(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドライブレコーダなどの電子機器において、基板を収容する筐体に開口部を設けることが行われている。例えば、基板に設けたLEDが発光する光を、外部から視認可能とするための開口部であったり、基板に設けたスイッチを外部から操作可能とするための開口部であったり、開口部を設ける理由は様々である。
【0005】
このように筐体に開口部を設ける場合において、ユーザが帯電した状態で開口部近傍に触ると、開口部又はその周辺(すなわち、開口部近傍)から静電気が進入し、進入した静電気が基板上のLEDやスイッチ等の部品に流れ込み、部品が破損したり、誤動作したりするおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、基板を収容する筐体に開口部を設ける場合において、開口部近傍から基板へと流れる静電気によって基板上の部品が破損したり誤動作したりすることを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、電子機器であって、基板と、筐体と、避雷部と、を備える。基板には、保護対象物が実装される。保護対象物は、特定の部品である。筐体は、基板を収容し、保護対象物に対応した位置に開口部が形成される。避雷部は、基板において保護対象物と離間して設けられ、開口部側から基板側へと流れる静電気を誘引して放電させる。
【0008】
このような構成によれば、基板を収容する筐体に開口部を設ける場合において、開口部近傍から基板へと流れる静電気によって基板上の部品が破損したり誤動作したりすることを抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様では、避雷部は、基板上で保護対象物を囲むように環状に設けられていてもよい。このような構成によれば、静電気が開口部近傍から基板上の保護対象物を基準とするどの位置に流れたとしても、避雷部により静電気を逃がしやすくできる。
【0010】
本開示の一態様では、電子機器は、開口部に嵌め込まれる所定の部材である嵌入部材を更に備えていてもよい。このような構成によれば、保護対象物を、開口部に嵌め込んだ嵌入部材により保護することができる。
【0011】
本開示の一態様では、保護対象物は、発光部品であってもよい。そして、嵌入部材は、発光部品からの光を透過可能であってもよい。このような構成によれば、避雷部によって発光部品を静電気から保護することができる。また、嵌入部材が開口部に嵌め込まれた状態で、発光部品による発光を外部から視認できる。
【0012】
本開示の一態様では、嵌入部材は、開口部に嵌め込まれた状態において、開口部側から基板側へと延びる部材延在部を備えてもよい。このような構成によれば、開口部近傍から進入した静電気が部材延在部に沿って避雷部へと流れやすくできる。したがって、部材延在部がない場合と比較して、静電気によって保護対象物が誤動作や損傷することをより一層抑制することができる。
【0013】
本開示の一態様では、筐体は、開口部側から基板側へと延びる筐体延在部を備えてもよい。このような構成によれば、開口部近傍から進入した静電気が筐体延在部に沿って避雷部へと流れやすくできる。したがって、筐体延在部がない場合と比較して、静電気によって保護対象物が誤動作や損傷することをより一層抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
[1.構成]
図1〜
図2に示すドライブレコーダ1は、走行中又は駐車中の車両の周囲の少なくとも一部を撮像してその映像を記録する電子機器である。ドライブレコーダ1は、基板2と、筐体3と、嵌入部材4と、を備える。
<基板>
図2〜
図4に示す基板2には、複数の部品が実装される。基板2は、表裏面の最外層にレジスト層21を有し、レジスト層21の一部がエッチングなどにより除去されて表面側に導電部22が露出している。なお、本明細書では、
図3において上側の面を、
図4においては手前側の面を、基板2の「表面」と称す。
【0016】
基板2の表面のレジスト層21上には、部品21a及び部品21bを含む複数の実装品が実装される。部品21a及び部品21bは、基板2の同一の主面(表面)上に実装される。
【0017】
部品21aは、LED(Light Emitting Diode)21aである。LED21aは、ドライブレコーダ1が電源オン状態であることを示すものであり、ドライブレコーダ1が電源オン状態である場合に点灯する。
【0018】
前述した導電部22は、
図3〜
図4に示すように、LED21aを囲むように環状に連続して露出している。
図3では、破線Bで囲まれた部分において導電部22が露出しており、
図4では、露出している導電部22はハッチングにより示されている。なお、
図4中、符号23で示すハッチングが付されている部分は、レジスト層21及び導電部22のいずれでもない部分である。
【0019】
導電部22は、導電性を有する銅箔層などで構成されている。導電部22は、不図示のドライブレコーダ1の接地側(グランド)と電気的に接続している。後述するとおり、導電部22のうちレジスト層21から露出している部分は、静電気を誘引し放電させる避雷部22aとして機能する。
【0020】
一方、部品21bは、例えば抵抗、コンデンサ、トランジスタ、集積回路(IC)等である。部品21bは、基板2の表面において、部品21aと最も近い位置に実装される他の部品である。部品21aと部品21bとの間には避雷部22aが位置している。
【0021】
本実施形態では、LED21aである部品21aは、静電気から保護されるべき実装品として位置付けられる。ここでいう静電気は、ユーザが帯電した状態で筐体3の後述する開口部31近傍に触れることで開口部31又はその周辺から筐体3内に進入する静電気などを指す。以下では、部品21aを「保護対象物」とも称する。なお、実際には、部品21a,21b以外の部品も基板2に実装されるが、
図3〜
図4では部品21a,21b以外の実装品は省略されている。
<筐体>
筐体3は、基板2を収容する略直方体形状の箱状であり、ドライブレコーダ1の外観を形成する。筐体3は、絶縁性に優れた材料で構成され、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の樹脂で構成される。
【0022】
図3に示すように、筐体3において、保護対象物であるLED21aに対応した位置には開口部31が形成されている。ここで、筐体3におけるLED21aに対応した位置とは、換言すれば、筐体3においてLED21aに対向する位置である。具体的には、筐体3におけるLED21aに対応した位置とは、LED21aの直上の位置である。換言すれば、LED21aは、基板2において開口部31の真下に当たる位置に位置している。
【0023】
ただし、筐体3におけるLED21aに対応した位置は、LED21aの直上の位置に限られず、LED21aの直上からずれた位置であってもよい。このように、筐体3におけるLED21aに対応した位置とは、開口部31を当該位置に形成することで、開口部31を介してドライブレコーダ1の外部からLED21aを視認できるような位置であってもよい。
【0024】
図3に示すように、筐体3は、開口部31の縁部から筐体3内部の基板2へと延びる筒状の筐体延在部32を有する。
筐体延在部32の先端部は、基板2の近傍まで延びている。具体的には、筐体延在部32の先端部は、基板2上の避雷部22aの近傍に位置している。なお、保護対象物であるLED21aは、
図3に示すように、筐体延在部32の筒状の内側(本実施形態では筒状の丁度真ん中)に位置している。
<嵌入部材>
嵌入部材4は、筐体3の開口部31に嵌め込まれる部材である。嵌入部材4は、筐体3同様、絶縁性に優れた材料で構成され、例えば、ABS等の樹脂で構成される。
【0025】
嵌入部材4は、透明色の部材であり、LED21aからの光を透過可能である。つまり、嵌入部材4が開口部31に嵌め込まれた状態において、LED21aからの光を、嵌入部材4を通して外部から視認可能である。
【0026】
嵌入部材4は、当該嵌入部材4が開口部31に嵌め込まれた状態において、開口部31側から基板2側へと延びる筒状の部材延在部41を備える。
本実施形態では、筐体3の筒状の筐体延在部32の内部に、嵌入部材4の筒状の部材延在部41がぴったりと嵌入される。部材延在部41の先端部は、基板2上の避雷部22aの近傍に位置している。本実施形態では、部材延在部41の先端部は、開口部31に嵌入部材4が嵌入された状態において、筐体3の筐体延在部32と同じくらい基板2の近傍まで延びている。また、避雷部22aは、
図3に示すように、筐体延在部32及び部材延在部41の先端部の近傍であって、筐体延在部32の先端部と部材延在部41の先端部との間の部分(嵌合せ部分)近傍に設けられている。
【0027】
次に、ドライブレコーダ1の避雷構造について説明する。ここでいう避雷構造とは、ドライブレコーダ1の筐体3の開口部31近傍から進入した静電気を、保護対象物であるLED21aを避けるように誘電し、放電するための構造である。
【0028】
ドライブレコーダ1においては、ユーザが帯電した状態で開口部31近傍に触ると例えば開口部31における筐体3と嵌入部材4との間の隙間(換言すれば、筐体3と嵌入部材4との嵌合せ部分)などから静電気が進入し得る。そして、静電気が進入すると、進入した静電気が保護対象物であるLED21aに流れ込み、LED21aの故障や誤動作に繋がる場合がある。
【0029】
この点、本実施形態のドライブレコーダ1では、
図3に示すように、筐体延在部32の先端部からLED21aよりも近い位置に避雷部22aが位置する。また、部材延在部41の先端部からLED21aよりも近い位置に避雷部22aが位置する。
【0030】
よって、
図5に示すように、ユーザが帯電した状態で開口部31近傍に触り、筐体3と嵌入部材4との嵌合せ部分などから静電気Iが進入したとする。この場合、進入した静電気Iは、筐体延在部32又は部材延在部41に沿って、筐体延在部32又は部材延在部41の先端部側へと流れる。そして、当該先端部を基準としてLED21aよりも近い位置に位置する避雷部22aに静電気Iが放電される。なお、
図5中、符号Fは、ユーザの指を示す。
【0031】
つまり、避雷部22aが、開口部31近傍から基板2へと流れ落ちる静電気IをLED21aを避けるように誘引し、不図示のドライブレコーダ1の接地側(グランド)に誘導する。これにより、保護対象物であるLED21aが、開口部31近傍から進入した静電気Iから保護される。
【0032】
[2.効果]
以上詳述し実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、ドライブレコーダ1は、基板2において保護対象物である21aと離間して設けられ、開口部31側から基板2側へと流れる静電気を誘引して放電させる避雷部22aを備える。したがって、基板2を収容する筐体3に開口部31を設ける場合において、開口部31近傍から基板2へと流れる静電気によって基板2上のLED21aが破損したり誤動作したりすることを抑制することができる。また、このように静電気によるLED21aの破損や誤動作を抑制できるため、LED21aを利用するための開口部を筐体3に自由に設けることができる。また、避雷部22aによって、LED21a以外の他の部品21bも同様に静電気から保護することができる。
【0033】
(2)また、静電気対策として、筐体3の外面を導電性の材料で覆い、アースすることが考えられる。しかし、上記の導電性の材料は一般的な絶縁性に優れた樹脂(ABS等)よりも高価である。この点、本実施形態では、筐体3の外面を導電性の材料で覆わずに避雷部22aを含む避雷構造により静電気を逃がす。よって、筐体3の外面を導電性の材料で覆い静電気対策を行う場合と比較して、静電気耐性が比較的高い筐体3を安価に提供することができる。
【0034】
(3)本実施形態では、避雷部22aは、基板2上で保護対象物であるLED21aを囲むように環状に設けられている。したがって、静電気が開口部31近傍から基板2上の保護対象物を基準とするどの位置(どの方位)に流れ落ちたとしても、避雷部22aにより静電気を逃がしやすくでき、LED21aをより一層保護しやすくできる。
【0035】
(4)本実施形態では、ドライブレコーダ1は、開口部31に嵌め込まれる嵌入部材4を備える。したがって、保護対象物であるLED21aを、開口部31に嵌め込んだ嵌入部材4により保護することができる。
【0036】
(5)本実施形態では、保護対象物は、発光部品であるLED21aであり、嵌入部材4は、LED21aからの光を透過可能である。したがって、嵌入部材4が開口部31に嵌め込まれた状態で、LED21aによる発光をドライブレコーダ1の外部から視認できる。
【0037】
(6)本実施形態では、嵌入部材4は、開口部31側から基板2側へと延びる部材延在部41を備える。よって、開口部31近傍から進入した静電気が部材延在部41に沿って避雷部22aへと流れやすくできる。したがって、部材延在部41がない場合と比較して、静電気によってLED21aが誤動作や損傷することをより一層抑制することができる。
【0038】
(7)本実施形態では、筐体3は、開口部31側から基板2側へと延びる筐体延在部32を備える。よって、開口部31近傍から進入した静電気が筐体延在部32に沿って避雷部22aへと流れやすくできる。したがって、筐体延在部32がない場合と比較して、静電気によってLED21aが誤動作や損傷することをより一層抑制することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、ドライブレコーダ1が電子機器に相当し、LED21aが保護対象物及び発光部品に相当する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0040】
(1)上記実施形態では、保護対象物としてLED21aを例示したが、保護対象物はこれに限られない。保護対象物は、例えば、スイッチであってもよい。この場合において例えば、嵌入部材4を押下することで嵌入部材4が変位し、変位した嵌入部材4により、基板2上に設けられた保護対象物であるスイッチが押下されてもよい。
【0041】
このように、保護対象物は、発光部品でなくてもよい。保護対象物が発光部品でない場合、嵌入部材4は光を透過可能でなくてもよい。
(2)上記実施形態において、筐体延在部32及び部材延在部41のうち少なくとも一方が形成されていなくてもよい。例えば、
図6に示すように、部材延在部41のみが形成されていてもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、避雷部22aは、筐体延在部32及び部材延在部41の間の部分(嵌合せ部分)近傍に設けられているが、避雷部22aの位置はこれに限られない。
例えば、避雷部22aは、保護対象物であるLED21aを基準にして、筐体延在部32及び部材延在部41のうち少なくとも一方よりも遠い位置に設けられていてもよい。また逆に、避雷部22aは、保護対象物であるLED21aを基準にして、筐体延在部32及び部材延在部41のうち少なくとも一方よりも近い位置に設けられていてもよい。これらの両場合において、筐体延在部32の先端部から避雷部22aまでの距離は、筐体延在部32の先端部からLED21aまでの距離よりも小さくてもよい。また、部材延在部41の先端部から避雷部22aまでの距離は、部材延在部41の先端部からLED21aまでの距離よりも小さくてもよい。
【0043】
例えば、
図6には、避雷部22aがLED21aを基準にして部材延在部41よりも遠い位置に設けられる構成が例示されている。
(4)上記実施形態では、レジスト層21から導電部22の一部を露出させ、導電部22における露出した部分を避雷部22aとして機能させるが、避雷部22aの形成の仕方はこれに限られない。例えば、レジスト層21上に保護対象物を囲むように銅箔層を形成し、形成した銅箔層をドライブレコーダ1の接地側と電気的に接続する。このように形成した銅箔層を避雷部22aとして機能させてもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では、避雷部22aは保護対象物を囲むように環状に連続して設けられるが、避雷部22aはこれに限られない。例えば、避雷部は、保護対象物を囲むように破線状に(すなわち連続せずに)設けられてもよい。また、避雷部は、保護対象物を囲むように環状に設けられている必要はなく、保護対象物を囲む周方向の少なくとも一部に沿って設けられていてもよい。
【0045】
(6)上記実施形態において、筐体3及び嵌入部材4は、ABS以外の樹脂で構成されていてもよく、樹脂以外の素材(例えば硝子等)で構成されていてもよい。
(7)上記実施形態において、筐体3及び嵌入部材4は絶縁体であるが、筐体及び嵌入部材はこれに限られない。筐体及び部品は例えば導体であってもよい。
【0046】
(8)上記実施形態において、開口部31に嵌入部材4が嵌入されなくてもよい。
(9)上記実施形態において、避雷部22aがハンダでコーティングされていてもよい。この場合、開口部31近傍から進入した静電気は、筐体延在部32及び部材延在部41のうち少なくとも一方に沿って、筐体延在部32及び/又は部材延在部41→ハンダ→避雷部22aの順で放電されてもよい。
【0047】
(10)上記実施形態では、電子機器としてドライブレコーダ1を例示したが、電子機器はドライブレコーダ1に限られない。電子機器は、例えば、レーダ探知機等であってもよい。
【0048】
(11)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【解決手段】電子機器は、基板と、筐体と、避雷部と、を備える。基板には、保護対象物が実装される。保護対象物は、特定の部品である。筐体は、基板を収容し、保護対象物に対応した位置に開口部が形成される。避雷部は、基板において保護対象物と離間して設けられ、開口部側から基板側へと流れる静電気を誘引して放電させる。