特許第6817852号(P6817852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817852
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】医療用容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/10 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   A61J1/10 335B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-35128(P2017-35128)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-139752(P2018-139752A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】川本 英二
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−78810(JP,A)
【文献】 実開昭62−111033(JP,U)
【文献】 特開平9−323377(JP,A)
【文献】 特開平8−11922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体内に収容された医療用液体と、前記容器本体に設けられ、医療用具が接続可能なポートとを有する医療用容器であって、
前記ポートは、医療用具接続可能部を備え、前記医療用容器は、前記ポートに剥離可能に固着され、かつ、前記医療用具接続可能部を被包する保護シートを備え、
前記保護シートは、樹脂製延伸フィルムを備え、前記樹脂製延伸フィルムは、穿刺部材の穿刺時に延伸方向に延びる穿刺痕が形成されるものであり、
前記保護シートは、前記樹脂製延伸フィルムの上面に配置され、前記樹脂製延伸フィルムを視認可能な透明の補強層を備え、前記補強層は、前記保護シートの前記ポートとの固着部の内側において、前記樹脂製延伸フィルムと接着されておらず、さらに、前記医療用具接続可能部の上面と前記保護シート間には、空隙が形成されており、前記保護シートは、前記樹脂製延伸フィルムに形成される前記延伸方向に延びる穿刺痕を前記保護シートの外面側より視認可能であることを特徴とする医療用容器。
【請求項2】
前記保護シートは、前記ポートとの固着部における前記樹脂製延伸フィルムの下面に設けられた接着層を備えている請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記保護シートは、前記ポートとの固着部における前記樹脂製延伸フィルムの下面に設けられた接着層を備え、前記接着層は、前記固着部の内側には、存在していない請求項1に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記保護シートは、前記樹脂製延伸フィルムの下面全体に設けられた接着層を備え、前記接着層は、前記ポートとの固着部の内側において、前記樹脂製延伸フィルムと接着されていない請求項1に記載の医療用容器。
【請求項5】
前記樹脂製延伸フィルムは、一軸延伸樹脂フィルムである請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項6】
前記ポートは、医療用液体排出ポートである請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項7】
前記ポートは、混注用ポートである請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポートとポートに剥離可能に固着されたシートを備え、内部に医療用液体が収納された医療用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液容器や輸液容器等の医療用容器は、収納している液体の排出、容器内への薬剤の混注などのためにポートを備えている。ポートには、弾性材料(ゴム材、エラストマー材)からなり、医療用具(例えば、輸液セットの接続針、注射針)の穿刺が可能な栓体が収納されている。また、ポートには、内側に栓体を保持するキャップを備えるものが一般的である。さらに、ポートには、栓体の上面を覆うように保護シートが剥離可能に固着されているものがある。この保護シートは、栓体の使用前の汚染防止、使用済みかどうかの確認指標として機能する。このような剥離可能なシートを備えるものとしては、特許第5122878号公報(特許文献1)、実公平3−24186号公報(特許文献2)が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5122878号公報
【特許文献2】実公平3−24186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、複数の病院で発生した輸液剤への異物混入による被害が報道等で報告されている。これは、保護シート上から針で穿刺し、医療用容器内に異物を混入した犯行とされている。輸液剤の保護シートが剥離されていない状態では、未使用であると医療従事者は考える。このため、投与時に、保護シートへの針刺しの有無の確認、保護シート剥離後の栓体への針刺しの有無の確認は、行われていない。また、上記の保護シートへの針刺しの有無の確認自体も容易ではない。投与時に、医療従事者が、混注の事実に気付くことは困難である。
本願発明の目的は、ポートに固着されている保護シートへの穿刺痕の確認が容易であり、混注された可能性があることを容易に認識することができる医療用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 容器本体と、前記容器本体内に収容された医療用液体と、前記容器本体に設けられ、医療用具が接続可能なポートとを有する医療用容器であって、
前記ポートは、医療用具接続可能部を備え、前記医療用容器は、前記ポートに剥離可能に固着され、かつ、前記医療用具接続可能部を被包する保護シートを備え、
前記保護シートは、樹脂製延伸フィルムを備え、前記樹脂製延伸フィルムは、穿刺部材の穿刺時に延伸方向に延びる穿刺痕が形成されるものであり、
前記保護シートは、前記樹脂製延伸フィルムの上面に配置され、前記樹脂製延伸フィルムを視認可能な透明の補強層を備え、前記補強層は、前記保護シートの前記ポートとの固着部の内側において、前記樹脂製延伸フィルムと接着されておらず、さらに、前記医療用具接続可能部の上面と前記保護シート間には、空隙が形成されており、前記保護シートは、前記樹脂製延伸フィルムに形成される前記延伸方向に延びる穿刺痕を前記保護シートの外面側より視認可能である医療用容器。
【0006】
(2) 前記保護シートは、前記ポートとの固着部における前記樹脂製延伸フィルムの下面に設けられた接着層を備えている上記(1)に記載の医療用容器。
(3) 前記保護シートは、前記ポートとの固着部における前記樹脂製延伸フィルムの下面に設けられた接着層を備え、前記接着層は、前記固着部の内側には、存在していない上記(1)に記載の医療用容器。
(4) 前記保護シートは、前記樹脂製延伸フィルムの下面全体に設けられた接着層を備え、前記接着層は、前記ポートとの固着部の内側において、前記樹脂製延伸フィルムと接着されていない上記(1)に記載の医療用容器。
(5) 前記樹脂製延伸フィルムは、一軸延伸樹脂フィルムである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用容器。
(6) 前記ポートは、医療用液体排出ポートである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器。
(7) 前記ポートは、混注用ポートである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明の医療用容器は、容器本体と、容器本体内に収容された医療用液体と、容器本体に設けられ、医療用具が接続可能なポートとを有する。ポートは、医療用具接続可能部を備え、医療用容器は、ポートに剥離可能に固着され、かつ、医療用具接続可能部を被包する保護シートを備える。保護シートは、樹脂製延伸フィルムを備え、樹脂製延伸フィルムは、穿刺部材の穿刺時に延伸方向に延びる穿刺痕が形成されるものである。保護シートは、形成された穿刺痕が、視認可能である。
このため、保護シートへの穿刺痕を確認することにより、混注された可能性があることを容易に認識することができ、そのような可能性のある医療用容器の使用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の医療用容器の一実施例の斜視図である。
図2図2は、図1に示した医療用容器の正面図である。
図3図3は、図2に示した医療用容器の側面図である。
図4図4は、図2に示した医療用容器の平面図である
図5図5は、図2に示した医療用容器の底面図である
図6図6は、本発明の医療用容器に使用されるポートの一例の拡大断面図である。
図7図7は、図6の保護シート付近の拡大断面図である。
図8図8は、本発明の医療用容器の他の実施例の保護シート付近の拡大断面図である。
図9図9は、本発明の医療用容器の他の実施例の保護シート付近の拡大断面図である。
図10図10は、本発明の医療用容器の他の実施例の保護シート付近の拡大断面図である。
図11図11は、本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
図12図12は、本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
図13図13は、本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
図14図14は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の医療用容器を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の医療用容器1は、容器本体2と、容器本体2内に収容された医療用液体15と、容器本体2に設けられ、医療用具が接続可能なポート3とを有する。ポート3は、医療用具接続可能部8を備え、医療用容器1は、ポート3に剥離可能に固着され、かつ、医療用具接続可能部8を被包する保護シート5を備える。保護シート5は、樹脂製延伸フィルム51を備え、樹脂製延伸フィルム51は、穿刺部材の穿刺時に延伸方向に延びる穿刺痕12が形成されるものである。保護シート5は、形成された穿刺痕12が、視認可能である。
【0010】
図1ないし図3に示す実施例の医療用容器1は、容器本体2と、容器本体2内と連通するもしくは連通可能であり、かつ医療用具である穿刺部材の穿刺が可能なポート3とを備える。そして、ポート3には、保護シート5が剥離可能に固着されている。
【0011】
この実施例の医療用容器1では、図6に示すように、ポート3は、容器本体に形成された管状開口部22と、管状開口部22に固着された封止部材7とを備える。管状開口部22は、側面より外方に突出するフランジ61を備える。管状開口部22は、ほぼ同一内径にて所定長延びる筒状部である。
【0012】
この実施例の医療用容器1は、容器本体2と管状開口部22を一体に有する容器本体2を備え、ポート3は、穿刺部材の穿刺が可能な排出ポート部3であり、さらに、医療用容器1は、容器本体2内に充填された医療用液体15である薬剤を備えている。
【0013】
容器本体2は、図1ないし図4図6および図7に示すように、上端に開口を有するほぼ円筒状の管状開口部22と、管状開口部22と連続し、かつ下方に延びる扁平筒状上部23と、扁平筒状上部23と連続し、かつ下方に延びる扁平筒状胴部21と、筒状胴部21と連続し、かつ下方に延びる扁平筒状下部24とを備える。
【0014】
管状開口部22は、ほぼ同一内径にて所定長延びる筒状部である。この実施例では、管状開口部22は、上述の封止部材7と共同して、ポート部3を構成する。
管状開口部22は、側面部より外方に突出するフランジ61を備える。さらに、管状開口部22は、フランジ61より上方に突出する円筒部63を備える。さらに、円筒部63は、短い筒状の小径先端部を備えている。また、この実施例では、フランジ61より、下方(扁平筒状上部22側)に設けられた補強用環状リブ62を備えている。
【0015】
また、容器本体2は、閉塞した下面部25を有しており、この下面部25には、下方に突出する突出部26が形成されている。突出部26は、吊下用部材4の装着保持部として機能する。この実施例の吊下用部材4は、突出部26が貫通する貫通孔を有する板状のベース部41と、ベース部41から延びる2つの折り曲げ可能部43と、2つの折り曲げ可能部43の端部にそれぞれの端部が連結したU字状の懸架部42を備えている。吊下用部材4は、折り曲げ可能部43で屈曲させることにより、懸架部42を起立可能であり、かつ、起立した懸架部42内に容器本体を吊り下げるための吊下部44が形成されるものとなっている。
【0016】
容器本体2は、熱可塑性樹脂により形成されている。容器本体2の形成材料である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、 ポリフッ化ビニリデンなど等が挙げられる。この中でも、耐熱性に優れたポリプロピレン系樹脂が最も好ましい。
【0017】
容器本体2の内容積としては、50〜1600mlが好ましく、突出部26の直径は2〜5mm程度が好ましい。また、容器本体2の厚さは、0.1〜0.5mmが好ましく、容器本体2の幅は、60〜150mm、容器本体2の長さは110〜250mmであることが好ましい。
【0018】
次に、ポート3について、説明する。
この実施例の医療用容器1では、ポート3は、排出ポートである。
ポート3は、上述した容器本体2の管状開口部22と、これに固着された封止部材7により構成されている。
封止部材7は、管状開口部22のフランジ61に固着されたキャップ(環状キャップ)9と、キャップ(環状キャップ)9に装着され、かつ医療用具である穿刺部材)の穿刺が可能な医療用具接続可能部(弾性シール部材)8とからなる。
【0019】
キャップ(環状キャップ)9は、弾性シール部材装着部を有する筒状本体部71と、筒状本体部71の下端側部より外方に突出する突出部(環状突出部)74とを備える。ポート3は、キャップ(環状キャップ)9の突出部(環状突出部)74の下面が、フランジ61と向かい、かつ、両者が固着されている。
キャップ(環状キャップ)9は、図6に示すように、開口部を備え、弾性シール部材8の上面が、開口部にて、露出する状態にて弾性シール部材8を収納している。
キャップ(環状キャップ)9は、筒状本体部71と同心的に配置され、かつ上部にて連結部72により連結された内筒部76を備える。連結部72の上面には、保護シート固着用の突起部75が形成されている。この実施例では、突起部75は、環状に形成されている。
【0020】
キャップ(環状キャップ)は、熱可塑性樹脂により形成されている。キャップ(環状キャップ)の形成材料である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、 ポリフッ化ビニリデンなど等が挙げられる。また、キャップ(環状キャップ)は、管状開口部22の形成材料(この実施例では、容器本体2)と相溶性の高いもの、特に好ましくは、同じもしくは同系統の樹脂を用いることが好ましい。さらには、キャップ(環状キャップ)の形成材料は、管状開口部22の形成材料(この実施例では、容器本体2の形成材料)より、融点の低いものが好ましい。
【0021】
弾性シール部材8は、図6に示すように、略円柱状のシール部材本体81と、シール部材本体81の側面を被包するように設けられた側部(環状側部)82と、シール部材本体81および側部(環状側部)82の中央部を連結する連結部(環状連結部)とを備えている。このため、弾性シール部材8は、図6に示すように、連結部(環状連結部)の上面、側部(環状側部)の上部とシール部材本体81の上部により形成された凹部(環状凹部)を備えている。また、弾性シール部材8は、連結部(環状連結部)の下面、側部(環状側部)の下部とシール部材本体81の下部により形成された凹部(環状凹部)を備えている。
【0022】
そして、この弾性シール部材8では、略円柱状のシール部材本体81の上部、外径は、キャップ(環状キャップ)9の開口部の口径(内筒部76の内径)とほぼ同じものとなっている。そして、シール部材本体81の上部は、図6に示すように、キャップ9の開口部内に進入している。また、この実施例の弾性シール部材8では、図6に示すように、側部(環状側部)82の上部(環状上部)は、キャップ9の凹部(環状凹部)内に収納されている。
【0023】
さらに、弾性シール部材8の側部(環状側部)の下部(環状下部)は、図6に示すように、キャップ(環状キャップ)9の筒状本体部71と容器本体2の円筒部63の小径先端部間に収納されている。図6に示すように、キャップ(環状キャップ)9の内筒部76の下端と容器本体2の円筒部63の小径先端部の上端は向かい合っており、弾性シール部材8の連結部(環状連結部)は、キャップ(環状キャップ)9の内筒部76と容器本体2の円筒部63の小径先端部により挟圧されている。これにより、管状開口部22と封止部材7間は、液密となっている。
【0024】
弾性シール部材8は、医療用具、例えば、穿刺部材10(具体的には、薬液排出用針管)の穿刺が可能なものが用いられており、特に、穿刺部材の抜去後に刺通部がシールされるものであることが好ましい。弾性シール部材8は、弾性材料により形成されている。弾性シール部材8の形成材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、天然ゴム等の各種ゴム類、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエン、軟質塩化ビニル等の各種樹脂が用いられる。
【0025】
そして、本発明の医療用容器1は、ポート3に剥離可能に固着され、かつ、医療用具接続可能部8を被包する保護シート5を備える。
医療用容器1の使用前状態において、ポート3のキャップ9の開口部上面には、保護シート5が、剥離可能に固着されている。保護シート5は、ポート3の弾性シール部材8の上面(キャップ6の開口部より露出する部分)を被包している。保護シート5により、弾性シール部材8の上面(医療用具接続部の表面)が覆われており、弾性シール部材8の汚染が防止されている。また、保護シート5の有無により、使用済みかどうかを見分けることができる。シート5は、キャップ9に環状の固着部11により、固着されており、かつ、剥離可能なものとなっている。固着部11は、例えば、ヒートシールにより形成される。また、この実施例の医療用容器1では、弾性シール部材8の上面と保護シート5間には、空隙14が形成されている。このため、保護シート5は、弾性シール部材8の上面と当接するまで変形可能である。
【0026】
保護シート5は、樹脂製延伸フィルム51を備え、樹脂製延伸フィルム51は、穿刺部材の穿刺時に延伸方向に延びる穿刺痕12が形成されるものである。さらに、保護シート5は、形成された穿刺痕12が視認可能である。
保護シート5としては、例えば、具体的には、図7に示すように、樹脂製延伸フィルム51と、ポート3との固着部11における樹脂製延伸フィルム51の下面に設けられた接着層52を備えるものが用いられる。この実施例の保護シート5は、ポート3との固着部11における樹脂製延伸フィルムの下面には、接着層52を備えるが、固着部11の内側には、接着層52を備えないもの、言い換えれば、固着部11の内側には、接着層52が存在してないものとなっている。このため、接着層52は、樹脂製延伸フィルム51における穿刺痕12の形成を阻害しない。
【0027】
また、保護シートとしては、図8に示すようなタイプの保護シート5aであってもよい。この実施例の保護シート5aは、樹脂製延伸フィルム51の下面のほぼ全体に設けられた接着層52を備える。しかし、接着層52は、ポート3との固着部11の内側部分において、樹脂製延伸フィルム51と接着されていない。このため、接着層52は、樹脂製延伸フィルム51における穿刺痕12の形成を阻害しない。
【0028】
また、保護シートとしては、図9に示すようなタイプの保護シート5bであってもよい。この実施例の保護シート5bは、樹脂製延伸フィルム51と、樹脂製延伸フィルム51の上面もしくは下面(図示するものでは、上面)に配置された補強層53を備える。補強層53は、ポート3との固着部11の内側部分において、樹脂製延伸フィルム51と接着されていない。このため、補強層53は、樹脂製延伸フィルム51における穿刺痕12の形成を阻害しない。また、補強層53は、透明となっており、樹脂製延伸フィルム51に形成された穿刺痕12の視認を妨げないものとなっている。また、この保護シート5bでは、上述した保護シート5と同様に、ポート3との固着部11における樹脂製延伸フィルム51の下面に設けられた接着層52を備え、かつ、固着部11の内側部分には、接着層52を備えないものとなっている。なお、接着層については、上述した保護シート5aのように、樹脂製延伸フィルム51の下面のほぼ全体に設けられ、かつ、ポート3との固着部11の内側部分において、樹脂製延伸フィルム51と接着されていないものであってもよい。
【0029】
また、保護シートとしては、図10に示すようなタイプの保護シート5cであってもよい。この実施例の保護シート5cは、樹脂製延伸フィルム51と、樹脂製延伸フィルム51の下面に配置された補強層54と、補強層54の下面の全体に設けられた接着層52を備える。そして、樹脂製延伸フィルム51は、ポート3との固着部11の内側部分において、補強層54と接着されていない。このため、補強層54は、樹脂製延伸フィルム51における穿刺痕12の形成を阻害しない。
【0030】
樹脂製延伸フィルム51としては、一軸延伸樹脂フィルムが使用される。一軸延伸樹脂フィルムとしては、横一軸延伸ポリオレフィンフィルム、具体的には、横一軸延伸ポリエチレンフィルム、横一軸延伸ポリオレフィンフィルム、横一軸延伸ポリエステルフィルムなどが使用できる。
そして、樹脂製延伸フィルム51は、張った状態、言い換えれば、緩みのない状態にて、ポート3に固着されていることが好ましい。このようにすることにより、固着部11の内側における樹脂製延伸フィルム51に緩みがなく、穿刺部材の穿刺時において、確実に延伸方向に延びる穿刺痕12が形成される。
接着層52、補強層53,54の構成材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂が挙げられる。接着層の構成材料は、他の層の形成材料よりも融点の低い材料が用いられる。
【0031】
本発明の医療用容器1では、穿刺部材の穿刺前では、図11に示すように、保護シート5の固着部11の内側部分は、均一なものとなっている。そして、図12に示すように、穿刺部材10、例えば、注射針の針先が、保護シート5の樹脂製延伸フィルム51に接触し、切れ目が入ることにより、樹脂製延伸フィルム51には、穿刺痕12が形成される。そして、樹脂製延伸フィルム51は、延伸フィルムのため、切れ目である穿刺痕12は、図12および図13に示すように、延伸方向に伸びるものとなる。このため、穿刺痕12を容易に認識できる。これにより、医療用容器に対して、意図しない混注が行われた可能性があることを認識でき、そのような可能性のある医療用容器の使用を回避できる。
【0032】
なお、上述した実施例では、ポートは、医療用液体排出ポートであるが、これに限定されるものではなく、ポートは、図14に示す医療用容器が備えるような混注用ポートであってもよい。さらに、本発明の医療用容器としては、図14に示すような軟質バッグタイプの医療用容器1aであってもよい。医療用容器1aは、内部に医療用液体31を収納している。
この実施例の医療用容器1aでは、排出ポート3は、軟質容器本体30に接続された管状部材37と封止部材35とにより構成され、封止部材35は、内部に弾性シール部材36を収納し、表面には、保護シート5が固着されている。保護シート5は、弾性シール部材36の上面を被包している。封止部材35としては、上述した封止部材7(キャップ9、弾性シール部材8)と同様のものが好適に使用できる。また、管状部材37としては、上述した管状開口部22と同様の形態のものが好適に使用される。
【0033】
また、医療用容器1aが備える混注ポート40は、容器本体30に接続された管状部材47と封止部材45とにより構成され、封止部材45は、内部に弾性シール部材46を収納し、表面には、保護シート5が固着されている。保護シート5は、弾性シール部材46の上面を被包している。封止部材45としては、上述した封止部材7(キャップ9、弾性シール部材8)と同様のものが好適に使用できる。また、管状部材47としては、上述した管状開口部22と同様の形態のものが好適に使用される。
保護シート5としては、上述したすべての実施例の保護シート5,5a,5b,5cが使用できる。
【0034】
この実施例の医療用容器1aでは、軟質容器本体30が用いられている。管状部材37,47は、軟質容器本体30と別部材により形成され、固着部により、軟質容器本体30に固定されている。この実施例の軟質容器本体30は、シート状筒状体により形成されている。軟質容器本体30は、上部シール部32、下部シール部33を備える。
本発明の医療用容器1,1aに収納される医療用液体15,31としては、公知のものが使用される。医療用液体としては、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、薬剤含有液体などの薬剤、注射用蒸留水などの薬剤溶解液が例示される。
【符号の説明】
【0035】
1 医療用容器
2 容器本体
3 ポート
5 保護シート
51 樹脂製延伸フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14