特許第6817401号(P6817401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817401
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】インク供給装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20210107BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20210107BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210107BHJP
   F04B 9/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B41J2/175 501
   B41J2/18
   B41J2/01 401
   F04B9/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-193770(P2019-193770)
(22)【出願日】2019年10月24日
(62)【分割の表示】特願2016-13469(P2016-13469)の分割
【原出願日】2016年1月27日
(65)【公開番号】特開2020-32724(P2020-32724A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兼古 佳明
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩由
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−107569(JP,A)
【文献】 特開2015−117647(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/145544(WO,A1)
【文献】 特開2014−162006(JP,A)
【文献】 特開2003−139064(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0021725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41J 2/01
B41J 2/18
F04B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク貯留部から導入されたインクをインクジェットヘッドに送給するダイヤフラム型の第1のポンプと、
前記インクジェットヘッドから吐出されなかったインクを吸い込んで、前記インクジェットヘッドに接続されるインクの供給経路の上流部において前記第1のポンプの吐出部に臨む吐出室に吐出するダイヤフラム型の第2のポンプと、
前記第1のポンプと前記第2のポンプとを、吐出タイミングが合致するように同位相の駆動電圧波形で駆動する制御装置と、
を備えるインク供給装置。
【請求項2】
前記第1のポンプの吐出部から前記吐出室の中央部に至るインク流動路と、前記第2のポンプの吐出部から前記吐出室の中央部に至るインク流動路は、対称形状に形成されている請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
前記第1のポンプの吐出部から前記吐出室の中央部に至るインク流動路と、前記第2のポンプの吐出部から前記吐出室の中央部に至るインク流動路は、流路長さと断面の形状が同じである請求項2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記制御装置の制御信号に応じた駆動電圧を、前記第1のポンプの圧電振動膜及び前記第2のポンプの圧電振動膜に出力する請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項5】
前記圧電振動膜は、圧電素子及び金属板で構成されており、
前記制御装置は、前記第1のポンプの駆動回路から前記圧電振動膜の前記圧電素子と前記金属板に出力される駆動電圧を合成した駆動電圧波形と、前記第2のポンプの駆動回路から前記圧電振動膜と前記金属板に出力される駆動電圧を合成した駆動電圧波形が合致するように制御する請求項4に記載のインク供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、紙等の記録媒体にインクを噴射するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドにインク供給するインク供給装置と、を備えている。インクジェット記録装置として、インク供給装置にインクの循環機構を備えたものが知られている。
【0003】
このインクジェット記録装置のインク供給装置は、外部のインク貯留部から導入されるインクをインクジェットヘッドに送給するダイヤフラム型の第1のポンプを備えている。インク供給装置は、第1のポンプの吐出部に臨む吐出室を有している。第1のポンプの吐出部からインクジェットヘッドには、吐出室を経由してインクが送給される。インクジェットヘッドは、第1のポンプから送給されたインクをノズル部に導入する導入通路と、ノズル部で噴射されなかったインクをインク供給装置に戻す還流通路と、を備えている。インク供給装置は、還流通路から戻されたインクを前記吐出室に戻す第2のポンプをさらに備えている。
【0004】
しかしながら、上述の従来のインクジェット記録装置は、ダイヤフラムの作動によってインクの吸入と吐出を交互に行う第1のポンプと第2のポンプが共通の吐出室に連通している。このため、第1のポンプの吐出タイミングと第2のポンプの吐出タイミングのずれにより、第1のポンプと第2のポンプが互いの吐出圧を弱めあう場合がある。この場合、第1のポンプと第2のポンプのポンプ機能を効率良く利用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−107569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、第1のポンプと第2のポンプのポンプ機能を効率良く利用することができるインク供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のインク供給装置は、ダイヤフラム型の第1のポンプと、ダイヤフラム型の第2のポンプと、制御装置とを持つ。第1のポンプは、インク貯留部から導入されたインクをインクジェットヘッドに送給する。第2のポンプは、インクジェットヘッドから吐出されなかったインクを吸い込んで、インクジェットヘッドに接続されるインクの供給経路の上流部において第1のポンプの吐出部に臨む吐出室に吐出する。制御装置は、第1のポンプと第2のポンプとを、吐出タイミングが合致するように同位相の駆動電圧波形で駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のインクジェット記録装置を概略的に示す正面図。
図2】実施形態のインクジェット記録装置を概略的に示す平面図。
図3】実施形態のインクジェットユニットの斜視図。
図4】実施形態のインクジェットユニットの分解斜視図。
図5】実施形態のインクジェットユニットの図3の5−5線に沿う断面図。
図6】実施形態のインクジェット記録装置のポンプ駆動系の構成を示すブロック図。
図7A】実施形態のポンプの吸入部を示す断面図。
図7B】実施形態のポンプの吐出部を示す断面図。
図8A】実施形態のポンプの吸入部を示す断面図。
図8B】実施形態のポンプの吐出部を示す断面図。
図9】実施形態の第1のポンプと第2のポンプの駆動波形を示す図。
図10】第1のポンプと第2のポンプの吐出位相のずれとインクの総吐出流量の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態のインクジェット記録装置1を、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付す。
図1は、ケーシング2の一部を破断した実施形態に係るインクジェット記録装置1の正面図である。図2は、ケーシング2の一部を破断した実施形態に係るインクジェット記録装置1の平面図である。
【0010】
インクジェット記録装置1は、ケーシング2内に送りテーブル3と、キャリッジ4と、メンテナンスユニット5が設置されている。送りテーブル3は、ケーシング2内に設置された送り用ガイドレール6にスライド可能に保持されている。送り用ガイドレール6は、略水平方向に直線状に延びている。送りテーブル3は、図示しないモータによって送り用ガイドレール6に沿う方向に移動操作される。また、送りテーブル3には、送りテーブル3上に枚葉紙等のシート状の記録媒体Sを吸着固定するための負圧発生装置7が取り付けられている。なお、記録媒体Sは、紙に限らず、樹脂や金属のフィルム、木材の板等であっても良い。
【0011】
キャリッジ4は、ケーシング2内に設置された走査用ガイドレール8にスライド可能に保持されている。走査用ガイドレール8は、送り用ガイドレール6と直交する略水平方向に直線状に延びている。キャリッジ4は、図示しないモータによって駆動される搬送ベルト9により、走査用ガイドレール8に沿う方向に移動操作される。
【0012】
キャリッジ4には、キャリッジ4の走査方向に沿って配列された複数のインクジェットユニット10が搭載されている。インクジェットユニット10は、インクを記録媒体に噴射するインクジェットヘッド11と、インクジェットヘッド11の上部側でインクジェットヘッド11に結合されるインク供給装置12と、を備えている。キャリッジ4には、記録媒体Sに噴射するインクの種類に応じた数のインクジェットユニット10が搭載される。各インクジェットユニット10から噴射するインクは、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、ホワイト等の色の異なるものの他、透明光沢インクや、赤外線または紫外線を照射したときに発色する特殊インク等を用いることができる。
【0013】
各インクジェットユニット10のインク供給装置12には、ケーシング2内に設置された対応するインクカートリッジ13(インク貯留部)が接続されている。各インクジェットユニット10のインク供給装置12と、対応するインクカートリッジ13とは、可撓性を有する接続チューブ14によって接続されている。
【0014】
複数のインクジェットユニット10は、キャリッジ4上に集約して配置され、キャリッジ4とともに走査用ガイドレール8に沿って移動する。キャリッジ4は、送りテーブル3上の記録媒体Sにインクジェットヘッド11からインクを噴射するときには、送りテーブル3の移動軌道と交差する範囲を移動する。キャリッジ4は、インクジェットヘッド11からインクの噴射を行わないときには、図1図2に示すように、送りテーブル3の移動軌道から外れた待機位置に停止する。
【0015】
メンテナンスユニット5は、複数のインクジェットユニット10がキャリッジ4とともに待機位置に戻ったときに、各インクジェットヘッド11のインクの噴射部を覆ってインクの蒸発を防止する。また、メンテナンスユニット5は、複数のインクジェットユニット10が待機位置に戻ったときに、インクジェットヘッド11の記録媒体Sとの接触部を適宜清掃する。
【0016】
各インクジェットユニット10のインクジェットヘッド11は、記録媒体Sにインクを噴射する図示しない複数のノズル部と、各ノズル部に対向して配置された図示しないアクチュエータと、を備えている。アクチュエータは、例えば、圧電セラミックを用いた圧電振動板等によって構成されている。アクチュエータの構造は、この構造に限らず、入力信号に応じてインクの圧力を高め得るものであれば他の構造であっても良い。
【0017】
この実施形態に係るインクジェット記録装置1は、記録媒体S上に入力信号に応じた印刷を行う場合に、インクジェットユニット10を搭載したキャリッジ4と、記録媒体Sを載せた送りテーブル3とを適宜直線移動させつつ、インクジェットヘッド11の入力信号に応じた特定のノズル部からインクを噴射する。
【0018】
なお、この実施形態においては、記録媒体Sを送りテーブル3に吸着固定し、その送りテーブル3を一方向に移動させるとともに、インクジェットユニット10を送りテーブル3の移動方向と直交する方向に移動させて、記録媒体S上に入力信号に応じた印刷を行う。しかし、記録媒体Sと記録媒体Sの送り方式は、これに限るものではない。例えば、巻取り紙のようなロールタイプの記録媒体を用い、その記録媒体をロールから引き出しながら、インクジェットヘッドで記録媒体に印刷を行っても良い。また、シート状の記録媒体を一枚ずつプラテンロールで送りながら、インクジェットヘッドで記録媒体に印刷を行っても良い。
【0019】
図3は、インクジェットユニット10の斜視図である。図4は、インクジェットユニット10の分解斜視図である。図5は、インクジェットユニット10の図3の5−5線に沿う断面図である。
インクジェットユニット10は、前述のようにインクジェットヘッド11の上部にインク供給装置12が一体に結合されている。この実施形態に係るインク供給装置12は、外部のインクカートリッジ13(インク貯留部)から導入されたインクをインクジェットヘッド11に供給する供給経路と、インクジェットヘッド11のノズル部から噴射されなかったインクを戻す戻し経路と、を有している。インク供給装置12は、図4図5に示すように、第1のポンプ15と第2のポンプ16を内蔵するケーシング17を有している。ケーシング17は、図3図4に示すように、インクジェットヘッド11のノズル部にインクを供給するためのインク供給管18と、インクジェットヘッド11のノズル部で噴射されなかったインクをインクジェットヘッド11から戻すためのインク戻し管19と、を備えている。
【0020】
第1のポンプ15は、印刷やメンテナンス動作等で消費した量のインクをインクカートリッジ13から補給し、インクをインクジェットヘッド11に供給するための供給ポンプである。ケーシング17内には、図5に示すように、吐出室20が形成されている。吐出室20は、インクジェットヘッド11に向かうインクの供給経路の上流部において第1のポンプ15の吐出部15aに臨んで配置されている。
【0021】
ケーシング17の内部には、インクを一時的に貯留できる供給側インク室21と回収側インク室22が形成されている。供給側インク室21は、ケーシング17内の吐出室20の下流部に隣接して設けられている。供給側インク室21にはインク供給管18が接続されている。インクジェットヘッド11には、供給側インク室21に貯留されたインクが供給される。
【0022】
回収側インク室22には、インク戻し管19が接続されている。回収側インク室22には、インクジェットヘッド11で噴射されなかったインクが戻し管19を通して流入する。回収側インク室22は、ケーシング17内の戻し経路中に配置されている。戻し経路の下流側には、吸入室23が隣接して配置されている。吸入室23には、第2のポンプ16の吸入部16bが臨んで配置されている。
【0023】
第2のポンプ16は、回収側インク室22から吸入室23に流入したインクを吐出室20に戻すための還流ポンプである。第2のポンプ16の吐出部16aは、吐出室20に臨んで配置されている。第1のポンプ15と第2のポンプ16の吐出部15a,16aは、並列に並んで吐出室20に臨んでいる。この実施形態に係るインク供給装置12は、第2のポンプ16を駆動源として、インクをインクジェットヘッド11との間で循環させる。
【0024】
また、供給側インク室21内と回収側インク室22内のインク液面の上部は、空気室とされている。各空気室内の圧力は図示しない圧力センサによって検出される。ケーシング17の上部には、図3図4に示すように、圧力調整部24が設けられている。圧力調整部24は、圧力センサの検出結果に応じてインクジェットヘッド11に供給されるインクの圧力を適正圧力に調整する。
【0025】
インク供給装置12のケーシング17は、全体がほぼ直方体状に形成されている。ケーシング17は、インクジェットユニット10がキャリッジ4(図1図2参照)に搭載されたときに、キャリッジ4の走査方向と合致する幅方向Wの寸法が、送りテーブル3の送り方向と合致する奥行方向Dの寸法と高さ方向Hの寸法に比較して短くなっている。ケーシング17は、図4図5に示すように、供給側インク室21と回収側インク室22とが形成されるケーシング本体17Aと、ケーシング本体17Aの幅方向Wの一側部に結合されるポンプユニットケース17Bと、を備えている。ケーシング17は、さらにポンプユニットケース17Bとの間で後述するポンプユニット25を挟み込んだ状態において、ポンプユニットケース17Bに結合されるユニットカバー17Cを備えている。
【0026】
供給側インク室21と回収側インク室22は、ケーシング本体17A内の奥行方向Dに並列に並んで配置され、各下端にインク供給管18とインク戻し管19が接続されている。インクジェットユニット10がキャリッジ4に搭載された状態では、供給側インク室21からインク供給管18にはインクが鉛直下方に流れる。
【0027】
ポンプユニットケース17Bは、正面視が奥行方向Dに長い略楕円状に形成されている。ポンプユニットケース17Bは、周壁の内部が、高さ方向Hに延びる第1の仕切壁26と第2の仕切壁27によって3つの領域に仕切られている。ポンプユニットケース17Bの第1の仕切壁26と第2の仕切壁27とに挟まれた中央領域には、3つの連通口28が形成されている。3つの連通口28は、ポンプユニットケース17Bの高さ方向Hの下方側に偏った範囲に形成されている。
【0028】
ポンプユニットケース17Bの幅方向Wの前後には、ポンプユニット25とケーシング本体17Aの側面が重ね合されている。ポンプユニットケース17Bの中央領域は、ポンプユニット25とケーシング本体17Aの側面とともに、前記の吐出室20を形成している。吐出室20には、ポンプユニット25上の第1のポンプ15と第2のポンプ16の各吐出部15a,16aが臨んでいる。また、ポンプユニットケース17Bの3つの連通口28にはフィルター29が取り付けられている。フィルター29は、吐出室20内を上流室30と下流室31とに隔成し、連通口28を通過するインクに混入している気泡を上流室30側でトラップする。下流室31は、開口21aを介してケーシング本体17Aの供給側インク室21に連通している。
【0029】
ポンプユニットケース17Bの第1の仕切壁26によって仕切られた一側の領域は、ポンプユニット25上の第1のポンプ15の吸入部15bが臨む吸入室32を構成している。ポンプユニットケース17Bには、吸入室32に連通するインク導入部33が形成されている。インク導入部33には、一端が対応するインクカートリッジ13に接続される接続チューブ14(図1図2参照)の他端が接続されている。インクカートリッジ13から吸入室32には、インク導入部33を通してインクが導入される。
【0030】
ポンプユニットケース17Bの第2の仕切壁27によって仕切られた他側の領域は、ポンプユニット25上の第2のポンプ16の吸入部16bが臨む吸入室23を構成している。吸入室23は、ケーシング本体17A側の回収側インク室22に連通している。
【0031】
この実施形態においては、第1のポンプ15と第2のポンプ16がインクをインクジェットヘッド11に送給するインク送給ポンプを構成している。第1のポンプ15と第2のポンプ16は、いずれもダイヤフラム型のポンプによって構成されている。第1のポンプ15と第2のポンプ16は、ポンプユニット25として一体のブロック上に隣接して配置されている。
【0032】
ポンプユニット25は、図4に示すように、ケーシング本体17Aとユニットカバー17Cによって挟持固定されるベースプレート34と、ベースプレート34のユニットカバー17C側の面に取り付けられる一対の圧電振動膜35と、を備えている。ベースプレート34の奥行方向Dの一側寄りには、ベースプレート34を幅方向Wに貫通する、第1のポンプ15の吸入孔36と吐出孔37とが形成されている。ベースプレート34の奥行方向Dの他側寄りには、ベースプレート34を幅方向Wに貫通する、第2のポンプ16の吸入孔38と吐出孔39とが形成されている。ベースプレート34上の吸入孔36と吐出孔37とに跨る領域には、当該領域の周囲を被うように一方の圧電振動膜35が取り付けられている。同様に、ベースプレート34上の吸入孔38と吐出孔39とに跨る領域には、当該領域の周囲を被うように他方の圧電振動膜35が取り付けられている。
【0033】
一方の圧電振動膜35は、図5に示すように、ベースプレート34との間で第1のポンプ15のポンプ室40を形成している。また、他方の圧電振動膜35は、図5に示すように、ベースプレート34との間で第2のポンプ16のポンプ室41を形成している。圧電振動膜35は、図4に示すように、圧電素子35aと金属板35bを張り合わせて主として構成されている。なお、図4中の符号42は、圧電振動膜35の表裏を覆う保護シートである。また、図4中の符号43は、圧電振動膜35と保護シート42の周縁部を保持してベースプレート34に固定するための保持リングである。
【0034】
第1のポンプ15の吸入部15bは、吸入室32とポンプ室40を連通する吸入孔36の形成部に、当該吸入孔36を開閉するシート状の弁体44iが取り付けられている。弁体44iは、ポンプ室40の内側に配置され、ポンプ室40の内側から吸入孔36の周縁の弁座45iに対して当接離間する。第1のポンプ15の吐出部15aは、ポンプ室40と吐出室20(上流室30)を連通する吐出孔37の形成部に、当該吐出孔37を開閉するシート状の弁体44oが取り付けられている。弁体44oは、吐出室20側(ポンプ室40の外側)に配置され、吐出室20側から吐出孔37の周縁の弁座45oに対して当接離間する。
【0035】
第2のポンプ16の吸入部16bは、吸入室23とポンプ室41を連通する吸入孔38の形成部に、当該吸入孔38を開閉するシート状の弁体44iが取り付けられている。弁体44iは、ポンプ室41の内側に配置され、ポンプ室41の内側から吸入孔36の周縁の弁座45iに対して当接離間する。第2のポンプ16の吐出部16aは、ポンプ室41と吐出室20(上流室30)を連通する吐出孔39の形成部に、当該吐出孔39を開閉するシート状の弁体44oが取り付けられている。弁体44oは、吐出室20側(ポンプ室41の外側)に配置され、吐出室20側から吐出孔39の周縁の弁座45oに対して当接離間する。
【0036】
図6は、第1のポンプ15と第2のポンプ16の駆動系の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、第1のポンプ15と第2のポンプ16の各圧電振動膜35は、対応する駆動回路46,47から駆動電圧を受けて駆動される。各駆動回路46,47は、制御装置49の制御信号に応じた駆動電圧を対応する圧電振動膜35に出力する。各圧電振動膜35は、駆動回路46,47からパルス状の駆動電圧を周期的に印加されることにより、中央領域が駆動電圧の変化に応じて変動する。第1のポンプ15と第2のポンプ16は、これによりポンプ室40,41の容積が増減して、吸入側と吐出側の弁体44i,44oが交互に開閉作動する。
【0037】
図7Aは、第1のポンプ15と第2のポンプ16のポンプ室40,41の容積が増大したときにおける吸入部15b,16bの弁体44iの挙動を示す断面図である。図7Bは、第1のポンプ15と第2のポンプ16のポンプ室40,41の容積が増大したときにおける吐出部15a,16aの弁体44oの挙動を示す断面図である。また、図8Aは、第1のポンプ15と第2のポンプ16のポンプ室40,41の容積が減少したときにおける吸入部15b,16bの弁体44iの挙動を示す断面図である。図8Bは、第1のポンプ15と第2のポンプ16のポンプ室40,41の容積が減少したときにおける吐出部15a,16aの弁体44oの挙動を示す断面図である。
【0038】
第1のポンプ15と第2のポンプ16は、図7A図7Bに示すように、圧電振動膜35が駆動電圧を受けてポンプ室40,41内の容積を増大させると、吸入部15b,16bの弁体44iが吸入孔36,38を開き、吐出部15a,16aの弁体44oが吐出孔37,39を閉じる。これにより、吸気室32,23からポンプ室40,41にインクが吸い入れられる。また、第1のポンプ15と第2のポンプ16は、図8A図8Bに示すように、圧電振動膜35がポンプ室40,41内の容積を減少させると、吸入部15b,16bの弁体44iが吸入孔36,38を閉じ、吐出部15a,16aの弁体44oが吐出孔37,39を開く。これにより、ポンプ室40,41内のインクが吐出孔37,39を通って吐出室20(上流室30)に吐出される。第1のポンプ15と第2のポンプ16は、以上の動作を繰り返すことにより、吸入室32,23内のインクを吐出室20へとの連続的に送給する。
【0039】
この実施形態に係るインク供給装置12では、第1のポンプ15と第2のポンプ16からインクが吐出室20の上流室30に吐出されると、そのインクがフィルター29を通過して下流室31に流入する。このとき、フィルター29は、インクに混入している気泡をトラップし、気泡が下流室31に流れ込むのを抑制する。こうして気泡を除去されて下流室31に流入したインクは、供給側インク室21内に一時的に貯留された後、インク供給管18を通ってインクジェットヘッド11のノズル部に供給される。また、インクジェットヘッド11のノズル部で噴射されなかったインクは、インク戻し管19を通ってインク供給装置12の回収側インク室22に流入する。回収側インク室22に流入したインクは、吸入室内23に流れ込む。吸入室23内に流れ込んだインクは、第2のポンプ16によって上流室30に再び吐出される。
【0040】
図5に示すように、吐出室20内における第1のポンプ15の吐出部15aから吐出室20の中央部Cに至るインク流動路と、第2のポンプ16の吐出部16aから吐出室20の中央部Cに至るインク流動路は対象形状に形成されている。即ち、二つのインク流動路は、吐出室20の中央部Cを挟む対称位置にあって、流路長さと断面の形状がほぼ同じに設定されている。
【0041】
また、第1のポンプ15と第2のポンプ16が共に作動する場合には、制御装置49は、第1のポンプ15と第2のポンプ16の吐出タイミングが常に合致するように、各圧電駆動膜35の作動を制御する。即ち、制御装置49は、第1のポンプ15と第2のポンプ16の各駆動回路46,47が、対応する圧電振動膜35に対して同位相の駆動電圧波形を出力するように制御する。
【0042】
図9は、第1のポンプ15の駆動回路46から出力される駆動電圧波形と、第2のポンプ16の駆動回路47から出力される駆動電圧波形を示す図である。図9中のV1は、第1のポンプ15の駆動回路46から圧電振動膜35の圧電素子35aに出力されるパルス電圧であり、図9中のV2は、第1のポンプ15の駆動回路46から圧電振動膜35の金属板35bに出力されるパルス電圧である。また、図9中のV1’は、第2のポンプ16の駆動回路47から圧電振動膜35の圧電素子35aに出力されるパルス電圧であり、図9中のV2’は、第2のポンプ16の駆動回路47から圧電振動膜35の金属板35bに出力されるパルス電圧である。
【0043】
図9中の上段のA−Bは、駆動回路46から圧電振動膜35の圧電素子35aと金属板35bに出力される駆動電圧を合成した駆動電圧波形を示している。また、図9中の下段のA−Bは、駆動回路47から圧電振動膜35の圧電素子35aと金属板35bに出力される駆動電圧を合成した駆動電圧波形を示している。制御装置49は、これらの上段の駆動電圧波形と下段の駆動電圧波形が合致するように駆動回路46,47を制御する。
【0044】
この実施形態に係るインクジェット記録装置1は、制御装置49が第1のポンプ15と第2のポンプ16を同位相の駆動電圧波形で駆動する。このため、第1のポンプ15の吐出タイミングと第2のポンプ16の吐出タイミングが合致し、第1のポンプ15と第2のポンプ16が互いの吐出圧を弱めあう現象が生じなくなる。
【0045】
図10は、第1のポンプ15と第2のポンプ16がともに作動しているときにおける、第1のポンプ15と第2のポンプ16の吐出位相のずれとインクの総吐出流量の関係を示すグラフである。
【0046】
図10に示すように、インクの総吐出流量は、第1のポンプ15と第2のポンプ16の吐出位相が180°ずれているときにほぼ最小になり、第1のポンプ15と第2のポンプ16の吐出位相がずれていないときにほぼ最大となる。この実施形態に係るインクジェット記録装置1は、第1のポンプ15と第2のポンプ16の吐出位相がずれないため、第1のポンプ15と第2のポンプ16のポンプ機能を効率良く利用することができる。
【0047】
また、この実施形態に係るインクジェット記録装置1は、第1のポンプ15の吐出部15aから吐出室20の中央部Cに至るインク流動路と、第2のポンプ16の吐出部16aから吐出室20の中央部Cに至るインク流動路が対称形状に形成されている。このため、第1のポンプ15の吐出部15aから吐出されるインクの圧力と、第2のポンプ16の吐出部16aから吐出されるインクの圧力は、吐出室20の中央部C付近において同位相で合成される。したがって、このインクジェット記録装置1においては、第1のポンプ15と第2のポンプ16のポンプ機能をより効率良く利用することができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…インクジェット記録装置,11…インクジェットヘッド,15…第1のポンプ,16…第2のポンプ,20…吐出室,49…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10