前記ブラケット5の下向き延長端5bにボルト・ナット等の軸手段8を介して枢結し、前記軸手段8を超えて延長された係脱固着手段6の顎部6aにピン等の下向き挿入片6bを設けている。
【0023】
そこで、手摺は、足場における支柱1の上下方向に間隔をあけて固設されたフランジ式の固定手段に9に取付けられる。一対の支柱1、1の間に水平材2を配置した状態で、
図2(A)に示すように、前記軸手段8から斜材3を垂下させ、係脱固着手段6を上向きとして固定手段9の上方に臨ませた状態から、
図2(B)に示すように、前記斜材3を回動させ、係脱固着手段6の挿入片6aを固定手段9の楔孔9aに嵌入し、これにより、斜材3の係脱固着手段6が支柱1の固定手段9に固着されると共に水平材2の両端のブラケット5が固定される。この際、交差状態とされた一対の斜材3、3の下端部は、緊結手段7を介して支柱1の下方に固設された別のフランジ式の固定手段9に固着される。
【0024】
作業者が足場の作業床上で作業を行う際、作業者は、腰ベルト等の身体着用物から延びる親綱10の先端にフック付き係止具11を設けた安全帯を備えており、前記係止具11を手摺の水平材2に摺動自在に係止することにより安全を確保する。
【0025】
図4に示すように、フック付き係止具11は、金属板から成るフック部材12の尾端部に前記親綱10を結合するためのリング部13を設けると共に、フック部材12のフック開口を開閉する開閉アーム14を備えた開閉機構を設けている。開閉アーム14は、枢軸15を支点として回動自在とされ、スプリング16により、フック開口の内側から外側に向けて図示の反時計針方向に回動付勢され、該開閉アーム14の先端の当接部14aをフック部材12の先端の爪部12aに当接する。安全のため、開閉アーム14の反対側にロックアーム17が設けられている。ロックアーム17は、枢軸18を支点として回動自在とされ、スプリング19により、開閉アーム14のロック爪14bに向けて図示の時計針方向に回動付勢され、該ロックアーム17に設けたロックピン17aをフック部材12の背縁部に当接する。
【0026】
従って、
図4(A)に示すように、開閉アーム14が当接部14aを爪部12aに当接することによりフック開口を閉止した状態で、該開閉アーム14のロック爪14bが前記ロックピン17aに係止しており、従って、開閉アーム14は、フック開口を開放する方向(図示の時計針方向)への回動を阻止されている。
【0027】
フック付き係止具11は、作業者が開閉アーム14とロックアーム17を手の中に入れ、両アームを握りしめると、
図4(B)に示すように、フック開口が開放される。握りしめたとき、ロックアーム17がスプリング19に抗して図示の反時計針方向に回動することにより、ロックピン17aをロック爪14bから離脱し、開閉アーム14を図示の時計針方向に回動させ、当接部14aを爪部12aから離反させることにより、フック開口を開放する。
【0028】
従って、作業者は、フック付き係止具11の両アーム14、17を握りしめることにより、開放されたフック部材12を先行手摺3の横枠4に係止し、両アーム14、17から手を離すことにより、横枠4を係止した状態でフック開口を閉止することができ、係脱操作をワンタッチで行うことができる。
【0029】
フック付き係止具11は、手摺の水平材2に沿って摺動自在であり、従って、作業者は、親綱10の長さの範囲とフック付き係止具11の摺動範囲において移動可能である。
【0030】
ところで、緊結式足場に取付けられた手摺の水平材2は、上述のように水平材2の両端に下向きのブラケット5を設けているため、
図2(B)及び
図3に示すように、手摺の両端部には、水平材2からブラケット5を介して係脱固着手段6に向かう凹入空間20が形成されている。
【0031】
このため、作業者が作業床上を往来するとき、
図3に示すように、フック付き係止具11は、親綱10に引っ張られながら水平材2に沿って摺動し、実線で示す位置から、水平材2の端部に移動すると、鎖線で示すように、凹入空間20に落ち込む可能性がある。
【0032】
しかしながら、凹入空間20に落ち込んだフック付き係止具11は、図示のように、横向き姿勢の状態でブラケット5と斜材3の上端部との間に挟まれ、掴持されるので、作業者が親綱10を引っ張るだけでは、フック付き係止具11を元の位置(実線で示す位置)に戻すことが困難である。その結果、フック付き係止具11を水平材2に沿って摺動自在とする元の位置に戻すためには、作業者が手作業により係止具11の姿勢を起こし、水平材2に向けて移動させなければならないという煩雑がある。
【0033】
そして、万一、フック付き係止具11が凹入空間20に落ち込んだ状態で、作業者が手摺の外部空間に転落すると、
図5に矢印TWで示すように、係止具11の一部が前記ブラケット5と斜材3の上端部との間に挟まれた状態で捻じられるおそれがある。フック付き係止具11のフック部材12は、捻じり方向に弱く、容易に変形するので、開閉アーム14から離脱してフック開口を開放することにより手摺から離脱するおそれがあり、作業者の安全を確保することができないという問題がある。
【0034】
そこで、上記問題を解決するためには、
図6に示す比較例のように、水平材2の端部近傍部に突起21を設け、フック付き係止具11が前記凹入空間20に向けて摺動することを阻止するように構成すれば良いと考えられる。
【0035】
しかしながら、この比較例の場合は、万一、フック付き係止具11が突起21に当接した状態で、作業者が手摺の外部空間に転落すると、図示のように、剛性の低い撓曲可能な金属パイプから成る水平材2が湾曲変形する可能性がある。このような水平材2の湾曲は、該水平材2とブラケット5の間の連結部4に歪を発生し、該連結部4の板状部4aと嵌入片5aを分断するおそれがあり、作業者の安全を確保できない。
【0036】
(本発明の基本的構成)
本発明は、フック付き係止具11を摺動自在に係止する水平材2の剛性構造を鋭意探求することにより、上記問題を解決することができることを知得した。
【0037】
図7に示すように、水平材2は、前記金属パイプにより形成された丸パイプ形状を保持する撓曲可能領域Fの両端に前記板状部4aを含む連結部4を配置し、該連結部4から金属板製の前記ブラケット5を延長している。従って、水平材2は、上下方向に大荷重を受けたとき、前記撓曲可能領域Fが容易に湾曲変形するおそれがあるのに対して、前記金属板製のブラケット5と、板状部4a及び嵌入片5aから成る連結部4は、撓曲困難となるように形成され、高剛性を保持する剛性部Gを構成している。
【0038】
従って、フック付き係止具11が前記剛性部Gに位置して受止められるように構成すれば、該係止具11を介して上下方向に大荷重が作用しても、剛性部Gは容易に変形することがなく、好適に荷重を支持することができる。
【0039】
そこで、本発明は、上記のような剛性部Gにフック付き係止具11を受止める係止手段22(
図8ないし
図11)を設けたことを特徴とする。
【0040】
一般的に、作業者が手摺の外部空間に転落するときは、通常、手摺の一部に手を掛けながら姿勢を崩した状態で転落し、その際、親綱10が弛緩状態から瞬時に緊張されるので、フック付き係止具11は、前記撓曲可能領域Fに停止することはなく、水平材2の両端の何れか一方に向けて摺動させられる。このため、剛性部Gに係止手段22を設けることにより、摺動するフック付き係止具11を剛性部Gの上で受け止めることができる。そして、剛性部Gは、親綱10を介してフック付き係止具11に大荷重が作用する場合でも、該荷重を支持することができるので、転落した作業者を吊持状態で安全に保護することが可能になる。
【0041】
しかも、前記剛性部Gに係止手段22を設けることにより、フック付き係止具11は、常に水平材2に摺動可能な状態で係止させられ、凹入空間20に落ち込むことはない。従って、作業中の作業者は、凹入空間20に落ち込んだフック付き係止具11を水平材2に向けて戻さなければならないという煩雑な作業から解放される。
【0042】
(第1実施形態)
図8は、本発明の第1実施形態を示しており、金属パイプ製の水平材2は、従来技術と同様に、両端部に左右から押圧変形された板状部4aを形成し、ブラケット5に延設した嵌入片5aを前記板状部4aに嵌入し溶接等で固着することにより前記連結部4を構成しており、更に、前記板状部4aに隣接する水平材2の被着管部2bに短管25を外挿し溶接等で固着することにより、該被着管部2bを強化している。
【0043】
この際、強化された被着管部2bは、短管25から撓曲可能領域Fに向けて連なる隣接管部2cにおいても撓曲困難な高剛性のものとされるので、前記ブラケット5と、連結部4と、短管25により強化された被着管部2bと、前記隣接管部2cとを含む領域により剛性部Gが構成される。
【0044】
そこで、前記連結部4の反対側に臨む前記短管25の端部25aにより、水平材2の上端よりもH3で示すように上方に突出する係止手段22が形成されている。
【0045】
このため、水平材2を摺動するフック付き係止具11は、短管25の端部25aにより受止められ、剛性部Gを構成する前記隣接管部2cの上で停止することが可能となる。
【0046】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態を示しており、金属パイプ製の水平材2は、従来技術と同様に、両端部に左右から押圧変形された板状部4aを形成し、ブラケット5に延設した嵌入片5aを前記板状部4aに嵌入し溶接等で固着することにより前記連結部4を構成しており、更に、前記板状部4aに隣接する水平材2の被着管部2bに門形金具26を固着し、該門形金具26の上壁26aから垂設された一対の側壁26bを前記被着管部2bに挟着状態として溶接等で固着することにより強化している。
【0047】
この際、強化された被着管部2bは、門形金具26から撓曲可能領域Fに向けて連なる隣接管部2cにおいても撓曲困難な高剛性のものとされるので、前記ブラケット5と、連結部4と、門形金具26により強化された被着管部2bと、前記隣接管部2cを含む領域により剛性部Gが構成される。
【0048】
そこで、前記連結部4の反対側に臨む前記門形金具26の端部26cにより、水平材2の上端よりもH4で示すように上方に突出する係止手段22が形成されている。
【0049】
このため、水平材2を摺動するフック付き係止具11は、門形金具26の端部26cにより受止められ、剛性部Gを構成する前記隣接管部2cの上で停止することが可能となる。
【0050】
(手摺の種類)
以上、先行手摺について説明したが、本発明の手摺は、必ずしも先行手摺に限定されるものではなく、緊結式足場において安全目的で取付けられる種々の手摺を広く包含するものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0051】
1 支柱
2 水平材
2a 端部
2b 被着管部
2c 隣接管部
F 撓曲可能領域
G 剛性部
3 斜材
4、4A 連結部
4a 板状部
5 ブラケット
5a 嵌入片
5b 下向き延長端
6 係脱固着手段
6a 顎部
6b 挿入片
7 緊結手段
8 軸手段
9 固定手段
9a 楔孔
10 親綱
11 フック付き係止具
12 フック部
13 リング部
14 開閉アーム
15 枢軸
16 スプリング
17 ロックアーム
18 枢軸
19 スプリング
20 凹入空間
21 突起
22 係止手段
25 短管
25a 端部
26 門形金具
26a 上壁
26b 側壁
26c 端部