(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インフレータと折りたたまれたエアバッグとを有するエアバッグモジュールを、取付プレートを介してステアリングホイールに取付けるようにしたエアバッグ装置の取付構造であって、
前記ステアリングホイールに、前記取付プレートと係合するフック部と、該フック部に嵌合されたリターンスプリングと、が設けられ、
前記フック部に対応する取付孔を有する前記取付プレートに、該取付孔に挿入されるガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記取付孔に挿入されると共に前記フック部が挿入される筒状の本体部と、前記ステアリングホイール側となる前記取付孔の周縁部に当接されるフランジ部と、を有し、
前記ガイド部材に保持されて前記フック部を係止するロックばねが、互いに対向する第1棒状部と第2棒状部、および該第1棒状部と該第2棒状部の一端部同士を連結する連結部を有しており、
前記本体部に、該本体部の筒状の延び方向と直交する方向に延びる第1スリットが形成され、
前記第1棒状部が前記本体部内に突出するように前記第1スリットに沿って嵌入されると共に、前記第2棒状部が該第1スリットの背面となる前記本体部に圧接されることにより、前記ロックばねが前記ガイド部材に保持されており、
前記本体部内に挿入された前記フック部の先端部が、前記本体部内に突出している前記第1棒状部を乗り越えた位置で該第1棒状部と係止して該フック部の抜け止めが行われ、
前記リターンスプリングが、前記ガイド部材における前記フランジ部を押圧して、該ガイド部材を前記フック部の先端方向に向けて付勢している、
ことを特徴とするエアバッグ装置の取付構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スナップイン方式での取付形態では、エアバッグモジュールが固定された取付プレートに対して、ステアリングホイール側に設けたフック部を係止するためのロックばねを設ける構造となっている。
【0005】
特許文献1に記載のものでは、ロックばねが、渦巻き部分を有する複雑な形状をしたものとなっている。また、特許文献2に記載のものは、ロックばねの形状は簡単である一方、ロックばねの取付けに際しては、ロックばねの所定部分をフック部が挿入されるガイドキャップと位置合わせし、これと同時にロックばねの他の部分を直接的に取付プレートに対して押し込む必要があり、組付性の悪いものとなる。
【0006】
以上に加えて、ロックばねの取付けにがたつきを有すると、車両の走行中にロックばねが震動して異音発生の原因となることから、ロックばねの取付けに際してはがたつきを生じないようにする必要がある。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、エアバッグモジュールを取付プレートを介してステアリングホイールに対してスナップイン方式で取付ける場合に、ロックばねの構造が簡単でその組付性が容易であり、しかもロックばねの組付後にがたつきを生じないようにしたエアバッグ装置の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
インフレータと折りたたまれたエアバッグとを有するエアバッグモジュールを、取付プレートを介してステアリングホイールに取付けるようにしたエアバッグ装置の取付構造であって、
前記ステアリングホイールに、前記取付プレートと係合するフック部と、該フック部に嵌合されたリターンスプリングと、が設けられ、
前記フック部に対応する取付孔を有する前記取付プレートに、該取付孔に挿入されるガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記取付孔に挿入されると共に前記フック部が挿入される筒状の本体部と、前記ステアリングホイール側となる前記取付孔の周縁部に当接されるフランジ部と、を有し、
前記ガイド部材に保持されて前記フック部を係止するロックばねが、互いに対向する第1棒状部と第2棒状部、および該第1棒状部と該第2棒状部の一端部同士を連結する連結部を有しており、
前記本体部に、該本体部の筒状の延び方向と直交する方向に延びる第1スリットが形成され、
前記第1棒状部が前記本体部内に突出するように前記第1スリットに沿って嵌入されると共に、前記第2棒状部が該第1スリットの背面となる前記本体部に圧接されることにより、前記ロックばねが前記ガイド部材に保持されており、
前記本体部内に挿入された前記フック部の先端部が、前記本体部内に突出している前記第1棒状部を乗り越えた位置で該第1棒状部と係止して該フック部の抜け止めが行われ、
前記リターンスプリングが、前記ガイド部材における前記フランジ部を押圧して、該ガイド部材を前記フック部の先端方向に向けて付勢している、
ようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、ロックばねそのものの構造(形状)は極めて簡単なものとすることができる。また、ロックばねの組付は、第1棒状部をガイド部材の第1スリットに嵌合させるようにしつつ、一対の棒状部でもってガイド部材をその径方向から挟持するようにさせるだけでよいので、組付性がよいものとなり、またガイド部材からの取外しも容易となる。さらに、リターンスプリングの付勢力によって、ロックばねは、ガイド部材およびフック部に対して常時当接する作用を受けることから、組付後のがたつきも防止されることになる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
前記ガイド部材における前記本体部に、前記第1スリットの背面側において、該本体部の筒状の延び方向と直交する方向に伸びる第2スリットが形成され、
前記記ロックばねにおける前記第2棒状部が、前記第2スリットに嵌合されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、第2棒状部を第2スリットに嵌合させることにより、ロックばねをよりしっかりとガイド部材に保持させる上で好ましいものとなる。
【0011】
前記本体部内に前記フック部を挿入する際に、該フック部の側面が前記第2棒状部と当接されるようにされ、
前記フック部の側面のうち前記第2棒状部と当接される面が、平坦面とされている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、フック部をガイド部材内に完全に挿入した状態では、平坦面を利用して回り止め作用を得ることができる。また、フック部をガイド部材内に挿入していく過程で、第2棒状部がフック部の平坦面と当接することから、ロックばねのガイド部材に対する動きが抑制されて、一対の棒状部はその連結部を起点として開きやすくなり、フック部をガイド部材内にスムーズに挿入する上で好ましいものとなる。
【0012】
前記第2棒状部に、前記第2スリットの長手方向各端部において前記本体部に係合されて、前記ロックばねが該本体部の筒状の延び方向と直交する方向に移動するのを規制する一対の係止爪部が形成されている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、ロックばねをガイド部材に組み付けた状態で、ロックばねがガイド部材の径方向に不用意に移動してしまう事態を確実に防止する上で好ましいものとなる。
【0013】
前記ガイド部材の外周に、ダンパーゴムが嵌合され、
前記ダンパーゴムが、前記ガイド部材と前記取付プレートとの間、および該取付プレートと前記ロックばねとの間に介在されている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、エアバッグモジュール側の部材をダイナミックダンパの質量体として機能させて、ステアリングハンドルの震動抑制の上で好ましいものとなる。また、ダンパーゴムによって、ステアリングハンドルからの震動がエアバッグモジュール側へと伝達されるのを抑制することができる。
【0014】
前記取付プレートに、前記ガイド部材の取付部分が前記エアバッグモジュールの固定部位に対して前記ステアリングホイール側にオフセットするように段差部が形成され、
前記ロックばねが、前記段差部によって形成される段差空間内に位置されている、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、エアバッグの膨張展開の初期時において、ステアリングハンドル側に向かう押圧力をガイド部材側(ロックばね側)へ極力作用させないようにする上で好ましいものとなる。また、ロックばね(における棒状部)の長手方向にスペースを確保して、ロックばねのガイド部材への取付けと取外しとをより容易に行えるようにする上で好ましいものとなる。
【0015】
前記取付プレートに、前記エアバッグモジュールの固定部位と前記ガイド部材の取付部位との間に位置するように切欠状のスリットが形成されている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、エアバッグの膨張展開の後期において、エアバッグモジュールと取付プレートとの取付部位にステアリングハンドルから離間する方向に引張力が作用したときに、この引張力を極力ガイド部材側(ロックばね側)へ伝達させないようにする上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エアバッグモジュールを取付プレートを介してステアリングホイールに対してスナップイン方式で取付ける場合に、ロックばねの構造が簡単でその組付性が容易であり、しかもロックばねの組付後にがたつきを生じないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、1はステアリングハンドルの芯金であり、そのボス部1aに対して、エアバッグモジュール10が後述のようにして取付けられる。
【0019】
図2に示すように、上記ボス部1aには、複数(実施形態では3個)のフック部2が、後方(ステアリングハンドルが車両に組み付けられた状態における後方)に向けて突出形成されている。フック部2は、実施形態では芯金1と一体成形されている(例えば鋳造)。各フック部2は、先細状の拡大先端部2aを有して、この拡大先端部aが係止爪として機能するように設定されている。また、各フック部2の側面のうち、周方向所定位置が、平坦面2bとして形成されている。
【0020】
フック部2の外周には、コイルばねからなるリターンスプリング3が嵌合される。リターンスプリング3のフック部2からの抜けが、フック部2の拡大先端部2aによって規制される。また、ボス部1aの所定位置には、ホーンセンサ4が保持されている。
【0021】
エアバッグモジュール10は、取付プレート12を介して、芯金1に取付けられる。このため、取付プレート12には、エアバッグモジュール10に対する取付部となる第1取付部K1と、ステアリングハンドルの芯金1に対する取付部となる第2取付部K2と、が構成されている。
【0022】
取付プレート12は、例えば鉄系金属板をプレス加工する等により形成されて、実施形態では外周が円形となるように形成されている。エアバッグモジュール取付用となる第1取付部K1は、取付プレート12の周方向に略等間隔に複数(実施形態では4箇)設けられている。この第1取付部K1での固定は、実施形態では、ボルト15Aとナット15Bとを利用した強固な固定とされている(
図3、
図4参照)。
【0023】
取付プレート12に形成されたステアリングハンドルへの取付用となる第2取付部K2は、実施形態では、スナップイン方式での取付構造が採択されている。すなわち、第2取付部K2は、取付プレート12の周方向に間隔をあけて複数(実施形態では3個)設けられている。この第2取付部K2は、第1取付部K1よりも若干径方向外側(外周縁部側)に位置するように位置設定されている。
【0024】
第2取付部K2について、以下に説明する。まず、
図6に示すように、取付プレート12には、フック部2に対応させて、複数の取付孔12aが形成されている。この取付孔12aには、
図5、
図11、
図12に示すように、環状のダンパーゴム20が嵌合、保持されている。このダンパーゴム20の外周には、例えば金属あるいは硬質合成樹脂からなる環状のスペーサ21が嵌合されている。スペーサ21により、ダンパーゴム20が過剰に震動することを制限し、ダンパーゴム20の拡径方向への弾性変形や変動が規制される。
【0025】
取付孔12aに対応させて、フック部2が挿入される筒状のガイド部材30が設けられている。ガイド部材30の詳細が、
図8〜
図12に示される。ガイド部材30は、ダンパーゴム20内をがたつきなく挿通可能な筒状の本体部31と、その一端部側に形成されたフランジ部32と、を有する。上記本体部31を、前方側(ステアリングハンドル側)からダンパーゴム20内に挿入したとき、フランジ32が取付孔12a(ダンパーゴム20)の縁部に当接することにより、それ以上の挿入が規制される(
図11参照)。
【0026】
ガイド部材30の本体部31の両側面には、後述するロックばねを保持するために、第2スリット31aと第1スリット31bとが形成されている。また、ガイド部材30の先端部(フランジ部32とは反対側の端部)は、挿入されたフック部2の先端部を覆うように略キャップ状に形成されているが、その先端には開口部31cが形成されている。
【0027】
ガイド部材30には、ロックばね40が保持されている。ロックばね40は、取付プレート12を挟んで、ガイド部材30のフランジ部32とは反対側の位置に配設される。ロックばね40は、
図7に示すように、ばね材をU字状に曲げ加工することにより形成された芯材41と、芯材41をほぼ全体的に被覆する被覆材42とにより構成されている。被覆材42は、例えば軟質あるいは硬質の合成樹脂により形成されている。
【0028】
ロックばね40(の芯材41)は、互いに対向する第2棒状部40aと第1棒状部40bを有すると共に、一対の棒状部40aと40bとの端部同士を連結する連結部40cとを有する。第2棒状部40aに比して、第2棒状部40bが長く形成されている。そして、第2棒状部42a(の被覆材42)には、その長手方向に間隔をあけて一対の係止爪部40dが形成されている。
【0029】
一対の棒状部40a、40bは、ガイド部材30の本体部31をその径方向から挟持する形態でもってガイド部材30に保持されている。すなわち、第2棒状部40aが、本体部31に形成された第2スリット31aに嵌合されて、その係止爪部40dによって本体部31をその径方向から支持している。この嵌合状態で、係止爪部40dの係止作用によって、本体部31に対して、一対の棒状部40a、40bがその長手方向に相対変位することが規制される。
【0030】
ロックばね40のうち第1棒状部40bが、本体部31に形成された第1スリット31bに嵌合されて、ガイド部材31内に大きく突出している(
図10、
図11参照)。すなわち、第1棒状部40bは、ガイド部材31内を横断するように(フック部2の挿入軌跡と干渉するように)配設されている。外力を受けない状態において、一対の棒状部40aと40bとの間隔が、フック部2の拡大先端部2aの最大幅よりも小さく、かつフック部2のうち平坦面2b部分での幅よりも若干大きくなるように設定されている。なお、保持孔31a、31bに対する棒状部40a、40bの嵌合は、隙間を有する嵌合とされて、ガイド部材30に対してロックばね40がわずかに動き得るようにされている。
【0031】
ロックばね40は、一対の棒状部40aと40bとでガイド部材30をその径方向から挟持する形態となっており(第2棒状部40aはガイド部材30に対して圧接されている)、スリット31a、31bに対する嵌合と合わせて、ロックばね40がガイド部材30にしっかりと保持されている。ロックばね40は、その一対の棒状部40aと40bとでガイド部材30をその径方向から挟持するように配設すればよいので、ロックばね40の組付性が極めて良いものとなる。
【0032】
ガイド部材30(つまりフック部2)の筒状の延び方向と直交する方向にの延びて、その長手方向端部が、ガイド部材30から大きく突出されている(
図12参照)。つまり、エアバッグモジュール10がステアリングハンドル(の芯金1)に対して取付けられる前のロックばね40は、ガイド部材30を保持した状態で、その長手方向端部が取付孔12aの周縁部に当接することにより、ガイド部材30のステアリングホイール側に向けての移動が規制される。
【0033】
次に、エアバッグモジュール10をステアリングハンドル(の芯金1)に対して取付ける手順について説明する。なお、エアバッグモジュール10は、第1取付部K1でもって取付プレート12に対して固定された状態とされる。取付プレート12に対して、ダンパーゴム20、スペーサ21、ガイド部材30、ロックばね40があらかじめ組み付けられた状態とされる。また、ステアリングハンドル側では、フック部2にリターンスプリング3が嵌合された状態とされ、またホーンセンサ4が固定された状態とされる。
【0034】
上述の前準備が完了した状態で、取付プレート12つまりエアバッグモジュール10を、ステアリングハンドル(の芯金1)に対して接近させて、フック部2をガイド部材30内に挿入させていく。
【0035】
ガイド部材30内に挿入されたフック部2は、やがてその拡大先端部2aが、ロックばね40における一対の棒状部40aと40bとの間隔が大きくなるように弾性変形させつつ、拡大先端部2aが第1棒状部40bを乗り越える。拡大先端部2aが第1棒状部40bを乗り越えた時点で、ロックばね40は、一対の棒状部40aと40bとの間隔が小さくなるように弾性復帰される。これにより、フック部2は、その拡大先端部2a部分でもってロックばね40に係止されて、ガイド部材30からの抜けが規制される。
【0036】
ロックばね40によってフック部2の抜けが規制された状態で、エアバッグモジュール10のステアリングハンドル(に芯金1)に対する組付が完了される。すなわち、取付孔12a(ダンパーゴム20)に対してフック部2を挿入するというスナップイン方式で、エアバッグモジュール10が簡単にステアリングハンドルに取付けられることになる。このとき、フック部2の平坦面2bにロックばね40(の棒状部40a)が対向して、回り止めが行われる。
【0037】
エアバッグモジュール10は、フック部2の長手方向に所定範囲だけ相対変位可能とされる。そして、リターンスプリング3によって、通常は、後方側のストローク端に位置される(
図11参照)。運転者が、リターンスプリング3の付勢力に抗してエアバッグモジュール10を押圧操作(前方へ向けて押す操作)すると、エアバッグモジュール10が前方へ移動して、取付板部12に設けた押圧部(図示略)が、ステアリングハンドル側に設けたホーンセンサ4に当接して、ホーンが作動される(警報音の発生)。
【0038】
図11に示すように、リターンスプリング3が、フランジ部32を介して、ガイド部材30をフック部2の先端方向に付勢している。つまり、ガイド部材30に保持されたロックばね40が、リターンスプリング3によって、フック部2の先端部2aと常時当接した係止状態となる方向へ付勢されて、ロックばね40のガイド部材30およびフック部2に対しするがたつきが防止される(リターンスプリング3の弾力を利用したがたつき防止)。
【0039】
走行中、ステアリングハンドルが振動すると、ダンパーゴム20の弾性とエアバッグモジュール10を質量体とを利用したダイナミックダンパ機能が発揮されて、ステアリングハンドルの振動が低減される。取付板部12とロックばね40との間に隙間が設定されていることから、ステアリングハンドルからの振動が、フック部2(これを覆うガイド部材30)を介してロックばね40に伝達することを防止しつつ、ダンパーゴム20の弾性変形を利用したダイナミックダンパ機能が確保される。
【0040】
スペーサ21によって、ダンパーゴム20が過剰に震動し不必要に拡径方向に弾性変形することが規制され、ダイナミックダンパ機能を効果的に得ることが可能となる。なお、ダンパーゴム20は、ガイド部材30と取付プレート12との間、および取付プレート12とロックばね40との間に介在される形状とされている。
【0041】
ここで、本実施形態では、ガイド部材30のうち本体部31の外周面に、その全周にわたって延びる環状の凸部31dを形成してある(
図8、
図9、
図11参照)。この凸部31dがダンパーゴム20の内周面に当接して、ガイド部材30の位置決めがより十分に行われる。
【0042】
図11に示すように、本体部31の外周面とダンパーゴム20の内周面との間には、凸部31dの周囲において隙間S1が形成される。この隙間S1の形成によって、周方向のダンピング可動域が拡大されて、ダイナミックダンパ性能を向上できる。なお、凸部31dの形成位置は、ダンパーゴム20の軸線方向略中間位置に形成しておくのが好ましい(ダンパーゴム20の軸線方向において、凸部31dを境にして隙間S1を略等しい長さで存在させる)。
【0043】
本実施形態ではさらに、ガイド部材30におけるフランジ部32部分において、ダンパーゴム20との間に隙間S2を形成してある。すなわち、フランジ部32は、ダンパーゴム20に対向する面が、径方向外側に向かうにつれて徐々にダンパーゴム20から離間するように傾斜されていて、隙間S2がくさび形状として形成されている。この隙間S2の形成により、ダンパーゴム20の可動域を広げて、ダイナミックダンパ性能を向上できる。
【0044】
図14は、エアバッグモジュール10とその周囲構造の一例を示すもので、第2取付部K2の構造としては、
図13に示すものを採択してある。図中、61はインフレータ、62は折りたたまれたエアバッグ、63は、折りたたまれたエアバッグ62を覆う外カバーである。外カバー63が、運転席に着座された運転者から目視される部材となり、ホーンを作動させるときに押圧される部材となる。インフレータ61と折りたたまれたエアバッグ62の基部が、第1取付部K1でもって、固定具(ボルト15A、ナット15B)により共締め状態でもって固定される。また、外カバー63は、取付プレート12に形成された取付孔12h(例えば
図6参照)を利用して取付プレート12に固定される。このような取付プレート12に対するエアバッグモジュール10の取付構造そのものは、第2取付部K2の構造以外はよく知られたものなので、これ以上の説明は省略する。
【0045】
次に、取付プレート12についてさらに説明する。まず、取付プレート12の外周縁部のうち、第2取付部K2(取付孔12a)が構成される部分が、ステアリングハンドル側に向けてオフセットされるように段差が形成されている。すなわち、
図11、
図12において、段差による縦壁部が符号12dで示され、取付孔12aが形成された面が符号12e(
図4,
図6参照)で示される。また、この段差によるオフセット量を、
図11において符号αで示してある。
【0046】
ロックばね40は、上記段差(オフセット量α)を形成したことによる段差空間内に位置するように配設されている。つまり、上記段差空間を、フック部2(ガイド部材30)の伸び方向と直交する方向に伸びるように配設されたロックばねの収納空間として有効利用してある。また、エアバッグが膨張展開されたときの初期時、すなわちエアバッグが外カバー63を押し開ける際に、第1取付部K1から前方(ステアリングハンドル側)に向けて作用する応圧力が、ロックばね40に作用することが防止される。さらに、上記段差空間の左右は開放されていることから、ロックばね40を、その長手方向に沿って移動させて、ガイド部材30に対する取付けと取外しとを行うことができる(ロックばね40のさらなる組付性向上)。
【0047】
取付プレート2には、周方向に間隔をあけて複数のスリット12cが形成されている。各スリット12cは、各取付孔12aを左右から(取付プレート12の周方向から)挟むように、各取付孔12a毎に左右一対形成されている。各スリット12cは、その一端が取付プレート12の外周面に開口される切欠形状とされている。また、スリット12cの他端側は、取付プレート12の径方向内方側へと伸びて、第1取付部K1と第2取付部K2との間に位置するように細長く伸びている。
【0048】
上記スリット12cの形成によって、取付プレート12は、第1取付部K1が形成された本体領域D1に対して、第2取付部K2が構成されるオフセット領域D2が、ステアリングハンドルの軸方向つまりフック部2やガイド部材30の伸び方向に塑性変形されやすい形態とされている。
【0049】
前方衝突時におけるエアバッグの膨張展開の後期に、この膨張展開されるエアバッグが運転席側に突出することによって、取付プレート12の第1取付部K1に対して、運転席側に向かう方向(ステアリングハンドルから離間する方向)の引張力が作用する。この引張力は、第2取付部K2においては、フック部2がガイド部材30から抜け出る方向の引張力となる。
【0050】
逆に、エアバッグの膨張展開の初期には、取付プレート12に対してステアリングホイール側に向かう押圧力が作用するが、スリット12cを形成しておくことにより、第2固定部K2に対して大きな押圧力が作用することが低減される。
【0051】
スリット12cにより、第1取付部K1が形成された本体領域D1と第2取付部K2が構成されたオフセット領域D2との間での荷重伝達が低減されることになる。つまり、第1取付部K1に入力される上記引張力が、第2取付部K2では低減されて伝達されて、フック部2からガイド部材30が抜け出ることが防止されることになる。また、スリット12cを形成しておくことにより、ステアリングホイールからの振動がエアバッグモジュール10側へ伝達されることをも低減する上で好ましいものとなる。
【0052】
本実施形態によるロックばね40の利点について、以下に補足説明する。まず、フック部2をガイド部材30内に挿入したとき、第2棒状部40bがフック部2の平坦面2bに対して当接される。このことは、ガイド部材30に対するロックばね40の動きが抑制されて、第1棒状部40bが連結部40cを起点として弾性変形しやすくなる。つまり、一対の棒状部40aと40bとが開きやすくなって、フック部2の挿入をスムーズに行う上で好ましいものとなる。
【0053】
取付プレート12に対するロックばね40の位置を、ガイド部材30に形成されたスリット31b(31a)の位置で決めことができるため、ダンパーゴム20を介在させるスペースを容易に確保することができる。
【0054】
エアバッグモジュール10をステアリングホイールから取外す際に、第1棒状部40bを第1スリット31bに対して摺動させる必要がある。この場合、第1取付部K1と第2取付部K2との間の段差空間を利用して、ロックばね40を大きくその長手方向に移動さえることが可能となり、ロックばね40のガイド部材30に対する取付けと取外しとが共に容易になる。
【0055】
図13は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、前記実施形態と同一構要素には同一符号を付してその重複した説明は省略する。本実施形態では、前記実施形態のものから、ダンパーゴム20、スペーサ21を除去した構成とされている。本実施形態では、前記実施形態のものに比して、ダイナミックダンパ機能を有しない一方、より簡易な構成となっている。
【0056】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。スリット12cの形状や長さは適宜設定することができ、要は、第1取付部K1と第2取付部K2との間でもって荷重伝達を低減するような位置や長さであればよい。スリット12cを形成しないこともできる。ダンパーゴム20を、ガイド部材30の外周に嵌合しておくこともできる(例えばガイド部材30の外周に環状の保持溝を形成して、この保持溝にダンパーゴム20を嵌合させておく)。フック部2は、芯金1と別部材で形成して、固定具によって芯金1に一体化することもできる。ガイド部材30は、フック部2の拡大先端部2aを覆うことのない形状に設定することもできる。ガイド部材30に形成された第2スリット31aを単なる凹部として、第2棒状部40aがガイド部材30内に露出しない構造とすることもできる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。