特許第6817801号(P6817801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6817801発光素子の制御装置、および発光素子の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817801
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】発光素子の制御装置、および発光素子の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20210107BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20210107BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20210107BHJP
   G01N 21/61 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
   G01N21/01 D
   H05B3/10 B
   H05B3/00 310C
   !G01N21/61
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-238493(P2016-238493)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-96705(P2018-96705A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 賢志
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−132739(JP,A)
【文献】 特開2012−059706(JP,A)
【文献】 特開2014−240786(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0115833(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0262230(US,A1)
【文献】 特開2008−087291(JP,A)
【文献】 特開2012−103683(JP,A)
【文献】 特開2013−042099(JP,A)
【文献】 特開2015−103503(JP,A)
【文献】 特開2015−126189(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103185236(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01J 1/00− 1/60
G01J 5/00− 5/62
H05B 1/00− 3/86
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの基板に複数の発光素子ユニットが互いに接触せずに配置されている発光素子であって、前記発光素子ユニットそれぞれが蓄熱層と発熱抵抗体を備える発光素子と、
複数の前記発光素子ユニットのうち1つの前記発光素子ユニットを発光させているときに残りの前記発光素子ユニットを発光させないように、複数の前記発光素子ユニットのうちの1つを逐次発光させるように制御する制御部と、
を備え
前記発光素子は、
基板と、
前記基板の一方の面側に接して設けられたN個(ただしNは2以上の整数)の蓄熱層であって、N個の前記蓄熱層それぞれは、前記基板の一方の面側に互いに接触せずに設けられた蓄熱層と、
前記蓄熱層の面のうち、前記基板と接する面とは異なる面側に接して設けられたN個の発熱抵抗体であって、N個の前記発熱抵抗体それぞれは、N個の前記蓄熱層それぞれの前記基板と接する面とは異なる面側それぞれに設けられている発熱抵抗体と、
を備える発光素子の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の前記発光素子ユニットが発光する波長が所定の波長になるように、複数の前記発光素子ユニットそれぞれを駆動する、請求項1に記載の発光素子の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記発光素子ユニットそれぞれが発光する波長それぞれが所定の波長になるように、複数の前記発光素子ユニットそれぞれを駆動する、請求項1に記載の発光素子の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の前記発光素子ユニットそれぞれが発光する波長に応じて、複数の前記発光素子ユニットそれぞれの発光タイミングを制御する、請求項3に記載の発光素子の制御装置。
【請求項5】
前記発光素子は、自素子に関する温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記温度検出部が検出した温度に基づいて、複数の前記発光素子ユニットそれぞれを駆動する、請求項4に記載の発光素子の制御装置。
【請求項6】
基板と、前記基板の一方の面側に接して設けられた蓄熱層と、前記蓄熱層の面のうち、前記基板と接する面とは異なる面側に接して設けられた発熱抵抗体と、自素子に関する温度を検出する温度検出部と、を備える発光素子と、
前記温度検出部が検出した温度に基づいて、前記発光素子を駆動する制御部と、
を備え
前記蓄熱層は、前記基板の一方の面側に接して設けられたN個(ただしNは2以上の整数)の蓄熱層であって、N個の前記蓄熱層それぞれは、前記基板の一方の面側に互いに接触せずに設けられ、
前記発熱抵抗体は、前記蓄熱層の面のうち、前記基板と接する面とは異なる面側に接して設けられたN個の発熱抵抗体であって、N個の前記発熱抵抗体それぞれは、N個の前記蓄熱層それぞれの前記基板と接する面とは異なる面側それぞれに設けられている、
発光素子の制御装置。
【請求項7】
1つの基板に複数の発光素子ユニットが互いに接触せずに配置されている発光素子であって、前記発光素子は、基板と、蓄熱層と、発熱抵抗体とを備え、前記蓄熱層は、前記基板の一方の面側に接して設けられたN個(ただしNは2以上の整数)の蓄熱層であって、N個の前記蓄熱層それぞれは、前記基板の一方の面側に互いに接触せずに設けられ、前記発熱抵抗体は、前記蓄熱層の面のうち、前記基板と接する面とは異なる面側に接して設けられたN個の発熱抵抗体であって、N個の前記発熱抵抗体それぞれは、N個の前記蓄熱層それぞれの前記基板と接する面とは異なる面側それぞれに設けられ、前記発光素子ユニットそれぞれが前記蓄熱層と前記発熱抵抗体を備える前記発光素子の発光状態を制御する制御方法であって、
制御部が、複数の前記発光素子ユニットのうち1つの前記発光素子ユニットを発光させているときに残りの前記発光素子ユニットを発光させないように、複数の前記発光素子ユニットのうちの1つを逐次発光させるように制御する手順、
を含む発光素子の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の制御装置、および発光素子の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非分散型赤外線分析式(NDIR式)ガス検知器では、赤外線を放射する光源を用いて測定対象ガスに含まれる特定ガスを検知する。このようなガス検知器では、多くのガスそれぞれが固有の赤外線波長を吸収する性質を利用して、試料ガスに赤外線を放射した時、どの波長がどれくらい吸収されたかを調べて、試料ガス中の成分と濃度を測る。また、このようなガス検知器では、機械式光チョッピングによりチョッピング周波数に応じた光を同期検波することでSN(信号対ノイズ)比を上げ、外部環境ノイズの影響を低減している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、機械式光チョッピングの代わりに、赤外線発光素子への注入電流のオン状態とオフ状態を切り替えて測定する。このような機械式光チョッピングを用いない赤外線発光素子として、薄いダイヤフラム上へ発熱抵抗部を形成し、この発熱抵抗部を加熱して得られる輻射熱により赤外線を発する素子が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−164550号公報
【特許文献2】特開2016−045080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、熱絶縁構造による放熱のし難さがあり、ダイヤフラム周辺部からの放熱に依存するため、面内温度分布が生じて温度ドリフトが発生するという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、温度ドリフトを低減することができる発光素子の制御装置、および発光素子の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る発光素子の制御装置(2,2A,2B)は、1つの基板(11)に複数の発光素子ユニット(10a〜10d)が互いに接触せずに配置されている発光素子であって、前記発光素子ユニットそれぞれが蓄熱層(12)と発熱抵抗体(13)を備える発光素子(1C)と、複数の前記発光素子ユニットのうち1つの前記発光素子ユニットを発光させているときに残りの前記発光素子ユニットを発光させないように、複数の前記発光素子ユニットのうちの1つを逐次発光させるように制御する制御部(クロック生成部21,21A,21B、温度制御部23,23A,23B、電源部24、スイッチ部25)と、を備え、前記発光素子(1C)は、基板(11)と、前記基板の一方の面側に接して設けられたN個(ただしNは2以上の整数)の蓄熱層であって、N個の前記蓄熱層それぞれは、前記基板の一方の面側に互いに接触せずに設けられた蓄熱層と、前記蓄熱層の面のうち、前記基板と接する面とは異なる面側に接して設けられたN個の発熱抵抗体であって、N個の前記発熱抵抗体それぞれは、N個の前記蓄熱層それぞれの前記基板と接する面とは異なる面側それぞれに設けられている発熱抵抗体と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る発光素子の制御装置(2,2A,2B)において、前記制御部(クロック生成部21,21A,21B、温度制御部23,23A,23B、電源部24、スイッチ部25)は、複数の前記発光素子ユニット(10a〜10d)が発光する波長が所定の波長になるように、複数の前記発光素子ユニットそれぞれを駆動するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る発光素子の制御装置(2,2A,2B)において、前記制御部(クロック生成部21,21A,21B、温度制御部23,23A,23B、電源部24、スイッチ部25)は、複数の前記発光素子ユニット(10a〜10d)それぞれが発光する波長それぞれが所定の波長になるように、複数の前記発光素子ユニットそれぞれを駆動するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る発光素子の制御装置(2,2A,2B)において、前記制御部(クロック生成部21,21A,21B、温度制御部23,23A,23B、電源部24、スイッチ部25)は、複数の前記発光素子ユニット(10a〜10d)それぞれが発光する波長に応じて、複数の前記発光素子ユニットそれぞれの発光タイミングを制御するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様に係る発光素子の制御装置(2,2A,2B)において、前記発光素子(1C)は、自素子に関する温度を検出する温度検出部(18)を備え、前記制御部(クロック生成部21,21A,21B、温度制御部23,23A,23B、電源部24、スイッチ部25)は、前記温度検出部が検出した温度に基づいて、複数の前記発光素子ユニット(10a〜10d)それぞれを駆動するようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る発光素子の制御装置(2B)は、基板(11)と、前記基板の一方の面側に接して設けられた蓄熱層(12)と、前記蓄熱層の面のうち、前記基板と接する面とは異なる面側に接して設けられた発熱抵抗体(13)と、自素子に関する温度を検出する温度検出部(18)と、を備える発光素子(1,1A,1B)と、前記温度検出部が検出した温度に基づいて、前記発光素子を駆動する制御部(クロック生成部21B、温度制御部23B、電源部24)と、を備え、前記蓄熱層は、前記基板の一方の面側に接して設けられたN個(ただしNは2以上の整数)の蓄熱層であって、N個の前記蓄熱層それぞれは、前記基板の一方の面側に互いに接触せずに設けられ、前記発熱抵抗体は、前記蓄熱層の面のうち、前記基板と接する面とは異なる面側に接して設けられたN個の発熱抵抗体であって、N個の前記発熱抵抗体それぞれは、N個の前記蓄熱層それぞれの前記基板と接する面とは異なる面側それぞれに設けられている
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る発光素子の制御方法は、1つの基板(11)に複数の発光素子ユニット(10a〜10d)が互いに接触せずに配置されている発光素子(1C)であって、前記発光素子は、基板と、蓄熱層と、発熱抵抗体とを備え、前記蓄熱層は、前記基板の一方の面側に接して設けられたN個(ただしNは2以上の整数)の蓄熱層であって、N個の前記蓄熱層それぞれは、前記基板の一方の面側に互いに接触せずに設けられ、前記発熱抵抗体は、前記蓄熱層の面のうち、前記基板と接する面とは異なる面側に接して設けられたN個の発熱抵抗体であって、N個の前記発熱抵抗体それぞれは、N個の前記蓄熱層それぞれの前記基板と接する面とは異なる面側それぞれに設けられ、前記発光素子ユニットそれぞれが前記蓄熱層と前記発熱抵抗体を備える前記発光素子の発光状態を制御する制御方法であって、制御部が、複数の前記発光素子ユニットのうち1つの前記発光素子ユニットを発光させているときに残りの前記発光素子ユニットを発光させないように、複数の前記発光素子ユニットのうちの1つを逐次発光させるように制御する手順、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造時の破損を低減でき熱応力により破損を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る発光素子の構成例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る発熱抵抗体と配線とが一体に形成されている発光素子の構成例を示す図である。
図3】第2実施形態に係る発光素子の構成例を示す図である。
図4】蓄熱層の上面に発熱抵抗体を形成した発光素子を連続使用した場合のドリフトの例を示す図である。
図5】第3実施形態に係る発光素子の構成例を示す図である。
図6】第3実施形態に係る発光素子の制御装置の構成例を示すブロック図である。
図7】第3実施形態に係る発光素子の制御装置のタイミングチャートを示す図である。
図8図7のように発光素子を駆動したときの蓄熱層の温度の例を示す図である。
図9】第3実施形態に係る変形例の発光素子の制御装置の構成例を示すブロック図である。
図10】第3実施形態に係る変形例の発光素子の制御装置のタイミングチャートを示す図である。
図11図10のように発光素子を駆動したときの基板の温度の例を示す図である。
図12】第4実施形態に係る発光素子の構成例を示す図である。
図13】第4実施形態に係る発光素子の他の構成例を示す図である。
図14】第4実施形態に係る発光素子の制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る発光素子1の構成例を示す図である。図1(A)は、本実施形態に係る発光素子1の上面図である。図1(B)は、本実施形態に係る発光素子1の図1(A)のA−A’における断面図である。
【0019】
図1(A)および図1(B)に示すように、発光素子1は、基板11、蓄熱層12、発熱抵抗体13、配線14a、配線14b、パッド15a、パッド15b、および保護膜16を備える。
蓄熱層12は、基板11の上面に形成されている。発熱抵抗体13は、蓄熱層12の面のうち、基板11と接する面とは異なる面側であるの上面に接して形成されている。配線14aおよび配線14bは、発熱抵抗体13の例えば両端に接続されて形成されている。パッド15aには、配線14aが接続されている。パッド15bには、配線14bが接続されている。保護膜16は、蓄熱層12、発熱抵抗体13、配線14a、および配線14bを覆い、発熱抵抗体13、配線14a、および配線14bの上面(発熱抵抗体13の面のうち、蓄熱層12と接する面とは異なる面側)に接して形成されている。
【0020】
基板11は、例えばAl(アルミナ)、P(五酸化二リン)とCeO(酸化セリウム)を主成分とするリン酸塩系ガラス、Si(ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、セラミック等の材料によって形成されている。
蓄熱層12は、ガラス粉末を焼成したものであり、例えばSiO(二酸化ケイ素)、SiON(窒化酸化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)等の材料によって形成されている。また、蓄熱層12の熱伝導率は、少なくとも基板11より低い。
【0021】
発熱抵抗体13は、基板と熱膨張係数の近い材料であり、例えばTaN(窒化タンタル)、TaSiO(一酸化ケイ素タンタル)、TaSiNO(酸化窒化ケイ素タンタル)、TaSiC(炭化ケイ素タンタル)、TiSiCO、NbSiO(酸化ケイ素ニオブ)、ポリシリコン、TaSiO(二酸化ケイ素タンタル)、TiON(窒化酸化チタン)、酸化ルテニウム、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、NiCr(ニッケルクロム)、Pt(白金)、アモルファスシリコンの少なくとも1つの材料によって形成されている。
【0022】
配線14a、配線14bは、例えばAu(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Cr(クロム)、Al−Si(シリコン含有アルミ合金)、Ni(ニッケル)、Ptなどの金属材料によって形成されている。配線14a、配線14bは、例えばスパッタリング、スクリーン印刷によって形成される。また、膜厚は、例えば0.1μm〜2.0μmである。
パッド15a、パッド15bは、例えばAl−Si、Al−Si−Cu(シリコン、銅含有アルミ)、や積層膜(例えばAu/Cr、Au/Ni/Cr)Cuなどの金属材料によって形成されている。
【0023】
保護膜16は、ガラス粉末を焼成したものであり、例えばSiO(窒化ケイ素)、SiN、SiON、SiAlON(サイアロン;Si−Al)、SiO、TaO(酸化タンタル)、ダイヤモンドライクカーボンなどの金属材料によって形成されている。また、膜厚は、例えば4μm〜20μmである。
【0024】
発光素子1は、配線14a、配線14bに電流を流すか電圧を印加することで、発熱抵抗体13が発熱する。そして、発光素子1は、発熱によるジュール熱によって発熱抵抗体13から熱輻射によって、例えばピーク波長が3μm以上の赤外線、またはピーク波長が10μm以上の遠赤外線を放射する。
【0025】
図1に示した構成のように、本実施形態の発光素子1は、基板11上へ蓄熱層12と発熱抵抗体13とを形成したので、従来のように薄いダイヤフラムが不要である。このため、本実施形態によれば、製造時に薄いダイヤフラムが破損したり、発熱時にダイヤフラム面内の急激な熱分布の片寄りにより熱応力によって破損することがない。この結果、本実施形態によれば、製造時の破損を低減でき熱応力により破損を低減することができる。また、上述したように、本実施形態の発光素子1は、この構成によって、セラミックの基板11上に形成されている発熱抵抗体13を赤外線または遠赤外線の発光に用いることができる。
【0026】
なお、発熱抵抗体13と、配線14a、配線14bとは図2に示すように一体に形成されていてもよい。図2は、本実施形態に係る発熱抵抗体と配線とが一体に形成されている発光素子1Aの構成例を示す図である。なお、図2では、保護膜16(図1)を省略して示しているが、図1と同様に、発熱抵抗体13の上面に保護膜16が形成されている。
【0027】
<第2実施形態>
図3は、本実施形態に係る発光素子1Bの構成例を示す図である。図3(A)は、本実施形態に係る発光素子1Bの上面図である。図3(B)は、本実施形態に係る発光素子1の図3(A)のA−A’における断面図である。
【0028】
図3(A)および図3(B)に示すように、発光素子1は、基板11、蓄熱層12、発熱抵抗体13、配線14a、配線14b、パッド15a、パッド15b、保護膜16、赤外線放射層17(放射層)を備える。すなわち、本実施形態の発光素子1Bは、第1実施形態で説明した発光素子1(または発光素子1A)の保護膜16の上面(保護膜16の面のうち、発熱抵抗体13と接する面とは異なる面側)に、さらに赤外線放射層17が接して形成されている。
【0029】
赤外線放射層17は、輻射率が例えば0.9以上の高輻射層であり、例えば黒体(プラチナブラック等)、炭素材料、カーボンナノファイバーなどによって形成されている。
なお、他の構成の材料は、第1実施形態の発光素子1と同様である。
【0030】
図3に示した構成により、本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、発熱抵抗体13の上面に形成した赤外線放射層17の黒体輻射のスペクトルに近いスペクトルで放射を行うことができる。換言すると、第1実施形態の発光素子1の構成と比較して、放射される赤外線の強度をさらに強くすることができる。
【0031】
<第3実施形態>
第1実施形態、第2実施形態では、蓄熱層12の上面に発熱抵抗体13を形成する例を説明した。このように発光素子を形成した場合、使用環境や使用状態によっては、蓄熱層12に熱が蓄積され、定常時の温度が徐々にドリフトする場合もあり得る。
【0032】
図4は、蓄熱層12の上面に発熱抵抗体13を形成した発光素子を連続使用した場合のドリフトの例を示す図である。図4において、横軸は時刻、縦軸は温度を表す。また、図4は、発光を五回連続で行った場合の例である。
図4に示すように、一回目の発光の蓄熱層12の温度はT1であり、二回目の発光の蓄熱層12の温度はT1より高いT2である。また、三回目の発光の蓄熱層12の温度はT2より高いT3であり、四回目の発光の蓄熱層12の温度はT3より高いT4である。また、五回目の発光の蓄熱層12の温度はT4より高いT5である。
【0033】
このように、発光を連続で行った場合、蓄熱層12の熱が蓄積され、ドリフトにより温度が上昇していく場合もあり得る。
このため、本実施形態では、基板上に複数の発光素子ユニットを形成し、この複数の発光素子ユニットを制御部が交互に発光させることで、ドリフトの影響を低減する。
【0034】
まず、発光素子の構成例を説明する。
図5は、本実施形態に係る発光素子1Cの構成例を示す図である。
図5に示すように、本実施形態の発光素子1Cは、4つの発光素子ユニット10a〜10dを備えている。発光素子ユニット10a〜10dそれぞれは、発光素子1と同様に、基板11、蓄熱層12、発熱抵抗体13、配線14a、配線14b、パッド15a、パッド15b、および保護膜16を備える。以下の説明において、発光素子ユニット10a〜10dのうちの1つを特定しない場合は、発光素子ユニット10という。また、図5に示すように、発光素子ユニット10それぞれは互いに接触せずに形成されている。
【0035】
次に、発光素子を制御する回路の一例を説明する。
図6は、本実施形態に係る発光素子の制御装置2の構成例を示すブロック図である。図6に示すように、発光素子の制御装置2は、クロック生成部21、操作部22、温度制御部23、電源部24、スイッチ部25、発光素子1C、受光素子26、およびロックインアンプ27を備える。
【0036】
発光素子の制御装置2は、例えばピーク波長が3μm以上の赤外線やピーク波長が10μm以上の遠赤外線を放射し、気化しているガスの成分を分光により検出する。
【0037】
クロック生成部21は、所定の周波数のクロック信号CLKを生成し、生成したクロック信号をスイッチ部25とロックインアンプ27に出力する。
操作部22は、例えば機械式スイッチ、タッチパネルセンサー等である。操作部22は、利用者が操作した操作結果を検出し、検出した操作結果を温度制御部23に出力する。例えば、利用者は、検体の検査を開始するとき、操作部22を操作する。
【0038】
温度制御部23は、操作部22が出力する操作結果に応じて、所定の期間、電源部24から発光素子1Cの蓄熱層12の温度がTaとなる電圧値V1を出力する指示である制御信号を電源部24へ出力する。なお、温度制御部23が制御する温度のターゲットは、検出したい物質の波長に応じた温度である。
電源部24は、温度制御部23が制御信号を出力している期間、スイッチ部25へ電圧値がV1の電力を供給する。
【0039】
スイッチ部25は、SW251〜SW254を備える。SW251は、電源部24が電圧値V1の電圧Vaを出力している期間において、クロック生成部21が出力するクロック信号CLKの1つ目のタイミング、5つ目のタイミング、・・・、{1+4n(nは1以上の整数)}つ目のタイミングで、電圧値がV1の電圧Vaを発光素子ユニット10aに供給する。SW252は、電源部24が電圧値V1の電圧Vbを出力している期間において、クロック信号CLKの2つ目のタイミング、6つ目のタイミング、・・・、(2+4n)つ目のタイミングで、電圧値がV1の電圧Vbを発光素子ユニット10bに供給する。SW253は、電源部24が電圧値V1の電圧Vcを出力している期間において、クロック信号CLKの3つ目のタイミング、7つ目のタイミング、・・・、(3+4n)つ目のタイミングで、電圧値がV1の電圧Vcを発光素子ユニット10cに供給する。SW254は、電源部24が電圧値V1の電圧Vcを出力している期間において、クロック信号CLKの4つ目のタイミング、8つ目のタイミング、・・・、(4+4n)つ目のタイミングで、電圧値がV1の電圧Vdを発光素子ユニット10dに供給する。
【0040】
発光素子1Cは、図5に示したように4つの発光素子ユニット10a〜10dを備える赤外線を放射する素子である。発光素子ユニット10aは、SW251が出力した電圧Vaによって駆動され、赤外線を放射する。発光素子ユニット10bは、SW252が出力した電圧Vbによって駆動され、赤外線を放射する。発光素子ユニット10cは、SW253が出力した電圧Vcによって駆動され、赤外線を放射する。発光素子ユニット10dは、SW254が出力した電圧Vdによって駆動され、赤外線を放射する。
【0041】
受光素子26は、発光素子1Cが放射する帯域の波長を受光することができる素子である。受光素子26は、受光した光を電気信号に変換して、変換した電気信号をロックインアンプ27に出力する。
【0042】
ロックインアンプ27は、掛算部とLPF(ローパスフィルタ)部を備える。ロックインアンプ27は、ヘテロダイン技術を用いて、参照信号と周波数が等しい電気信号を検出する。ここで、参照信号は、クロック生成部21が出力したクロック信号CLKである。また、測定信号は、受光素子26が出力した電気信号である。具体的には、ロックインアンプ27は、参照信号と測定信号とを掛算した後、LPF処理を行う。これにより、ロックインアンプ27は、測定信号に含まれる各種の信号のうち、参照信号の周波数と等しい成分のみを直流成分として、LPFを通過した信号のみを出力する。なお、LPFのカットオフ周波数は、検出する周波数に応じて予め設定されている。また、出力先は、例えば画像表示装置、印刷装置等である。
【0043】
発光素子の制御装置2の動作例を説明する。
図7は、本実施形態に係る発光素子の制御装置2のタイミングチャートを示す図である。図7において、横軸は時刻、波形g1〜g6の縦軸は各信号のレベル、波形g7〜g10の縦軸は温度を表す。また、波形g1は制御信号、波形g2はクロック信号CLK、波形g3は電圧Va、波形g4は電圧Vb、波形g5は電圧Vc、波形g6は電圧Vdを表す。また、波形g7は発光素子ユニット10aの蓄熱層12の温度上昇、波形g8は発光素子ユニット10bの蓄熱層12の温度上昇、波形g9は発光素子ユニット10cの蓄熱層12の温度上昇、波形g10は発光素子ユニット10dの蓄熱層12の温度上昇を表す。
【0044】
クロック生成部21は、波形g2に示すように生成したクロック信号CLKをスイッチ部25へ出力する。
時刻t1のとき、温度制御部23は、波形g1に示すように電源部24が出力する電圧値がTaとなる制御信号を出力開始する。
【0045】
制御信号が出力開始された後のクロック信号CLKの1つ目の立ち上がりの時刻t2のとき、SW251は、波形g3に示すように電圧値がV1の電圧Vaを発光素子ユニット10aへ出力を開始する。SW251は、クロック信号CLKがHレベルの時刻t2〜t3の期間、電圧値がV1の出力を継続する。発光素子ユニット10aは、電圧Vaの電圧値がV1である時刻t2〜t3の期間、放射を行う。これにより、波形g7に示すように発光素子ユニット10aの蓄熱層12(図5)の温度が放射により上昇し、蓄熱層12の温度が例えばTaに達し、電圧Vaの出力が所定の値以下に変化した後の時刻t3以降、徐々に温度が低下していく。
【0046】
制御信号が出力開始された後のクロック信号CLKの2つ目の立ち上がりの時刻t4のとき、SW252は、波形g4に示すように電圧値がV1の電圧Vbを発光素子ユニット10bへ出力を開始する。SW252は、クロック信号CLKがHレベルの時刻t4〜t5の期間、電圧値がV1の電圧Vbの出力を継続する。発光素子ユニット10bは、電圧Vbの電圧値がV1である時刻t4〜t5の期間、放射を行う。これにより、波形g8に示すように発光素子ユニット10bの蓄熱層12の温度が放射により上昇し、蓄熱層12の温度が例えばTaに達し、電圧Vbの出力が所定の値以下に変化した後の時刻t5以降、徐々に温度が低下していく。
【0047】
制御信号が出力開始された後のクロック信号CLKの3つ目の立ち上がりの時刻t6のとき、SW253は、波形g5に示すように電圧値がV1の電圧Vcを発光素子ユニット10cへ出力を開始する。SW253は、クロック信号CLKがHレベルの時刻t6〜t7の期間、電圧値がV1の電圧Vcの出力を継続する。発光素子ユニット10cは、電圧Vcの電圧値がV1である時刻t6〜t7の期間、放射を行う。これにより、波形g9に示すように発光素子ユニット10cの蓄熱層12の温度が放射により上昇し、蓄熱層12の温度が例えばTaに達し、電圧Vcの出力が所定の値以下に変化した後の時刻t7以降、徐々に温度が低下していく。
【0048】
制御信号が出力開始された後のクロック信号CLKの4つ目の立ち上がりの時刻t8のとき、SW254は、波形g6に示すように電圧値がV1の電圧Vdを発光素子ユニット10dへ出力を開始する。SW254は、クロック信号CLKがHレベルの時刻t8〜t9の期間、電圧値がV1の電圧Vdの出力を継続する。発光素子ユニット10dは、電圧Vdの電圧値がV1である時刻t8〜t9の期間、放射を行う。これにより、波形g10に示すように発光素子ユニット10dの蓄熱層12の温度が放射により上昇し、蓄熱層12の温度が例えばTaに達し、電圧Vdの出力が所定の値以下に変化した後の時刻t9以降、徐々に温度が低下していく。
【0049】
制御信号が出力開始された後のクロック信号CLKの5つ目の立ち上がりの時のときのSW251、発光素子ユニット10aの動作は、時刻t2〜t3と同様である。
制御信号が出力開始された後のクロック信号CLKの6つ目の立ち上がりの時のときのSW252、発光素子ユニット10bの動作は、時刻t4〜t5と同様である。
制御信号が出力開始された後のクロック信号CLKの7つ目の立ち上がりの時のときのSW253、発光素子ユニット10cの動作は、時刻t6〜t7と同様である。
制御信号が出力開始された後のクロック信号CLKの8つ目の立ち上がりの時のときのSW254、発光素子ユニット10dの動作は、時刻t8〜t9と同様である。
【0050】
このように、本実施形態では、図7に示したように、制御部(クロック生成部21、温度制御部23、電源部24、スイッチ部25)が、複数の発光素子ユニット(10a〜10d)のうち1つの発光素子ユニットを発光させているときに残りの発光素子ユニットを発光させないように、複数の発光素子ユニットのうちの1つを逐次発光させるように制御する手順、を含む。
【0051】
図7に示した例では、制御信号が出力開始されている期間、発光素子ユニット10それぞれを2回ずつ放射させる例を示したが、放射回数はこれに限られない。1回ずつであってもよく、3回ずつ以上であってもよい。
【0052】
図8は、図7のように発光素子1Cを駆動したときの蓄熱層12の温度の例を示す図である。図8に示す図は、発光素子1Cの蓄熱層12の温度を示している。図7を用いて説明したように、発光素子ユニット10が交互に放射されるため、蓄熱層12に蓄積された温度が加算されず、蓄熱層12の温度の最大値がTaのままである。図8において、図7に示したクロック信号CLKのタイミング毎に発光素子ユニット10aを連続して放射させた場合、時刻t11のとき、蓄熱層12の温度がΔTであるため、2回目の放射によって蓄熱層12の温度は、ΔT+Taにドリフトする。これにより、図4に示したように、放射毎に蓄熱層12の温度が上昇していく。一方、本実施形態によれば、複数の発光素子ユニット10を交互に放射させるようにしたので、蓄熱層12の温度の最大値がTaのままである。
なお、発光素子ユニット10のオフ状態(放射していない状態)の時間は、放熱の時定数より十分長い時間に設定されている。
【0053】
なお、図5に示した発光素子1Cの構成は一例であり、これに限られない。例えば、発光素子1Cは、2つ以上の発光素子ユニットを備えていればよい。例えば、図5に示した構成において、発光素子1Cが2つの発光素子ユニット10を備える場合は、対角線上、例えば発光素子ユニット10aと発光素子ユニット10c、または発光素子ユニット10bと発光素子ユニット10dを備えるようにすることが好ましい。この理由は、発光素子ユニット10の蓄熱層12に蓄積される熱の影響が少なくなる配置が好ましいためである。
また、発光素子ユニット10は、第2実施形態と同様に赤外線放射層17を備えていてもよい。
【0054】
<変形例>
ここで、本実施形態の変形例を説明する。なお、発光素子1Cの構成は、図5と同様である。
図9は、本実施形態に係る変形例の発光素子の制御装置2Aの構成例を示すブロック図である。図9に示すように、発光素子の制御装置2Aは、クロック生成部21A、操作部22、温度制御部23A、電源部24、スイッチ部25、発光素子1C、受光素子26、およびロックインアンプ27を備える。
【0055】
クロック生成部21Aは、所定の周波数のクロック信号CLKを生成し、生成したクロック信号をスイッチ部25と温度制御部23Aとロックインアンプ27に出力する。
温度制御部23Aは、操作部22が出力する操作結果に応じて、制御信号が所定の大きさ以上の期間、電源部24から蓄熱層12(図5)の温度がTa、Tb、Tc、Tdになるように電圧値(V1、V2、V3、V4)を出力する指示である制御信号を電源部24へ出力する。
電源部24は、温度制御部23Aが制御信号を出力している期間、スイッチ部25へ電圧値がV1、V2、V3、V4の電力を供給する。
【0056】
このように、発光素子ユニット10それぞれに印加される電圧が異なるため、発光素子ユニット10それぞれが異なる温度になる。これにより、発光素子ユニット10aは、温度がTaになり、温度Taに応じたピーク波長λを放射する。発光素子ユニット10bは、温度がTbになり、温度Tbに応じたピーク波長λを放射する。発光素子ユニット10cは、温度がTcになり、温度Tcに応じたピーク波長λを放射する。発光素子ユニット10dは、温度がTdになり、温度Tdに応じたピーク波長λを放射する。これは、温度に応じて、ピーク波長λが異なり、かつ放射される強度が温度に応じて強くなるというプランクの法則によるものである。なお、温度制御部23Aが制御する温度のターゲットは、検出したい物質の波長に応じた温度である。
【0057】
これにより、発光素子の制御装置2Aは、複数の波長を放射することができるので、ガス中に含まれる複数の成分を検出することができる。例えば、図9に示したように、発光素子1Cが4つの発光素子ユニット10を備える場合は、4つの波長を検出することができる。
【0058】
次に、発光素子の制御装置2Aの動作例を説明する。
図10は、本実施形態に係る変形例の発光素子の制御装置2Aのタイミングチャートを示す図である。図10において、横軸は時刻、波形g1〜g6の縦軸は各信号のレベル、波形g7〜g10の縦軸は温度を表す。また、波形g1は制御信号、波形g2はクロック信号CLK、波形g3は電圧Va、波形g4は電圧Vb、波形g5は電圧Vc、波形g6は電圧Vdを表す。また、波形g7は発光素子ユニット10aの蓄熱層12の温度上昇、波形g8は発光素子ユニット10bの蓄熱層12の温度上昇、波形g9は発光素子ユニット10cの蓄熱層12の温度上昇、波形g10は発光素子ユニット10dの蓄熱層12の温度上昇を表す。
【0059】
クロック生成部21Aは、波形g2に示すように生成したクロック信号CLKをスイッチ部25へ出力する。
時刻t21〜t22の期間、温度制御部23Aは、波形g1に示すように電源部24が出力する電圧値がTaとなる制御信号を出力する。
【0060】
時刻t21〜t22の期間、SW251は、波形g3に示すように電圧値がV1の電圧Vaを発光素子ユニット10aへ出力を開始する。SW251は、クロック信号CLKがHレベルの時刻t21〜t22の期間、電圧値がV1の電圧Vaの出力を継続する。発光素子ユニット10aは、電圧Vaの電圧値がV1である時刻t21〜t22の期間、放射を行う。これにより、波形g7に示すように発光素子ユニット10aの蓄熱層12(図5)の温度が放射により上昇し、蓄熱層12の温度が例えばTaに達し、電圧Vaの出力が所定の値以下に変化した後の時刻t22以降、徐々に温度が低下していく。
【0061】
時刻t23〜t24の期間、SW252は、波形g4に示すように電圧値がV2の電圧Vbを発光素子ユニット10bへ出力を開始する。なお、図10に示す例では、電圧値V2は、電圧値V1より大きい。SW252は、クロック信号CLKがHレベルの時刻t23〜t24の期間、電圧値がV2の電圧Vbの出力を継続する。発光素子ユニット10bは、電圧Vbの電圧値がV2である時刻t23〜t24の期間、放射を行う。これにより、波形g8に示すように発光素子ユニット10bの蓄熱層12の温度が放射により上昇し、蓄熱層12の温度が例えばTbに達し、電圧Vbの出力が所定の値以下に変化した後の時刻t24以降、徐々に温度が低下していく。
【0062】
時刻t25〜t26の期間、SW253は、波形g5に示すように電圧値がV3の電圧Vcを発光素子ユニット10cへ出力を開始する。なお、図10に示す例では、電圧値V3は、電圧値V2より大きい。SW253は、クロック信号CLKがHレベルの時刻t25〜t26の期間、電圧値がV3の電圧Vcの出力を継続する。発光素子ユニット10cは、電圧Vcの電圧値がV3である時刻t25〜t26の期間、放射を行う。これにより、波形g9に示すように発光素子ユニット10cの蓄熱層12の温度が放射により上昇し、蓄熱層12の温度が例えばTcに達し、電圧Vcの出力が所定の値以下に変化した後の時刻t26以降、徐々に温度が低下していく。
【0063】
時刻t27〜t28の期間、SW254は、波形g6に示すように電圧値がV4の電圧Vdを発光素子ユニット10dへ出力を開始する。なお、図10に示す例では、電圧値V4は、電圧値V3より大きい。SW254は、クロック信号CLKがHレベルの時刻t27〜t28の期間、電圧値がV4の電圧Vdの出力を継続する。発光素子ユニット10dは、電圧Vdの電圧値がV4である時刻t27〜t28の期間、放射を行う。これにより、波形g10に示すように発光素子ユニット10dの蓄熱層12の温度が放射により上昇し、蓄熱層12の温度が例えばTdに達し、電圧Vdの出力が所定の値以下に変化した後の時刻t28以降、徐々に温度が低下していく。
【0064】
図11は、図10のように発光素子1Cを駆動したときの蓄熱層12の温度の例を示す図である。図11に示す図は、発光素子1Cの蓄熱層12の温度を示している。図10を用いて説明したように、発光素子ユニット10が交互に放射されるため、蓄熱層12に蓄積された温度が加算されず、蓄熱層12の温度の最大値は、一回目の放射時がTa、二回目の放射時がTb、三回目の放射時がTc、四回目の放射時がTdである。なお、発光素子ユニット10のオフ状態(放射していない状態)の時間は、放熱の時定数より十分長い時間に設定されている。
本実施形態の変形例によれば、図10のように発光素子1Cを駆動することで、発光素子ユニット10毎に電力量を変化させ、発光ピーク波長を変化させることができる。これに、本実施形態の変形例によれば、複数波長もしくは広帯域波長によるNDIRガス計測が簡易な構成で可能となる。
【0065】
このように、本実施形態では、図10に示したように、制御部(クロック生成部21A、温度制御部23A、電源部24、スイッチ部25)が、複数の発光素子ユニット(10a〜10d)のうち1つの発光素子ユニットを発光させているときに残りの発光素子ユニットを発光させないように、複数の発光素子ユニットのうちの1つを逐次発光させるように制御する手順、を含む。
【0066】
なお、図10に示した例では、発光素子ユニット10それぞれに等間隔で制御信号を入力する例を示したが、これに限られない。発光素子ユニット10それぞれの目標温度に応じて、発光素子ユニット10それぞれの蓄熱層12それぞれの温度の上昇が異なるため、制御信号Ta〜Tdを出力するタイミングをこのような蓄熱層12の温度上昇に応じたタイミングにするようにしてもよい。例えば、制御信号TaとTbとの間隔をクロック信号CLKが1つ分、制御信号TbとTcとの間隔をクロック信号CLKが2つ分、制御信号TcとTdとの間隔をクロック信号CLKが3つ分になるように温度制御部23Aが制御するようにしてもよい。これにより、発光素子ユニット10それぞれの蓄熱層12それぞれの温度ドリフト間の影響や発光素子ユニット10内の温度ドリフトの影響を、さらに抑えることができる。
【0067】
<第4実施形態>
本実施形態の発光素子は、第1実施形態〜第3実施形態の構成に加えて、さらに温度検出部を備える。
図12は、本実施形態に係る発光素子1Dの構成例を示す図である。図12(A)は、本実施形態に係る発光素子1Dの上面図である。図12(B)は、本実施形態に係る発光素子1Dの図12(A)のA−A’における断面図である。
【0068】
図12(A)および図12(B)に示すように、発光素子1Dは、基板11、蓄熱層12、発熱抵抗体13、配線14a、配線14b、パッド15a、パッド15b、温度検出部18、配線19a、配線19b、パッド20a、およびパッド20bを備える。なお、発光素子1Dは、第1実施形態と同様に保護膜16(図1)または赤外線放射層17(図3)を備えていてもよい。なお、発光素子1、発光素子1Bと同じ機能を有するものには同じ符号を用いて、説明を省略する。
【0069】
蓄熱層12は、基板11の上面に形成されている。発熱抵抗体13は、蓄熱層12の上面に形成されている。配線14aおよび配線14bは、発熱抵抗体13の例えば両端に接続されて形成されている。パッド15aには、配線14aが接続されている。パッド15bには、配線14bが接続されている。温度検出部18は、蓄熱層12の上面かつ発熱抵抗体13の例えば側面の近傍に形成されている。配線19aおよび配線19bは、温度検出部18の例えば両端に接続されて形成されている。パッド20aには、配線19aが接続されている。パッド20bには、配線19bが接続されている。
【0070】
基板11、蓄熱層12、発熱抵抗体13、配線14a、配線14b、パッド15a、およびパッド15bの材料は、発光素子1と同様である。
配線19aおよび配線19bの材料は、配線14aおよび配線14bと同じである。
パッド20aおよびパッド20bの材料は、パッド15aおよびパッド15bと同じである。
【0071】
温度検出部18は、例えば薄膜サーミスタである。温度検出部18は、蓄熱層12の温度を含む雰囲気温度を検出する。温度検出部18は、検出した温度情報を出力する。なお、温度検出部18は、発熱抵抗体13と接触しないように設けられている。
【0072】
なお、温度検出部18は、図13に示すように、第1の蓄熱層12aの上面にさらに第2の蓄熱層12bを形成し、その上面に温度検出部18を形成するようにしてもよい。
図13は、本実施形態に係る発光素子の他の構成例を示す図である。図13(A)は、本実施形態に係る発光素子1Eの上面図である。図13(B)は、本実施形態に係る発光素子1Eの図13(A)のA−A’における断面図である。
【0073】
図13(A)および図13(B)に示すように、発光素子1Eは、基板11、第1の蓄熱層12a、第2の蓄熱層12b、発熱抵抗体13、配線14a、配線14b、パッド15a、パッド15b、温度検出部18、配線19a、配線19b、パッド20a、およびパッド20bを備える。なお、発光素子1Eは、第1実施形態と同様に保護膜16(図1)または赤外線放射層17(図3)を備えていてもよい。なお、発光素子1、発光素子1Bと同じ機能を有するものには同じ符号を用いて、説明を省略する。
【0074】
第1の蓄熱層12aは、基板11の上面に形成されている。発熱抵抗体13は、第1の蓄熱層12aの上面に形成されている。配線14aおよび配線14bは、発熱抵抗体13の例えば両端に接続されて形成されている。パッド15aには、配線14aが接続されている。パッド15bには、配線14bが接続されている。第2の蓄熱層12bは、第1の蓄熱層12aの上面に、発熱抵抗体13と配線14aと配線14bとの少なくとも一部を覆うように形成されている。温度検出部18は、第2の蓄熱層12bの上面に発熱抵抗体13を覆わないように形成されている。配線19aおよび配線19bは、温度検出部18の例えば両端に接続されて形成されている。パッド20aには、配線19aが接続されている。パッド20bには、配線19bが接続されている。
【0075】
なお、発光素子は、第3実施形態と同様の複数の発光素子ユニットを備えていてもよい。この場合、図5において、4つの発光素子ユニット10それぞれが発光素子1Dまたは発光素子1Eの構成であってもよい。このように、発光素子が複数の発光素子ユニットを備える場合は、温度検出部18を少なくとも1つの発光素子ユニットが備えていればよい。
【0076】
次に、発光素子1Dを用いて、測定対象の波長を計測する発光素子の制御装置2Aの一例を説明する。
図14は、本実施形態に係る発光素子の制御装置2Bの構成例を示すブロック図である。図14に示すように、発光素子の制御装置2Bは、クロック生成部21B、操作部22、温度制御部23B、電源部24、発光素子1D、受光素子26、およびロックインアンプ27を備える。なお、第3実施形態の発光素子の制御装置2(図9)と同様の機能を有する機能部には同じ符号を用いて、説明を省略する。
【0077】
クロック生成部21Bは、所定の周波数のクロック信号CLKを生成し、生成したクロック信号を温度制御部23Bとロックインアンプ27に出力する。
温度制御部23Bは、操作部22が出力する操作結果と発光素子1Dの温度検出部18が出力する温度情報とに基づいて、所定の期間、電源部24から発光素子1Dの蓄熱層12の温度を所定の温度以内に保つように電圧値V2を出力する指示である制御信号を電源部24へ出力する。
電源部24は、温度制御部23Bが制御信号を出力している期間、発光素子1Dの発熱抵抗体13へ電圧値がV2の電力を供給する。
【0078】
図14に示した構成によれば、定常時の温度を計測し、電力をフィードバック制御により制御することでドリフトを抑制することができる。
【0079】
なお、図14に示した例では、発光素子が1つの場合を説明したが、これに限られず、第3実施形態と同様の複数の発光素子ユニットを備えていてもよい。この場合は、電源部24と複数の発光素子ユニットを備える発光素子との間に、スイッチ部25(図9)が接続されているようにしてもよい。そして、複数の発光素子ユニットそれぞれが温度検出部18を備える場合、温度制御部23Bは、温度検出部18それぞれの出力に基づいて、対応する発光素子ユニットに対して電力をフィードバック制御により制御することでドリフトを抑制するようにしてもよい。また、複数の発光素子ユニットのうち、例えば1つの発光素子ユニットが温度検出部18を備える場合、温度制御部23Bは、1つ温度検出部18の出力に基づいて、複数の発光素子ユニットに対して電力をフィードバック制御により制御することでドリフトを抑制するようにしてもよい。
この場合、複数の発光素子ユニットの制御タイミングは、図7または図10と同様である。そして、温度制御部23Bは、各制御タイミングにおいて、上述したように、温度検出部18が検出した結果に基づいて、複数の発光素子ユニットそれぞれを駆動するようにしてもよい。
【0080】
なお、本発明における温度制御部23(または23A、23B)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより発光素子1(または1B、1C)の放射の駆動の制御を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0081】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B,1C,1D,1E…発光素子、2,2A,2B…発光素子の制御装置、10,10a,10b,10c,10d…発光素子ユニット、11…基板、12…蓄熱層、13…発熱抵抗体、14a,14b…配線、15a,15b…パッド、16…保護膜、17…赤外線放射層、18…温度検出部、21,21A,21B…クロック生成部、22…操作部、23,23A,23B…温度制御部、24…電源部、25…スイッチ部、26…受光素子、27…ロックインアンプ
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