特許第6817860号(P6817860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817860
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20210107BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 648F
   H01L21/306 J
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-54683(P2017-54683)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-157149(P2018-157149A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 知康
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−228410(JP,A)
【文献】 特開2012−178512(JP,A)
【文献】 特表2008−527689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を貯留するタンクと、
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記タンクから供給された処理液を前記基板保持手段に保持されている基板に向けて吐出するノズルと、
前記タンク内の処理液を循環させる循環配管と、
前記タンク内の処理液を前記循環配管に送る送液装置と、
前記送液装置によって前記循環配管に送られた前記処理液の温度を加熱および冷却の少なくとも一方によって変更する温度調節器と、
前記循環配管から前記ノズルに処理液を案内する供給配管と、
前記供給配管に介装されており、前記供給配管から前記ノズルへの処理液の供給が実行される吐出実行状態と、前記供給配管から前記ノズルへの処理液の供給が停止される吐出停止状態と、の間で切り替わる吐出バルブと、
前記循環配管および供給配管が互いに接続された接続位置での処理液の圧力を検出する圧力センサーと、前記接続位置の下流の介装位置で前記循環配管に介装された圧力制御バルブとを含み、前記循環配管内の処理液の圧力を前記圧力センサーの検出値に応じて前記圧力制御バルブに変更させることにより、前記接続位置での処理液の圧力を圧力設定値に維持する圧力制御ユニットと、
未処理の基板が基板処理装置にある処理期間の少なくとも一部において、前記圧力設定値を処理用設定値に設定し、前記未処理の基板が前記基板処理装置にない待機期間の少なくとも一部において、前記圧力設定値を前記処理用設定値よりも小さい待機用設定値に設定することにより、前記待機期間中に前記循環配管を流れる処理液の流量を前記処理期間中に前記循環配管を流れる処理液の流量に一致させるまたは近づける制御装置とを備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記タンクから供給された処理液を吐出する第2ノズルと、
前記接続位置と前記介装位置との間の第2接続位置で前記循環配管に接続されており、前記循環配管から前記第2ノズルに処理液を案内する第2供給配管と、
前記第2供給配管に介装されており、前記第2供給配管から前記第2ノズルへの処理液の供給が実行される吐出実行状態と、前記第2供給配管から前記第2ノズルへの処理液の供給が停止される吐出停止状態と、の間で切り替わる第2吐出バルブと、をさらに備える、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板保持手段が、複数設けられており、
前記ノズルが、前記基板保持手段ごとに設けられており、
前記循環配管が、前記送液装置によって前記タンクから送られた処理液を案内する上流配管と、前記上流配管から分岐した複数の個別配管とを含み、
前記供給配管が、前記個別配管ごとに設けられており、前記個別配管から前記ノズルに延びており、
前記吐出バルブが、前記供給配管ごとに設けられており、
前記圧力センサーが、前記個別配管ごとに設けられており、
前記圧力制御バルブが、前記個別配管ごとに設けられ、前記個別配管および供給配管が互いに接続された前記接続位置の下流の前記介装位置で前記個別配管に介装されており、
前記制御装置は、前記処理期間の少なくとも一部において、前記複数の個別配管の少なくとも一つの個別配管における前記圧力設定値を前記処理用設定値に設定し、前記待機期間の少なくとも一部において、前記少なくとも一つの個別配管における前記圧力設定値を前記待機用設定値に設定することにより、前記待機期間中に前記少なくとも一つの個別配管を流れる処理液の流量を前記処理期間中に前記少なくとも一つの個別配管を流れる処理液の流量に一致させるまたは近づける、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板処理装置は、前記未処理の基板を収容したキャリアが置かれるキャリア載置台と、前記キャリアが前記キャリア載置台にあるか否かを検出するキャリア検出センサーと、を含むロードポートをさらに備え、
前記制御装置は、前記未処理の基板を収容した前記キャリアが前記キャリア載置台に載置されると、前記圧力設定値を前記待機用設定値から前記処理用設定値に変更する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記基板処理装置にある全ての基板の処理が完了してから予め定められた待機時間が経過するまでに、別の未処理の基板が前記基板処理装置に搬入されなければ、前記圧力設定値を前記処理用設定値から前記待機用設定値に変更する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記基板処理装置以外の外部装置と通信する通信装置を含み、前記未処理の基板が前記基板処理装置に搬入されることを予告する予告情報が前記外部装置から前記通信装置に入力された後、前記圧力設定値を前記待機用設定値から前記処理用設定値に変更する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記循環配管を流れる処理液の流量を検出する流量計をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記循環配管を流れる処理液の温度を検出する温度センサーをさらに備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
タンクで処理液を貯留する工程と、
基板保持手段で基板を水平に保持する工程と、
前記タンクから供給された処理液を前記基板保持手段に保持されている基板に向けてノズルに吐出させる工程と、
循環配管に前記タンク内の処理液を循環させる工程と、
送液装置に前記タンク内の処理液を前記循環配管に送らせる工程と、
前記送液装置によって前記循環配管に送られた前記処理液の温度を加熱および冷却の少なくとも一方を行う温度調節器によって変更させる工程と、
供給配管に処理液を前記循環配管から前記ノズルに案内させる工程と、
前記供給配管に介装された吐出バルブを、前記供給配管から前記ノズルへの処理液の供給が実行される吐出実行状態と、前記供給配管から前記ノズルへの処理液の供給が停止される吐出停止状態と、の間で切り替える工程と、
前記循環配管および供給配管が互いに接続された接続位置での処理液の圧力を圧力センサーで検出する工程と、
前記接続位置の下流の介装位置で前記循環配管に介装された圧力制御バルブに、前記循環配管内の処理液の圧力を前記圧力センサーの検出値に応じて変更させることにより、前記接続位置での処理液の圧力を圧力設定値に維持する工程と、
未処理の基板が基板処理装置にある処理期間の少なくとも一部において、前記圧力設定値を処理用設定値に設定する工程と、
前記未処理の基板が前記基板処理装置にない待機期間の少なくとも一部において、前記圧力設定値を前記処理用設定値よりも小さい待機用設定値に設定することにより、前記待機期間中に前記循環配管を流れる処理液の流量を前記処理期間中に前記循環配管を流れる処理液の流量に一致させるまたは近づける工程とを含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理する基板処理装置が用いられる。特許文献1には、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が開示されている。
特許文献1の基板処理装置は、基板に供給される処理液を貯留する処理液タンクと、処理液タンク内の処理液を循環させる循環路と、処理液タンク内の処理液を循環路に送る循環ポンプと、循環路を流れる処理液を加熱するヒーターとを備えている。この基板処理装置は、さらに、循環路から複数の処理ユニットへの処理液の供給を制御する複数の吐出バルブと、複数の処理ユニットの下流で循環路上に配置されたリリーフバルブとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−141980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、圧力制御バルブの一つであるリリーフバルブが、複数の処理ユニットの下流で循環路上に配置されている。リリーフバルブの設定リリーフ圧が変化しない場合、全ての吐出バルブが閉じられた待機期間において循環路を流れる処理液の流量は、何れかの吐出バルブが開かれた基板の処理期間における流量よりも少なくなる。
循環路を流れる処理液の温度は循環路の周囲の温度の影響を受けて変動する。影響の度合いは循環路を流れる処理液の流量に依存する。すなわち、処理液の流量が多い場合、処理液はその周囲の温度の影響をあまり受けないが、処理液の流量が少ない場合、処理液は周囲の温度の影響を受けて温度が大きく変動する。したがって、特許文献1のように、吐出バブルの開閉状態に応じて循環液の流量が大きく変動するようだと、循環液の温度もそれに応じて大きく変動してしまう問題がある。
【0005】
また、循環路を流れる処理液の温度は、待機期間の長さにも依存する。基板の処理期間から待機期間に移行した直後は処理液の温度はほとんど変化しない。しかし、待機期間が長くなるにつれて処理液の温度は基板処理期間における処理液の温度から次第に乖離していく。したがって、長い待機期間の後に基板への処理液の供給を実行すると、意図する温度とは大きく異なる温度の処理液が基板に供給されてしまう。
【0006】
このように、意図した温度と異なる温度の処理液が基板に供給されると、エッチング量やパターン倒壊率などの基板処理の品質に悪影響が生じる。また、同一の処理条件で処理すべき複数枚の基板に対して、温度の異なる処理液を供給すると、複数枚の基板間において品質のばらつきが生じる問題もある。
そこで、本発明の目的の一つは、吐出バルブの開閉状態が変化しても循環路を流れる処理液の温度が大きく変動することがなく、安定した温度の処理液を基板に供給することのできる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の別の目的は、複数枚の基板に供給される処理液の温度のばらつきを低減でき、複数枚の基板間における品質のばらつきを低減できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理液を貯留するタンクと、基板を水平に保持する基板保持手段と、前記タンクから供給された処理液を前記基板保持手段に保持されている基板に向けて吐出するノズルと、前記タンク内の処理液を循環させる循環配管と、前記タンク内の処理液を前記循環配管に送る送液装置と、前記送液装置によって前記循環配管に送られた前記処理液の温度を加熱および冷却の少なくとも一方によって変更する温度調節器と、前記循環配管から前記ノズルに処理液を案内する供給配管と、前記供給配管に介装されており、前記供給配管から前記ノズルへの処理液の供給が実行される吐出実行状態と、前記供給配管から前記ノズルへの処理液の供給が停止される吐出停止状態と、の間で切り替わる吐出バルブと、前記循環配管および供給配管が互いに接続された接続位置での処理液の圧力を検出する圧力センサーと、前記接続位置の下流の介装位置で前記循環配管に介装された圧力制御バルブとを含み、前記循環配管内の処理液の圧力を前記圧力センサーの検出値に応じて前記圧力制御バルブに変更させることにより、前記接続位置での処理液の圧力を圧力設定値に維持する圧力制御ユニットと、未処理の基板が基板処理装置にある処理期間の少なくとも一部において、前記圧力設定値を処理用設定値に設定し、前記未処理の基板が前記基板処理装置にない待機期間の少なくとも一部において、前記圧力設定値を前記処理用設定値よりも小さい待機用設定値に設定することにより、前記待機期間中に前記循環配管を流れる処理液の流量を前記処理期間中に前記循環配管を流れる処理液の流量に一致させるまたは近づける制御装置とを備える、基板処理装置である。
【0009】
この構成によれば、タンク内の処理液が、送液装置によって循環配管に送られ、循環配管からタンクに戻る。タンク内の処理液の温度は、温度調節器によって室温よりも高いまたは低い温度に調節される。吐出バルブが吐出実行状態になると、循環配管内を流れる処理液の一部が供給配管によってノズルに案内され、ノズルから基板に向けて吐出される。吐出バルブが吐出停止状態になると、供給配管からノズルへの処理液の供給が停止され、ノズルからの処理液の吐出が停止される。
【0010】
圧力制御バルブは、循環配管および供給配管が互いに接続された接続位置の下流の介装位置で循環配管に介装されている。圧力制御バルブの一次側圧力、つまり、循環配管における送液装置から介装位置までの部分の液圧は、圧力制御バルブによって圧力設定値に維持される。圧力制御バルブの一次側を流れる処理液の流量は、吐出バルブの開度だけでなく、圧力制御バルブの開度に応じて変化する。
【0011】
未処理の基板、つまり、基板処理装置で処理されていない基板が基板処理装置にあるとき、制御装置は、循環配管および供給配管が互いに接続された接続位置での処理液の圧力の設定値を表す圧力設定値を処理用設定値に設定する。未処理の基板が基板処理装置内にないとき、制御装置は、圧力設定値を待機用設定値に設定する。待機用設定値は、処理用設定値よりも小さい。したがって、未処理の基板が基板処理装置にないときは、圧力制御バルブでの圧力損失が減少し、循環配管を流れる処理液の流量が増加する。
【0012】
待機用設定値は、待機期間中に循環配管を流れる処理液の流量が処理期間中に循環配管を流れる処理液の流量に一致するまたは近づくように設定されている。そのため、両期間における流量の差が零またはそれに近い値まで減少する。したがって、待機期間が長くなったとしても、循環路を流れる処理液の温度は殆ど変わらない。これにより、長い待機期間が終わった後でも、安定した温度の処理液を複数枚の基板に供給することができ、複数枚の基板間における品質のばらつきを低減できる。
【0013】
なお、処理は、タンク内の処理液を循環路を介して基板に供給し、その後、当該基板を乾燥させることを意味する。待機期間は、未処理の基板が基板処理装置にない期間である。処理済みの基板だけが基板処理装置にある期間は、待機期間に該当しない。
制御装置は、処理期間の全部において圧力設定値を処理用設定値に設定してもよいし、処理期間の一部だけにおいて圧力設定値を処理用設定値に設定してもよい。同様に、制御装置は、待機期間の全部において圧力設定値を待機用設定値に設定してもよいし、待機期間の一部だけにおいて圧力設定値を待機用設定値に設定してもよい。
【0014】
処理期間中に循環配管を流れる処理液の流量は、ノズルが処理液を吐出しているか否か、つまり、吐出バルブの開閉状態に応じて変化する。処理期間中に循環配管を流れる処理液の流量は、処理期間中に循環配管を流れる処理液の流量の平均値(平均流量)であってもよいし、処理期間中に循環配管を流れる処理液の流量の最大値(最大流量)であってもよい。
【0015】
圧力制御バルブは、一次側圧力に応じて開度が自動で変化するリリーフバルブであってもよいし、電動アクチュエータによって開度が変更される電動バルブであってもよい。
リリーフバルブは、リリーフバルブの一次側圧力が設定リリーフ圧まで上昇すると一次側圧力を設定リリーフ圧未満まで低下させるバルブである。設定リリーフ圧は、リリーフバルブに加わる操作空気圧に応じて変化する。圧力制御バルブがリリーフバルブである場合、圧力制御ユニットは、リリーフバルブに加わる操作空気圧を変更する電空レギュレータをさらに含む。制御装置は、圧力センサーによって検出された処理液の圧力と圧力設定値との差に応じて電空レギュレータに操作空気圧を変更させることにより、接続位置での処理液の圧力を圧力設定値に維持する。
【0016】
圧力制御バルブが電動バルブである場合、電空レギュレータは不要である。電動バルブは、処理液が流れる内部流路を取り囲む環状の弁座を含むバルブボディと、前記内部流路に配置されており、前記弁座に対して移動可能な弁体と、3つ以上の複数の位置で前記弁体を静止させる電動アクチュエータとを含む。電動バルブの開度、つまり、弁座に対する弁体の位置は、電動アクチュエータによって変更される。制御装置は、圧力センサーによって検出された処理液の圧力と圧力設定値との差に応じて電動アクチュエータに電動バルブの開度を変更させることにより、接続位置での処理液の圧力を圧力設定値に維持する。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記タンクから供給された処理液を吐出する第2ノズルと、前記接続位置と前記介装位置との間の第2接続位置で前記循環配管に接続されており、前記循環配管から前記第2ノズルに処理液を案内する第2供給配管と、前記第2供給配管に介装されており、前記第2供給配管から前記第2ノズルへの処理液の供給が実行される吐出実行状態と、前記第2供給配管から前記第2ノズルへの処理液の供給が停止される吐出停止状態と、の間で切り替わる第2吐出バルブとをさらに備える、請求項1に記載の基板処理装置である。
【0018】
この構成によれば、循環配管を流れる処理液が、供給配管を介してノズルに供給され、第2供給配管を介して第2ノズルに供給される。ノズルおよび第2ノズルの両方が処理液を吐出しているときに循環配管を流れる処理液の流量は、ノズルおよび第2ノズルの一方だけが処理液を吐出しているときよりも多い。この構成では、処理期間中に循環配管を流れる処理液の流量の最大値(最大循環流量)が増加するので、圧力設定値が一定であれば処理期間と待機期間との間での処理液の流量の差が広がる。したがって、待機期間において圧力設定値を待機用設定値まで減少させることにより、両期間における流量の差を効果的に減らすことができる。
【0019】
前記第2ノズルは、前記タンクから供給された処理液を前記基板保持手段に保持されている基板に向けて吐出してもよいし、前記タンクから供給された処理液を前記基板保持手段とは異なる第2基板保持手段に水平に保持されている基板に向けて吐出してもよい。つまり、前記ノズルおよび第2ノズルから吐出された処理液が同じ基板に供給されてもよいし、別々の基板に供給されてもよい。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記基板保持手段が、複数設けられており、前記ノズルが、前記基板保持手段ごとに設けられており、前記循環配管が、前記送液装置によって前記タンクから送られた処理液を案内する上流配管と、前記上流配管から分岐した複数の個別配管とを含み、前記供給配管が、前記個別配管ごとに設けられており、前記個別配管から前記ノズルに延びており、前記吐出バルブが、前記供給配管ごとに設けられており、前記圧力センサーが、前記個別配管ごとに設けられており、前記圧力制御バルブが、前記個別配管ごとに設けられ、前記個別配管および供給配管が互いに接続された前記接続位置の下流の前記介装位置で前記個別配管に介装されており、前記制御装置は、前記処理期間の少なくとも一部において、前記複数の個別配管の少なくとも一つの個別配管における前記圧力設定値を前記処理用設定値に設定し、前記待機期間の少なくとも一部において、前記少なくとも一つの個別配管における前記圧力設定値を前記待機用設定値に設定することにより、前記待機期間中に前記少なくとも一つの個別配管を流れる処理液の流量を前記処理期間中に前記少なくとも一つの個別配管を流れる処理液の流量に一致させるまたは近づける、請求項1または2に記載の基板処理装置である。
【0021】
この構成によれば、待機期間中に個別配管内を流れる処理液の流量を、処理期間中に個別配管を流れる処理液の流量に一致または近づけることができる。これにより、待機期間中に個別配管内を流れる処理液の温度を、処理期間中に個別配管内を流れる処理液の温度と略同一にすることが可能になる。
タンクからノズルに至るまでに処理液が通る流路の長さは、通常、ノズルごとに異なる。これは、圧力損失が流路ごとに異なることを意味する。この場合、処理液を同じ供給圧で複数の流路に送ったとしても、処理液の流量は、流路ごとに異なる。複数の流路間における流量の差を減らしたい場合は、処理液の供給圧を流路ごとに設定する必要がある。しかしながら、これは、供給圧の設定が複雑化することを意味する。
【0022】
複数の個別配管間においてある程度の流量の差が許容されるのであれば、前記制御装置は、前記処理期間の少なくとも一部において、全ての前記個別配管における前記圧力設定値を前記処理用設定値に設定してもよい。同様に、複数の個別配管間においてある程度の流量の差が許容されるのであれば、前記制御装置は、前記待機期間の少なくとも一部において、全ての前記個別配管における前記圧力設定値を前記待機用設定値に設定してもよい。これらの場合、圧力設定値の設定を単純化できる。
【0023】
もしくは、複数の個別配管間において流量の差を減らしたいのであれば、前記制御装置は、複数の前記個別配管における前記圧力設定値を前記個別配管ごとに決められた複数の前記処理用設定値に設定してもよい。同様に、複数の個別配管間において流量の差を減らしたいのであれば、前記制御装置は、複数の前記個別配管における前記圧力設定値を前記個別配管ごとに決められた複数の前記待機用設定値に設定してもよい。
【0024】
請求項4に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記未処理の基板を収容したキャリアが置かれるキャリア載置台と、前記キャリアが前記キャリア載置台にあるか否かを検出するキャリア検出センサーと、を含むロードポートをさらに備え、前記制御装置は、前記未処理の基板を収容した前記キャリアが前記キャリア載置台に載置されると、前記圧力設定値を前記待機用設定値から前記処理用設定値に変更する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0025】
この構成によれば、未処理の基板を収容したキャリアが、ロードポートのキャリア載置台に置かれる。これにより、未処理の基板が基板処理装置に配置される。制御装置は、キャリアがキャリア載置台に置かれたことを確認したのと同時にまたはその後に、圧力設定値を待機用設定値から処理用設定値に増加させる。これにより、圧力制御バルブの一次側圧力が処理液の吐出に適した圧力に高められる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、前記制御装置は、前記基板処理装置にある全ての基板の処理が完了してから予め定められた待機時間が経過するまでに、別の未処理の基板が前記基板処理装置に搬入されなければ、前記圧力設定値を前記処理用設定値から前記待機用設定値に変更する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、制御装置は、基板処理装置にある全ての基板が処理された後に、別の未処理の基板が基板処理装置に搬入されたか否かを監視する。そして、予め定められた待機時間が経過するまでに別の未処理の基板が搬入されなければ、制御装置は、圧力設定値を処理用設定値から待機用設定値に変更する。したがって、全ての基板が処理された直後に、別の未処理の基板が搬入されたとしても、圧力設定値を頻繁に変更しなくてもよい。
【0027】
請求項6に記載の発明は、前記制御装置は、前記基板処理装置以外の外部装置と通信する通信装置を含み、前記未処理の基板が前記基板処理装置に搬入されることを予告する予告情報が前記外部装置から前記通信装置に入力された後、前記圧力設定値を前記待機用設定値から前記処理用設定値に変更する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0028】
この構成によれば、ホストコンピュータなど基板処理装置以外の外部装置が、制御装置の通信装置に接続されている。未処理の基板が基板処理装置に搬入されることを予告する予告情報が、有線通信または無線通信によって、外部装置から通信装置に入力されると、制御装置は、それと同時にまたはその後に、圧力設定値を待機用設定値から処理用設定値に増加させる。これにより、圧力制御バルブの一次側圧力が処理液の吐出に適した圧力に高められる。
【0029】
請求項7に記載の発明は、前記循環配管を流れる処理液の流量を検出する流量計をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、循環配管を流れる処理液の流量が、処理期間および待機期間において流量計に検出される。これにより、処理液の流量が安定しているか否かを監視でき、処理液の温度が安定しているか否かを監視できる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、前記循環配管を流れる処理液の温度を検出する温度センサーをさらに備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、循環配管を流れる処理液の温度が、処理期間および待機期間において温度センサーに検出される。これにより、処理液の温度が安定しているか否かを監視できる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、タンクで処理液を貯留する工程と、基板保持手段で基板を水平に保持する工程と、前記タンクから供給された処理液を前記基板保持手段に保持されている基板に向けてノズルに吐出させる工程と、循環配管に前記タンク内の処理液を循環させる工程と、送液装置に前記タンク内の処理液を前記循環配管に送らせる工程と、前記送液装置によって前記循環配管に送られた前記処理液の温度を加熱および冷却の少なくとも一方を行う温度調節器に変更させる工程と、供給配管に処理液を前記循環配管から前記ノズルに案内させる工程と、前記供給配管に介装された吐出バルブを、前記供給配管から前記ノズルへの処理液の供給が実行される吐出実行状態と、前記供給配管から前記ノズルへの処理液の供給が停止される吐出停止状態と、の間で切り替える工程と、前記循環配管および供給配管が互いに接続された接続位置での処理液の圧力を圧力センサーで検出する工程と、前記接続位置の下流の介装位置で前記循環配管に介装された圧力制御バルブに、前記循環配管内の処理液の圧力を前記圧力センサーの検出値に応じて変更させることにより、前記接続位置での処理液の圧力を圧力設定値に維持する工程と、未処理の基板が基板処理装置にある処理期間の少なくとも一部において、前記圧力設定値を処理用設定値に設定する工程と、前記未処理の基板が前記基板処理装置にない待機期間の少なくとも一部において、前記圧力設定値を前記処理用設定値よりも小さい待機用設定値に設定することにより、前記待機期間中に前記循環配管を流れる処理液の流量を前記処理期間中に前記循環配管を流れる処理液の流量に一致させるまたは近づける工程とを含む、基板処理方法。この構成によれば、請求項1に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
図2】基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図3】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例を説明するための工程図である。
図5】基板処理装置の薬液供給システムを示す模式図である。
図6】循環配管および供給配管が互いに接続された接続位置での処理液の圧力の設定値を表す圧力設定値の変更手順の一例を説明するための工程図である。
図7】同じタワーに対応する3つ吐出バルブの状態の時間的変化と、個別配管を流れる処理液の流量の時間的変化と、圧力設定値の時間的変化の一例を示すタイムチャートである。
図8】循環配管内の各位置における薬液の温度の概略を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、FOUP(Front-Opening Unified Pod)などのキャリアCを保持する複数のロードポートLPと、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2とを含む。ロードポートLPは、キャリアCが置かれるキャリア載置台LPaと、キャリアCがキャリア載置台LPaにあるか否かを検出するキャリア検出センサーLPbとを含む。
【0034】
基板処理装置1は、さらに、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットを含む。搬送ロボットは、インデクサロボットIRと、センターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。インデクサロボットIRは、基板Wを支持するハンドH1を含む。同様に、センターロボットCRは、基板Wを支持するハンドH2を含む。
【0035】
基板処理装置1は、後述する吐出バルブ23などの流体機器を収容する複数(たとえば4つ)の流体ボックス4を含む。処理ユニット2および流体ボックス4は、基板処理装置1の外壁1aの中に配置されており、基板処理装置1の外壁1aで覆われている。後述するタンク40等を収容するキャビネット5は、基板処理装置1の外壁1aの外に配置されている。キャビネット5は、基板処理装置1の側方に配置されていてもよいし、基板処理装置1が設置されるクリーンルームの下(地下)に配置されていてもよい。
【0036】
複数の処理ユニット2は、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置された複数(たとえば4つ)のタワーを形成している。各タワーは、上下に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット2を含む。4つの流体ボックス4は、それぞれ、4つのタワーに対応している。キャビネット5内の薬液は、いずれかの流体ボックス4を介して、当該流体ボックス4に対応するタワーに含まれる全ての処理ユニット2に供給される。
【0037】
未処理の基板Wが収容されたキャリアCは、半導体装置等を製造する製造工場に設置されたキャリア搬送ロボットR1によってロードポートLP上に置かれる。その後、キャリアC内の基板Wが、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによっていずれかの処理ユニット2に搬送され、処理ユニット2で処理される。処理ユニット2で処理された処理済みの基板Wは、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによってロードポートLP上の同じキャリアCに搬送される。処理済みの基板Wが収容されたキャリアCは、キャリア搬送ロボットR1によって次の処理を行う装置に搬送される。
【0038】
図2は、基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー6と、チャンバー6内で基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック10と、基板Wから排出された処理液を受け止める筒状のカップ14と含む。
【0039】
チャンバー6は、基板Wが通過する搬入搬出口が設けられた箱型の隔壁8と、搬入搬出口を開閉するシャッター9と、フィルターによってろ過された空気であるクリーンエアーのダウンフローをチャンバー6内に形成するFFU7(ファン・フィルタ・ユニット)とを含む。センターロボットCRは、搬入搬出口を通じてチャンバー6に基板Wを搬入し、搬入搬出口を通じてチャンバー6から基板Wを搬出する。
【0040】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン11と、チャックピン11およびスピンベース12を回転させることにより回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンモータ13とを含む。スピンチャック10は、複数のチャックピン11を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0041】
カップ14は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる筒状の傾斜部14aと、傾斜部14aの下端部(外端部)から下方に延びる円筒状の案内部14bと、上向きに開いた環状の溝を形成する液受部14cとを含む。傾斜部14aは、基板Wおよびスピンベース12よりも大きい内径を有する円環状の上端を含む。傾斜部14aの上端は、カップ14の上端に相当する。カップ14の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース12を取り囲んでいる。
【0042】
処理ユニット2は、スピンチャック10が基板Wを保持する保持位置よりもカップ14の上端が上方に位置する上位置(図2に示す位置)と、カップ14の上端が保持位置よりも下方に位置する下位置との間で、カップ14を鉛直に昇降させるカップ昇降ユニット15を含む。処理液が基板Wに供給されるとき、カップ14は上位置に配置される。基板Wから外方に飛散した処理液は、傾斜部14aによって受け止められた後、案内部14bによって液受部14c内に集められる。
【0043】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出するリンス液ノズル16を含む。リンス液ノズル16は、リンス液バルブ18が介装されたリンス液配管17に接続されている。処理ユニット2は、リンス液ノズル16から吐出されたリンス液が基板Wに供給される処理位置とリンス液ノズル16が平面視で基板Wから離れた退避位置との間でリンス液ノズル16を水平に移動させるノズル移動ユニットを備えていてもよい。
【0044】
リンス液バルブ18が開かれると、リンス液が、リンス液配管17からリンス液ノズル16に供給され、リンス液ノズル16から吐出される。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0045】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wの上面に向けて薬液を下方に吐出する薬液ノズル21を含む。薬液ノズル21は、吐出バルブ23、流量計24、および流量調整バルブ25が介装された供給配管22に接続されている。薬液ノズル21に対する薬液の供給および供給停止は、吐出バルブ23によって切り替えられる。薬液ノズル21に供給される薬液の流量は、流量計24に検出される。この流量は、流量調整バルブ25によって変更される。
【0046】
吐出バルブ23が開かれると、薬液が、流量調整バルブ25の開度に対応する流量で供給配管22から薬液ノズル21に供給され、薬液ノズル21から吐出される。薬液ノズル21に供給される薬液は、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液である。これ以外の液体が薬液ノズル21に供給されてもよい。
【0047】
吐出バルブ23は、供給配管22から薬液ノズル21への薬液の供給が実行される吐出実行状態と、供給配管22から薬液ノズル21への薬液の供給が停止される吐出停止状態と、の間でき切り替わる。吐出停止状態は、弁体が弁座から離れた状態であってもよい。図示はしないが、吐出バルブ23は、薬液が流れる内部流路を取り囲む環状の弁座を含むバルブボディと、内部流路に配置されており、弁座に対して移動可能な弁体とを含む。吐出バルブ23は、空気圧で開度が変更される空気作動バルブ(air operated valve)であってもよいし、電力で開度が変更される電動バルブであってもよい。
【0048】
処理ユニット2は、薬液ノズル21から吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と薬液ノズル21が平面視で基板Wから離れた退避位置との間で薬液ノズル21を水平に移動させるノズル移動ユニット26を含む。ノズル移動ユニット26は、たとえば、カップ14のまわりで鉛直に延びる揺動軸線A2まわりに薬液ノズル21を水平に移動させる旋回ユニットである。
【0049】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、基板処理装置1を制御する制御装置3を含む。制御装置3は、コンピュータ本体30と、コンピュータ本体30に接続された周辺装置33とを含む。コンピュータ本体30は、各種の命令を実行するCPU31(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置32とを含む。周辺装置33は、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置34と、リムーバブルメディアMから情報を読み取る読取装置35と、ホストコンピュータHC等の制御装置3以外の装置と通信する通信装置36とを含む。
【0050】
制御装置3は、入力装置37および表示装置38に接続されている。入力装置37は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置38の画面に表示される。入力装置37は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置37および表示装置38を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。
【0051】
CPU31は、補助記憶装置34に記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置34内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、読取装置35を通じてリムーバブルメディアMから補助記憶装置34に送られたものであってもよいし、ホストコンピュータHCなどの外部装置から通信装置36を通じて補助記憶装置34に送られたものであってもよい。
【0052】
補助記憶装置34およびリムーバブルメディアMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。補助記憶装置34は、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。
【0053】
制御装置3は、ホストコンピュータHCによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。補助記憶装置34は、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。基板Wに供給される薬液の流量および温度は、レシピに含まれている。補助記憶装置34は、複数の薬液の流量にそれぞれ対応する複数組の処理用設定値および待機用設定値を記憶している。処理用設定値および待機用設定値については後述する。
【0054】
図4は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例を説明するための工程図である。以下では、図1、2、および図4を参照する。以下の各工程は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、チャンバー6内に基板Wを搬入する搬入工程が行われる(図4のステップS1)。
【0055】
具体的には、薬液ノズル21が基板Wの上方から退避しており、カップ14が下位置に位置している状態で、センターロボットCR(図1参照)が、基板WをハンドH2で支持しながら、ハンドH2をチャンバー6内に進入させる。その後、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドH2上の基板Wをスピンチャック10の上に置く。スピンモータ13は、基板Wがチャックピン11によって把持された後、基板Wの回転を開始させる。センターロボットCRは、基板Wをスピンチャック10の上に置いた後、ハンドH2をチャンバー6の内部から退避させる。
【0056】
次に、薬液を基板Wに供給する薬液供給工程が行われる(図4のステップS2)。
具体的には、ノズル移動ユニット26が、薬液ノズル21を処理位置に移動させ、カップ昇降ユニット15が、カップ14を上位置まで上昇させる。その後、吐出バルブ23が開かれ、薬液ノズル21が薬液の吐出を開始する。薬液ノズル21が薬液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット26は、薬液ノズル21から吐出された薬液が基板Wの上面中央部に着液する中央処理位置と、薬液ノズル21から吐出された薬液が基板Wの上面外周部に着液する外周処理位置と、の間で薬液ノズル21を移動させてもよいし、薬液の着液位置が基板Wの上面中央部に位置するように薬液ノズル21を静止させてもよい。
【0057】
薬液ノズル21から吐出された薬液は、基板Wの上面に着液した後、回転している基板Wの上面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成され、基板Wの上面全域に薬液が供給される。特に、ノズル移動ユニット26が薬液ノズル21を中央処理位置と外周処理位置との間で移動させる場合は、基板Wの上面全域が薬液の着液位置で走査されるので、薬液が基板Wの上面全域に均一に供給される。これにより、基板Wの上面が均一に処理される。吐出バルブ23が開かれてから所定時間が経過すると、吐出バルブ23が閉じられ、薬液ノズル21からの薬液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット26が薬液ノズル21を退避位置に移動させる。
【0058】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給するリンス液供給工程が行われる(図4のステップS3)。
具体的には、リンス液バルブ18が開かれ、リンス液ノズル16が純水の吐出を開始する。基板Wの上面に着液した純水は、回転している基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の薬液は、リンス液ノズル16から吐出された純水によって洗い流される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液バルブ18が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ18が閉じられ、純水の吐出が停止される。
【0059】
次に、基板Wの高速回転によって基板Wを乾燥させる乾燥工程が行われる(図4のステップS4)。
具体的には、スピンモータ13が基板Wを回転方向に加速させ、薬液供給工程およびリンス液供給工程での基板Wの回転速度よりも大きい高回転速度(たとえば数千rpm)で基板Wを回転させる。これにより、液体が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ13が回転を停止する。これにより、基板Wの回転が停止される。
【0060】
次に、基板Wをチャンバー6から搬出する搬出工程が行われる(図4のステップS5)。
具体的には、カップ昇降ユニット15が、カップ14を下位置まで下降させる。その後、センターロボットCR(図1参照)が、ハンドH2をチャンバー6内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン11が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック10上の基板WをハンドH2で支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドH2で支持しながら、ハンドH2をチャンバー6の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー6から搬出される。
【0061】
図5は、基板処理装置1の薬液供給システムを示す模式図である。図5では、流体ボックス4を一点鎖線で示しており、薬液キャビネット5を二点鎖線で示している。一点鎖線で囲まれた領域に配置された部材は流体ボックス4内に配置されており、二点鎖線で囲まれた領域に配置された部材は薬液キャビネット5内に配置されている。
基板処理装置1は、基板Wに供給される薬液を貯留するタンク40と、タンク40内の薬液を循環させる循環配管41とを含む。循環配管41は、タンク40から下流に延びる上流配管42と、上流配管42から分岐した複数の個別配管43と、各個別配管43からタンク40まで下流に延びる下流配管44とを含む。
【0062】
上流配管42の上流端は、タンク40に接続されている。下流配管44の下流端は、タンク40に接続されている。上流配管42の上流端は、循環配管41の上流端に相当し、下流配管44の下流端は、循環配管41の下流端に相当する。各個別配管43は、上流配管42の下流端から下流配管44の上流端に延びている。下流配管44の下流端の代わりに、個別配管43の下流端がタンク40に接続されていてもよい。つまり、下流配管44が省略されてもよい。
【0063】
複数の個別配管43は、それぞれ、複数のタワーに対応している。図5は、1つの個別配管43の全体と残り3つの個別配管43の一部とを示している。図5は、同じタワーに含まれる3つの処理ユニット2を示している。同じタワーに含まれる3つの処理ユニット2に対応する3つの供給配管22は、同じ個別配管43に接続されている。3つの供給配管22と個別配管43とが互いに接続された3つの接続位置P2は、薬液の流れる方向に並んでいる。
【0064】
基板処理装置1は、タンク40内の薬液を循環配管41に送るポンプ45と、循環配管41を流れる薬液から異物を除去するフィルター46と、タンク40内の薬液の温度を調整する温度調節器47とを含む。基板処理装置1は、さらに、循環配管41を流れる薬液の流量を検出する流量計48と、循環配管41を流れる薬液の温度を検出する温度センサー49とを含む。ポンプ45、フィルター46、および温度調節器47は、上流配管42に介装されている。流量計48および温度センサー49は、個別配管43に介装されている。
【0065】
タンク40内の薬液は、ポンプ45によって上流配管42に送られ、上流配管42から複数の個別配管43に流れる。個別配管43内の薬液は、下流配管44に流れ、下流配管44からタンク40に戻る。この間に、薬液に含まれる異物がフィルター46によって除去される。また、タンク40内の薬液が、レシピによって規定された温度になるように温度調節器47によって加熱または冷却されて上流配管42に送り込まれる。これにより、タンク40内の薬液は、少なくとも、温度調節器47の直後の下流位置P4では、処理ユニット2内の雰囲気の温度(たとえば20〜30℃)よりも高いまたは低い一定の温度に維持されつつ上流配管42(循環配管41)に送り込まれる。
【0066】
温度調節器47は、循環配管41を流れる薬液を加熱するヒーターであってもよいし、循環配管41を流れる薬液を冷却するクーラーであってもよいし、循環配管41を流れる薬液を加熱および冷却する冷熱装置であってもよい。図5は、温度調節器47がヒーターである例を示している。温度調節器47は、循環配管41に設けられていてもよいし、タンク40に設けられていてもよい。
【0067】
ポンプ45は、基板Wが基板処理装置1にあるか否かにかかわらず、タンク40内の薬液を一定の圧力で循環配管41に送り続ける。基板処理装置1は、ポンプ45に代えて、タンク40内の気圧を上昇させることによりタンク40内の薬液を循環配管41に押し出す加圧装置を備えていてもよい。ポンプ45および加圧装置は、いずれも、タンク40内の薬液を循環配管41に送る送液装置の一例である。
【0068】
基板処理装置1は、個別配管43と複数の供給配管22とが互いに接続された複数の接続位置P2における処理液の圧力を制御する圧力制御ユニット51を含む。圧力制御ユニット51は、個別配管43内の処理液の圧力を検出する圧力センサー52と、複数の接続位置P2の下流の介装位置P3で個別配管43に介装されたリリーフバルブ53と、リリーフバルブ53に加わる操作空気圧を変更することによりリリーフバルブ53の設定リリーフ圧を変更する電空レギュレータ54とを含む。
【0069】
圧力センサー52は、個別配管43上の検出位置P1で個別配管43内の処理液の圧力を検出する。個別配管43と供給配管22とが互いに接続された接続位置P2での処理液の圧力は、検出位置P1での処理液の圧力と概ね等しい。したがって、検出位置P1で圧力センサー52によって個別配管43内の処理液の圧力を検出することは、接続位置P2で処理液の圧力を検出することと実質的に等価であるとみなすことができる。検出位置P1は、複数の接続位置P2の上流の位置である。リリーフバルブ53の上流であれば、検出位置P1は、複数の接続位置P2の下流であってもよい。
【0070】
リリーフバルブ53は、一次側圧力、つまり、リリーフバルブ53の上流の圧力が設定リリーフ圧まで上昇すると、一次側圧力を設定リリーフ圧未満まで低下させるバルブである。設定リリーフ圧は、リリーフバルブ53に加わる操作空気圧に応じて変化する。電空レギュレータ54は、リリーフバルブ53に加わる操作空気圧を増減させる。操作空気圧が増加すると設定リリーフ圧も増加し、操作空気圧が減少すると設定リリーフ圧も減少する。
【0071】
ポンプ45は、タンク40内の薬液を一定の圧力で循環配管41に送る。ポンプ45の脈動を無視できるなら、同一のタワーに対応する全ての吐出バルブ23が閉じられており、リリーフバルブ53の設定リリーフ圧が同じときは、個別配管43内を流れる処理液の圧力は個別配管43内のいずれの箇所においても同一である。制御装置3は、このようにして圧力センサー52の検出値に基づいて個別配管43内の処理液の圧力を監視している。
【0072】
制御装置3は、圧力制御ユニット51を制御することにより、接続位置P2での処理液の圧力を圧力設定値に維持する。具体的には、圧力センサー52によって検出された処理液の圧力、つまり、実際の処理液の圧力が変動すると、制御装置3は、実際の処理液の圧力が圧力設定値に一致するまたは近づくように、電空レギュレータ54に操作空気圧を変更させる。これにより、圧力センサー52の検出値がフィードバックされ、実際の処理液の圧力が圧力設定値またはその付近に維持される。
【0073】
図6は、循環配管41および供給配管22が互いに接続された接続位置P2での処理液の圧力の設定値を表す圧力設定値の変更手順の一例を説明するための工程図である。以下の各工程は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
基板Wに適用されるレシピを最初に設定する場合、もしくは、基板Wに適用されるレシピを変更する場合は、未処理の基板Wが基板処理装置1に搬送される前に、基板Wに供給される薬液の流量が制御装置3に入力される(図6のステップS11)。薬液の流量は、ホストコンピュータHCなどの外部装置から制御装置3の通信装置36に入力されてもよいし、ユーザーによって制御装置3の入力装置37に入力されてもよい。
【0074】
薬液の流量が制御装置3の通信装置36または入力装置37に入力されると、制御装置3は、補助記憶装置34に記憶されている複数組の処理用設定値および待機用設定値決定の中から、入力された薬液の流量に対応する処理用設定値および待機用設定値決定を選択する。その後、制御装置3は、未処理の基板Wが基板処理装置1に搬送されるまで、循環配管41および供給配管22が互いに接続された接続位置P2での処理液の圧力の設定値を表す圧力設定値を待機用設定値に設定する(図6のステップS12)。
【0075】
制御装置3は、全てのタワーの圧力設定値が待機用設定値に設定されている状態で、未処理の基板Wを収容したキャリアCがいずれかのロードポートLPにあるか否かをキャリア検出センサーLPbの検出値に基づいて監視している(図6のステップS13)。キャリア搬送ロボットR1(図1参照)が、未処理の基板Wを収容したキャリアCをいずれかのロードポートLPに置くと、制御装置3は、未処理の基板Wを収容したキャリアCがロードポートLPにあると判定する(図6のステップS13でYes)。その後、制御装置3は、全てのタワーの圧力設定値を待機用設定値から処理用設定値に増加させる(図6のステップS14)。
【0076】
未処理の基板Wを収容したキャリアCがいずれかのロードポートLPに置かれた後は、前述のように、キャリアC内の基板Wが、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによっていずれかの処理ユニット2に搬送され、処理ユニット2で処理される(図6のステップS15)。処理ユニット2で処理された基板Wは、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによってロードポートLP上の同じキャリアCに搬送される(図6のステップS15)。キャリアC内の全ての基板Wが処理され、キャリアCに収容されると、ロードポートLP上のキャリアCが、キャリア搬送ロボットR1によって次の装置に搬送される。
【0077】
同じキャリアC内の全ての基板Wの処理が完了すると(図6のステップS16でYes)、制御装置3は、未処理の基板Wを収容した新たなキャリアCがいずれのロードポートLPにも存在しないこと確認する(図6のステップS17)。キャリアC内の全ての基板Wの処理が完了してから予め定められた待機時間が経過するまでに、新たなキャリアCがいずれかのロードポートLPに搬送されると(図6のステップS17でYes)、制御装置3は、全てのタワーの圧力設定値を処理用設定値に維持したまま、基板Wの搬送および処理を行う(図6のステップS15に戻る)。
【0078】
その一方で、キャリアC内の全ての基板Wの処理が完了してから予め定められた待機時間が経過するまでに、未処理の基板Wを収容した新たなキャリアCがいずれのロードポートLPにも搬入されなければ(図6のステップS18でYes)、制御装置3は、全ての圧力設定値を処理用設定値から待機用設定値に減少させる(図6のステップS19)。その後、制御装置3は、未処理の基板Wを収容したキャリアCがいずれかのロードポートLPに搬送されたか否かを監視する(図6のステップS3に戻る)。
【0079】
図7は、同じタワーに対応する3つ吐出バルブ23の状態の時間的変化と、個別配管43を流れる処理液の流量の時間的変化と、圧力設定値の時間的変化の一例を示すタイムチャートである。図7では、同じタワーに対応する3つ吐出バルブ23を区別するために、3つの吐出バルブ23を、第1吐出バルブ23A、第2吐出バルブ23B、および第3吐出バルブ23Cと表している。
【0080】
ポンプ45の脈動を無視できるのであれば、リリーフバルブ53の設定リリーフ圧が同じであり、全ての吐出バルブ23が閉じられているときは、個別配管43を流れる薬液の流量は時間的に変化せず一定である。
リリーフバルブ53の設定リリーフ圧が同じであったとしても、いずれかの吐出バルブ23が開かれると、個別配管43を流れる薬液の流量が増加する。個別配管43を流れる薬液の流量は、開いている吐出バルブ23の数が増えるにしたがって増加する。たとえば図7に示すように、第1吐出バルブ23A、第2吐出バルブ23B、および第3吐出バルブ23Cが順次開かれ、その後、順次閉じられる場合、個別配管43を流れる薬液の流量は、段階的に増加し、その後、段階的に減少する。
【0081】
圧力設定値を処理用設定値から待機用設定値に減少させると、つまり、リリーフバルブ53の設定リリーフ圧を低下させると、個別配管43を流れる薬液の流量が増加する。このとき個別配管43を流れる薬液の流量は、圧力設定値が処理用設定値であり、同一のタワーに対応する全ての吐出バルブ23が閉じられているときよりも多い。待機用設定値は、待機期間中に個別配管43を流れる薬液の流量が処理期間中に個別配管43を流れる薬液の平均流量または最大流量に一致するまたは近づくように設定されている。そのため、両期間における流量の差が零またはそれに近い値まで減少する。なお、圧力設定値を待機用設定値に減少させたときに個別配管43を流れる薬液の流量は、圧力設定値が処理用設定値であり、同一のタワーに対応する全ての吐出バルブ23が閉じられているときと同等であってもよい。
【0082】
図8は、本実施形態の効果を説明するためのグラフである。図8は、循環配管41内の各位置における薬液の温度の概略を示すグラフである。グラフの横軸は、循環配管41内の位置、より具体的には、温度調節器47から循環配管41内の任意の位置までの距離を示している。グラフの縦軸は、循環配管41を流れる薬液の温度を示している。図8における実線は処理期間での薬液の温度を示し、破線は待機期間での薬液の温度を示している。
【0083】
温度調節器47がヒーターおよびクーラーのいずれの場合も、温度調節器47は、温度調節器47を通過する薬液が設定温度になるように薬液を加熱または冷却する。したがって、温度調節器47の直後の下流位置P4の温度t1は温度調節器47を通過する薬液の流量に拘わらず一定である。処理液の温度はその検出位置が下流になるに従って雰囲気の影響を受けて変動(低下または上昇)する。前述の通り、処理液の温度の変動の度合いは循環配管41を流れる処理液の流量の影響を受ける。
【0084】
図8の例では、待機期間(薬液の流量が少ない状態)での温度の低下度合い(温度t1→温度t3)は処理期間(薬液の流量が多い状態)での温度の低下度合い(温度t1→温度t2)はよりも大きい。薬液の温度が大きく低下すると、待機期間から処理期間に復帰した際に所望温度の薬液を基板に供給することができない。そこで本実施形態では、待機期間でのリリーフバルブ53の設定リリーフ圧を調整することによって処理期間および待機期間における流量の差を減少させ、これにより、待機期間における温度調節器47よりも下流位置(例えば接続位置P2)での薬液温度の低下度合いを抑制しているのである。
【0085】
以上のように本実施形態では、未処理の基板W、つまり、基板処理装置1で処理されていない基板Wが基板処理装置1にあるとき、制御装置3は、循環配管41および供給配管22が互いに接続された接続位置P2での薬液の圧力の設定値を表す圧力設定値を処理用設定値に設定する。未処理の基板Wが基板処理装置1内にないとき、制御装置3は、圧力設定値を待機用設定値に設定する。待機用設定値は、処理用設定値よりも小さい。したがって、未処理の基板Wが基板処理装置1にないときは、圧力制御バルブ53での圧力損失が減少し、循環配管41を流れる薬液の流量が増加する。
【0086】
待機用設定値は、待機期間中に循環配管41を流れる薬液の流量が処理期間中に循環配管41を流れる薬液の流量に一致するまたは近づくように設定されている。そのため、両期間における流量の差が零またはそれに近い値まで減少する。したがって、待機期間が長くなったとしても、タンク40内の薬液の温度は殆ど変わらない。これにより、長い待機期間が終わった後でも、安定した温度の薬液を複数枚の基板Wに供給することができ、複数枚の基板W間における品質のばらつきを低減できる。
【0087】
本実施形態では、同じ個別配管43に複数の薬液ノズル21が接続されている。同じ個別配管43に接続された3つの薬液ノズル21を区別する場合、3つの薬液ノズル21を、第1薬液ノズル21、第2薬液ノズル21、および第3薬液ノズル21という。第1薬液ノズル21、第2薬液ノズル21、および第3薬液ノズル21が薬液を吐出しているときに個別配管43を流れる薬液の流量は、第1薬液ノズル21、第2薬液ノズル21、および第3薬液ノズル21の2つだけが薬液を吐出しているときよりも多い。
【0088】
複数の薬液ノズル21が同じ個別配管43に接続されている構成では、薬液ノズル21が1つだけしか個別配管43に接続されていない構成と比較して、処理期間中に個別配管43を流れる薬液の流量の最大値(最大循環流量)が増加する。そのため、圧力設定値が一定であれば、処理期間と待機期間との間での薬液の流量の差が広がる。したがって、待機期間において圧力設定値を待機用設定値まで減少させることにより、両期間における流量の差を効果的に減らすことができる。
【0089】
本実施形態では、タンク40内の薬液が、送液装置の一例であるポンプ45によって上流配管42に送られ、上流配管42から複数の個別配管43に案内される。このような場合には処理期間と待機期間との間での薬液の流量の差が広がり易いが、待機期間において圧力設定値を待機用設定値まで減少させることによって、両期間における流量の差を効果的に減らすことができる。
【0090】
本実施形態では、未処理の基板Wを収容したキャリアCが、ロードポートLPのキャリアCキャリア載置台LPaに置かれる。これにより、未処理の基板Wが基板処理装置1に配置される。制御装置3は、キャリアCがキャリアCキャリア載置台LPaに置かれたことを確認したのと同時にまたはその後に、圧力設定値を待機用設定値から処理用設定値に増加させる。これにより、圧力制御バルブ53の一次側圧力が薬液の吐出に適した圧力に高められる。
【0091】
本実施形態では、制御装置3は、基板処理装置1にある全ての基板Wが処理された後に、別の未処理の基板Wが基板処理装置1に搬入されたか否かを監視する。そして、予め定められた待機時間が経過するまでに別の未処理の基板Wが搬入されなければ、制御装置3は、圧力設定値を処理用設定値から待機用設定値に変更する。したがって、全ての基板Wが処理された直後に、別の未処理の基板Wが搬入されたとしても、圧力設定値を頻繁に変更しなくてもよい。
【0092】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
たとえば、タンク40に貯留される液体は、薬液に限らず、リンス液などの他の液体であってもよい。
【0093】
圧力制御バルブ53は、リリーフバルブ53に限らず、電動ニードルバルブなどの電動バルブであってもよい。
同じ個別配管43に接続されている供給配管22の数は、2本未満であってもよいし、4本以上であってもよい。
循環配管41に設けられている個別配管43の数は、3本未満であってもよいし、5本以上であってもよい。
【0094】
制御装置3は、未処理の基板Wを収容したキャリアCがロードポートLPに置かれたこと以外をきっかけに、圧力設定値を待機用設定値から処理用設定値に変更してもよい。
たとえば、未処理の基板Wが基板処理装置1に搬入されることを予告する予告情報が、有線通信または無線通信によって、ホストコンピュータHCなどの外部装置から通信装置36に入力されるのであれば、制御装置3は、予告情報が通信装置36に入力されるのと同時にまたはその後に、圧力設定値を待機用設定値から処理用設定値に増加させてもよい。この場合、キャリアCがロードポートLPに置かれる前に、圧力設定値を変更することができる。
【0095】
基板処理装置1にある全ての基板Wの処理が完了すると、待機時間の経過を待たずに、圧力設定値を処理用設定値から待機用設定値に変更してもよい。
全ての流量計48が省略されてもよい。同様に、全ての温度センサー49が省略されてもよい。また、全ての流量計48および全ての温度センサー49が省略されてもよい。もしくは、4本未満の個別配管43から流量計48および温度センサー49の少なくとも一方が省略され、残りの個別配管43だけに流量計48および温度センサー49の少なくとも一方が設けられていてもよい。
【0096】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :制御装置
10 :スピンチャック(基板保持手段)
21 :薬液ノズル(ノズル、第2ノズル)
22 :供給配管(第2供給配管)
23 :吐出バルブ(第2吐出バルブ)
24 :流量計
25 :流量調整バルブ
26 :ノズル移動ユニット
40 :タンク
41 :循環配管
42 :上流配管
43 :個別配管
44 :下流配管
45 :ポンプ(送液装置)
46 :フィルター
47 :温度調節器
48 :流量計
49 :温度センサー
51 :圧力制御ユニット
52 :圧力センサー
53 :リリーフバルブ
54 :電空レギュレータ
C :キャリア
LP :ロードポート
LPa :キャリア載置台
LPb :キャリア検出センサー
P1 :検出位置
P2 :接続位置(第2接続位置)
P3 :介装位置
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8