(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面側に印刷層が配設されたラベルをキャビティ内に配置した後、前記キャビティ内に合成樹脂材料を前記ラベルの裏面に向けて供給することで、表面が複数のパネル部に区画され、かつ表面に前記ラベルの裏面が接着された基材を形成することを特徴とする加飾成形体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の加飾成形体では、例えば装飾性を高めたりすること等によって、商品価値を高めることについて改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、商品価値を高めることができる加飾成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の加飾成形体は、表面が複数のパネル部に区画されるとともに、合成樹脂材料により形成された基材と、前記基材の表面側に配設された印刷層と、を備え、複数の前記パネル部のうちの少なくとも1つには、他の前記パネル部に配設された前記印刷層とは、性状の異なる前記印刷層が配設され
、前記パネル部に、凹部若しくは凸部が形成され、前記パネル部は、凹端部若しくは凸端部からこのパネル部の外周縁に向かうに従い漸次、前記基材の厚さ方向の位置が異なるように全体が凹状若しくは凸状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、複数のパネル部のうちの少なくとも1つに、他のパネル部に配設された印刷層とは、性状の異なる印刷層が配設されているので、複数のパネル部のうちの一部を他と比べて、例えば触感や見た目等を異ならせることが可能になり、また、互いに性状の異なる複数種の印刷層が組み合わされて、例えば従来にない装飾効果を発揮させること等が可能になり、商品価値を高めることができる。
触感としては、例えば、表面に指を滑らせたときに、若干の抵抗を感じるしっとり感、抵抗少なく滑らせることが可能なつるつるした触感、あるいはざらざらした触感等が挙げられる。なお、これらのうちのしっとり感によって、例えばすべり止め効果を発揮させることができる。
見た目としては、色調の濃淡、色彩、あるいは光沢の強弱等が挙げられる。
【0008】
パネル部に凹部若しくは凸部が形成されているので、立体的な視覚効果を発揮させることが可能になり、装飾性を高めることができる。例えば、各パネル部に、性状が同じ印刷層を配設しても異なる見た目を発現させたり、あるいは、性状の異なる印刷層を各別に配設しても同等の見た目を発現させたりすること等が可能になる。
【0009】
パネル部の全体が凹状若しくは凸状に形成されているので、立体的な視覚効果を有効に発揮させることができる。
【0010】
表面が複数のパネル部に区画されるとともに、合成樹脂材料により形成された基材と、前記基材の表面側に配設された印刷層と、を備え、複数の前記パネル部のうちの少なくとも1つには、他の前記パネル部に配設された前記印刷層とは、性状の異なる前記印刷層が配設され、前記基材の表面側に金属層が配設されて
いることを特徴とする。
この場合、基材の表面側に金属層が配設されているので、メタリック感を発現させることが可能になり、装飾性を確実に高めることができる。
【0011】
表面が複数のパネル部に区画されるとともに、合成樹脂材料により形成された基材と、前記基材の表面側に配設された印刷層と、を備え、複数の前記パネル部のうちの少なくとも1つには、他の前記パネル部に配設された前記印刷層とは、性状の異なる前記印刷層が配設され、前記基材の表面と前記印刷層との間にラベルが配設されて
いることを特徴とする。
この場合、基材の表面と印刷層との間にラベルが配設されているので、ラベルの材質を選択することによって、基材および印刷層の各材質によらず、印刷層を基材の表面側に容易に配設することができる。
【0012】
また、前記ラベルの表面に金属層が配設されてもよい。
この場合、ラベルの表面に金属層が配設されているので、ラベルの材質を選択することによって、基材および金属層の各材質によらず、金属層を基材の表面側に容易に配設することができる。
【0013】
また、本発明の加飾成形体の製造方法は、表面側に印刷層が配設されたラベルをキャビティ内に配置した後、前記キャビティ内に合成樹脂材料を前記ラベルの裏面に向けて供給することで、表面が複数のパネル部に区画され、かつ表面に前記ラベルの裏面が接着された基材を形成することを特徴とする。
この発明によれば、表面側に印刷層が配設されたラベルをキャビティ内に配置した後に、表面が複数のパネル部に区画された基材を形成するので、ラベルを、基材の表面形状によらず、基材の表面に容易かつ精度よく配設することができる。
【0014】
また、前記ラベルを前記キャビティ内に配置する前に、前記ラベルの表面に金属層を配設してもよい。
この場合、基材の表面側に金属層が配設された加飾成形体を容易かつ精度よく形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、商品価値を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態に係る加飾成形体1は、
図1に示されるように、表面が複数のパネル部11、12に区画された平板状に形成されている。図示の例では、加飾成形体1は、
図2〜
図4に示されるように、コンパクト容器51の蓋体52が備える天板となっている。
コンパクト容器51は、内容物が充填された中皿53および塗布具54a、54bが内側に収容される容器本体55を備え、蓋体52は、容器本体55にヒンジ部56を介して連結されている。
容器本体55は、偏平な有底筒状に形成されている。
以下、容器本体55の中心軸線Oに沿う軸方向の蓋体52側を上側といい、容器本体55の底部側を下側という。軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに対してヒンジ部56が位置する側を後方といい、その逆向きを前方という。前記平面視において、前後方向に直交する方向を左右方向という。
【0018】
蓋体52は、容器本体55の上端開口部を開放可能に閉塞する蓋本体58を備える。蓋本体58の平面視形状は、左右方向に延びる前後一対の辺部と、前後方向に延びる左右一対の辺部と、を備える矩形状となっている。図示の例では、蓋本体58の平面視形状は、正方形状となっている。蓋本体58の上面に、外周縁部を除く全域にわたって窪み部が形成されており、この窪み部の内側に加飾成形体1が配置されている。蓋本体58の下面に鏡58aが配設されている。蓋本体58の後端部における左右方向の中央部に、下方に向けて突出するヒンジ脚部56aが形成されている。蓋本体58の前端部における左右方向の中央部に、下方に向けて突出する蓋係合突部58bが形成されている。
【0019】
容器本体55の平面視形状は、蓋本体58と同様に、左右方向に延びる前後一対の辺部と、前後方向に延びる左右一対の辺部と、を備える矩形状となっている。図示の例では、容器本体55の平面視形状は、蓋本体58と同じ形状で同等の大きさとなっている。容器本体55の後端部における左右方向の中央部には、軸方向に貫き、かつ後方に向けて開口するヒンジ凹部56bが形成されている。ヒンジ凹部56bの内側に、蓋体52のヒンジ脚部56aが配置されている。ヒンジ凹部56bを画成する内面のうちの左右方向を向く両端面、およびヒンジ脚部56aの表面のうちの左右方向を向く両端面には、左右方向に延びる軸受孔が各別に形成されている。これらの軸受け孔に軸部56cが挿入されることにより、蓋体52が、容器本体55に対して軸部56c回りに上方に向けて回動可能に連結されている。すなわち、ヒンジ部56は、蓋体52のヒンジ脚部56a、容器本体55のヒンジ凹部56b、および軸部56cを備えている。
【0020】
容器本体55の底壁における前端部に、上方に向けて突出するガイド突部55aが形成されている。ガイド突部55aの上面は、前方から後方に向かうに従い漸次、上方に向けて延びている。ガイド突部55aの後端部には、上方に向けて突出し、蓋係合突部58bに蓋係合突部58bの上方から離脱可能に係合する容器係合突部55bが形成されている。
【0021】
容器本体55の周壁の前端部における左右方向の中央部には、前後方向に貫き、かつ上方に向けて開口する凹欠き部が形成されており、この凹欠き部にプッシュピース57が、前方付勢状態で後方に移動可能に配設されている。プッシュピース57の後端面は、容器本体55の周壁から外部に露呈している。プッシュピース57には、前方に向けて突出してガイド突部55aの上面を後方に向けて摺動するとともに、軸方向に弾性変形可能に形成された突上げ突片57aが形成されている。突上げ突片57aは、プッシュピース57の後方移動に伴って、ガイド突部55aの上面を摺動し上方に向けて変形することで、蓋係合突部58bを突き上げて容器係合突部55bを上方に乗り越えさせる。これにより、蓋体52の容器本体55に対するヒンジ部56回りの上方に向けた回動が許容される。
中皿53および塗布具54a、54bは、容器本体55の内側に後方から前方に向けてこの順に並べられて配設されている。図示の例では、塗布具54a、54bは2本の刷毛となっている。
【0022】
加飾成形体1は、板状に形成され、その平面視形状は、容器本体55および蓋体52と同様に、左右方向に延びる前後一対の辺部と、前後方向に延びる左右一対の辺部と、を備える矩形状となっている。図示の例では、加飾成形体1の平面視形状は、正方形状となっている。加飾成形体1の表面のうち、外周縁部を除く全体が、蓋本体58よりも上方に位置している。
【0023】
加飾成形体1は、
図1、
図2、
図5および
図6に示されるように、表面が複数のパネル部11、12に区画されるとともに、合成樹脂材料により形成された基材13と、基材13の表面側に配設された印刷層16、17と、を備えている。なお、前記合成樹脂材料としては、例えばABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはポリスチレン等が挙げられる。
複数のパネル部11、12のうちの一部は、前記平面視で矩形状を呈する第1パネル部11とされ、残部は、前記平面視で三角形状を呈する第2パネル部12となっている。互いに隣り合う第1パネル部11同士、第2パネル部12同士、並びに第1パネル部11および第2パネル部12は、重複、あるいは隙間をあけたりすることなく、角部の頂点同士、若しくは辺部同士が一致している。
【0024】
第1パネル部11は、前記平面視で、4辺全てが、前後方向および左右方向の双方向に対して傾斜する方向に延び、かつ4つの角部がそれぞれ、前後方向の両端縁、および左右方向の両端縁に各別に位置する向きに配設されている。第1パネル部11は、基材13の表面に4つ配設されており、4つの第1パネル部11が組み合わされることにより、前記平面視で、各第1パネル部11と同様の向きに配設された矩形状を呈する。図示の例では、第1パネル部11の平面視形状は正方形状となっており、4つの第1パネル部11が組み合わされてなす平面視形状は正方形状となっている。
【0025】
4つの第1パネル部11のうち、後側に位置する第1パネル部11の前端縁、左側に位置する第1パネル部11の右端縁、右側に位置する第1パネル部11の左端縁、および前側に位置する第1パネル部11の後端縁が、互いに一致し、かつ中心軸線Oが通る、基材13の表面における中心に位置している。4つの第1パネル部11のうち、後側に位置する第1パネル部11の後端縁、左側に位置する第1パネル部11の左端縁、右側に位置する第1パネル部11の右端縁、および前側に位置する第1パネル部11の前端縁はそれぞれ、前記平面視で基材13を画成する4つの辺部それぞれにおける中央部に各別に配置されている。
【0026】
4つの第1パネル部11のうち、前後一対の第1パネル部11は、基材13における左右方向の中央部に、基材13における前後方向の全域にわたって配置されている。4つの第1パネル部11のうち、左右一対の第1パネル部11は、基材13における前後方向の中央部に、基材13における左右方向の全域にわたって配置されている。
【0027】
第2パネル部12は、基材13の外周部に中心軸線O回りに複数配置されている。前記平面視において、第2パネル部12を画成する3つの辺のうちの底辺は、基材13の外周縁に位置し、他の一つは基材13の対角線上に位置している。第2パネル部12は、前記平面視で基材13を画成する4つの辺部のうちの1つの辺部に2つ配設されている。つまり、複数の第2パネル部12のうちの一部は、底辺が前後方向に延び、かつ前後方向に2つ連ねられて配置された前後一対の第2パネル部12とされ、残部が、底辺が左右方向に延び、かつ左右方向に2つ連ねられて配置された左右一対の第2パネル部12となっている。すなわち、基材13の表面に、前後一対の第2パネル部12、および左右一対の第2パネル部12がそれぞれ2組ずつ配設されている。
図示の例では、第2パネル部12の平面視形状は、底辺が他の2辺より長い二等辺三角形状となっている。
以上より、基材13の表面は、4つの第1パネル部11、および8つの第2パネル部12により全域にわたって区画されている。
【0028】
第1パネル部11および第2パネル部12に、上方に向けて突出する凸部15が形成されている。
図1〜
図4に示されるように、第1パネル部11は、凸部15の上端部(凸端部)15aから第1パネル部11の外周縁に向かうに従い漸次、下方に向けて延びるように全体が凸状に形成されている。第2パネル部12は、凸部15の上端部15aから第2パネル部12の外周縁に向かうに従い漸次、下方に向けて延びるように全体が凸状に形成されている。つまり、凸部15は、第1パネル部11および第2パネル部12それぞれにおける全域にわたって1つ形成されている。これにより、基材13の表面全体が、第1パネル部11および第2パネル部12の各外周縁が溝状となる凹凸形状となっている。
第1パネル部11および第2パネル部12はそれぞれ、上方に向けて突の曲面状に形成されている。なお、これに代えて例えば、第1パネル部11および第2パネル部12を、上方に向けて突の錘状に形成してもよい。
【0029】
凸部15の上端部15aは、第1パネル部11の表面、および第2パネル部12の表面それぞれにおける中央部に配置されている。すなわち、凸部15の上端部15aは、第1パネル部11および第2パネル部12の各平面視において、重心を含む位置に配置されている。
なお、第1パネル部11および第2パネル部12に、凸部15に代えて、あるいは凸部15とともに凹部を形成してもよい。第1パネル部11および第2パネル部12に、凸部15に代えて凹部を形成した場合、第1、第2パネル部11、12の全体を、凹部の下端部(凹端部)から第1、第2パネル部11、12の外周縁に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる凹状に形成してもよい。
【0030】
4つの第1パネル部11のうちの左右一対の第1パネル部11、および全ての第2パネル部12それぞれにおける軸方向および左右方向の双方向に沿う縦断面視において、左右方向の両端に位置する各外周縁部は、例えば
図3に示されるように、基材13における左右方向の外側に位置する方が、内側に位置する方より下方に位置している。4つの第1パネル部11のうち、前後一対の第1パネル部11それぞれにおける軸方向および左右方向の双方向に沿う縦断面視において、左右方向の両端に位置する各外周縁部は、同等の軸方向の位置に配設されている。
【0031】
4つの第1パネル部11のうちの前後一対の第1パネル部11、および全ての第2パネル部12それぞれにおける軸方向および前後方向の双方向に沿う縦断面視において、前後方向の両端に位置する各外周縁部は、例えば
図4に示されるように、基材13における前後方向の外側に位置する方が、内側に位置する方より下方に位置している。4つの第1パネル部11のうち、左右一対の第1パネル部11それぞれにおける軸方向および前後方向の双方向に沿う縦断面視において、前後方向の両端に位置する各外周縁部は、同等の軸方向の位置に配設されている。
【0032】
本実施形態では、
図5に示されるように、基材13の表面側に金属層21が配設されている。金属層21は、例えば真空蒸着法若しくはスパッタリング法等により形成される。金属層21は、例えばアルミニウム合金等により形成される。
基材13の表面と印刷層16、17との間にラベル22が配設されている。ラベル22は、例えば無色透明なポリエステル系樹脂となっている。ラベル22の厚さは例えば0.2mmとなっている。ラベル22の厚さは、金属層21および印刷層16、17の各厚さより厚くなっている。
【0033】
本実施形態では、基材13の表面に、ラベル22、金属層21、および印刷層16、17が上方に向けてこの順に配設されている。ラベル22は、基材13の表面における全域にわたって一体に配設され、金属層21は、ラベル22の表面における全域にわたって一体に配設されている。
なおこれに限らず、ラベル22の表面に、金属層21および印刷層16、17を水平方向に並べて配設してもよい。
【0034】
そして、本実施形態では、複数の第1、第2パネル部11、12のうちの少なくとも1つには、他の第1、第2パネル部11、12に配設された印刷層16、17とは、性状の異なる印刷層16、17が配設されている。なお性状としては、例えば、色調、色彩、光沢、若しくは触感等が挙げられる。
【0035】
印刷層16、17は、例えば熱硬化性樹脂等を主剤とするインクが、基材13の表面側に例えばシルク印刷等が施されることにより形成される。なお、インクの主剤は、例えば紫外線硬化樹脂等であってもよく、また印刷は、例えばインクジェット印刷等の公知の印刷であってもよい。
本実施形態では、
図6に示されるように、印刷層16、17は、複数の第1、第2パネル部11、12のうち、2組の左右一対の第2パネル部12を除く全ての第1、第2パネル部11、12の表面側に配設されている。印刷層16、17、ラベル22、および金属層21は、基材13の表面において溝状となっている、第1、第2パネル部11、12の表面側の各外周縁にも配設されている。
複数の第1、第2パネル部11、12のうち、2組の左右一対の第2パネル部12では、金属層21が外部に露呈していて光沢のあるメタリック調を呈し、その他の部分は光沢が抑えられたマットなメタリック調を呈する。
【0036】
基材13の表面側に配設された複数の印刷層16、17のうち、
図6に2点鎖線で示されるように、左右一対の第1パネル部11、および2組の前後一対の第2パネル部12それぞれの表面側に一体に配設された第1印刷層16は、株式会社セイコーアドバンス製のソフトタッチシリーズのインクにより形成され、また、
図6に点線で示されるように、前後一対の第1パネル部11の表面側に配設された第2印刷層17は、株式会社セイコーアドバンス製のVIC(Z)シリーズのインクにより形成されている。第1印刷層16、および第2印刷層17はそれぞれ、ウレタン等の合成樹脂材料のビーズを含有している。第1印刷層16はシリカを含有しておらず、第2印刷層17はシリカを含有している。
【0037】
図示の例では、複数の第1、第2パネル部11、12のうち、第1印刷層16が配設された部分は、第2印刷層17が配設された部分より色彩が濃くなっている。複数の第1、第2パネル部11、12のうち、第1印刷層16が配設された部分では、指を滑らせたときに若干の抵抗を感じる触感が得られ、第2印刷層17が配設された部分では、指を抵抗少なく滑らせることが可能なつるつるとした触感が得られる。これらのうち、第1印刷層16が配設された部分は、載置したコンパクト容器51のすべり止め、あるいは蓋体52の開閉時における指のすべり止め等の効果を発揮させることができる。
【0038】
次に、加飾成形体1の製造方法について説明する。
【0039】
まず、ラベル22の表面に、例えば真空蒸着法若しくはスパッタリング法等により金属層21を形成する。次に、金属層21の表面に、例えばシルク印刷等により前述のインクを塗布した後に乾燥させることにより、第1印刷層16、および第2印刷層17を形成する。なお、インクを印刷する際は、インクの種類によらず、同じ印刷方法を適用する。
そして、金属層21、第1印刷層16、および第2印刷層17が配設されたラベル22を、成形金型のキャビティ内に配置する。この際、ラベル22の表面側を、バキュームによりキャビティの内面に吸着する。その後、キャビティ内に溶融樹脂を射出して、表面が第1、第2パネル部11、12に区画された基材13を成形するとともに、ラベル22の裏面を基材13の表面に接着することで、加飾成形体1が得られる。
なお、本実施形態のように、ラベル22をキャビティ内に配置した後に、キャビティ内に溶融樹脂を射出して供給し基材13を成形するのに代えて、例えば、ラベル22をキャビティ内に配置した後に、キャビティ内に供給した合成樹脂材料をブロー成形等して基材13を形成してもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態による加飾成形体1によれば、複数の第1、第2パネル部11、12のうちの少なくとも1つに、他の第1、第2パネル部11、12に配設された印刷層16、17とは、性状の異なる印刷層16、17が配設されているので、複数の第1、第2パネル部11、12のうちの一部を他と比べて、例えば触感や見た目等を異ならせることが可能になり、また、互いに性状の異なる複数種の印刷層16、17が組み合わされて、例えば従来にない装飾効果を発揮させること等が可能になり、商品価値を高めることができる。
【0041】
また、第1、第2パネル部11、12に凸部15が形成されているので、立体的な視覚効果を発揮させることが可能になり、装飾性を高めることができる。例えば、第1、第2パネル部11、12に、性状が同じ印刷層を配設しても異なる見た目を発現させたり、あるいは、性状の異なる印刷層を各別に配設しても同等の見た目を発現させたりすること等が可能になる。
【0042】
また、第1、第2パネル部11、12の全体が凸状に形成されているので、立体的な視覚効果を有効に発揮させることができる。
また、基材13の表面側に金属層21が配設されているので、メタリック感を発現させることが可能になり、装飾性を確実に高めることができる。
また、基材13の表面と第1、第2印刷層16、17との間にラベル22が配設されているので、ラベル22の材質を選択することによって、基材13および第1、第2印刷層16、17の各材質によらず、第1、第2印刷層16、17を基材13の表面側に容易に配設することができる。
また、ラベル22の表面に金属層21が配設されているので、ラベル22の材質を選択することによって、基材13および金属層21の各材質によらず、金属層21を基材13の表面側に容易に配設することができる。
また、基材13の表面全体が凹凸形状となっているので、基材13の表面側に金属層21が配設されていることと相俟って、見る角度等によって、加飾成形体1の表面が発現する、例えば色調等の見た目を変化させることもできる。
【0043】
また、本実施形態による加飾成形体1の製造方法によれば、表面側に第1、第2印刷層16、17が配設されたラベル22をキャビティ内に配置した後に、表面が複数の第1、第2パネル部11、12に区画された基材13を形成するので、ラベル22を、基材13の表面形状によらず、基材13の表面に容易かつ精度よく配設することができる。
また、ラベル22をキャビティ内に配置する前に、ラベル22の表面に金属層21を配設するので、基材13の表面側に金属層21が配設された加飾成形体1を容易かつ精度よく形成することができる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0045】
本実施形態に係る加飾成形体2では、
図7に示されるように、印刷層16、31が、複数の第1、第2パネル部11、12のうち、4つの第1パネル部11の表面側に限って配設されている。これにより、8つの第2パネル部12では、金属層21が外部に露呈していて光沢のあるメタリック調を呈し、4つの第1パネル部11では光沢が抑えられたマットなメタリック調を呈する。
複数の印刷層16、31のうちの一部は、第1印刷層16とされ、
図7に破線で示されるように、左右一対の第1パネル部11の表面側に配設され、残りの第3印刷層31は、
図7に点線で示されるように、前後一対の第1パネル部11の表面側に配設されている。
【0046】
第3印刷層31は、株式会社セイコーアドバンス製のVIC(Z)シリーズのインクにより形成され、ウレタン等の合成樹脂材料のビーズを含有している。第3印刷層31は、第2印刷層17より少量のシリカを含有している。
図示の例では、複数の第1、第2パネル部11、12のうち、第1印刷層16が配設された部分は、第3印刷層31が配設された部分より色彩が濃くなっている。複数の第1、第2パネル部11、12のうち、第3印刷層31が配設された部分では、指を滑らせたときに、若干の抵抗を感じ、かつざらざらした触感が得られる。
【0047】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0048】
本実施形態に係る加飾成形体3では、
図8に示されるように、印刷層16、32が、複数の第1、第2パネル部11、12のうち、左右一対の第1パネル部11、および2組の前後一対の第2パネル部12それぞれの表面側に配設され、それ以外の第1、第2パネル部11、12では、金属層21が外部に露呈していて光沢のあるメタリック調を呈する。複数の第1、第2パネル部11、12のうち、印刷層16、32が配設された、左右一対の第1パネル部11、および2組の前後一対の第2パネル部12は、金属層21よりは光沢が抑えられたメタリック調を呈する。
【0049】
複数の印刷層16、32のうちの一部は、第1印刷層16とされ、第1実施形態と同様に、左右一対の第1パネル部11、および2組の前後一対の第2パネル部12それぞれの表面側に一体に配設され、残りの第4印刷層32は、
図8に破線で示されるように、左右一対の第1パネル部11の表面側に配設されている。第4印刷層32は、第1印刷層16の表面に配設されている。つまり、左右一対の第1パネル部11の表面には、ラベル22、金属層21、第1印刷層16、および第4印刷層32が上方に向けてこの順に配設されている。
【0050】
第4印刷層32は、株式会社セイコーアドバンス製のTJNメジュームAのインクにより形成されている。なおこのインクは、紫外線硬化樹脂となっている。
図示の例では、複数の第1、第2パネル部11、12のうち、第4印刷層32が配設された部分は、多数のしわを有してきらきらしたメタリック調を呈し、第2実施形態における第3印刷層31が配設された部分より強いざらつき感が得られる。
【0051】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0052】
本実施形態に係る加飾成形体4では、
図9に示されるように、印刷層16、31、33が、複数の第1、第2パネル部11、12のうち、2組の左右一対の第2パネル部12を除く全ての第1、第2パネル部11、12の表面側に配設されている。
複数の印刷層16、31、32のうちの一部は、第1印刷層16とされ、第1実施形態と同様に、左右一対の第1パネル部11、および2組の前後一対の第2パネル部12それぞれの表面側に一体に配設され、他の一部は、第3印刷層31とされ、第2実施形態と同様に、前後一対の第1パネル部11の表面側に配設され、残りの第5印刷層33は、
図9に破線で示されるように、左右一対の第1パネル部11の表面側に配設されている。第5印刷層33は、第1印刷層16の裏面に配設されている。つまり、左右一対の第1パネル部11の表面には、ラベル22、金属層21、第5印刷層33、および第1印刷層16が上方に向けてこの順に配設されている。
【0053】
第5印刷層33は、株式会社セイコーアドバンス製のTJNメジュームGのインクにより形成されている。なおこのインクは、紫外線硬化樹脂となっている。
図示の例では、複数の第1、第2パネル部11、12のうち、第5印刷層33が配設された部分では、第3実施形態における第4印刷層32が配設された部分と比べて、きめの細かいしわを有し、かつ光沢の抑えられたメタリック調を呈するとともに、指を滑らせたときに大きな抵抗を感じる触感が得られる。
【0054】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
なお、この第5実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0055】
本実施形態に係る加飾成形体5は、
図10に示されるように、容器本体55の上端開口部を開放可能に閉塞する蓋体となっている。加飾成形体5が、容器本体55にヒンジ部56を介して連結されている。
図示の例では、容器本体55の内側に1つの塗布具54cが収容されている。
【0056】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0057】
例えば、前記実施形態では、第1、第2パネル部11、12の形状、大きさ、および数量等は、適宜変更してもよい。
また、第1、第2パネル部11、12の全体が、平坦面であってもよいし、下方に向けて窪んでもよい。また、第1、第2パネル部11、12の表面に、複数の凸部若しくは凹部を形成してもよい。
また、加飾成形体1〜5は、容器に限らず例えば、装飾品および壁体等に適用してもよい。
また、基材13の表面側に、金属層21を配設しなくてもよい。なお、基材13の表面側に金属層21を配設しない場合は、基材13を、透明な樹脂材料である、例えばAS樹脂、若しくはポリエチレンテレフタレート等により形成するのが好ましい。この場合、加飾成形体に良好な装飾性を具備させることができる。
また、基材13の表面側に、金属層21に代えて他の材質からなる層を配設し、この層と印刷層とを組み合わせることで、加飾効果を発揮させるようにしてもよい。
また、前記実施形態に対して、さらに装飾性を高めるために、例えば塗装等の公知の加飾技術を適用してもよい。例えば、金属層21の表面に塗装を施し着色してもよい。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記変形例を適宜組み合わせてもよい。