(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  シリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、前記シリンダ内に挿入されて前記ピストンに連結されるロッドと、前記シリンダ内に前記ピストンで区画されて液体が充満するロッド側室およびピストン側室と、液体を貯留するタンクと、前記ピストン側室から前記ロッド側室へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路と、前記タンクから前記ピストン側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路とを有する伸縮ユニットと、
  前記伸縮ユニットに連結されるか或いは一体となっているとともに、前記ロッド側室と前記ピストン側室とを連通する第一通路と、前記第一通路の途中に設けた第一開閉弁と、前記ピストン側室と前記タンクとを連通する第二通路と、前記第二通路の途中に設けた第二開閉弁と、前記ロッド側室を前記タンクへ接続する排出通路と、前記排出通路の途中に設けた圧力制御弁とを有するバルブユニットと、
  前記第一開閉弁、前記第二開閉弁および前記圧力制御弁を制御するバルブコントロールユニットと、
  前記タンクと前記ロッド側室とを連通する供給通路と、前記供給通路の途中に設けられて前記タンクから液体を吸込んで前記ロッド側室へ液体を供給するポンプと、前記ポンプを駆動するモータとを有する駆動ユニットと、
  前記モータを制御するモータドライバユニットとを備え、
  前記駆動ユニットは、前記伸縮ユニット或いは前記バルブユニットに着脱可能とされ、
  前記バルブコントロールユニットは、前記駆動ユニットを取外した状態では、前記伸縮ユニットをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させ、前記駆動ユニットを取付た状態では、前記伸縮ユニットをアクチュエータ、セミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる
  ことを特徴とするシリンダ装置。
【背景技術】
【0002】
  従来、この種のシリンダ装置にあっては、たとえば、鉄道車両に車体の進行方向に対して左右方向の振動を抑制すべく、車体と台車との間に介装されて使用されるものが知られている。
【0003】
  このようなシリンダ装置は、鉄道車両の台車と、鉄道車両の車体下部に設けた中心ピンとの間に介装されて使用され、出力する推力で鉄道車両の進行方向に対して横方向の車体の振動を抑制でき、鉄道車両における乗心地を向上させる。
【0004】
  通常、鉄道車両は、一両のみで運行されず、複数両の鉄道車両を連結して編成列車が構成される。編成列車では、架線から電気を得るためにパンタグラフといった集電装置を搭載した鉄道車両が設けられており、また、編成によっては特別車両も設けられる。
【0005】
  編成列車中では、先頭車両、パンタグラフ付車両、最後尾車両が他の鉄道車両よりも振動が大きくなり、乗心地が悪くなる傾向にある。このような鉄道車両には、アクチュエータ機能を持つシリンダ装置(たとえば、特許文献1参照)を設けて車体を制振して乗心地の向上を図っている。また、特別料金を支払って乗車する必要がある特別車両では、普通車両との差別化のためにアクチュエータ機能を持つシリンダ装置を設ける場合がある。なお、アクチュエータ機能を持つシリンダ装置は、油圧利用のものの他、電動や空気圧を利用したものもある。
【0006】
  これに対して、編成列車中の先頭車両、パンタグラフ付車両、特別車両および最後尾車両を除く他の鉄道車両では、アクティブに振動抑制するまでの要求が少ないため、セミアクティブダンパとして機能する油圧利用のシリンダ装置(たとえば、特許文献2参照)が設置される。
【0007】
  つまり、編成列車中の全鉄道車両で同一のシリンダ装置が設置されるのではなく、鉄道車両の編成列車中の位置、用途や構造に応じて、設置されるシリンダ装置の構造も制御手法も異なる。
 
【発明を実施するための形態】
【0023】
  以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態におけるシリンダ装置1は、
図1に示すように、伸縮ユニットEと、バルブユニットVと、バルブコントロールユニットCと、駆動ユニットDと、モータドライバユニットMとを備えて構成されている。シリンダ装置1は、
図2に示すように、鉄道車両の車体Bと台車Tとの間に介装されており、発揮する力で車体Bの車両進行方向に対して水平横方向の振動を抑制する。
 
【0024】
  以下、各部について詳細に説明する。伸縮ユニットEは、
図1に示すように、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるロッド4と、タンク7と、整流通路8と、吸込通路9とを備えて構成される。
 
【0025】
  シリンダ2は筒状であって、その
図1中右端は蓋10によって閉塞され、
図1中左端には環状のロッドガイド11が取付られている。また、前記ロッドガイド11内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されている。このロッド4は、一端がシリンダ2外へ突出されており、シリンダ2内の他端がシリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3に連結されている。なお、ロッド4の外周とロッドガイド11との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ2内は密閉状態に維持されている。また、シリンダ2内は、ピストン3によってロッド4が挿通されるロッド側室5とロッド4が挿通されないピストン側室6とに区画されている。これらロッド側室5とピストン側室6は、液体として、たとえば、作動油で充満されている。
 
【0026】
  シリンダ2の外周側には、両端が前述の蓋10とロッドガイド11とに連結される外筒12が設けられている。この外筒12とシリンダ2との間には、環状隙間が設けられており、この環状隙間で液体を貯留するタンク7が形成されている。具体的には、タンク7には、液体として作動油が充填され、作動油の他に気体も充填されており、タンク7内の圧力は略大気圧とされている。また、タンク7内には、蓋10とロッドガイド11とで挟持されるパイプ13が収容されている。なお、タンク7は、シリンダ2と外筒12との間に形成されているが、他所へ設けてもよく、たとえば、ロッド側室5とピストン側室6に対して直列に配置される位置に設けられてもよい。
 
【0027】
  さらに、ピストン3には、整流通路8が設けられている。整流通路8は、ピストン側室6とロッド側室5とを連通しており、途中に逆止弁8aを備えていて、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。また、蓋10には、吸込通路9が設けられている。吸込通路9は、タンク7とピストン側室6とを連通しており、途中に逆止弁9aを備えており、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、本例では、整流通路8は、ピストン3に設けられており、吸込通路9は、蓋10に設けられているが、他所に設けてもよい。
 
【0028】
  蓋10には、一側部から他側部へ開口するとともにパイプ13内に連通される通路10aと、他側部から開口してピストン側室6へ通じる通路10bと、一側部から他側部へ開口するとともに吸込通路9の途中に接続する通路10cとが設けられている。ロッドガイド11には、ロッド側室5をパイプ13内へ連通する通路11aが設けられている。通路10aは、パイプ13を介して通路11aに通じており、ロッド側室5へ連通されている。
 
【0029】
  バルブユニットVは、本例では、蓋10の他側部(
図1中下方側部)に装着されるバルブブロック14内に設けられた第一通路15および第二通路16と、第一通路15および第二通路16のそれぞれに設けられた第一開閉弁17および第二開閉弁18と、排出通路19と、排出通路19に設けた圧力制御弁20とを備えている。
 
【0030】
  バルブユニットVについて詳細に説明する。第一通路15は、両端がバルブブロック14の
図1中上端に開口しており、バルブブロック14を蓋10に装着すると、一端がロッド側室5に通じる通路10aに、他端がピストン側室6に通じる通路10bにそれぞれ連通される。よって、第一通路15は、ロッド側室5とピストン側室6とを連通している。
 
【0031】
  第一開閉弁17は、本例では、電磁開閉弁とされており、第一通路15を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジションと、ロッド側室5とピストン側室6との連通を遮断する遮断ポジションとを備えている。そして、第一開閉弁17は、通電時に連通ポジションを採ってロッド側室5とピストン側室6とを連通し、非通電時に遮断ポジションを採って第一通路15を遮断する。
 
【0032】
  第二通路16は、両端がバルブブロック14の
図1中上端に開口しており、バルブブロック14を蓋10に装着すると、一端がピストン側室6に通じる通路10bに、他端がタンク7に通じる通路10cにそれぞれ連通される。よって、第二通路16は、ピストン側室6とタンク7とを連通している。なお、第二通路16における蓋10の通路10bに通じる部分が第一通路15の一部としても機能している。
 
【0033】
  第二開閉弁18は、本例では、電磁開閉弁とされており、第二通路16を開放してピストン側室6とタンク7とを連通する連通ポジションと、ピストン側室6とタンク7との連通を遮断する遮断ポジションとを備えている。そして、第二開閉弁18は、通電時に連通ポジションを採ってピストン側室6とタンク7とを連通し、非通電時に遮断ポジションを採って第二通路16を遮断する。
 
【0034】
  排出通路19は、両端がバルブブロック14の
図1中上端に開口しており、バルブブロック14を蓋10に装着すると、一端がロッド側室5に通じる通路10aに、他端がタンク7に通じる通路10cにそれぞれ連通される。よって、排出通路19は、ロッド側室5とタンク7とを連通している。なお、排出通路19における蓋10の通路10aに通じる部分が第一通路15の一部としても機能し、蓋10の通路10cに通じる部分が第二通路16の一部としても機能している。
 
【0035】
  圧力制御弁20は、本例では、比例電磁リリーフ弁とされており、供給する電流量に応じて開弁圧を調節でき、電流量を最大とすると開弁圧を最小とし、電流を供給しないと開弁圧を最大とするようになっている。そして、圧力制御弁20は、ロッド側室5内の圧力を開弁圧に調節でき、供給される電流量に応じてロッド側室5内の圧力を制御できる。
 
【0036】
  なお、本例では、蓋10にバルブブロック14を装着して伸縮ユニットEとバルブユニットVとを一体化しているが、ロッドガイド11に適宜通路設けて、ロッドガイド11側へバルブブロック14を装着してもよい。また、蓋10或いはロッドガイド11にバルブブロック14が一体化された構造として、伸縮ユニットEとバルブユニットVとを分離不能な構造としてもよい。さらに、バルブブロック14を蓋10とロッドガイド11の双方に装着する構造として、バルブブロック14にパイプ13の代わりに通路11aと通路10aを連通する通路を設けてパイプ13を廃止してもよい。蓋10にバルブブロック14を装着するに際しては、ボルト等による締結の他、分離不能とする場合には溶接とすればよい。
 
【0037】
  バルブコントロールユニットCは、第一開閉弁17、第二開閉弁18および圧力制御弁20を制御する。バルブコントロールユニットCは、ハードウェアとしては、第一開閉弁17、第二開閉弁18および圧力制御弁20のソレノイドを駆動する回路と、ソレノイドの電流の監視と前記回路の動作制御する処理部とで構成されている。
バルブコントロールユニットCは、伸縮ユニットE、バルブユニットVおよびバルブコントロールユニットCのみでシリンダ装置1が構成される場合、以下のように、伸縮ユニットEに発揮させる力を制御する。具体的には、バルブコントロールユニットCは、車体Bに作用する車両進行方向に対して横方向の加速度を検知して、伸縮ユニットEに発生させるべき目標力を求め、第一開閉弁17、第二開閉弁18および圧力制御弁20を制御する。なお、伸縮ユニットE、バルブユニットVおよびバルブコントロールユニットCのみでシリンダ装置1が構成される場合、
図3に示すように、蓋10における通路10aの上端開口と通路10cの上端開口は、プラグ21,22によって閉鎖すればよい。
 
【0038】
  伸縮ユニットEに
図1中左へ押す方向の力を発揮させる場合、バルブコントロールユニットCは、第一開閉弁17へ通電して開弁させ、第二開閉弁18へは通電せず閉弁させつつ、圧力制御弁20への通電量を目標力に応じて調節する。この状態では、伸縮ユニットEは、外力でピストン3が
図1中右方向へ押されて収縮すると、第二通路16が遮断されるため、作動油は、第一通路15を介して圧縮されるピストン側室6から拡大するロッド側室5へ移動する。そして、ロッド4がシリンダ2内に侵入する体積分の作動油がシリンダ2内で過剰となるため、前記体積分の作動油は、排出通路19を介してタンク7へ移動し、ロッド側室5内の圧力は圧力制御弁20の開弁圧に調節される。この場合、ロッド側室5とピストン側室6とが第一通路15によって連通されているので、ロッド側室5とピストン側室6の圧力が等圧となり、伸縮ユニットEは、ピストン3におけるロッド側室5側とピストン側室6側の受圧面積差に前記圧力を乗じた値の左向きの力を発生する。そして、この場合、ロッド側室5とピストン側室6の圧力は、圧力制御弁20で調節できるので、伸縮ユニットEが外力で収縮する際に、この収縮に対抗する力を制御できる。
 
【0039】
  伸縮ユニットE、バルブユニットVおよびバルブコントロールユニットCのみでシリンダ装置1が構成される場合であって、第一開閉弁17が開弁し、第二開閉弁18が閉弁する状態で、伸縮ユニットEが伸長すると、以下のように作動する。伸縮ユニットEが伸長すると、圧縮されるロッド側室5から第一通路15を通じて拡大するピストン側室6へ作動油が移動する。この場合、ロッド4がシリンダ2から退出するが、シリンダ2内からロッド4が退出する体積分の作動油は吸込通路9を介してタンク7から供給される。よって、第一開閉弁17が開弁し、第二開閉弁18が閉弁する状態で伸縮ユニットEが伸長する場合、ロッド側室5およびピストン側室6はタンク圧となるので、伸縮ユニットEは伸長に対しては対抗する力を発揮しない。
 
【0040】
  他方、伸縮ユニットEに
図1中右へ押す方向の力を発揮させる場合、バルブコントロールユニットCは、第一開閉弁17へは通電せず閉弁させ、第二開閉弁18へ通電して開弁させつつ、圧力制御弁20への通電量を目標力に応じて調節する。この状態では、伸縮ユニットEは、外力でピストン3が
図1中左方向へ押されて伸長すると、第一通路15が遮断されるため、作動油は、排出通路19を介して圧縮されるロッド側室5からタンク7へ移動する。また、ロッド4がシリンダ2から退出するが、シリンダ2内からロッド4が退出する体積分の作動油は吸込通路9を介してタンク7から供給される。そして、ロッド側室5内の圧力は圧力制御弁20の開弁圧に調節される。この場合、ロッド側室5内の圧力が圧力制御弁20の開弁圧と等圧となり、ピストン側室6内の圧力はタンク圧となり、伸縮ユニットEは、ピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積に前記圧力を乗じた値の右向きの力を発生する。そして、この場合、ロッド側室5の圧力は、圧力制御弁20で調節できるので、伸縮ユニットEが外力で伸長する際に、この伸長に対抗する力を制御できる。
 
【0041】
  伸縮ユニットE、バルブユニットVおよびバルブコントロールユニットCのみでシリンダ装置1が構成される場合であって、第一開閉弁17が閉弁し、第二開閉弁18が開弁する状態で、伸縮ユニットEが収縮すると、以下のように作動する。伸縮ユニットEが収縮すると、圧縮されるピストン側室6から整流通路8および第二通路16を通じてロッド側室5とタンク7へ作動油が移動する。よって、第一開閉弁17が閉弁し、第二開閉弁18が開弁する状態で伸縮ユニットEが収縮する場合、ロッド側室5およびピストン側室6はタンク圧となるので、伸縮ユニットEは収縮に対しては対抗する力を発揮しない。
 
【0042】
  なお、本例の伸縮ユニットEでは、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積をピストン側室6側の受圧面積の二分の一に設定している。よって、伸縮両側で等しい力を発生させる際に、伸長側と収縮側でロッド側室5の圧力が同じとなり、伸縮の方向によって圧力制御弁20の通電量も同じとなるので制御が簡素となる。加えて、伸縮ユニットEの変位量(ストローク量)に対して排出通路19を流れる作動油量も同じとなるので伸縮両側で応答性が同じとなる利点がある。なお、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積をピストン側室6側の受圧面積の二分の一に設定しない場合にあっても、ロッド側室5の圧力で伸縮ユニットEの伸縮両側の力を制御できる点は変わらない。
 
【0043】
  伸縮ユニットE、バルブユニットVおよびバルブコントロールユニットCのみでシリンダ装置1が構成される場合、バルブコントロールユニットCが前述のように制御すると、シリンダ装置1を所望する方向への力のみを発揮する片効きのダンパとして機能させ得る。よって、たとえば、力を発揮する方向が鉄道車両の台車Tの振動により車体Bを加振する方向である場合、そのような方向には力を出さないようにシリンダ装置1を片効きのダンパと機能させ得る。よって、このシリンダ装置1は、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現できるため、セミアクティブダンパとして機能できる。
 
【0044】
  また、バルブコントロールユニットCが第一開閉弁17、第二開閉弁18へ通電しない場合、伸縮ユニットEは伸縮すると必ずシリンダ2から作動油が排出通路19を介してタンク7へ排出される。よって、この場合、圧力制御弁20への通電量を調節可能な場合には、シリンダ装置1を可変減衰ダンパとして機能させられる。さらに、バルブコントロールユニットCが第一開閉弁17、第二開閉弁18および圧力制御弁20へ通電できないフェール時には、圧力制御弁20の開弁圧が最大となり、シリンダ装置1はパッシブダンパとして機能する。
 
【0045】
  なお、圧力制御弁20を与える電流量で開弁圧を比例的に変化させる比例電磁リリーフ弁とすると、開弁圧の制御が簡単となるが、圧力制御弁20は、比例電磁リリーフ弁に限定されない。
 
【0046】
  つづいて、駆動ユニットDについて説明する。駆動ユニットDは、本例では、蓋10の一側部(
図1中上方側部)に装着されるブロック23内に設けられた供給通路24と、供給通路24に設けたポンプ25と、ブロック23によって支持されるモータ26とを備えている。
 
【0047】
  駆動ユニットDについて詳細に説明する。供給通路24は、両端がブロック23の
図1中下端に開口しており、ブロック23を蓋10に装着すると、一端がロッド側室5に通じる通路10aに、他端がタンク7に通じる通路10cにそれぞれ連通される。よって、供給通路24は、ロッド側室5とタンク7とを連通している。
 
【0048】
  ポンプ25は、モータ26によって駆動されるようになっており、本例では、一方向のみに作動油を吐出するポンプとされており、吐出口が供給通路24によってロッド側室5へ連通され、吸込口がタンク7に通じている。よって、モータ26によって駆動されると、タンク7から作動油を吸込んでロッド側室5へ供給する。モータ26は、モータドライバユニットMから電流供給を受けて回転駆動されるようになっている。前述のようにポンプ25は、一方向のみに作動油を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量が変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用することができる。さらに、ポンプ25の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ25を駆動する駆動源であるモータ26にあっても回転方向の切換が不要であるから、回転方向切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ26も安価なものを使用できる。
 
【0049】
  なお、供給通路24のポンプ25より下流には、ロッド側室5からポンプ25への作動油の逆流を阻止する逆止弁27と作動油を濾過して作動油中から異物を取り除くストレーナ28とが設けられている。
 
【0050】
  なお、本例では、蓋10に螺子孔10dが、ブロック23の螺子孔10dに符合する位置に透孔23aがそれぞれ設けられ、透孔23aに挿通されて螺子孔10dに螺着されるボルト29を利用して、駆動ユニットDが伸縮ユニットEに着脱自在に取付られる。よって、本例では、駆動ユニットDの取付部Aは、蓋10の側部(
図1中上端部)となっている。なお、ロッドガイド11に適宜通路設けて、駆動ユニットDをロッドガイド11へ着脱自在に取付てもよい。また、本例では、駆動ユニットDを伸縮ユニットEに取付ているが、バルブブロック14に適宜通路を設けてバルブユニットVに駆動ユニットDを着脱自在に取付てもよい。
 
【0051】
  モータドライバユニットMは、モータ26を所定の一定回転速度で駆動するようモータ26に流れる電流を制御する。具体的には、モータドライバユニットMは、インバータ等のモータ26を駆動する回路を備えていて、モータ26の回転速度を監視して、当該回転速度が前記の所定の回転速度となるようにモータ26をフィードバック制御により駆動する。また、本例では、モータドライバユニットMは、バルブコントロールユニットCからモータ駆動指令を受け取ると、モータ26を駆動するようになっている。よって、本例では、モータドライバユニットMは、モータ26を駆動するか否かについて、バルブコントロールユニットCの支配下にあるが、モータ26の駆動制御そのものについては、自立している。なお、バルブコントロールユニットCにおけるモータ駆動指令を出力する機能については、オンオフの選択が可能とされており、伸縮ユニットE、バルブユニットVおよびバルブコントロールユニットCのみでシリンダ装置1が構成される場合、この機能を切ればよい。
 
【0052】
  また、モータドライバユニットMは、ハードウェアとしては、インバータ回路と、インバータ回路の動作を制御する処理部とで構成されており、バルブコントロールユニットCと同一基板上に設けられてもよい。
 
【0053】
  そして、
図1に示すように、伸縮ユニットE、バルブユニットV、バルブコントロールユニットC、駆動ユニットDおよびモータドライバユニットMの全てでシリンダ装置1が構成される場合、以下のように、伸縮ユニットEに発揮させる力を制御する。具体的には、バルブコントロールユニットCは、車体Bに作用する車両進行方向に対して横方向の加速度を検知して、伸縮ユニットEに発生させるべき目標力を求め、第一開閉弁17、第二開閉弁18および圧力制御弁20を制御する。また、バルブコントロールユニットCは、モータドライバユニットMへモータ駆動指令を与えてあり、モータドライバユニットMは、モータ26を所定の回転速度で等速回転させる。
 
【0054】
  伸縮ユニットEに
図1中左へ押す方向の力を発揮させる場合、バルブコントロールユニットCは、第一開閉弁17へ通電して開弁させ、第二開閉弁18へは通電せず閉弁させつつ、圧力制御弁20への通電量を目標力に応じて調節する。この状態では、ポンプ25からロッド側室5へ作動油が供給されている状態であり、第二通路16が遮断されており、第一通路15がロッド側室5とピストン側室6とを連通する。シリンダ2にポンプ25から作動油が供給され、ロッド側室5とピストン側室6の圧力が圧力制御弁20の開弁圧に調節されるため、伸縮ユニットEは、ピストン3のロッド側室5側とピストン側室6側の受圧面積差に前記圧力を乗じた値の左向きの力を発生する。そして、ロッド側室5とピストン側室6の圧力は、圧力制御弁20で調節できるので、伸縮ユニットEに自ら伸長する方向の力を発揮させる。また、この力を制御できる。この場合、ポンプ25からロッド側室5とピストン側室6へ作動油が供給されるため、ポンプ25の吐出流量がロッド4のシリンダ2から退出する体積変化量を上回っている状況では、伸縮ユニットEが外力で伸長しても、伸縮ユニットEは、左向きの力を発揮できる。よって、シリンダ装置1は、外力で伸縮しても左向きの力を発揮し得る。
 
【0055】
  他方、伸縮ユニットEに
図1中右へ押す方向の力を発揮させる場合、バルブコントロールユニットCは、第一開閉弁17へは通電せず閉弁させ、第二開閉弁18へ通電して開弁させつつ、圧力制御弁20への通電量を目標力に応じて調節する。この状態では、ポンプ25からロッド側室5へ作動油が供給されている状態であり、第一通路15が遮断されており、第二通路16がピストン側室6とタンク7とを連通する。ロッド側室5にポンプ25から作動油が供給され、ロッド側室5の圧力が圧力制御弁20の開弁圧に調節され、ピストン側室6の圧力がタンク圧となり、伸縮ユニットEは、ロッド側室5の圧力にピストン3のロッド側室5側の受圧面積を乗じた値の右向きの力を発生する。そして、ロッド側室5の圧力は、圧力制御弁20で調節できるので、伸縮ユニットEに自ら収縮する方向の力を発揮させる。また、この力を制御できる。この場合、ポンプ25からロッド側室5へ作動油が供給されるため、ポンプ25の吐出流量がロッド4のシリンダ2へ侵入する体積変化量を上回っている状況では、伸縮ユニットEが外力で収縮しても、伸縮ユニットEは、右向きの力を発揮できる。よって、シリンダ装置1は、外力で伸縮しても右向きの力を発揮し得る。
 
【0056】
  全ユニットE,V,C,D,Mの全てでシリンダ装置1が構成される場合、バルブコントロールユニットCとモータドライバユニットMが前述のように制御すると、シリンダ装置1をアクチュエータとして機能させ得る。なお、ポンプ25を停止させた状態では、駆動ユニットDを取外した状態と同様となるので、前述したようにシリンダ装置1をセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとしても機能させ得る。
 
【0057】
  本発明のシリンダ装置1では、前述したように、駆動ユニットDが伸縮ユニットEとバルブユニットVのいずれかに対して着脱可能であって、バルブユニットVがバルブコントロールユニットCに制御され、駆動ユニットDにおけるモータ26がモータドライバユニットMに制御される。或いは、本発明のシリンダ装置1は、伸縮ユニットEとバルブユニットVのいずれかが駆動ユニットDを着脱自在に取付可能な取付部Aを有しており、バルブユニットVがバルブコントロールユニットCに制御される。このようにシリンダ装置1が構成されると、アクチュエータとして機能できるだけでなく、駆動ユニットDを取外し、モータドライバユニットMを設けない状態では、セミアクティブダンパとして機能できる。
 
【0058】
  よって、編成列車を構成する鉄道車両にシリンダ装置1を適用するにあたって、シリンダ装置1でアクティブに制振する必要があってアクチュエータとしての機能の発揮が期待される鉄道車両については、全ユニットE,V,C,D,Mの全てを装着して搭載すればよい。また、編成列車中で、アクティブに制振する必要までは求められていない鉄道車両については、駆動ユニットDおよびモータドライバユニットMを取外した状態のシリンダ装置1を搭載すればよい。つまり、編成列車を構成する鉄道車両にシリンダ装置1を適用するにあたって、アクティブに制振する必要があってアクチュエータとしての機能の発揮が期待される鉄道車両であるか、アクティブに制振する必要までは求められていない鉄道車両であるかに応じて、適するようにシリンダ装置1が搭載すべきユニットを選択すればよい。
 
【0059】
  以上から理解できるように、編成列車中の鉄道車両に搭載されるシリンダ装置1は、全ユニットE,V,C,D,Mを備えた状態であるか、駆動ユニットDおよびモータドライバユニットMを取外した状態のいずれかである。鉄道車両への搭載にあたって、伸縮ユニットEが同一であるので、鉄道車両側における取付構造を違える必要はなく、また、バルブコントロールユニットCが同一であるので、制御についても煩雑とならない。さらに、駆動ユニットDおよびモータドライバユニットMの有無の違いだけで、ユニットE,V,Cは、共通部品で構成されるから、メンテナンス作業も簡素になる。
 
【0060】
  よって、本発明のシリンダ装置1によれば、車両設計およびメンテナンスにおけるコストを低減でき、かつ、制御上の煩雑さも解消できるのである。
 
【0061】
  また、本例のシリンダ装置1では、バルブコントロールユニットCが駆動ユニットDを取外した状態では、伸縮ユニットEをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させ、駆動ユニットDを取付た状態では、伸縮ユニットEをアクチュエータ、セミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させるようになっている。このように構成されたシリンダ装置1では、編成列車を構成する各鉄道車両のうちアクチュエータ機能の要否で、駆動ユニットDの有無を決定して、鉄道車両へ搭載すればよく、バルブコントロールユニットCにおける制御も共通化でき、駆動ユニットDの有無により制御を切換える必要もなくなる。
 
【0062】
  さらに、本例のシリンダ装置1では、モータドライバユニットMがバルブコントロールユニットCからモータ駆動指令を受け取るとモータ26を駆動するようになっているので、モータ26の駆動が不要な状況ではモータ26を停止させ得る。よって、本例のシリンダ装置1によれば、アクチュエータ機能が必要なときにのみモータ26を駆動させ得るので、消費電力を低減できる。
 
【0063】
  また、本例のシリンダ装置1では、モータドライバユニットMがモータ26を駆動する際、モータ26を一定の回転速度で駆動するので、モータドライバユニットMは、モータ26の制御にあたって、バルブコントロールユニットCによる各弁17,18,20の制御に影響を殆ど受けない。そして、モータドライバユニットMの搭載の有無にかかわらず、バルブコントロールユニットC側でも制御上でモータドライバユニットMの影響を殆ど受けない。よって、モータドライバユニットMの搭載の有無で、バルブコントロールユニットCにおける制御を違える必要がなく、また、モータドライバユニットMにおける制御も違える必要がないので、モータドライバユニットMの取付および取外し作業にあたって、制御上で連携させる必要が無くなり、作業が非常に簡素となる。
 
【0064】
  さらに、本例のシリンダ装置1では、バルブコントロールユニットCとモータドライバユニットMは、回路上、互いに独立しているので、モータドライバユニットMの取付および取外し作業が非常に容易である。なお、バルブコントロールユニットCとモータドライバユニットMを同一の筐体に収容して鉄道車両へ搭載してもよいし、別々の筐体にそれぞれ収容して鉄道車両へ搭載してもよい。
 
【0065】
  以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。