(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
引き戸レール(R)に固定されるトリガー(50)と、引き戸(SD)に接続されて引き戸の開閉時に引き戸レール(R)の軌道面(Os)上を走行する戸車(2a)と、その戸車を備えた戸車ホルダ(2b)を前部と後部にそれぞれ取り付けた外ケース(3)と、前記外ケース(3)に引き戸開閉方向スライド可能に支持されるカムホルダ(4)と、そのカムホルダ(4)に水平配置の支軸(5a)を支点にして回動可能に支持されるトリガー用カム(5)と、このトリガー用カム(5)を一方向に付勢する押しばね(6)と、前記トリガー用カム(5)と外ケース(3)を引き戸閉方向に相対移動させる引きばね(7)と、前記トリガー用カムと外ケースの引きばねの力による相対移動に抵抗を加えるダンパ(8)を具備し、
前記トリガー用カム(5)は、前記戸車ホルダ(2b)に設けられた凹部(2c)に入り込んで当該凹部(2c)により引き戸開閉方向への移動が阻止される耳部(5b)と、前記トリガー(50)に突き当たる当接面(5c)と、前記耳部(5b)が前記凹部(2c)から脱出したときに前記トリガー(50)を入り込ませる捕捉空間(5d)とを有し、
前記耳部(5b)の前記凹部(2c)に対する入り込み状態の保持が前記押しばね(6)の力でなされ、
前記凹部(2c)は、前記トリガー用カム(5)が前記引きばね(7)によって引っ張られる側に前記耳部(5b)のきつい引っ掛かりが防止される傾斜角を有する斜面(2d)を備えており、
前記当接面(5c)が前記トリガー(50)に当接した位置からの引き戸(SD)の更なる閉終点方向への移動で前記トリガー用カム(5)が前記支軸(5a)を支点にして回動し、その回動により前記耳部(5b)が前記凹部(2c)から脱出して前記凹部(2c)に対する入り込み状態の保持が解かれ、
それに伴い、前記戸車ホルダ(2b)と外ケース(3)が前記引きばね(7)の力で引き戸の閉終点方向に走行するように構成された引き戸用クローザ。
前記ダンパ(8)を収納するダンパケース(9)を備え、そのダンパケース(9)の両側外部に前記引きばね(7)がそれぞれ設置された請求項1に記載の引き戸用クローザ。
前記カムホルダ(4)とトリガー用カム(5)と押しばね(6)が、前記外ケース(3)の先端側と後端側にそれぞれ逆向き配置にして設けられ、前記外ケース(3)の先端側及び後端側の各カムホルダ(4)、トリガー用カム(5)、押しばね(6)は、それぞれ引き戸の閉動作緩衝用のクローザと開動作緩衝用のクローザを構成し、その閉動作緩衝用のクローザと開動作緩衝用のクローザの引きばね(7)とダンパ(8)は、同一物が兼用されている請求項1又は2に記載の引き戸用クローザ。
前記カムホルダ(4)と、トリガー用カム(5)と、押しばね(6)が前記外ケース(3)の先端側に設けられ、このカムホルダ(4)、トリガー用カム(5)、押しばね(6)及び前記引きばね(7)とダンパ(8)が引き戸の閉動作緩衝用のクローザを構成し、前記ダンパ(8)は、前記外ケース(3)の後部において、その外ケース(3)に着脱可能に固定されている請求項1又は2に記載の引き戸用クローザ。
前記戸車ホルダ(2b)は、溝付き戸車を有する戸車ホルダと溝無し戸車を有する戸車ホルダのいずれかであり、溝付き戸車を有する戸車ホルダと溝無し戸車を有する戸車ホルダは、前記外ケース(3)に対する接続部を共通の設計にして前記外ケース(3)に選択的に着脱自在に取り付けられる請求項1〜4のいずれかに記載の引き戸用クローザ。
前記戸車ホルダ(2b)に、クローザが押し下げる力を受けて撓んだときに前記トリガー用カム(5)の近くで引き戸レールの軌道面(Os)に接して戸車(2a)と一緒に戸車ホルダ(2b)を支える突起(11)を備えさせた請求項1〜5のいずれかに記載の引き戸用クローザ。
前記トリガー用カム(5)と外ケース(3)の相対移動がロックされているべきときにそのロックがなされていない状況が生じた際に、引き戸(SD)の開閉動作でロック状態に復帰させる誤作動復帰機構(30)を備えた請求項1〜6のいずれかに記載の引き戸用クローザ。
前記誤作動復帰機構(30)は、前記トリガー用カム(5)に設けられた支軸(33)を支点にして回動可能なエラー解除カム(31)と、そのエラー解除カム(31)と前記トリガー用カム(5)との間に縮設されてエラー解除カム(31)を前記トリガー用カム(5)に対して前記押しばね(6)によるトリガー用カム(5)の回動方向と反対向きに押し当てる、前記押しばね(6)よりも力の弱い第2の押しばね(32)を備え、前記エラー解除カム(31)は、引き戸(SD)が閉終点又は開終点に向かって移動するときに、トリガーによって押し下げられるカム面(31c)と、そのカム面(31c)の押し下げによってトリガー設置点を通過し、引き戸が逆行するときに前記第2の押しばね(32)の力で元の位置に戻ってトリガーに引き留められる第1の突起(31b)と、前記トリガー用カムの耳部(5b)が前記凹部(2c)に入り込む位置で前記外ケース(3)に設けられた穴(3d)に入り込む第2の突起(31d)を有する請求項7に記載の引き戸用クローザ。
【背景技術】
【0002】
近年の引き戸は、安全性向上や静音性確保等の観点からクローザを設け、開閉の終点近くから終点までの間での開閉速度を緩やかに変化させるようにしたものが増えてきている。吊下げ式引き戸も同様である。
【0003】
その吊下げ式引き戸用クローザの従来技術として、例えば、下記特許文献1〜3に示されたものなどがある。
【0004】
特許文献1のクローザ(戸閉装置)は、緩衝ダンパを構成するシリンダ部の基部端とピストンロッドの先端にそれぞれ軸支されたフック部材を設け、そのフック部材の係止突起を棒状ケーシングの両端の係止溝に係止させている。
【0005】
そのフック部材が引き戸の移動によって引き戸レールに設けられた固定突起(本願で言うトリガー)に当たると、前記係止溝に対するフック部材の係合(ロック)が解ける。これにより、2個のフック部材間に設けられた引張り弾性体の力で、棒状ケーシングが固定突起に引き留められたフック部材に対して相対的にスライドする。
【0006】
このときの棒状ケーシングのスライドは、緩衝ダンパの働きによって減速され、棒状ケーシングにつながれた戸がゆっくりと閉まるようになっている。
【0007】
また、特許文献2のクローザは、引き戸レール(固定部材)の開側と閉側にそれぞれ設けられた被捕捉部材と、引き戸に取り付けられる捕捉引込機構とを有する。
【0008】
前記捕捉引込機構は、引き戸レールに沿って走行するガイド部の一端側に第1キャッチ部を、他端側に第2キャッチ部をそれぞれ有する。
【0009】
第1キャッチ部と第2キャッチ部は、それぞれに対応した側の被捕捉部材を捕捉してい
ないときには、前記ガイド部との戸開閉方向の相対移動がロックされ、被捕捉部材を捕捉したときにそのロックが解除される。
【0010】
これにより、捕捉したキャッチ部に対する前記ガイド部の戸開閉方向の相対移動が許容され、第1キャッチ部と第2キャッチ部との間に設けられた引張り弾性体の力でガイド部が戸の開閉方向にスライドする。そのスライドが緩衝ダンパの働きによって減速され、ガイド部に吊るされた戸がゆっくりと閉まるようになっている。
【0011】
特許文献3のクローザは、引き戸レールに設けられた被捕捉部材(これも本願で言うトリガー)と、引き戸に取り付けられる捕捉引込機構とを有する。捕捉引込機構は、特許文献2のクローザと同様に、被捕捉部材を捕捉していないときには外側ケース(特許文献2のガイド部と同様のもの)との戸開閉方向の相対移動がロックされ、被捕捉部材を捕捉したときにそのロックが解除される。
【0012】
その解除により、被捕捉部材を捕捉した捕捉部材に対して外側ケースが引き込みばねの力でスライドし、そのスライドが緩衝部材の働きによって減速されて外側ケースに吊るされた戸がゆっくりと閉まるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1のクローザは、戸が勢いよく開閉されてロック状態を解除する側のフック部材が固定突起に強く当たったときに、ロック状態を維持すべき側のフック部材が衝撃で係止溝から外れてロックが解けることがある。
【0015】
また、フック部材のロック状態(係止溝に対するフック部材の係止状態)の維持は、引張り弾性体の力を利用してなされているが、戸が勢いよく開閉されると、引張り弾性体が開閉速度に追従できない状況が起こり、これにより、ロック状態の維持ができなくなってロックされていたフック部材が自重で回動して係止溝から外れることもある。
【0016】
さらに、戸が勢いよく開閉されると、固定突起に対するフック部材の当接、離脱が衝撃的に起こって係合音や係合解除音が発生する。
【0017】
上記の問題のほかに、戸が勢いよく開閉されてフック部材が速い速度で固定突起に接すると、フック部材の係止突起の係止溝からの脱出速度が追いつかず、戸の動きに抵抗が加わって戸が一瞬停止するような状況が起こったり、係止突起が係止溝から弾かれるように抜け出てフック部材が固定突起に衝撃音を伴って突き当たることも考えられる。
【0018】
特許文献2のクローザは、捕捉引込機構の第1キャッチ部と第2キャッチ部を、それぞれ3つの可動部材(内包ブロック、捕捉部材、及び当接ブロック)を組み合わせて構成しており、両キャッチ部の構造と動きが複雑である。
【0019】
このため、キャッチ部の耐久性確保や円滑な動作の長期維持が難しくなる可能性がある。
【0020】
特許文献3のクローザは、捕捉引込機構を、スライドケース内に配置する可動ブロックと、引き戸レールに設けられた被捕捉部材を捕捉する捕捉突起を組み合わせて構成している。
【0021】
このクローザは、捕捉突起を可動ブロックの上面に設けており、その捕捉突起を被捕捉部材の捕捉溝で案内して可動ブロックを引き戸の板厚方向と開閉方向に移動させる。
【0022】
このため、捕捉突起が捕捉溝に案内されるときに、可動ブロックに対して回転モーメント(傾けようとする力)が加わり、それが原因で可動ブロックの動きが次第に悪化したり、可動ブロックの損傷が促進されたりする可能性がある。
【0023】
この発明は、上記のような現状技術に鑑みてなされたものであって、引き戸が勢いよく開閉されたときにも、ロック(トリガー用カムと引き戸を伴って動く外ケースの相対移動の阻止)の解除が円滑になされて引き戸の違和感のある動きが防止され、トリガー用カムの誤作動や作動音も抑制されるようにすることを目的としている。
【0024】
また、トリガー用カムが戸車ホルダに係止しているべきときにその係止がなされていない状況が生じた際に、引き戸の開閉動作で係止状態に復帰させる機構や、引き戸を引き動かす引きばね(特許文献が言う弾性体やばね部材)が伸縮する際に発生する音の緩和策なども併せて提供する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の課題を解決するため、この発明においては、引き戸用クローザを以下の通りに構成した。
引き戸レールに固定されるトリガーと、引き戸に接続されて引き戸の開閉時に引き戸レールの軌道面上を走行する戸車と、その戸車を備えた戸車ホルダを前部と後部にそれぞれ取り付けた外ケースと、前記外ケースに引き戸開閉方向スライド可能に支持されるカムホルダと、そのカムホルダに水平配置の支軸を支点にして回動可能に支持されるトリガー用カムと、このトリガー用カムを一方向に付勢する押しばねと、前記トリガー用カムと外ケースを引き戸閉方向に相対移動させる引きばねと、前記トリガー用カムと外ケースの引きばねの力による相対移動に抵抗を加えるダンパを具備し、
前記トリガー用カムは、前記戸車ホルダに設けられた凹部に入り込んで当該凹部により引き戸開閉方向への移動が阻止される耳部と、前記トリガーに突き当たる当接面と、前記耳部が前記凹部から脱出したときに前記トリガーを入り込ませる捕捉空間とを有し、
前記耳部の前記凹部に対する入り込み状態の保持が前記押しばねの力でなされ、
前記凹部は、前記トリガー用カムが前記引きばねによって引っ張られる側に、前記耳部のきつい引っ掛かりが防止される傾斜角を有する斜面を備えており、
前記当接面が前記トリガーに当接した位置からの引き戸の更なる閉終点方向への移動で前記トリガー用カムが前記支軸を支点にして回動し、その回動により前記耳部が前記凹部から脱出して前記係止が解かれ、
それに伴い、前記戸車ホルダと外ケースが前記引きばねの力で引き戸の閉終点方向に走行するものにした。
【0026】
なお、この発明では、外ケースとトリガー用カムの引き戸開閉方向への相対移動が阻止されている状態を「ロック状態」、その相対移動の阻止が解除された状態を「アンロック状態」と考える。
【0027】
かかるクローザは、引き戸の閉動作の緩衝だけでなく、開動作の緩衝にも利用することができる。
【0028】
開動作の緩衝は、閉動作緩衝用のクローザと同様の構成要素(カムホルダ、トリガー用カム、トリガー用カムの耳部を入り込ませる凹部、押しばね、及びトリガー)によって構成されるクローザを閉動作緩衝用クローザと逆向きにして前記外ケースの後部側に追設することで可能になる。
【0029】
開側のトリガー用カムと前記外ケースを引き戸の開方向に相対移動させる引きばねと相対移動に抵抗を加えるダンパは、引き戸の閉動作緩衝用クローザの引きばねとダンパを併用することができる。
【0030】
引き戸閉側のトリガー用カムと開側のトリガー用カムは、装着方向が異なるが、同一構造のカムである。以下で言う「トリガー用カム」は、その2者を指す。
【0031】
前記開動作緩衝用のクローザは必要に応じて設けられるものであって、必須ではない。
【0032】
前記戸車は、溝付き、溝無しのどちらであってもよい。溝付き戸車を有する戸車ホルダと溝無し戸車を有する戸車ホルダは、前記外ケースに対する接続部を共通の設計にして外ケースに着脱自在に取り付けると好ましい。
【0033】
前記戸車ホルダには、クローザが押し下げる力を受けて撓んだときにトリガー用カムの近くで引き戸レールの軌道面に接して戸車と一緒に戸車ホルダを支える突起を備えさせることができる。
【0034】
前記ダンパは、油圧ダンパが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0035】
このダンパをダンパケースに収納し、そのダンパケースの両側外部にそれぞれ前記引きばねを設置してその左右の引きばねの力でトリガー用カムと外ケースを引き戸の閉方向に相対移動させると好ましい。
【0036】
このほか、この発明のクローザは、トリガー用カムと外ケースの相対移動がロックされているべきときにそのロックがなされていない状況が生じた際に、引き戸の開閉動作でロック状態に復帰させる誤作動復帰機構を備えたものが好ましい。
【0037】
その誤作動復帰機構は、トリガー用カムに設けられた支軸を支点にして回動可能なエラー解除カムと、そのエラー解除カムと前記トリガー用カムとの間に縮設されてエラー解除カムを、前記トリガー用カムに対して前記押しばねによるトリガー用カムの回動方向(この発明ではこれを「ロック方向」と言う)と反対向き(アンロック方向)に押し当てる、前記押しばねよりも力の弱い第2の押しばねを備えたものにする。
【0038】
エラー解除カムは、引き戸が閉終点又は開終点に向かって移動するときに、トリガーによって押し下げられるカム面と、そのカム面の押し下げによってトリガー設置点を通過し、引き戸が逆行するときに第2の押しばねの力で元の位置に戻ってトリガーに引き留められる第1の突起と、トリガー用カムの耳部が前記凹部に入り込む位置で外ケースに設けられた穴に入り込む第2の突起を有する。
【0039】
このエラー解除カムは、前記第2の突起が前記穴に入り込むことで、第2の押しばねの力でロック方向に回動し、これにより、トリガーによる第1の突起の引き留めが解除され、同時にトリガー用カムの耳部が前記凹部に入り込んでトリガー用カムの誤作動状態が修復されるように構成されている。
【0040】
扉の開動作緩衝用のクローザが設置されるものについては、前記エラー解除カムを開動作緩衝用のクローザにも含ませるとよい。
【0041】
この発明のクローザは、前記引きばねが伸縮する際に発生する音の緩和策として、前記引きばねを樹脂製の筒に遊嵌状態に収納したものも考えられる。樹脂製の筒は、引きばねの伸縮に支障を来たさない長さを有するもの、例えば、引きばねが最大に縮んだときの引きばね長さに組み立てに必要な余長を加算した長さを最大長さとするものを利用する。
【発明の効果】
【0042】
この発明の引き戸用クローザは、トリガー用カムの耳部の前記凹部に対する入り込み状態の保持を押しばねの力で行なうので、前記凹部の斜面を、トリガー用カムの耳部のきつい引っ掛かりが起こらない傾斜角を有する面にすることができる。
【0043】
そのような斜面を備えることで、前記耳部が凹部から抜け出るときの抵抗感が低減され、引き戸を開けるときも閉めるときも、ロック状態からのアンロック状態への切り替えが不快感を与えるはじき音などの大きな係合解除音や衝撃音などを伴わずにスムーズになされる。
【0044】
また、トリガー用カムの耳部の前記凹部に対する入り込み状態、即ち、ロック状態の維持が、押しばねの力でなされるので、トリガー用カムがトリガーに強く当たってもロック状態が自然に解けることがなく、作動の安定性に優れる。
【0045】
さらに、特許文献2,3の捕捉引込機構に相当する機構が、カムホルダに支持されて単純な動きをするトリガー用カムと、そのトリガー用カムを一方向に付勢する押しばねと、戸車ホルダに設けた凹部とで構成されており、その機構が簡素で動きも単純である。
【0046】
そのため、クローザの耐久性が向上し、円滑な動作の長期維持も可能になる。
【0047】
戸車ホルダに、クローザが押し下げ力を受けて撓んだときにトリガー用カムの近くで引き戸レールの軌道面に接して戸車と共に戸車ホルダを支える突起を設けたものは、トリガー用カムのトリガーに対する係合が不安定になることが防止される。
【0048】
トリガー用カムの当接面がトリガーに当たり、その後の引き戸の更なる移動でトリガー用カムがロック解除方向に回動して前記耳部が前記凹部から脱出する。
【0049】
そして、トリガー用カムのロック解除点への回動によりトリガー用カムに設けられた前記捕捉空間にトリガーが入り込む。その入り込みにより、トリガーによるトリガー用カムの引き留めがなされる。
【0050】
このとき、瞬間的にクローザに対して下向きに押し込むような力が加わる。トリガーがトリガー用カムの前記捕捉空間から抜け出るときも同様に、下向きに押し込むような力が加わる。
【0051】
その力により、外ケースや戸車ホルダが湾曲するように撓むことが考えられる。その撓みにより、前記当接面がトリガーから外れると、トリガーによるトリガー用カムの引き留めが解かれてクローザは誤作動する。
【0052】
前記突起は、前記クローザの撓みを抑制し、その撓みに起因したクローザの誤作動を起こり難くする。
【0053】
前記ダンパをダンパケースに収納し、そのダンパケースの両側部に前記引きばねを設置したものは、コイル径の小さな引きばねを用いて引き力を大きくする要求や、ダンパケースに加える力のバランス確保の要求に応えることができる。
【0054】
また、前記誤作動復帰機構を備えるものは、クローザのロック状態が維持されるべきときに何らかの理由でそのロックが解けているとき(前記凹部に入り込んでいるべきトリガー用カムの耳部が凹部から脱出しているとき)に、引き戸の開閉動作により、ロック状態
への自動修復がなされる。その自動修復のメカニズムについては、実施形態の項で詳しく述べる。
【0055】
前記引きばねを樹脂製の筒に遊嵌状態に収納することによる効果も実施形態の項で述べる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
この発明の引き戸用クローザの実施の形態を添付図面の
図1〜
図23に基づいて説明する。
図1は、この発明のクローザの使用の一例を示している。
【0058】
図1のクローザ1は、吊下げ式の引き戸SDの閉、開の双方の動きを緩衝するものになっている。以下の説明は、クローザ1の引き戸閉側の端部をクローザの先端と考えて行なう。
【0059】
図1のUSは、引き戸SDで開閉する出入口の上框、Rは、上框USの下面に取り付けた引き戸レールである。
【0060】
引き戸レールRは、
図11、
図12に示すように、対向した側壁Sw、その2つの側壁を連結する上部壁Uw及び対向2側壁Swの下端に連なる2箇所の軌道面Osを有する下部開口の既知のレールである。
【0061】
例示の引き戸レールRは、凹円弧状の軌道面Osで溝の無い戸車を案内するものになっているが、凸条レールを備えた軌道面で溝付き戸車を案内する引き戸もある。
【0062】
引き戸レールRには、閉側のトリガー50と、開側のトリガー(図示せず)が固定されている。開側のトリガーは、クローザ1の後端側に設けられたトリガー用カム(
図4の5
−2)が引き戸の開終点に近づいたときに開側のトリガー用カムによって捕捉される位置にある。複数ある要素には、区別の便宜上、符号に
−1、
−2、
−3の区別用番号を添えるが、必要のない箇所ではその区別用番号を省略した説明を行う。
【0063】
図1の1はクローザ、2
−1〜2
−3は、各々が引き戸レールRの軌道面上を走行する戸車2a(
図2〜
図4参照)を備えた戸車ユニット、20は、戸車ユニット2
−1、2
−2に、それぞれ回転可能な垂直支軸を用いて連結された引き戸接続具である。
【0064】
引き戸接続具20は、引き戸SDの高さと厚み方向位置調整機能を有する機器であって、引き戸閉側の戸車ユニットに連結されたものは、調整面(
図11に表れた面)を外部に露出させて引き戸SDの閉側端部枠の上部に埋め込まれ、もう一つは、調整面を外部に露出させて引き戸SDの開側端部枠の上部に埋め込まれる。
【0065】
例示のクローザ1の全体構成を示す斜視図を
図2に、全体構成を示す側面図を
図3に、全体構成を示す平面図を
図4に、ダンパケースアセンブリの平面図を
図5に、ダンパケースアセンブリの側面図を
図6に、
図5のダンパケースアセンブリを構成する要素の分解斜視図を
図7に、カムホルダ4の底面側を
図8に、トリガー用カム5の底面側を
図9に、クローザ1の外ケースの長手直角断面を
図10にそれぞれ示す。
【0066】
また、
図3のA−A線に沿った断面を
図11に、
図3のB−B線に沿った断面を
図12にそれぞれ示す。なお、この発明で言うダンパケースアセンブリは、後述するダンパケース、ダンパ、カムホルダ、トリガー用カム、押しばね、引きばね及びエラー解除カムを組み合わせたものである。
【0068】
戸車ユニット2
−1、2
−2は、引き戸SDの閉側先端部(
図1における引き戸SDの左端)と開側の先端(
図1における引き戸SDの右端)にそれぞれ設けられる。
【0069】
引き戸SDの閉側先端の戸車ユニット2
−1は、戸車ホルダ2b(
図2、
図3等を参照)を介してクローザ1の外ケース3の先端に着脱自在に取り付けられる。
【0070】
一方、戸車ユニット2
−2は、
図1に示すように、クローザ1から独立して引き戸SDの開側の端部に配置される。
【0071】
また、戸車ユニット2
−3は、
図2、
図3に示すように、外ケース3の後端側に着脱自在に取り付けられ、トリガー用カム5
−1,5
−2は、閉側のトリガー50(
図1、
図14、
図16、
図18参照)と図示していない開側のトリガーによって個別に引き留められる。
【0072】
戸車ユニット2
−1及び2
−3の戸車ホルダ2bは、樹脂で形成されている。この戸車ホルダ2bには、トリガー用カム5
−1、5
−2の耳部5bを入り込ませる凹部2cが中央の溝を間に挟んだ両側に対向して設けられている。
【0073】
その凹部2cは、トリガー用カムの耳部5bのきつい引っ掛かり(フッキング)が起こらない傾斜角を有する斜面2d(
図13〜
図16参照)を、後述する引きばねによってトリガー用カム5が引っ張られる側に備えている。
【0074】
ここで言う耳部5bのきつい引っ掛かり(フッキング)が起こらない傾斜角とは、凹部2cに入り込んだ耳部5bが凹部2cから脱出する際に、斜面2dに対してきつく押しつけられることのない角度である。
【0075】
例示の斜面2dは、上側を凹部2cの入口側に向かって傾斜角が次第に大きくなる円弧面にしており、その円弧面に接した耳部5bは、引きばね7の力に引き戸の移動力が加わった力を受けて円弧面上を摺動し、凹部2cから円滑に脱出することができる。
【0076】
図示の戸車ホルダ2bは、溝なし戸車2aを備えているが、外ケース3に対する接続部を共通の設計にして溝付き戸車を有するものと差し替えることができるようにしている。
【0077】
外ケース3は、金属ケースであり、
図10に示すように、底壁3a、その底壁の両端から立ち上がる対向した側壁3b、3b、各側壁3b、3bの上端から互いに接近する方向に張り出す耳ガイド3c、3c、及び、カムホルダ4
−1、4
−2をロック位置に引き留めるための穴3dを(
図17〜
図19参照。これは、図示の角穴が後述する突起やフックの係止が安定して好ましい)を有するものになっている。耳ガイド3cは、外ケース3の先端部と後端部には無い。
【0078】
穴3dは、底壁3aの所定箇所、具体的には、外ケース3の前後の戸車ホルダにそれぞれ設けられた凹部2cに対応させた位置と、最前部の穴(
図19の左端の穴)3dから外ケース3の相対移動量相当後退した位置、及び最後部の穴(
図19の右端の穴)3dから外ケース3の相対移動量相当前進した位置の計4箇所に設けられている。
【0079】
カムホルダ4
−1,4
−2は、互いに背を向けて対向させる樹脂製のホルダーであって、
図7に示すように、各々が本体部4aの前面の両側部から前向きに伸び出す支持腕4bを有する。支持腕4bには、トリガー用カム5の回動支点になる支軸5aを嵌め込むフック部4cが設けられている。
【0080】
フック部4cは、入口の幅が支軸5aの直径よりも僅かに小さく、支軸5aの嵌め込みが圧入してなされる。
【0081】
また、本体部4aの両側部に、側面に開口した凹部4dとその凹部4dに連なった溝4eを有する。溝4eは、本体部4aの側面及び背面に開口しており、その幅が、凹部4dの幅よりも狭い。
【0082】
カムホルダ4
−1,4
−2は、さらに、
図8に示すように、本体部4aの底面と背面に開口した凹部4fとその凹部4fに連なる溝4gを有する。溝4gは、本体部4aの底面及び背面に開口しており、その幅が凹部4fの幅よりも狭い。
【0083】
トリガー用カム5
−1,5
−2は、前記フック部4cに回動可能に嵌める支軸5a(
図7、
図9参照)を後端側の下部側面に有する。
【0084】
また、先端側の両側部に外ケース3の耳ガイド3c上を摺動する耳部5bと、トリガー50に突き当たる当接面5cと、耳部5bが凹部2cから脱出したときにトリガー50を入り込ませる捕捉空間5dを有する。
【0085】
耳部5bは、トリガー用カム5
−1,5
−2がトリガーに突き当たった位置で凹部2cに入り込む。
【0086】
押しばね6は、各トリガー用カム5
−1,5
−2のそれぞれを個別に一方向に付勢し、耳部5bの凹部2cに対する入り込み状態を保持する。この押しばね6は、カムホルダ4に設けた突起14とトリガー用カム5に設けた非貫通のばね受け穴15(
図14、
図16参照)を利用して位置保持がなされる。
【0087】
突起14は押しばね6の一端に挿入され、ばね受け穴15には、押しばね6の他端が挿入される。
【0088】
図示の押しばね6は、2個を1組にしたコイルばねであって、カムホルダ4
−1とトリガー用カム5
−1との間及びカムホルダ4
−2とトリガー用カム5
−2との間にそれぞれ圧縮して配置される。
【0089】
引きばね7は、各トリガー用カム5
−1,5
−2と外ケース3を、引き戸SDの開閉方向に相対移動させる。この引きばね7は、カムホルダ4
−1,4
−2間に配置する長寸のコイルばねであって、
図7に示すように、両端に頭部7aと小径首部7bを有する。
【0090】
その頭部7aと小径首部7bが、カムホルダ4
−1,4
−2の凹部4dと溝4eに嵌め込まれて引きばね7の両端がカムホルダ4
−1,4
−2に着脱自在に接続されている。
【0091】
ダンパ8は、トリガー用カム5と外ケース3の相対移動に抵抗を加えて引き戸SDの移動を減速させるものである。ここでは、そのダンパ8として、油圧ダンパが設けられている。
【0092】
油圧ダンパは、ピストンによって2室に区画されたシリンダ8aの内部に油を封入し、その油をピストン(図示せず)に形成されたオリフィスに通して2室間で往来させることでピストンロッド8bの動きに抵抗を加えるものであり、広く知られたものである。従って、ここでは詳細説明を省く。
【0093】
この油圧ダンパのシリンダ8aは、開側クローザのカムホルダ4
−2によって支持されている。カムホルダ4
−2には、連結軸10aと、その連結軸の突端に形成されたフランジ10bとからなる接続部10(
図5、
図7参照)が一体に形成されている。
【0094】
その接続部10の連結軸10aがダンパケース9の後壁に設けた溝に、フランジ10bがダンパケース9の内部にそれぞれ挿入されてカムホルダ4
−2がダンパケース9に切り離し可能に連結され、フランジ10bの端面に設けた溝にシリンダ8aの後部が嵌め込まれてカムホルダ4
−2によるシリンダ8aの保持がなされている。
【0095】
また、ピストンロッド8bは、ダンパケース9の前壁に設けた溝に落とし込まれ、そのピストンロッド8bの先端に装着したロッド径よりも大径の接続ピース8c(
図7参照)をカムホルダ4
−1の底面に設けた凹部4f(
図8参照)に入り込ませてカムホルダ4
−1に取り外し可能に接続されている。
【0096】
ダンパケース9は、ダンパ8を収納保持するものであって、そのダンパケース9の両側部の外側に引きばね7がそれぞれ配置されている。
【0097】
図3及び
図12の符号11は、戸車ユニット2
−1の戸車ホルダ2bに設けた突起である。その突起11は、クローザ1が押し下げ力を受けていないときには、軌道面Osから僅かに浮き上がってクローザの走行の抵抗とならないものになっている。
【0098】
クローザ1が押し下げ力を受けてトリガー用カム5
−1の近くで引き戸レールの軌道面Osに接したときに、その突起11が戸車2aと共に戸車ホルダ2bを支える。
【0099】
外ケース3の後部側は、引き戸の重量が外ケース3の前部側に加わることで軌道面Osから浮き気味となっているので、開側のトリガーからトリガー用カム5
−2に押し下げ力が加えられても閉側ほど撓むことは無い。
【0100】
従って、外ケース3の後部側には突起11を設けない構造にしたが、突起11は外ケース3の後部側にも設けることができる。
【0101】
なお、例示の戸車2aは、溝無し戸車になっているが、外ケース3に対する戸車ホルダ2bの接続部を共通の設計にして戸車ホルダ2bを外ケース3に着脱自在に取り付けると、図示の戸車ホルダ2bを、レール上を転動する溝付き戸車を有する戸車ホルダに置き換えることができ、外ケース3、カムホルダ4、トリガー用カム5などについて種類の統合(共通化)が図れる。
【0102】
次に、
図7及び
図17〜
図19を参照して、誤作動復帰機構30について説明する。この誤作動復帰機構30は、トリガー用カム5
−1と外ケース3の相対移動がロックされているべきとき(凹部2cに対する耳部5bの入り込み状態が保持されているとき)にそのロックがなされていない状況が生じた際に、引き戸SDの開閉動作で係止状態に復帰させるものである。
【0103】
クローザを新規設置すると言った場合には、凹部2cに納まっているべきトリガー用カム5
−1の耳部5bが凹部2cから抜け出ている(アンロック状態になっている)ことがある。
【0104】
そのときには、トリガー用カム5
−1は、凹部2cから外れて引きばね7の収縮終点まで引き動かされているので、クローザによる引き戸の移動の緩衝がなされない。その不具合を未然に防止する目的で誤作動復帰機構30を設けている。
【0105】
図示の誤作動復帰機構30は、エラー解除カム31と、前記押しばね6よりも力の弱い第2の押しばね32を組み合わせたものになっている。第2の押しばね32は、エラー解除カム31とトリガー用カム5
−1との間に縮設されてエラー解除カム31を、トリガー用カム5
−1に対して、押しばね6によるトリガー用カム5
−1の回動方向(これを「ロック方向」と言う)と反対向き(アンロック方向)に押し当てる。
【0106】
その第2の押しばね32は、エラー解除カム31に設けた突起16と、トリガー用カム5に設けた非貫通のばね受け穴17を利用して位置保持がなされる。突起16は第2の押しばね32の一端に挿入され、ばね受け穴17には、第2の押しばね32の他端が挿入される。
【0107】
エラー解除カム31は、トリガー用カム5に設けられた支軸33を支点にして回動可能である。支軸33は、支軸5aに対して若干偏心した位置にある。
【0108】
このエラー解除カム31は、支軸33に圧入外嵌されるフック部31aを後端部に有する。また、上向きに突出した第1の突起31bと、その第1の突起31bの前面になるカム面31cを先端部に有する。
【0109】
そしてさらに、第1の突起31bからある長さ後退した位置の下面に下向きに突出する第2の突起31dを有する。
【0110】
このエラー解除カム31は、トリガー用カム5
−1がロック状態を維持すべきときに、耳部5bが凹部2cから脱出して引きばね7に引き動かされている状態(ロックが解けたエラー状態。このときには引きばね7が縮んで引張り力を生じていない)で引き戸SDが閉じられた場合、以下のように動作してエラーを修復する。
【0111】
エラーが生じた状態で引き戸SDが閉じられると、戸車ユニット2
−1の戸車2aに設けた凹部2cがトリガー50の設置点に到達してもトリガー用カム5
−1は、トリガー50との係合点に到達していない。
【0112】
そのため、この後の引き戸SDの更なる閉終点方向への移動でエラー解除カム31のカム面31cがトリガー50に接する(この位置では、最前部から数えて2番目の穴3dに対する第2の突起31dの落ち込みが許容される)。
【0113】
これにより、エラー解除カム31の先端側が、カム面31cに働く分力で
図17に示すようにアンロック方向(下向きに回動する方向)に押し動かされて第1の突起31bがトリガー50の設置点を通過する。
【0114】
通過後に、エラー解除カム31は、第2の押しばね32の力で元の位置(トリガー用カム5
−1に押し当てられる位置)に戻る。
【0115】
この状態で引き戸SDを逆行させると、第1の突起31bがトリガー50に引き留められ、引き戸SDの更なる逆行(例示のケースでは開方向移動)によりトリガー用カム5
−1と外ケース3の相対移動が生じる。
【0116】
その相対移動により、
図18に示すように、トリガー用カム5
−1の耳部5bが押しばね6の力で凹部2cに入り込んでトリガー用カムの誤作動状態が修復される。
【0117】
このとき、エラー解除カム31は、第2の突起31dが外ケース3に設けられた最前部の穴3dに入り込む位置にあり、第2の突起31dの最前部の穴3dへの入り込みにより、エラー解除カム31がトリガー用カム5
−1に押されてロック方向に回動する。
【0118】
その回動により、トリガー50による第1の突起31bの引き留めが同時に解除される。
【0119】
穴3dに入り込んだ第2の突起31dは、穴3dの縁に係止する。例示のクローザは、それにより、耳部5bの斜面2dに対するフッキングそのものが防止されるものになっている。
【0120】
なお、トリガー用カム5
−1がトリガー50に突き当たってロック解除方向に回動するときには、エラー解除カム31は、第2の押しばね32の力でトリガー用カム5
−1に連動してロック解除方向に回動する。
【0121】
このエラー解除カム31は、引き戸の開動作緩衝用のクローザにも含ませている。
【0122】
以上の如く構成されたクローザ1は、引き戸SDが閉じられるときには、トリガー用カム5
−1が5
−2から最大に離反した位置にあってそのトリガー用カム5
−1の耳部5bが外ケース3の先端に取り付けられた戸車ホルダ2bの凹部2cに、また、トリガー用カム5
−2の耳部5bが戸車ホルダ2bの凹部2cにそれぞれ入り込んでいる。
【0123】
その入り込み状態が押しばね6の力で保持され、クローザが正常なときにはこの状態でクローザ1が引き戸SDの移動に伴って引き戸レールRの軌道面上を引き戸開閉方向に走行する。
【0124】
そして、今仮に引き戸SDが閉じられるときには、終点近くでトリガー用カム5
−1の当接面5cが閉側のトリガー50に突き当たる。
【0125】
引き戸SDはその後もさらに閉じ方向に移動する。このとき、トリガー用カム5
−1はトリガー50に引き留められている。
【0126】
そのために、トリガー用カム5
−1は、支軸5aを支点にして回動し、その動作でトリガー用カム5
−1の耳部5bが凹部2cから抜け出してトリガー用カム5
−1と外ケース3の相対移動のロックが解け、トリガー50に引き留められたトリガー用カム5
−1に対して外ケース3が引きばね7の力でスライドし、そのスライドがダンパ8によって減速されて引き戸レールに吊るされた引き戸SDが衝撃を伴わずにゆっくり閉じられる。
【0127】
例示のクローザ1は、戸車ホルダ2bに設けた凹部2cの斜面2dを、トリガー用カムの耳部5bのきつい引っ掛かりが起こらない傾斜角を有する面にしているので、耳部5bが凹部2cから抜け出るときの抵抗感が小さく、引き戸SDを急に開け閉めするときも、ロック状態からのアンロック状態への切り替えが不快な係合解除音や衝撃音を伴わずにスムーズになされる。
【0128】
また、耳部5bの凹部2cに対する入り込み状態、即ち、ロック状態の維持が、押しばね6の力でなされるため、トリガー用カム5がトリガー50に強く当たってもロック状態が自然に解けることがなく、作動の安定性に優れる。
【0129】
さらに、クローザのロック、アンロックを切り替える機構が、少ない要素で構成されており、その機構が簡素で動きも単純である。そのため、クローザの耐久性が向上し、円滑な動作の長期維持も可能になる。
【0130】
また、例示のクローザ1は、トリガー用カム5
−1の近くで引き戸レールの軌道面Osに接する突起11を設けているので、トリガー用カムのトリガーに対する係合時と係合解除時に外ケース3や閉側の戸車ホルダ2bの撓みが抑制され、その撓みに起因したトリガー用カムの引き留め不良とそれによるクローザの誤作動が起こり難い。
【0131】
さらに、ダンパ8をダンパケース9に収納し、そのダンパケースの両側部に引きばね7を設置しているので、コイル径の小さな引きばねを用いて引き力を大きくする要求や、ダンパケースに加える力のバランス確保の要求に応えることもできる。
【0132】
このほか、誤作動復帰機構30を備えているので、上述したように、何らかの理由で解けるべきでないロックが解けているときに、ロック状態への自動回復がなされる。
【0133】
この発明のクローザは、引きばね7が伸縮する際に発生する音の緩和策として、
図20〜
図23に示すように、引きばね7を樹脂製の筒12に遊嵌状態に収納したものも考えられる。
【0134】
樹脂製の筒12は、引きばね7が最大に縮んだときの引きばね長さに、組み立てに必要な余長を加算した長さを最大長さとするものが用いられている。
【0135】
このように、樹脂製の筒12で引きばね7を覆うと、引きばね7が伸縮する際に発生する音が外部に洩れ難くなり、従来採用されていたグリスなどの粘性物を塗布する対応策が不要になる。粘性物を塗布すると、クローザの組み立てが煩わしくなり、使用環境も悪化して好ましくないが、樹脂製の筒12を追設することでその不具合も解消される。
【0136】
なお、引き戸SDが閉じられるときの動きのみについて緩衝機能を持つことが要求される場合には、開動作緩衝用のクローザは不要であるので、ダンパ8を外ケース3に固定する。
【0137】
図22、
図23に示すように、ダンパケース9の後端に、開側クローザのカムホルダ4
−2に代えてジョイント13を取り付ける。ジョイント13は、連結軸とフランジからなるダンパケースとの接続部13aと、凹部13bと、溝13cと、フック13dを有する。
【0138】
接続部13aは、カムホルダ4
−2に設けた接続部10と同様のものであって同様の働きをする。
【0139】
凹部13bは、既述の凹部4dと同一形状、溝13cは溝4eと同一形状であり、この凹部と溝は、引きばね7の一端を着脱自在に接続するために利用される。
【0140】
フック13dは、外ケース3の後部の穴3dに挿入されてその穴3dの縁に係止する。これにより、引き戸の閉動作緩衝機能のみを持つクローザは、ダンパケース9が、外ケース3に対して引き戸開閉方向の相対移動が起こらないように固定され、外ケース3に対するダンパ8の相対移動も阻止される。