特許第6817644号(P6817644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817644
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】注入装置及び注入装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20210107BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   A61M5/168 504
   A61M5/145 508
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-71761(P2019-71761)
(22)【出願日】2019年4月4日
(62)【分割の表示】特願2016-508527(P2016-508527)の分割
【原出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2019-130368(P2019-130368A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2019年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-53977(P2014-53977)
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】内園 裕文
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−290455(JP,A)
【文献】 特表2008−506428(JP,A)
【文献】 特表2009−539562(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0004463(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0060704(US,A1)
【文献】 特開2000−350783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1薬液が充填された第1シリンジから第2チューブへ前記第1薬液を押し出す第1駆動部と、第2薬液が充填された第2シリンジから第1チューブを介して前記第2チューブへ前記第2薬液を押し出す第2駆動部とを備え、人体内に薬液を注入する薬液注入装置の制御装置であって、
前記第2チューブは、その先端カテーテルに接続されるものであり、
前記制御装置は、前記第2チューブ内の第1位置まで前記第1薬液を押し出すように前記第1駆動部を駆動し、前記第1薬液の前記押し出しの後に、前記第1チューブを介して前記第2チューブへ前記第2薬液を押し出すように前記第2駆動部を制御するとともに、前記第2薬液によって前記第1位置の前記第1薬液を後押しして前記第2チューブ内において前記第1位置よりも前記人体に近い第2位置で停止させるように前記第2駆動部を制御し、
前記制御装置は、前記第2チューブの長さに応じた量の前記第2薬液を押し出すように前記第2駆動部を制御することによって前記第1薬液を後押しして、前記第2位置で停止させる、制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は記憶部を備え、
前記第2駆動部は、前記記憶部に予め記憶された所定の注入量の前記第2薬液の前記注入を行う請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1薬液の前記第2チューブ内での前記停止の後に、前記制御装置が注入開始信号を受信したときに、前記第2薬液の更なる注入を実行して、前記第1薬液が前記人体内に到達する請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
第1薬液が充填された第1シリンジから第2チューブへ前記第1薬液を押し出す第1駆動部と、
第2薬液が充填された第2シリンジから第1チューブを介して前記第2チューブへ前記第2薬液を押し出す第2駆動部と、
前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御する制御装置と、を備えて、人体内に薬液を注入する薬液注入装置であって、
前記第2チューブは、その先端カテーテルに接続されるものであり、
前記制御装置は、前記第2チューブ内の第1位置まで前記第1薬液を押し出すように前記第1駆動部を駆動し、前記第1薬液の前記押し出しの後に、前記第1チューブを介して前記第2チューブへ前記第2薬液を押し出すように前記第2駆動部を制御するとともに、前記第2薬液によって前記第1位置の前記第1薬液を後押しして前記第2チューブ内において前記第1位置よりも前記人体に近い第2位置で停止させるように前記第2駆動部を制御し、
前記制御装置は、前記第2チューブの長さに応じた量の前記第2薬液を押し出すように前記第2駆動部を制御することによって前記第1薬液を後押しして、前記第2位置で停止させる、薬液注入装置。
【請求項5】
前記制御装置は記憶部を備え、
前記第2駆動部は、前記記憶部に予め記憶された所定の注入量の前記第2薬液の前記注入を行う請求項4に記載の薬液注入装置。
【請求項6】
前記第1薬液の前記第2チューブ内での前記停止の後に、前記制御装置が注入開始信号を受信したときに、前記第2薬液の更なる注入を実行して、前記第1薬液が前記人体内に到達する請求項4に記載の薬液注入装置。
【請求項7】
前記薬液注入装置はユーザが操作可能なフットスイッチを有し、前記注入開始信号は前記フットスイッチの操作によって入力される請求項6に記載の薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を注入するための注入装置であって、装着されたシリンジ内の薬液を撹拌する撹拌用注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用撮影装置、例えば超音波診断装置による撮影の際に使用される薬液として、懸濁液からなる造影剤がある。この造影剤は、超音波を散乱させるためにマイクロバブル又は固体粒子等を含む。そして、超音波診断をする際には、この造影剤が充填されたシリンジが注入装置に装着され、造影剤を患者の体内に注入した後に撮影が行われる。超音波診断装置は、マイクロバブル又は固体粒子に入射して反射された超音波を分析することにより、体内の画像を撮影する。しかし、シリンジを注入装置に装着した後に造影剤に分離が生じてしまい、造影剤の内容物の濃度に偏りが生じてしまうことがある。
【0003】
そこで、特許文献1には、注入装置のシリンジ内の懸濁液を十分に撹拌された状態に維持するための注射システムが開示されている。この注射システムは、水性の液体キャリア中の微粒子の懸濁液を注射することによって患者を治療するための注射システムである。そして、注射システムは、バレルに懸濁液を充填可能なシリンジと、患者へ懸濁液を注射するために制御可能に動く自動電気駆動手段とから構成されている。また、注射システムは、システム内のシリンジを保持し且つ懸濁液内の微粒子を撹拌する撹拌手段を有している。この撹拌手段は、シリンジに与えられた運動により、重力もしくは浮力による微粒子の分離を防止することによって、懸濁液の均一性を維持している。
【0004】
より具体的に特許文献1には、撹拌手段として、シリンジバレルに連続した回転を与えるために、このシリンジバレルに接触したローラーが開示されている。このローラーは、ローラー上に配置されたシリンジを保持すると共に、保持したシリンジを回転させる。これにより、ローラーは、シリンジのバレル内の懸濁液を攪拌することができる。また、特許文献1には、撹拌手段として、回転可能な形でシリンジを支持する2つのブラケットが開示されている。そして、これらのブラケットは、シリンジを保持し且つシリンジを回転させる。これにより、ブラケットは、シリンジのバレル内の懸濁液を攪拌する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3665566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された注射システムにおいては、ローラー上に載置することによってシリンジを保持する場合は、シリンジがずれ易く注入装置から外れてしまう恐れがある。また、ブラケットがシリンジの先端部分を保持する場合も、衝撃が加わったときに、保持されたシリンジがずれ易い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る注入装置は、薬液を注入するための注入装置であって、薬液が充填されたシリンジから前記薬液を押し出す駆動部と、前記シリンジを固定し且つ保持する保持ユニットと、前記保持ユニットを支持する支持部材と、前記保持ユニットに接続されると共に、前記保持ユニットを揺動させる撹拌ユニットとを備え、前記駆動部は、中空モーターと、前記中空モーターからの回転運動を直線運動に変換する変換機構とを有する。
【0008】
これにより、シリンジが保持ユニットに固定され且つ保持されているため、撹拌動作の最中にシリンジがずれてしまうことを抑制できる。
【0009】
また、本発明の他の例としての制御装置は、第1薬液が充填された第1シリンジから前記第1薬液を押し出す第1駆動部と、第2薬液が充填された第2シリンジから前記第2薬液を押し出す第2駆動部とを備える注入装置の制御装置であって、前記第1シリンジに接続されるチューブに応じた前記第2薬液の注入量を取得すると共に、前記第1薬液を押し出した後に前記注入量の前記第2薬液を注入し、前記第1薬液を後押しして前記チューブ内で停止させるように前記第2駆動部を制御する。
【0010】
これにより、薬液が体内に注入されるタイミングと、注入装置が注入を開始するタイミングとのずれを減少させて、画質の低下を抑制することができる。
【0011】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】注入装置の概略斜視図である。
図2】第1及び第2駆動部と撹拌ユニットを示す概略斜視図である。
図3】第1及び第2駆動部と撹拌ユニットの概略断面図である。
図4】前側回転部材の概略断面図である。
図5】第1保持ユニット、第1駆動部及び撹拌ユニットを示す概略斜視図である。
図6】レバー駆動部を示す概略斜視図である。
図7】第1保持ユニット及び第1駆動部の概略断面図である。
図8】第1実施形態に係る注入装置の概略ブロック図である。
図9】第2実施形態に係る薬液の注入状況を説明する概略ブロック図である。
図10】第2実施形態に係る後押し注入のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、上下とは重力方向における上方向と下方向とにそれぞれ対応する。また、注入ヘッドのシリンジが搭載される側を前側とし、前側の反対側を後側とする。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、医療用撮像装置、例えば超音波診断装置によって患者の体内を撮影する際に使用される注入装置(インジェクター)100の概略斜視図である。図1に示すように、薬液を注入するための注入装置100は、第1シリンジ91及び第2シリンジ92が搭載される注入ヘッド1を備えている。また、注入装置100は、第1シリンジ91を固定し且つ保持する第1保持ユニット11と、第1保持ユニット11を支持する1対の第1支持部材14とを備える。
【0015】
注入装置100は、第2シリンジ92を固定し且つ保持する第2保持ユニット12と、第2保持ユニット12を支持する1対の第2支持部材15とをさらに備えている。また、注入ヘッド1には、表示部及び操作部として機能するタッチパネル13が設けられている。そして、注入ヘッド1は、操作ボタン、データ入力フォーム、グラフ及び所定のデータ等をタッチパネル13に表示する。なお、注入ヘッド1は、所定のデータ等をポータブルディスプレイ又はタブレット型コンピューター等に表示させることもできる。これらのデバイスは、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、Ethernet(登録商標)又はUSB等の規格に従い注入ヘッド1と無線接続若しくは有線接続され、注入ヘッド1の表示部又は操作部に代えることができる。さらに、タッチパネル13に代えて、表示部としてのディスプレイと、操作部としての入力ボタンを設けてもよい。
【0016】
第1シリンジ91には、第1薬液として懸濁液である造影剤が充填されている。また、第2シリンジ92には、第2薬液として生理食塩水が充填されている。これらの薬液は、手動で第1シリンジ91又は第2シリンジ92に充填されてもよく、注入装置100又は充填器で第1シリンジ91又は第2シリンジ92に充填されてもよい。さらに、第1シリンジ91及び第2シリンジ92は、プレフィルドシリンジであってもよい。
【0017】
注入装置100には、フットスイッチ16が有線接続されており、オペレーターは、フットスイッチ16を操作して薬液の注入を開始させることができる。なお、フットスイッチ16は、注入ヘッド1に無線接続されてもよい。また、フットスイッチ16に代えて、ハンドスイッチ等の遠隔操作装置を注入ヘッド1に有線又は無線接続し、その操作によって薬液の注入を開始することもできる。
【0018】
なお、注入ヘッド1は、ACアダプタ(不図示)を介して外部電源に接続されているが、注入ヘッド1にバッテリーを内蔵することもできる。また、注入ヘッド1は、キャスタースタンド(不図示)に搭載してもよく、又はキャスタースタンドと一体的に構成してもよい。さらに、天吊部材を設け、この天吊部材を介して天井から注入ヘッド1を天吊することもできる。
【0019】
第1シリンジ91の先端には、三方活栓103が接続されている。また、第2シリンジ92の先端には、第1チューブ104が接続されている。そして、第1チューブ104は三方活栓103に接続されている。さらに、第1シリンジ91には、三方活栓103を介して、第2チューブ105が接続される。そして、第2チューブ105の先端はカテーテル等に接続される。なお、図1においては、便宜的に第1チューブ104及び第2チューブ105を点線で示している。
【0020】
第1保持ユニット11には、三方活栓103が取り付けられる設置部分111として溝が形成されている。また、第1保持ユニット11には、第1チューブ104を案内するガイド部112及び第2チューブ105が案内されるガイド部113として、断面U字状の溝が形成されている。そして、ガイド部112は、ガイド部113と連通している。これにより、第1チューブ104及び第2チューブ105は、共通のガイド部113から外部へ延在する。そのため、第1保持ユニット11が揺動しても、第1チューブ104及び第2チューブ105が捻じれることが防止される。なお、不要であれば、共通のガイド部113は省略してもよい。
【0021】
図2に示すように、注入装置100は、第1薬液が充填された第1シリンジ91から第1薬液を押し出す第1駆動部2と、第1保持ユニット11に接続されると共に、第1シリンジ91内の第1薬液を撹拌するために、第1保持ユニット11を揺動させる撹拌ユニット3とを備える。第1駆動部2及び撹拌ユニット3は、注入ヘッド1のカバー内に収容されている。また、第2薬液が充填された第2シリンジ92から第2薬液を押し出す第2駆動部6も、注入ヘッド1のカバー内に収容されている。なお、撹拌ユニット3が設けられていることを除いて、第2駆動部6は第1駆動部2と同様の構成を備えるため、その説明は省略する。
【0022】
第1駆動部2は、いずれもハウジング20に収容された、中空モーター22(図3)と、中空モーター22からの回転運動を直線運動に変換する変換機構23(図3)とを有する。また、第1シリンジ91にはピストン914が取り付けられている。そして、第1駆動部2は、第1シリンジ91の後端としてピストン914の後端913を押すプレッサー21をさらに有する。注入準備が完了した状態では、プレッサー21は、ピストン914の後端913に近接している。
【0023】
第1駆動部2は、第1シリンジ91の軸線方向に沿ってプレッサー21を前進させる。そして、プレッサー21がピストン914を押して前進させると、ピストン914も前進して第1シリンジ91内の造影剤が押し出される。押し出された造影剤は、三方活栓103と第2チューブ105を介して患者の体内に注入される。なお、プレッサー21には、後端913をプレッサー21に固定するためのシリンジフック(不図示)を取り付けることができる。そして、後端913がプレッサー21に固定された状態でプレッサー21が後退すると、ピストン914を後退させることができる。
【0024】
第1保持ユニット11は、前側回転部材124を介して撹拌ユニット3に接続されている。そして、撹拌ユニット3は、第1保持ユニット11を駆動する撹拌用モーター32と、撹拌用モーター32からの回転運動を前側回転部材124に伝達する伝達機構33とを有する。この伝達機構33は、撹拌用モーター32の出力軸に接続されて、出力軸と共に回転するプーリー331と、プーリー331に掛け回されたベルト332とを有する。なお、撹拌用モーター32としては、DCモーターを用いることができる。また、撹拌用モーター32には、回転角度を検出するためのエンコーダー321が取り付けられている。
【0025】
前側回転部材124は、前側固定部134に対して回転可能に取り付けられている。そして、ベルト332は、前側回転部材124の後部128(図3)にも掛け回されている。また、ハウジング20は、前側回転部材124に固定されており、前側回転部材124と共に回転可能である。さらに、前側回転部材124は、第1支持部材14を介して第1保持ユニット11の後端に接続されている。そして、第1保持ユニット11は、前側回転部材124と共に回転する。なお、プーリー331及びベルト332に代えて、歯車によって前側回転部材124に回転運動を伝達してもよい。
【0026】
撹拌用モーター32からの回転運動は、プーリー331、ベルト332、前側回転部材124及び第1支持部材14を介して第1保持ユニット11に伝達される。そして、第1保持ユニット11は、第1シリンジ91の軸線方向と交差する方向Aに沿って交互に揺動する。なお、撹拌用モーター32からの回転運動は、プーリー331、ベルト332、前側回転部材124を介してハウジング20にも伝達される。そして、ハウジング20も、第1保持ユニット11と共に揺動する。
【0027】
図3は、図2の第1駆動部2及び撹拌ユニット3を水平方向に切った断面を示す概略断面図である。第1駆動部2の中空モーター22は、プレッサー21を駆動する注入用モーターとして機能する。そして、第1駆動部2は、中空モーター22からの回転運動を直線運動に変換する変換機構23を有する。この中空モーター22は、ハウジング20に固定されてその内部に収容されている。そして、中空モーター22としては、ステッピングモーターを用いることができる。
【0028】
変換機構23は、ボールねじナット231と、ボールねじナット231が取り付けられるねじ軸232とを有する。そして、ボールねじナット231は中空モーター22に連結されている。また、ねじ軸232は前側回転部材124を貫通して延在していると共に、後側回転部材125及びハウジング20を貫通して延在している。また、前側回転部材124は、ねじ軸232用のベアリング123を有しており、ねじ軸232の前端にはプレッサー21が固定されている。そして、プレッサー21には、ピストン914の後端913を非接触で検出する後端検出部150が取り付けられている。
【0029】
第1支持部材14は、プレッサー21を貫通して延在すると共に、前側固定部134に取り付けられた前側回転部材124に接続されており、後述するねじ軸232の回り止めとして機能する。そして、中空モーター22によりボールねじナット231が正転すると、トルクがねじ軸232に伝達されねじ軸232が前進する。同様に、ボールねじナット231が逆転するとねじ軸232が後退する。また、変換機構23の一部は、中空モーター22の内側に配置されている。すなわち、ねじ軸232が中空モーター22の中心部を貫通して延在しており、ボールねじナット231は中空モーター22の内側に配置されている。これにより、ハウジング20が揺動する際の回転半径を小さくすることができる。なお、回り止めとしては、他のモーターに回転可能に接続されたボールスプラインナットを用いることもできる。
【0030】
前側回転部材124は、ベアリングとしての複数のローラー136を介して、前側固定部134に取り付けられている。同様に、後側回転部材125は、ベアリングとしての複数のローラー137を介して、後側固定部135に取り付けられている。そして、前側固定部134及び後側固定部135は、いずれも注入ヘッド1の内部に固定されている。また、前側回転部材124及び後側回転部材125は、ハウジング20に固定されている。これにより、ベルト332が回転すると、前側固定部134及び後側固定部135に支持された状態で、ハウジング20が揺動する。
【0031】
第1支持部材14は、中空形状を有する。そして、注入装置100は、第1支持部材14内を通る配線10を備える。すなわち、制御部に電気的に接続される配線10を、第1支持部材14の内部を通して引き回すことができる。また、前側回転部材124には、第1支持部材14の後端開口と連通する貫通穴が形成されている。同様に、ハウジング20には、前側回転部材124の貫通穴の後端開口と連通する貫通穴が形成されている。さらに、後側回転部材125にも、ハウジング20の貫通穴の後端開口と連通する貫通穴が形成されている。そして、配線10は、後側回転部材125の後端から制御部に向かって下方に延在している。
【0032】
また、ねじ軸232も中空形状を有する。そして、注入装置100は、ねじ軸232内を通る配線10を備える。すなわち、配線10は、ねじ軸232の内部を通して引き回すこともできる。なお、図3においては、第1支持部材14及びねじ軸232の内部の配線10を、便宜的に点線で示している。
【0033】
これにより、第1保持ユニット11及びハウジング20が揺動する際に、配線10が絡まってしまうことを防止できる。なお、第1支持部材14又はねじ軸232を通る配線10は、モーター、検出部及びランプ等に接続される。モーターとしては、例えば、三方活栓103の切り替えレバーを駆動するモーターがある。また、検出部としては、例えば、三方活栓103の回転角度を検出する検出部、薬液の濁り検出部、濁度センサー、濁り検出用のCCDカメラ、及び後端913の位置検出部等がある。また、ランプとしては、光学式センサーに用いられるランプ及び電源表示ランプ等がある。
【0034】
図4を参照して、前側回転部材124についてより詳細に説明する。図4は、第1保持ユニット11の揺動軸126及びねじ軸232の回転軸に対して上下方向に垂直に切った断面を示す。前側回転部材124には、第1支持部材14の後端開口と連通する貫通穴として、1対の配線穴127が形成されている。また、ねじ軸232の中心部にも、配線穴237が形成されている。そして、前側回転部材124は、4つのボルトでハウジング20に固定されていると共に、前側固定部134に回転可能に取り付けられている。
【0035】
撹拌用モーター32からの回転運動は、プーリー331、ベルト332を介して、前側回転部材124に伝達される。そして、前側回転部材124及びハウジング20を含む第1駆動部2は、揺動軸126を中心に揺動する。また、前側回転部材124の揺動軸126とねじ軸232の回転軸とが共軸である。このように、揺動軸126がねじ軸232の回転軸と一致しているため、ハウジング20のサイズを前側回転部材124と同じ又はそれよりも小さくすることにより、揺動時の第1駆動部2の回転半径が、前側回転部材124の半径R1以下となる。換言すると、揺動時の第1駆動部2の回転半径が、ねじ軸232の回転軸を中心に前側回転部材124を回転させる場合の回転半径以下となる。
【0036】
これに対して、揺動軸126とねじ軸232の回転軸とが共軸でない場合、第1駆動部2の揺動時の回転半径R2は、半径R1よりも大きくなる。例えば、図4では、揺動軸126とねじ軸232の回転軸とが共軸でない例として、ねじ軸232と並んでハウジング20’を設けた場合の第1駆動部2の軌道を、仮想的に点線Bで示している。この場合、ハウジング20’を揺動させると、前側回転部材124の回転軌道からはみ出るので、回転半径R2は前側回転部材124の半径R1よりも大きくなってしまう。そのため、注入ヘッド1のサイズも大きくなってしまう。
【0037】
このように、2つの構成の間で前側回転部材124及びハウジング20のサイズが同じであるとすると、共軸である方が第1駆動部2の回転半径を小さくできる。これにより、注入ヘッド1のサイズを小さくすることができる。
【0038】
続いて図5を参照して、第1保持ユニット11について説明する。第1保持ユニット11の前部には、水平方向に回転自在であるストッパーアーム106が設けられている。このストッパーアーム106は、ガイド部113から退避した退避位置と、ガイド部113に突出した押さえ位置との間で移動することができる。そして、押さえ位置に位置するストッパーアーム106は、ガイド部113から延在する第1チューブ104及び第2チューブ105をガイド部113から外れないように規制できる。
【0039】
第1保持ユニット11には、第1シリンジ91の前部を受け入れるシリンジ設置部分119として溝が形成されている。このシリンジ設置部分119には、濁り検出部(不図示)を配置することができる。この濁り検出部は、例えば、一対の上側発光部及び上側受光部と、一対の下側発光部及び下側受光部とを備える。そして、上側受光部と下側受光部とがそれぞれ受光した光量を比較し、光量の偏りに基づいて懸濁液の分離を検出する。
【0040】
また、第1保持ユニット11に形成された三方活栓103の設置部分111には、三方活栓103の切り換えレバー107が嵌め込まれる嵌合部41が設けられている。この嵌合部41は、切り換えレバー107の外部形状と相補的な内部形状を有する溝が形成されている。そして、嵌合部41は、第1保持ユニット11内に設けられたレバー駆動部4により回転される。このレバー駆動部4について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、第1保持ユニット11を後方から見た概略斜視図であり、図7は第1保持ユニット及び第1駆動部を長手方向にそって上下に切った断面を示す。
【0041】
レバー駆動部4は、三方活栓103の切り換えレバー107を駆動するために、嵌合部41を回転駆動するレバー駆動用モーター42を有する。このレバー駆動用モーター42としては、DCモーターを用いることができ、レバー駆動用モーター42は三方活栓103に対して第2保持ユニット12側に配置されている。また、レバー駆動部4は、レバー駆動用モーター42からの回転運動を嵌合部41に伝達する伝達機構43を有する。なお、レバー駆動用モーター42は、三方活栓103に対して第2保持ユニット12側とは反対側に配置してもよい。
【0042】
この伝達機構43は、レバー駆動用モーター42の出力軸に接続されたプーリー431と、プーリー431と対をなすプーリー432と、プーリー431及びプーリー432に掛け回されたベルト433とを有する。さらに、伝達機構43は、ウォーム434及びウォームホイール435を含むウォームギアを有する。このように、伝達機構43がウォームギアを有するので、ウォームギアのセルフロック機能により、外力が加わっても嵌合部41が誤って回転することを防止できる。
【0043】
ウォームホイール435は、嵌合部41に固定されている。レバー駆動用モーター42からの回転運動は、プーリー431、ベルト433及びプーリー432を介してウォーム434に伝達される。そして、ウォーム434が回転すると、ウォームホイール435及び嵌合部41が水平方向に回転する。このように、レバー駆動部4は、三方活栓103の切り換えレバー107を回転駆動させることができる。そして、切り換えレバー107の回転に伴い、三方活栓103における流路が切り替えられる。これにより、注入装置100は、所定のタイミングで三方活栓103における流路を切り替えることができる。
【0044】
注入装置100は、三方活栓103における第1薬液(例えば造影剤)の流路の開放を検出する検出部として開放検出部44を備える。この開放検出部44は、光学式のスリットセンサーであり、嵌合部41に設けられた遮蔽フランジ411のスリットを検出することによって、造影剤の流路の開放を検出する。造影剤の流路が閉じられた状態で第1シリンジ91のピストン914が押されてしまうと、造影剤に圧力がかかる結果、懸濁液内のマイクロバブルが壊れてしまう。そこで、注入装置100の制御部5(図8)は、流路の開放が検出されないときには、第1薬液を押し出さないように第1駆動部2を制御する。このように、開放検出部44が開放を検出しない場合に、ピストン914の押圧を禁止することによって、マイクロバブルの破壊を回避することができる。なお、禁止に代えて又は禁止と共に、開放検出部44が開放を検出しない場合に、タッチパネル13が警告を表示してもよい。また、注入ヘッド1が警告音を発してもよい。
【0045】
続いて、図7及び図2を参照し、揺動時の元の位置となる原点を検出する原点検出部131と、プレッサー21の移動の限界を検出するリミット検出部140について説明する。後側回転部材125の後方には、原点検出部131として光学式のスリットセンサーが設けられている。また、後側回転部材125の後端にはスリットが形成された遮蔽板132が固定されている。そして、遮蔽板132は後側回転部材125と共に回転し、原点検出部131は遮蔽板132のスリットを検出することによって第1保持ユニット11の揺動の原点を検出する。なお、揺動角度は、撹拌用モーター32のエンコーダー321により検出することができる。
【0046】
また、後側回転部材125の後方には、リミット検出部140として、前側リミット検出部141と後側リミット検出部142とが設けられている。そして、ねじ軸232の後端部には、遮蔽板143が固定されており、遮蔽板143はねじ軸232と共に前進又は後退する。また、前側リミット検出部141及び後側リミット検出部142は、光学式のスリットセンサーである。そして、前側リミット検出部141は、プレッサー21及びねじ軸232が限界まで前進すると、遮蔽板143によって遮蔽される位置に配置されている。一方、後側リミット検出部142は、プレッサー21及びねじ軸232が限界まで後退すると、遮蔽板143によって遮蔽される位置に配置されている。
【0047】
前側リミット検出部141は、遮蔽板143を検出することによって前進の限界を検出する。そして、後側リミット検出部142は、遮蔽板143を検出することによって後退の限界を検出する。なお、第1駆動部2においては、遮蔽板143が上下方向に突出するように配置されている。一方、第2駆動部6においては、遮蔽板143が水平方向に突出するように配置されている。
【0048】
続いて、図8を参照して、注入装置100の制御装置としての制御部について説明する。図8は、注入装置100の概略ブロック図である。注入装置100は、薬液の注入を制御するために、第1駆動部2、第2駆動部6、撹拌ユニット3及びレバー駆動部4を制御する制御部5と、記憶部としてのメモリ部53とを備えている。
【0049】
制御部5は、例えばワンチップマイコンであるCPUであり、第1駆動部2、第2駆動部6及び撹拌ユニット3の下方に配置されている。そして、制御部5は、予めメモリ部53に記憶されたプログラムに応じて、各モーターの制御の他、所定の演算、制御、判別などの処理動作を実行する。メモリ部53は、メインCPU(Central Processing Unit)が動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、プログラム又はシステムソフトウェア等を格納するROM(Read Only Memory)、又はハードディスクドライブ等を備える。
【0050】
第1及び第2薬液の注入は、注入プロトコルに従って自動的に行われる。この注入プロトコルには、例えば、注入時間、注入速度、注入量及び注入圧力リミット値が設定されている。そして、タッチパネル13は、注入プロトコルの内容を表示し、オペレーターは注入プロトコルの内容を確認することができる。
【0051】
注入プロトコル及び薬液のデータ等は、メモリ部53に予め記憶されている。患者に薬液を注入する場合、オペレーターは、タッチパネル13を操作して、注入速度、注入量、注入時間及び注入最大圧力などのデータ、及びチューブの種類のデータ等を入力することができる。また、オペレーターは、タッチパネル13に代えて、注入ヘッド1に設けられた入力ボタンからデータを入力してもよい。
【0052】
なお、制御部5は、入力されたデータと予め記憶されているデータに基づいて注入条件を算出し、患者に注入する薬液の量及び注入プロトコルを決定してもよい。また、注入プロトコル及び薬液のデータ等は、外部の記憶媒体から入力することもできる。また、注入プロトコルは、変更できないようにパスワードによりロックすることもできる。
【0053】
薬液を注入する前に、オペレーターは注入装置100の電源をオンにし、第1シリンジ91及び第2シリンジ92を搭載する。そして、オペレーターが注入の準備を完了させると、注入装置100は注入可能状態で待機する。なお、オペレーターは、シリンジを搭載した後に、注入装置100の電源をオンしてもよい。そして、オペレーターは、フットスイッチ16を押して、薬液の注入を開始させる。なお、オペレーターは、フットスイッチ16に代えて、タッチパネル13に表示されたスタートボタン又は注入ヘッド1に設けられたスタートボタンを押して注入を開始してもよい。また、フットスイッチ16を再度押すことにより薬液の注入が停止するように、注入装置100を構成してもよい。
【0054】
制御部5は、フットスイッチ16から注入開始信号を受信すると、注入プロトコルに従って第1駆動部2の中空モーター22を駆動させる。中空モーター22の回転運動は、変換機構23により直線運動に変換され、プレッサー21に伝達される。そして、プレッサー21によって、ピストン914が第1シリンジ91の先端に向かって押される。これにより、第1シリンジ91内の造影剤が注入される。また、制御部5は、タイマー(不図示)を利用して注入時間を制御すると共に、薬液の注入圧力等の注入状況を監視している。さらに、制御部5は、注入開始又は注入終了からの経過時間を、カウントアップによりタッチパネル13に表示させてもよい。また、制御部5は、撮像開始までの時間を、カウントダウンによりタッチパネル13に表示させてもよい。これにより、適切なタイミングで撮像を開始することができる。なお、第2薬液の注入も同様に行われるため、第2薬液の注入については説明を省略する。
【0055】
また、第1駆動部2のリミット検出部140(前側リミット検出部141及び後側リミット検出部142)は、プレッサー21の前進リミット及び後退リミットを監視する。そして、リミット検出部140からの検出信号を受信した場合、制御部5は、プレッサー21の前進又は後退を停止する。第2駆動部6のリミット検出部140も同様に、前進リミット及び後退リミットを監視する。
【0056】
制御部5は、注入プロトコルに従い、レバー駆動部4に薬液の流路を切り替えさせる。すなわち、レバー駆動用モーター42を駆動させ、嵌合部41を介して三方活栓103の切り換えレバー107を回転させる。例えば、造影剤を注入する場合、制御部5は、切り換えレバー107を第2シリンジ92側に回転させ、第1シリンジ91と第2チューブ105とのラインを開く。そして、造影剤をフラッシュする場合、制御部5は、切り換えレバー107を第1シリンジ91側に回転させ、第2シリンジ92と第2チューブ105とのラインを開く。
【0057】
さらに、制御部5は、開放検出部44からの検出信号に基づいて、第1シリンジ91と第2チューブ105の間のラインの開放を判断する。そして、ラインの開放が検出されない場合、制御部5は、第1駆動部2を駆動させず、造影剤の注入を開始しない。これにより、ラインが閉鎖された状態で誤ってプレッサー21を前進させてしまうことを防止できる。そのため、造影剤のマイクロバブルが壊れてしまうことを防止できる。
【0058】
また、プレッサー21には、後端検出部150として一対の発光部及び受光部を有する光学式センサーが設けられている。この後端検出部150は、プレッサー21の前方に突出している。そのため、発光部から出射されてピストン914の後端913の下側端面で反射された光は、プレッサー21が後端913の後面に当接する前に受光部に入射する。そして、プレッサー21が後端913に近づいて受光部に反射光が入射すると、後端検出部150は検出信号を制御部5に送信する。この時、プレッサー21の当接面と後端の後面は離れている。ただし、プレッサー21を、後端の後面と実質的に当接するまで近接させることもできる。
【0059】
そして、注入準備に際して、オペレーターは、停止アシストモードを利用することができる。すなわち、オペレーターは、薬液の注入前に、注入ヘッド1の前進ボタン81(図1)を押してプレッサー21をピストン914の後端913に近接させる。そして、制御部5は、後端検出部150から検出信号を受信した後にプレッサー21を所定の前進距離だけ前進させると共に、後端913から離れた位置でプレッサー21を停止させる。その後、注入準備が完了したら、注入装置100は、注入可能な状態で待機する。なお、前進ボタン81に代えてタッチパネル13に前進ボタンを表示させ、オペレーターは表示されたボタンを押してプレッサー21を後端913に近接させてもよい。
【0060】
後端913が検出された後にプレッサー21を前進させる前進距離は、メモリ部53に予め記憶されており、後端の形状、厚み、材質、及び端面の反射率等に応じて異なる。制御部5は、メモリ部53からこの前進距離を取得する。なお、オペレーターが前進ボタン81を押したままであっても、制御部5により前進は停止される。
【0061】
停止アシストモードにより、注入準備に際して、プレッサー21が誤ってピストン914を押し込むことを防止できる。そのため、第1シリンジ91からの流路が閉鎖している状態で、誤ってピストン914を押し込むことによってマイクロバブルを破壊してしまうことを回避できる。なお、光学式センサーに代えて、非接触式センサーとして、超音波センサー、静電センサー及び磁気センサー等を用いることもできる。また、光学式センサーに代えて、接触式センサーを用いることもできる。
【0062】
また、オペレーターは、薬液を注入する前に造影剤の撹拌を行う。撹拌を行う場合、オペレーターは、注入ヘッド1の撹拌ボタン82(図1)を押す。撹拌開始信号を受信した制御部5は、予め定められた撹拌動作を撹拌ユニット3に行わせるために、撹拌用モーター32を駆動させる。撹拌用モーター32からの回転運動は、伝達機構33を介して前側回転部材124に伝達される。そして、第1保持ユニット11は前側回転部材124と共に揺動する。
【0063】
ここで、撹拌ユニット3は、所定の揺動角度で第1保持ユニット11を揺動させるように制御部5に制御される。すなわち、制御部5は、原点検出部131からの検出信号に従い揺動の原点を決定する。そして、撹拌用モーター32のエンコーダー321からの信号に基づいて、第1保持ユニット11の揺動量を判断する。これにより、第1保持ユニット11が揺動軸126に対して水平な方向から所定の角度の範囲で往復して揺動するように制御される。
【0064】
撹拌動作は、例えば、撹拌時間が10秒から300秒であり、回転速度が10rpmから120rpmである。また、撹拌動作は、一方向への揺動と逆方向への揺動とを繰り返すように行う。例えば、制御部5は、第1保持ユニット11を一方向へ180度揺動させる。すなわち、制御部5は、第1シリンジ91が下を向く位置まで、第1保持ユニット11を揺動させる。そして、第1シリンジ91が下を向いた状態で2〜6秒停止させた後に、制御部5は、第1保持ユニット11を逆方向へ180度揺動させる。すなわち、制御部5は、元の位置(原点)に戻るように、第1保持ユニット11を揺動させる。そして、制御部5は、第1保持ユニット11を逆方向へ180度揺動させる。すなわち、制御部5は、第1シリンジ91が下を向く位置まで、第1保持ユニット11を逆方向へ揺動させる。そして、第1シリンジ91が下を向いた状態で2〜6秒停止させた後に、制御部5は、元の位置に戻るように、第1保持ユニット11を揺動させる。なお、揺動開始から元の位置へ戻るまでに要する時間は、停止時間を除いて4〜8秒とすることができる。また、第1保持ユニット11が元の位置に戻った際に、逆方向へ揺動する前に第1保持ユニット11を元の位置で一時的に停止させてもよい。
【0065】
また、制御部5は、撹拌動作中に注入を開始しないように制御する。そして、制御部5は、第1保持ユニット11の揺動が停止した後に薬液の注入を開始する。そのため、撹拌動作中に注入開始信号を受信した場合、制御部5は撹拌動作の終了を待って中空モーター22を駆動させる。これにより、注入中に揺動動作によって第2チューブ105が動くことはなく、患者からカテーテル等が外れてしまうことを防止できる。
【0066】
また、制御部5は、注入を開始する際に、撹拌ユニット3に撹拌動作を行わせることもできる。この場合、注入開始信号を受信した制御部5は、撹拌ユニット3に撹拌動作を行わせ、撹拌動作が終了した後に中空モーター22を駆動する。また、撹拌動作は、薬液の分離が検知されたときに自動で開始させることもできる。薬液の分離は濁り検出部等によって検知でき、制御部5は検出信号を受信すると撹拌動作を開始する。さらに、オペレーターは、所定の時間ごとに、自動で撹拌動作を行うように設定することもできる。なお、必要であれば、薬液の注入中に撹拌動作を行ってもよい。
【0067】
第1実施形態に係る注入装置によれば、シリンジが保持ユニットに固定され且つ保持されている。これにより、撹拌ユニットにより保持ユニットを揺動することによって、撹拌動作の最中にシリンジがずれてしまうことを抑制できる。さらに、第1実施形態に係る注入装置によれば、保持ユニットの揺動軸が駆動部のねじ軸の回転軸と共軸である。これにより、駆動部の回転半径を小さくできるため、注入ヘッドのサイズを小さくすることができる。
【0068】
[第2実施形態]
図9を参照して第2実施形態の注入装置200について説明する。図9は造影剤の注入状況を説明する概略ブロック図であり、図10は造影剤の後押し注入を説明するフローチャートである。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0069】
第1実施形態と同様に、注入装置200は、第1シリンジ91及び第1保持ユニット11を揺動させる撹拌ユニット3を備える。そして、図9に示すように、第1薬液としての造影剤を注入するための第1駆動部201は、第1シリンジ91に接続されている。また、第2薬液としての生理食塩水を注入するための第2駆動部202は、第2シリンジ92に接続されている。そして、第2シリンジ92は、第1チューブ104及び三方活栓(不図示)を介して第2チューブ105に接続されている。また、第1シリンジ91は、三方活栓を介して第2チューブ105に接続されている。そして、第2チューブ105の先端にはカテーテル209が接続されており、このカテーテル209を介して薬液が体内に注入される。
【0070】
第1シリンジ91に充填された造影剤は、第2チューブ105の容量に対して量が少ない。そのため、造影剤の注入時に、造影剤がカテーテル209から遠い第1位置P1で止まってしまう。そして、第1位置P1の造影剤は、矢印Cで示す方向に流れる生理食塩水に押し出されて体内に注入される。この場合、実際に造影剤が体内に注入されるタイミングと、注入装置100が造影剤の注入を開始したタイミングとにずれが生じてしまう。そして、注入装置100の注入開始後に所定の時間が経過してから撮影を開始する場合には、このずれに起因して撮影された画像の画質が低下してしまうおそれがある。
【0071】
そこで、第2実施形態に係る注入装置200の制御装置としての制御部205は、第1シリンジ91に三方活栓を介して接続される第2チューブ105に応じた第2薬液の注入量を取得する。そして、第1薬液を押し出した後に、この注入量の第2薬液を注入し、第1薬液を後押しして第2チューブ105内で停止させるように第2駆動部202を制御する。すなわち、制御部205は、造影剤の注入後に、カテーテル209に近い第2位置P2まで造影剤を移動させるように第2駆動部202を制御している。
【0072】
さらに、第2チューブ105の長さに応じて、造影剤を移動させるために必要な生理食塩水の量は変動する。そこで、制御部205は、第2チューブ105の長さ(種類)に応じて、必要な生理食塩水の注入量を判断している。なお、後押し注入について以下に説明するが、第1実施形態と同様の制御については説明を省略する。
【0073】
まず、オペレーターは、薬液の注入を開始する前に使用する第2チューブ105の種類、長さ又は容量等のチューブ情報を注入装置200に入力する(S201)。そして、入力が行われると(S201でYES)、制御部205は、入力されたチューブ情報を記憶部としてのメモリ部253に記憶させる(S202)。メモリ部253には、後押し注入に用いる生理食塩水の注入量とそれに対応するチューブ情報とが関連付けられたデータテーブルが、予め記憶されている。そして、制御部205は、このデータテーブルを参照して、入力されたチューブ情報に対応する生理食塩水の注入量を取得する(S203)。
【0074】
薬液の注入を開始する場合、オペレーターは、フットスイッチ16を押す。そして、制御部205は、フットスイッチ16から注入開始信号を受信すると(S204でYES)、第1駆動部201に造影剤の注入を開始させる(S205)。注入プロトコルに従って所望の量の造影剤が押し出されると、造影剤は第1位置P1で停止してしまう。そこで、制御部205は、薬液が流れる方向Dに沿って後押しするように、第2駆動部202に生理食塩水を注入させる(S206)。ここで、制御部205は、取得した注入量の生理食塩水を注入するように、第2駆動部202を制御する。一方、受信しないときは(S204でNO)、制御部205は、注入開始信号の受信を待つ。
【0075】
生理食塩水に後押しされた造影剤は、カテーテル209に近い第2位置P2まで進む。オペレーターは、造影剤が第2位置P2に到達して後押し注入が完了すると、フットスイッチ16を再度押す。制御部205は、フットスイッチ16から注入開始信号を再度受信すると(S207でYES)、第2駆動部202に生理食塩水を注入させる(S208)。これにより、第2位置P2にある造影剤は、生理食塩水に押し出されて体内に注入されて、造影剤の注入が終了する。一方、再受信しないとき(S207でNO)、制御部205は、注入開始信号の再受信を待つ。
【0076】
チューブ情報の入力が行われない場合(S201でNO)、オペレーターがフットスイッチ16を押して注入開始信号を受信すると(S209でYES)、制御部205は、第1駆動部201に造影剤の注入を開始させる(S210)。一方、受信しないときは(S209でNO)、制御部205は、注入開始信号の受信を待つ。
【0077】
オペレーターは、造影剤の注入が完了すると、フットスイッチ16を再度押す。制御部205は、フットスイッチ16から注入開始信号を再度受信すると(S207でYES)、第2駆動部202に生理食塩水を注入させる(S208)。これにより、造影剤は、生理食塩水に押し出されて体内に注入されて、造影剤の注入が終了する。なお、チューブ情報の入力が行われない場合(S201でNO)、制御部205が、予めメモリ部253に記憶された所定の注入量を取得し、この取得した注入量に基づいて後押し注入してもよい。
【0078】
第2実施形態に係る注入装置においても、シリンジが保持ユニットに固定され且つ保持されている。これにより、撹拌ユニットにより保持ユニットを揺動することによって、撹拌動作の最中にシリンジがずれてしまうことを抑制できる。さらに、第2実施形態に係る注入装置によれば、薬液が体内に注入されるタイミングと、注入装置が注入を開始するタイミングとのずれを減少させて、画質の低下を抑制することができる。また、異なる長さを有する複数種類のチューブが使用される場合であっても、造影剤を後押しして適切な位置へ進めることができる。
【0079】
なお、第2実施形態においては、注入開始信号を受信した制御部205が自動的に造影剤の後押し注入を開始している。しかし、所望の量の造影剤が押し出された後に、オペレーターがフットスイッチ16を再度押すことにより、制御部205が後押し注入を開始してもよい。また、注入準備完了後に、オペレーターがスタートボタンを押すことにより、制御部205が後押し注入を開始してもよい。また、注入ヘッド1又はタッチパネル13に後押しボタンを設けると共に、オペレーターが後押しボタンを押すことにより、制御部205が後押し注入を開始してもよい。さらに、フットスイッチ16を押した回数に応じて、制御部205が後押し注入を開始してもよい。
【0080】
また、制御部205は、入力された第2チューブ105の長さに基づいて、生理食塩水の注入量を計算してもよい。さらに、造影剤を後押しさせる所望の距離をオペレーターが入力した場合に、制御部205が入力された距離に基づいて生理食塩水の注入量を計算してもよい。
【0081】
さらに、オペレーターがチューブ情報を入力することに代えて、三方活栓103にチューブ情報の入力手段を設けると共に、入力手段からの入力に基づいて制御部205がチューブ情報を自動的に取得してもよい。なお、この入力手段としては、チューブ情報が記録されたデーターキャリア、又はセンサーで検出可能な突起等がある。この場合、制御部205は、データーキャリアからチューブ情報を読み取ることができる。また、制御部205は、センサーで検出された突起の数又は長さに基づいてチューブ情報を判別することができる。
【0082】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び各変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0083】
例えば、各モーターには、超音波モーターを用いることができる。さらに、第2保持ユニット12は固定されていたが、第1保持ユニット11と同様に揺動させることもできる。また、注入装置100は、超音波診断装置以外の他の医療用撮像装置と共に使用することもできる。このような医療用撮像装置としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、血管撮像装置等の各種医療用撮像装置がある。
【0084】
また、注入装置は、撮像装置に有線又は無線接続することもできる。この場合、薬液の注入時及び画像の撮影時には、撮像装置と注入装置との間で各種データが送受信される。例えば、注入装置において撮像条件が設定又は表示されてもよく、撮像装置において注入条件が設定又は表示されてもよい。また、撮像装置と注入装置とを連動させることもできる。例えば、注入装置が、注入開始又は注入完了を示す信号を撮像装置に送信し、撮像装置は、該信号を受信したタイミングで撮像を開始してもよい。
【0085】
また、注入装置は、注入結果(注入履歴及び撹拌動作の履歴)に関する情報を、ネットワーク経由でRIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)、及びHIS(Hospital Information System)等の外部記憶装置に送信し記憶させることもできる。この場合、撹拌動作の履歴には、薬液の名称、撹拌時間及び揺動速度等のデータが含まれ得る。また、注入履歴には、薬液の名称、注入速度、注入量、注入時間及び注入最大圧力等のデータが含まれ得る。なお、注入装置が通信部を備える場合、通信部を介して超音波診断装置から撮影結果に関する情報、例えば、検査ID、撮影時間及び撮影部位等を取得することもできる。そして、注入装置は、撮影結果と関連付けた注入結果を、外部記憶装置に記憶させることができる。また、オペレーターは、病院内情報システムの端末を利用して、注入装置に注入プロトコル等の情報を送受信することもできる。
【0086】
また、シリンジには、RFIDやバーコードといったデーターキャリアを設けることもできる。このデーターキャリアには、充填された薬液の情報等が記録されている。そして、注入装置は、注入ヘッドを介してデーターキャリアから記録された情報を読み取ることができる。例えば、注入装置は、読み取った薬液の情報を注入ヘッドの表示部に表示させることができる。なお、薬液の情報としては、例えば、製品名称、薬剤名、製品ID、化学分類、含有成分、濃度、粘度、シリンジ容量、シリンジ耐圧、シリンダ内径及びピストンストローク等がある。
【0087】
また、薬液注入中には、注入中を示すアニメーションを注入ヘッド1の表示部に表示してもよい。このようなアニメーションとしては、例えば、造影剤を示す緑の水滴状の画像が、緑のシリンジの画像の先端から流出するように表示すると共に、生理食塩水を示す青の水滴状の画像が、青のシリンジの画像の先端から流出するように表示する。または、第2チューブ105が接続された状態で薬液が注入されると、チューブの画像が薬液を示す色(例えば、造影剤を示す緑、生理食塩水を示す青、又は混合液を示す青と緑若しくは青緑)となるように色が変わる。これにより、実際の注入状況がアニメーションで表示され、オペレーターは注入状況を視覚的に判別できる。なお、薬液の注入と連動して、シリンジの画像のピストン部分が前進又は後退するように表示してもよい。
【0088】
また、薬液の注入は以下の様なフローで行うことができる(図1を参照)。まず、前準備として、オペレーターは、所定量の造影剤を撹拌して第1シリンジ91に充填すると共に、生理食塩水を充填した第2シリンジ92を準備する。なお、第2シリンジ92は、例えば、30ml又は50mlの容量を有する。続いて、オペレーターは、第2シリンジ92を短い第1チューブ104に接続する。そして、オペレーターは、第1チューブ104、及び第2チューブ105内のカテーテル(不図示)が接続される部分までの区間を生理食塩水で満たしてエア抜きを行う。このとき、三方活栓103の第1シリンジ91に接続される側は、閉じた状態となっている(造影剤ラインのOFF状態)。
【0089】
次に、オペレーターは、三方活栓103の第2チューブ105に接続された側が閉じた状態となるように、三方活栓103の切り換えレバー107を回転させる。その後、オペレーターは、三方活栓103内を生理食塩水で満たしてエア抜きを行う。そして、オペレーターは、第1シリンジ91を三方活栓103に接続し、造影剤ラインのOFF状態となるように切り換えレバー107を回転させる。
【0090】
次に、オペレーターは、注入装置100の電源をオンにして、タッチパネル13に表示されたシリンジセットアップ画面のプレッサーリターンボタンを押す。プレッサーリターンボタンが押されたことを受信すると、制御部5(図8)は、揺動時の元の位置である原点位置まで、撹拌ユニット3に第1保持ユニット11を揺動させる。例えば、第1保持ユニット11が傾いていた場合には、第1シリンジ91のシリンジ設置部分119(図5)が上を向いて地面に対して水平な姿勢となるような原点位置まで第1保持ユニット11が揺動する。また、後退が完了していない場合、制御部5は第1駆動部2(図8)にプレッサー21を後退させる。
【0091】
その後、オペレーターは、患者にカテーテルを穿刺し、カテーテルと第2チューブ105を接続する。そして、オペレーターは、逆血があることを確認した後に、第1シリンジ91及び第2シリンジ92を注入装置100に搭載する。このとき、切り換えレバー107が嵌め込まれる嵌合部41(図5)は、予め切り換えレバー107を嵌め込み可能な初期位置にある。すなわち、嵌合部41は、造影剤ラインのOFF状態にある切り換えレバー107を嵌め込むことができるように方向づけられている。
【0092】
そして、オペレーターは、タッチパネル13に表示されたシリンジセットアップボタンを押す。シリンジセットアップボタンが押されたことを受信すると、制御部5は、レバー駆動部4(図8)に嵌合部41を回転させて切り換えレバー107を回転させる。これにより、三方活栓103の第1シリンジ91に接続された側が開いた状態となる(造影剤ラインのON状態)。その後、制御部5は、第1シリンジ91のピストン914の後端913(図2)に近接又は当接するまで、第1駆動部2にプレッサー21を前進させる。なお、プレッサー21の前進前に、切り換えレバー107を造影剤ラインのON状態にすることにより、ピストン914が前進してしまっても造影剤に過剰な圧力が加わることを回避できる。そのため、造影剤内のマイクロバブルが破裂することが防止される。
【0093】
また、造影剤に分離が生じている場合、オペレーターは、注入ヘッド1の撹拌ボタン82を押す。すると、撹拌開始信号を受信した制御部5は、撹拌ユニット3(図8)に薬液の撹拌動作を行わせる。
【0094】
注入を開始する場合、オペレーターは、フットスイッチ16を押し下げる。そして、フットスイッチ16から注入開始信号を受信すると、制御部5は、第1駆動部2にプレッサー21を前進させて、注入プロトコルに従って造影剤を注入する。前進が完了すると、造影剤ラインのOFF状態となるように、制御部5はレバー駆動部4に切り換えレバー107を回転させる。その後、制御部5は、第2駆動部6(図8)にプレッサー21を前進させて、注入プロトコルに従って生理食塩水を注入する。このとき、タッチパネル13には、生理食塩水の注入と同時に、造影剤が移動する様子を示すアニメーションが表示される。また、タッチパネル13は造影剤の注入量を表示できる。例えば、タッチパネル13は、体重50kgの患者については0.75mlを表示し、体重65kgの患者については0.975mlを表示する。
【0095】
生理食塩水の注入が開始すると、制御部5は、タッチパネル13に生理食塩水の注入を開始してからの経過時間(カウンター)を表示させる。なお、制御部5は、生理食塩水の注入が完了した際に、タッチパネル13に生理食塩水の注入が完了してからの経過時間、又は注入を開始してからの経過時間を表示させることもできる。さらに制御部5は、生理食塩水に限らず、造影剤の注入開始又は注入完了からの経過時間を表示させることもできる。なお、制御部5は、造影剤の注入開始又は注入完了の際に、これらの経過時間を表示させることもできる。また、制御部5は、造影剤ラインのON状態となるように、レバー駆動部4に切り換えレバー107を回転させる。これにより、連続的に造影剤を複数回(例えば、2回又は4回)注入する場合であっても、待ち時間がなくすぐに次の注入を開始することができる。
【0096】
撮像(検査)が完了すると、オペレーターは、患者からカテーテルを抜く。そして、オペレーターは、タッチパネル13に表示されたプレッサーリターンボタンを押す。プレッサーリターンボタンが押されたことを受信すると、次回の注入に備えるために、制御部5は、第1駆動部2にプレッサー21を後退させる。同時に、制御部5は、造影剤ラインのOFF状態となるように、レバー駆動部4に切り換えレバー107を回転させる。造影剤ラインのOFF状態となるように切り替えることにより、次回の撮像の際にすぐに注入の準備をすることができる。以上の様に、薬液の注入を行うことができる。
【0097】
また、第1保持ユニット11には、ガイド部113に突出した押さえ位置へと移動する三方活栓103のストッパー(不図示)が設けられてもよい。三方活栓103がその設置部分111に正しく載置されていないと、ピストンを前進させたときに三方活栓103が浮き上がり位置ずれが生じる可能性がある。また、第1保持ユニット11が逆さまになった際に、三方活栓103の位置ずれが生じる可能性がある。そのため、水平方向に回転自在なストッパーによって三方活栓103を押えることにより、該位置ずれの発生を防止することができる。なお、第1保持ユニット11に三方活栓103の嵌め込みを検出する検出部を設け、三方活栓103が正しく嵌め込まれていない場合には、タッチパネル13に警告を表示させてもよい。
【0098】
また、制御部5は、撹拌ユニット3に撹拌動作を自動的に行わせてもよい。例えば、制御部5は、予め決められた所定のタイミング(オペレーターがシリンジセットアップボタンを押してから所定時間が経過したタイミング)で、撹拌ユニット3に撹拌動作を自動的に行わせてもよい。また、濁り検出センサー等の検出部が造影剤の分離を検出した際に、検出信号を受けた制御部5が、撹拌ユニット3に撹拌動作を自動的に行わせてもよい。さらに、制御部5は、揺動動作中にオペレーターがフットスイッチ16を押し下げた場合には、揺動動作を中止して薬液の注入を開始してもよい。もしくは、制御部5は、揺動動作中にオペレーターがフットスイッチ16を押し下げた場合には、揺動動作を継続しながら薬液の注入を開始してもよい。揺動動作を継続しながら薬液を注入する場合、制御部5は、プレッサー21が前進している間の揺動速度を遅くしてもよい。
【0099】
この出願は2014年3月17日に出願された日本国特許出願第2014−053977号からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。
【符号の説明】
【0100】
2:第1駆動部、3:撹拌ユニット、4:レバー駆動部、5:制御部、6:第2駆動部、10:配線、11:第1保持ユニット、14:第1支持部材、21:プレッサー、22:中空モーター、23:変換機構、44:開放検出部、91:第1シリンジ、92:第2シリンジ、100:注入装置、103:三方活栓、105:第2チューブ、107:切り替えレバー、111:設置部分、124:前側回転部材、126:揺動軸、150:後端検出部、200:注入装置、201:第1駆動部、202:第2駆動部、205:制御部、231:ボールねじナット、232:ねじ軸、913:後端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10