(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6817512
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】割岩工具および当該工具を用いた破砕方法
(51)【国際特許分類】
E21C 37/04 20060101AFI20210107BHJP
B28D 1/28 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
E21C37/04
B28D1/28
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-120048(P2020-120048)
(22)【出願日】2020年7月13日
【審査請求日】2020年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399048869
【氏名又は名称】株式会社神島組
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】神島 昭男
(72)【発明者】
【氏名】神島 充子
【審査官】
彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−225925(JP,A)
【文献】
特開2009−91884(JP,A)
【文献】
特開2003−343189(JP,A)
【文献】
特開2019−203368(JP,A)
【文献】
特開平7−269267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 37/04
B28D 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物に形成された削孔の底面により支持されるベース部と、
前記削孔の開口側で前記削孔の深さ方向に沿って移動自在に設けられるブラケット部と、
一方端部が前記ベース部に回動自在に軸支されるとともに他方端部が前記ブラケット部に向けて延設される第1下方アームと、
一方端部が前記ブラケット部に回動自在に軸支されるとともに他方端部が前記ベース部に向けて延設される第1上方アームと、
前記第1下方アームの前記他方端部と前記第1上方アームの前記他方端部とを連結しながら前記ブラケット部の移動に伴って前記深さ方向と直交する第1径方向および第2径方向に移動する第1連結可動部と、
前記第1下方アームから前記第2径方向に離間しながら一方端部が前記ベース部に回動自在に軸支されるとともに他方端部が前記ブラケット部に向けて延設される第2下方アームと、
前記第1上方アームから前記第2径方向に離間しながら一方端部が前記ブラケット部に回動自在に軸支されるとともに他方端部が前記ベース部に向けて延設される第2上方アームと、
前記第2下方アームの前記他方端部と前記第2上方アームの前記他方端部とを連結しながら前記ブラケット部の移動に伴って前記第1連結可動部と反対の方向に移動する第2連結可動部と、
前記第1連結可動部および前記第2連結可動部に対して互いに近接するように付勢力を付与しながら連結する付勢部と、を備え、
前記ブラケット部に対して前記底面に向けて外力が付与されることで前記ブラケット部が前記底面に向けて下降するのに伴って、前記第1連結可動部および前記第2連結可動部がそれぞれ前記第1径方向および前記第2径方向に移動して前記削孔の内壁を押圧することを特徴とする割岩工具。
【請求項2】
請求項1に記載の割岩工具を前記付勢部により前記第1連結可動部および前記第2連結可動部が相互に近接した状態で前記削孔に挿入して前記ベース部を前記底面上に載置する工程と、
前記削孔に挿入された前記割岩工具の前記ブラケット部に対して前記底面に向かう外力を与えることで、前記第1連結可動部および前記第2連結可動部で前記削孔の内壁を押圧して前記削孔の周囲を破砕する工程と
を備えることを特徴とする破砕方法。
【請求項3】
請求項1に記載の割岩工具と同一構成を有する第1割岩工具を前記付勢部により前記第1連結可動部および前記第2連結可動部が相互に近接した状態で前記削孔に挿入して前記ベース部を前記底面上に載置する工程と、
前記削孔への前記第1割岩工具の挿入に続いて、請求項1に記載の割岩工具と同一構成を有する第2割岩工具を前記付勢部により前記第1連結可動部および前記第2連結可動部が相互に近接した状態で前記削孔に挿入して前記ベース部を前記第1割岩工具の前記ブラケット部の上に載置する工程と、
前記削孔に挿入された前記第2割岩工具の前記ブラケット部に対して前記底面に向かう外力を与えることで、前記第1割岩工具の前記第1連結可動部および前記第2連結可動部と前記第2割岩工具の前記第1連結可動部および前記第2連結可動部とで前記削孔の内壁を押圧して前記削孔の周囲を破砕する工程と
を備えることを特徴とする破砕方法。
【請求項4】
請求項3に記載の破砕方法であって、
前記第2割岩工具における前記第1連結可動部および前記第2連結可動部の移動の方向が前記第1割岩工具における前記第1連結可動部および前記第2連結可動部の移動の方向と異なるように、前記第2割岩工具を前記第1割岩工具の前記ブラケット部の上に載置する破砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの処理対象物を割岩する割岩工具および当該工具を用いて処理対象物を破砕する破砕技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、岩石、岩盤やコンクリート構造物などの処理対象物を割岩するための割岩工具として、楔部材(ウェッジと称されることもある)と羽根部材(ライナーと称されることもある)を用いた、いわゆるセリ矢が知られている。例えば特許文献1では、楔部材と羽根部材を組み合わせた割岩工具により処理対象物を割岩する技術が記載されている。より詳しくは、岩盤に削岩機で予め削孔を形成し、削孔内に楔部材と羽根部材を組み合わせた割岩工具を挿入し、楔部材の後端部をブレーカで打撃して割岩して岩盤を破砕している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−225925号公報(
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記割岩工具では、各羽根部材および楔部材を削孔に挿入する作業、ならびに岩盤の破砕後に各羽根部材および楔部材を回収する作業については、作業機械を補助的に使用することは可能である。しかしながら、割岩工具を用いた破砕作業では、人手による作業が数多く存在している。例えばブレーカによる打撃前に削孔に対して羽根部材を個別に挿入し、しかも削孔内で羽根部材を相互に離間させて楔部材の先端部を挿入するための隙間を形成する必要があった。また、破砕が完了して楔部材を羽根部材から引き抜いた後で破砕領域において互いに分離している各羽根部材の位置を確認し、それぞれを個別に回収する際にも、人手が必要となる。このような人手作業を割岩毎に行う必要があり、これが割岩工具を用いた破砕処理の効率を低下させる主要因の一つとなっていた。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、岩石、岩盤やコンクリート構造物などの処理対象物を効率的に割岩することができる割岩工具および当該工具を用いて処理対象物を効率的に破砕することができる破砕方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の態様は、割岩工具であって、処理対象物に形成された削孔の底面により支持されるベース部と、削孔の開口側で削孔の深さ方向に沿って移動自在に設けられるブラケット部と、一方端部がベース部に回動自在に軸支されるとともに他方端部がブラケット部に向けて延設される第1下方アームと、一方端部がブラケット部に回動自在に軸支されるとともに他方端部がベース部に向けて延設される第1上方アームと、第1下方アームの他方端部と第1上方アームの他方端部とを連結しながらブラケット部の移動に伴って深さ方向と直交する第1径方向および第2径方向に移動する第1連結可動部と、第1下方アームから第2径方向に離間しながら一方端部がベース部に回動自在に軸支されるとともに他方端部がブラケット部に向けて延設される第2下方アームと、第1上方アームから第2径方向に離間しながら一方端部がブラケット部に回動自在に軸支されるとともに他方端部がベース部に向けて延設される第2上方アームと、第2下方アームの他方端部と第2上方アームの他方端部とを連結しながらブラケット部の移動に伴って第1連結可動部と反対の方向に移動する第2連結可動部と、第1連結可動部および第2連結可動部に対して互いに近接するように付勢力を付与しながら連結する付勢部と、を備え、ブラケット部に対して底面に向けて外力が付与されることでブラケット部が底面に向けて下降するのに伴って、第1連結可動部および第2連結可動部がそれぞれ第1径方向および第2径方向に移動して削孔の内壁を押圧することを特徴としている。
【0007】
また、この発明の第2の態様は、破砕方法であって、上記割岩工具を付勢部により第1連結可動部および第2連結可動部が相互に近接した状態で削孔に挿入してベース部を底面上に載置する工程と、削孔に挿入された割岩工具のブラケット部に対して底面に向かう外力を与えることで、第1連結可動部および第2連結可動部で削孔の内壁を押圧して削孔の周囲を破砕する工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
さらに、この発明の第3の態様は、破砕方法であって、上記割岩工具と同一構成を有する第1割岩工具を付勢部により第1連結可動部および第2連結可動部が相互に近接した状態で削孔に挿入してベース部を底面上に載置する工程と、削孔への第1割岩工具の挿入に続いて、請求項1に記載の割岩工具と同一構成を有する第2割岩工具を付勢部により第1連結可動部および第2連結可動部が相互に近接した状態で削孔に挿入してベース部を第1割岩工具のブラケット部の上に載置する工程と、削孔に挿入された第2割岩工具のブラケット部に対して底面に向かう外力を与えることで、第1割岩工具の第1連結可動部および第2連結可動部と第2割岩工具の第1連結可動部および第2連結可動部とで削孔の内壁を押圧して削孔の周囲を破砕する工程とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、ベース部とブラケット部との間に、第1下方アームと第1上方アームとを第1連結可動部により連結した連結体と第2下方アームと第2上方アームとを第2連結可動部により連結した連結体とが設けられている。そして、割岩工具を削孔に挿入した後に、ブラケット部に対して削孔の底面に向けて外力が付与されると、ブラケット部が底面に向けて下降するのに伴って、第1連結可動部および第2連結可動部がそれぞれ第1径方向および第2径方向に移動して削孔の内壁を押圧して割岩処理が実行される。
【0010】
ここで、割岩工具を構成する要素は相互に連結されており、それらの要素を一括して削孔に挿入することができる。また、割岩処理後においても、それらの要素を一括して回収することができる。
【0011】
しかも、それらの構成要素の一つである付勢部は第1連結可動部および前記第2連結可動部に対して互いに近接するように付勢力を付与しており、削孔への挿入時点では第1連結可動部および第2連結可動部は相互に近接している。このため、割岩工具は削孔の深さ方向と平行な方向に延びた姿勢、つまり細長状態となっている。その結果、割岩工具の削孔への挿入が容易なものとなる。
【0012】
よって、本発明によれば、処理対象物を効率的に割岩することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る破砕方法の第1実施形態を実行する際に用いられる割岩工具およびブレーカを示す図である。
【
図2】本発明に係る破砕方法を実行する際に用いられる割岩工具の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る破砕方法の第1実施形態を模式的に示す図である。
【
図4】本発明に係る破砕方法の第2実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る破砕方法の第1実施形態は、以下の工程(1)〜(4)、
工程(1):岩石、岩盤やコンクリート構造物などの処理対象物に削孔を形成する、
工程(2):本発明に係る割岩工具を削孔に挿入する、
工程(3):上記割岩工具のブラケット部をブレーカのピストンで打撃して削孔の底面に向けて圧入して削孔の周囲を割岩する、
工程(4):ブレーカを取り外した後で割岩工具を回収する、
を実行することで処理対象物を割岩し、削孔の周囲を破砕するものであり、特に破砕効率を高めるために、次の説明する割岩工具を用いている。
【0015】
図1は、本発明に係る破砕方法の第1実施形態を実行する際に用いられる割岩工具およびブレーカを示す図である。また、
図2は、本発明に係る破砕方法を実行する際に用いられる割岩工具の構成を示す斜視図である。なお、各図における方向を統一的に示すために、XYZ直交座標軸を設定する。ここで、Z軸の軸方向が処理対象物2に対して削孔21を形成する深さ方向を表し、Z2方向に削孔21の底面211が位置する一方、Z1方向に削孔21の開口212が位置している。また、削孔21の深さ方向Zと直交するY軸のうちY1が第1径方向に相当し、Y2が第2径方向に相当している。さらに、Z軸およびY軸の両方に直交する軸をX軸としており、その一方をX1方向とし、他方をX2方向としている。
【0016】
割岩工具1は、ベース部11と、ブランケット部(被打撃部)12と、2本の下方アーム13a、13bと、2本の上方アーム14a、14bと、2つの連結可動部15a、15bと、付勢部16とを有している。これらの構成要素は次に説明するように相互に連結されている。ベース部11は、削孔21の開口212を介して削孔21内に挿入可能となっており、ベース部11のZ2方向側の平面が削孔21の底面211で係止されることで底面211により支持可能となっている。また、ベース部11のZ1方向側には、2つの下方アーム13a、13bの一方端部131、131を回動自在に軸支する軸支部位が設けられている。本実施形態では、
図2に示すように、下方アーム13aの一方端部131の軸支位置はY1方向側であり、下方アーム13aの他方端部132がブランケット部12に向かって延設されている。一方、下方アーム13bの一方端部131の軸支位置はY2方向側であり、下方アーム13bの他方端部132がブランケット部12に向かって延設されている。このように本実施形態では、下方アーム13bは下方アーム13aからY2方向側に離間して配置されている。
【0017】
また、ブランケット部12が、ベース部11に対し、削孔21の開口212側、つまりZ1方向側に離間した位置に配置されている。ブランケット部12のZ2方向側には、2つの上方アーム14a、14bの一方端部141、141を回動自在に軸支する軸支部位が設けられている。本実施形態では、
図2に示すように、上方アーム14aの一方端部141の軸支位置はY1方向側であり、上方アーム14aの他方端部142がベース部11に向かって延設されている。一方、上方アーム14bの一方端部141の軸支位置はY2方向側であり、上方アーム14bの他方端部142がベース部11に向かって延設されている。このように本実施形態では、上方アーム14bは上方アーム14aからY2方向側に離間して配置されている。
【0018】
Y1側の下方アーム13aの他方端部132は連結可動部15aによりY1側の上方アーム14aの他方端部142と連結され、
図1および
図2に示すように、YZ平面視で略く字形状に屈折した姿勢のY1側連結体17aを構成している。また、Y2側の下方アーム13bの他方端部132は連結可動部15bによりY2側の上方アーム14bの他方端部142と連結され、
図1および
図2に示すように、YZ平面視で略逆く字形状に屈折した姿勢のY2側連結体17bを構成している。このため、ブランケット部12は、X軸方向から見て略ひし形状に配置された連結体17a、17bにより支持されながら深さ方向Zに沿って移動自在となっている。そして、後で説明するようにブランケット部12に対してベース部11に向けた外力が作用すると、ブランケット部12がZ2方向に移動するのに応じて、連結体17aの屈曲角度(アーム角度θ)を狭めながら連結可動部15aをY1方向に移動させる。また、ブランケット部12の移動に応じて連結可動部15bは連結可動部15aと反対の方向に移動する。すなわち、ブランケット部12の移動は、連結体17bの屈曲角度(アーム角度θ)を狭めながら連結可動部15bをY2方向に移動させる。その結果、連結可動部15a、15bの外側面がそれぞれY1方向側およびY2方向側で削孔21の内壁面に当接して押圧する。
【0019】
また、連結可動部15a、15bの間には、2本の付勢部16が設けられ、両者を連結している。これらの付勢部16は連結可動部15a、15bに対して互いに近接するように付勢力を付与する(
図2中の実線矢印参照)。したがって、ブランケット部12に対して外力が付与されていないときには、付勢部16の付勢力によって連結可動部15a、15bは互いに近接されて連結体17a、17bの屈曲角度(アーム角度θ)は大きくなる。つまり、割岩工具1はZ方向に延びる細長形状を有する。そのため、連結可動部15a、15bの外側面の間隔は削孔21の内径よりも十分に狭まり、削孔21に対する割岩工具1の挿脱が容易なものとなる。
【0020】
上記ブランケット部12に対してベース部向きの外力を与えてZ2方向に移動させるためのブレーカ3は、
図1に示すように油圧パワーショベル等の建設車両5のアーム51にブラケット52を介して取り付けられている。このため、オペレータが建設車両5の操作レバーなどを操作してアーム51の位置や角度などを制御することでブレーカ3の位置および姿勢に制御可能となっている。
【0021】
次に、上記にように構成された割岩工具1およびブレーカ3を用いて処理対象物2を割岩して破砕する方法について
図3を参照しつつ説明する。
図3は本発明に係る破砕方法の第1実施形態を模式的に示す図である。この実施形態では、
図3(a)に示すように、処理対象物2に削孔21をZ2方向に形成する(工程(1):削孔形成工程)。これに並行して、上記削孔21に挿入すべき割岩工具1を準備しておく(準備工程)。この準備工程では、上記したように付勢部16の付勢力によって連結体17a、17bの屈曲角度(アーム角度θ)は大きく、細長形状の割岩工具1は削孔21に対して挿通容易なものとなっている。
【0022】
そして、同図(a)中の矢印で示すように、細長形状のまま割岩工具1を削孔21に挿入して割岩工具1のベース部11を削孔21の底面211上に載置し、底面211で支持する(工程(2):割岩工具の設置工程)。それに続いて、
図1に示すようにブレーカ3の先端部(図示省略)を割岩工具1のブランケット部12上に位置決めする。その後で、ブレーカ3を作動させて
図3(b)に示すように、ブランケット部12に対して打撃を加えてブランケット部12をZ2方向に押し下げる。これに連動して連結体17a、17bの屈曲角度θが小さくなり、連結可動部15a、15bがそれぞれY1方向およびY2方向に移動する。その結果、付勢部16の付勢力に抗いながら連結可動部15a、15bの外側面がそれぞれY1方向側およびY2方向側で削孔21の内壁面に当接して押圧する。これによって、処理対象物2が割岩されて削孔21の周囲が破砕される(工程(3):破砕工程)。
【0023】
その後で、ブレーカ3の作動を停止させるとともに、ブレーカ3をブランケット部12からZ1方向に離す。すると、付勢部16の付勢力によりブランケット部12はZ1方向に移動するとともに連結可動部15a、15bがそれぞれY2方向およびY1方向に引き戻されて破砕処理が停止される。ここで、連結可動部15a、15bにより削孔21の内壁に与えられていた押圧力がなくなり、しかも削孔21の周囲はすでに破砕されているため、割岩工具1を一体的に処理対象物2から回収することができる(工程(4):回収工程)。
【0024】
以上のように、本実施形態では、割岩工具1は、それを構成する要素部品(ベース部11、ブランケット部12と、下方アーム13a、13b、上方アーム14a、14b、連結可動部15a、15bおよび付勢部16)を相互に連結した状態で、削孔21に対して一括挿入され、また一括回収される。しかも、付勢部16を設けたことで連結可動部15a、15bを相互に近接させて割岩工具1を削孔の深さ方向Zと平行な方向に延びた姿勢、つまり細長状態に姿勢制御している。その結果、削孔21に対する割岩工具1の挿脱を容易なものとしている。その結果、処理対象物2を効率的に割岩することが可能となる。
【0025】
上記したように、本実施形態では、下方アーム13a、13bがそれぞれ本発明の「第1下方アーム」および「第2下方アーム」の一例に相当し、上方アーム14a、14bがそれぞれ本発明の「第1上方アーム」および「第2上方アーム」の一例に相当し、連結可動部15a、15bがそれぞれ本発明の「第1連結可動部」および「第2連結可動部」の一例に相当している。また、Y1方向およびY2方向がそれぞれ本発明の「第1径方向」および「第2径方向」の一例に相当している。
【0026】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、1つの削孔21に対して1つの割岩工具1を挿入して削孔21の周囲を破砕しているが、1つの削孔21に対して複数の割岩工具1を挿入してもよい。例えば
図4に示すように、
図2に示す割岩工具1と同一構成を有する2つの割岩工具1a、1bをこの順序で削孔21に挿入してもよい(第2実施形態)。
【0027】
図4は本発明に係る破砕方法の第2実施形態を模式的に示す図である。第2実施形態では、同図に示すように、削孔21の底面211上に割岩工具1aのベース部11を載置し、さらに割岩工具1aのブランケット部12上に割岩工具1bのベース部11を載置する。これにより割岩工具1aは削孔21の底面211で直接支持され、ブレーカ3からの外力を割岩工具1bを介して受ける。一方、割岩工具1bは割岩工具1aを介しては削孔21の底面211で間接的に支持され、ブレーカ3からの外力をブランケット部12で直接受ける。また、割岩工具1a、1bがZ1方向からの平面視で互いに交差(例えば直交)するように配置することで割岩工具1aによる割岩方向と割岩工具1bによる割岩方向とを相違させることができ、破砕効率をさらに高めることができる。
【0028】
この第2実施形態では、割岩工具1a、1bはそれぞれ本発明の「第1割岩工具」および「第2割岩工具」の一例に相当している。また、割岩工具1aについては、Y1方向およびY2方向がそれぞれ本発明の「第1径方向」および「第2径方向」の一例に相当している。一方、割岩工具1bについては、X1方向およびX2方向がそれぞれ本発明の「第1径方向」および「第2径方向」の一例に相当している。
【0029】
また、第2実施形態では、割岩工具1a、1bがZ1方向からの平面視で互いに交差(例えば直交)するように配置しているが、同平面視で割岩工具1bが割岩工具1aと完全に重なる、つまり割岩方向が一致するように配置してもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、2本の付勢部16を用いているが、付勢部16の数や配置などは任意である。
【0031】
また、上記実施形態では、ブランケット部12に対してベース部11に向けた外力を与える手段としてブレーカ3を用いているが、その他の手段により上記外力をブランケット部12に与えて割岩処理を実行するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの処理対象物を割岩する割岩工具全般および当該工具を用いて処理対象物を破砕する破砕技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…割岩工具
1a…(第1)割岩工具
1b…(第2)割岩工具
2…処理対象物
11…ベース部
12…ブランケット部
13a…(第1)下方アーム
13b…(第2)下方アーム
14a…(第1)上方アーム
14b…(第2)上方アーム
15a…(第1)連結可動部
15b…(第2)連結可動部
16…付勢部
21…削孔
131…(下方アームの)一方端部
132…(下方アームの)他方端部
141…(上方アームの)一方端部
142…(上方アームの)他方端部
211…(削孔21の)底面
Z…深さ方向
【要約】
【課題】岩石、岩盤やコンクリート構造物などの処理対象物を効率的に割岩することができる割岩工具および当該工具を用いて処理対象物を効率的に破砕する。
【解決手段】この発明は、第1下方アームと第1上方アームとを連結しながらブラケット部の移動に伴って深さ方向と直交する第1径方向および第2径方向に移動する第1連結可動部と、第2下方アームと第2上方アームとを連結しながらブラケット部の移動に伴って深さ方向と直交する第1径方向および第2径方向に移動する第2連結可動部と、第1連結可動部および第2連結可動部に対して互いに近接するように付勢力を付与しながら連結する付勢部と、を備え、外力に応じて第1連結可動部および第2連結可動部をそれぞれ第1径方向および第2径方向に移動させて削孔の内壁を押圧する。
【選択図】
図3