(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の容器(ボトル)の成形方法としては、ブロー成形方法が広く行われており、射出成形されたプリフォームを金型内にセットし、エアーを吹き込んで金型キャビティの形状に成形する2軸延伸ブロー成形法等が知られている。
【0003】
近年、プラスチック容器の分野においては、多様な機能、性能が求められることが多く、使用する材料や成形方法に工夫が求められている。例えば、ガスバリア性や遮光性、保温性等が要求される場合、使用する材料をガスバリア性を有するものとしたり、プラスチック材料に着色剤や紫外線吸収剤を添加すること等が行われている。
【0004】
しかしながら、材料の工夫等にも限度があり、プラスチック容器を多層化することで様々な機能を付与することも行われている。各層の構成材料等を最適化すれば、ガスバリア性に優れた遮光容器等、複合的な機能を有するプラスチック容器を実現することができるものと期待される。
【0005】
多層のプラスチック容器を成形するには、多層プリフォームを射出成形し、これをブロー成形すればよいものと考えられ、多層プリフォームの成形方法も種々提案されている。しかしながら、多層プリフォームの成形には高度な技術が必要であり、成形装置に多くの設備投資が必要となる等、コスト等の点で課題がある。
【0006】
このような状況から、プリフォームの外側に別途成形したプリフォームカバーを装着し、これをブロー成形することで複合容器を成形することが提案されている(特許文献1等を参照)。プリフォームカバーを利用することで、多層プリフォームを成形する必要がなくなり、コストの削減等に繋がるものと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、プリフォームカバーは、ダイレクトブロー成形によって形成されることがあり、ダイレクトブロー成形では肉厚を高精度に制御することが難しいので、プリフォームカバーの内面形状がばらつくことがある。このため、プリフォームカバーの内径が小さすぎてプリフォームの外側にプリフォームカバーを装着することが困難になったり、プリフォームカバーの内径が大きすぎてプリフォームカバーがプリフォームから容易に外れてしまったりすることがあるという問題がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、プリフォームにプリフォームカバーを装着する際の作業性を向上させることができる複合プリフォームを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、筒状のプリフォームと、筒状のプリフォームカバーを備え、前記プリフォームカバーは、前記プリフォームの挿入端が挿入される側の端部である被挿入端を備え、前記挿入端が前記被挿入端から前記プリフォームカバーに挿入されて前記被挿入端が前記プリフォームの所定位置にまで相対移動することによって前記プリフォームカバーが前記プリフォームに対して装着されるように構成され、前記被挿入端が前記所定位置の直前の位置である直前位置に到達するまでの第1状態での前記プリフォームと前記プリフォームカバーの間の摺動抵抗が、前記被挿入端が前記直前位置を超えた後の第2状態での前記プリフォームと前記プリフォームカバーの間の摺動抵抗よりも小さくなるように構成される、複合プリフォームが提供される。
【0011】
本発明の複合プリフォームでは、第1状態での摺動抵抗が、第2状態での摺動抵抗よりも小さい。このため、プリフォームカバーの被挿入端がプリフォームの所定位置に到達する直前まではプリフォームカバーがプリフォームに対してスムーズに相対移動し、プリフォームカバーの被挿入端がプリフォームの所定位置に到達する段階ではプリフォームカバーがプリフォームに確実に装着されるようにすることができるので、プリフォームにプリフォームカバーを装着する際の作業性を向上させることができる。
【0012】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、第1状態での前記挿入端の近傍の部位である挿入端近傍部位と前記プリフォームカバーの間の摺動抵抗が、第2状態での前記挿入端近傍部位と前記プリフォームカバーの間の摺動抵抗よりも小さい。
好ましくは、前記プリフォームの外面形状に対する前記プリフォームカバーの内面形状の相似比を内面相似比とし、前記被挿入端の反対側の端部である反対端の近傍の部位を反対端近傍部位とし、前記反対端近傍部位よりも前記被挿入端側の部位を被挿入端側部位とすると、前記反対端近傍部位での内面相似比が、前記被挿入端側部位での内面相似比よりも小さい。
好ましくは、前記プリフォームカバーは、前記反対端近傍部位での肉厚が前記被挿入端側部位での肉厚よりも大きい。
好ましくは、前記プリフォームの外面形状に対する前記プリフォームカバーの外面形状の相似比を外面相似比とすると、前記反対端近傍部位での外面相似比は、前記被挿入端側部位での外面相似比よりも小さい。
好ましくは、前記プリフォームカバーの前記被挿入端の近傍の部位を被挿入端近傍部位とすると、第1状態での前記プリフォームと前記被挿入端近傍部位の間の摺動抵抗が、第2状態での前記プリフォームと前記被挿入端近傍部位の間の摺動抵抗よりも小さい。
好ましくは、前記プリフォームは、プリフォーム小径部と、プリフォーム大径部を備え、前記プリフォーム大径部は、前記プリフォーム小径部よりも外面形状のサイズが大きく、且つ前記プリフォーム小径部よりも前記挿入端から離れた位置に配置されている。
好ましくは、前記プリフォームカバーは、プリフォームカバー小径部と、プリフォームカバー大径部を備え、前記プリフォームカバー小径部及び前記プリフォームカバー大径部は、それぞれ、前記プリフォーム小径部及び前記プリフォーム大径部に対向する位置に配置されている。
好ましくは、前記プリフォームカバー大径部での肉厚が前記プリフォームカバー小径部での肉厚よりも大きい。
好ましくは、前記プリフォームの外面形状に対する前記プリフォームカバーの外面形状の相似比を外面相似比とすると、前記プリフォームカバー大径部での外面相似比は、前記プリフォームカバー小径部での外面相似比よりも小さい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0015】
1.第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態の複合プリフォーム10は、筒状のプリフォーム1と、筒状のプリフォームカバー11を備える。
【0016】
プリフォーム1は、筒状(好ましくは円筒状)の胴部2を備える。胴部2の一端には口部3が設けられ、口部3には、図示しないキャップを取り付けるための係合部3aが設けられている。キャップは、打栓式で装着するものであってもよく、ネジ式で装着するものであってもよい。胴部2の他端がプリフォームカバー11に挿入される挿入端4であり、挿入端4がプリフォーム1の底部5となっている。底部5は、一例では半球形状であるが、その形状は特に限定されない。プリフォーム1は、樹脂材料を射出成形して形成することができる。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)を使用することが好ましい。
【0017】
プリフォームカバー11は、筒状(好ましくは円筒状)の胴部12を備える。胴部12の一端には被挿入端13が設けられており、被挿入端13を通じてプリフォーム1がプリフォームカバー11内に挿入される。胴部12の他端が、被挿入端13の反対側の端部である反対端14であり、反対端14がプリフォームカバー11の底部15となっている。底部15は、一例では半球形状であるが、その形状は特に限定されない。プリフォームカバー11の形成方法は特に限定されないが、一例では、溶融状態の円筒パリソンをそのままブロー成形するダイレクトブロー成形によって形成される。プリフォームカバー11を形成するための樹脂材料は、プリフォーム1と同一であっても異なっていてもよい。プリフォームカバー11は単層構成であっても多層構成であってもよい。
【0018】
また、プリフォームカバー11は、一例では、
図2に示すように、2つのプリフォームカバー11が連結部22で連結された形状の成形体21を形成し、成形体21を切断位置Sにおいて切断することによって形成することができる。切断位置Sでの切断によって形成された端部が被挿入端13となる。切断位置S近傍での成形体21の肉厚は、0.35mm以上が好ましい。この肉厚が小さすぎると成形体21を切断する際に成形体21が刃物による押圧によって変形して切断位置がずれてしまう場合があるからである。この肉厚の上限は特に限定されないが、例えば1mmである。この肉厚は、具体的には例えば、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
プリフォーム1及びプリフォームカバー11は、
図1(a)〜
図1(b)に示すように、プリフォーム1の挿入端4がプリフォームカバー11の被挿入端13からプリフォームカバー11に挿入され、
図1(c)に示す状態を経て、
図1(d)に示すように、被挿入端13がプリフォーム1の所定位置Aにまで相対移動することによってプリフォームカバー11がプリフォーム1に対して装着されるように構成されている。プリフォームカバー11は、プリフォーム1の全体を覆うように形成してもよいが、本実施形態では、プリフォームカバー11は、プリフォーム1を部分的に(具体的には胴部2の大部分及び底部5)を覆うように構成されている。
【0020】
一般に、プリフォームカバー11の内面形状は、プリフォーム1の外面形状とほぼ一致し、プリフォーム1をプリフォームカバー11内に挿入した状態では、プリフォームカバー11の内面の略全面がプリフォーム1の外面に接触する状態となり、外観上、プリフォーム1とプリフォームカバー11が一体化される。一方、本実施形態では、後述するように、プリフォームカバー11の内面形状をプリフォーム1の外面形状に一致させずに、プリフォームカバー11の被挿入端13の位置に応じて、プリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗の大きさを変化させることによって、プリフォーム1をプリフォームカバー11内に挿入しやすく且つプリフォームカバー11をプリフォーム1に装着した後はプリフォームカバー11がプリフォーム1から外れにくくすることを実現している。
【0021】
具体的には、本実施形態では、プリフォームカバー11の反対端14の近傍の部位を反対端近傍部位16とし、部位16よりも被挿入端13側の部位を被挿入端側部位17とすると、プリフォーム1の外面形状に対するプリフォームカバー11の内面形状の相似比(以下、「内面相似比」)は、部位16での値が部位17での値よりも小さくなっている。このため、このため、
図1(b)に示すように、プリフォーム1の挿入端4の近傍の部位である挿入端近傍部位6(
図1(d)に示すようにプリフォームカバー11がプリフォーム1に装着された状態で反対端近傍部位16に対向する部位)が部位17に対向している間はプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が小さいので、プリフォーム1をプリフォームカバー11内にスムーズに挿入することが可能である。一方、
図1(c)に示すように、挿入端近傍部位6が部位16に対向し始めるとプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が大きくなる。このため、
図1(d)に示すように、プリフォームカバー11がプリフォーム1に装着された状態では、プリフォームカバー11がプリフォーム1から容易に脱落しないようになる。なお、本件明細書においては、相似比の算出対象の2つの形状は、厳密に相似形状である必要はなく、相似比を算出可能な程度に類似した形状であればよい。
【0022】
部位16での内面相似比は、1より小さいことが好ましく、0.8〜0.99がさらに好ましい。部位16での内面相似比は、具体的には例えば、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。部位17での内面相似比は、0.9より大きいことが好ましく、1より大きいことがさらに好ましく、1.01〜1.2がさらに好ましい。部位17での内面相似比は、具体的には例えば、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
{(部位17での内面相似比)−(部位16での内面相似比)}の値は、0.01〜0.4が好ましく、0.05〜0.2がさらに好ましい。この値は、具体的には例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
プリフォームカバー11の外面形状は、特に限定されないが、本実施形態では、プリフォーム1の外面形状と相似形となっており、このため、部位16での肉厚が部位17での肉厚よりも大きくなっている。
【0025】
また、プリフォームカバー11の被挿入端13に注目して表現すると、本実施形態の複合プリフォーム10は、被挿入端13が所定位置Aの直前の位置である直前位置Bに到達するまでの第1状態でのプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が、被挿入端13が直前位置Bを超えた後の第2状態でのプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗よりも小さくなるように構成されている。被挿入端13が
図1(a)〜(b)の状態を経て
図1(c)に示す直前位置Bに到達するまでの状態が第1状態であり、この状態ではプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が小さく、プリフォームカバー11をプリフォーム1に対して相対移動させることが容易である。一方、被挿入端13が直前位置Bを超えてから所定位置Aに到達するまでの状態が第2状態であり、この状態では、プリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が大きい。
【0026】
プリフォーム1の挿入端4から所定位置Aまでの距離LAに対する、プリフォーム1の挿入端4から直前位置Bまでの距離LBの割合は特に限定されないが、0.5以上が好ましく、0.8以上がさらに好ましい。この割合の上限は特に限定されないが、例えば、0.99が好ましい。この割合が大きいほどプリフォーム1をプリフォームカバー11内に挿入しやすいが、この割合が大きすぎるとプリフォームカバー11が装着後に抜けやすく場合がある。この割合は、具体的には例えば、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、0.99であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
ところで、プリフォームカバー11をダイレクトブロー成形で形成した場合、プリフォームカバー11の内面形状がばらつきやすい。このため、プリフォームカバー11の内面形状がプリフォーム1の外面形状に一致するように設計すると、プリフォームカバー11の内径が小さくなるようにばらつくとプリフォーム1をプリフォームカバー11に挿入することが困難になり、プリフォームカバー11の内径が大きくなるようにばらつくとプリフォームカバー11の底にまでプリフォーム1を押し込んでもプリフォームカバー11がプリフォーム1から容易に脱落してしまうようになる。一方、本実施形態では、部位16での内面相似比が部位17での内面相似比が1よりも小さくなるように設計されている。このため、部位17においてプリフォームカバー11の内径が小さくなるようにばらついてもプリフォーム1をプリフォームカバー11に挿入することが困難になることが抑制され、部位16においてプリフォームカバー11の内径が大きくなるようにばらついてもプリフォームカバー11がプリフォーム1から容易に脱落してしまうことが抑制される。従って、本実施形態によれば、プリフォームカバー11の内面形状がばらついた場合でも、プリフォーム1を挿入しにくくなったり、プリフォームカバー11が脱落してしまったりするという問題が生じにくく、プリフォーム1にプリフォームカバー11を装着する際の作業性を向上させることができる。
【0028】
本実施形態の複合プリフォーム10は、
図1(d)に示すようにプリフォームカバー11がプリフォーム1に装着された後にブロー成形金型内にセットされてブロー成形されて金型内部のキャビティ形状に対応した容器が形成される。複合プリフォーム10は金型にセットされる前又はセットされた後に加熱されて軟化された状態でブロー成形される。
【0029】
2.第2実施形態
図3を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に類似しており、プリフォームカバー11の反対端近傍部位16の形状の相違が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0030】
本実施形態では、プリフォーム1の形状及びプリフォームカバー11の内面形状は、第1実施形態と同じであり、第1実施形態と同様の作用によって、プリフォーム1にプリフォームカバー11を装着する際の作業性を向上させることができるという効果が奏される。本実施形態では、プリフォームカバー11の部位16の外面形状が第1実施形態とは異なっている。第1実施形態では、プリフォームカバー11の外面形状をプリフォーム1の外面形状の相似形としつつ、部位16の肉厚を部位17よりも大きくすることによって、部位16での内面相似比が部位17での内面相似比がよりも小さくなる構成を実現している。一方、本実施形態では、プリフォーム1の外面形状に対するプリフォームカバー11の外面形状の相似比を「外面相似比」とすると、部位16での肉厚と部位17での肉厚が実質的に等しく、部位16での外面相似比が部位17での外面相似比よりも小さくなっている。このような構成によれば肉厚が均一なプリフォームカバー11が得られる。外面相似比についての好ましい値は、内面相似比について説明したものと同様である。
【0031】
3.第3実施形態
図4を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に類似しており、プリフォームカバー11の反対端近傍部位16の形状の相違が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0032】
本実施形態では、プリフォーム1の形状は第1実施形態と同じである。一方、第1実施形態では、プリフォームカバー11で底部15を有していたが、本実施形態では、プリフォームカバー11の反対端14に開口部18が設けられている。また、第1実施形態では、プリフォームカバー11の外面形状は、プリフォーム1の外面形状の相似形であったが、本実施形態では、相似形になっていない。
【0033】
プリフォームカバー11の内面形状は、開口部18が設けられることを除くと第1実施形態と同じであり、第1実施形態と同様の作用によって、プリフォーム1にプリフォームカバー11を装着する際の作業性を向上させることができるという効果が奏される。
【0034】
4.第4実施形態
図5を用いて、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に類似しており、プリフォーム1及びプリフォームカバー11のそれぞれの胴部に小径部と大径部が設けられている点が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0035】
本実施形態では、プリフォーム1の胴部2は、プリフォーム小径部2aと、プリフォーム大径部2bを備える。大径部2bは、小径部2aよりも外面形状のサイズ(円筒の場合外径)が大きく、且つ小径部2aよりも挿入端4から離れた位置に配置されている。大径部2bは、大径胴部2cと傾斜部2dを備える。傾斜部2dは、大径胴部2cと小径部2aの間に配置されている。小径部2aの外径に対する大径胴部2cの外径の比の値は、特に限定されないが、例えば、1.1〜2であり、1.2〜1.5が好ましい。この値は、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。傾斜部2dは、
図5(a)に示す断面において平面状であってもよく、湾曲していてもよい。口部3の中心軸CAに対する傾斜部2dの角度は、特に限定されないが、例えば、10〜60度であり、20〜50度が好ましい。この角度は、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。大径胴部2cと傾斜部2dの何れか一方は省略可能である。
【0036】
プリフォームカバー11の胴部12は、プリフォームカバー小径部12aと、プリフォームカバー大径部12bを備える。大径部12bは、小径部12aよりも外面形状のサイズ(円筒の場合外径)が大きい。小径部12a及び大径部12bは、それぞれ、小径部2a及び大径部2bに対向する位置に配置されている。大径部12bは、大径胴部12cと傾斜部12dを備える。傾斜部12dは、大径胴部12cと小径部12aの間に配置されている。
【0037】
本実施形態では、プリフォームカバー11の被挿入端13の近傍の部位を被挿入端近傍部位19(本実施形態では、被挿入端近傍部位19は、大径部12bと一致している。)とし、被挿入端近傍部位19よりも反対端14側の部位を反対端側部位20とすると、部位19での内面相似比が部位20での内面相似比よりも小さくなっている。部位19での内面相似比は、1より小さいことが好ましく、0.8〜0.99がさらに好ましい。部位19での内面相似比は、具体的には例えば、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。部位20での内面相似比は、0.9より大きいことが好ましく、1より大きいことがさらに好ましく、1.01〜1.2がさらに好ましい。部位20での内面相似比は、具体的には例えば、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
{(部位20での内面相似比)−(部位19での内面相似比)}の値は、0.01〜0.4が好ましく、0.05〜0.2がさらに好ましい。この値は、具体的には例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
図5(b)に示すように、プリフォーム1の挿入端4がプリフォームカバー11に挿入され、被挿入端近傍部位19が小径部2aに対向している間はプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が小さいので、プリフォーム1をプリフォームカバー11内にスムーズに挿入することが可能である。一方、
図5(c)に示すように、被挿入端近傍部位19が大径部2bに対向し始めるとプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が大きくなる。このため、
図5(d)に示すように、プリフォームカバー11がプリフォーム1に装着された状態では、プリフォームカバー11がプリフォーム1から容易に脱落しないようになる。
【0040】
プリフォームカバー11の外面形状は、特に限定されないが、本実施形態では、プリフォーム1の外面形状と相似形となっており、このため、部位19での肉厚が部位20での肉厚よりも大きくなっている。
【0041】
また、プリフォームカバー11の被挿入端13に注目して表現すると、本実施形態の複合プリフォーム10は、被挿入端13が所定位置Aの直前の位置である直前位置Bに到達するまでの第1状態でのプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が、被挿入端13が直前位置Bを超えた後の第2状態でのプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗よりも小さくなるように構成されている。被挿入端13が
図5(a)〜(b)の状態を経て
図5(c)に示す直前位置Bに到達するまでの状態が第1状態であり、この状態ではプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が小さく、プリフォームカバー11をプリフォーム1に対して相対移動させることが容易である。一方、被挿入端13が直前位置Bを超えてから所定位置Aに到達するまでの状態が第2状態であり、この状態では、プリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が大きい。このように、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第2状態での摺動抵抗が第1状態での摺動抵抗よりも大きくなっているので、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0042】
5.第5実施形態
図6を用いて、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に類似しており、被挿入端近傍部位19の形状の相違が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0043】
本実施形態では、プリフォーム1の形状及びプリフォームカバー11の内面形状は、第4実施形態と同じであり、第4実施形態と同様の作用によって、プリフォーム1にプリフォームカバー11を装着する際の作業性を向上させることができるという効果が奏される。本実施形態では、プリフォームカバー11の部位19の形状が第1実施形態とは異なっている。第1実施形態では、プリフォームカバー11の外面形状をプリフォーム1の外面形状の相似形としつつ、部位19の肉厚を部位20よりも大きくすることによって、部位19での内面相似比が部位20での内面相似比がよりも小さくなる構成を実現している。このため、第1実施形態では、中心軸CAに対する傾斜部2dの角度と中心軸CAに対する傾斜部12dの角度が実質的に同じになっている。一方、本実施形態では、部位19での肉厚と部位20での肉厚を実質的に等しくし、中心軸CAに対する傾斜部12dの角度が、中心軸CAに対する傾斜部2dの角度よりも小さくなるように構成することによって、部位19での内面相似比が部位20での内面相似比がよりも小さくなる構成を実現している。このような構成によれば肉厚が均一なプリフォームカバー11が得られる。外面相似比についての好ましい値は、内面相似比について説明したものと同様である。
【0044】
6.第6実施形態
図7を用いて、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に類似しており、プリフォームカバー11の形状の相違が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0045】
第4実施形態では、被挿入端近傍部位19(大径部12b)での内面相似比が1より小さくなっており、大径部12bでの摺動抵抗が大きくなるように構成されているが、本実施形態では、大径部12bでの内面相似比が1より大きくなっており、大径部12bでの摺動抵抗が小さくなるように構成されている。一方、本実施形態では、第1実施形態と同様に反対端近傍部位16での内面相似比が1より小さく、被挿入端側部位17での内面相似比が1より大きくなっている。このため、第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0046】
なお、本実施形態では、プリフォームカバー11の外面形状がプリフォーム1の外面形状と相似形となっており、部位16での肉厚を部位17での肉厚よりも大きくすることによって、部位16での内面相似比が部位17での内面相似比がよりも小さくなる構成を実現しているが、第2実施形態と同様に、部位16での肉厚と部位17での肉厚を実質的に等しくし、且つ部位16での外面相似比を部位17での外面相似比よりも小さくすることによって、部位16での内面相似比が部位17での内面相似比がよりも小さくなる構成を実現してもよい。
【0047】
7.第7実施形態
図8を用いて、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態は、第6実施形態に類似しており、プリフォームカバー11の形状の相違が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態では、プリフォームカバー11の被挿入端近傍部位19は、第4実施形態と同様での形状になっており、反対端近傍部位16は、第6実施形態と同様の形状になっている。
【0049】
本実施形態では、被挿入端13が
図8(a)に示す直前位置Bに到達するまでの状態が第1状態であり、被挿入端13が直前位置Bを超えてから
図8(b)に示す位置Cに到達するまでの状態が前期第2状態であり、被挿入端13が位置Cを超えてから
図8(c)に示す所定位置Aに到達するまでの状態が後期第2状態である。前期第2状態と後期第2状態によって、特許請求の範囲の「第2状態」が構成される。
【0050】
第1状態では、プリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が小さく、プリフォームカバー11をプリフォーム1に対して相対移動させることが容易である。前期第2状態では、反対端近傍部位16でのプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が大きくなる。後期第2状態では、被挿入端近傍部位19においてもプリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗が大きくなるので、プリフォーム1とプリフォームカバー11の間の摺動抵抗がさらに大きくなる。このように本実施形態では、摺動抵抗が3段階に変化するので、プリフォーム1を挿入しにくくなったり、プリフォームカバー11が脱落してしまったりするという問題がより一層生じにくい。
【0051】
8.第8実施形態
図9を用いて、本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に類似しており、プリフォームカバー11の形状の相違が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0052】
本実施形態では、プリフォーム1には小径部2aと大径部2bが設けられているが、プリフォームカバー11には小径部2aと大径部2bが設けられておらず、胴部12は、その長手方向に渡って一定の形状を有している。
【0053】
本実施形態では、
図9(c)に示すように、被挿入端13が傾斜部2dに当接した状態からプリフォームカバー11をプリフォーム1に対して強く押し付けると、被挿入端近傍部位19が弾性的に広がって、
図9(d)に示すように、部位19が大径胴部2cを取り囲む状態になって、プリフォームカバー11がプリフォーム1に装着される。
【0054】
9.第9実施形態
図10を用いて、本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態は、第8実施形態に類似しており、プリフォームカバー11の形状の相違が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0055】
本実施形態では、プリフォームカバー11は、胴部12のみを有するパイプ状である。プリフォーム1には、大径胴部2cよりも挿入端4から離れた位置に、係止部2eが設けられている。プリフォーム1をプリフォームカバー11内に挿入すると、第8実施形態と同様の作用によって部位19が拡径されて大径胴部2cを取り囲み、プリフォームカバー11をプリフォーム1に対してさらに押し込むと、プリフォームカバー11が係止部2eに当接して、プリフォームカバー11がプリフォーム1に対して位置決めされた状態で装着される。本実施形態では、プリフォームカバー11がパイプ状であるので、押出成形などによって安価に製造可能である。