(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
《導電性高分子分散液》
本発明の第一態様の導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、後述の式(1)で表されるアリルエーテル化合物と、前記導電性複合体を分散させる分散媒とを含有する。
【0010】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0011】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
(ポリアニオン)
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。前記ポリアニオンは単一のモノマーの重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。
本明細書における質量平均分子量は、特に明記しない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
【0013】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下の範囲であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。
ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が高まる傾向にあり、導電性が向上することがあり、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性が高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であると、π共役系導電性高分子の相対的な含有量が高まり、充分な導電性が得られ易い。
【0014】
ポリアニオンが、π共役系導電性高分子に配位してドープすることによって導電性複合体を形成する。ただし、本態様のポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープすることはなく、ドープに寄与しない余剰のアニオン基を有するようになっていることが好ましい。
【0015】
(アリルエーテル化合物)
本態様において使用される、下記式(1)で表されるアリルエーテル化合物は、アリルエーテル基がR
1基に結合した化合物である。前記アリルエーテル化合物は、下記式(2)で表されるアリルエーテル化合物であってもよい。
【0016】
【化2】
[式(1)中、R
1は任意の置換基であり;式(2)中、R
2は任意の置換基である。]
【0017】
式(1)及び式(2)中、R
1及びR
2は有機基であることが好ましい。
前記有機基は、環式基又は第4級炭素原子を有することが好ましい。ここで、第4級炭素原子は4つの異なる炭素原子に結合する炭素原子である。
前記有機基が環式基又は第4級炭素原子を有すると、その有機基を有する前記アリルエーテル化合物は比較的嵩高い化合物となる。詳細なメカニズムは未解明であるが、嵩高い有機基を有するアリルエーテル化合物を用いることによって、形成される導電層の空気中での経時的な導電性の低下をより抑制することができる。
【0018】
前記環式基としては、例えば、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。さらに前記環式基として、上記の例示した環式基に結合する1つ以上の水素原子が炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基に置換された環式基も挙げられる。
前記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキサン等の炭素数4〜8の飽和単環炭化水素から1つ以上の水素原子を除いた基;シクロヘキセン等の炭素数4〜8不飽和単環炭化水素から1つ以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
前記芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン又はナフタレンから1つ以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0019】
前記有機基は、繰り返し構成単位が重合したポリマー部を有していてもよい。
前記ポリマー部としては、ポリエチレン、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンが好ましい。ここで、ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよいし、「エチレンと5モル%以下のαオレフィン単量体との共重合体」又は「エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ1モル%以下の非オレフィン単量体との共重合体」であってもよい。
【0020】
前記アリルエーテル化合物は、前記ポリマー部からなる主鎖と、前記主鎖に結合する1つ以上の側鎖とを有し、前記側鎖にアリルエーテル基が含まれた高分子化合物であってもよい。
前記高分子化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、0.1万〜10万が好ましく、0.5万〜6万がより好ましく、1万〜4万がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、前記導電層の空気中における経時的な導電性の低下をより抑制することができる。
【0021】
前記有機基が第4級炭素原子を有する場合、前記アリルエーテル化合物は下記式(1a)で表される化合物であることが好ましい。
【0022】
【化3】
[式(1a)中、X
1、X
2、X
3及びX
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキレン基であり、前記アルキレン基を構成する1つ以上のメチレン基は、酸素同士が結合する場合を除いて、−O−又は−C(=O)−によって置換されていてもよく;Y
2、Y
3及びY
4はそれぞれ独立に、水素原子、アリルエーテル基又は水酸基である。]
【0023】
前記式(1a)で表されるアリルエーテル化合物は、本発明の効果を増大させる観点から、以下の化合物であることが好ましい。
【0024】
前記X
1、X
2、X
3及びX
4の直鎖状アルキレン基の炭素数はそれぞれ独立して、1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
【0025】
前記Y
2、Y
3及びY
4のうち、何れか1つ以上がアリルエーテル基であることが好ましく、何れか2つ以上がアリルエーテル基であることがより好ましい。
前記Y
2、Y
3及びY
4のうち、少なくとも1つは水酸基であることが好ましい。
【0026】
前記式(1a)で表される具体的なアリルエーテル化合物としては、例えば、下記式(1a-1)で表されるトリメチロールプロパンジアリルエーテル、下記式(1a-2)で表されるペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
【0028】
前記有機基が前記環式基を有する場合、前記アリルエーテル化合物は下記式(1b)で表される化合物であることが好ましい。
【0029】
【化5】
[式(1b)中、環Qはシクロヘキサン環、シクロヘキセン環又はベンゼン環を表し;
W
11、W
12及びW
13はそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であり、前記アルキル基を構成する1つ以上のメチレン基は、酸素同士が結合する場合を除いて、−O−又は−C(=O)−によって置換されていてもよく;
X
11、X
12及びX
13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜5の直鎖状アルキレン基であり、前記アルキレン基を構成する1つ以上のメチレン基は、酸素同士が結合する場合を除いて、−O−又は−C(=O)−によって置換されていてもよく;
Y
12及びY
13はそれぞれ独立に、水素原子又はアリルエーテル基である。]
【0030】
前記式(1b)で表されるアリルエーテル化合物は、本発明の効果を増大させる観点から、以下の化合物であることが好ましい。
【0031】
前記環Qはベンゼン環又はシクロヘキサン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
【0032】
前記W
11、W
12及びW
13はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素素1〜3の直鎖状アルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0033】
前記Y
12及びY
13のうち、何れか1つ以上がアリルエーテル基であることが好ましく、何れか1つがアリルエーテル基であることがより好ましい。
【0034】
前記X
11は、前記置換されていてもよい前記直鎖状アルキレン基又は−C(=O)−であることが好ましく、−C(=O)−であることがより好ましい。
前記X
12は、前記Y
12がアリルエーテル基である場合に、前記置換されていてもよい前記直鎖状アルキレン基又は−C(=O)−であることが好ましく、−C(=O)−であることがより好ましい。また、前記X
12は、前記Y
12が水素原子である場合に、単結合であることが好ましい。
前記X
13は、前記Y
13がアリルエーテル基である場合に、前記置換されていてもよい前記直鎖状アルキレン基又は−C(=O)−であることが好ましく、−C(=O)−であることがより好ましい。また、前記X
13は、前記Y
13が水素原子である場合に、単結合であることが好ましい。
【0035】
前記式(1b)で表される具体的なアリルエーテル化合物としては、例えば、下記式(1b-1)で表されるオルソフタル酸ジアリルエステル、下記式(1b-2)で表されるイソフタル酸ジアリルエステルが挙げられる。
【0037】
好ましいアリルエーテル化合物として、例えば、下記式(1b-11)で表される高分子化合物、下記式(1b-22)で表される高分子化合物も例示できる。下記式におけるm、nは括弧で表す構成単位の繰り返しの数を表し、その数は任意の正数である。
【0039】
前記式(1b-11)で表される高分子化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、0.5万〜10万が好ましく、1万〜6万がより好ましく、2万〜4万がさらに好ましい。
前記式(1b-11)で表される高分子化合物としては、例えば、株式会社大阪ソーダ社製の、商品名:ダイソーダップA(Mw=5万〜6万、ヨウ素価=50〜60)、ダイソーダップS(Mw=3万〜4万、ヨウ素価=50〜60)、ダイソーダップK(Mw=2万〜3万、ヨウ素価=50〜60)が挙げられる。ここで、Mwはポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0040】
前記式(1b-22)で表される高分子化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、1万〜10万が好ましく、2万〜6万がより好ましく、3万〜5万がさらに好ましい。
前記式(1b-22)で表される高分子化合物としては、例えば、株式会社大阪ソーダ社製の、商品名:ダイソーイソダップ(Mw:3万〜5万、ヨウ素価=75〜90)が挙げられる。ここで、Mwはポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0041】
以上で説明したアリルエーテル化合物を前記導電性複合体が含まれる分散液に添加することによって、その分散液を塗工して形成される導電層の製造直後〜数日のうちに生じる空気中での経時的な導電性の低下を抑制することができる。このメカニズムの詳細は未解明であるが、アリルエーテル化合物同士が導電層中で架橋し、導電層のガスバリア性を向上させ、空気中の酸素が導電層中に浸入することを抑制することによって、大気暴露による導電性の劣化を防いでいる、と推測される。
【0042】
本態様の導電性高分子分散液に含まれる前記アリルエーテル化合物の種類は、1種類であってもよいし、2種類以上でもよい。
【0043】
本態様の導電性高分子分散液における前記アリルエーテル化合物の合計の含有量は、前記導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上2000質量部以下がさらに好ましい。アリルエーテル化合物の含有量が前記下限値以上であると、空気中での経時的な導電性の低下を抑制する効果がより高まり、前記上限値以下であると、π共役系導電性高分子濃度の低下による導電性低下を防止できる。
【0044】
(分散媒)
前記導電性複合体を分散させる分散媒は、水、有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合液であり、分散媒の総質量に対して60質量%以上の水を含む水系分散媒であってもよいし、分散媒の総質量に対して60質量%未満の水を含む又は水を含まない有機系分散媒であってもよい。
ここで、後述するバインダ成分の水分散性エマルションが導電性高分子分散液に含まれる場合、水分散性エマルションを構成する水分と前記導電性複合体を分散する水分とは区別されない。
前記分散媒が水系分散媒であると、前記導電性複合体の分散性が良く、塗工時の操作性に優れる。水系分散媒100質量%における水の含有量は、前記導電性複合体の分散性を向上させる観点から、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
一方、前記分散媒が有機系分散媒であると、フィルム基材に塗工した導電性高分子分散液の濡れ性がより高くなり、塗工された塗膜の乾燥速度がより速くなり、乾燥後に形成される導電層のフィルム基材に対する密着性がより高くなる。
【0045】
前記有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤等が挙げられる。前記分散媒を構成する有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
これらの有機溶剤のうち、前記アリルエーテル化合物の溶解性を高める観点から、メタノール及びイソプロパノール等の前記アルコール系溶剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0046】
(塩基性化合物)
本態様の導電性高分子分散液は、無機アルカリ、アミン化合物、四級アンモニウム塩、窒素含有芳香族性環式化合物等の塩基性化合物を含有してもよい。塩基性化合物を含むと、前記導電性複合体の前記有機系分散媒に対する分散性が向上する、という効果が得られる。
ここで「塩基性化合物」とは、プロトンを結合可能な孤立電子対(ローンペア)を有する炭素原子以外の原子(ヘテロ原子)を含む化合物又は水溶液中で解離して水酸化物イオンを発生する化合物をいう。ただし、前記塩基性化合物は前記アリルエーテル化合物以外の化合物である。
無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
アミン化合物としては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。
四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシド等が挙げられる。
窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、ピリジン等が挙げられる。
前記導電性高分子分散液に含まれる前記塩基性化合物は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0047】
本態様の導電性高分子分散液における前記塩基性化合物の合計の含有量は、前記導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下が好ましく、30質量部以上200質量部以下がより好ましく、60質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。前記塩基性化合物の含有量が前記下限値以上であると、π共役系導電性高分子の有機系分散媒への分散性が向上し、前記上限値以下であると、π共役系導電性高分子濃度低下による導電性低下を防止できる。
【0048】
(エポキシ化合物)
本態様の導電性高分子分散液は、エポキシ化合物を含有していてもよい。ここでエポキシ化合物は、エポキシ基を有する分子量10000未満の化合物であり、エポキシ基がポリアニオンのアニオン基と反応して化学結合を形成する。つまり、エポキシ化合物は、ポリアニオンのアニオン基、特にドープに関与しない余剰のアニオン基に配位結合又は共有結合を形成し、導電性複合体を疎水化することができる。疎水化された導電性複合体は有機溶剤に対する分散性が高くなる。この場合、前記分散媒は、エポキシ化合物又はエポキシ化合物と反応したポリアニオンの分散性を向上させる観点から、有機系分散媒であることが好ましい。
エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、アジピン酸グリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。
前記導電性高分子分散液に含まれる前記エポキシ化合物は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0049】
本態様の導電性高分子分散液において、前記導電性複合体に結合したエポキシ化合物の量は、前記導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上500質量部以下であることが好ましく、5質量部以上400質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上300質量部以下であることがさらに好ましい。エポキシ化合物の量が前記下限値以上であれば、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性がより高くなり、前記上限値以下であれば、導電性の低下を防ぐことができる。
【0050】
(バインダ成分)
本態様の導電性高分子分散液は、得られる導電層の製膜性を向上させるために、バインダ成分を含有してもよい。バインダ成分は、前記π共役系導電性高分子、前記ポリアニオン、前記アリルエーテル化合物、前記塩基性化合物、及び前記エポキシ化合物以外の高分子である。バインダ成分を含有することにより、導電性高分子分散液をフィルム基材に塗布してなる塗膜の強度を高めることができる。
前記高分子の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
前記導電性高分子分散液に含まれるバインダ成分は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0051】
導電性高分子分散液を構成する分散媒が水系分散媒である場合、バインダ成分は、水系分散液中に分散可能な水分散性樹脂が好ましく、分散媒中でエマルションにされた水分散性エマルションであることがより好ましい。
水分散性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの水分散性樹脂が有する官能基、例えばカルボキシ基やスルホ基等の酸基は、カウンターカチオンと結合した塩を形成していてもよい。前記水分散性樹脂は水溶性であってもよい。ここで、水溶性とは、25℃の蒸留水(100質量%)に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、溶解する性質をいう。
水分散性エマルションとしては、前記水分散性樹脂がエマルションにされたものが挙げられる。
導電性高分子分散液をポリエステルフィルム基材に塗布する場合には、塗膜の密着性が高くなることから、バインダ成分はポリエステルエマルションであることが好ましい。
バインダ成分は、1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
【0052】
導電性高分子分散液を構成する分散媒が水系分散媒である場合、バインダ成分の固形分の含有割合は、導電性複合体の固形分100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上1000質量部以下であることがより好ましく、50量部以上500質量部以下であることがさらに好ましい。
バインダ成分の含有割合が前記下限値以上であると、製膜性と膜強度を向上させることができる。バインダ成分の含有割合が前記上限値以下であると、充分な導電性が得られ易い。
【0053】
導電性高分子分散液を構成する分散媒が有機系分散媒である場合、バインダ成分としては、例えば、熱硬化性化合物、活性エネルギー線硬化性化合物が挙げられる。導電性高分子分散液が熱硬化性化合物を含有する場合には、熱重合開始剤も含有することが好ましく、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する場合には、光重合開始剤も含有することが好ましい。
また、バインダ成分として付加硬化型シリコーンを含有してもよい。この場合、白金触媒も併せて含有することが好ましい。
【0054】
有機系分散媒に含有させるバインダ成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、分子量10000以上のエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、低コストである点では、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。特に、導電性フィルムの基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合には、基材に対する導電層の密着性がより高くなることから、バインダ成分がポリエステル樹脂であることが好ましい。バインダ成分として、シリコーン樹脂を用いた場合には、導電層に離型性を発揮させることができる。
【0055】
熱硬化性化合物及び活性エネルギー線硬化性化合物としては、ビニル基を有する化合物、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を有する化合物、エポキシ基を2つ以上有する分子量10000以上の化合物、オキセタン基を2つ以上有する化合物等が挙げられる。これらは、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよい。
【0056】
活性エネルギー線硬化性化合物は、活性エネルギー線(紫外線、電子線、可視光線)の照射によって重合して硬化する化合物である。活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル等のモノマー、これらモノマーが重合したオリゴマー等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化性化合物は、重合性基を1つ有する単官能化合物でもよいし、重合性官能基を2つ以上有する多官能化合物でもよい。
有機溶剤に分散又は溶解させやすく、硬化が容易であることから、活性エネルギー線硬化性のアクリル化合物が好ましい。ここで、アクリル化合物は、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を1つ以上有する化合物である。
【0057】
アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート等が挙げられる。
メタクリレートとしては、例えば、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペリジン等が挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性アクリル化合物は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリアクリルアクリレート等の、アクリルモノマーと他の化合物とを反応させて得た多官能アクリレートであってもよい。
【0058】
バインダ成分は、硬化型シリコーンであってもよい。バインダ成分が硬化型シリコーンである場合、硬化型シリコーンを硬化させることにより、導電層に離型性を発現させることができる。
硬化型シリコーンは、付加硬化型シリコーン、縮合硬化型シリコーンのいずれであってもよい。
バインダ成分が付加硬化型シリコーンである場合、共存する化合物(例えばアミン化合物)によっては硬化阻害が生じるので、この硬化阻害を考慮して硬化型シリコーンの適用の可否を検討する。
付加硬化型シリコーンとしては、シロキサン結合を有する直鎖状ポリマーであって、前記直鎖の両方の末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサンと、ハイドロジェンシランとを有するものが挙げられる。このような付加硬化型シリコーンは、付加反応によって三次元架橋構造を形成して硬化する。硬化を促進させるために白金系硬化触媒を用いてもよい。
付加硬化型シリコーンの具体例としては、KS−3703T、KS−847T、KM−3951、X−52−151、X−52−6068、X−52−6069(信越化学工業社製)等が挙げられる。
付加硬化型シリコーンは有機溶剤に溶解又は分散しているものが好適に使用される。
【0059】
導電性高分子分散液を構成する分散媒が有機系分散媒である場合、バインダ成分の含有割合は、前記導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上100000質量部以下が好ましく、300質量部以上60000質量部以下がより好ましく、600質量部以上30000質量部以下がより好ましい。バインダ成分の含有割合が前記下限値以上であると、形成される導電層の強度及び硬度がより一層高まり、前記上限値以下であると、充分な導電性を確保できる。
【0060】
(高導電化剤)
導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、前記導電性複合体を含む導電層の導電性を向上させる高導電化剤を含んでもよい。
ただし、高導電化剤は、前記ポリアニオン、前記アリルエーテル化合物、前記分散媒、前記塩基性化合物、前記エポキシ化合物、及び前記バインダ成分以外の化合物である。
具体的に、高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。前記導電性高分子分散液に含まれる高導電化剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0061】
窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
【0062】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、N−ビニルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、4−ピリジンメタノール、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0063】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール(N−ヒドロキシエチルイミダゾール)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルベンズイミダゾール、2−ヒドロキシベンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0064】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0065】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0066】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0067】
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類;
セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール;
1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0068】
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
【0069】
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素及び尿素誘導体などが挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0070】
また、アミド化合物として、アクリルアミドを使用することもできる。アクリルアミドとしては、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
アミド化合物の分子量は46以上10,000以下であることが好ましく、46以上5,000以下であることがより好ましく、46以上1,000以下であることが特に好ましい。
【0071】
アミド化合物としては、導電性がより高くなることから、イミド結合を有する単分子化合物(以下、イミド化合物という。)が好ましい。イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0072】
また、イミド化合物は両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。
さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有さない飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。
飽和脂肪族イミド化合物は、R1−CO−NH−CO−R2で表される化合物であり、R1,R2の両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。
不飽和脂肪族イミド化合物は、R1−CO−NH−CO−R2で表される化合物であり、R1,R2の一方又は両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。具体例は、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
イミド化合物の分子量は60以上5,000以下であることが好ましく、70以上1,000以下であることがより好ましく、80以上500以下であることが特に好ましい。
【0073】
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR−(Rは水素又は任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。
ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
【0074】
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
【0075】
高導電化剤の含有割合は導電性複合体の合計質量に対して1倍量以上1000倍量以下であることが好ましく、2倍量以上100倍量以下であることがより好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
【0076】
(添加剤)
導電性高分子分散液には、公知の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
ただし、前記添加剤は、前記ポリアニオン、前記アリルエーテル化合物、前記分散媒、前記塩基性化合物、前記エポキシ化合物、前記バインダ成分、及び前記高導電化剤以外の化合物である。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0077】
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体の固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0078】
《導電性高分子分散液の製造方法》
本発明の第二態様は、第一態様の導電性高分子分散液を製造する方法である。
本態様で使用する導電性複合体の水系分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水系分散媒中に分散された分散液である。
前記水系分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合することにより得られる。また、前記水系分散液は市販のものを使用しても構わない。
【0079】
本態様の第一実施形態は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液に、前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物を添加する工程を有する、導電性高分子分散液の製造方法である。
前記導電性複合体、前記水系分散液及びこれを構成する水系分散媒、並びに前記アリルエーテル化合物の説明は、第一態様における説明と同様であるので省略する。
前記水系分散液に前記アリルエーテル化合物を添加する方法は特に限定されず、例えば、秤量した前記アリルエーテル化合物を前記水系分散液に添加して、撹拌する方法が挙げられる。その添加量は、第一態様で前述した前記導電性複合体の含有量に応じて適宜調整できる。
バインダ成分、高導電化剤、添加剤等を含有させる場合には、前記水系分散液に対して前記アリルエーテル化合物を添加した後に、バインダ成分、高導電化剤、添加剤等を添加することが好ましい。
【0080】
本態様の第二実施形態は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液を乾燥させて乾燥体を得る乾燥工程と、前記乾燥体にアミン化合物、有機系分散媒、及び前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物を添加して導電性混合液を調製する導電性混合液調製工程と、を有する、導電性高分子分散液の製造方法である。
前記導電性複合体、前記水系分散液及びこれを構成する水系分散媒、前記アミン化合物、前記有機系分散媒、並びに前記アリルエーテル化合物の説明は、第一態様における説明と同様であるので省略する。
前記乾燥工程における乾燥方法としては、風乾、温風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の公知方法が適用できる。
前記導電性混合液調製工程において、前記乾燥体に前記アミン化合物、前記有機系分散媒及び前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物を添加する方法は特に限定されず、例えば、前記有機系分散媒に前記乾燥体を添加して撹拌し、次いで前記アミン化合物を添加して撹拌し、さらに前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物を添加して撹拌する方法が挙げられる。また、予め前記アミン化合物及び前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物を溶解した有機系分散媒に前記乾燥体を添加して撹拌する方法でもよい。
前記有機系分散媒に対する乾燥体の量は、前記有機系分散媒に分散可能な量であれば特に限定されず、例えば、前記有機系分散媒1000質量部に対して1質量部以上20質量部以下が挙げられる。乾燥体の量に応じて、前記アミン化合物の添加量を第一態様で前述した含有量に応じて適宜調整すればよい。
前記アリルエーテル化合物を添加する方法は特に限定されず、例えば、秤量した前記アリルエーテル化合物を前記アミン化合物と同様に前記有機系分散媒に添加して、撹拌する方法が挙げられる。その添加量は、第一態様で前述した前記導電性複合体の含有量に応じて適宜調整できる。
バインダ成分、高導電化剤、その他の添加剤等を含有させる場合には、前記有機系分散媒、アミン化合物及び前記式(1)で表される化合物を添加した後に、バインダ成分、高導電化剤、添加剤等を添加することが好ましい。
【0081】
本態様の第三実施形態は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液にエポキシ化合物を添加して導電性複合体を析出させて析出物を形成させる析出工程と、前記析出物を回収する回収工程と、回収した前記析出物に有機系分散媒及び前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物を添加して導電性混合液を調製する導電性混合液調製工程と、有する、導電性高分子分散液の製造方法である。
前記導電性複合体、前記水系分散液及びこれを構成する水系分散媒、前記エポキシ化合物、前記有機系分散媒、及び前記アリルエーテル化合物の説明は、第一態様における説明と同様であるので省略する。
【0082】
前記析出工程において、前記水系分散液に添加する前記エポキシ化合物の量としては、前記導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上5000質量部以下であることが好ましく、500質量部以上2500質量部以下であることがより好ましい。エポキシ化合物の含有割合が前記下限値以上であると、導電性複合体の水系分散媒に対する分散性がより低くなり、析出が容易になる。前記上限値以下であると、エポキシ化合物による意図しない副反応を避けられる。
前記析出工程において、前記水系分散液に前記エポキシ化合物を添加すると、エポキシ化合物のエポキシ基の少なくとも一部が、ポリアニオンのアニオン基と反応する。これにより、導電性複合体は疎水性になるため、水系分散液中での疎水性相互作用により、前記導電性複合体が析出した析出物が形成される。前記反応における前記水分散液の温度及び反応時間としては、例えば、40〜80℃で1〜10時間が挙げられる。
前記回収工程において、前記析出物を回収する方法は特に限定されず、例えば、公知の濾過方法により、前記水系分散液から前記析出物を回収する方法が挙げられる。
回収された析出物に含まれる水分量はできるだけ少ないことが好ましく、水分を全く含まないことが最も好ましい。実用の観点からは、回収した析出物の総質量に対して水分を10質量%以下の範囲で含んでも構わない。前記水分量を少なくする方法としては、例えば、有機溶剤で析出物を洗い流す方法、析出物を乾燥する方法等が挙げられる。
【0083】
前記導電性混合液調製工程において、前記析出物に前記有機系分散媒及び前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物を添加する方法は特に限定されず、例えば、前記析出物に前記有機系分散媒及び前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物を添加して撹拌する方法が挙げられる。撹拌方法としては、例えば、スターラー等を用いた弱い剪断力で攪拌する方法、ホモジナイザー等を用いた強い剪断力で攪拌する方法等が挙げられる。
前記有機系分散媒に対する前記析出物の量は、前記有機系分散媒に分散可能な量であれば特に限定されず、例えば、前記有機系分散媒1000質量部に対して1質量部以上20質量部以下が挙げられる。
【0084】
前記アリルエーテル化合物を添加する方法は特に限定されず、例えば、秤量した前記アリルエーテル化合物を前記有機系分散媒とともに添加して、撹拌する方法が挙げられる。その添加量は、第一態様で前述した前記導電性複合体の含有量に応じて適宜調整できる。
バインダ成分、高導電化剤、その他の添加剤等を含有させる場合には、前記有機系分散媒及び前記式(1)で表される化合物を添加した後に、バインダ成分、高導電化剤、添加剤等を添加することが好ましい。
【0085】
第三実施形態の製造方法で得た導電性高分子分散液では、ポリアニオンのアニオン基がエポキシ化合物によって非親水化されているため、前記導電性複合体を前記有機系分散媒中に高い分散性で分散させることができる。
また、前記エポキシ化合物によって前記導電性複合体の前記有機系分散媒に対する分散性を向上できるので、アミン化合物は配合されていなくても構わない。アミン化合物を配合していない前記有機系分散媒には、アミン化合物が存在すると硬化阻害が生じる付加硬化型シリコーンをバインダ成分として添加することができる。
【0086】
<作用効果>
以上で説明した本発明の第一態様の導電性高分子分散液、及び第二態様の製造方法によって得られた導電性高分子分散液が前記アリルエーテル化合物を含有することによって、形成される導電層の空気中での経時的な導電性低下を抑制できる。このメカニズムの詳細は未解明であるが、アリルエーテル化合物同士が導電層中で架橋し、導電層のガスバリア性を向上させ、空気中の酸素が導電層中に浸入することを抑制することによって、大気暴露による導電性の劣化を防いでいる、と推測される。
【0087】
《導電性フィルムの製造方法》
本発明の第三態様は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、第一態様の導電性高分子分散液を塗工する塗工工程を有する、導電性フィルムの製造方法である。
前記製造方法は、前記塗工工程において塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜(導電層)を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。
前記導電性高分子分散液が活性エネルギー線硬化性のバインダ成分を含有する場合には、前記乾燥工程後に、乾燥した導電性高分子の塗膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程をさらに有してもよい。活性エネルギー線照射工程を有すると、導電層の形成速度を速くでき、導電性フィルムの生産性が向上する。
【0088】
本態様の製造方法により得られる導電性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備え、導電層が、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、前記アリルエーテル化合物又は前記アリルエーテル化合物同士の反応物とを含有する。
前記導電層の平均厚さとしては、10nm以上20000nm以下であることが好ましく、20nm以上10000nm以下であることがより好ましく、30nm以上5000nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
【0089】
前記フィルム基材としては、例えばプラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレート、セルローストリアセテートが好ましい。
前記フィルム基材用樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
また、フィルム基材には、導電性高分子分散液から形成される導電層の密着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0090】
前記フィルム基材の平均厚みとしては、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本明細書における部材の厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0091】
前記塗工工程において導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
前記導電性高分子分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、固形分として、0.1g/m
2以上10.0g/m
2以下の範囲であることが好ましい。
【0092】
前記乾燥工程において乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定され、例えば、50℃以上150℃以下に設定できる。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
【0093】
活性エネルギー線照射工程を有する場合、使用される活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外線照射における照度は100mW/cm
2以上が好ましい。照度が100mW/cm
2未満であると、活性エネルギー線硬化性のバインダ成分が充分に硬化しないことがある。また、積算光量は50mJ/cm
2以上が好ましい。積算光量が50mJ/cm
2未満であると、充分に架橋しないことがある。なお、本明細書における照度、積算光量は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300nm以上390nm以下、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【0094】
本態様の導電性フィルムの製造方法により形成される導電層は、空気中での経時的な導電性低下が抑制されている。
フィルム基材に塗工する導電性高分子分散液の分散媒が有機系分散媒であり、その塗工面に親水処理が施されていない場合、導電性高分子分散液の塗工面に対する親和性は、水系分散媒の場合と比べて高い。この結果、導電性複合体の有機系分散液を用いて形成した導電層はフィルム基材に対する密着性が向上する。
【0095】
《導電性フィルム》
第三態様の方法で製造された導電性フィルムは、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、前記式(1)で表されるアリルエーテル化合物又は前記アリルエーテル化合物同士の反応物と、を含有する導電層がフィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電性フィルムである。
前記導電性複合体及び前記アリルエーテル化合物の説明は、第一態様における説明と同じであるため省略する。
前記フィルム基材としては、例えば、第三態様で例示したプラスチックフィルムが挙げられる。
前記導電層の平均厚さとしては、10nm以上20000nm以下であることが好ましく、20nm以上10000nm以下であることがより好ましく、30nm以上5000nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
前記導電層に含まれる前記アリルエーテル化合物の合計の量は、導電層の総質量に対して、例えば、1質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましい。前記アリルエーテル化合物又は前記アリルエーテル化合物同士の含有量が上記範囲の下限値以上であると、空気中での経時的な導電性低下が抑制されるとともに、導電性が良好となる傾向がある。
【実施例】
【0096】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0097】
(製造例2)π共役系導電性高分子とポリアニオンを含む導電性高分子分散液の合成
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
次いで、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)の水系分散液を得た。
【0098】
(製造例3)
製造例2で得たPEDOT−PSSの水系分散液1000gを凍結乾燥して、12gのPEDOT−PSS(導電性複合体)の凍結乾燥体を得た。
【0099】
(製造例4)
イソプロパノール1000gに、4.0gのPEDOT−PSSの凍結乾燥体と、3.5gのトリオクチルアミンを加え、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、π共役系導電性高分子とポリアニオンとアミンを含む(即ちPEDOT−PSS及びトリオクチルアミンを含む)導電性混合液を得た。
【0100】
(製造例5)
製造例2で得たPEDOT−PSSの水系分散液100gに、メタノール300g及びエポキシ化合物(共栄社化学株式会社製エポライトM−1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを加え、60℃で4時間加熱攪拌した。このとき、PEDOT−PSSにおいてPSSのPEDOTと結合していない余剰のスルホン酸基にエポキシ化合物が結合し、余剰のスルホン酸基が消失した。この結果、PEDOT−PSSの水分散性が低下し、PEDOT−PSSとこれに結合したエポキシ化合物を含む導電性複合体が析出した。この析出物を濾過により回収し、1.575gの導電性複合体を得た。
次に、315gのメチルエチルケトンに上記の導電性複合体を添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエポキシ化合物を含む(即ちPEDOT−PSSとエポキシ化合物を含む)導電性混合液を得た。
【0101】
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSSの水系分散液10gに、メタノール80gと、水分散ポリエステルのプラスコートRZ−105(互応化学工業株式会社製、固形分濃度25質量%の水溶液)10gと、トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gを加え、導電性高分子分散液からなる塗料を得た。この塗料をPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)上に#2のバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥して、導電層が表面に形成された導電性フィルムを得た。
【0102】
(実施例2)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gを0.5gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例3)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gをペンタエリスリトールテトラアリールエーテル0.25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例4)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gをペンタエリスリトールテトラアリールエーテル0.5gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例5)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップA(Mw=5万〜6万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)0.25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例6)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップS(Mw=3万〜4万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)0.25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例7)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップK(Mw=2万〜3万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)0.25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例8)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gを前記式(1b-22)で表されるダイソーイソダップ(Mw:3万〜5万、ヨウ素価=75〜90)(株式会社大阪ソーダ社製)0.25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例9)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gを前記式(1b-1)で表されるダイソーダップモノマー(株式会社大阪ソーダ社製)0.25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例10)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.25gを前記式(1b-2)で表されるダイソーダップ100モノマー(株式会社大阪ソーダ社製)0.25gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例1)
トリメチロールプロパントリアリルエーテルを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
【0103】
<評価>
各例の導電性フィルムについて、作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期の表面抵抗値)R0と、温度25℃且つ湿度50%に調整された空気に導電層の表面が曝された状態(以下、大気暴露の状態という。)で7日間放置した後の表面抵抗値(大気暴露後の表面抵抗値)R1と、をそれぞれ測定した。その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。各測定結果を表1に示す。
【0104】
各測定結果における表面抵抗値(単位:Ω/□)が小さい程、導電性が高いことを示す。また、R1/R0で表される表面抵抗値の比の値が小さい程、製造後の経時的な導電性低下を抑制できたことを示している。
表1の結果において、実施例1〜10の導電性フィルムでは、製造直後〜7日間の経時的な導電性低下が抑制されていたが、比較例1では抑制されていなかった。
【0105】
【表1】
【0106】
(実施例11)
製造例4で得た導電性混合液81.25gに、ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製アートレジンUN−904M、固形分濃度80質量%のメチルエチルケトン溶液) 3.75gと、ジアセトンアルコール15gと、イルガキュア127の0.075gと、トリメチロールプロパントリアリルエーテル1.2gを加え、導電性高分子分散液からなる塗料を作成した。この塗料をPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)上に#2のバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥して、導電層が表面に形成された導電性フィルムを得た。
【0107】
(実施例12)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル1.2gを、ペンタエリスリトールテトラアリールエーテル1.2gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例13)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル1.2gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップA(Mw=5万〜6万、ヨウ素価=50〜60)1.2gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例14)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル1.2gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップS(Mw=3万〜4万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)1.2gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例15)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル1.2gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップK(Mw=2万〜3万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)1.2gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例16)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル1.2gを前記式(1b-22)で表されるダイソーイソダップ(Mw:3万〜5万、ヨウ素価=75〜90)(株式会社大阪ソーダ社製)1.2gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例17)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル1.2gを前記式(1b-1)で表されるダイソーダップモノマー(株式会社大阪ソーダ社製)1.2gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例18)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル1.2gを前記式(1b-2)で表されるダイソーダップ100モノマー(株式会社大阪ソーダ社製)1.2gに変えたこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例2)
トリメチロールプロパントリアリルエーテルを添加しなかったこと以外は、実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
<評価>
各例の導電性フィルムについて、実施例1と同様に、初期の表面抵抗値R0と、大気暴露大気暴露後の表面抵抗値R1と、をそれぞれ測定した。各測定結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
(実施例19)
製造例5で得た導電性混合液85gに、ポリエステル(東洋紡株式会社バイロン240、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液)15gと、トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.6gを加え、導電性高分子分散液からなる塗料を作成した。この塗料をPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)上に#2のバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥して、導電層が表面に形成された導電性フィルムを得た。
(実施例20)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.6gをペンタエリスリトールテトラアリールエーテル0.6gに変えたこと以外は、実施例19と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例21)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.6gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップA(Mw=5万〜6万、ヨウ素価=50〜60)0.6gに変えたこと以外は、実施例19と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例22)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.6gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップS(Mw=3万〜4万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)0.6gに変えたこと以外は、実施例19と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例23)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.6gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップK(Mw=2万〜3万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)0.6gに変えたこと以外は、実施例19と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例24)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.6gを前記式(1b-22)で表されるダイソーイソダップ(Mw:3万〜5万、ヨウ素価=75〜90)(株式会社大阪ソーダ社製)0.6gに変えたこと以外は、実施例19と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例25)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.6gを前記式(1b-1)で表されるダイソーダップモノマー(株式会社大阪ソーダ社製)0.6gに変えたこと以外は、実施例19と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例26)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.6gを前記式(1b-2)で表されるダイソーダップ100モノマー(株式会社大阪ソーダ社製)0.6gに変えたこと以外は、実施例19と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例3)
トリメチロールプロパントリアリルエーテルを添加しなかったこと以外は、実施例19と同様にして導電性フィルムを得た。
<評価>
各例の導電性フィルムについて、実施例1と同様に、初期の表面抵抗値R0と、大気暴露大気暴露後の表面抵抗値R1と、をそれぞれ測定した。ただし、実施例19〜26においては、大気暴露の期間を5日間に変更した。各測定結果を表3に示す。
【0110】
【表3】
【0111】
(実施例27)
製造例5で得た導電性混合液4.5gに、付加硬化型シリコーンのKS−3703T(信越化学工業社製、固形分30%、トルエン溶液)15gと、トルエン25.5gと、メチルエチルケトン58.5gと、白金触媒のCAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.03gと、トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.45gを加え、導電性高分子分散液からなる塗料を作成した。この塗料をPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)上に#8のバーコーターを用いて塗布し、150℃で1分間乾燥して、導電層が表面に形成された導電性フィルムを得た。
(実施例28)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.45gをペンタエリスリトールテトラアリールエーテル0.45gに変えたこと以外は、実施例27と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例29)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.45gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップA(Mw=5万〜6万、ヨウ素価=50〜60)0.45gに変えたこと以外は、実施例27と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例30)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.45gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップS(Mw=3万〜4万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)0.45gに変えたこと以外は、実施例27と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例31)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.45gを前記式(1b-11)で表されるダイソーダップK(Mw=2万〜3万、ヨウ素価=50〜60)(株式会社大阪ソーダ社製)0.45gに変えたこと以外は、実施例27と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例32)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.45gを前記式(1b-22)で表されるダイソーイソダップ(Mw:3万〜5万、ヨウ素価=75〜90)(株式会社大阪ソーダ社製)0.45gに変えたこと以外は、実施例27と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例33)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.45gを前記式(1b-1)で表されるダイソーダップモノマー(株式会社大阪ソーダ社製)0.45gに変えたこと以外は、実施例27と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例34)
トリメチロールプロパントリアリルエーテル0.45gを前記式(1b-2)で表されるダイソーダップ100モノマー(株式会社大阪ソーダ社製)0.45gに変えたこと以外は、実施例27と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例4)
トリメチロールプロパントリアリルエーテルを添加しなかったこと以外は、実施例27と同様にして導電性フィルムを得た。
<評価>
各例の導電性フィルムについて、実施例1と同様に、初期の表面抵抗値R0と、大気暴露大気暴露後の表面抵抗値R1と、をそれぞれ測定した。ただし、実施例27〜34においては、大気暴露の期間を1日間に変更した。各測定結果を表4に示す。
【0112】
【表4】