(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造について説明する。以下の実施形態では、鞍乗型車両が自動二輪車である例で説明する。
【0012】
図1は自動二輪車10の全体構成を示す側面図である。
【0013】
自動二輪車10は、車体フレーム11と、前輪20と、後輪22と、ハンドル装置38と、エンジン24とを備える。なお、以下の説明において、上下、前後及び左右について言及する場合、各方向は、次のように定義される。まず、自動二輪車10の前輪20及び後輪22が路面に接地する側が下であり、その反対側が上である。また、自動二輪車10が走行する際の走行方向が前であり、その反対側が後ろである。さらに、ユーザが運転者として自動二輪車10に搭乗した状態で、当該ユーザを基準とする左右が自動二輪車10の左右である。
【0014】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、メインフレーム13と、リアフレーム14とを備える。
【0015】
ヘッドパイプ12は、自動二輪車10の前側に設けられている。メインフレーム13は、ヘッドパイプ12から左右に分れつつ後方に延在している。
【0016】
ヘッドパイプ12には、ステアリングシャフト16が回転可能に挿通されている。ステアリングシャフト16には、アッパーブラケット17aとアンダーブラケット17bとが支持されている。アッパーブラケット17aとアンダーブラケット17bとによって、フロントフォーク18が下方に向けて延在するように支持されている。フロントフォーク18は、伸縮可能に構成されており、路面から車両への衝撃や、加減速による荷重変化を受止める。
【0017】
フロントフォーク18の下端に前輪20が回転可能に支持されている。
【0018】
ハンドル装置38がアッパーブラケット17a又はフロントフォーク18に備付けられている。このハンドル装置38を操作することで、ステアリングシャフト16、アッパーブラケット17a、アンダーブラケット17b及びフロントフォーク18が回転し、これと共に、上記前輪20も回転する。
【0019】
メインフレーム13の下側には、エンジン24等が搭載されており、メインフレーム13の上側には燃料タンク28等が搭載されている。
【0020】
リアフレーム14は、メインフレーム13の後端部から後方に延在している。ここでは、リアフレーム14は、メインフレーム13の後端部から斜め上方に向いつつ後方に延在している。リアフレーム14は、金属等で形成されたパイプによって構成されている。パイプは、中空フレームの一例である。リアフレームは、その他、金属板をプレス加工したフレーム、溶融した金属を鋳型に流し込んで作った鋳造フレーム、金属に対して金型等により圧力をかけて製造した鍛造フレーム等であってもよい。
【0021】
リアフレーム14には、乗員が着座可能なシート29が設けられている。シート29は、運転者が着座可能な運転者用シート29aと、同乗者が着座可能なタンデムシート29bとを備える。シート29において、運転者用シート29aは車両前側に設けられ、タンデムシート29bは車両後側に設けられている。
【0022】
リアフレーム14の車幅方向内側であってシート29の下方には、バッテリ、電磁制御機器等の部品90が収納されている(
図3参照)。
【0023】
メインフレーム13の後部に、スイングアーム15が後下方に向けて延在するように取付けられている。スイングアーム15は、その後端を上下に変位させるようにメインフレーム13に対して揺動可能に支持されている。このスイングアーム15の後端部に後輪22が回転可能に支持されている。
【0024】
本自動二輪車10では、ヘッドパイプ12の前方及びメインフレーム13の両側を覆うようにカウル32が設けられている。カウル32は省略されてもよい。
【0025】
上記のような自動二輪車10に、フレームに対するステー支持構造50が設けられている。ここでは、当該ステー支持構造50がリアフレーム14に対してタンデムステップ78を支持する箇所に適用した例で説明する。なお、支持するフレームは、メインフレーム13であってもよいし、また、支持対象物は、マフラー等、車体フレーム11の側方に支持される他の物であってもよい。
【0026】
図2はステー支持構造50の側面図であり、
図3は
図2のIII−III線における断面図であり、
図4はステー支持構造50をボルト80の軸方向に沿って下側から見た図であり、
図5は
図2のV−V線における断面図である。
【0027】
ステー支持構造50は、リアフレーム14に対してタンデムステップステー60を水平方向よりも下側に向けた姿勢で支持するものである。ここで、水平方向とは、重力方向に対して直交する方向をいう。ステー支持構造50は、リアフレーム14と、ステーとしてのタンデムステップステー60と、締結具としてのボルト80とを備える。
【0028】
リアフレーム14は、上記したように金属等で形成されたパイプによって構成されている。リアフレーム14には、ステー支持部52が設けられている。
【0029】
リアフレーム14には、その軸方向に対して交差する方向に貫通する貫通孔14hが形成されている。ここでは、リアフレーム14に2つのステー支持部52が設けられるので、リアフレーム14の延在方向に間隔をあけて2つの貫通孔14hが形成されている。各貫通孔14hは、パイプであるリアフレーム14のうち径方向に沿って対向する部分を貫通するように形成されており、その軸方向は、後述するボルト80の延在方向と一致するように、車幅内方向から車幅外方向に向けて斜め下方を向くように形成される。
【0030】
ステー支持部52は、リアフレーム14に対して複数設けられている。より具体的には、複数のステー支持部52は、リアフレーム14の延在方向に間隔をあけて2つ設けられている。
【0031】
ステー支持部52は、ボルト80を締結可能に構成されている。より具体的には、ステー支持部52は、内部にネジ孔53hが形成された筒形状のボス部53を含む。ボス部53は、筒本体部53aと、当該筒本体部53aよりも太い頭部53bとを含む。
【0032】
筒本体部53aは、リアフレーム14の貫通孔14hに貫通される部分である。筒本体部53aの外径寸法は、リアフレーム14の内径寸法よりも小さく、上記貫通孔14h内に配設可能な大きさに設定されている。また、筒本体部53aの長さ寸法は、リアフレーム14の外径寸法よりも大きい。
【0033】
頭部53bは、筒本体部53aの一端側に設けられており、その外径寸法は、筒本体部53aの外径寸法よりも大きく、かつ、上記貫通孔14hの内径寸法よりも大きく設定されている。頭部53bの外向き面は、平面状に形成されている。
【0034】
そして、リアフレーム14の車幅方向外側の斜め下方から、ボス部53を貫通孔14h内に貫通させると、貫通孔14hの車幅外方向の斜め下方の周縁部に当接させると共に、筒本体部53aを貫通孔14h内に配設して、筒本体部53aの先端部を貫通孔14hの車幅内方向の斜め上方に突出させた状態で、配設される。
【0035】
この状態で、貫通孔14hの両開口縁部で、ボス部53とリアフレーム14とが接合される。接合は、例えば、溶接によりなされる。接合箇所は、貫通孔14hの開口周縁部の全体であってもよいし、車両の前後方向部分等の部分的な箇所であってもよい。この状態では、ボス部53は、リアフレーム14をその軸方向に対して交差する方向に貫通した状態となる。
【0036】
このボス部53のうちリアフレーム14に対して車幅内方向に対して斜め上方向に突出する部分の突出寸法L1は、その内部の部品90に対して隙間を介在させることができる程度の大きさに設定されている。好ましくは、ボス部53のうちリアフレーム14に対して車幅内方向に対して斜め上方向に突出する先端部分が、リアフレーム14の車幅方向内側部分に対する上下方向接平面よりも、車幅方向内側に突出しないように設定されている。
【0037】
また、頭部53bは、リアフレーム14に対して車幅外方向に対して斜め下方向に突出した状態となる。頭部53bが、リアフレーム14に対して大きく突出している分、タンデムステップステー60を短くできる。もっとも、頭部53bの突出寸法は、車幅方向側方から見て、タンデムステップステー60の第1固定部62又は第2固定部64で隠せる程度であることが好ましい。
【0038】
なお、ネジ孔を有するステー支持部がリアフレームに対して貫通しないで当該リアフレームに溶接等で固定されていてもよい。また、リアフレーム自体にネジ孔が形成され、この部分がステー支持部として用いられてもよい。
【0039】
タンデムステップステー60は、同乗者が足を置くタンデムステップ78を支持するステーである。リアフレーム14に取付けられたタンデムシート29bに同乗者が着座して足をタンデムステップ78に乗せると、タンデムステップステー60には、下方向の荷重が掛る。
【0040】
タンデムステップステー60は、第1固定部62と、第2固定部64と、ステー本体部66と、ステップ支持部75と、フック受部76とを備えており、金属等で一体成形されている。フック受部76は省略されてもよい。また、タンデムステップステーにマフラー等が固定されてもよい。
【0041】
第1固定部62及び第2固定部64は、2つのステー支持部52に対してそれぞれ車幅外方向から斜め下方の箇所に固定可能に構成されている。第1固定部62は、2つのステー支持部52のうち車両後側のステー支持部52に固定される部分であり、第2固定部64は、2つのステー支持部52のうち車両前側のステー支持部52に固定される部分である。
【0042】
より具体的には、第1固定部62は、ボルト80を挿通して配設可能な貫通孔62hが形成された板状に形成されている。第1固定部62のうち車幅方向外側の先端部は弧状に形成されている。第1固定部62のうちステー本体部66が延出する側とは反対側の面は平面状に形成されており、上記頭部53bの外向き面と面接触可能に構成されている。
【0043】
第2固定部64は、ボルト80を挿通して配設可能な貫通孔64hが形成された板状に形成されている。第2固定部64のうち車幅方向外側の先端部は弧状に形成されている。第2固定部64のうちステー本体部66が延出する側とは反対側の面は平面状に形成されており、上記頭部53bの外向き面と面接触可能に構成されている。第2固定部64のうちボルト80が接触する部分も、平面状に形成されており、ボルト80の内向き面と面接触可能に構成されている。
【0044】
上記貫通孔62h、64hのうちの少なくとも1つは長孔に形成されている。ここでは、車両の前側の貫通孔64hが、当該2つの貫通孔62h、64hを結ぶ方向において長い長孔に形成されており、車両の後側の貫通孔62hは、円孔に形成されている。前側の貫通孔64hの短径方向の寸法は、クリアランスを確保できる程度にボルト80の外径寸法より大きく、長径方向の寸法はボルト80の外径寸法よりも大きく、貫通孔64hの短径方向の寸法よりも大きい。また、車両の後側の貫通孔62hの外径寸法は、クリアランスを確保できる程度にボルト80の外径より大きい。このため、ボルト80を貫通孔62hに貫通させた状態で、ネジ孔53hに螺合させると、第1固定部62の固定位置は一定となる。一方、貫通孔64hは長孔に形成されているため、2つのボス部53の相対的な位置関係が本来の相対的な位置関係からずれていたとしても、ボルト80を用いて第1固定部62及び第2固定部64をボス部53、53に固定することができる。なお、貫通孔62h、64hの両方が長孔に形成されていてもよい。この場合には、第1固定部62及び第2固定部64のいずれを先に固定してもよい。
【0045】
なお、第1固定部62及び第2固定部64に、頭部81を囲む囲い部を形成し、当該囲い部によって頭部81を隠すようにしてもよい。
【0046】
ステー本体部66は、第1基端部67と、第2基端部68と、延出部70とを備える。
【0047】
第1基端部67は、第1固定部62の車幅方向内側の基端部から車幅内方向に対して斜め下方向に向うように形成されている。第2基端部68は、第2固定部64の車幅方向内側の基端部から車幅内方向に対して斜め下方向に向うように形成されている。
【0048】
延出部70は、第1基端部67及び第2基端部68に対して第1曲げ部67a及び第2曲げ部68aを介して連結され、全体として、第1固定部62及び第2固定部64から、ボルト80の頭部81よりも車幅方向内側を通って下方向に向うように延在する形状に形成されている。ここで、下方に向うとは、真下に向う場合だけでなく、水平方向よりも下方に向うすべての場合を含む。
【0049】
より具体的には、延出部70は、第1連結部71と、第2連結部72と、延出本体部74とを備えている。
【0050】
第1連結部71は、長尺形状に形成されており、第1曲げ部67aを介して第1基端部67の車幅方向内側の端部に連結されている。ここでは、第1連結部71は、直線状に延在する形状であるが、他の例として、第1連結部が途中の一部で又は全体的に曲った形状であってもよい。車両前後方向で見ると、第1連結部71は、車幅外方に対して斜め下方に向うように延びている。また、車両幅方向で見ると、第1連結部71は、車両後方に対して斜め下方に向うように延びており、ここでは、リアフレーム14に対して直交して斜め下方向に向うように延びている。
【0051】
第2連結部72は、長尺形状に形成されており、第2曲げ部68aを介して第2基端部68の車幅方向内側の端部に連結されている。ここでは、第2連結部72は、直線状に延在する形状であるが、他の例として、第2連結部が途中の一部で又は全体的に曲った形状であってもよい。車両前後方向で見ると、第2連結部72は、車幅外方に対して斜め下方に向うように延びている。車両幅方向で見ると、第2連結部72は、車両後方に対して斜め下方に向うように延びており、ここでは、車両上下方向に対して第1連結部71よりも大きく後方に傾くように延びている。この第2連結部72の下端部は、第1連結部71の下端部に連結され、その連結部分から上記延出本体部74が延出している。つまり、第1連結部71と第2連結部72とはV字状をなして繋がっている。
【0052】
本実施形態の例は、リアフレーム14の延在方向に対して下側に直交する方向を基準にして考えると、車両前側の第2連結部72が、車両後側の第1連結部71よりも当該直交方向に対して後ろ側に大きく傾くように延びることで、第1連結部71と第2連結部72の下端部とが連結される構成であるといえる。他の例として、これとは逆に、車両後側の第1連結部が、車両前側の第2連結部よりも当該直交方向に対して前側に大きく傾くように延びることで、第1連結部と第2連結部の下端部とが連結される構成であってもよい。
【0053】
なお、第1曲げ部67a及び第2曲げ部68aのうち車幅内側を向く部分は、面取りされた形状に形成されている。具体的には、第1曲げ部67a及び第2曲げ部68aのうち車幅内側を向く部分は、車幅方向に対して垂直な面に沿って面取りされた形状に形成されている。
【0054】
これにより、第1曲げ部67a及び第2曲げ部68aのうち車幅内側を向く部分が、リアフレーム14の内側の部品90と干渉し難くなる。
【0055】
延出本体部74は、長尺形状に形成されており、第1連結部71と第2連結部72との下側の連結部分から延出している。車両前後方向で見ると、延出本体部74は、車幅外方に対して斜め下方に向う方向に延びている。車両幅方向で見ると、延出本体部74は、車両後方に対して斜め下方に向う方向に延びている。
【0056】
延出本体部74の下端部にステップ支持部75が設けられている。ステップ支持部75は、板状のステップ支持本体部75aと、一対の支持板部75bとを備える。ステップ支持本体部75aの外向き面に、一対の支持板部75bが間隔をあけて突設されている。同乗者の足を載置可能な程度の長尺形状に形成されたタンデムステップ78の基端部が一対の支持板部75bの間で支持ピンを介して倒伏及び突出可能に支持されている。タンデムステップ78が車幅方向外側に向けて突出した突出姿勢に姿勢変更することで、タンデムシート29bに着座した同乗者が足をタンデムステップ78上に載置することができる。タンデムステップ78が支持ピンを中心に上方に角変位すると、付勢体によって車両後方から斜め上方に倒れた格納状態に保持される。
【0057】
また、タンデムステップステー60は、外側に凸となるように形成された曲げ形状部分69を含む。ここでは、第2基端部68と延出本体部74との連結部分が外側に凸となるように形成された曲げ形状部分69に形成されている。このように、タンデムステップステー60に外側に凸となるように形成された曲げ形状部分69を設ければ、その部分を、車幅外方に逃すことができる。これにより、タンデムステップステー60の車幅方向内側に設けられる部品90とタンデムステップステー60との干渉を回避することができる。
【0058】
ステップ支持部75に対して車両後方に、フック受部76が設けられている。フック受部76には、下方に向けて開口し、その奥側で幅広となるフック受凹部76aが形成されている。タンデムシート29bに荷物を載せた場合等に、当該荷物を固定するためのゴム紐又はネットに取付けられたフックをフック受凹部76aに引っ掛けることができる。
【0059】
ボルト80は、頭部81と、ネジ部82とを備える。ネジ部82は、貫通孔62h、64hに挿通可能で、かつ、ネジ孔53hに螺合可能に形成されている。頭部81は、ネジ部82の基端部に設けられており、ネジ部82よりも太く形成されている。頭部81には、回転用の凹部81hとして、多角形穴(ここでは六角形穴)が形成されており、先端部が多角形状になった工具の先端部を当該多角形穴の凹部81hに嵌め込んだ状態で工具の先端部を回転させることによって、ボルト80の締付けを行うことができる。なお、ボルトとして、頭部が六角形状をなす六角ボルトが用いられてもよい。
【0060】
ボルト80は、車幅外側の斜め下方向から第1固定部62の貫通孔62h又は第2固定部64の貫通孔64hを通って、ステー支持部52のボス部53のネジ孔53hに螺合締結固定される。この状態では、頭部81は、第1固定部62又は第2固定部64の車幅外側の斜め下向き面に接触した状態で、車幅外方向に対して斜め下方を向く状態となる。また、ボルト80の先端部(ネジ部82のうち頭部81は反対側の端部)が貫通孔62h又は貫通孔64hを貫通してネジ孔53hに螺合し、車幅内方向に対して斜め上方向を向く姿勢となる。
【0061】
このため、自動二輪車10の側方から観察した場合、頭部の軸が車幅方向に沿って配設される場合と比較すると、当該頭部81は比較的小さく露出した状態となる。また、頭部81は車両外方向に対して斜め下方を向いているため、頭部が真下を向いている場合と比較すると、頭部81のネジ締め作業を比較的容易に行える。
【0062】
また、タンデムシート29bに着座した同乗者が足をタンデムステップ78に乗せた際、タンデムステップ78からタンデムステップステー60に伝わる荷重は下方向となる。ここで、仮にボルトが車幅方向又は前後方向に沿った姿勢であると、上記タンデムステップステー60を介して伝わった荷重は、ボルトに対して主として当該ボルトを剪断する方向又は曲げる方向に加わってしまう。これに対して、上記ボルト80は、上下方向に近い姿勢であるため、上記タンデムステップステー60を介して伝わった荷重は、主としてボルト80の引っ張り方向に加わる。このため、ボルト80によるタンデムステップステー60の支持強度を確保し易い。
【0063】
ボルト80をネジ締めする作業を想定すると、ボルト80の軸方向に沿って頭部81側でボルト80を締結するための工具を配設する空間を設けておくことが好ましい。
【0064】
そこで、ここでは、第1曲げ部67a及び第2曲げ部68aを、ボルト80の最大外形部分である頭部81を回転させた円形状軌跡の、その円形状軌跡の軸方向に沿った頭部81の移動軌跡T(
図2及び3参照)上に空間を設ける形状に形成されている。具体的には、延出本体部74が移動軌跡Tと重ならないように、第1固定部62及び第2固定部64に対する延出本体部74の延びる向きを設定している。第1固定部62及び第2固定部64に対する延出本体部74の基端側部分の突出角度は、例えば、90度であるが、90度以上であってもよい。これにより、ボルト80の頭部81側の延長上で、ボルト80を締結するための工具を容易に配設することができる。
【0065】
また、第1連結部71は、ボルト80の頭部81側の延長上で凹む凹溝71gが形成され、その両側で突出する補強凸部71aが形成された形状に形成されている。ここでは、補強凸部71aは、第1連結部71の両側外方に向けて徐々に突出寸法が大きくなる形状に形成されている。これにより、ボルト80の頭部81側の延長上で、ボルト80を締結するための工具を配設するための空間を確保しつつ、第1連結部71の強度を高めることができる。補強凸部71aは、省略されてもよい。
【0066】
以上のように構成された鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造50によると、ボルト80の頭部81が車幅外方に対して斜め下方を向くため、自動二輪車10の側方からボルト80の頭部81をなるべく露出させないようにできる。これにより、自動二輪車10の外観意匠の設定自由度に優れる。また、ボルト80の締付け作業を行うにあたっては、車幅方向に対して斜め下方から車幅方向内方向に対して斜め上方向を向く姿勢で実施できる。このため、車体側方からのボルト80の締付け作業を容易に実施できる。
【0067】
ボルト80の傾き角度は、例えば、上記頭部81の回転用の凹部81hの底を隠せる程度の大きさであることが好ましい。
【0068】
特に、上記ステー支持構造50をタンデムステップステー60の支持構造として適用すれば、次の利点を得ることができる。すなわち、カウル等で隠さなくても、ボルト80の頭部81を側方からなるべく露出させないようにできるため、意匠維持のための設計自由度が向上する。また、タンデムステップステー60を取付けたり、取外したりする作業を、自動二輪車10を立てた状態で、他の部品を取外さずに実施できる。このため、タンデムステップステー60の取付け及び取外し作業を容易に行える。
【0069】
また、タンデムステップ78は、リアフレーム14に対して車幅外方向に対して斜め下方に配設されるところ、タンデムステップステー60は、リアフレーム14に対して車幅外方向に対して斜め下方部分に固定されることになる。このため、タンデムステップステー60の支持箇所である第1固定部62、第2固定部64と、ステップ支持部75との距離をなるべく短くすることができ、タンデムステップステー60をなるべく短くすることができる。これにより、タンデムステップステー60によるタンデムステップ78の支持強度を向上させることができる。
【0070】
また、同乗者が足をタンデムステップ78にかけた場合の力は、主として下方に加わるところ、ボルト80の頭部81が車幅外方に対して斜め下方を向くため、当該力を有効に受止めることができる。
【0071】
また、タンデムステップステー60は、ボルト80の頭部81よりも車幅方向内側を通って下方に向うように延在する形状であるため、タンデムステップステー60に対して車幅外側からボルト80の頭部81を利用した締付け作業を実施できるので、作業効率がよい。
【0072】
なお、別の例として、ステーが、ボルトの頭部よりも車幅方向外側、車両前側又は後側を通って下方に向う構成であってもよい。
【0073】
また、タンデムステップステー60は、第1固定部62及び第2固定部64から車幅内方向に対して斜め下方向に向う第1基端部67及び第2基端部68と、第1基端部67及び第2基端部68に対して第1曲げ部67a及び第2曲げ部68aを介して連結されて車幅外方に対して斜め下方に向う延出部70とを含むため、第1固定部62及び第2固定部64の周囲でボルト80の締付け作業のための作業空間を確保し易い。
【0074】
特に、第1曲げ部67a、第2曲げ部68aが、ボルト80の頭部81を回転させた円形状軌跡の、当該円形状軌跡の軸方向に沿った頭部81側に移動軌跡T上に空間を設ける形状に形成されているため、ボルト80の締付け作業のための作業空間をより確保し易い。また、タンデムステップステー60は、外側に凸となるように形成された曲げ形状部分69を含むため、その内側の部品90と干渉し難くなる。
【0075】
また、第1連結部71は、ボルト80の頭部81の延長上で凹む凹溝71gが形成されると共に、その両側で突出する補強凸部71aが形成された形状であるため、ボルト80に対する締付け作業性を確保しつつ、タンデムステップステー60の強度向上が可能である。
【0076】
また、貫通孔62h、64hの少なくとも一方が長孔に形成されている。ため、その長孔に形成された貫通孔64hによって、2つのボス部53の組付誤差吸収を行うことができる。
【0077】
特に、貫通孔62hはボルト80を挿通可能な円孔であり、貫通孔64hが長孔に形成されているため、当該一方の貫通孔62hを、タンデムステップステー60を固定する基準位置としつつ、上記誤差吸収を行うことができる。
【0078】
また、ステー支持部52は、中空フレームであるリアフレーム14をその軸方向に対して交差する方向に貫通した状態で、当該リアフレーム14に接合されたボス部53を含むため、ボス部53をリアフレーム14に対して強固に固定することができ、また、このボス部53にタンデムステップステー60を固定することで、当該タンデムステップステー60を強固に固定できる。
【0079】
また、ボス部53のうちリアフレーム14に対して、車幅外方向に対して斜め下方向に突出する部分が、リアフレーム14内に貫通される筒本体部53aよりも太く形成された頭部53bを含む。このため、タンデムステップステー60の第1固定部62及び第2固定部64を、頭部53bになるべく大きく面接触させた状態で固定できる。これにより、タンデムステップステー60をより安定させた状態で固定できる。
【0080】
また、ボス部53のうちリアフレーム14に対して車幅内方向に対して斜め上方向に突出する先端部分の突出寸法が、その内部に部品90に対して隙間を介在させることができる程度の大きさに設定されているため、ボス部53がその内側の部品90に干渉し難くなる。
【0081】
なお、上記実施形態では、締結具がボルトである場合で説明したが、締結具はリベット等であってもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ステー支持部52が2つ設けられ、これに対応して第1固定部62及び第2固定部が設けられた例で説明した。ステー支持部、固定部は、それぞれ1つ設けられてもよいし、また、それぞれ3つ以上設けられてもよい。
【0083】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0084】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0085】
本願のステー支持構造は、自動二輪車に限らず、同乗者が乗車できるようにリアシート及びタンデムステップが設けられた車両であり、さらに、リアフレームにタンデムステップステーが取付けられる鞍乗型車両であれば適応できる。例えば、本ステー支持構造は、自動三輪車、ATV(All Terrain Vehicle)等に適用可能である。
【0086】
以上のように、本明細書は、下記の各態様に係る発明を含んでいる。
【0087】
第1の態様は、鞍乗型車両のフレームに対してステーを水平方向よりも下側に向けた姿勢で支持する鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、ステー支持部が設けられたフレームと、前記ステー支持部に対して車幅外方向から斜め下方の箇所に固定される固定部が設けられたステーと、頭部が車幅外方向に対して斜め下方を向くと共に先端部が車幅内方向に対して斜め上方向を向く姿勢で、前記固定部を貫通して前記ステー支持部に締結固定された締結具とを備える。
【0088】
これにより、頭部が車幅外方向に対して斜め下方を向くため、自動二輪車の側方から締結具の頭部をなるべく露出させないようにできる。また、締結具の締付け作業については、車幅外方に対して斜め下方から車幅内方向に対して斜め上方向を向く姿勢で実施できるため、車体側方からの締結具の締付け作業を実施し易くできる。
【0089】
第2の態様は、第1の態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記フレームは、乗員が着座可能なシート及びタンデムステップが設けられたリアフレームを含み、前記リアフレームに前記ステー支持部が設けられると共に、前記ステー支持部に、前記ステーとして、前記タンデムステップを支持するタンデムステップステーが支持されているものである。
【0090】
これにより、カウル等で隠さなくても、ボルトの頭部を側方からなるべく露出させないようにできるため、意匠維持のための設計自由度が向上する。また、タンデムステップステーを取付けたり、取外したりする作業を、自動二輪車を立てた状態で、他の部品を取外さずに実施できるため、タンデムステップステーの取付け及び取外し作業を容易に行える。
【0091】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記ステーは、前記締結具の前記頭部よりも、車幅方向内側を通って下方に向うように延在する形状とされているものである。
【0092】
これにより、ステーに対して車幅方向外側から、締結具の頭部を利用した締付け作業を実施できるので、作業効率がよい。
【0093】
第4の態様は、第3の態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記ステーは、前記固定部から車幅内方向に対して斜め下方向に向う基端部と、前記基端部に対して曲げ部を介して連結されて車幅外方に対して斜め下方に向う延出部と、を含むものである。
【0094】
これにより、固定部の周囲で締結具の締付け作業のための作業空間を確保し易い。
【0095】
第5の態様は、第4の態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記曲げ部が、前記締結具の最大外形部分を回転させた円形状軌跡の、その円形状軌跡の軸方向に沿った前記締結具の頭部側の移動軌跡上に空間を設ける形状に形成され、さらに、前記ステーは、外側に凸となるように形成された曲げ形状部分を含むものである。
【0096】
これにより、曲げ部が、前記締結具の最大外形部分を回転させた円形状軌跡の、その円形状軌跡の軸方向に沿った前記締結具の頭部側の移動軌跡上に空間を設ける形状に形成されているため、締結具の締付け作業のための作業空間を確保し易い。また、前記ステーは、外側に凸となるように形成された曲げ形状部分を含むため、その内側の部品と干渉し難くなる。
【0097】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記ステーは、前記締結具の頭部側延長上で凹み、その両側で突出する補強突部が形成された形状に形成されているものである。
【0098】
これにより、締結具に対する締付け作業性を確保しつつ、ステーの強度向上が可能である。
【0099】
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記フレームは、前記ステー支持部を複数含み、前記ステーは、前記複数のステー支持部のそれぞれに固定される前記固定部を複数含み、前記複数の固定部のそれぞれの貫通孔の少なくとも1つが長孔に形成されているものである。
【0100】
これにより、ステーを複数箇所で固定する場合において、長孔に形成された貫通孔によって、誤差吸収を行うことができる。
【0101】
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記フレームのうち前記ステー支持部が設けられた部分は、中空フレームであり、前記ステー支持部は、前記中空フレームをその軸方向に対して交差する方向に貫通した状態で、前記中空フレームに接合されたボス部を含むものである。
【0102】
これにより、ステーを強固に固定できる。
【0103】
第9の態様は、第8の態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記ボス部のうち前記中空フレームに対して車幅外方向に対して斜め下方向に突出する部分は、前記中空フレーム内に貫通される部分よりも太く形成された頭部を含むものである。
【0104】
これにより、ステーの固定部を、ボス部の頭部に面接触させた状態で固定できるため、ステーをより安定させた状態で固定できる。
【0105】
第10の態様は、第8又は第9の態様に係る鞍乗型車両のフレームに対するステー支持構造であって、前記ボス部のうち前記中空フレームに対して車幅内方向に対して斜め上方向に突出する部分の突出寸法は、その内部に部品に対して隙間を介在させることができる程度の大きさに設定されているものである。
【0106】
これにより、ボス部がその内側の部品に干渉し難くなる。