(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記埋設型枠を貫通する挿通孔を設け、該挿通孔を通して前記固定部材の一端を前記下側床版部に埋設されたアンカー部材に連結する請求項1に記載の杭支持構造物の構築方法。
前記埋設型枠の上面部に前記挿通孔の上縁部を拡径した拡径部が形成され、該拡径部の底部に前記浮き上がり防止用押さえ部材を載置させる請求項2に記載の杭支持構造物の構築方法。
前記主梁部間に配置される前記埋設型枠間に間隙を設け、該間隙にコンクリートを打設して前記主梁部間に補助梁を形成する請求項1〜5の何れか一に記載の杭支持構造物の構築方法。
前記埋設型枠は、上部に積み上げられ、隣り合う異なる高さの軽量埋設型枠部材間が互いに間隔をおいて配置され、該隣り合う異なる高さの軽量埋設型枠部材間にコンクリートを打設し、前記主梁部とは高さの異なる補助梁を形成する請求項1〜5の何れか一に記載の杭支持構造物の構築方法。
積み上げる前記軽量埋設型枠部材の一部を低く形成し、前記埋設型枠の上面部に高さの異なる段差部を形成する請求項1〜7の何れか一に記載の杭支持構造物の構築方法。
前記下側型枠部材は、前記支持体を兼用する地上に設置された平坦な型枠兼用均しコンクリートであって、該型枠兼用均しコンクリート上で予め前記下側床版部及び前記梁構造体を備えたプレキャストコンクリート構造体を構築した後、該プレキャストコンクリート構造体を前記杭柱状体に支持させる請求項1〜12の何れか一に記載の杭支持構造物の構築方法。
【背景技術】
【0002】
ドルフィンや桟橋等の杭支持構造物は、水底地盤に打設された複数の鋼管杭にコンクリート製の上部工が支持された構造となっている。
【0003】
このコンクリート製の上部工は、鋼管杭に支持された格子状の梁構造体を備え、梁構造体上に床版部が形成されている。
【0004】
梁構造体は、各鋼管杭の頭部に接合された接合部と、隣り合う接合部間を連結する主梁部とを備え、平面視格子状に形成されている。
【0005】
従来、このような格子状の梁構造体及びその上の床版部を構築するには、
図22に示すように、各鋼管杭50,50…を打設した後、隣接する鋼管杭50,50に支保工用梁材51,51を支持させ、この支保工用梁材51,51を利用して鉄筋の配置等を行うとともに、鋼管杭50,50間に跨るように型枠52を形成する。
【0006】
この梁構造体及び床版部を形成する型枠52は、互いに対向する型枠板53,53間にセパレータを配置して型枠板53,53を互いに支持させるとともに、主梁部を形成する型枠板53,53及び床版部の底面を形成する型枠板54を支保工に設置された支持部材55,55に支持させている。
【0007】
そして、型枠間にコンクリートを打設し、養生・固化させた後、セパレータや型枠板を撤去することによって、梁部間に空洞部を有する格子状の梁構造体とその上面に一体化された床版部が形成されるようになっている。
【0008】
一方、この種の杭支持構造物の構築においては、梁を構成する1又は複数のコンクリート造のプレキャスト部材を予め陸上の工場又は製作ヤードで製造し、それを施工現場に搬送し、鋼管杭の頭部に当該プレキャスト部材を支持させ、その状態で杭頭部とプレキャスト部材との間にコンクリート等の充填材を打設することにより杭頭部にプレキャスト部材を接合させるようにした工法も知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0009】
このようなプレキャスト部材は、互いにセパレータを介して支持させた梁部形成用の型枠板を平坦な床版上に立設するとともに、支保工を介して床版部形成用の型枠板を支持させて型枠を組み上げ、当該型枠内にコンクリートを打設することによって形成するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、梁構造体及び床版部を形成した後、その形成に使用した型枠を撤去する必要があるため、その分の作業に労力を要し、作業効率が悪いという問題があった。
【0012】
特に、水上の施工現場において型枠を組む場合には、型枠の組立及び解体作業を水上で行わなければならず、海象・気象条件等の影響が大きいとともに、工期が長期化するという問題があった。
【0013】
また、プレキャスト部材で梁構造体を形成する場合には、プレキャスト部材の下面側が床版によって封鎖され、下側より型枠板や支保工等を撤去することができないため、床版部を別途構築するか、床版部に撤去作業用の穴を設ける必要があった。
【0014】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、型枠を撤去する必要がなく、効率的に作業を行える杭支持構造物の構築方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、杭柱状体に支持された主梁部によって形成された梁構造体と、該梁構造体上に支持される上側床版部とを備えている杭支持構造物の構築方法において、支持体上に敷設した下側型枠部材上にコンクリートを打設して下側床版部を形成した後、該下側床版部上の所定の箇所に一又は複数のブロック状の軽量埋設型枠部材を上下及び/又は水平方向に並べて設置して所望の形状の埋設型枠を形成し、棒状の固定部材の一端を前記下側床版部に埋設されたアンカー部材に連結し、他端を前記埋設型枠の上面部に配置された浮き上がり防止用押さえ部材に定着させ、その状態で前記埋設型枠間にコンクリートを打設して前記主梁部を形成するとともに、前記主梁部及び前記埋設型枠上にコンクリートを打設して前記上側床版部を形成することにある。
【0016】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記埋設型枠を貫通する挿通孔を設け、該挿通孔を通して前記固定部材の一端を前記下側床版部に埋設されたアンカー部材に連結することにある。
【0017】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記浮き上がり防止用押さえ部材が長尺板状に形成され、複数の前記埋設型枠の上面に亘って載置されることにある。
【0018】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記埋設型枠の上面部に前記挿通孔の上縁部を拡径した拡径部が形成され、該拡径部の底部に前記浮き上がり防止用押さえ部材を載置させることにある。
【0019】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項2〜4の何れか一の構成に加え、
前記埋設型枠を貫通する挿通孔の内側にガイド管を嵌合させ、
該ガイド管を通して前記固定部材の一端を前記下側床版部に埋設されたアンカー部材に連結し、前記ガイド管の上端面に前記浮き上がり防止用押さえ部材を支持させることにある。
【0020】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1〜5の何れか一の構成に加え、前記主梁部間に配置される前記埋設型枠間に間隙を設け、該間隙にコンクリートを打設して前記主梁部間に補助梁を形成することにある。
【0021】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項1〜5の何れか一の構成に加え、前記埋設型枠は、上部に積み上げられ、隣り合う異なる高さの軽量埋設型枠部材間が互いに間隔をおいて配置され、該隣り合う異なる高さの軽量埋設型枠部材間にコンクリートを打設し、前記主梁部とは高さの異なる補助梁を形成することにある。
【0022】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項1〜7の何れか一の構成に加え積み上げる前記軽量埋設型枠部材の一部を低く形成し、前記埋設型枠の上面部に高さの異なる段差部を形成することにある。
【0023】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項1〜8の何れか一の構成に加え、前記埋設型枠の上縁部に外側下向きに傾斜した傾斜部を形成することにある。
【0024】
請求項10に記載の発明の特徴は、請求項1〜9の何れか一の構成に加え、前記埋設型枠の側面部に外側下向き傾斜した傾斜壁を形成することにある。
【0025】
請求項11に記載の発明の特徴は、請求項1〜10の何れか一の構成に加え、前記埋設型枠の側面部を外向きに突出した断面山形状に形成することにある。
【0026】
請求項12に記載の発明の特徴は、請求項1〜11の何れか一の構成に加え、前記埋設型枠間に一又は複数のブロック状の軽量埋設型枠部材を積み上げて所望の高さの主梁用埋設型枠を設置し、前記埋設型枠と
前記主梁用埋設型枠との間にコンクリートを打設し、互いに平行な一対の主梁部を形成することにある。
【0027】
請求項13に記載の発明の特徴は、請求項1〜12の何れか一の構成に加え、前記支持体は、前記杭柱状体に支持された支保工であることにある。
【0028】
請求項14に記載の発明の特徴は、請求項1〜12の何れか一の構成に加え、前記下側型枠部材は、前記支持体を兼用する地上に設置された平坦な型枠兼用均しコンクリートであって、該型枠兼用均しコンクリート上で予め前記下側床版部及び前記梁構造体を備えたプレキャストコンクリート構造体を構築した後、該プレキャストコンクリート構造体を前記杭柱状体に支持させることにある。
【0029】
請求項15に記載の発明の特徴は、請求項1〜14の何れか一の構成に加え、前記軽量埋設型枠部材は、発泡樹脂によりブロック状に形成されていることにある。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る杭支持構造物の構築方法は、請求項1の構成を具備することによって、梁構造体の形状に関する設計の自由度が高く、型枠の撤去作業を省略し、効率よくコンクリート構造体を構築することができる。また、コンクリート構造体の下面が下側床版部によって閉鎖されるので、杭柱状体との連結部(飛沫帯)が水面に晒されず、耐久性を高めることができる。
【0031】
また、本発明において、請求項2の構成を具備することによって、固定部材を設置する際に梁鉄筋との干渉を防止(回避)できる。
【0032】
さらに、本発明において、請求項3の構成を具備することによって、複数の埋設型枠を一括して押さえつけることができる。
【0033】
さらにまた、本発明において、請求項4の構成を具備することによって、浮き上がり防止用押さえ部材を埋設型枠の上面に露出させなくともよく、上側床版部下面を平坦に形成することができる。
【0034】
また、本発明において、請求項5の構成を具備することによって、浮き上がり防止用押さえ部材の高さを一定に保つことができ、積み重ねられた複数の軽量埋設型枠部材の浮き上がり及び水平方向のズレを防止することができる。
【0035】
さらに、本発明において、請求項6乃至7の構成を具備することによって、強度設計に基づいて任意の箇所に補助梁部や小梁を設けることができる。
【0036】
また、本発明において、請求項8の構成を具備することによって、必要に応じて上側床版部の厚みに変化を持たせることができる。
【0037】
また、本発明において、請求項9の構成を具備することによって、主梁と上側床版の接続部にハンチを容易に形成することができる。
【0038】
さらに、本発明において、請求項10乃至12の構成を具備することによって、設計の仕様に合わせた断面形状(断面台形状、スピンドル状、双璧状)の主梁部を形成することができる。
【0039】
さらにまた、本発明において、請求項13の構成を具備することによって、水上においても作業を行うことができる。
【0040】
また、本発明において、請求項14の構成を具備することによって、工場やヤード等でのプレキャスト部材の構築に応用することができ、型枠部材を撤去する必要がないので、型枠を撤去するための孔を設ける必要がなく、上側床版部も一体に形成することができる。
【0041】
さらにまた、本発明において、請求項15の構成を具備することによって、加工し易く、要望に応じた様々な形状に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る杭支持構造物の構築方法によって構築された杭支持構造物の一例を示す正面図である。
【
図2】同上の杭支持構造物の構築方法における支保工設置工程の状態を示す部分拡大断面図である。
【
図3】同上の下側床版部形成した状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図5】同上の埋設型枠を設置した状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図6】同上の埋設型枠を設置した状態を示す平面図である。
【
図7】(a)は同上の埋設型枠を示す縦断面図、(b)は同平面図である。
【
図8】(a)〜(e)は同上の埋設型枠の設置工程の概略を示す部分拡大断面図である。
【
図9】同上のコンクリートを打設した状態を示す縦断面図である。
【
図10】本発明に係る杭支持構造物の構築方法の他の実施態様を示す縦断面図である。
【
図11】本発明に係る杭支持構造物の構築方法の他の実施態様を示す縦断面図である。
【
図12】本発明に係る杭支持構造物の構築方法の他の実施態様を示す縦断面図である。
【
図13】本発明に係る杭支持構造物の構築方法の他の実施態様を示す縦断面図である。
【
図14】本発明に係る杭支持構造物の構築方法の他の実施態様を示す縦断面図である。
【
図15】本発明に係る杭支持構造物の構築方法の他の実施態様を示す縦断面図である。
【
図16】本発明に係る杭支持構造物の構築方法のさらに他の実施態様であって、埋設型枠を設置した状態を示す平面図である。
【
図17】本発明に係る杭支持構造物の構築方法における埋設型枠の他の固定方法の一例を示す平面図である。
【
図18】同上の埋設型枠間の状態を示す拡大縦断面図である。
【
図19】同上のコンクリートを打設した状態を示す縦断面図である。
【
図20】本発明に係る杭支持構造物の構築方法の他の実施態様を示す縦断面図であって、(a)は型枠兼用均しコンクリート部を設置した状態、(b)は同下側床版部を形成した状態、(c)は軽量埋設型枠部材を設置した状態、(d)はプレキャストコンクリート体が形成された状態を示す図である。
【
図22】従来の杭支持構造物の構築方法の態様を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明に係る杭支持構造物の構築方法の第一の実施態様を
図1〜
図19に示した実施例に基づいて説明する。
【0044】
本実施例では、桟橋等の杭支持構造物1を現場施工によって構築する場合を例に説明し、杭支持構造物1は、
図1に示すように、水底地盤2に打設された複数の鋼管杭等の杭柱状体3,3…に上部工を成すコンクリート構造体4が支持されている。尚、図中符号wは水面である。
【0045】
このコンクリート構造体4は、杭柱状体3,3…に支持された互いに交差する複数の主梁部5,5…からなるコンクリート造の梁構造体6と、梁構造体6上に形成された上側床版部7とを備えている。
【0046】
このコンクリート構造体4を構築するには、先ず、
図2に示すように、打設された各杭柱状体3,3…を支持体として支持具8,8を取り付け、支持具8,8にH型鋼からなる支保工用桁材9を支持させ、各支保工用桁材9に支持させて杭柱状体3,3…間に支保工用梁材10を架設する。
【0047】
次に、支保工用梁材10上に間隔をおいて複数の根太11,11を架設し、根太11,11上に下側型枠部材12を敷設し、コンクリート構造体4が構築される領域の下面全体に亘る平坦な下側型枠を形成する。
【0048】
また、
図6に示すように、コンクリート構造体4が構築される領域全体の外側を覆う外側型枠を設置し、コンクリート構造体4全体の下面及び側面を囲った状態とする。
【0049】
そして、
図3、
図4に示すように、下側型枠部材12上に棒状の複数の下側床版用主筋13,13…を水平方向に間隔をおいて配筋するとともに、主梁部5,5…が形成される位置に合わせて隣り合う杭柱状体3,3間方向に向けた複数の主筋からなる主筋群14を形成する。
【0050】
主筋群14は、
図4に示すように、下側床版用主筋13,13…と同じ高さとその上側とに上下二段に配置され、互いに水平方向に間隔をおいて配置された下側梁用主筋15,15…と、最上段に配置された棒状の上側床版用主筋16,16…と同じ高さとその下側に上下二段に配置され、互いに水平方向に間隔をおいて配置された上側梁用主筋17,17…とを備えている。
【0051】
そして、上下梁用主筋間の両側に上下に間隔をおいて梁側面鉄筋18,18…が配置され、上下床版用主筋及び梁側面鉄筋18,18…の外側をせん断補強筋19,19…で拘束し、籠状の主筋群14が形成される。
【0052】
配筋が終了したら、下側型枠部材12上にコンクリートを打設し、一定の厚さを有する平板状の下側床版部20を形成する。
【0053】
この下側床版部20は、下側床版用主筋13,13…が埋設され、且つ、上側の下側梁用主筋15,15…が下側床版部20上に露出された状態となる厚みに形成し、せん断補強筋19,19…の下端部もこの下側床版部20内に埋設される。
【0054】
尚、各下側床版部20には、所定の位置、即ち、後述する埋設型枠24を設置する位置に上端の連結部が上面より突出した状態にアンカー部材21が埋設される。
【0055】
そして、下側床版部20を構成するコンクリートを一定期間養生させた後、
図5〜
図8に示すように、下側床版部20上の所定の箇所、即ち、主筋群14に囲まれた空間にブロック状の一又は複数の軽量埋設型枠部材22,22…を上下及び水平方向に並べて設置し、主梁部5,5…を形成するための所望の形状の埋設型枠24を形成する。
【0056】
軽量埋設型枠部材22,22…は、撥水性、難燃性を有する発泡スチロール等の発泡樹脂によって定形の中実ブロック状に形成され、アンカー部材21の位置に合わせて上下方向に貫通した固定部材23を挿通する挿通孔28が形成されている。
【0057】
この軽量埋設型枠部材22,22…は、単位体積重量が0.12〜0.35kN/m
3と軽量であるとともに、許容圧縮応力が20〜200kN/m
2と高い強度を有している。また、この軽量埋設型枠部材22,22…は、加工性に優れ、現場においてノコギリや電熱線等によって所望の形状に加工することができ、曲面を有する梁形状にも対応できるようになっている。
【0058】
そして、各軽量埋設型枠部材22,22を施工現場において、構築する主梁部5、上側床版部7等の形状に合わせて、ノコギリや電熱線等の加工具によって所望の形状に加工し、それを上下及び水平方向に並べて積み上げることによって所望の高さ及び形状の埋設型枠24を形成する。
【0059】
本実施例では、積み上げる軽量埋設型枠部材22の一部を低く形成し、埋設型枠24の上面部に高さの異なる段差部24aを形成する。
【0060】
この軽量埋設型枠部材22,22を積み上げる作業は、
図8(b)に示すように、先ず、下側床版部20に埋設されたアンカー部材21に固定部材23の下端を螺合させて連結し、下側床版部20上に固定部材23を立設させる。
【0061】
固定部材23は、棒状に形成され、上下にネジ部が形成されており、下端のネジ部をアンカー部材21に螺合できるとともに、上端のネジ部に定着用ナット26を螺合させることによって浮き上がり防止用押さえ部材25に定着できるようになっている。
【0062】
次に、
図8(c)に示すように、固定部材23を挿通孔28に通しつつ、最下段の軽量埋設型枠部材22を吊り下ろして、下側床版部20上に載置させ、しかる後、固定部材23の外側且つ、挿通孔28の内側にガイド管29を嵌合させる。
【0063】
ガイド管29は、塩化ビニール管や鋼管等の管体によって構成され、設置する埋設型枠24毎の高さに合わせて端部が切断され、長さが調節されている。
【0064】
そして、
図8(d)に示すように、ガイド管29に挿通孔28を嵌め込み、ガイド管29に案内させつつ、各段の軽量埋設型枠部材22,22を吊り下ろし、複数の軽量埋設型枠部材22,22を積み上げる。尚、積み重ねた軽量型枠用部材22間の補助固定方法として、接着剤や粘着テープを用いて軽量型枠用部材22間を固定するようにしても良い。
【0065】
最上段の軽量型枠用部材22の上面部、即ち、埋設型枠24の上面部に、挿通孔28の上縁部を拡径した拡径部28aを形成し、この拡径部28aに浮き上がり防止用押さえ部材25を嵌め込み、拡径部28aの底部に浮き上がり防止用押さえ部材25を載置する。尚、埋設型枠24の上面部とは、埋設型枠24の上面側にあって浮き上がり防止用押さえ部材25に押さえ付けられる部分をいい、埋設型枠24の上面及び上面に開口した凹状の拡径部28aを含むものとする。
【0066】
また、浮き上がり防止用押さえ部材25をガイド管29の上端面に支持させるとともに、固定部材23の上端部を浮き上がり防止用押さえ部材25に通し、浮き上がり防止用押さえ部材25より突出させる。
【0067】
浮き上がり防止用押さえ部材25は、鋼板や強化プラスチック板等によって構成され、中央に固定部材23の先端を挿通させる突出孔が形成されている。
【0068】
そして、固定部材23の上端部に定着用ナット26を螺合させ、固定部材23の上端部を浮き上がり防止用押さえ部材25に定着させる。
【0069】
その後、
図8(e)に示すように、拡径部28aに砂やスラグ等の埋め戻し材28bを充填し、設置が完了する。尚、使用する浮き上がり防止用押さえ部材25の巾寸法は、ガイド管29の上面に隙間が生じないようガイド管29の直径巾以上とすることが望ましい。
【0070】
そして、
図9に示すように、この状態で埋設型枠24,24間にコンクリートを打設して主梁部5,5…を形成するとともに、打設された主梁部5,5…及び埋設型枠24上にコンクリートを打設して上側床版部7を形成する。
【0071】
このコンクリートを打設する際、各軽量埋設型枠部材22,22…は、浮き上がり防止用押さえ部材25及び固定部材23によって下側床版部20側に押し付けられた状態にあり、コンクリートによる浮き上がり及び横ズレが防止され、所定の形状に主梁部5,5…及び上側床版部7が形成される。
【0072】
また、最上段の各軽量埋設型枠部材22には、上縁部に面取り用傾斜部22aを備えているので、主梁部5,5…と上側床版部7との連結部に断面三角形状のハンチ5aを容易に形成することができる。尚、図中符号27は、当該ハンチ5aに埋設される斜筋である。
【0073】
そして、コンクリートを養生・固化させ、軽量埋設型枠部材22,22…及び固定部材23を内部に埋設させた状態のコンクリート構造体4が構築され、最後に支保工を撤去して作業が完了する。
【0074】
このように構成された杭支持構造物の構築方法では、コンクリート構造体4内に軽量埋設型枠部材22,22…からなる埋設型枠24が残置されるので、型枠の撤去作業を省略することができ、効率よく作業を行うことができる。
【0075】
さらに、構築されるコンクリート構造体4は、下面が下側床版部20によって閉鎖されるので、杭柱状体3,3…とコンクリートとの接合部分(従来の構造物における飛沫帯)が水面に晒されないので、当該杭柱状体3,3…とコンクリートとの接合部分、下側床版部20の下面及び主梁部5の側面側に配置されている鉄筋の腐食を防止し、高い耐久性を得ることができる。
【0076】
さらにまた、この杭支持構造物の構築方法では、軽量埋設型枠部材22,22…の加工性が優れているので、施工現場における作業性がよく、軽量埋設型枠部材22,22…の配置及び形状の組み合わせによって、梁構造体6の形状、即ち、主梁部5及び上側床版部7の断面(厚み)について高い設計の自由度を得ることができ、設計変更にも柔軟に対応することができ、場所によって上側床版部7に作用する上載荷重に差がある場合等にも好適に対応することができる。
【0077】
例えば、
図10に示すように、定形のブロック状に形成された軽量埋設型枠部材22,22…の積み上げのみで埋設型枠24を形成してもよく、主梁部5,5間に配置される埋設型枠24を互いに間隔をおいて配置し、埋設型枠24間にコンクリートを打設して主梁部間に補助梁を形成してもよい。
【0078】
また、
図11や
図12に示すように、上部に積み上げられた隣り合う軽量埋設型枠部材22,22間が互いに接するように配置することによって一体の埋設型枠24を形成した後、上部に積み上げられた隣り合う軽量埋設型枠部材22,22の接合部分の一部を切り取って軽量埋設型枠部材22,22間に溝を形成し、隣り合う軽量埋設型枠部材22,22間に形成された溝にコンクリートを打設し、主梁部5とは高さの異なる補助梁30を形成するようにしてもよい。尚、最初から補助梁30を設けられるように一部を切り取っておいた軽量埋設型枠部材22,22を積み上げて補助梁30を形成するための溝を形成す
るようにしてもよい。
【0079】
さらに、
図13に示すように、埋設型枠24の側面部に外側下向き傾斜した傾斜壁31,31を形成し、主梁部5を断面台形状に形成してもよく、
図14に示すように、埋設型枠24の側面部を外向きに突出した断面山形状の突出部32,32に形成し、主梁部5の側面部にテーパ部33,33を形成してもよい。
【0080】
さらに、
図15に示すように、埋設型枠24間に一又は複数のブロック状の軽量埋設型枠部材22,22を積み上げて所望の高さの
主梁用埋設型枠34を設置し、埋設型枠24と主梁用埋設型枠34との間にコンクリートを打設し、互いに平行な一対の主梁部35,35を形成するようにしてもよい。
【0081】
また、軽量埋設型枠部材22は、自由に加工することができるので、
図16に示すように、円形や円弧状の梁にも対応することができる。
【0082】
尚、上述の実施例では、埋設型枠24の上面部に埋設型枠24を貫通する挿通孔28の上縁部を拡径した拡径部28aを設け、この拡径部28aの底部に浮き上がり防止用押さえ部材25を載置させ、挿通孔28に通した固定部材23の上端部を浮き上がり防止用押さえ部材25に定着させることによって、埋設型枠24を下側床版部20に押さえつけるようにした場合について説明したが、埋設型枠24の固定の態様はこれに限定されず、例えば、拡径部28aを設けずに上述の実施例と同様の浮き上がり防止用押さえ部材25を挿通孔28の上端縁、即ち、埋設型枠24の上面に載置させるようにしてもよい。
【0083】
また、
図17〜
図19に示す実施例のように、山形鋼、溝形鋼又は鋼板等からなる長尺板状の浮き上がり防止用押さえ部材47,47…を埋設型枠24,24の上面に載置するようにしてもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
本実施例では、軽量埋設型枠部材22,22…を積み上げ、埋設型枠24の設置が完了したら、隣り合う埋設型枠24,24上に長尺板状の浮き上がり防止用押さえ部材47,47…を架け渡して載置させ、棒状の固定部材23の一端を浮き上がり防止用押さえ部材47に連結するとともに、他端を下側床版部20に埋設されたアンカー部材21に連結し、軽量埋設型枠部材22,22…を積み上げてなる埋設型枠24を押さえ付ける。
【0085】
浮き上がり防止用押さえ部材47,47…は、長手方向の所定の位置に貫通孔47aが形成されており、
図18に示すように、この貫通孔47aに棒状の固定部材23を通し、下端を下側床版部20に埋設されたアンカー部材21に連結し、上端を浮き上がり防止用押さえ部材47に連結する。
【0086】
固定部材23は、棒状に形成され、上下にネジ部が形成されており、下端のネジ部をアンカー部材21に螺合できるとともに、上端のネジ部に定着用ナット26を螺合させることによって浮き上がり防止用押さえ部材47,47…に定着できるようになっている。
【0087】
この長尺板状の浮き上がり防止用押さえ部材47,47…を使用する場合には、
図18に示すように、隣り合う埋設型枠24,24間にも固定部材23を設置することができ、挿通孔28を通した固定部材23と併用することでより安定して埋設型枠24を押さえ付けることができる。
【0088】
尚、図中符号48は、隣り合う埋設型枠24,24間に設置された補助梁用せん断補強鉄筋であって、下端が下側床版部20に埋設された下側床版用主筋15に連結され、上端が浮き上がり防止用押さえ部材47上に配置された上側床版用主筋17に連結されている。なお、下側梁主筋15と上側梁用主筋17は、補助梁の要求強度に応じて、同じレベルに配筋されている他の下側床版用主筋13及び上側床版用主筋16と異なる鉄筋径のものに変更するようにしてもよいし、主梁部5,5…と同様に下側補助梁用主筋、上側補助梁用主筋を二段に配置するようにしてもよい。
【0089】
そして、
図19に示すように、この状態で埋設型枠24,24間にコンクリートを打設して主梁部5,5…及び補助梁部30を形成するとともに、打設された主梁部5,5…、補助梁部24及び埋設型枠24,24上にコンクリートを打設して上側床版部7を形成する。
【0090】
このコンクリートを打設する際、埋設型枠24を構成する各軽量埋設型枠部材22,22…は、固定部材23によって固定された浮き上がり防止用押さえ部材47によって下側床版部20側に押し付けられた状態にあり、コンクリートによる浮き上がり及びズレが防止され、所定の形状に主梁部5,5…、補助梁部30及び上側床版部7が形成される。
【0091】
尚、上述の実施例では、杭柱状体3,3…に支持されたコンクリート構造体4を現場施工によって構築する場合について説明したが、本発明方法は、
図20に示すように、杭柱状体3,3…に支持されるプレキャストコンクリート構造体40の製作にも適用することができる。尚、上述の実施例と同様の構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0092】
本実施例では、下側型枠部材として支持体を兼用する地盤41上に設置された平坦な型枠兼用均しコンクリート42を使用し、型枠兼用均しコンクリート42上で予め下側床版部20及び梁構造体6を備えたプレキャストコンクリート構造体40を構築した後、これを杭柱状体3,3…に支持させる。
【0093】
型枠兼用均しコンクリート42は、
図20(a)に示すように、平坦な地盤41上に構築された砕石等からなる土台43上にコンクリートを打設して上面が平坦な床版状に形成され、下側型枠部材とそれを支える支持体とを一体化した構造が形成されている。
【0094】
また、特に図示しないが、プレキャストコンクリート構造体40が構築される領域全体の外側を覆う外側型枠板を設置し、コンクリート構造体4が構築される領域全体の側面を囲った状態とする。
【0095】
そして、
図20(b)に示すように、型枠兼用均しコンクリート42上に棒状の複数の下側床版用主筋13,13…を水平方向に間隔をおいて配置するとともに、主梁部5,5…及び補助梁部45が形成される位置に合わせて梁の長手方向に向けた複数の主筋からなる主筋群14を形成する。
【0096】
また、主梁部5,5…が交差する部分には、
図21に示すように、杭柱状体3,3…が接合される上下に貫通した孔を形成するための円筒状の型枠部材又は鞘管44を配置する。
【0097】
配筋が終了したら、型枠兼用均しコンクリート42上に縁切りシート49を敷設し、下側床版部20を成すコンクリートが型枠兼用均しコンクリート42に付着しないようにした上で、コンクリートを打設し、一定の厚さを有する平板状の下側床版部20を形成する。
【0098】
この下側床版部20は、下側床版用主筋13,13…が埋設され、且つ、上側の下側梁用主筋15,15…が下側床版部20上に露出された状態となる厚みに形成し、せん断補強筋19,19…の下端部もこの下側床版部20内に埋設される。
【0099】
尚、各下側床版部20には、所定の位置に上端の連結部が上面より突出した状態にアンカー部材21が埋設される。
【0100】
そして、下側床版部20を構成するコンクリートを一定期間養生させた後、
図20(c)に示すように、下側床版部20上の所定の箇所、即ち、主筋群14に囲まれた空間にブロック状の軽量埋設型枠部材22,22…を積み上げ、主梁部5,5…を形成するための所望の形状の埋設型枠24を形成する。
【0101】
さらに、所定の方向で隣り合う各軽量埋設型枠部材22,22…を下側床版部20上の主筋群14に囲まれた空間において、補助梁45用の鉄筋群14を挟んで互いに間隔をおいて配置し、両軽量埋設型枠24部材間に補助梁部45を形成するための隙間を形成する。尚、補助梁部45を形成する必要がないときには、主筋群14に囲まれた空間に設置する軽量埋設型枠部材22の製作寸法を調整することで対応できる。また、補助梁45は、下側床版部20上までの深さでとしなくともよく、軽量埋設型枠部材22の製作寸法を調整することで設定した所定の深さとすることもできる。
【0102】
そして、軽量埋設型枠部材22,22…の設置が完了したら、ガイド管に支持させた浮き上がり防止用押さえ部材25を支持させ、棒状の固定部材23の一端を浮き上がり防止用押さえ部材25に連結するとともに、他端を下側床版部20に埋設されたアンカー部材21に連結し、軽量埋設型枠部材22,22…を固定する。
【0103】
そして、この状態で軽量埋設型枠部材22,22…間にコンクリートを打設して主梁部5,5…及び補助梁部45を形成するとともに、打設された主梁部5,5…、補助梁部45及び軽量埋設型枠部材22,22…上にコンクリートを打設して上側床版部7を形成する。
【0104】
このコンクリートを打設する際、各軽量埋設型枠部材22,22…は、固定部材23によって固定された浮き上がり防止用押さえ部材25によって下側床版部20側に押し付けられた状態にあり、コンクリートによる浮き上がり及びズレが防止されているので、所定の形状に主梁部5,5…、補助梁部45及び上側床版部7が形成される。なお、積み重ねた軽量型枠用部材22間の補助固定方法として、接着剤や粘着テープを用いて軽量型枠用部材22間を固定するようにしても良い。
【0105】
そして、コンクリートを養生・固化させ、軽量埋設型枠部材22,22…、浮き上がり防止用押さえ部材25及び固定部材23をコンクリート構造体4内に埋設させた状態のプレキャストコンクリート構造体40が構築される。
【0106】
構築されたプレキャストコンクリート構造体40は、
図20(d)に示すように、クレーン等によって吊り上げられ、杭柱状体3,3…の頭部に接合される。尚、図中符号46は吊り上げ用のワイヤである。
【0107】
また、上述の実施例では、軽量埋設型枠部材22,22…を発泡樹脂によって構成する場合について説明したが、軽量埋設型枠部材22,22…の材料はこれに限定されず、軽量、且つ、十分な強度を有する材料であればよく、例えば、段ボール素材を用いて形成してもよい。
【解決手段】この杭支持構造物1の構築方法は、支持体上に敷設した下側型枠部材12上にコンクリートを打設して下側床版部20を形成した後、下側床版部20上の所定の箇所に軽量埋設型枠部材22を上下及び/又は水平方向に並べて設置して所望の形状の埋設型枠24を形成し、固定部材23を介して埋設型枠24を固定し、その状態で埋設型枠24,24間にコンクリートを打設して主梁部5及び上側床版部7を形成する。