(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817698
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】シーリングフランジを備える転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20210107BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20210107BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20210107BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C19/06
F16J15/3204
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-242988(P2015-242988)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2016-114247(P2016-114247A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年11月16日
(31)【優先権主張番号】1462424
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508282993
【氏名又は名称】アクティエボラゲット・エスコーエッフ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリー・オープチジャンドル
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ヴァルヌー
【審査官】
渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−266451(JP,A)
【文献】
特開平11−351263(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第3212976(DE,A1)
【文献】
特開平7−279977(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第825364(GB,A)
【文献】
特開2002−39196(JP,A)
【文献】
特開平11−230179(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/093591(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0103700(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00− 19/56
F16C 33/72− 33/82
F16C 33/30− 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側リング(14)と、内側リング(16)と、径方向において前記外側リングと前記内側リングとの間に配置された少なくとも一列の転動要素(18)と、前記内側リング(16)の前面(16c)と軸方向で当接する環状取付部分(26a)を具備する少なくとも1つのシーリングフランジ(26)であって、一体部品である前記シーリングフランジ(26)と、前記内側リング(16)に前記シーリングフランジを固定するための固定手段(34)と、を備える転がり軸受において、
前記固定手段(34)が、前記シーリングフランジ(26)が接触せずに残された、前記内側リングの前記前面(16c)の領域と、前記領域と隣接する前記シーリングフランジの一部と、を少なくとも局所的に覆い、前記固定手段が環状であり、
前記転がり軸受が、前記外側リング(14)に固定され且つ前記内側リング(16)と係合する少なくとも1つのシール(22)を備えており、
前記シール(22)が、剛性を有する環状インサート(30)と、前記環状インサートに固定された、可撓性を有する環状シーリングガスケット(32)とを備えており、
前記シーリングフランジ(26)が、前記シール(22)に対して前記転がり軸受の軸方向外側にオフセットされており、
前記シーリングフランジ(26)が、前記シール(22)の前記環状シーリングガスケット(32)の外側面と軸方向で接触するように取り付けられた環状端部分(26b)と、前記環状取付部分(26a)と前記環状端部分(26b)との間において延在している環状接続部分(26c)とを備えており、
前記環状接続部分(26c)が、前記シール(22)に向かって内側に延在しており、軸方向において可撓性を有し且つ弾性変形可能なように構成されており、
少なくとも1つの起伏(46)が、前記環状接続部分(26c)に形成されており、前記転がり軸受の外面において軸方向に延在しており、
前記環状取付部分(26a)と前記環状端部分(26b)との間の軸方向の間隔が、前記シーリングフランジの自由状態における前記環状取付部分(26a)と前記環状端部分(26b)との間の軸方向の間隔より小さくなるように、前記シーリングフランジ(26)が、前記シール(26)の前記環状端部分(26b)と前記環状シーリングガスケット(32)の前記外側面との接触によって軸方向に予め負荷をかけられており、
前記環状接続部分(26c)が、前記環状接続部分(26c)の弾性に抗して変形されることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記シーリングフランジ(26)が、環状取付部分(26a)を備え、前記環状取付部分(26a)が、前記内側リングの前記前面(16c)と軸方向で当接するように取り付けられ、前記環状取付部分(26a)には、径方向において前記内側リングの孔と外面との間に位置する自由端縁部(44)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記固定手段(34)が、前記シーリングフランジの前記環状取付部分(26a)の前記自由端縁部(44)を覆っていることを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記固定手段(34)が、前記シーリングフランジの内面の一部を覆い、前記内面が、前記シーリングフランジの前記環状取付部分(26a)を考慮すると、径方向において前記自由端縁部(44)から離間する側に位置していることを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記固定手段(34)が材料のビードを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記固定手段(34)が接着剤のビードを備えていることを特徴とする請求項5に記載の転がり軸受。
【請求項7】
前記固定手段(34)が溶接ビードを備えていることを特徴とする請求項5に記載の転がり軸受。
【請求項8】
前記シーリングフランジ(26)が前記シール(22)と軸方向で接触して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項9】
前記シーリングフランジ(26)が、前記外側リングの前記前面(16c)と軸方向で直接接触して取り付けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受、特に自動車又は工業用途で使用される転がり軸受の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受では、通常、1つ以上のシールが、軸受の内部において潤滑剤、例えばグリースを維持するために且つ汚染粒子の侵入を制限するために使用される。通常、このようなシールは、軸受のリングの一方に固定され、且つ他方のリングと係合して動的シールを形成する。
【0003】
特許文献1は、2つのシールを備える転がり軸受を開示しており、これらシールは、外側リングに固定され、且つ内側リングと摩擦接触する内部リップをそれぞれ備えている。また、軸受は、2つのシーリングフランジを備え、これらシーリングフランジは、内側リングに固定され、且つ関連するシールに対して擦れる外部リップをそれぞれ備えている。各シーリングフランジは、径方向部分を備え、この径方向部分は、内側リングの前面に対して軸方向に取り付けられ、且つ前記リングの孔内に形成された環状溝の内部で折り曲げられた固定部分によって延在させられている。
【0004】
動作時に、汚染粒子が、シーリングフランジの固定部分と内側リングの溝との間に存在する空間を通って導入され、そして、前記リングと摩擦接触するシールの内部リップに達する可能性がある。具体的に、フランジは、曲げ加工、切断及びプレスによってシート金属ブランクから形成される。さらに、フランジの固定部分は、内側リングの溝の内部に圧力嵌めされている。結果として、フランジのこの固定部分は、良好な平坦性を有する完全な直線形ではない。従って、狭い通路が、フランジの固定部分の外面と内側リングの溝との間に残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/121385号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この欠点を改善することを目的とする。
【0007】
より具体的に、本発明は、改良されたシーリングフランジを備える転がり軸受を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、製造及び組み立てが容易な転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、転がり軸受は、外側リングと、内側リングと、径方向において外側リングと内側リングとの間に配置された少なくとも一列の転動要素と、外側リング及び内側リングの一方の前面と軸方向で当接するように取り付けられた少なくとも1つのシーリングフランジと、前記リングに前記シーリングフランジを固定するための手段と、を備える。
【0010】
固定手段が、前記シーリングフランジが接触せずに残された、前記リングの前面の領域を少なくとも局所的に覆っている。固定手段が、前記領域と隣接する前記シーリングフランジの一部を覆っている。固定手段が環状である。
【0011】
固定手段は、関連するリングの前面にシーリングフランジを固定し、且つ固定領域において前記フランジと前記リングとの間のシールを保証する。固定手段の環形状は、フランジと関連するリングの前面との間で周方向における連続的なシールを得ることを可能にする。従って、シーリングフランジとこのリングの前面との間での汚染粒子の侵入が防止される。さらに、リングが製造される間に、シーリングフランジを固定するために前記リングの孔又は外面に溝を形成するための追加的な機械加工作業を提供する必要がない。
【0012】
好ましくは、前記シーリングフランジが、径方向取付部分を備え、径方向取付部分が、前記リングの前面と軸方向で当接するように取り付けられ、径方向取付部分には、径方向において前記リングの孔と外面との間に位置する自由端縁部が設けられている。
【0013】
一実施形態では、固定手段が、前記シーリングフランジの取付部分の自由端縁部を覆っている。あるいは、固定手段が、前記シーリングフランジの内面の一部を覆い、前記内面が、前記シーリングフランジの径方向取付部分を考慮すると、径方向において自由端縁部から離間する側に位置している。
【0014】
好ましい一実施形態では、固定手段は、材料のビード、例えば接着剤のビード又は溶接ビードを備えている。
【0015】
好ましい一実施形態では、軸受は、外側リングに固定され且つ前記リングと係合する少なくとも1つのシールも備え、前記シーリングフランジが、前記シールに対して軸受の軸方向外側にオフセットされている。前記シーリングフランジは、前記シールと軸方向で接触して取り付けられてもよい。
【0016】
前記シーリングフランジは、前記外側リングの前面と軸方向で直接接触して取り付けられてもよい。
【0017】
本発明は、全体的に非限定的な例のために与えられ且つ添付の図面で説明される実施形態の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の例による転がり軸受の軸方向半断面図である。
【
図3】本発明の第2の例による転がり軸受の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1では、軸12の転がり軸受10が、外側リング14と、内側リング16と、径方向において前記外側リングと内側リングとの間に配置された、本実施形態では玉の形態の複数の転動要素18と、転動要素の周方向間隔を一定に維持するためのケージ20と、を備えている。軸受10は、軸方向において両側に、外側リング14と内側リング16との間に存在する径方向空間を閉鎖するための環状シール22,24と、前記シール22,24と軸受の軸方向外側で当接する環状シーリングフランジ26,28と、を備えている。説明される例では、シール22,24は外側リング14に固定されている一方で、シーリングフランジ26,28は内側リング16に固定されている。
【0020】
外側リング14は、シリンダ状の軸方向外面14aと、シリンダ状の孔14bと、軸方向において前記孔及び外面を画成する、2つの互いに反対側の径方向前面14c,14dと、孔14bに形成され、且つ断面が転動要素18に適している凹状の内部外形であるレースウェイであって、径方向内側に向けられた、レースウェイと、を備えている。また、外側リング14は、孔14b内に形成され且つ径方向外側に延在する2つの環状溝14e,14fを備えている。溝14e,14fは、前面14c,14dにそれぞれ近接して配置されている。各溝14e,14fは、軸方向において転動要素18と前面14c,14dの一方との間に配置されている。溝14e,14fは、軸受10の中心を通過する径方向中間面に関して相互に対称である。
【0021】
内側リング16は、シリンダ状の孔16aと、シリンダ状の軸方向外面16bと、軸方向において前記孔及び外面を画成する、2つの互いに反対側の径方向前端面16c,16dと、外面16bに形成され且つ断面が転動要素18に適している凹状の内部外形であるレースウェイであって、径方向外側に向けられた、レースウェイと、を備えている。前面16c,16dは平坦である。前面16c,16dは、滑らかであり、すなわちリブ、突起、ノッチ、溝などを有していない。ケージ20は、径方向において内側リングの外面16b及び外側リングの孔14bによって画成された径方向空間内に配置されている。
【0022】
また、内側リング16は、外面16bに形成され且つ径方向内側に延在する2つの環状溝16e,16fを備えている。溝16e,16fは、前面16c,16dにそれぞれ近接して配置されている。溝16e,16fは、軸受10の径方向中間面に関して相互に対称である。溝16e,16fは、対応する溝14e,14fと径方向において向かい合っている。
【0023】
外側リング14及び内側リング16は同心である。説明される例では、リングはソリッドである。“ソリッドリング”は、形状がチューブ、バーストック、鍛造ブランク及び/又は圧延ブランクから(旋削又は研削によって)破片を取り除く機械加工によって得られるリングと理解される。
【0024】
各シール22,24は、径方向において外側リング14と内側リング16との間に配置され、且つ前記外側リングに固定され、転動要素18に対して側方に配置されている。各シール22,24は、外側リングにおいて溝14e,14fの一方の内部に固定されている。各シール22,24は、外側リング14及び内側リング16によって画成された径方向空間の内部に全体が収納されている。各シール22,24は、外側リングの関連する側面14c,14dに対して軸受10の軸方向内側にオフセットされている。
【0025】
この説明される例では、シール22,24は、互いに同一であり、且つ軸受10の径方向中間面に対して対称である。本実施形態ではシール22,24が同一であるので、それらの一方のみが説明される。
【0026】
シール22は、剛性を有する環状の防護構造又はインサート30と、インサートに固定された、可撓性を有する環状シーリングガスケット32と、を備えている。インサート30は、剛性材料、例えば金属材料又は熱可塑性材料、特にポリアミドから作られる。インサート30は、ガスケット32のための補強インサートを形成する。ガスケット32は、インサート30上に成形されるか又は加硫処理される。ガスケット32は、可撓性材料、例えばニトリルゴムのようなエラストマー、又は熱可塑性エラストマー材料から作られる。
【0027】
ガスケット32は、インサート30の外面を覆っている。ガスケット32は、インサート30の外側面を覆っている。ガスケット32は、関連するフランジ26に向かって軸受の軸方向外側に向けられた環状外側面36を備えている。ガスケットの側面36は、シール22の外側面を形成する。側面36は平坦である。側面36は径方向に延在している。前記側面36から離間しているシールの内側面38は、転動要素18の方向で軸受の軸方向内側に向かって向けられている。内側面38は、インサート30によって画成されている。
【0028】
ガスケット32は、径方向において互いに反対側の2つのシーリング部分を形成し、これらシーリング部分は、外側リング14との静的シール及び内側リング16との動的シールをそれぞれもたらす。“静的シール”は、2つの構成要素の間で相対運動がなく作り出されるシールを意味すると理解され、“動的シール”は、2つの構成要素の間の相対運動を示すシールを意味すると理解される。
【0029】
ガスケット32の外側シーリング部分は、外側リング14の溝14e内に圧力嵌めされており、これにより、前記リングをシール22に固定する。ガスケット32の内側シーリング部分は、軸受の内部に向かって軸方向に延在する、同心の第1環状内部リップ32a及び第2環状内部リップ32bを備えている。内部リップ32bは、内側リングの溝16eの径方向壁と軸方向で当接する。内部リップ32aは、内部リップ32bよりも大きい直径を有し、且つ径方向において内側リングの外面16bを取り囲み、これにより、前記外面とともにラビリンスタイプの狭い通路を形成する。
【0030】
各シーリングフランジ26,28は、関連するシール22,24に対して軸受の軸方向外側にオフセットされている。各シーリングフランジ26,28は、内側リングの前面16c,16dの一方と軸方向で当接し且つ関連するシールのシーリングガスケット32と軸受10の軸方向外側で当接するように取り付けられている。フランジ26,28は、軸受10の中心を通過する横径方向面について相互に対称である。説明される例ではフランジ26,28が同一であるので、それらの一方のみが本明細書で説明される。
【0031】
フランジ26は一体部品である。フランジ26は、剛性材料、例えば金属材料、有利には切断及びプレスによってシート金属ブランクから作られる。あるいは、フランジ26は、いくつかの他の剛性材料、例えばポリアミドのような合成材料から作られてもよい。
【0032】
フランジ26は、内側リング16と外側リング14との間に存在する径方向空間の外部で内側リング16に固定されている。以下でより詳細に説明されるように、フランジ26は、前記フランジ及び内側リングに取り付けられる環状固定手段34によって、内側リングの前面16cに固定されている。固定手段34は、フランジ26及び内側リング16から独立している。固定手段34は、内側リング16と外側リング14との間に存在する径方向空間の外部に配置されている。フランジ26は、外側リング14に向かって径方向に延在する。フランジ26は、内側リングの前面16cと軸方向で接触して取り付けられている。
【0033】
フランジ26は、シールの外側面36と軸方向で当接する。説明される例では、フランジ26は、シーリングガスケット32の外側シーリング部分に近い側面36と軸方向で当接するように取り付けられている。フランジ26は、軸方向においてシール20の側に向けられ且つ前記シールと局所的に当接する内側面40と、軸受の軸方向外側に向けられた外側面42と、を備えている。フランジ26は、シール22と直接接触して取り付けられている。
【0034】
フランジ26は、内側リングの前面16cと軸方向で当接するように取り付けられた環状取付部分26aと、環形状を有し且つ前記シールの外側面36と軸方向で接触する、シール22と当接するための部分26bと、を備えている。取付部分26aは、径方向形状を有し、且つフランジの内側部分を形成する。取付部分26aは、フランジ26の孔を画成する自由端縁部44(
図2)を備えている。端縁部44は、取付部分26aの、より一般的にフランジ26の小径内側縁部を形成する。端縁部44は、径方向内側でフランジ26を画成する。フランジ26は、端縁部44を延在させる部分を有していない。端縁部44は、径方向において内側リングにおける孔16aと外面16bとの間に位置している。端縁部44は、径方向において内側リングの前面16cに沿って位置している。端縁部44は、軸方向において前面16cと隣接する。
【0035】
当接部分26bは、前記フランジの外側部分又は終端部分を形成する。説明される例では、当接部分26bは、軸方向外側で凹状であり且つ軸方向内側で凸状である湾曲形状を有している。フランジの当接部分26bのみが、シール22と接触して取り付けられている。
【0036】
また、フランジ26は、固定部分26aと当接部分26bとの間で延在して前記固定部分及び当接部分に接続される環状接続部分26cを備えている。接続部分26cは、取付部分26aの大径端縁部を径方向に延在させ、且つ当接部分26bによって径方向に延在させられる。接続部分26cは、軸方向において可撓性を有し且つ弾性変形可能であるように構成される。接続部分26cは、シール22に向かって内側に延在する。説明される例では、接続部分26cは、軸受10の軸方向内側に向かう湾曲形状を有している。
【0037】
波形部又は起伏46が、接続部分の軸方向における可撓性及び弾性変形可能性質をさらに高めるために接続部分26c上に形成されている。起伏46は、軸受10の軸方向外側に延在している。説明される例では、起伏46は、フランジの取付部分26aの大径端縁部から延在している。本実施形態では、フランジ26は、単一の起伏46を備えている。あるいは、フランジ26は、径方向における複数の連続した起伏、又は接続部分26cの弾性変形を高める他の形状を備えることができる。
【0038】
図2でより明確に説明されるように、固定手段34は、シーリングフランジの自由端縁部44を覆っており、且つ前記フランジが接触せずに残された、内側リングの前面16cの隣接領域を局所的に覆っている。説明される例では、フランジが接触せずに残された前記隣接領域は、フランジの端縁部44に対して、より一般的に前記フランジに対して径方向内側にオフセットされている。固定手段34は、材料の環状ビードの形態にあり、例えば接着剤のビード又は溶接ビードであってもよい。固定手段34は、固定ビードを形成する。固定手段34は、周方向において連続的である。
【0039】
固定手段34は、2つの機能、すなわちシーリングフランジ26を内側リングの前面16cに固定する機能と、前記フランジ26と前記前面との間のシールを保証する機能と、を果たす。固定手段34の環形状は、フランジの端縁部44とリングの前面16cとの間での周方向における連続的なシールを得ることを可能にする。従って、シーリングフランジ26と内側リング16との間での汚染粒子の侵入が防止される。
【0040】
さらに、シーリングフランジ26とシールの外側面36との間の軸方向の接触は、前記フランジと前記シールとの間での汚染粒子の侵入を制限することを可能にする。説明される例では、フランジ26は、当接部分26bとシール22との間の接触によって軸受の軸方向外側に向かって変形させられる。フランジの接続部分26cは、その固有の弾性とは逆に変形させられる。フランジ26は、シール22との接触によって軸方向に予め負荷をかけられている。予め負荷をかけられた状態では、フランジの内面40の側での取付部分26aと当接部分26bとの間の軸方向の間隔は、自由状態での取付部分と当接部分との間の軸方向の間隔又は前記フランジのストレスをかけられていない状態での取付部分と当接部分との間の軸方向の間隔よりも小さい。弾性によって、フランジの接続部分26cは、軸方向に負荷をかけられていないか又はストレスをかけられていない位置に戻る傾向がある。従って、フランジの当接部分26bは、恒久的な軸方向予負荷力をシール22にかける。これは、フランジ26とシール22との間の軸方向スライド接触を維持することを可能にする。
【0041】
同一の要素が同じ参照符号を有する
図3で説明される例は、環状固定手段34の配置のためにのみ第1の例と異なっている。固定手段34は、シーリングフランジが接触せずに残された、内側リングの前面16cの領域であって、シーリングフランジの取付部分26aに対して軸受の径方向外側に向かってオフセットされた、領域を局所的に覆っている。固定手段34は、前記領域と隣接し且つ前記領域と軸方向において向かい合っているフランジの内側面40の一部を覆っている。フランジの内側面40のこの一部は、前記フランジの取付部分26aを考慮すると、径方向において端縁部44から離間する側に位置している。説明される例では、固定手段34は、例えば接着剤のビードである。
【0042】
説明される例では、各フランジは、フランジと関連するシールとの間の軸方向の接触を維持するために軸方向に弾性変形可能である。しかしながら、変形例として、弾性変形可能でないフランジを設けることも可能である。変形例として、異なる構成のシールを設けることも可能である。各シールは、関連するフランジの内面に対して擦れる外部リップを備えてもよい。
【0043】
説明される例では、シーリングフランジは内側リングに固定され、関連するシールは外側リングに固定されている。あるいは、シールが内側リングに固定され且つ関連するフランジが外側リングに固定される逆の配置を提供することも可能である。この場合、固定手段は、シーリングフランジの外径を画成するシーリングフランジの取付部分の自由端縁部を覆うように配置することができる。この縁部は、フランジの大径縁部を形成する。固定手段は、シーリングフランジが接触せずに残された、外側リングの前面の領域であって、フランジの大径自由端縁部に対して径方向外側に向かってオフセットされた、領域を局所的に覆っている。あるいは、フランジが外側リングに固定される場合、固定手段は、シーリングフランジが接触せずに残された、外側リングの前面の領域であって、シーリングフランジの取付部分に対して径方向内側に向かってオフセットされた、領域を局所的に覆うことができ、且つ前記領域と隣接し且つ前記領域と軸方向で向かい合っているフランジの内側面の一部を覆うことができる。
【0044】
別の変形形態では、各シーリングフランジと関連するシールを設けないことも可能である。この場合、各フランジは、前記フランジがそれに向かって延在するリングと係合し、狭い通路シールを形成することができる。
【符号の説明】
【0045】
14 外側リング、16 内側リング、16c 前面、18 転動要素、22 シール、26 シーリングフランジ、26a 径方向取付部分、34 固定手段、44 自由端縁部