特許第6817807号(P6817807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817807
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/24 20060101AFI20210107BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210107BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20210107BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20210107BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20210107BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H05B33/24
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-249226(P2016-249226)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-106823(P2018-106823A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】阪本 樹
(72)【発明者】
【氏名】安川 浩司
【審査官】 渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−008669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0240589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L51/50−51/56
H05B 33/24
H05B 33/22
H01L27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子をそれぞれ有する第1の画素、第2の画素、第3の画素と、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子の上に位置し、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子からそれぞれ出射される光を共振させるキャップ層を有し、
前記キャップ層は、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子の上に重なり、前記第2の画素を経て前記第1の画素から前記第3の画素へ延伸する第1のキャップ層と、
前記第1のキャップ層上に位置し、前記第2の発光素子と重なる第2のキャップ層と、
前記第1のキャップ層上に位置し、前記第3の発光素子と重なる第3のキャップ層と、
前記第1のキャップ層、前記第2のキャップ層、前記第3のキャップ層上の第4のキャップ層を有し、
前記第1の画素、前記第2の画素、前記第3の画素はこの順に配列し、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子はそれぞれ、
第1の電極と、
前記第1の電極上に位置し、前記第1の電極と接する正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域上に位置し、前記正孔輸送領域と接する発光層と、
前記発光層上に位置し、前記発光層と接する電子輸送領域と、
前記電子輸送領域上に位置し、前記電子輸送領域と接する第2の電極を有し、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子は、前記第2の発光素子の発光波長が、前記第3の発光素子の発光波長よりも短く、前記第1の発光素子の発光波長よりも長くなるように構成され、
前記第3のキャップ層の厚さは、前記第2のキャップ層の厚さよりも大きい表示装置。
【請求項2】
前記第1のキャップ層、前記第2のキャップ層、前記第3のキャップ層は、同一の有機化合物を含む、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1のキャップ層、前記第2のキャップ層、前記第3のキャップ層の一つは、他の一つが含有する有機化合物と異なる有機化合物を含む、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第4のキャップ層は無機化合物を含み、前記第2の画素を経て前記第1の画素から前記第3の画素へ延伸する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第4のキャップ層の厚さは、前記第1のキャップ層の厚さよりも大きく、前記第1のキャップ層の前記厚さと前記第2のキャップ層の前記厚さの和以下である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1のキャップ層の厚さは、前記第2のキャップ層の前記厚さよりも大きく、前記第3のキャップ層の前記厚さ以下である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2の発光素子の前記発光層の厚さは、前記第1の発光素子の前記発光層の厚さよりも大きく、前記第3の発光素子の前記発光層の厚さ以下である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1のキャップ層の厚さは、前記第1の発光素子の前記発光層の前記厚さよりも大きく、
前記第1のキャップ層の前記厚さと前記第2のキャップ層の前記厚さの和は、前記第2の発光素子の前記発光層の前記厚さよりも大きく、
前記第1のキャップ層の前記厚さと前記第3のキャップ層の前記厚さの和は、前記第3の発光素子の前記発光層の厚さよりも大き、請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第2の発光素子の前記第1の電極の上面と前記第2の電極の底面間の距離は、前記第1の発光素子のそれよりも大きく、前記第3の発光素子のそれよりも小さい、請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第2の発光素子の前記正孔輸送領域の厚さは、前記第1の発光素子のそれよりも大きく、前記第3の発光素子のそれよりも小さい、請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子をそれぞれ有する第1の画素、第2の画素、第3の画素と、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子の上に位置し、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子からそれぞれ出射される光を共振させるキャップ層を有し、
前記キャップ層は、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子の上に重なり、前記第2の画素を経て前記第1の画素から前記第3の画素へ延伸する第1のキャップ層と、
前記第1のキャップ層上に位置し、前記第2の発光素子と前記第3の発光素子と重なり、前記第2の画素から前記第3の画素へ延伸する第2のキャップ層と、
前記第2のキャップ層上に位置し、前記第3の発光素子と重なる第3のキャップ層と、
前記第1のキャップ層、前記第2のキャップ層、前記第3のキャップ層上の第4のキャップ層を有し、
前記第1の画素、前記第2の画素、前記第3の画素はこの順に配列し、
前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、前記第3の発光素子はそれぞれ、
第1の電極と、
前記第1の電極上に位置し、前記第1の電極と接する正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域上に位置し、前記正孔輸送領域と接する発光層と、
前記発光層上に位置し、前記発光層と接する電子輸送領域と、
前記電子輸送領域上に位置し、前記電子輸送領域と接する第2の電極を有する表示装置。
【請求項12】
前記第1のキャップ層、前記第2のキャップ層、前記第3のキャップ層は、同一の有機化合物を含む、請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第1のキャップ層、前記第2のキャップ層、前記第3のキャップ層の一つは、他の一つが含有する有機化合物と異なる有機化合物を含む、請求項11に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第4のキャップ層は無機化合物を含み、前記第2の画素を経て前記第1の画素から前記第3の画素へ延伸する、請求項11に記載の表示装置。
【請求項15】
前記第4のキャップ層の厚さは、前記第1のキャップ層の厚さよりも大きく、前記第1のキャップ層の前記厚さと前記第2のキャップ層の前記厚さの和以下である、請求項11に記載の表示装置。
【請求項16】
前記第1のキャップ層の厚さは、前記第2のキャップ層の前記厚さよりも大きく、前記第2のキャップ層の前記厚さと前記第3のキャップ層の前記厚さの和以下である、請求項11に記載の表示装置。
【請求項17】
前記第2の発光素子の前記発光層の厚さは、前記第1の発光素子の前記発光層の厚さよりも大きく、前記第3の発光素子の前記発光層の厚さ以下である、請求項11に記載の表示装置。
【請求項18】
前記第1のキャップ層の厚さは、前記第1の発光素子の前記発光層の前記厚さよりも大きく、
前記第1のキャップ層の前記厚さと前記第2のキャップ層の前記厚さの和は、前記第2の発光素子の前記発光層の前記厚さよりも大きく、
前記第1のキャップ層の前記厚さ、前記第2のキャップ層の前記厚さ、および前記第3のキャップ層の前記厚さの和は、前記第3の発光素子の前記発光層の厚さよりも大きい、請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
前記第2の発光素子の前記第1の電極の上面と前記第2の電極の底面間の距離は、前記第1の発光素子のそれよりも大きく、前記第3の発光素子のそれよりも小さい、請求項11に記載の表示装置。
【請求項20】
前記第2の発光素子の前記正孔輸送領域の厚さは、前記第1の発光素子のそれよりも大きく、前記第3の発光素子のそれよりも小さい、請求項11に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、発光素子、発光素子を含む表示装置、および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一例として、有機EL(Electroluminescence)表示装置が挙げられる。有機EL表示装置は、基板上に形成された複数の画素の各々に有機発光素子(以下、発光素子)を有している。発光素子は一対の電極(陰極、陽極)間に有機化合物を含む層(以下、EL層と記す)を有しており、一対の電極間に電流を供給することで駆動される。表示素子が与える色はEL層内の発光材料によって主に決定され、発光材料を適宜選択することによって種々の色の発光を得ることができる。異なる発光色を与える発光素子を基板上に複数配置することで、フルカラー表示を行うことができる。
【0003】
発光素子の発光色は、発光素子内部、あるいは外部における光の干渉効果を利用して調整することもできる。例えば特許文献1や2では、発光素子の一方の電極上に共振構造を設け、これによって発光素子から出射された発光を共振させ、発光強度や発光色の調整を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−302878号公報
【特許文献2】特開2006−302879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、色純度に優れた発光素子を有し、色再現性の高い表示装置を提供することを目的の一つとする。あるいは、これらの表示装置を歩留まり良く、低コストで製造可能な方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一つは、表示装置である。表示装置は、第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子をそれぞれ有する第1の画素、第2の画素、第3の画素、第1のキャップ層、第2のキャップ層、第3のキャップ層、および第4のキャップ層を有する。第1のキャップ層は、第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子の上に重なり、第2の画素を経て第1の画素から第3の画素へ延伸する。第2のキャップ層は、第1のキャップ層上に位置し、第2の発光素子と重なる。第3のキャップ層は、第1のキャップ層上に位置し、第3の発光素子と重なる。第4のキャップ層は、第1のキャップ層、第2のキャップ層、第3のキャップ層上に位置する。第1の画素、第2の画素、第3の画素はこの順に配列される。第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子はそれぞれ、第1の電極と、第1の電極上に位置し、第1の電極と接する正孔輸送領域と、正孔輸送領域上に位置し、正孔輸送領域と接する発光層と、発光層上に位置し、発光層と接する電子輸送領域と、電子輸送領域上に位置し、電子輸送領域と接する第2の電極を有する。第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子は、第2の発光素子の発光波長が、第3の発光素子の発光波長よりも短く、第1の発光素子の発光波長よりも長くなるように構成される。第3のキャップ層の厚さは、第2のキャップ層の厚さよりも大きい。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、表示装置である。表示装置は、第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子をそれぞれ有する第1の画素、第2の画素、第3の画素、第1のキャップ層、第2のキャップ層、第3のキャップ層、および第4のキャップ層を有する。第1のキャップ層は、第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子の上に重なり、第2の画素を経て第1の画素から第3の画素へ延伸する。第2のキャップ層は、第1のキャップ層上に位置し、第2の発光素子と第3の発光素子と重なり、第2の画素から第3の画素へ延伸する。第3のキャップ層は、第2のキャップ層上に位置し、第3の発光素子と重なる。第4のキャップ層は、第1のキャップ層、第2のキャップ層、第3のキャップ層上に位置する。第1の画素、第2の画素、第3の画素はこの順に配列される。第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子はそれぞれ、第1の電極と、第1の電極上に位置し、第1の電極と接する正孔輸送領域と、正孔輸送領域上に位置し、正孔輸送領域と接する発光層と、発光層上に位置し、発光層と接する電子輸送領域と、電子輸送領域上に位置し、電子輸送領域と接する第2の電極を有する。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、表示装置の製造方法である。この製造方法は、第1の発光素子、第2の発光素子、および第3の発光素子を、第1の画素、第2の画素、第3の画素の各々にそれぞれ形成すること、第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子の上に、第2の画素を経由して第1の画素から第3の画素へ延伸する第1のキャップ層を形成すること、第1のキャップ層上に、第2の発光素子と重なる第2のキャップ層を形成すること、第1のキャップ層上に、第3の発光素子と重なる第3のキャップ層を形成すること、第1のキャップ層、第2のキャップ層、第3のキャップ層上に、第2の画素を経由して第1の画素から第3の画素へ延伸する第4のキャップ層を形成することを含む。第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子はそれぞれ、第1の電極と、第1の電極上に位置し、第1の電極と接する正孔輸送領域と、正孔輸送領域上に位置し、正孔輸送領域と接する発光層と、発光層上に位置し、発光層と接する電子輸送領域と、電子輸送領域上に位置し、電子輸送領域と接する第2の電極とをそれぞれ有する。第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子は、この順で配置される。
【0009】
本発明の実施形態の一つは、表示装置の製造方法である。この製造方法は、第1の発光素子、第2の発光素子、および第3の発光素子を、第1の画素、第2の画素、第3の画素の各々にそれぞれ形成すること、第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子の上に、第2の画素を経由して第1の画素から第3の画素へ延伸する第1のキャップ層を形成すること、第1のキャップ層上に、第2の発光素子、および第3の発光素子と重なる第2のキャップ層を形成すること、第2のキャップ層上に、第3の発光素子と重なる第3のキャップ層を形成すること、第1のキャップ層、第2のキャップ層、第3のキャップ層上に第2の画素を経由して第1の画素から第3の画素へ延伸する第4のキャップ層を形成することを含む。第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子はそれぞれ、第1の電極と、第1の電極上に位置し、第1の電極と接する正孔輸送領域と、正孔輸送領域上に位置し、正孔輸送領域と接する発光層と、発光層上に位置し、発光層と接する電子輸送領域と、電子輸送領域上に位置し、電子輸送領域と接する第2の電極とをそれぞれ有する。第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子は、この順で配置される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の表示装置の断面模式図。
図2】本発明の実施形態の表示装置の上面模式図。
図3】本発明の実施形態の表示装置の断面模式図。
図4】本発明の実施形態の表示装置の発光スペクトルを説明する図。
図5】本発明の実施形態の表示装置の断面模式図。
図6】本発明の実施形態の表示装置の断面模式図。
図7】本発明の実施形態の表示装置の断面模式図。
図8】本発明の実施形態の表示装置の断面模式図。
図9】本発明の実施形態の表示装置の断面模式図。
図10】本発明の実施形態の表示装置の模式的斜視図。
図11】本発明の実施形態の表示装置の断面模式図。
図12】本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する断面模式図。
図13】本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する断面模式図。
図14】本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する断面模式図。
図15】本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する断面模式図。
図16】本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する断面模式図。
図17】本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する断面模式図。
図18】本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する断面模式図。
図19】本発明の実施形態の表示装置の製造方法を説明する断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0012】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0013】
本発明において、ある一つの膜に対してエッチングや光照射を行って複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の層構造、同一の材料を有する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0015】
(第1実施形態)
[1.発光素子]
図1(A)と図2はそれぞれ、第1実施形態の表示装置100の模式的な断面図と上面図である。図2の鎖線A−A’に沿った断面が図1(A)に相当する。図2に示すように、表示装置100は複数の画素102を有している。図2では、隣接する三つの画素として、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rが示されている。隣接するこれらの画素102は互いに異なる色を与えることができる。例えば赤色、緑色、青色の三原色を与える3種類の画素102を配置することができ、これにより、フルカラー表示を行うことが可能となる。以下、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rがそれぞれ、青色、緑色、赤色を与えるとして説明を行うが、隣接する二つの画素102間で発光色を与えるように構成されていれば、表示装置100の構成は上記構造に限られない。例えば、第2の画素102gから得られる発光波長が、第1の画素102bから得られる発光波長よりも長く、第3の画素102rから得られる発光波長よりも短くなるよう、表示装置100を構成することができる。ここで発光波長とは、画素102から得られる発光ピーク波長、画素102内に設けられる発光素子104(後述)の発光ピーク波長、あるいは発光素子104の発光材料の発光ピーク波長に相当する。
【0016】
図2では、画素102間で面積が異なる例が示されており、第1の画素102bの面積が最も大きく、第2の画素102gと第3の画素102rは互いに同じ大きさ、面積を有している。ただし、画素102の配置や大きさに制限はなく、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rの大きさや形状が同一でも良く、互いに異なっていてもよい。また、画素102の配列もストライプ配列でも良く、デルタ配列やモザイク配列、ペンタイル配列でもよい。
【0017】
図1(A)に示すように、第1から第3の画素102b、102g、102rには発光素子104b、104g、104rがそれぞれ備えられる。各発光素子104b、104g、104rは、第1の電極106、第1の電極106上のEL層108、およびEL層108上の第2の電極110によって構成される。以下、発光素子104b、104g、104rをそれぞれ第1の発光素子、第2の発光素子、第3の発光素子と記す。なお、図1(A)では、画素102を支持する基板や、画素102を駆動するための各種回路などは省略されている。
【0018】
第1の電極106は画素102ごとに設けられ、それぞれ独立して電位が与えられるように構成される。一方、第2の電極110は複数の画素102にわたって設けられ、複数の画素102によって共有される。表示装置100は、第2の電極110に一定の電位が与えられるように構成される。
【0019】
第1の電極106と第2の電極110は、一方が可視光を透過するように、他方は可視光を反射するように構成される。また、第1の電極106と第2の電極110のうちいずれかは陽極として機能し、他方は陰極として機能する。本実施形態では、第1の電極106は可視光を反射する陽極として、第2の電極110は可視光を一部反射し、一部透過する陰極(半透過半反射陰極)として機能する例を用いて説明を行う。この場合、第1の電極106は、銀やアルミニウムなどの反射率の高い金属やその合金を用いて形成することができる。あるいはこれらの金属や合金を含む膜上に、透光性を有する導電性酸化物の膜を形成してもよい。導電性酸化物としてはインジウム―スズ酸化物(ITO)やインジウム―亜鉛(IZO)などが挙げられる。第2の電極110としては、アルミニウムやマグネシウム、銀などの金属やこれらの合金を含み、可視光が透過する程度の厚さを有する金属薄膜を用いることができる。あるいは、ITOやIZOなどの透光性を有する導電性酸化物を用いてもよい。上述した金属薄膜を第2の電極110として用いる場合、金属薄膜上に透光性を有する導電性酸化物を積層してもよい。
【0020】
隣接する画素102の第1の電極106間には、絶縁膜である隔壁112が設けられる。図2は第1の電極106と隔壁112を示しており、隔壁112の開口部113において第1の電極106が露出し、第1の電極106の端部が隔壁112によって覆われる。これにより、第1の電極106の端部に起因する段差が緩和され、その上に形成されるEL層108や第2の電極110が切断されることを防ぐことができる。
【0021】
EL層108は第1の電極106と隔壁112に接し、これらを覆うように設けられる図1(A)。第2の電極110はEL層108に接するように設けられる。本明細書と請求項では、EL層108とは、第1の電極106と第2の電極110によって挟持される膜を指す。
【0022】
EL層108の構成は任意に決めることができる。図1(A)に示す表示装置100では、EL層108は正孔注入層114、正孔輸送層116、発光層118、電子輸送層120、電子注入層122を有する。EL層108は必ずしもこれら5つの層をすべて有する必要は無く、例えば一つの層が二つの機能を有していてもよい。各層は単層構造を有してもよく、あるいは異なる材料の積層によって形成されていてもよい。
【0023】
正孔注入層114は、第1の電極106からEL層108への正孔注入を促進する機能を有する。正孔注入層114は、第1の電極106や隔壁112に接するように設けることができる。正孔注入層114は、正孔が注入しやすい、すなわち酸化されやすい(電子供与性の)化合物を用いることができる。換言すると最高占有分子軌道(HOMO)準位の浅い化合物を用いることができる。例えばベンジジン誘導体やトリアリールアミンなどの芳香族アミン、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体などを用いることができる。あるいは、ポリチオフェンやポリアニリン、およびこれらの誘導体などの高分子材料を用いることができ、一例としてポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)などが挙げられる。上述した芳香族アミンやカルバゾール誘導体、あるいは芳香族炭化水素などの電子供与性化合物と電子受容体との混合物を用いてもよい。電子受容体としては、酸化バナジウムや酸化モリブデンなどの遷移金属酸化物や、含窒素ヘテロ芳香族化合物、シアノ基などの強い電子吸引基を有する芳香族化合物などが挙げられる。
【0024】
正孔輸送層116は正孔注入層114に注入された正孔を発光層118へ輸送する機能を有し、正孔注入層114で使用可能な材料と同様あるいは類似する材料を用いることができる。例えば、正孔注入層114と比較して、HOMO順位が深いが、その差が約0.5eVあるいはそれ以下の材料を用いることができる。典型的には、ベンジジン誘導体などの芳香族アミンを用いることができる。
【0025】
発光層118は、単一の化合物で形成されていてもよく、あるいはいわゆるホスト―ドープ型の構成を有していもよい。ホスト―ドープ型の場合、ホスト材料としては、スチルベン誘導体、アントラセン誘導体などの縮合芳香族化合物、カルバゾール誘導体、ベンゾキノリノールを基本骨格として有する配位子を含む金属錯体、芳香族アミン、フェナントロリン誘導体などの含窒素ヘテロ芳香族化合物などが例示される。ドーパントは発光材料として機能し、クマリン誘導体、ピラン誘導体、キノクリドン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、アントラセン誘導体などの蛍光材料、あるいはイリジウム系オルトメタル錯体などの燐光材料を用いることができる。発光層118を単一の化合物で構成する場合、上述したホスト材料を発光材料として用いることができる。
【0026】
図1(A)に示すように、発光層118は隣接する画素102間で異なる構造、あるいは異なる発光材料を有することができる。これにより、隣接する画素102間で異なる発光色を生成することができる。表示装置100では、第2の発光素子104gの発光層118gに含まれる発光材料の発光波長は、第3の発光素子104rの発光層118rのそれよりも短く、第1の発光素子104bの発光層118bそれよりも長くなるよう、発光層118を構成することができる。
【0027】
電子輸送層120は、第2の電極110から電子注入層122を介して注入される電子を発光層118へ輸送する機能を有する。電子輸送層120には、還元されやすい(電子受容性の)化合物を用いることができる。換言すると、最低非占有分子軌道(LUMO)準位の浅い化合物を用いることができる。例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムなどのベンゾキノリノールを基本骨格として有する配位子を含有する金属錯体、オキサジアゾールやチアゾールを基本骨格として有する配位子を含有する金属錯体などが挙げられる。これらの金属錯体以外にも、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体など、電子欠如型ヘテロ芳香環を有する化合物を用いることができる。
【0028】
電子注入層122には、第2の電極110から電子輸送層120への電子注入を促進する化合物を用いることができる。例えば電子輸送層120に用いることが可能な化合物と、リチウムやマグネシウムなどの電子供与体との混合物を用いることができる。あるいは、フッ化リチウムやフッ化カルシウムなどの無機化合物を用いてもよい。
【0029】
本明細書と請求項では、第1の電極106の上面から発光層118の底面までの領域を正孔輸送領域と定義し、発光層118の上面から第2の電極110の底面までの領域を電子輸送領域と定義する。正孔輸送領域には、正孔注入層114や正孔輸送層116を含むことができる。一方、電子輸送領域には、電子輸送層120や電子注入層122などを含むことができる。したがってEL層108は、正孔輸送領域、発光層118、および電子輸送領域から構成される。ただし、発光層118以外の層(例えば正孔輸送層116や電子輸送層120)が発光層118として機能する場合、EL層108は正孔輸送領域と電子輸送領域から構成される。
【0030】
第1の電極106と第2の電極110間に電位差を与えることにより、前者からは正孔が、後者からは電子がEL層108へ注入される。正孔は正孔注入層114、正孔輸送層116を経由して発光層118へ輸送される。一方、電子は電子注入層122、電子輸送層120を経由して発光層118へ輸送される。発光層118内で正孔と電子が再結合し、発光層118内に含まれる発光材料の励起状態が形成される。この励起状態が基底状態に緩和する際、励起状態と基底状態のエネルギー差に相当する波長の光が放出され、各発光素子104からの発光として観測することができる。
【0031】
EL層108に含まれる各層は、インクジェット法やスピンコート法、印刷法、ディップコーティング法などの湿式成膜法、あるいは蒸着法などの乾式成膜法を適用して形成することができる。またEL層108は、上述した層以外に、例えば正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層などを有していてもよい。
【0032】
[2.共振構造]
表示装置100にはさらに、第2の電極110上に共振構造を配置することができる。共振構造は、図1(A)に示すように、複数のキャップ層(第1のキャップ層130、第2のキャップ層132、第3のキャップ層134、第4のキャップ層136)によって構成することができる。
【0033】
第1のキャップ層130は、第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、第3の発光素子104rと重なるように設けられる。換言すると、第1のキャップ層130は第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rによって共有され、第1の画素102bから第2の画素102gを経て第3の画素102rへ延伸する。
【0034】
第2のキャップ層132は第1のキャップ層130の上に、第2の発光素子104gと重なるように設けられる。第2のキャップ層132は第1のキャップ層130と接してもよい。第3のキャップ層134は、第1のキャップ層130の上に、第3の発光素子104rと重なるように設けられる。第3のキャップ層134は第1のキャップ層130と接してもよい。
【0035】
第4のキャップ層136は、第1のキャップ層130、第2のキャップ層132、第3のキャップ層134の上に、第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、第3の発光素子104rと重なるように設けられる。したがって、第4のキャップ層136も、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rによって共有され、第1の画素102bから第2の画素102gを経て第3の画素102rへ延伸する。第4のキャップ層136は、第1の画素102bにおいて第1のキャップ層130と接し、第2の画素102gにおいて第2のキャップ層132と接し、第3の画素102rにおいて第3のキャップ層134と接することができる。
【0036】
ここで、第3のキャップ層134の厚さは、第2のキャップ層132の厚さよりも大きい。第1のキャップ層130と第4のキャップ層136は、複数の画素102内でそれぞれ実質的に同じ厚さを有する。したがって、第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、第3の発光素子104r上に設けられる共振構造の厚さは、第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、第3の発光素子104rの順に従って大きくなる。
【0037】
第1のキャップ層130、第2のキャップ層132、第3のキャップ層134は、可視光領域における透過率が高く、かつ、屈折率が比較的高い材料を含むことができる。このような材料の一例として有機化合物が挙げられる。有機化合物は、正孔輸送材料や電子輸送材料でもよい。有機化合物としては高分子材料が代表例であり、たとえば硫黄、ハロゲン、リンを含む高分子材料が挙げられる。硫黄を含む高分子としては、主鎖や側鎖にチオエーテル、スルホン、チオフェンなどの置換基を有する高分子が挙げられる。リンを含む高分子材料としては、主鎖や側鎖に亜リン酸基、リン酸基などが含まれる高分子材料、あるいはポリフォスファゼンなどが挙げられる。ハロゲンを含む高分子材料としては、臭素やヨウ素、塩素を置換基として有する高分子材料が挙げられる。上記高分子材料は、分子間あるいは分子内で架橋していてもよい。
【0038】
他の例としては無機材料が挙げられ、酸化チタン、酸化ジリコニウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、ITO、IZO、硫化鉛、硫化亜鉛、窒化ケイ素などが例示される。これらの無機材料と高分子材料の混合物を用いてもよい。
【0039】
第1のキャップ層130、第2のキャップ層132、第3のキャップ層134は、互いに同一の材料を含むことができる。あるいはこれらのうち一つが他の一つと異なる材料を含んでもよく、これらの三つが互いに異なる材料を含んでいてもよい。
【0040】
一方第4のキャップ層136は、可視光領域における透過率が高く、かつ、屈折率が比較的低い材料を含むことができる。一例としてフッ素を含有する高分子材料が挙げられる。フッ素を含有する高分子材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン、これらの誘導体、主鎖あるいは側鎖にフッ素を有するポリビニルエーテルやポリイミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリシロキサンなどが挙げられる。これらの高分子は分子内あるいは分子間で架橋していてもよい。
【0041】
低い屈折率を有する無機材料としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどの金属フッ化物、酸化ホウ素や酸化リンを含有する酸化ケイ素などが挙げられる。
【0042】
図3(A)、図3(B)、図3(C)にそれぞれ、第3の発光素子104r、第2の発光素子104g、第1の発光素子104bの詳細な構造を示す。第1の発光素子104b上には、第1のキャップ層130と第4のキャップ層136が共振構造として設けられる。第2の発光素子104g上には、第1のキャップ層130、第2のキャップ層132、および第4のキャップ層136の積層が共振構造として設けられる。第3の発光素子104r上には、第1のキャップ層130、第3のキャップ層134、および第4のキャップ層136が共振構造として設けられる。ここで、第1のキャップ層130、第2のキャップ層132、第3のキャップ層134、第4のキャップ層136の厚さをそれぞれ、CP1、CP2、CP3、CP4とする。CP4は、CP1よりも大きく、かつ、CP1とCP2の和以下にすることができる。あるいは、CP1はCP2よりも大きく、かつ、CP3以下にすることができる。
【0043】
第1のキャップ層130は、必ずしも第2の電極110と第2のキャップ層132の間、あるいは第2の電極110と第3のキャップ層134の間に設ける必要は無い。例えば図1(B)に示す表示装置140のように、第2のキャップ層132と第3のキャップ層134の上に、第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、第3の発光素子104rと重なるように第1のキャップ層130を配置してもよい。この場合、第2のキャップ層132と第3のキャップ層134は第2の電極110と接することができる。
【0044】
[3.共振]
各発光素子104上に設けられるキャップ層は、第2の電極110を通して発光素子104から取り出される光を共振さるための共振構造として機能する。例えば第1の発光素子104bの場合、共振構造は、厚さCP1の第1のキャップ層130と厚さCP4の第4のキャップ層136である。発光層118bから得られる光は直接、あるいは第1の発光素子104b内(すなわち、第1の電極106の上面と第2の電極110の底面間)で共振した後、第2の電極110を通して第1のキャップ層130へ入射する。入射した光は、第1のキャップ層130と第4のキャップ層136内で共振する。
【0045】
この時、第1のキャップ層130と第4のキャップ層136を含む共振構造の光学距離に合致する波長をもつ光は、第1のキャップ層130の底面と第4のキャップ層136の上面間で反射を繰り返すことで干渉効果によって増幅され、一方、光学距離に合致しない波長の光は減衰する。ここで光学距離とは層の厚さと層の屈折率の積であり、第1の発光素子104bの共振構造の場合、第1のキャップ層130の屈折率と厚さCP1の積、および第4のキャップ層136の屈折率と厚さCP4の積の和である。第1の発光素子104bから取り出される光の波長をλとすると、λの4分の1(λ/4)の奇数倍が光学距離と一致する、あるいは近い場合、この波長λを有する光は光学距離に合致し、増幅される。逆にλの2分の1(λ/2)、すなわち半波長の整数倍が光学距離と一致する、あるいは近い場合、この波長λを有する光は光学距離に合致せず、減衰する。したがって、第1のキャップ層130と第4のキャップ層136を含む共振構造の光学距離がλ/4の奇数倍になるように第1のキャップ層130と第4のキャップ層136の厚さと材料を最適化することで、第1の画素102bから得られる発光の半値幅が小さくなり、色純度が向上するとともに、第1の画素102bの正面方向における輝度が増大する。
【0046】
一方、第2の発光素子104gでは、共振構造は第1のキャップ層130、第2のキャップ層132、および第4のキャップ層136の積層である。この構造に起因し、第2の発光素子104gの共振構造の光学距離は、第1の発光素子104bのそれよりも大きくすることができる。上述したように、第2の発光素子104gの発光波長は、第1の発光素子104bの発光波長よりも長くなるよう、表示装置100が構成される。したがって、上記構成を採用することで、第1の発光素子104bのみならず、第2の発光素子104gにも適した共振構造を構築することができる。その結果、第2の画素102gから得られる発光の半値幅が小さくなり、色純度が向上するとともに、第2の画素102gの正面方向における輝度を増大させることができる。
【0047】
同様に第3の発光素子104rでは、共振構造は第1のキャップ層130、第3のキャップ層134、および第4のキャップ層136の積層である。上述したように、第3のキャップ層134の厚さCP3を、第2のキャップ層の厚さCP2よりも大きくすることで、第2の発光素子104gの共振構造よりもさらに大きな光学距離を有する共振構造を形成することができる。また、第3の発光素子104rの発光波長は、第2の発光素子104gの発光波長よりも長くなるよう、表示装置100が構成される。したがって、上述した構成を採用することで、第1の発光素子104b、第2の発光素子104gだけでなく、第3の発光素子104rにも適した共振構造を構築することができる。その結果、第3の画素102rからの発光の半値幅が小さくなり、色純度が向上するとともに、第3の画素102rの正面方向における輝度を増大させることができる。
【0048】
このように、表示装置100では、画素102ごとに構成や厚さが異なる共振構造が発光素子104上に形成され、その結果、発光波長が異なる発光素子を有する画素ごとに、最適化された共振構造を設けることができる。表示装置100の製造方法は後述するが、このような共振構造を構築する場合、通常、蒸着法を適用し、ファインメタルマスクを用いて画素102ごとに共振構造を設置する。したがって、3種類の共振構造を形成する場合には、ファインメタルマスクを用いる蒸着を3回行う必要がある。ファインメタルマスクを用いる蒸着は、メタルマスクのアライメントが比較的困難であること、メタルマスクで遮蔽された領域へ材料が意図せず堆積されること、あるいはメタルマスク開口部の目詰まりに起因し、必ずしも意図した領域の全てにに蒸着ができないこと、メタルマスクが発光素子と接触することで発光素子にダメージを与え、発光欠陥(ダークスポット)が生じるなどの欠点を有している。このため、ファインメタルマスクを用いる蒸着の回数が増大するほど歩留まりが低下し、表示装置の信頼性が低下する。
【0049】
これに対し、図1(A)や図3(A)から図3(C)に示すように、表示装置100では、第1のキャップ層130と第4のキャップ層136は複数の画素102にわたって共通して設けることができる。このような構造を採用することで、第1のキャップ層130や第4のキャップ層136を蒸着法によって形成するときに、ファインメタルマスクの使用を避けることができる。このため、ファインメタルマスクを用いる蒸着回数を低減することができ、その結果、信頼性が改善された表示装置を歩留まり良く製造することができる。さらに、発光色が異なる発光素子104ごとに最適化された共振構造を構築することができるため、色再現性が高く、高効率な、すなわち、消費電力の低い表示装置を提供することが可能となる。
【0050】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の表示装置100、140とは異なる構造を有する表示装置150について説明する。表示装置100では、隣接する画素102間で異なる発光層118を有するが、表示装置150は、隣接する画素102間で同一の発光層118を有する。具体的には図1(C)に示すように、表示装置150の発光層118は、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rで共通の構造を有し、第1の画素102bから第2の画素102gを経由して第3の画素102rへ延伸する。すなわち発光層118は、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rによって共有される。
【0051】
このような構成の場合、白色発光を与えるように発光層118を構成することができる。この場合の発光スペクトルを図4に模式的に示す。図4(A)には、右から順に、第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、第3の発光素子104rの発光層118が与える発光スペクトルを示す。発光層118は第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、第3の発光素子104r間で同一の構造を有し、白色の発光を与えため、発光層118のスペクトルの形状は同一であり、幅は広く、可視光領域のほぼ全体をカバーする。
【0052】
図4(B)は、右から順に、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rから得られる発光スペクトルを模式的に示す。第1の画素102b中の第1の発光素子104bは、第2の発光素子104g、第3の発光素子104rと比較して短波長の光の増幅に適した共振構造を有する。したがって、青色領域(例えば450nm付近)の光を増幅し、この領域から離れた波長の光は減衰するように共振構造を構成することができる。このため、図4(B)の右の図に示すように、青色領域以外の発光スペクトルは減衰し、第1の画素102bから主に青色の発光を得ることができる。
【0053】
逆に第1実施形態で述べたように、第3の画素102r中の第3の発光素子104rには、第1の発光素子104b、第2の発光素子104gと比較して長波長の光の増幅に適した共振構造を構築することができる。この場合、赤色領域(例えば750nm付近)の光を増幅し、この領域から離れた波長の光は減衰する。このため、図4(B)の左側の図に示すように、赤色領域以外の発光スペクトルは減衰し、第3の画素102rからは主に赤色の発光を得ることができる。
【0054】
一方、第2の画素102g中の第2の発光素子104gには、中間波長の光の増幅に適した共振構造を付与することができる。したがって、緑色領域(例えば530nm付近)の光を増幅し、この領域から離れた波長の光は減衰する。このため、図4(B)の真中の図に示すように、緑色領域以外の発光スペクトルは減衰し、第2の画素102gからは主に緑色の発光を得ることができる。
【0055】
このように、本発明の実施形態では、カラーフィルタを設置しなくても、白色発光の発光素子を有する画素102から任意の色を取り出すことが可能となる。このため、カラーフィルタが不要となり、かつ、画素102ごとに異なる発光層118を形成する必要がないため、低いコストで表示装置を提供することが可能となる。
【0056】
(第3実施形態)
本実施形態では、発光素子104上の共振構造だけでなく、最適化された共振構造を含有する発光素子104を有する表示装置160、170に関して説明を行う。第1、第2実施形態と同様の構成に関しては説明を割愛することがある。
【0057】
表示装置160の断面模式図を図5に示す。表示装置160は、発光層118の厚さが、第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、および第3の発光素子104r間で異なり、これにより各発光素子104内で最適化された共振構造が形成されている点で、表示装置100と異なる。
【0058】
表示装置160の詳細な構造を図6に示す。図6(A)、図6(B)、図6(C)はそれぞれ、第3の発光素子104r、第2の発光素子104g、第1の発光素子104bの断面模式図である。
【0059】
表示装置160においても、第1の電極106は可視光を反射可能なように構成され、第2の電極110は可視光を一部透過し、一部反射するように構成される。このため、発光層118から出射する光は、第1の電極106の上面(第1の電極106と正孔注入層114との界面)と第2の電極110の底面(第2の電極110と電子注入層122との界面)で反射し、共振することができる。この共振による干渉効果は、第1の電極106の上面と第2の電極110の底面間の光学距離と発光層118からの発光のスペクトルによって決まる。この光学距離は、EL層108の各層の屈折率と厚さの積の和である。したがって、発光が強め合うように、すなわち、この光学距離が目的とする発光の波長の4分の1(λ/4)の奇数倍と一致するように発光層118を調整することで、発光強度を増大させ、発光スペクトルの狭線化を実現することができる。
【0060】
表示装置160では、図5に示すように、発光層118の厚さを変えることで光学距離の調整を行う。ここで、発光層118b、発光層118g、発光層118rの厚さをそれぞれEmb、Emg、Emrとする。正孔輸送領域と電子輸送領域の構造は各発光素子104で共通であり、前者の厚さをHTとする。また、第1の発光素子104b、第2の発光素子104g、第3の発光素子104rのEL層108の厚さをそれぞれ、ELb、ELg、ELrとする。
【0061】
第1の発光素子104bを最適化する場合、発光層118bの発光波長をλとすると、EL層108の厚さELbがλの4分の1(λ/4)の奇数倍となるように、発光層118bの厚さを調整する。一方、発光層118gの発光波長は発光層118bの発光波長よりも長く、発光層118rの発光波長よりも短いので、発光層118gの厚さEmgは、発光層118bの厚さEmbよりも大きくなるように、かつ、発光層118rの厚さ以下となるよう調整する。このような調整を行うことで、EL層108の厚さも発光素子104間で異なり、第2の発光素子104gのEL層108の厚さELgは、第1の発光素子104bのEL層108の厚さELbよりも大きく、かつ、第3の発光素子104rのEL層108の厚さELr以下にすることができる。
【0062】
さらに、発光層118bの厚さEmbが第1のキャップ層130の厚さCP1よりも小さく、発光層118gの厚さEmgが第1のキャップ層130の厚さCP1と第2のキャップ層132の厚さCP2の和よりも小さく、かつ、発光層118rの厚さEmrが第1のキャップ層130の厚さCP1と第3のキャップ層134の厚さCP3の和よりも小さくなるように各発光素子104を構成することで、より効果的に発光の増幅を行うことができる。
【0063】
表示装置170ではさらに、正孔輸送領域の厚さHTが画素102間で異なる。例えば図7に示すように、各画素102において発光素子104の発光層118と正孔輸送層116の間に電子阻止層124を設け、その厚さを調整することで、正孔輸送領域の厚さHT、およびEL層108の厚さが調整される。なお、電子阻止層124を設けず、正孔輸送層116の厚さを調整して正孔輸送領域の厚さHTを制御してもよい。
【0064】
具体的には図8(A)、図8(B)、図8(C)に示すように、第2の発光素子104gの正孔輸送領域の厚さHTを第1の発光素子104bのそれよりも大きくし、かつ、第3の発光素子104rのそれよりも小さくなるよう、電子阻止層124や発光層118の厚さを制御する。また、第2の発光素子104gのEL層108の厚さELgが、第1の発光素子104bのEL層108の厚さELbよりも大きく、かつ、第3の発光素子104rのEL層108の厚さELrよりも小さくなるよう、電子阻止層124や発光層118の厚さを制御する。これにより、各発光素子104内でより効果的に発光の増幅やスペクトルの狭線化を行うことができる。このようにして増幅、狭線化された発光は、さらに各発光素子104上の共振構造によって光学調整することができる。したがって、発光素子104ごとに、より精密に最適化された共振構造を構築することができるため、色再現性が高く、高効率な表示装置を提供することが可能となる。
【0065】
表示装置160、170においても、第1のキャップ層130と第4のキャップ層136を複数の画素102にわたって共通して設けることができる。このような構造を採用することで、第1のキャップ層130や第4のキャップ層136を蒸着法によって形成するとき、ファインメタルマスクの使用を避けることができる。このため、ファインメタルマスクを用いる蒸着回数を低減することができ、その結果、信頼性が改善された表示装置を歩留まり良く製造することができる。
【0066】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1から第3実施形態で示した表示装置100、140、150、160、170とは異なる構造を有する表示装置180に関して説明を行う。第1から第3実施形態と同様の構成に関しては説明を割愛することがある。
【0067】
表示装置180は、図9に示すように、第2のキャップ層132が第2の画素102gから第3の画素102rへ延伸し、第2の画素102gと第3の画素102rによって共有される点で、他の実施形態で示した表示装置と異なる。したがって、第2のキャップ層132は第3の画素102rと重なり、第3の画素102rにおいて第1のキャップ層130と第3のキャップ層134に挟持される。表示装置180では、第3のキャップ層134の厚さは第2のキャップ層132の厚さよりも小さくてもよく、大きくてもよく、同一でも良い。
【0068】
第1から第3実施形態で示した表示装置と同様、表示装置180の製造時においても、ファインメタルマスクを用いる蒸着回数を低減することができ、その結果、信頼性が改善された表示装置を歩留まり良く製造することができる。さらに、発光素子104ごとに最適化された共振構造を構築することができるため、色再現性が高く、高効率な表示装置を提供することが可能となる。
【0069】
(第5実施形態)
本実施形態では、本発明の表示装置100の製造方法に関して説明する。第1乃至第4実施形態と同様の構成については、説明を割愛することがある。
【0070】
図10は、表示装置100の模式的な斜視図である。表示装置100は行方向と列方向に配置される複数の画素102とそれによって構成される表示領域204、走査線駆動回路206、データ線駆動回路208を基板200上に有している。対向基板202は表示領域204を覆う。外部回路(図示せず)からの各種信号は、基板200上に設けられた端子210に接続されるフレキシブルプリント回路(FPC)基板などのコネクタを経由して走査線駆動回路206やデータ線駆動回路208に入力され、これらの信号に基づいて各画素102が制御される。
【0071】
なお、走査線駆動回路206、データ線駆動回路208のいずれか、あるいは両方は、基板200の上に直接形成される必要はなく、基板200とは異なる基板(半導体基板など)上に形成された駆動回路を基板200やコネクタ上に設け、これらの駆動回路によって画素102を制御してもよい。図10では、基板200上に形成された走査線駆動回路206が対向基板202に覆われ、一方、データ線駆動回路208は別基板に形成された後に基板200上に搭載される例が示されている。
【0072】
基板200と対向基板202は、ガラス基板などの可撓性を持たない基板でもよく、あるいは、可撓性を有する基板でもよい。対向基板202の替わりに、樹脂フィルム、円偏光板などの光学フィルムを貼り合せる構造を用いてもよい。画素102はマトリクス状に設けられるが、配列には特に制限はなく、ストライプ配列、デルタ配列などを採用することができる。
【0073】
図11に、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rを含む、表示装置100の断面模式図を示す。第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rは、下地膜212を介して基板200上にトランジスタ220、トランジスタ220と電気的に接続される発光素子104、付加容量240などの素子を有する。図11では、各画素102に一つのトランジスタ220と一つの付加容量240が設けられる例が示されているが、各画素102は複数のトランジスタや複数の容量素子を有してもよい。発光素子104の構造は、第1実施形態で述べたものと同様である。以下、表示装置100の製造方法を述べる。
【0074】
[1.トランジスタ]
図12(A)に示すように、まず基板200上に下地膜212を形成する。基板200は、トランジスタ220など、表示領域204に含まれる半導体素子や発光素子104などを支持する機能を有する。したがって基板200には、この上に形成される各種素子のプロセスの温度に対する耐熱性とプロセスで使用される薬品に対する化学的安定性を有する材料を使用すればよい。具体的には、基板200はガラスや石英、プラスチック、金属、セラミックなどを含むことができる。
【0075】
表示装置100に可撓性を付与する場合、基板200上に基材(図示せず)を形成し、その上に下地膜212が設けられる。この場合、基板200は支持基板、あるいはキャリア基板とも呼ばれる。基材は可撓性を有する絶縁膜であり、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボナートに例示される高分子材料から選択される材料を含むことができる。基材は、例えば印刷法やインクジェット法、スピンコート法、ディップコーティング法などの湿式成膜法、あるいはラミネート法などを適用して形成することができる。
【0076】
下地膜212は基板200(および基材)からアルカリ金属などの不純物がトランジスタ220などへ拡散することを防ぐ機能を有する膜であり、窒化ケイ素や酸化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素などのケイ素含有無機化合物を含むことができる。下地膜212は化学気相成長法(CVD法)やスパッタリング法などを適用して単層、あるいは積層構造を有するように形成することができる。
【0077】
次に半導体膜222を形成する(図12(A))。半導体膜222は例えばケイ素などの14族元素を含むことができる。あるいは半導体膜222は酸化物半導体を含んでもよい。酸化物半導体としては、インジウムやガリウムなどの第13族元素を含むことができ、例えばインジウムとガリウムの混合酸化物(IGO)が挙げられる。酸化物半導体を用いる場合、半導体膜222はさらに12族元素を含んでもよく、一例としてインジウム、ガリウム、および亜鉛を含む混合酸化物(IGZO)が挙げられる。半導体膜222の結晶性に限定はなく、半導体膜222は単結晶、多結晶、微結晶、あるいはアモルファスのいずれの結晶状態を含んでもよい。
【0078】
半導体膜222がケイ素を含む場合、半導体膜222は、シランガスなどを原料として用い、CVD法によって形成すればよい。得られるアモルファスシリコンに対して加熱処理、あるいはレーザなどの光を照射することで結晶化を行ってもよい。半導体膜222が酸化物半導体を含む場合、スパッタリング法などを利用して形成することができる。
【0079】
次に半導体膜222を覆うようにゲート絶縁膜214を形成する(図12(A))。ゲート絶縁膜214も、ケイ素含有無機化合物を含むことができ、CVD法やスパッタリング法によって形成することができる。ゲート絶縁膜214は単層構造、積層構造のいずれの構造を有していてもい。
【0080】
引き続き、ゲート絶縁膜214上にゲート224をスパッタリング法やCVD法を用いて形成する(図12(B))。ゲート224はチタンやアルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、タンタルなどの金属やその合金などを用い、単層、あるいは積層構造を有するように形成することができる。例えばチタンやタングステン、モリブデンなどの比較的高い融点を有する金属でアルミニウムや銅などの導電性の高い金属を挟持する構造を採用することができる。
【0081】
次にゲート224上に層間膜216を形成する(図12(B))。層間膜216は単層構造、積層構造のいずれの構造を有していてもよく、ケイ素含有無機化合物を含むことができ、CVD法やスパッタリング法によって形成することができる。積層構造を有する場合、例えば有機化合物を含む層を形成したのち、無機化合物を含む層を積層してもよい。詳細は割愛するが、半導体膜222に対してドーピングを行い、ソース/ドレイン領域や低濃度不純物領域などを形成してもよい。
【0082】
次に、層間膜216とゲート絶縁膜214に対してエッチングを行い、半導体膜222に達する開口228を形成する(図12(C))。開口228は、例えばフッ素含有炭化水素を含むガス中でプラズマエッチングを行うことで形成することができる。
【0083】
次に開口228を覆うように金属膜を形成し、エッチングを行って成形することで、ソース/ドレイン226を形成する(図13(A))。金属膜はゲート224と同様、種々の金属を含むことができ、単層構造、積層構造のいずれの構造を有することができる。以上の工程により、トランジスタ220が形成される。本実施形態では、トランジスタ220はトップゲート型のトランジスタとして図示されているが、トランジスタ220の構造に限定はなく、トランジスタ220はボトムゲート型トランジスタ、ゲート224を複数有するマルチゲート型トランジスタ、半導体膜222の上下を二つのゲート224で挟持する構造を有するデュアルゲート型トランジスタでもよい。また、ソース/ドレイン226と半導体膜222との上下関係にも制約はない。
【0084】
[2.付加容量、発光素子]
次に平坦化膜230を、トランジスタ220を覆うように形成する(図13(A))。平坦化膜230は、トランジスタ220などに起因する凹凸や傾斜を吸収し、平坦な面を与える機能を有する。平坦化膜230は有機絶縁体で形成することができる。有機絶縁体としてエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボナート、ポリシロキサンなどの高分子材料が挙げられる。平坦化膜230は、上述した湿式成膜法などによって形成することができる。
【0085】
その後平坦化膜230に対してエッチングを行い、トランジスタ220のソース/ドレイン226の一方を露出する開口234が設けられる(図13(B))。この開口234を覆い、トランジスタ220のソース/ドレイン226の一方と接するように接続電極232を形成する(図13(C))。接続電極232は、ITOやIZOなどの導電性酸化物を用い、スパッタリング法などを用いて形成することができる。接続電極232の形成は任意であるが、接続電極232を設けることにより、引き続くプロセスにおいてソース/ドレイン226表面の劣化を防ぎ、ソース/ドレイン226と第1の電極106間の電気的接続においてコンタクト抵抗の発生を抑制することができる。
【0086】
引き続き、平坦化膜230上に金属膜を形成し、エッチングを行って金属膜を成形し、付加容量240の一方の電極242を形成する(図14(A))。ここで用いる導電層は、ソース/ドレイン226の形成に用いる導電層と同様、単層構造、積層構造、いずれの構造を有してもよく、例えばモリブデン/アルミニウム/モリブデンの三層構造を採用することができる。
【0087】
引き続き、平坦化膜230、および電極242上には絶縁膜244が形成される(図14(A))。絶縁膜244はトランジスタ220に対する保護膜として機能するだけでなく、付加容量240における誘電体としても機能する。したがって、誘電率の比較的高い材料を用いることが好ましい。例えばケイ素含有無機化合物などを用い、CVD法やスパッタリング法を適用して絶縁膜244を形成することができる。その後絶縁膜244には開口236、238が設けられる(図14(A))。前者は接続電極232の底面を露出し、のちに形成される第1の電極106と接続電極232との電気的接続ために設けられる。後者は、隔壁112形成後の熱処理において平坦化膜230から脱離する水やガスを、隔壁112を通じて引き抜くための開口である。
【0088】
次に図14(B)に示すように、開口236を覆うように第1の電極106を形成する。第1の電極106と絶縁膜244、電極242によって付加容量240が形成される。付加容量240を設けることで、トランジスタ220のゲート224の電位をより長期間保持することができる。第1の電極106の構成は第1実施形態で述べたものと同様であり、スパッタリング法やCVD法などを用いて形成することができる。
【0089】
次に、第1の電極106の端部を覆うように、隔壁112を形成する(図14(B))。隔壁112はエポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用い、湿式成膜法で形成することができる。
【0090】
次にEL層108、および第2の電極110を、第1の電極106と隔壁112を覆うように形成する。これらの構成は第1実施形態で述べたものと同様である。具体的には、まず、正孔注入層114を第1の電極106と隔壁112を覆うように形成し、その後正孔注入層114上に、正孔輸送層116を形成する(図15(A))。引き続き、正孔輸送層116上に発光層118を形成する(図15(B))。本実施形態では、隣接する画素102間で異なる構造、あるいは異なる材料を含む発光層118が形成される。この場合、メタルマスクを用い、第1の画素102b、第2の画素102g、第3の画素102rにそれぞれ対応する発光層118b、118g、118rに含まれる材料を蒸着によって順次堆積すればよい。あるいはインクジェット法を用いて発光層118b、118g、118rを形成してもよい。
【0091】
発光層118上には電子輸送層120、電子注入層122が順次形成され、その後、電子注入層122上に第2の電極110が形成される(図16(A))。EL層108を構成する各層は、湿式成膜法、あるいは蒸着法などの乾式成膜法を適用して形成すればよい。第2の電極110も、スパッタリング法や蒸着法などを用いて形成される。以上の工程により、付加容量240と表示装置100が形成される。
【0092】
[3.キャップ層]
次に、第2の電極110上に第1のキャップ層130を形成する(図16(B))。第1のキャップ層は湿式成膜法、あるいは乾式成膜法によって形成することができる。蒸着法で形成する場合には、メタルマスクを用いて行うことができる。この場合、表示領域204の形状に対応する比較的大きな開口部を有するメタルマスクを使用することができる。このため、精度の高いマスクアライメントが不要であり、効率よく第1のキャップ層130を形成することができる。
【0093】
引き続き、第1のキャップ層130上に、第2の画素102gと重なる第2のキャップ層132、および第3の画素102rと重なる第3のキャップ層134を形成する(図17(A)、17(B))。第2のキャップ層132と第3のキャップ層134の形成順序は任意に決定することができる。第2のキャップ層132、第3のキャップ層134は第1のキャップ層130と同様の方法で形成することができる。蒸着法を用いる場合には、個々の画素102上に対応する開口部を有するメタルマスクを用いればよい。第3のキャップ層134は、第2のキャップ層132よりも大きな厚さを有するように形成する。
【0094】
その後、第1のキャップ層130、第2のキャップ層132、第3のキャップ層134を覆うように、第4のキャップ層136を形成する(図18)。第4のキャップ層136も蒸着法などの乾式成膜法を適用して形成することができる。第1のキャップ層130の形成と同様、第4のキャップ層136も、表示領域204の形状に対応する比較的大きな開口部を有するメタルマスクを用いる蒸着法で形成することができる。
【0095】
[4.その他の構成]
表示装置100は、任意の構成として、パッシベーション膜(封止膜)250などを有することができる。例えば図19に示すように、第1の層252、第2の層254、第3の層256が積層されたパッシベーション膜250を形成してもよい。
【0096】
この場合、まず第1の層252を第4のキャップ層136上に形成する。第1の層252は、例えばケイ素含有無機化合物などを含むことができ、CVD法やスパッタリング法によって形成することができる。
【0097】
引き続き第2の層254を形成する。第2の層254は、アクリル樹脂やポリシロキサン、ポリイミド、ポリエステルなどを含む有機樹脂を含有することができる。また、図19に示すように、隔壁112などに起因する凹凸を吸収するよう、また、平坦な面を与えるような厚さで形成してもよい。第2の層254は、インクジェット法などの湿式成膜法によって形成することができる。あるいは、上記高分子材料の原料となるオリゴマーを減圧下で霧状あるいはガス状にし、これを第1の層252に吹き付けて、その後オリゴマーを重合することによって第2の層254を形成してもよい。
【0098】
その後、第3の層256を形成する。第3の層256は、第1の層252と同様の構造を有し、同様の方法で形成することができる。以上のプロセスにより、パッシベーション膜250が形成される。
【0099】
その後、フィル材260を介して対向基板202を固定する(図11)。フィル材260はポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ノボラック樹脂などの高分子材料を含むことができ、印刷法やラミネート法などを適用して形成することができる。フィル材260に乾燥剤が含まれていてもよい。対向基板202は基板200と同様の材料を含むことができる。表示装置100に可撓性を付与する場合には、対向基板202には、上述した高分子材料に加え、ポリオレフィン、ポリイミドなどの高分子材料を適用することも可能である。この場合、上述したように、基板200上に形成された基材上にトランジスタ220や発光素子104などの素子が形成され、その上に可撓性を有する対向基板202が接着剤によって固定される。その後、基板200と基材の界面にレーザなどの光を照射して基板200と基材間の接着性を低下させ、引き続き物理的に基板200を剥離することで可撓性の表示装置100を得ることができる。
【0100】
図示しないが、上述したように、対向基板202を用いず、偏光板(円偏光板)を形成してもよい。あるいは、対向基板202の上、あるいは下に偏光板を設けてもよい。
【0101】
上述したように、各画素102が与える色に応じて共振構造を形成する場合、厚さの異なる共振構造を各発光素子104にそれぞれ設ける必要があり、このため、例えばファインメタルマスクを用いる蒸着を3回行う必要がある。このため、表示装置の歩留まりが低下するだけでなく、表示装置の信頼性が低下する
【0102】
しかしながら本発明の実施形態の一つでは、ファインメタルマスクを用いる蒸着回数を減少させることができる。このため、歩留まり良く表示装置を製造することができ、色再現性が高く、消費電力が低く、かつ、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0103】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0104】
本明細書においては、開示例として主にEL表示装置の場合を例示したが、他の適用例として、その他の自発光型表示装置、液晶表示装置、あるいは電気泳動素子などを有する電子ペーパ型表示装置など、あらゆるフラットパネル型の表示装置が挙げられる。また、中小型から大型まで、特に限定することなく適用が可能である。
【0105】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0106】
100:表示装置、102:画素、102b:第1の画素、102g:第2の画素、102r:第3の画素、104:発光素子、104b:第1の発光素子、104g:第2の発光素子、104r:第3の発光素子、106:第1の電極、108:EL層、110:第2の電極、112:隔壁、113:開口部、114:正孔注入層、116:正孔輸送層、118:発光層、118b:発光層、118g:発光層、118r:発光層、120:電子輸送層、122:電子注入層、124:電子阻止層、130:第1のキャップ層、132:第2のキャップ層、134:第3のキャップ層、136:第4のキャップ層、140:表示装置、150:表示装置、160:表示装置、170:表示装置、180:表示装置、200:基板、202:対向基板、204:表示領域、206:走査線駆動回路、208:データ線駆動回路、210:端子、212:下地膜、214:ゲート絶縁膜、216:層間膜、220:トランジスタ、222:半導体膜、224:ゲート、226:ソース/ドレイン、228:開口、230:平坦化膜、232:接続電極、234:開口、236:開口、238:開口、240:付加容量、242:電極、244:絶縁膜、250:パッシベーション膜、252:第1の層、254:第2の層、256:第3の層、260:フィル材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
図18
図19