(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817448
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】入力装置およびプラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20210107BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
G06F3/041 460
G06F3/041 660
G06F3/044
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-535004(P2019-535004)
(86)(22)【出願日】2018年6月15日
(86)【国際出願番号】JP2018022895
(87)【国際公開番号】WO2019031060
(87)【国際公開日】20190214
【審査請求日】2020年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-152389(P2017-152389)
(32)【優先日】2017年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】笹川 英人
(72)【発明者】
【氏名】朝川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大坂 威史
(72)【発明者】
【氏名】高島 裕
【審査官】
▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−126469(JP,A)
【文献】
特開2015−191347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックカバーとフィルムセンサとが積層されており、
積層方向に平面視した場合に、前記プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1と、前記フィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2とが非平行であること、
を特徴とする、入力装置。
【請求項2】
前記樹脂の流れ方向MD1と、前記樹脂の流れ方向MD2とが直交している、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記プラスチックカバーに接合された筐体を備えている、
請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記筐体は、
積層方向に平面視した形状が額縁状であり、
前記プラスチックカバーの周縁に接合されている、
請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1と、フィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2とが非平行となるように積層する工程を有することを特徴とする、
プラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法。
【請求項6】
前記プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1は、当該プラスチックカバーのプラスチック基材製造時の押出し方向である、
請求項5に記載のプラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法。
【請求項7】
前記フィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2は、当該フィルムセンサのフィルム基材製造時のロール延伸方向である、
請求項5または6に記載のプラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力装置およびプラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や各種電子機器などに用いられる入力装置として、静電容量を検知する静電容量式のタッチパネルが用いられている。
特許文献1には、フィルム基材を用いた場合において、タッチパネル製造工程での熱変形を少なくすることができるタッチパネルが記載されている。当該タッチパネルは、同じ材質・厚みを有する二枚の透明導電膜層付きフィルム基材をフィルム製膜方向が90度となるように積層した構成を備えている。
特許文献2には、センサフィルムの複屈折を相殺するため、縦方向(MD:Machine Direction)を直交させた二枚のセンサフィルムが積層されたタッチパネルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−41446号公報
【特許文献2】US2012/0268914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に記載のタッチパネルは、フィルム基材の異方性を緩和するために、フィルム基材の製膜方向(縦方向)が直交するように積層させた構成を備えている。しかし、これらタッチパネルでは、同じ材質および厚みを有する複数のフィルム基材の製膜方向の関係が特定されているが、他の部材との関係におけるフィルム基材の配置方向については検討されていない。
また、特許文献1および2には、高温環境下で使用される場合の問題について記載されていない。例えば、カーナビゲーションのタッチパネルとして用いられる場合、高温にさらされることによって外観上や機能上の問題が生じるおそれがあるが、当該高温環境下において生じ得る問題は、記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、高温環境下において外観および機能を良好に維持できる、意匠性の低下や感度の不均一化が抑制された、入力装置を提供することである。また、本発明は、プラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、プラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置は、プラスチックカバーの樹脂の流れ方向とフィルムセンサの樹脂の流れ方向とが平行となると、高温環境下における反りが大きくなることを見出した。本発明はこの知見に基づいたものであり、以下の構成を備えている。
【0007】
本発明の入力装置は、プラスチックカバーとフィルムセンサとが積層されており、積層方向に平面視した場合に、前記プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1と、前記フィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2とが非平行であること、を特微とする。
これにより、高温環境下における反りを抑制することができる。
反りを効果的に抑制する観点から、前記樹脂の流れ方向MD1と樹脂の流れ方向MD2とが直交していることが好ましい。
【0008】
本発明の入力装置は、前記プラスチックカバーに接合された筐体を備えていてもよい。この場合、前記筐体は、積層方向に平面視した形状が額縁状であり、前記プラスチックカバーの周縁に接合されているものが好ましい。
高温環境下における反りの抑制により、プラスチックカバーと筐体との接合を維持することができる。
【0009】
本発明のプラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法は、プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1と、フィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2とが非平行となるように積層する工程を有することを特徴とする。
これにより、高温環境下における外観および機能が良好に維持される入力装置を安定的に製造することができる。
【0010】
本発明のプラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法における前記プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1は、例えば当該プラスチックカバーのプラスチック基材製造時の押出し方向であり、前記フィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2は、例えば当該フィルムセンサのフィルム基材製造時のロール延伸方向である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、高温環境下において外観上および機能上の問題が抑制された、プラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置を提供できる。また、本発明により、プラスチックカバーとフィルムセンサとが積層された入力装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)本発明の実施形態に係るタッチパネルにおける、プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1と、フィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2との関係を模式的に示す斜視図であり、(b)(a)のタッチパネルを積層方向に平面視した場合における、MD1とMD2との関係を示す模式図である。
【
図2】(a)タッチパネルが筐体に取り付けられる前の状態を模式的に示す斜視図であり、(b)タッチパネルが筐体に取り付けられた状態を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図2(b)の筐体に取り付けられた状態のタッチパネルをA−A’方向に見た断面図である。
【
図4】
図3において、タッチパネルが反りによって筐体から外れた状態を示す断面図である。
【
図5】高温(95℃)環境試験の結果を示すグラフである。
【
図6】高温・高湿(85℃・85%)の環境試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る入力装置について図面を参照しつつ説明する。説明済みの部材と同じ機能を備えた部材には同じ番号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
以下、本発明の入力装置を静電容量式のタッチパネルとして実施する形態について説明する。
図1(a)は、本実施形態に係るタッチパネル1における、プラスチックカバー11の樹脂の流れ方向MD1(以下、適宜MD1またはMD1方向という)と、フィルムセンサ12の樹脂の流れ方向MD2(以下、適宜MD2またはMD2方向という)との関係を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、積層方向から平面視した場合における、MD1方向とMD2方向との関係を示す模式図である。
【0015】
これらの図に示すように、タッチパネル1を構成するプラスチックカバー11とフィルムセンサ12とは、積層方向(Z1−Z2方向)に平面視した場合において、プラスチックカバー11のMD1方向を示す直線とフィルムセンサ12のMD2方向を示す直線とが直交するように、すなわちこれら二方向のなす角度Xが90度となるように積層されている。
【0016】
プラスチックカバー11は、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)やアクリル樹脂(PMMA)等のプラスチック基材を押出し成形して製造されたものである。この場合、プラスチックカバー11の樹脂の流れ方向MD1は、押し出し方向である。また樹脂の流れ方向はプラスチックカバー11の複屈折分布を測定することで確認することができる。押出し成形により製造されたプラスチックカバー11には、
図1(a)に示すように、押出し方向(MD1方向)に沿って反りが生じる傾向がある。例えば、高温環境下にさらされた場合、MD1方向に沿って弧を描くように反りが生じる。同図には、MD1方向に沿ってプラスチックカバー11がZ2方向に突出する弧を描くように反りが生じた場合を示している。
【0017】
プラスチックカバー11は、一種類のプラスチック基材からなる単層のものや、二種類のプラスチック基材が積層された二層のもの等を用いることができる。なお、プラスチックカバー11が、PMMA層とPC層との二層からなるものである場合、PMMA側の面が突出する方向に反りが生じる傾向がある。プラスチックカバー11の厚さは限定されないが、通常、1.0mm程度から3.0mm程度であり、1.5mm程度から2.0mm程度とすることが好ましい場合がある。
【0018】
フィルムセンサ12は、静電容量を検知する機能を有するフィルムである。例えば、透光性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)等を延伸法で製膜して製造されたフィルム基材層に、電極層(図示せず)等が配置された構成である。この場合、フィルムセンサ12(フィルム基材層)の樹脂の流れ方向MD2は、延伸方向である。また樹脂の流れ方向はフィルム基材層の複屈折分布を測定することで確認することができる。フィルムセンサ12は、高温環境下にさらされると、製造の際に延伸された方向(ロール方向、縦方向、MD2方向)に収縮する傾向がある。フィルムセンサ12のMD2方向の線膨張係数は、フィルムセンサ12を構成する樹脂の種類や製造条件等にもよるが、例えば、PETフィルムの線膨張係数は、一般に1.2×10
−5程度である。フィルムセンサ12の厚さは限定されないが、通常、200μm以下であり、100μm以下とすることが好ましい場合がある。
【0019】
図1(a)および
図1(b)に示すように、タッチパネル1は、フィルムセンサ12のMD2が、プラスチックカバー11のMD1に対して直交するように積層されている。このため、プラスチックカバー11のMD1がフィルムセンサ12のTD(Transverse Direction、樹脂の流れに対する横断方向)2と平行であり、フィルムセンサ12のMD2がプラスチックカバー11のTD1と平行である。この構成により、高温環境下において、フィルムセンサ12がプラスチックカバー11のMD1方向の反りを抑制すると同時に、プラスチックカバー11によりフィルムセンサ12のMD2方向の収縮を抑制することができる。
【0020】
タッチパネル1では、MD1方向とMD2方向との角度Xが90度である。このため、プラスチックカバー11のMD1方向の反り、およびフィルムセンサ12のMD2方向の収縮を効果的に抑制することができる。ただし、MD1方向とMD2方向とが交差するようにまたは非平行となるように積層すれば、プラスチックカバー11の反りおよびフィルムセンサ12の収縮を抑制する効果が得られる。このため、角度X(
図1(b)参照)が90度でなくても上記の効果が得られる。反りおよび収縮を効果的に抑制する観点から、角度Xは、45度〜135度が好ましく、80度〜100度がさらに好ましい。
【0021】
図2(a)および
図2(b)に示すように、タッチパネル1には、その周辺部を囲む額縁状の筐体2が接合(接着)される。
図3は、
図2(b)のA−A’方向に見た断面図である。同図に示すように、タッチパネル1のフィルムセンサ12は、一方の面が粘着層3を介して筐体2に接合されており、他方の面が光学透明粘着層13(OCA:Optical Clear Adhesive)を介してプラスチックカバー11に接合されている。光学透明粘着層13は、例えば、アクリル系粘着剤からなり、その厚さは25μm程度から200μm程度である。プラスチックカバー11とフィルムセンサ12との間には、加飾層14が設けられている。
【0022】
図4は、タッチパネル1が反りによって筐体2から剥がれた状態を示している。高温環境下で用いられると、タッチパネル1が反る方向、すなわちタッチパネル1と筐体2とが剥がれる方向の力が生じる。当該力が大きくなり、粘着層3により接合された状態を維持できなくなると、タッチパネル1と筐体2との剥がれが生じて反りが進行する。当該剥がれは、タッチパネル1の隅部C(
図2(b)参照)の近傍から生じやすい。
【0023】
剥がれが生じることはそれ自体として外観上問題であるが、剥がれによってタッチパネル1の反りが進むと、タッチパネル1の外観(意匠性)がさらに悪化することがある。たとえば、反りによってタッチパネル1の周縁部に設けられた加飾層14に応力が加わると、その外観が不均一になることがある。
【0024】
また、タッチパネル1の反りによって、機能上の問題が生じることもある。例えば、反りによってフィルムセンサ12に加えられる力が不均一になると、感度分布が不均一になることがある。さらに、プラスチックカバー11とフィルムセンサ12との間に部分的に気泡が生じることもある。この場合、気泡の有無によってフィルムセンサ12の誘電率が異なるから、タッチパネル1の感度分布がさらに不均一になる。
【0025】
そこで、タッチパネル1は、
図1に示すように、積層方向から平面視した場合における、プラスチックカバー11の樹脂の流れ方向MD1とフィルムセンサ12の樹脂の流れ方向MD2とを交差または非平行としている。これにより、高温環境下において、フィルムセンサ12がプラスチックカバー11の反りを抑制する作用を奏し、タッチパネル1と筐体2とが接合された状態を維持することができる。
【0026】
本発明は、プラスチックカバー11の樹脂の流れ方向MD1と、フィルムセンサ12の樹脂の流れ方向MD2とが交差または非平行となるように積層する工程を有する製造方法として実施することもできる。MD1とMD2とが交差または非平行になるように積層することにより、高温環境下におけるプラスチックカバー11の反りを、フィルムセンサ12によって抑制できる。
【0027】
例えば、プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1は、プラスチックカバーのプラスチック基材製造時の押出し方向である。また例えば、前記フィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2は、当該フィルムセンサのフィルム基材製造時のロール延伸方向である。この場合、MD1とMD2とが交差または非平行になるように積層することにより、高温環境下におけるプラスチックカバー11の反りを、フィルムセンサ12によって抑制できる。
【0028】
したがって、上述した積層する工程を有する製造方法によれば、プラスチックカバー11の周縁に額縁状の筐体2を接合した場合、高温環境下において接合状態を維持し、剥がれが生じないタッチパネル1を安定的に製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下では、プラスチックカバー11、フィルムセンサ12および、両者を積層したタッチパネル1について、高温(95℃)および高温・高湿(85℃・相対湿度85%)環境下おいて環境試験を行った結果を示す。
【0030】
(実施例)
(測定方法)
環境条件(雰囲気):高温(95℃)、高温・高湿(85℃・相対湿度85%)
保存時間:120時間、240時間
測定:所定の環境下に所定時間保存した後、室温で2時間放置、冷却後、測定した。試料を水平面Hに載置し、側方から見て最も高く盛り上がっている部分の水平面Hからの距離を反りの大きさWとした(
図1(a)参照)。
(測定試料)
直交積層タッチパネル:上記プラスチックカバーと上記フィルムセンサとを、積層方向から平面視した場合に、MD1方向とMD2方向とが直交するように積層した(角度X=90度、
図1(b)参照)。
プラスチックカバー:2種2層(PMMA/PC)、9inch(200×125mm、厚さt2mm)
フィルムセンサ:PET、9inch(200×125mm、厚さt50μm)
額縁状の筐体:PC、9inch(200×125mm、厚さt2mm、枠幅5〜30mm)
粘着層:アクリル系
【0031】
(比較例)
(測定方法)
環境条件(雰囲気):高温(95℃)、高温・高湿(85℃・相対湿度85%)
保存時間:120時間、240時間
測定:所定の環境下に所定時間保存した後、室温で2時間放置、冷却後、測定した。試料を水平面Hに載置し、側方から見て最も高く盛り上がっている部分の水平面Hからの距離を反りの大きさWとした(
図1(a)参照)。
(測定試料)
プラスチックカバー:2種2層(PMMA/PC)、9inch(200×125mm、厚さt2mm)
フィルムセンサ:PET、9inch(200×125mm、厚さt50μm)
平行積層タッチパネル:上記プラスチックカバーと上記フィルムセンサとを、積層方向から平面視した場合に、MD1方向とMD2方向とが平行になるように積層した(角度X=0度、
図1(b)参照)。
【0032】
高温および高温・高湿の環境(雰囲気)において環境試験を行った後に、各試料の反りの大きさを測定した結果を表1および
図5〜
図6に示す。
【0033】
<高温(95℃)環境>
【表1】
【0034】
表1および
図5に示すように、プラスチックカバーのMD1方向とフィルムセンサのMD2方向とが平行になるように積層した比較例のタッチパネルは、高温環境下での保存によって反りが生じた。タッチパネルの反り量は、プラスチックカバーおよびフィルムセンサを各単独で評価して得られた反り量の合計よりも大きくなった。このように、プラスチックカバーのMD1方向とフィルムセンサのMD2方向とを平行に積層すると、相乗的な作用によってタッチパネルの反り量が大きくなった。
【0035】
表1および
図5に示すように、プラスチックカバーのMD1方向とフィルムセンサのMD1方向とが直交するように積層した実施例のタッチパネル(直交積層タッチパネル)は、高温環境下での保存によっても初期の反り量を維持して変化が発生しなかった。
【0036】
また、実施例の直交積層タッチパネルの周縁を、積層方向からの平面視において、外郭形状がタッチパネルと同じ額縁状の筐体に接合させた入力装置についても同様の評価を行った。当該タッチパネルと筐体とからなる入力装置を三個作製し、高温環境下において、環境試験を行った。その結果、三個の入力装置のいずれも、剥がれが生じなかった。
このように、プラスチックカバーとフィルムセンサとの積層において、MD1方向とMD2方向とを非平行にすることにより、高温環境下において大きな反りが生じることを防止し、外観上、機能上の問題が生じない入力装置が得られた。
【0037】
<高温・高湿(85℃・85%)環境>
【表2】
【0038】
表2および
図6に示すように比較例の、高温・高湿環境下の結果からも、高温環境下で保存された場合と同様、プラスチックカバーのMD1方向とフィルムセンサのMD2方向とを平行に積層することにより、タッチパネルの反りが大きくなることが分かった。
【0039】
従来、プラスチックカバーとフィルムセンサとを有するタッチパネルの製造において、両者の積層方向(MD1とMD2との角度X、
図1(b)参照)が考慮されていなかった。このため、従来の製造方法により製造されたタッチパネルには、積層方向が平行(角度X=0度)のもの含まれており、当該平行に積層されたタッチパネルが高温環境下において、外観上、機能上の問題を生じさせる原因となっていたと考えられる。
【0040】
表2および
図6に示すように、プラスチックカバーのMD1方向とフィルムセンサのMD1方向とが直交するように積層した実施例のタッチパネル(直交積層タッチパネル)は、高温・高湿環境下での保存によっても初期の反り量を維持して変化が発生しなかった。
【0041】
また、直交積層タッチパネルの周縁を、積層方向からの平面視において、外郭形状がタッチパネルと同じ額縁状の筐体に接合させた入力装置についても同様の評価を行った。当該タッチパネルと筐体とからなる入力装置を三個作製し、高温・高湿環境下において、環境試験を行った。その結果、三個の入力装置のいずれも、剥がれが生じなかった。
このように、プラスチックカバーとフィルムセンサとの積層において、MD1方向とMD2方向とを非平行にすることにより、高温・高湿環境下において大きな反りが生じることを防止し、外観上、機能上の問題が生じない入力装置が得られた。
【0042】
したがって、プラスチックカバーの樹脂の流れ方向MD1とフィルムセンサの樹脂の流れ方向MD2との積層方向を非平行とすることにより、高温環境および高温・高湿環境下において、タッチパネルに反りが生じることを抑制し、外観上および機能上の信頼性の高いタッチパネルおよびタッチパネルを備えた入力装置を安定的に製造することができる。
【0043】
本発明は、上述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、技術思想として同一の態様をも含んでいる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の入力装置は、高温環境下において、反りによって意匠性が低下すること、および入力感度が不均一となることがなく、外観および機能を良好に維持することができるから、例えば、カーナビゲーション用のタッチパネルのような、高温となり得る環境に設置される入力装置として有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 :タッチパネル
2 :筐体
3 :粘着層
11 :プラスチックカバー
12 :フィルムセンサ
13 :光学透明粘着層
14 :加飾層
C :隅部
MD1 :プラスチックカバーの樹脂の流れ方向
MD2 :フィルムセンサの樹脂の流れ方向
TD1 :プラスチックカバーの樹脂の流れ方向に対する横断方向
TD2 :フィルムセンサの樹脂の流れ方向に対する横断方向
X :角度
H :水平面
W :反りの大きさ