(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記第1および第2のガードを前記上位置に配置する工程を、前記上位置配置工程として実行する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記制御装置は、前記第1のガードを、前記液受け位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記上位置に配置する工程を、前記上位置配置工程として実行する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記ノズルを保持し、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に沿って前記ノズルを移動するように、当該基板の回転範囲外に設定された所定の揺動軸線周りに揺動可能に設けられたノズルアームをさらに含む、請求項3、4および11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記上位置は、当該上位置に配置されている状態の前記ガードの上端が、前記ノズルアームの下端と前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面との間の中間位置よりも上方に位置するような位置である、請求項1、2および12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
チャンバと、前記チャンバ内に収容され、基板を水平姿勢に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板を、鉛直な回転軸線まわりに回転させる回転ユニットと、吐出口を有し、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に向けて、前記吐出口から液体を吐出するためのノズルと、前記ノズルを保持し、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に沿って前記ノズルを移動するように、当該基板の回転範囲外に設定された所定の揺動軸線周りに揺動可能に設けられたノズルアームと、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む筒状の第1のガード、および前記第1のガードの周囲を取り囲む筒状の第2のガードを含む複数のガードと、前記基板保持ユニットにより保持されている基板の上面に対して上方に対向する基板対向面を有し、前記複数のガードよりも上方に配置される対向部材とを含む基板処理装置において実行される基板処理方法であって、
前記基板保持ユニットによって基板を保持する基板保持工程と、
前記複数のガードのうち少なくとも一つのガードを、所定の上位置であって前記回転ユニットによって回転させられている基板から飛散する液体を当該ガードによって受けることが可能な所定の液受け位置よりも上方に設定され、当該基板から飛散する液体を当該ガードによって受けることが可能な上位置に配置する上位置配置工程と、
前記ガードが前記上位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって基板を回転させながら基板の主面に前記ノズルから第1の薬液を供給する第1の薬液供給工程とを含み、
前記対向部材は、前記ガードが前記上位置に配置されている状態で当該ガードの上端との間に環状隙間を形成し、
前記環状隙間は、前記ノズルアームが前記回転範囲の内外を跨ることができるように、前記ノズルアームの上下幅よりも大きく設定されている、基板処理方法。
前記第1のガードを、前記基板保持ユニットに保持されている基板よりもその上端が下方に位置する下位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記液受け位置に配置する工程と、
前記第1のガードが前記下位置に配置され、かつ前記第2のガードが前記液受け位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって前記基板を回転させながら前記基板の主面に第2の薬液を供給する第2の薬液供給工程とをさらに含む、請求項15に記載の基板処理方法。
前記上位置配置工程は、前記第1のガードを、前記液受け位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記上位置に配置する工程を含む、請求項15または16に記載の基板処理方法。
前記第1の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後、ならびに/または、前記第2の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後に、前記基板を回転させながら前記基板の主面に水を供給する水供給工程をさらに含む、請求項16に記載の基板処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ガードの液受け位置の高さ位置が、基板から飛散する薬液を受け止めるという目的を達成するためには十分な高さではあるものの、低目の高さ位置である場合には、処理カップ内を排気機構によって排気しても、処理カップの内部における、薬液のミスト等を含む雰囲気が、処理カップの上部開口を通って処理カップ外に流出して、チャンバの内部に拡散するおそれがある。薬液のミスト等を含む雰囲気は、パーティクルとなって基板に付着して当該基板を汚染したり、チャンバの内壁を汚染したりする原因となるので、このような雰囲気が周囲に拡散することを抑制または防止することが望ましい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、基板の主面に供給される薬液(第1の薬液)を含む雰囲気の、周囲への拡散を抑制できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明
の一実施形態は、チャンバと、前記チャンバ内に収容され、基板を水平姿勢に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板を、鉛直な回転軸線まわりに回転させる回転ユニットと、吐出口を有し、前記
基板保持ユニットに保持されている基板の主面に向けて、前記吐出口から液体を吐出するためのノズルと、前記ノズルに第1の薬液を供給するための第1の薬液供給ユニットと、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む筒状の第1のガード、および前記第1のガードの周囲を取り囲む筒状の第2のガードを含む複数の筒状のガードを有し、前記基板保持ユニットを収容する処理カップと、前記複数のガードのうち少なくとも一つのガードを昇降させるための昇降ユニットと、前記回転ユニット、前記第1の薬液供給ユニットおよび前記昇降ユニットを制御する制御装置とを含み、前記制御装置は、前記複数のガードのうち少なくとも一つのガードを、所定の上位置であって前記回転ユニットによって回転させられている基板から飛散する第1の薬液を当該ガードによって受けることが可能な所定の液受け位置よりも上方に設定され、当該基板から飛散する液体を当該ガードによって受けることが可能な上位置に配置する上位置配置工程と、前記ガードが前記上位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって基板を回転させながら基板の主面に
前記ノズルから第1の薬液を供給する第1の薬液供給工程とを実行する、基板処理装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、複数のガードのうち少なくとも一つのガードが、液受け位置よりも上方に設定された上位置に配置されている状態で、回転状態にある基板の主面に第1の薬液が供給される。複数のガードのうち少なくとも一つのガードが上位置に配置されている状態では、処理カップの上部開口と基板との間の距離が大きく確保されている。第1の薬液供給工程では、第1の薬液の基板への供給により薬液のミストが発生するのであるが、処理カップの上部開口と基板との間の距離が大きく確保されているために、薬液のミストを含む雰囲気が、処理カップの上部開口を通って処理カップ外に流出し難い。これにより、基板の主面に供給される第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を抑制できる基板処理装置を提供できる。
【0010】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットにより保持されている基板の上面に対して上方に対向する基板対向面を有し、前記ガードよりも上方に配置される対向部材であって、当該ガードが前記上位置に配置されている状態で当該ガードの上端との間に環状隙間を形成する対向部材をさらに含
む。
この構成によれば、処理カップの内部の雰囲気がチャンバの内部に流出するためには、処理カップ内の雰囲気が上部開口を通って処理カップ外に流出するだけでなく、さらに、上位置に配置されている状態のガードの上端と基板対向面との間の環状隙間を通ってチャンバの内部へと至る必要がある。この場合、環状隙間が狭くなるようにガードの上位置を設定することにより、環状隙間を通ってチャンバの内部に流出する雰囲気の量を効果的に抑制あるいは防止できる。
【0011】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理装置が、前記ノズルを保持し、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に沿って前記ノズルを移動するように、当該基板の回転範囲外に設定された所定の揺動軸線周りに揺動可能に設けられたノズルアームをさらに含
む。そして、前記環状隙間は、前記ノズルアームが前記回転範囲の内外を跨ることができるように、前記ノズルアームの上下幅よりも大きく設定されてい
る。
【0012】
この構成によれば、環状隙間をこのような大きさに設定することで、ノズルアームを、環状隙間を通過しながら回転範囲の内外を跨らせることができる。そして、環状隙間をできるだけ小さくすることにより、環状隙間を、ノズルアームの通過を許容する範囲で最小限の大きさに設定することもできる。この場合、処理カップの内部からチャンバの内部に流出する雰囲気の量を効果的に削減できる。これにより、第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を、より一層効果的に抑制できる。
【0013】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理装置が、前記ノズルを保持し、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に沿って前記ノズルを移動するように、前記基板保持ユニットの側方に設定された所定の揺動軸線周りに揺動可能に設けられたノズルアームをさらに含
む。そして、前記上位置は、当該上位置に配置されている状態の前記ガードの上端と前記ノズルアームの下端との間の第1の間隔が、前記ノズルアームの下端と前記吐出口との間の第2の間隔よりも狭くなるような位置であ
る。
【0014】
この構成によれば、第1の間隔と第2の間隔との大小関係をこのように設定することで、処理カップからチャンバの内部に流出する雰囲気の量を効果的に削減できる。これにより、第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を、より一層効果的に抑制できる。
この発明
の一実施形態では、前記上位置は、当該上位置に配置されている状態の前記ガードの上端が、前記ノズルアームの下端と前記基板保持
ユニットに保持されている基板の主面との間の中間位置よりも上方に位置するような位置であ
る。
【0015】
この構成によれば、上位置を前述のような位置に設定することで、処理カップからチャンバの内部に流出する雰囲気の量を効果的に削減できる。これにより、第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を、より一層効果的に抑制できる。
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理装置が、前記第1の薬液とは種類の異なる第2の薬液を前記基板の主面に供給するための第2の薬液供給ユニットをさらに含
む。そして、前記制御装置は前記第2の薬液供給ユニットをさらに制御するものであ
る。そして、前記制御装置は、前記第1のガードを、前記基板保持
ユニットに保持されている基板よりもその上端が下方に位置する下位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記液受け位置に配置する工程と、前記第1のガードが前記下位置に配置され、かつ前記第2のガードが前記液受け位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって前記基板を回転させながら前記基板の主面に第2の薬液を供給する第2の薬液供給工程とをさらに実行す
る。
【0016】
この構成によれば、第1のガードが下位置に配置され、かつ第2のガードが液受け位置に配置されている状態で、第2の薬液供給工程が実行される。そのため、第2の薬液供給工程において、基板から飛散する第2の薬液を、液受け位置にある第2のガードで良好に受け止めることができる。
この発明
の一実施形態では、前記制御装置は、前記第1および第2のガードを前記上位置に配置する工程を、前記上位置配置工程として実行す
る。
【0017】
この構成によれば、第1および第2のガードが上位置に配置されている状態で、第1の薬液供給工程が実行される。そのため、第1の薬液供給工程において、第1のガードをできるだけ上方に配置しながら、当該第1のガードにより、基板から飛散する第1の薬液を良好に受け止めることができる。これにより、第1の薬液供給工程において、第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を、より効果的に抑制できる。
【0018】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理装置が、前記
基板の主面に水を供給するための水供給ユニットをさらに含
む。そして、前記制御装置は前記水供給ユニットをさらに制御するものであ
る。そして、前記制御装置は、前記第1および第2のガードを前記液受け位置に配置する工程と、前記第1および第2のガードが前記液受け位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって前記基板を回転させながら前記基板の主面に水を供給する水供給工程とをさらに実行す
る。
【0019】
この構成によれば、第1および第2のガードが液受け位置に配置されている状態で、水供給工程が実行される。そのため、水供給工程において、基板から飛散する水を、液受け位置にある第1のガードで良好に受け止めることができる。
水供給工程では、基板の主面の周囲に薬液ミストがほとんど存在しないので、第1のガードが液受け位置に位置していても、処理カップからチャンバの内部への、薬液ミストの流出はほとんどない。
【0020】
この発明
の一実施形態では、前記制御装置は、前記第1のガードを、前記液受け位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記上位置に配置する工程を、前記上位置配置工程として実行す
る。
この構成によれば、第1のガードが液受け位置に配置され、かつ第2のガードが上位置に配置されている状態で、第1の薬液供給工程が実行される。上位置にある第2のガードをできるだけ上方に配置することにより、第1の薬液のミストが処理カップ外に流出することを抑制できる。したがって、第1の薬液供給工程において、基板から飛散する第1の薬液を、液受け位置にある第1のガードで受け止めながら、第1の薬液のミストを含む雰囲気の処理カップ外への流出を抑制できる。これにより、第1の薬液供給工程において、第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を、より効果的に抑制できる。
【0021】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理装置が、前記
基板の主面に水を供給するための水供給ユニットをさらに含
む。そして、前記制御装置は前記水供給ユニットをさらに制御するものであ
る。そして、前記制御装置は、前記第1のガードを、前記基板保持
ユニットに保持されている基板よりもその上端が下方に位置する下位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記液受け位置に配置する工程と、前記第1のガードが前記下位置に配置され、かつ前記第2のガードが前記液受け位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって前記基板を回転させながら前記基板の主面に水を供給する水供給工程とをさらに実行す
る。
【0022】
この構成によれば、第1のガードが下位置に配置され、かつ第2のガードが液受け位置に配置されている状態で、水供給工程が実行される。そのため、水供給工程において、基板から飛散する水を、液受け位置にある第2のガードで良好に受け止めることができる。
また、第1の薬液供給工程において、第1のガードを液受け位置に配置しかつ第2のガードを上位置に配置するので、第1の薬液供給工程の後には、第1のガードと第2のガードとの間に区画される内部空間の壁に第1薬液のミストが付着しているおそれがある。しかしながら、水供給工程において、第1のガードと第2のガードとの間に区画される内部空間に供給することができる。そのため、第1のガードと第2のガードとの間に区画される内部空間の壁に第1薬液のミストが付着している場合であっても、水供給工程の実行により、当該第1薬液のミストを水で洗い流すことができる。
【0023】
この発明
の一実施形態では、前記制御装置は、前記水供給工程を、前記第1の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後、ならびに/または、前記第2の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後において実行す
る。
この構成によれば、互いに異なる種類の薬液を用いる第1および第2の薬液供給工程が、共通のチャンバ内において実行される。また、水供給工程が、第1の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後、ならびに/または、第2の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後において実行される。
【0024】
第1の薬液供給工程の終了後および/または第2の薬液供給工程の開始前に、第1のガードと第2のガードとの間に区画される内部空間の壁に第1薬液のミストが付着していることがある。この場合、第1の薬液供給工程の終了後および/または第2の薬液供給工程の開始前に水供給工程を実施することにより、内部空間に水を供給することができ、これにより内部空間の壁に付着している第1の薬液のミストを洗い流すことができる。そのため、第2の薬液供給工程の開始時に、内部空間の壁に第1の薬液のミストは残留していない。したがって、当該第2の薬液供給工程において第2の薬液が内部空間に進入しても、当該第2の薬液は第1の薬液と混触しない。これにより、内部空間の内部における第1の薬液と第2の薬液との混触を防止できる。
【0025】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理装置は、前記チャンバ内において、前記基板保持ユニットの側方領域を、上側の上空間と下側の下空間とに上下に仕切る仕切り
板をさらに含
む。そして、前記下空間には、排気口が開口しており、前記第2のガードと前記仕切り板との間には隙間が形成されて
いる。そして、前記第2のガードは、前記隙間を閉塞するための閉塞部を有し
ている。そして、前記第2のガードが前記上位置に配置されている状態で、前記閉塞部が前記隙間を閉塞し、かつ前記第2のガードが、前記上位置よりも下方に設定された所定の下方位置に配置されている状態で前記隙間が形成され
る。
【0026】
この構成によれば、隙間が開口していると、チャンバの内部を流れる気流が、処理カップの内部および下空間の双方に流れる。一方、隙間が閉塞していると、チャンバの内部を流れる気流は下空間には流れず、処理カップの内部に集まる。
第2のガードが上位置にある状態で第1の薬液供給工程が実行される場合には、第1の薬液供給工程において、チャンバの内部から処理カップの内部へと向かう気流を形成できる。これにより、処理カップからチャンバの内部への薬液ミストを含む雰囲気の流出を、より効果的に抑制できる。
【0027】
また、前記第1の薬液は、硫酸と過酸化水素水との混合液を含んでいてもよい。
この発明
の一実施形態は、チャンバと、前記チャンバ内に収容され、基板を水平姿勢に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板を、鉛直な回転軸線まわりに回転させる回転ユニットと、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む筒状の第1のガード、および前記第1のガードの周囲を取り囲む筒状の第2のガードを含む複数のガードとを含む基板処理装置において実行される基板処理方法であって、前記基板保持ユニットによって基板を保持する基板保持工程と、前記複数のガードのうち少なくとも一つのガードを、所定の上位置であって前記回転ユニットによって回転させられている基板から飛散する液体を当該ガードによって受けることが可能な所定の液受け位置よりも上方に設定され、当該基板から飛散する液体を当該ガードによって受けることが可能な上位置に配置する上位置配置工程と、前記ガードが前記上位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって基板を回転させながら基板の主面に
前記ノズルから第1の薬液を供給する第1の薬液供給工程とを含む、基板処理方法
を提供する。
【0028】
この方法によれば、複数のガードのうち少なくとも一つのガードが、液受け位置よりも上方に設定された上位置に配置されている状態で、基板が回転させられると共に基板の主面に第1の薬液が供給される。複数のガードのうち少なくとも一つのガードが上位置に配置されている状態では、処理カップの上部開口と基板との間の距離が大きく確保されている。第1の薬液供給工程では、第1の薬液の基板への供給により薬液のミストが発生するのであるが、処理カップの上部開口と基板との間の距離が大きく確保されているために、薬液のミストを含む雰囲気が、処理カップの上部開口を通って処理カップ外に流出し難い。これにより、基板の主面に供給される第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を抑制できる基板処理方法を提供できる。
【0029】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理方法が、前記第1のガードを、前記基板保持
ユニットに保持されている基板よりもその上端が下方に位置する下位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記液受け位置に配置する工程と、前記第1のガードが前記下位置に配置され、かつ前記第2のガードが前記液受け位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって前記基板を回転させながら前記基板の主面に第2の薬液を供給する第2の薬液供給工程とをさらに含
む。
【0030】
この方法によれば、
第1のガードが下位置に配置され、かつ第2のガードが液受け位置に配置されている状態で、第2の薬液供給工程が実行される。そのため、第2の薬液供給工程において、基板から飛散する第2の薬液を、液受け位置にある第2のガードで良好に受け止めることができる。
この発明の
一実施形態では、前記上位置配置工程は、前記第1および第2のガードを前記上位置に配置する工程を含
む。
この方法によれば、
第1および第2のガードが上位置に配置されている状態で、第1の薬液供給工程が実行される。そのため、第1の薬液供給工程において、第1のガードをできるだけ上方に配置しながら、当該第1のガードにより、基板から飛散する第1の薬液を良好に受け止めることができる。これにより、第1の薬液供給工程において、第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を、より効果的に抑制できる。
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理方法が、前記第1および第2のガードを前記液受け位置に配置する工程と、前記第1および第2のガードが前記液受け位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって前記基板を回転させながら前記基板の主面に水を供給する水供給工程とをさらに含
む。
【0031】
この方法によれば、
第1および第2のガードが液受け位置に配置されている状態で、水供給工程が実行される。そのため、水供給工程において、基板から飛散する水を、液受け位置にある第1のガードで良好に受け止めることができる。
水供給工程では、基板の主面の周囲に薬液ミストがほとんど存在しないので、第1のガードが液受け位置に位置していても、処理カップからチャンバの内部への、薬液ミストの流出はほとんどない。
この発明
の一実施形態では、前記上位置配置工程は、前記第1のガードを前記液受け位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記上位置に配置する工程を含
む。
この方法によれば、
第1のガードが液受け位置に配置され、かつ第2のガードが上位置に配置されている状態で、第1の薬液供給工程が実行される。上位置にある第2のガードをできるだけ上方に配置することにより、第1の薬液のミストが処理カップ外に流出することを抑制できる。したがって、第1の薬液供給工程において、基板から飛散する第1の薬液を、液受け位置にある第1のガードで受け止めながら、第1の薬液のミストを含む雰囲気の処理カップ外への流出を抑制できる。これにより、第1の薬液供給工程において、第1の薬液を含む雰囲気の、周囲への拡散を、より効果的に抑制できる。
【0032】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理方法が、前記第1および第2のガードを前記液受け位置に配置する工程と、前記第1のガードを、前記基板保持
ユニットに保持されている基板よりもその上端が下方に位置する下位置に配置し、かつ前記第2のガードを前記液受け位置に配置する工程と、前記第1のガードが前記下位置に配置され、かつ前記第2のガードが前記液受け位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって前記基板を回転させながら前記基板の主面に水を供給する水供給工程とをさらに含
む。
【0033】
この方法によれば、
第1のガードが下位置に配置され、かつ第2のガードが液受け位置に配置されている状態で、水供給工程が実行される。そのため、水供給工程において、基板から飛散する水を、液受け位置にある第2のガードで良好に受け止めることができる。
また、第1の薬液供給工程において、第1のガードを液受け位置に配置しかつ第2のガードを上位置に配置するので、第1の薬液供給工程の後には、第1のガードと第2のガードとの間に区画される内部空間の壁に第1薬液のミストが付着しているおそれがある。しかしながら、水供給工程において、第1のガードと第2のガードとの間に区画される内部空間に供給することができる。そのため、第1のガードと第2のガードとの間に区画される内部空間の壁に第1薬液のミストが付着している場合であっても、水供給工程の実行により、当該第1薬液のミストを水で洗い流すことができる。
この発明
の一実施形態では、前記水供給工程は、前記第1の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後、ならびに/または、前記第2の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後において実行す
る。
【0034】
この方法によれば、互いに異なる種類の薬液を用いる第1および第2の薬液供給工程が、共通のチャンバ内において実行される。また、水供給工程が、第1の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後、ならびに/または、第2の薬液供給工程の実行前および/もしくは実行後において実行される。
第1の薬液供給工程の終了後および/または第2の薬液供給工程の開始前に、第1のガードと第2のガードとの間に区画される内部空間の壁に第1薬液のミストが付着していることがある。この場合、第1の薬液供給工程の終了後および/または第2の薬液供給工程の開始前に水供給工程を実施することにより、内部空間に水を供給することができ、これにより内部空間の壁に付着している第1の薬液のミストを洗い流すことができる。そのため、第2の薬液供給工程の開始時に、内部空間の壁に第1の薬液のミストは残留していない。したがって、当該第2の薬液供給工程において第2の薬液が内部空間に進入しても、当該第2の薬液は第1の薬液と混触しない。これにより、内部空間の内部における第1の薬液と第2の薬液との混触を防止できる。
また、この発明の一実施形態は、チャンバと、前記チャンバ内に収容され、基板を水平姿勢に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板を、鉛直な回転軸線まわりに回転させる回転ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に第1の薬液を供給するための第1の薬液供給ユニットと、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む筒状の第1のガード、および前記第1のガードの周囲を取り囲む筒状の第2のガードを含む複数の筒状のガードを有し、前記基板保持ユニットを収容する処理カップと、前記複数のガードのうち少なくとも一つのガードを昇降させるための昇降ユニットと、前記回転ユニット、前記第1の薬液供給ユニットおよび前記昇降ユニットを制御する制御装置とを含み、前記制御装置は、前記第1のガードを、前記回転ユニットによって回転させられている基板から飛散する第1の薬液を当該第1のガードによって受けることが可能な所定の液受け位置に配置する工程と、前記第2のガードを、所定の上位置であって前記液受け位置よりも上方に設定され、当該基板の周囲に発生するミストを含む雰囲気を当該第2のガードによって受けることが可能な上位置に配置する上位置配置工程と、前記第1のガードが前記液受け位置に配置され、かつ前記第2のガードが前記上位置に配置されている状態で、前記回転ユニットによって基板を回転させながら基板の主面に前記第1の薬液供給ユニットによって
第1の薬液を供給する第1の薬液供給工程とを実行する、基板処理装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと基板搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。基板搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0037】
図2Aは、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
処理ユニット2は、箱形のチャンバ4と、チャンバ4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面(主面)に対向する基板対向面6を有する対向部材7と、スピンチャック5に保持されている基板Wに、第1の薬液としての硫酸過酸化水素水混合液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:SPM)を供給するためのSPM供給ユニット(第1の薬液供給ユニット)8と、スピンチャック5に保持されている基板Wの表面(上面)に、第2の薬液としての有機溶剤(低表面張力を有する有機溶剤)の一例のイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)液を供給するための有機溶剤供給ユニット(第2の薬液供給ユニット)10と、スピンチャック5に保持されている基板Wの表面(上面)に、リンス液としての水を供給するための水供給ユニット11と、スピンチャック5を取り囲む筒状の処理カップ12とを含む。
【0038】
チャンバ4は、スピンチャック5やノズルを収容する箱状の隔壁13と、隔壁13の上部から隔壁13内に清浄空気(フィルタによってろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)14と、チャンバ4の内部において、チャンバ4内における処理カップ12の側方領域15を、上部領域15aと下部領域15bとに上下に仕切る仕切り板16とを含む。
【0039】
FFU14は、隔壁13の上方に配置されており、隔壁13の天井に取り付けられている。制御装置3は、FFU14が隔壁13の天井からチャンバ4内に下向きに清浄空気を送るようにFFU14を制御する。
隔壁13の下部または底部には、排気口9が開口している。排気口9には、排気ダクト9aが接続されている。排気装置は、チャンバ4の内部の下部空間4a(チャンバ4の内部空間のうち、上下方向に関し仕切り板16よりも下方の空間)の雰囲気を吸引して、当該下部空間4aを排気する。
【0040】
FFU14がチャンバ4の内部に清浄空気を供給しながら、排気装置がチャンバ4の下部空間4aを排気することにより、チャンバ4内にダウンフロー(下降流)が形成される。基板Wの処理は、チャンバ4内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
仕切り板16は、処理カップ12の外壁とチャンバ4の隔壁13(側方の隔壁)との間に配置されている。仕切り板16の内端部は、処理カップ12の外壁の外周面に沿って配置されている。仕切り板16の外端部は、チャンバ4の隔壁13(側方の隔壁)の内面に沿って配置されている。後述するSPMノズル28およびノズルアーム29は、仕切り板16よりも上方に配置されている。仕切り板16は、一枚の板であってもよいし、同じ高さに配置された複数枚の板であってもよい。仕切り板16の上面は、水平であってもよいし、回転軸線A1に向かって斜め上に延びていてもよい。
【0041】
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、スピンモータ(回転ユニット)17と、このスピンモータ17の駆動軸と一体化された下スピン軸18と、下スピン軸18の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース19とを含む。スピンベース19は、平坦面からなる上面19aを備えている。
【0042】
スピンベース19の上面19aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材20が配置されている。複数個の挟持部材20は、スピンベース19の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。
また、スピンチャック5としては、挟持式のものに限らず、たとえば、基板Wの裏面を真空吸着することにより、基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、スピンチャック5に保持されている基板Wを回転させる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0043】
対向部材7は、遮断板21と、遮断板21に同軸に設けられた上スピン軸22とを含む。遮断板21は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状である。基板対向面6は、遮断板21の下面を形成しており、基板Wの上面全域に対向する円形である。
基板対向面6の中央部には、遮断板21および上スピン軸22を上下に貫通する円筒状の貫通穴23(
図2B参照)が形成されている。貫通穴23の内周壁は、円筒面によって区画されている。貫通穴23の内部には、それぞれ上下に延びる第1のノズル24および第2のノズル25が挿通している。
【0044】
上スピン軸22には、遮断板回転ユニット26が結合されている。遮断板回転ユニット26は、遮断板21ごと上スピン軸22を回転軸線A2まわりに回転させる。遮断板21には、電動モータ、ボールねじ等を含む構成の遮断板昇降ユニット27が結合されている。遮断板昇降ユニット27は、第1および第2のノズル24,25ごと遮断板21を鉛直方向に昇降する。遮断板昇降ユニット27は、遮断板21の基板対向面6がスピンチャック5に保持されている基板Wの上面に近接する近接位置(
図6D等参照)と、近接位置の上方に設けられた退避位置(
図2Aや
図6A等参照)の間で、遮断板21ならびに第1および第2のノズル24,25を昇降させる。遮断板昇降ユニット27は、近接位置と退避位置との間の各位置で遮断板21を保持可能である。
【0045】
SPM供給ユニット8は、SPMノズル(ノズル)28と、SPMノズル28が先端部に取り付けられたノズルアーム29と、SPMノズル28に接続されたSPM配管30と、SPM配管30に介装されたSPMバルブ31と、ノズルアーム29に接続され、揺動軸線A3まわりにノズルアーム29を揺動させてSPMノズル28を移動させるノズル移動ユニット32とを含む。ノズル移動ユニット32は、モータ等を含む。
【0046】
SPMノズル28は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルである。この実施形態では、SPMノズル28のボディの外周面に、吐出口28aが形成されており、吐出口28aから横向きにSPMを吐出するようになっている。しかし、この構成に代えて、SPMノズル28のボディの下端に吐出口が形成されており、吐出口28aから下向きにSPMを吐出する構成が採用されていてもよい。
【0047】
SPM配管30には、硫酸過酸化水素水供給源からの硫酸過酸化水素水混合液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:SPM)が供給されている。この実施形態では、SPM配管30に供給されるSPMは高温(たとえば約170℃〜約180℃)である。硫酸と過酸化水素水との反応熱により、前記の高温まで昇温されたSPMがSPM配管30に供給されている。
【0048】
SPMバルブ31が開かれると、SPM配管30からSPMノズル28に供給された高温のSPMが、SPMノズル28の吐出口28aから吐出される。SPMバルブ31が閉じられると、SPMノズル28からの、高温のSPMの吐出が停止される。ノズル移動ユニット32は、SPMノズル28から吐出された高温のSPMが基板Wの上面に供給される処理位置と、SPMノズル28が平面視でスピンチャック5の側方に退避した退避位置との間で、SPMノズル28を移動させる。
【0049】
図2Bは、処理ユニット2に含まれる対向部材7の周辺の構成を具体的に説明するための図である。
貫通穴23の内部には上下に延びる中心軸ノズル33が挿通している。中心軸ノズル33は、第1および第2のノズル24,25と、第1および第2のノズル24,25を取り囲む筒状のケーシング34とを含む。
【0050】
第1のノズル24の下端には、下方に向けて液を吐出するための第1の吐出口35が形成されている。第2のノズル25の下端には、下方に向けて液を吐出するための第2の吐出口36が形成されている。この実施形態では、第1および第2のノズル24,25は、それぞれ、インナーチューブである。ケーシング34は、回転軸線A2に沿って上下方向に延びている。ケーシング34は、貫通穴23の内部に非接触状態で挿入されている。したがって、遮断板21の内周は、径方向に間隔を空けてケーシング34の外周を取り囲んでいる。
【0051】
有機溶剤供給ユニット10は、第1のノズル24と、第1のノズル24に接続され、内部が第1の吐出口35に連通する有機溶剤配管37と、有機溶剤配管37に介装され、有機溶剤を開閉する第1の有機溶剤バルブ38と、第1の有機溶剤バルブ38よりも下流側の有機溶剤配管37に介装され、有機溶剤を開閉する第2の有機溶剤バルブ39とを含む。
【0052】
有機溶剤配管37において第1の有機溶剤バルブ38と第2の有機溶剤バルブ39との間に設定された分岐位置40には、その先端に吸引装置(図示しない)が接続された吸引配管41が分岐接続されている。吸引配管41には、吸引配管41を開閉するための吸引バルブ42が介装されている。
第1の有機溶剤バルブ38が開かれると、有機溶剤供給源からの有機溶剤が、第2の有機溶剤バルブ39へと供給される。この状態で第2の有機溶剤バルブ39が開かれると、第2の有機溶剤バルブ39に供給された有機溶剤が、第1の吐出口35から基板Wの上面中央部に向けて吐出される。
【0053】
吸引装置の作動状態において、第1の有機溶剤バルブ38が閉じられかつ第2の有機溶剤バルブ39が開かれた状態で吸引バルブ42が開かれると、吸引装置の働きが有効化され、有機溶剤配管37における分岐位置40よりも下流側の下流側部分43(以下、「有機溶剤下流側部分43」という)の内部が排気され、有機溶剤下流側部分43に含まれる有機溶剤が吸引配管41へと引き込まれる。吸引装置および吸引バルブ42は、吸引ユニット44に含まれている。
【0054】
水供給ユニット11は、第2のノズル25と、第2のノズル25に接続され、内部が第2の吐出口36に連通する水配管46と、水配管46を開閉して、水配管46から第2のノズル25への水の供給および供給停止を切り替える水バルブ47とを含む。水バルブ47が開かれると、水供給源からの水が、水配管46へと供給され、第2の吐出口36から基板Wの上面中央部に向けて吐出される。水配管46に供給される水は、たとえば炭酸水であるが、炭酸水に限らず、脱イオン水(DIW)、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0055】
処理ユニット2は、さらに、ケーシング34の外周と遮断板21の内周との間の筒状の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス配管48と、不活性ガス配管48に介装された不活性ガスバルブ49とを含む。不活性ガスバルブ49が開かれると、不活性ガス供給源からの不活性ガスが、ケーシング34の外周と遮断板21の内周との間を通って、遮断板21の下面中央部から下方に吐出される。したがって、遮断板21が近接位置に配置されている状態で、不活性ガスバルブ49が開かれると、遮断板21の下面中央部から吐出された不活性ガスが基板Wの上面と遮断板21の基板対向面6との間を外方に(回転軸線A1から離れる方向に)広がり、基板Wと遮断板21との空気が不活性ガスに置換される。不活性ガス配管48内を流れる不活性ガスは、たとえば窒素ガスである。不活性ガスは、窒素ガスに限らず、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの他の不活性ガスであってもよい。
【0056】
図2Aに示すように、処理カップ12は、スピンチャック5を2重に取り囲むように固定的に配置された複数のカップ51,52と、基板Wの周囲に飛散した処理液(SPM、有機溶剤または水)を受け止めるための複数のガード53,54(第1および第2のガード53,54)と、個々のガード53,54を独立して昇降させるガード昇降ユニット(昇降ユニット)55とを含む。ガード昇降ユニット55は、たとえはボールねじ機構を含む構成である。
【0057】
処理カップ12は上下方向に重なるように収容可能であり、ガード昇降ユニット55が2つのガード53,54のうちの少なくとも一方を昇降させることにより、処理カップ12の展開および折り畳みが行われる。
第1のカップ51は、円環状をなし、スピンチャック5と円筒部材50との間でスピンチャック5の周囲を取り囲んでいる。第1のカップ51は、基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第1のカップ51は、断面U字状をなしており、基板Wの処理に使用された処理液を排液するための第1の排液溝59を区画している。第1の排液溝59の底部の最も低い箇所には、第1の排液口(図示しない)が開口しており、第1の排液口には、第1の排液配管61が接続されている。第1の排液配管61を通って排液される処理液は、所定の回収装置または廃棄装置に送られ、当該装置で処理される。
【0058】
第2のカップ52は、円環状をなし、第1のカップ51の周囲を取り囲んでいる。第2のカップ52は、基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第2のカップ52は、断面U字状をなしており、基板Wの処理に使用された処理液を集めて回収するための第2の排液溝62を区画している。第2の排液溝62の底部の最も低い箇所には、第2の排液口(図示しない)が開口しており、第2の排液口には、第2の排液配管64が接続されている。第2の排液配管64を通って排液される処理液は、所定の回収装置または廃棄装置に送られ、当該装置で処理される。
【0059】
内側の第1のガード53は、スピンチャック5の周囲を取り囲み、スピンチャック5による基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第1のガード53は、スピンチャック5の周囲を取り囲む円筒状の案内部66と、案内部66に連結された円筒状の処理液分離壁67とを一体的に備えている。案内部66は、スピンチャック5の周囲を取り囲む円筒状の下端部68と、下端部68の上端から外方(基板Wの回転軸線A1から遠ざかる方向)に延びる筒状の厚肉部69と、厚肉部69の上面外周部から鉛直上方に延びる円筒状の中段部70と、中段部70の上端から内方(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部71とを有している。
【0060】
処理液分離壁67は、厚肉部69の外周部から微小量だけ鉛直下方に延びており、第2の排液溝62上に位置している。また、案内部66の下端部68は、第1の排液溝59上に位置し、第1のガード53と第1のカップ51とが最も近接した状態で、第1の排液溝59の内部に収容される。案内部66の上端部71の内周端は、平面視で、スピンチャック5に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。また、案内部66の上端部71は、
図2A等に示すようにその断面形状が直線状であってもよいし、また、たとえば滑らかな円弧を描きつつ延びていてもよい。
【0061】
外側の第2のガード54は、第1のガード53の外側において、スピンチャック5の周囲を取り囲み、スピンチャック5による基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第2のガード54は、第1のガード53と同軸の円筒部72と、円筒部72の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)斜め上方に延びる上端部73と、円筒部72のたとえば下端部において、外側に突出する円環状の突部(閉塞部)75とを有している。上端部73の内周端は、平面視で、スピンチャック5に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。なお、上端部73は、
図2A等に示すようにその断面形状が直線状であってもよいし、また、たとえば滑らかな円弧を描きつつ延びていてもよい。上端部73の先端は、処理カップ12の上部開口12a(
図2A参照)を区画している。
【0062】
円筒部72は、第2の排液溝62上に位置している。また、上端部73は、第1のガード53の案内部66の上端部71と上下方向に重なるように設けられ、第1のガード53と第2のガード54とが最も近接した状態で、案内部66の上端部71に対して微少な隙間を保って近接するように形成されている。折返し部74は、第1のガード53と第2のガード54とが最も近接した状態で、案内部66の上端部71と水平方向に重なるように形成されている。突部75は、平坦な水平面からなる円環状の上面を有している。
【0063】
ガード昇降ユニット55は、次に述べる上位置P1(
図3B等参照)と、ガードの上端部が基板Wより下方に位置する下位置P3(
図3C等参照)との間で、各ガード53,54を昇降させる。
各ガード53,54の上位置P1は、次に述べる液受け位置P2(
図3A等参照)よりも上方に設定される高さ位置である。各ガード53,54の上位置P1は、ガードの上端と対向部材7(基板対向面6)との間に形成される環状隙間86(
図6B参照)の大きさ(上下方向幅)がノズルアーム29の上下幅W1よりも大きくなるような位置である。
【0064】
別の観点からみると、各ガード53,54の上位置P1は、ノズルアーム29の下端面29aよりも下で、かつ吐出口28aよりも上方の位置である。より具体的には、各ガード53,54の上位置P1は、ガードの上端とノズルアーム29の下端面29a(ノズルアーム29の下端)との間の第1の間隔87(
図6B参照)が、ノズルアーム29の下端面29aとSPMノズル28の吐出口28aとの間の第2の間隔(
図6Aおよび
図6B参照)88と同等か、あるいは当該第2の間隔88よりも狭くなるような位置である。さらに具体的には、各ガード53,54の上位置P1は、ガードの上端が、ノズルアーム29の下端面29aとスピンチャック5に保持されている基板Wの上面との間の中間位置M(
図3B参照)よりも上方になるような位置である。
【0065】
ガード昇降ユニット55は、上位置P1と下位置P3との間の任意の位置で各ガード53,54を保持可能である。具体的には、ガード昇降ユニット55は、各ガード53,54を、上位置P1と、下位置P3と、上位置P1と下位置P3との間に設定された液受け位置P2とに保持する。各ガード53,54の液受け位置P2は、ガードの上端部が基板Wより上方に位置する高さ位置である。基板Wへの処理液の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガード53,54が基板Wの周端面に対向している状態で行われる。
【0066】
図3A〜3Cは、第1および第2のガード53,54の高さ位置と、チャンバ4の内部における気流の流れとを説明するための図解的な図である。
図3Aには第2のガード54が液受け位置P2に配置された状態が示され、
図3Bには第2のガード54が上位置P1に配置された状態が示され、
図3Cには第2のガード54が下位置P3に配置された状態が示されている。
【0067】
内側の第1のガード53を基板Wの周端面に対向させる手法として、次に述べる2つの手法がある。
1つ目は、
図3Bに実線で示すように、第1および第2のガード53,54のいずれもを上位置P1に配置する手法である。このような処理カップ12の状態を、以下、「第1の上位置状態」という。また、第1の上位置状態では、折返し部74が案内部66の上端部71と水平方向に重なっており、つまり、第1および第2のガード53,54が狭間隔を隔てて重なっている。
【0068】
2つ目は、
図3Aに実線で示すように、第1および第2のガード53,54のいずれもを液受け位置P2に配置する手法である。このような処理カップ12の状態を、以下、「第1の液受け位置状態」という。また、第1の液受け位置状態では、折返し部74が案内部66の上端部71と水平方向に重なっており、つまり、第1および第2のガード53,54が狭間隔を隔てて重なっている。
【0069】
また、外側の第2のガード54を基板Wの周端面に対向させる手法として、次に述べる2つの手法がある。
1つ目は、
図3Bに二点鎖線で示すように第1のガード53を下位置P3に配置し、かつ第2のガード54を上位置P1に配置する手法である。このような処理カップ12の状態を、以下、「第2の上位置状態」という。
【0070】
2つ目は、
図3Aに二点鎖線で示すように第1のガード53を下位置P3に配置し、かつ第2のガード54を液受け位置P2に配置する手法である。このような処理カップ12の状態を、以下、「第2の液受け位置状態」という。第2の液受け位置状態では、第1および第2のガード53,54の間隔が上下に広い。
また、処理カップ12は、
図3Cに示すように、いずれのガード53,54も基板Wの周端面に対向させないようにすることも可能である。この状態では、第1および第2のガード53,54のいずれもが下位置P3に配置される。このような処理カップ12の状態を、以下、「退避状態」という。
【0071】
図3Cに示すように、処理カップ12の退避状態では、第2のガード54の突部75(の上面)と、仕切り板16(の下面)との間には大きな間隔(上下方向の間隔が約70mm)W2が隔てられている。そのため、突部75と仕切り板16との間を気体が通過する際に、その圧力損失はほとんどない。
一方で、この状態では、第2のガード54の上端が基板Wの周端面よりも下方に位置しているために、スピンチャック5(スピンベース19)と第2のガード54の先端(折返し部74)との間の間隔は狭く、そのため、スピンチャック5と第2のガード54の先端との間の隙間S0を気体が通過する際に、その圧力損失は大きい。したがって、処理カップ12の退避状態においてチャンバ4の内部を流れるダウンフローDF1は、専ら突部75と仕切り板16との間を通って、チャンバ4の下部空間4aに進入する。
【0072】
また、
図3Aに示すように、処理カップ12の第1の液受け位置状態または第2の液受け位置状態では、第2のガード54の突部75(の上面)と仕切り板16(の下面)との間の隙間Sが、退避状態の場合よりも狭められている(上下方向の間隔が約30mmでかつ左右方向の間隔が約2mm)が隔てられている。そのため、突部75と仕切り板16との間の隙間Sを気体が通過する圧力損失は、退避状態よりも大きくなる。また、第2のガード54の上端が基板Wの周端面よりも上方に位置しているために、スピンチャック5と第2のガード54の先端との間の隙間S0が退避状態の場合よりも広く、そのため、スピンチャック5と第2のガード54の先端との間を気体が通過する際の圧力損失は、退避状態の場合より小さい(すなわち、ある程度存在する)。したがって、処理カップ12の第1の液受け位置状態または第2の液受け位置状態において、チャンバ4の内部を流れるダウンフローDF2は、突部75と仕切り板16との間の隙間S、およびスピンチャック5と第2のガード54の先端との間の隙間S0の双方を通って、チャンバ4の下部空間4aに進入する。
【0073】
図3Bに示すように、処理カップ12の第1の上位置状態または第2の上位置状態では、第2のガード54の突部75の上面と仕切り板16の下面とが接触し、これにより、突部75と仕切り板16との隙間Sが略零とされている(実質上、閉塞されている。より厳密には、上下方向の間隔が約3mmでかつ左右方向の間隔が約2mm)。
一方で、この状態では、第2のガード54の上端が基板Wの周端面よりも大きく上方に位置しているために、スピンチャック5(スピンベース19)と第2のガード54の先端との間の間隔は極めて大きく、そのため、スピンチャック5と第2のガード54の先端との間を気体が通過する際に、その圧力損失はほとんど生じない。したがって、処理カップ12の第1の上位置状態または第2の上位置状態においてチャンバ4の内部を流れるダウンフローDF3は、専らスピンチャック5と第2のガード54の先端との間を通って、チャンバ4の下部空間4aに進入する。
【0074】
図4は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
【0075】
制御装置3は、スピンモータ17、ノズル移動ユニット32、遮断板回転ユニット26、遮断板昇降ユニット27およびガード昇降ユニット55等の動作を制御する。また、制御装置3は、SPMバルブ31、第1の有機溶剤バルブ38、第2の有機溶剤バルブ39、吸引バルブ42、水バルブ47、不活性ガスバルブ49等を開閉する。
図5は、処理ユニット2による第1の基板処理例を説明するための流れ図である。
図6A〜6Eは、第1の基板処理例を説明するための図解的な図である。
【0076】
以下、
図2A,2Bおよび
図5を参照しながら、第1の基板処理例について説明する。
図3A〜3Cおよび
図6A〜6Eについては適宜参照する。第1の基板処理例は、基板Wの上面に形成されたレジストを除去するためのレジスト除去処理である。以下で述べるように、第1の基板処理例は、SPMを基板Wの上面に供給するSPM供給工程(第1の薬液供給工程)S3と、IPA等の液体の有機溶剤を基板Wの上面に供給する有機溶剤工程(第2の薬液供給工程)S5とを含む。SPMと有機溶剤とは、混触により危険(この場合、急激な反応)が伴うような薬液の組合せである。
【0077】
処理ユニット2によってレジスト除去処理が基板Wに施されるときには、チャンバ4の内部に、高ドーズでのイオン注入処理後の基板Wが搬入される(
図5のステップS1)。搬入される基板Wは、レジストをアッシングするための処理を受けていないものとする。また、基板Wの表面には、微細で高アスペクト比の微細パターンが形成されている。
対向部材7(すなわち、遮断板21および中心軸ノズル33)が退避位置に退避し、SPMノズル28がスピンチャック5の上方から退避し、かつ第1および第2のガード53,54が下位置に下げられている状態(第1および第2のガード53,54の上端がいずれも基板Wの保持位置よりも下方に配置された状態)で、制御装置3は、基板Wを保持している基板搬送ロボットCR(
図1参照)のハンドH(
図1参照)をチャンバ4の内部に進入させる。これにより、基板Wがその表面(レジスト形成面)を上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡される。その後、スピンチャック5に基板Wが保持される。
【0078】
その後、制御装置3は、スピンモータ17によって基板Wの回転を開始させる(
図5のステップS2)。基板Wは予め定める液処理速度(約10−500rpmの範囲内で、例えば約400rpm)まで上昇させられ、その液処理速度に維持される。
次いで、制御装置3は、高温のSPMを基板Wの上面に供給するSPM供給工程(
図5のステップS3)を行う。SPM供給工程S3では、基板Wの表面からレジストを剥離すべく、制御装置3は、SPMノズル28からの高温のSPMを、たとえば、基板Wの上面中央部に供給する。
【0079】
具体的には、制御装置3は、ノズル移動ユニット32を制御することにより、SPMノズル28を退避位置から処理位置に移動させる。これにより、
図6Aに示すように、SPMノズル28が基板Wの中央部の上方に配置される。
SPMノズル28が処理位置(たとえば中央位置)に配置された後、制御装置3は、ガード昇降ユニット55を制御して、第1および第2のガード53,54をそれぞれ上位置まで上昇させて(処理カップ12の状態を第1の上位置状態に遷移させて)、第1のガード53を基板Wの周端面に対向させる。
【0080】
処理カップ12の第1の上位置状態では、
図6Bに示すように、第2のガード54の上端とノズルアーム29の下端面29aとの間の第1の間隔87(たとえば略零)が、ノズルアーム29の下端面29aとSPMノズル28の吐出口28aとの間の第2の間隔88(たとえば約5mm)よりも狭くなる。さらに言えば、処理カップ12の第1の上位置状態では、第2のガード54の上端が、ノズルアーム29の下端面29aとスピンチャック5に保持されている基板Wの上面との間の中間位置M(
図3B参照)よりも上方に位置するような位置である。
【0081】
第1および第2のガード53,54の上昇後、制御装置3は、SPMバルブ31を開く。これにより、高温(たとえば約170℃〜約180℃)のSPMがSPM配管30からSPMノズル28に供給され、
図6Bに示すように、このSPMノズル28の吐出口28aから高温のSPMが吐出される。SPMノズル28から吐出された高温のSPMは、基板Wの上面の中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの上面全域がSPMの液膜によって覆われる。高温のSPMにより、基板Wの表面からレジストが剥離されて、当該基板Wの表面から除去される。また、SPMノズル28からの高温のSPMの供給位置を、基板Wの上面中央部と上面周縁部との間で移動(スキャン)させるようにしてもよい。
【0082】
基板Wの上面に供給されたSPMは、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散し、第1のガード53の内壁に受け止められる。そして、第1のガード53の内壁を伝って流下するSPMは、第1の排液溝59に集められた後第1の排液配管61に導かれ、SPMを排液処理するための排液処理装置(図示しない)へと導かれる。
SPM供給工程S3では、使用されるSPMが極めて高温である(たとえば約170℃〜約180℃)ため、大量のSPMのミストMIが発生する。基板WへのSPMの供給により、基板Wの上面の周囲に大量に発生したSPMのミストMIが、基板Wの上面上で浮遊する。
【0083】
SPM供給工程S3において、ガード(少なくとも第2のガード54)の高さ位置が、基板Wから飛散する薬液を受け止めるという目的を達成するためには十分な高さではるものの、低目の高さ位置である場合には、処理カップ12の内部におけるSPMのミストMIを含む雰囲気が、処理カップ12の上部開口12aを通って処理カップ12外に流出して、チャンバ4の内部に拡散するおそれがある。SPMのミストMIを含む雰囲気は、パーティクルとなって基板Wに付着して当該基板Wを汚染したり、チャンバ4の隔壁13の内壁を汚染したりする原因となるので、このような雰囲気が周囲に拡散することは望ましくない。
【0084】
第1の基板処理例に係るSPM供給工程S3では、第1および第2のガード53,54が上位置に配置されている状態で(すなわち、処理カップ12の第1の上位置状態で)、回転状態にある基板Wの上面に高温のSPMが供給される。処理カップ12の第1の上位置状態では、上位置P1に配置されている状態の第2のガード54の上端と遮断板21の基板対向面6との間に形成される環状隙間86(
図3B参照)が狭く設定されている。そのため、処理カップ12内の雰囲気が環状隙間86を通ってチャンバ4の内部へ流出することが困難である。これにより、処理カップ12の内部におけるSPMのミストMIを含む雰囲気がチャンバ4の内部に流出することを抑制または防止できる。
【0085】
また、処理カップ12の第1の上位置状態では、突部75と仕切り板16との間の隙間Sが略零になるため、チャンバ4の内部を流れるダウンフローDF3(
図3B参照)は、スピンチャック5と第2のガード54の先端との間を通って、チャンバ4の下部空間4aに進入する。これにより、処理カップ12からチャンバ4の内部へのSPMのミストMIを含む雰囲気の流出を、より効果的に抑制できる。
【0086】
なお、処理カップ12の第1の上位置状態(
図3Bに実線で示す状態)では、第1のガード53と第2のガード54とが最も近接している。この状態では、折返し部74が、案内部66の上端部71と水平方向に重なっている。そのため、SPM供給工程S3において、基板Wの上面上で浮遊するSPMのミストMIが、第1のガード53と第2のガード54との間に進入しない。SPM供給工程S3の開始前には、第2のガード54の内壁にIPAが付着していることがある。しかし、SPMのミストMIが第1のガード53と第2のガード54との間に進入しないので、SPM供給工程S3において、処理カップ12の内部でSPMとIPAとが混触することを抑制または防止できる。これにより、処理カップ12の内部がパーティクル発生源になることを抑制または防止できる。
【0087】
高温のSPMの吐出開始から予め定める期間が経過すると、SPM供給工程S3が終了する。具体的には、制御装置3は、SPMバルブ31を閉じて、SPMノズル28からの高温のSPMの吐出を停止させる。また、制御装置3は、ガード昇降ユニット55を制御して、第1および第2のガード53,54をそれぞれ液受け位置P2まで降下させる。第1および第2のガード53,54の下降開始後、制御装置3は、ノズル移動ユニット32を制御して、SPMノズル28を退避位置まで退避させる。
【0088】
次いで、リンス液としての水を基板Wの上面に供給する水供給工程(
図5のステップS4)が行われる。具体的には、制御装置3は、水バルブ47を開く。これにより、
図6Cに示すように、中心軸ノズル33の(第2のノズル25(
図2B参照))から、基板Wの上面中央部に向けて水が吐出される。中心軸ノズル33から吐出された水は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面上を基板Wの周縁部に向けて流れる。この水によって基板W上のSPMが外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。その結果、基板W上のSPMの液膜が、基板Wの上面全域を覆う水の液膜に置換される。すなわち、リンス液としての水によって、基板Wの上面からSPMが洗い流される。
【0089】
基板Wの上面を流れる水は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散し、第1のガード53の内壁に受け止められる。そして、第1のガード53の内壁を伝って流下する水は、第1の排液溝59に集められた後第1の排液配管61に導かれ、水を排液処理するための排液処理装置(図示しない)へと導かれる。SPM供給工程S3において使用したSPMの液が第1のガード53の内壁や第1の排液溝59、第1の排液配管61の管壁に付着している場合には、このSPMの液が水によって洗い流される。
【0090】
水の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、水バルブ47を閉じて、第2のノズル25からの水の吐出を停止させる。これにより、水供給工程S4が終了する。
次いで、有機溶剤としてのIPAを基板Wの上面に供給する有機溶剤工程(
図5のステップS5)が行われる。具体的には、制御装置3は、
図6Dに示すように、遮断板昇降ユニット27を制御して、遮断板21を近接位置に配置する。遮断板21が近接位置にあるときには、遮断板21が、基板Wの上面をその周囲の空間から遮断する。
【0091】
また、制御装置3は、ガード昇降ユニット55を制御して、第1のガード53を下位置P3のまま、第2のガード54を上位置P1に配置して、第2のガード54を基板Wの周端面に対向させる。
また、制御装置3は、基板Wの回転を所定のパドル速度に減速する。このパドル速度とは、基板Wをパドル速度で回転させたときに、基板Wの上面の液体に作用する遠心力がリンス液と基板Wの上面との間で作用する表面張力よりも小さいか、あるいは前記の遠心力と前記の表面張力とがほぼ拮抗するような速度をいう。
【0092】
そして、基板Wの回転速度がパドル速度に下がった後、制御装置3は、第2の有機溶剤バルブ39を開き吸引バルブ42を閉じながら、第1の有機溶剤バルブ38を開く。これにより、有機溶剤供給源からのIPAが、第1のノズル24に供給され、第1のノズル24からIPAが吐出されて基板Wの上面に着液する。
有機溶剤工程S5では、第1のノズル24からのIPAの吐出により、基板Wの上面の液膜に含まれる水がIPAに順次置換されていく。これにより、基板Wの上面に、基板Wの上面全域を覆うIPAの液膜がパドル状に保持される。基板Wの上面全域の液膜がほぼIPAの液膜に置換された後も、基板Wの上面へのIPAの供給は続行される。そのため、基板Wの周縁部からIPAが排出される。
【0093】
基板Wの周縁部から排出されるIPAは、第2のガード54の内壁に受け止められる。そして、第2のガード54の内壁を伝って流下するIPAは、第2の排液溝62に集められた後第2の排液配管64に導かれ、IPAを排液処理するための処理装置(図示しない)へと導かれる。
この実施形態では、基板Wの周縁部から排出されるIPAは、基板Wの周端面に対向する第2のガード54の内壁に受け止められ、基板Wの周端面に対し下方に退避する第1のガード53の内壁に受け止められることはない。しかも、有機溶剤工程S5において、基板Wの周囲には発生するIPAのミストは少量であり、IPAのミストが第1のガード53の内壁へと導かれることもない。しかも、SPM供給工程S3において第1のガード53に付着したSPMは、水供給工程S4における水の供給により洗い流されている。したがって、有機溶剤工程S5において、IPAとSPMとの混触が生じることはない。
【0094】
IPAの吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、第1の有機溶剤バルブ38を閉じて、第2のノズル25からのIPAの吐出を停止させる。これにより、有機溶剤工程S5が終了する。
次いで、基板Wを乾燥させるスピンドライ工程(
図5のステップS6)が行われる。具体的には、制御装置3は、遮断板21を近接位置に配置した状態のまま、制御装置3はスピンモータ17を制御することにより、
図6Eに示すように、SPM供給工程S3から有機溶剤工程S5までの各工程における回転速度よりも大きい乾燥回転速度(たとえば数千rpm)まで基板Wを加速させ、その乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。また、制御装置3は、遮断板回転ユニット26を制御して、遮断板21を基板Wの回転方向に高速で回転させる。
【0095】
また、スピンドライ工程S6に並行して、有機溶剤配管37内の有機溶剤を吸引する有機溶剤吸引工程が実行される。この有機溶剤吸引工程は、有機溶剤工程S5後に有機溶剤配管37の内部に存在している有機溶剤を、吸引ユニット44によって吸引するものである。
具体的には、制御装置3は、有機溶剤工程S5の終了後、第2の有機溶剤バルブ39を開きかつ第1の有機溶剤バルブ38を閉じながら、吸引バルブ42を開く。これにより、有機溶剤下流側部分43の内部が排気され、有機溶剤下流側部分43に存在しているIPAが、吸引配管41へと引き込まれる(吸引)。IPAの吸引は、IPAの先端面が配管内の所定の待機位置に後退するまで行われる。IPAの先端面が待機位置まで後退すると、制御装置3は吸引バルブ42を閉じる。これにより、スピンドライ工程S6における、有機溶剤配管37からのIPAの落液(ボタ落ち)を防止できる。
【0096】
基板Wの加速から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ17を制御してスピンチャック5による基板Wの回転を停止させ(
図5のステップS7)、かつ遮断板回転ユニット26を制御して遮断板21の回転を停止させる。
その後、チャンバ4内から基板Wが搬出される(
図5のステップS8)。具体的には、制御装置3は、遮断板21を上昇させて退避位置に配置させ、かつ第2のガード54を下位置P3に下げて、第1および第2のガード53,54を、基板Wの保持位置よりも下方に配置する。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドHをチャンバ4の内部に進入させる。そして、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドにスピンチャック5上の基板Wを保持させ、基板搬送ロボットCRのハンドHをチャンバ4内から退避させる。これにより、表面からレジストが除去された基板Wがチャンバ4から搬出される。
【0097】
この第1の基板処理例によれば、処理カップ12の第1の上位置状態で、SPM供給工程S3が実行される。そのため、SPM供給工程S3において、第1のガード53をできるだけ上方に配置しながら、当該第1のガード53により、基板から飛散する第1の薬液を良好に受け止めることができる。
また、SPM供給工程S3とIPA供給工程S5とで、処理液を受けるガード53,54を分けるので、処理カップ12の内部でSPMとIPAとが混触することを抑制または防止できる。これにより、処理カップ12の内部がパーティクル発生源になることを抑制または防止できる。
【0098】
図7は、処理ユニット2の下部の構成例の一例を拡大して示す図解的な断面図である。
第2のカップ52の第2の排液配管64の先端に、水用分岐配管102およびIPA用分岐配管103が接続されていてもよい。つまり、第2の排液配管64を流れる液体の流通先(第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間を通る液体の流通先)が、2つの分岐配管102,103に分岐されている。このような2つの分岐配管102,103が採用される場合について以下説明する。
【0099】
水用分岐配管102には、水用分岐配管102を開閉するための水用開閉バルブ105が介装されている。IPA用分岐配管103には、IPA用分岐配管103を開閉するためのIPA用開閉バルブ106が介装されている。IPA用開閉バルブ106が閉じられた状態で水用開閉バルブ105が開かれることにより、第2の排液配管64を流れる液体の流通先が、水用分岐配管102に設定される。水用開閉バルブ105が閉じられた状態でIPA用開閉バルブ106が開かれることにより、第2の排液配管64を流れる液体の流通先が、IPA用分岐配管103に設定される。
【0100】
図8A〜8Cは、第2の基板処理例を説明するための図解的な図である。第2の基板処理例は、基本的な処理の流れにおいて、第1の基板処理例と変わらない。
図2A,2B、
図5および
図7を参照しながら、第2の基板処理例について説明する。
図8A〜8Cは適宜参照する。
第2の基板処理例は、SPM供給工程S3において、処理カップ12の状態が第1の上位置状態ではなく第2の上位置状態に配置される点で、第1の基板処理例と相違している。処理カップ12の第2の上位置状態とは、第1のガード53が液受け位置P2に配置され、かつ第2のガード54が上位置に配置されるような状態である。また、SPM供給工程S3において処理カップ12を第2の上位置状態にすることにより、第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間の壁(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁等)にSPMのミストMIが付着するおそれがあるが、水供給工程S4において処理カップ12を第2の液受け位置状態にして、基板Wの周縁部から飛散する水を第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間に供給することにより、当該内部空間の壁(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁等)に付着しているSPMのミストMIを水で洗い流す点で、第1の基板処理例と相違している。以下、第2の基板処理例に係るSPM供給工程S3を詳細に説明する。
【0101】
SPM供給工程S3において、SPMノズル28が処理位置に配置された後、制御装置3は、ガード昇降ユニット55を制御して、第1のガード53を液受け位置P2まで上昇させ、かつ第2のガード54を上位置P1まで上昇させて、第2のガード54を基板Wの周端面に対向させる。
処理カップ12の第2の上位置状態では、処理カップ12の第1の上位置状態と同様、第2のガード54の上端とノズルアーム29の下端面29aとの間の第1の間隔87(たとえば略零)が、ノズルアーム29の下端面29aとSPMノズル28の吐出口28aとの間の第2の間隔88(たとえば約5mm)よりも狭くなる。さらに言えば、処理カップ12の第2の上位置状態は、第2のガード54の上端が、ノズルアーム29の下端面29aとスピンチャック5に保持されている基板Wの上面との間の中間位置M(
図3B参照)よりも上方に位置するような位置である。第2のガード54の上昇後、制御装置3は、SPMバルブ31(
図2A参照)を開く。
【0102】
図8Aに示すように、この実施形態に係るSPM供給工程S3では、第1のガード53が液受け位置P2に配置され、かつ第2のガード54が上位置P1に配置されている状態で(すなわち、処理カップ12の第2の上位置状態で)、回転状態にある基板Wの上面に高温のSPMが供給される。基板Wの上面に供給されたSPMは、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの周縁部から側方へ飛散する。そして、側方へ飛散したSPMは、液受け位置P2にある第1のガード53によって受け止められ、第1のガード53の内壁を伝って流下する。第1のガード53を流下するSPMは、第1の排液配管61に導かれ、SPMを排液処理するための排液処理装置(図示しない)へと導かれる。
【0103】
また、SPM供給工程S3では、使用されるSPMが極めて高温である(たとえば約170℃〜約180℃)ため、大量のSPMのミストMIが発生する。基板WへのSPMの供給により、基板Wの上面の周囲に大量に発生したSPMのミストMIが、基板Wの上面上で浮遊する。
処理カップ12の第2の上位置状態では、上位置P1に配置されている状態の第2のガード54の上端と遮断板21の基板対向面6との間に形成される環状隙間86(
図3B参照)が狭く設定されている。そのため、処理カップ12内の雰囲気が環状隙間86を通ってチャンバ4の内部へ流出することが困難である。これにより、処理カップ12の内部におけるSPMのミストMIを含む雰囲気がチャンバ4の内部に流出することを抑制または防止できる。
【0104】
また、処理カップ12の第2の上位置状態では、突部75と仕切り板16との間の隙間Sが略零になるため、チャンバ4の内部を流れるダウンフローDF3(
図3B参照)は、スピンチャック5と第2のガード54の先端との間を通って、チャンバ4の下部空間4aに進入するこれにより、処理カップ12からチャンバ4の内部へのSPMのミストMIを含む雰囲気の流出を、より効果的に抑制できる。
【0105】
この第2の基板処理例のSPM供給工程S3においては、SPMのミストMIが第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間に進入し、その結果、SPMのミストMIが内部空間の壁(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁等)に付着するおそれがある。
SPM供給工程S3の終了後、制御装置3は、ガード昇降ユニット55を制御して、第1のガード53を液受け位置P2から下位置P3まで下降させると共に、第2のガード54を上位置P1から液受け位置P2まで下降させる。すなわち、処理カップ12の状態を、第2の液受け位置状態に遷移させる。処理カップ12の第2の液受け位置状態では、基板Wの周端面に第2のガード54が対向する。また、水の吐出に先立って、制御装置3は、IPA用開閉バルブ106を閉じながら水用開閉バルブ105を開くことにより、第2の排液配管64を流れる液体の流通先を水用分岐配管102に設定する。第1のガード53の下降開始後、制御装置3は、ノズル移動ユニット32を制御して、SPMノズル28を退避位置まで退避させる。
【0106】
次いで、水供給工程(
図5のステップS4)が行われる。具体的には、制御装置3は、水バルブ47を開く。これにより、
図8Bに示すように、中心軸ノズル33の(第2のノズル25(
図2B参照)から、基板Wの上面中央部に向けて水が吐出される。中心軸ノズル33から吐出された水は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面上を基板Wの周縁部に向けて流れる。
【0107】
基板Wの上面に供給された水は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散し、第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁等)に進入し、第2のガード54の内壁に受け止められる。そして、第2のガード54の内壁を伝って流下する水は、第2の排液溝62に集められた後第2の排液配管64に導かれる。第2の基板処理例における水供給工程S4では、第2の排液配管64を流れる液体の流通先が水用分岐配管102(
図7参照)に設定されているので、第2の排液配管64を流れる水は、水用分岐配管102へと供給され、その後、水を排液処理するための処理装置(図示しない)に送られる。
【0108】
前述のSPM供給工程S3の後には、第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁等)の壁にSPMのミストMIが付着しているおそれがある。しかし、水供給工程S4において、第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間に供給される水により、壁に付着しているSPMのミストMIは洗い流される。水の吐出開始から予め定める期間が経過すると、水供給工程S4は終了する。
【0109】
次いで、有機溶剤としてのIPAを基板Wの上面に供給する有機溶剤工程(
図5のステップS5)が行われる。IPAの吐出開始前において、制御装置3は、水用開閉バルブ105を閉じながらIPA用開閉バルブ106を開くことにより、第2の排液配管64を流れる液体の流通先をIPA用分岐配管103(
図7参照)に設定する。有機溶剤工程S5におけるそれ以外の制御は、第1の基板処理例の場合と同様である。
【0110】
基板Wの周縁部から排出されるIPAは、第2のガード54の内壁に受け止められる。そして、第2のガード54の内壁を伝って流下するIPAは、第2の排液溝62に集められた後第2の排液配管64に導かれ、IPAを排液処理するための処理装置(図示しない)へと導かれる。第2の基板処理例における有機溶剤工程S5では、第2の排液配管64を流れる液体の流通先がIPA用分岐配管103に設定されているので、第2の排液配管64を流れるIPAは、IPA用分岐配管103へと供給され、その後、IPAを排液処理するための処理装置(図示しない)に送られる。IPAの吐出開始から予め定める期間が経過すると、有機溶剤工程S5が終了する。次いで、制御装置3は、スピンドライ工程(
図5のステップS6)を実行する。スピンドライ工程S6の終了後には、制御装置3は、スピンチャック5による基板Wの回転を停止させ(
図5のステップS7)、かつ遮断板21の回転を停止させる。その後、チャンバ4内から基板Wが搬出される(
図5のステップS8)。これらの各工程は、第1の基板処理例の場合と同等であるので、それぞれの説明を省略する。
【0111】
第2の基板処理例では、基板Wの搬出後、処理カップ12を洗浄するカップ洗浄工程が実行される。カップ洗浄工程では、洗浄液として水が用いられる。
カップ洗浄工程では、制御装置3は、スピンモータ17(
図2A参照)によってスピンベース19の回転を開始させる。
スピンベース19への水の供給開始に先立って、制御装置3は、ガード昇降ユニット55(
図2A参照)を制御して、第1のガード53を下位置P3に保ちながら、第2のガード54を液受け位置P2まで上昇させる。すなわち、
図8Cに示すように、処理カップ12の状態を、第2の液受け位置状態に遷移させる。処理カップ12の第2の液受け位置状態では、スピンベース19の上面19aの周縁部に第2のガード54が対向する。
【0112】
また、スピンベース19への水の供給開始に先立って、制御装置3は、IPA用開閉バルブ106(
図7参照)を閉じながら水用開閉バルブ105(
図7参照)を開くことにより、第2の排液配管64を流れる液体の流通先を水用分岐配管102(
図7参照)に設定する。
スピンベース19の回転速度が所定の回転速度に達すると、制御装置3は、水バルブ47(
図2参照)を開く。これにより、
図8Cに示すように、中心軸ノズル33の(第2のノズル25(
図2B参照))から水が吐出される。中心軸ノズル33から吐出された水は、スピンベース19の上面19aの中央部に着液し、スピンベース19の回転による遠心力を受けてスピンベース19の上面19a上をスピンベース19の周縁部に向けて流れ、スピンベース19の周縁部から側方に向けて飛散する。
【0113】
スピンベース19の周縁部から飛散する水は、第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁等)に進入し、第2のガード54の内壁に受け止められる。そして、第2のガード54の内壁を伝って流下する水は、第2の排液溝62に集められた後第2の排液配管64(
図7参照)に導かれる。カップ洗浄工程では、第2の排液配管64を流れる液体の流通先が水用分岐配管102(
図7参照)に設定されているので、第2の排液配管64を流れる水は、水用分岐配管102へと供給され、その後、水を排液処理するための処理装置(図示しない)に送られる。
【0114】
基板W搬出S8の後には、第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間の壁(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁)や、第2の排液溝62、第2の排液配管64の管壁にIPAの液が付着しているが、カップ洗浄工程の実行により、このIPAの液が水によって洗い流される。
水の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、水バルブ47を閉じて、スピンベース19の上面19aへの水の供給を停止させる。また、制御装置3は、スピンモータ17を制御して、スピンベース19の回転を停止させる。これにより、カップ洗浄工程が終了する。
【0115】
また、第2の基板処理例のカップ洗浄工程において、SiC等製のダミー基板(基板Wと同径を有する)をスピンチャック5に保持させ、回転状態にあるダミー基板に対して水等の洗浄液を供給することにより、ダミー基板の周縁からダミー基板の側方に水を飛散させるようにしてもよい。
この第2の基板処理例によれば、処理カップ12の第2の上位置状態で、SPM供給工程S3が実行される。そのため、SPM供給工程S3において、第2のガード53をできるだけ上方に配置しながら、当該第2のガード53により、基板から飛散する第1の薬液を良好に受け止めることができる。
【0116】
また、SPM供給工程S3において発生したSPMのミストMIが第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間の壁(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁等)に付着するおそれがある。しかしながら、SPM供給工程S3の終了後の水供給工程S4において、基板Wの周縁部から飛散する水を第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁等)に供給することにより、内部空間の内壁に付着しているSPMを、この洗い流すことができる。そのため、処理カップ12の内部でSPMとIPAとが混触することを抑制または防止できる。これにより、処理カップ12の内部がパーティクル発生源になることを抑制または防止できる。
【0117】
また、IPA供給工程S5において、基板Wから排出される処理液を第2のガード54の内壁で受け止める。そのため、IPA供給工程S5の終了後には、第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間の壁にIPAの液が付着している。しかしながら、IPA供給工程S5の開始後にカップ洗浄工程を実行するために、第1のガード53と第2のガード54との間に区画される内部空間の壁(第2のガード54の内壁や第1のガード53の外壁)や、第2の排液溝62、第2の排液配管64の管壁に付着しているIPAの液を、水によって洗い流すことができる。そのため、処理カップ12の内部でSPMとIPAとが混触することを抑制または防止でき、これにより、処理カップ12の内部がパーティクル発生源になることを抑制または防止できる。
【0118】
また、第2の基板処理例において、水供給工程S4を、硫酸含有液工程S3の開始前に行うようにしてもよい。
以上により、この実施形態によれば、SPM供給工程S3において、第2のガード54が上位置P1に配置されている状態で、回転状態にある基板Wの上面に高温のSPMが供給される。第2のガード54が上位置P1に配置されている状態では、処理カップ12の上部開口12aと基板Wとの間の距離が大きく確保されている。SPM供給工程S3では、高温のSPMの基板Wへの供給によりSPMのミストが発生するが、処理カップ12の上部開口12aと基板Wとの間の距離が大きく確保されているために、SPMのミストを含む雰囲気が、処理カップ12の上部開口12aを通って処理カップ12外に流出し難い。
【0119】
具体的には、各ガード53,54の上位置P1は、ガードの上端と対向部材7(基板対向面6)との間に形成される環状隙間86が、ノズルアーム29の上下幅W1よりも大きく、かつ極力狭くなるような位置である。これにより、環状隙間86を、ノズルアーム29の通過を許容する範囲で最小限の大きさに設定することができる。この場合、処理カップ12の内部からチャンバ4の内部に流出する雰囲気の量を効果的に削減できる。これにより、SPMを含む雰囲気の、周囲への拡散を、より一層効果的に抑制できる。
【0120】
また、別の観点から見ると、各ガード53,54の上位置P1は、ノズルアーム29の下端面29aよりも下で、かつ吐出口28aよりも上方の位置である。より具体的には、各ガード53,54の上位置P1は、ガードの上端とノズルアーム29の下端面38aとの間の第1の間隔87が、ノズルアーム29の下端面29aとSPMノズル28の吐出口34aとの間の第2の間隔88よりも狭くなるような位置である。さらには、各ガード53,54の上位置P1は、ガードの上端が、ノズルアーム29の下端面38aとスピンチャック5に保持されている基板Wの上面との間の中間位置M(
図3B参照)よりも上方になるような位置である。
【0121】
上位置P1をこのような位置に設定することで、処理カップ12からチャンバ4の内部に流出する雰囲気の量を効果的に削減できる。これにより、SPMを含む雰囲気の、周囲への拡散を、より一層効果的に抑制できる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0122】
たとえば、第1,第2の基板処理例において、水供給工程S4の終了後、基板Wの上面に洗浄薬液を供給する洗浄薬液供給工程が実行されるようになっていてもよい。この場合、洗浄薬液供給工程で用いられる洗浄薬液としてフッ酸、SC1(NH
4OHとH
2O
2とを含む混合液)を用いることができる。洗浄薬液供給工程が実行される場合、その後、基板Wの上面の薬液をリンス液で洗い流す第2の水供給工程が実行される。
【0123】
また、第1,第2の基板処理例において、SPM供給工程S3の実行後、または洗浄薬液供給工程の実行後に、過酸化水素水(H
2O
2)を基板Wの上面(表面)に供給する過酸化水素水供給工程を行ってもよい。
また、前述の実施形態では、第2の薬液の一例として用いられる有機溶剤の一例としてIPAを例示したが、有機溶剤としてその他に、メタノール、エタノール、HFE(ハイドロフロロエーテル)、アセトン等を例示できる。また、有機溶剤としては、単体成分のみからなる場合だけでなく、他の成分と混合した液体であってもよい。たとえば、IPAとアセトンの混合液であってもよいし、IPAとメタノールの混合液であってもよい。
【0124】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。