特許第6817890号(P6817890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパイン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6817890-マルチコプタ 図000002
  • 特許6817890-マルチコプタ 図000003
  • 特許6817890-マルチコプタ 図000004
  • 特許6817890-マルチコプタ 図000005
  • 特許6817890-マルチコプタ 図000006
  • 特許6817890-マルチコプタ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817890
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】マルチコプタ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/222 20060101AFI20210107BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20210107BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20210107BHJP
   B64C 17/02 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H04N5/222 100
   B64C39/02
   B64C27/08
   B64C17/02
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-92628(P2017-92628)
(22)【出願日】2017年5月8日
(65)【公開番号】特開2018-191156(P2018-191156A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 正人
【審査官】 吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−205950(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0264234(US,A1)
【文献】 特表2018−507814(JP,A)
【文献】 特開2009−245030(JP,A)
【文献】 特開2010−039350(JP,A)
【文献】 特開平08−022068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222
B64C 17/02
B64C 27/08
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを搭載したマルチコプタであって、
前記カメラを支持する支持部を備えた、当該支持部の向きが可変なジンバルと、
移動可能なウエイトを備えたバランス調整ユニットと、
前記ジンバルの前記支持部の向きの可変範囲内の前記支持部の向きの各々に対して前記ウエイトの位置を登録したバランステーブルと、
遠隔操作に応答して前記ジンバルの前記支持部の向きを変更するジンバル制御部と、
前記ジンバルの前記支持部の向きの変更時に、変更後の前記支持部の向きに対してバランステーブルに登録されている位置にバランス調整ユニットのウエイトを移動するバランス制御部と、
当該マルチコプタをホバリングさせた状態で、前記ジンバルの前記支持部の各向きについて、当該向きに前記ジンバルの前記支持部の向きを設定し、マルチコプタの各回転翼の出力量の差が所定レベル以下となるウエイトの位置を当該ウエイトの位置を変更しながら算定し、算定したウエイトの位置を当該向きに対して前記バランステーブルに登録するバランステーブル作成手段とを有することを特徴とするマルチコプタ。
【請求項2】
ズームレンズを備えたカメラを搭載したマルチコプタであって、
移動可能なウエイトを備えたバランス調整ユニットと、
前記ズームレンズの焦点距離の可変範囲内の焦点距離の各々に対して前記ウエイトの位置を登録したバランステーブルと、
遠隔操作に応答して前記カメラの前記ズームレンズの焦点距離を変更するカメラ制御部と、
前記ズームレンズの焦点距離の変更時に、変更後のズームレンズの焦点距離に対してバランステーブルに登録されている位置にバランス調整ユニットのウエイトを移動するバランス制御部と、
当該マルチコプタをホバリングさせた状態で、前記ズームレンズの焦点距離の可変範囲内の各焦点距離について、当該焦点距離に前記ズームレンズの焦点距離を設定し、マルチコプタの各回転翼の出力量の差が所定レベル以下となるウエイトの位置を当該ウエイトの位置を変更しながら算定し、算定したウエイトの位置を当該焦点距離に対して前記バランステーブルに登録するバランステーブル作成手段とを有することを特徴とするマルチコプタ。
【請求項3】
請求項1または2記載のマルチコプタであって、
当該マルチコプタの回転翼の数と同数の、各々回転翼と1対1に対応する前記バランス調整ユニットを備え、
各バランス調整ユニットの前記ウエイトは、対応する回転翼の中心とマルチコプタの中心とを結ぶ線上で移動可能であることを特徴とするマルチコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを搭載したマルチコプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラを搭載したマルチコプタとしては、カメラを支持する支持部を備えると共に当該支持部を回転移動することによりカメラの撮影方向の調整や安定化を行うジンバル(雲台)を下部に連結した、無人運転型のマルチコプタが知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-205950号公報
【特許文献1】特開2016-171478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラやジンバルを搭載したマルチコプタにおいては、カメラのズームの焦点距離(画角)の変更に伴うカメラの鏡筒の移動や、ジンバルカメラのカメラの支持部の回転移動によって、マルチコプタ全体の重心の位置が変動する。
【0005】
そして、このような重心の位置の変動は、マルチコプタの不安定化を招くと共に、マルチコプタの安定化のために、電力等の動力源の消費の増加を招く。
そこで、本発明は、カメラを搭載したマルチコプタの重心位置の変動による不安定化を抑制することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために本発明はカメラを搭載したマルチコプタに、前記カメラを支持する支持部を備えた、当該支持部の向きが可変なジンバルと、移動可能なウエイトを備えたバランス調整ユニットと、遠隔操作に応答して前記ジンバルの前記支持部の向きを変更するジンバル制御部と、前記ジンバルの前記支持部の向きの変更時に、当該変更に伴ってマルチコプタの重心の位置が変動しないように、前記バランス調整ユニットのウエイトを移動するバランス制御部とを備えたものである。
【0007】
このようなマルチコプタによれば、ジンバルのカメラを支持する支持部の向きの変更に伴うマルチコプタの重心位置の変動を、バランス調整ユニットのウエイトの移動により相殺することができ、マルチコプタの安定化が実現される。
【0008】
また、前記課題達成のために、本発明は、カメラを搭載したマルチコプタに、前記カメラを支持する支持部を備えた、当該支持部の向きが可変なジンバルと、移動可能なウエイトを備えたバランス調整ユニットと、前記ジンバルの前記支持部の向きの可変範囲内の前記支持部の向きの各々に対して前記ウエイトの位置を登録したバランステーブルと、遠隔操作に応答して前記ジンバルの前記支持部の向きを変更するジンバル制御部と、前記ジンバルの前記支持部の向きの変更時に、変更後の前記支持部の向きに対してバランステーブルに登録されている位置にバランス調整ユニットのウエイトを移動するバランス制御部とを備えたものである。
【0009】
このようなマルチコプタによれば、バランステーブルを適切に設定することにより、ジンバルのカメラを支持する支持部の向きの変更に伴うマルチコプタのバランスの変化を、バランス調整ユニットのウエイトの移動により相殺することができ、マルチコプタの安定化が実現される。
【0010】
すなわち、より具体的には、たとえば、このようなマルチコプタは、前記バランステーブルに、前記バランステーブルに、前記ジンバルの前記支持部の向きの各々に対して、前記ジンバルの前記支持部の向きが当該向きであるときに、前記ジンバルの向きによらずに当該マルチコプタのバランスを一定のバランスに保つために配置すべきウエイトの位置を登録すれば、ジンバルのカメラを支持する支持部の向きの変更の影響をウエイトの移動によって相殺することができる。
【0011】
または、たとえば、マルチコプタに、当該マルチコプタをホバリングさせた状態で、前記ジンバルの前記支持部の各向きについて、当該向きに前記ジンバルの前記支持部の向きを設定し、マルチコプタの各回転翼の出力量の差が所定レベル以下となるウエイトの位置を当該ウエイトの位置を変更しながら算定し、算定したウエイトの位置を当該向きに対して前記バランステーブルに登録するバランステーブル作成手段を設けることにより、ジンバルのカメラを支持する支持部の向きの変更の影響をウエイトの移動によって相殺することができる。
【0012】
また、前記課題達成のために、本発明は、ズームレンズを備えたカメラを搭載したマルチコプタに、移動可能なウエイトを備えたバランス調整ユニットと、遠隔操作に応答して前記カメラの前記ズームレンズの焦点距離を変更するカメラ制御部と、前記ズームレンズの焦点距離の変更時に、当該変更に伴ってマルチコプタの重心の位置が変動しないように、前記バランス調整ユニットのウエイトを移動するバランス制御部とを備えたものである。
【0013】
このようなマルチコプタによれば、カメラのズームレンズの焦点距離の変更に伴うマルチコプタの重心位置の変動を、バランス調整ユニットのウエイトの移動により相殺することができ、マルチコプタの安定化が実現される。
【0014】
また、前記課題達成のために、本発明は、ズームレンズを備えたカメラを搭載したマルチコプタに、移動可能なウエイトを備えたバランス調整ユニットと、前記ズームレンズの焦点距離の可変範囲内の焦点距離の各々に対して前記ウエイトの位置を登録したバランステーブルと、遠隔操作に応答して前記カメラの前記ズームレンズの焦点距離を変更するカメラ制御部と、前記ズームレンズの焦点距離の変更時に、変更後のズームレンズの焦点距離に対してバランステーブルに登録されている位置にバランス調整ユニットのウエイトを移動するバランス制御部とを備えたものである。
【0015】
このようなマルチコプタによれば、バランステーブルを適切に設定することにより、ズームレンズの焦点距離の変更に伴うマルチコプタのバランスの変化を、バランス調整ユニットのウエイトの移動により相殺することができ、マルチコプタの安定化が実現される。
【0016】
すなわち、より具体的には、たとえば、このようなマルチコプタは、前記バランステーブルに、前記ズームレンズの焦点距離の可変範囲内の焦点距離の各々に対して、前記カメラのズームレンズの焦点距離が当該焦点距離であるときに、前記カメラのズームレンズの焦点距離によらずに当該マルチコプタのバランスを一定のバランスに保つために配置すべきウエイトの位置を登録すれば、ズームレンズの焦点距離の変更の影響をウエイトの移動によって相殺することができる。
【0017】
または、たとえば、マルチコプタに、当該マルチコプタをホバリングさせた状態で、前記ズームレンズの焦点距離の可変範囲内の各焦点距離について、当該焦点距離に前記ズームレンズの焦点距離を設定し、マルチコプタの各回転翼の出力量の差が所定レベル以下となるウエイトの位置を当該ウエイトの位置を変更しながら算定し、算定したウエイトの位置を当該焦点距離に対して前記バランステーブルに登録するバランステーブル作成手段を設ければ、ズームレンズの焦点距離の変更の影響をウエイトの移動によって相殺することができる。
【0018】
ここで、以上のマルチコプタには、当該マルチコプタの回転翼の数と同数の、各々回転翼と1対1に対応する前記バランス制御ユニットを設け、各バランス制御ユニットの前記ウエイトを、対応する回転翼の中心とマルチコプタの中心とを結ぶ線上で移動可能なものとするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、カメラを搭載したマルチコプタの重心位置の変動による不安定化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るマルチコプタシステムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るマルチコプタの重心調整機構を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るマルチコプタの制御系の構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るバランステーブルを示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係るバランス制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るマルチコプタシステムの構成を示す。
図示するように、マルチコプタシステムは、4回転翼のマルチコプタ1と、マルチコプタ1の下部に連結されたジンバル2と、ジンバル2に支持されたカメラ3と、プロポやGCS(Ground Control Station)などと呼称される、マルチコプタ1やジンバル2やカメラ3の無線遠隔操操作を行う操作装置4とを備えている。
【0022】
ここで、ジンバル2は、マルチコプタ1が正立した姿勢における垂直方向を軸としてマルチコプタ1に対して回転可能なパン用アーム21と、マルチコプタ1が正立した姿勢における水平方向を軸としてマルチコプタ1に対して回転可能なカメラ支持台22を備えており、カメラ支持台22にはカメラ3が固定される。
【0023】
そして、このような構成において、ジンバル2は、パン用アーム21の回転によってカメラ3のパン角(カメラ3の左右方向の向き)を、カメラ支持台22の回転によってカメラ3のティルト角(カメラ3の上下方向の向き)を変更することができる。
【0024】
次に、マルチコプタ1の重心調整機構について説明する。
図2aは、ジンバル2を取り外した状態のマルチコプタ1を下方から見たようすを示す。
図示するように、マルチコプタ1は、マルチコプタ1の4つの回転翼のそれぞれに各々対応する4つのバランス調整ユニット11を備えている。
また、各バランス調整ユニット11は、マルチコプタ1の左右前後方向についての中心位置と対応する回転翼の中心とを結ぶ線上に配置されている。
そして、各バランス調整ユニット11は、図2bに示すように、マルチコプタ1の左右前後方向についての中心位置と対応する回転翼の中心とを結ぶ線を中心軸とするネジ111と、ネジ111に螺合したボールネジナット112よりなるボールネジを備えている。
【0025】
そして、ボールネジのボールネジナット112にはウエイト113が固定されている。
また、各バランス調整ユニット11は、ボールネジのネジ111を回転駆動するモータ114を備えており、モータ114によるネジ111の回転に伴い、ウエイト113はボールネジナット112と共に、ネジ111の中心軸の方向に沿って移動する。
【0026】
したがって、各バランス調整ユニット11において、モータ114の回転により、マルチコプタ1の左右前後方向についての中心位置と、対応する回転翼の中心とを結ぶ線上で、ウエイト113の位置を移動することができる。
【0027】
次に、マルチコプタ1の制御系の構成について説明する。
図3に示すように、マルチコプタ1の制御系は、操作装置4と無線通信を行う無線通信部121、制御部122、飛行制御部123、ジンバル制御部124、カメラ制御部125、バランス制御部126、バランステーブル127を備えている。
【0028】
このような構成において、飛行制御部123は、マルチコプタ1に備えたマルチコプタジャイロセンサ1231で検出したマルチコプタ1の姿勢を考慮しながら、制御部122を介して取得した無線通信部121が操作装置4から受信した飛行命令に従った飛行動作を行うように、各回転翼を回転するプロペラモータ1232を制御する。
【0029】
また、ジンバル制御部124は、ジンバル2に備えたジンバルジャイロセンサ1241で検出したジンバル2の姿勢に応じて、パン用アーム21やカメラ支持台22を回転するジンバルモータ1242を制御して、カメラ3の撮影方向を安定させる動作や、制御部122を介して取得した無線通信部121が操作装置4から受信した撮影方向変更命令に従ったカメラ3の撮影方向の変更を行うように、ジンバルモータ1242を制御する動作を行う。
【0030】
また、カメラ制御部125は、制御部122を介して取得した無線通信部121が操作装置4から受信したカメラ制御命令に従ったズーム動作や撮影動作を行うようにカメラ3を制御すると共に、カメラ3で撮影した映像を、制御部122を介して無線通信部121から操作装置4に送信する動作を行う。
【0031】
そして、バランス制御部126は、バランステーブル127に従って、上述した4つのバランス調整ユニット11のモータ114を制御して、マルチコプタ1のバランスを調整する。
【0032】
以下、このバランス制御部126が行うマルチコプタ1のバランスを調整する動作について説明する。
まず、バランステーブル127の内容について説明する。
図4に示するように、バランステーブル127には、ジンバル2のパン用アーム21の回転角であるパン角を表すパン角ステップと、カメラ支持台22の回転角であるティルト角を表すティルト角ステップと、カメラ3のズームの拡大率を表すズームステップとの組み合わせの各々に対して、4つのバランス調整ユニット11のウエイト113の位置の組み合わせが登録されている。
【0033】
なお、図中のウエイトnはn番目のバランス調整ユニット11のウエイト113を表している。
次に、このようなバランステーブル127を生成するために制御部122が行うキャリブレーション処理について説明する。
ここで、このキャリブレーション処理は、無線通信部121が操作装置4から受信したキャリブレーション実行命令に応答して制御部122が実行する、なお、キャリブレーション処理は、無風の環境下で実行させるようにする。
このキャリブレーション処理の手順を図5に示す。
図示するように、キャリブレーション処理において制御部122は、まず、バランス制御部126に、バランス調整ユニット11のウエイト113をウエイト113の移動可能範囲の中央に位置に移動させ、ジンバル制御部124に、ジンバル2のパン角ステップ、ティルト角ステップが共に0となるようにジンバルモータ1242を制御させ、カメラ制御部125にカメラ3のズームステップが0となるようにカメラ3を制御させる(ステップ502)。
【0034】
ここで、パン角ステップはパン角が0のとき(カメラ3が左右方向について中央を向いているとき)に0であり、パン角ステップが正の方向に大きくなるとパン角は正の方向に大きくなり、パン角ステップが負の方向に大きくなるとパン角は負の方向に大きくなる。また、同様に、ティルト角ステップはティルト角が0のとき(カメラ3が上下方向について中央を向いているとき)に0であり、ティルト角ステップが正の方向に大きくなるとティルト角は正の方向に大きくなり、ティルト角ステップが負の方向に大きくなるとティルト角は負の方向に大きくなる。また、ズームステップは、ズームの焦点距離が最小(画角が最大)のとき(鏡筒がワイド側端にあるとき)に0となり、ズームステップステップが正の方向に大きくなると、ズームの焦点距離は増加する。
【0035】
そして、次に、飛行制御部123に、ホバリング動作を行うように命令する(ステップ504)。
ホバリング動作を命令された飛行制御部123は、マルチコプタジャイロセンサ1231で検出したマルチコプタ1の姿勢を参照しながら、マルチコプタ1が正立した姿勢で空中の一点に留まるよう各プロペラモータ1232それぞれの回転数などの出力量を制御する。
【0036】
そして、次に、飛行制御部123を介して各プロペラモータ1232の出力量を取得する(ステップ506)。
ここで、プロペラモータ1232の出力量としては、プロペラモータ1232にプロペラモータ1232の回転速度を検出する回転センサを設け、回転センサで検出したプロペラモータ1232の回転速度を、プロペラモータ1232の出力量として飛行制御部123において検出するようにする。ただし、プロペラモータ1232の出力量としては、プロペラモータ1232への供給電流の大きさ等の、プロペラモータ1232の出力の大きさを表す他の量を用いるようにしてもよい。
【0037】
次に、各プロペラモータ1232の出力量の差の最大値が所定のしきい値Th未満であるかどうかを調べる(ステップ508)。ここで、しきい値Thは、それ未満の出力量の差を有する出力量は実質的に同一の出力量であると見なせる値を設定する。
【0038】
そして、出力量の差の最大値が所定のしきい値Th未満でなければ(ステップ508)、バランス制御部126に、最も出力量が大きかったプロペラモータ1232の反対側(対角側)にあるプロペラモータ1232に対応するバランス調整ユニット11のウエイト113を、1ステップを予め定めた単位移動量として、1ステップ外縁側(対応するプロペラモータ1232側)に移動させる(ステップ528)。
【0039】
ここで、プロペラモータ1232に対応するバランス調整ユニット11とは、そのプロペラモータ1232が回転する回転翼に対応するバランス調整ユニット11である。
そして、ステップ506からの処理に戻る。
一方、ステップ508で、出力量の差の最大値が所定のしきい値Th未満であると判定された場合には、その時点の各バランス調整ユニット11のウエイト113の位置を、各ウエイト113のホームポジションとして記憶する(ステップ510)。
【0040】
そして、各ウエイト113のホームポジションを、(パン角ステップ=0、ティルト角ステップ=0、ズームステップ=0)の組み合わせに対する、各ウエイト113の位置としてバランステーブル127に登録する(ステップ512)。
【0041】
また、次にi=1に設定する(ステップ514)。
そして、(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の各組み合わせのうちの、(パン角ステップ=0、ティルト角ステップ=0、ズームステップ=0)の組み合わせに対する距離がi番目に大きい(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の組み合わせを対象組に設定し、ジンバル制御部124に、ジンバル2のパン角ステップとティルト角ステップが対象組のパン角ステップが表すパン角とティルト角ステップとなるようにジンバルモータ1242を制御させる共に、カメラ制御部125にカメラ3のズームステップが対象組のズームステップとなるようにカメラ3を制御させる(ステップ516)。
【0042】
ここで、(パン角ステップa1、ティルト角ステップb1、ズームステップc1)の、(パン角ステップa2、ティルト角ステップb2、ズームステップc2)に対する距離は、a1-a2の絶対値とb1-b2の絶対値とc1-c2の絶対値の総和として求める。
【0043】
そして、次に、各プロペラモータ1232の出力量を取得し(ステップ518)、各プロペラモータ1232の出力量の差の最大値がしきい値Th未満であるかどうかを調べる(ステップ520)。
【0044】
そして、出力量の差の最大値が所定のしきい値Th未満でなければ(ステップ520)、バランス制御部126に、最も出力量が大きかったプロペラモータ1232の反対側(対角側)にあるプロペラモータ1232に対応するバランス調整ユニット11のウエイト113を、1ステップ外縁側(対応するプロペラモータ1232側)に移動させる(ステップ530)。
【0045】
そして、ステップ518からの処理に戻る。
一方、ステップ520において、出力量の差の最大値が所定のしきい値Th未満であると判定された場合には、その時点の各バランス調整ユニット11のウエイト113の位置を、対象組となっている(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の組み合わせに対する、各ウエイト113の位置としてバランステーブル127に登録する(ステップ522)。
【0046】
そして、(パン角ステップ=0、ティルト角ステップ=0、ズームステップ=0)の組み合わせに対する距離がi番目に大きい(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の組み合わせであって、バランステーブル127に各ウエイト113の位置が未登録の組み合わせが他にあるかどうかを調べる(ステップ524)。
【0047】
そして、存在する場合には、存在した(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の組み合わせのうちの一つの組み合わせを対象組に設定し、ジンバル制御部124に、ジンバル2のパン角ステップとティルト角ステップが対象組のパン角ステップが表すパン角とティルト角ステップとなるようにジンバルモータ1242を制御させる共に、カメラ制御部125にカメラ3のズームステップが対象組のズームステップとなるようにカメラ3を制御させる(ステップ526)。
【0048】
そして、ステップ518以降の処理に戻る。
一方、パン角ステップ=0、ティルト角ステップ=0、ズームステップ=0)の組み合わせに対する距離がi番目に大きい(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の組み合わせのうちに、バランステーブル127に各ウエイト113の位置が未登録の組み合わせが存在しないと判定された場合には(ステップ524)、バランステーブル127に各ウエイト113の位置が未登録の組み合わせが存在するかどうかを調べる(ステップ532)。
【0049】
そして、未登録の組み合わせが存在した場合には(ステップ532)、iを1増加し(ステップ534)、ステップ516からの処理に戻る。
一方、未登録の組み合わせが存在しなかった場合には(ステップ532)、キャリブレーション処理を終了する。
以上、制御部122が行うキャリブレーション処理について説明した。
このようなキャリブレーション処理によれば、バランステーブル127には、(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の各組み合わせについて、ジンバル2のパン角ステップ、ティルト角ステップ、カメラ3のズームステップが、その組み合わせにあるときに、各プロペラモータ1232の出力量の差が実質的に同一になる、各バランス調整ユニット11のウエイト113の位置が調査されてバランステーブル127に登録される。
【0050】
なお、以上のキャリブレーション処理では、(パン角ステップ=0、ティルト角ステップ=0、ズームステップ=0)の組み合わせに対する距離が小さいものより順に、(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の各組み合わせについて、ジンバル2のパン角ステップ、ティルト角ステップ、カメラ3のズームステップが、その組み合わせにあるときに、各プロペラモータ1232の出力量の差が実質的に同一になる、各バランス調整ユニット11のウエイト113の位置を調査してバランステーブル127に登録したが、この調査及び登録を行う(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の組み合わせの順番は、(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の全ての組み合わせについて調査及び登録が行われるものであれば任意であってよい。
【0051】
但し、この調査及び登録の(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の組み合わせの順番は、パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップが、漸次的に変化する順番とすることが好ましい。
【0052】
次に、バランス制御部126が、マルチコプターの飛行時に行うバランス制御処理について説明する。なお、以下のバランス制御処理は、キャリブレーション処理の実行中は実行を抑止される。
【0053】
図6に、このバランス制御処理の手順を示す。
図示するように、バランス制御部126は、このバランス制御処理において、まず、各バランス調整ユニット11のウエイト113の位置を、その時点におけるジンバル2のパン角ステップ、ティルト角ステップ、カメラ3のズームステップのの組み合わせに対してバランステーブル127に登録されている位置に、各バランス調整ユニット11のウエイト113を移動する(ステップ602)。
【0054】
そして、ジンバル2のパン角ステップ、ティルト角ステップ、カメラ3のズームステップのいずれかの変更の発生を監視する(ステップ604)。
ここで、ジンバル2のパン角ステップ、ティルト角ステップ、カメラ3のズームステップの変更の検出は、制御部122が無線通信部121を介して操作装置4から受け取った撮影方向変更命令や、ズーム変更動作を要求するカメラ制御命令や、ジンバル制御部124から取得したジンバル制御部124がカメラ3の撮影方向を安定させるために行うジンバル2のパン角ステップやティルト角ステップの変更動作内容や、ジンバル制御部124から取得したジンバル2のパン角ステップ、ティルト角ステップの状態情報や、カメラ制御部125から取得したカメラ3のズームステップの状態情報等に基づいて検出することができる。
そして、ジンバル2のパン角ステップ、ティルト角ステップ、カメラ3のズームステップのいずれかの変更が発生したならば(ステップ604)、変更後の(パン角ステップ、ティルト角ステップ、ズームステップ)の組み合わせに対してバランステーブル127に登録されている位置に、各バランス調整ユニット11のウエイト113を移動する(ステップ606)。
【0055】
そして、ステップ604の監視に戻る。
以上、バランス制御部126が行うバランス制御処理について説明した。
以上のようなバランス制御処理によれば、ジンバル2のパン角、ティルト角、カメラ3のズームの焦点距離の変更に伴う重心位置の変動は、バランス調整ユニット11のウエイト113の移動により相殺され、各プロペラモータ1232の出力量は実質的に同一となり、マルチコプタ1の安定化が実現される。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、実施形態では、回転翼が4枚のマルチコプタ1への適用について説明したが、本発明は任意の枚数の回転翼を備えたマルチコプタ1に同様に適用可能である。ただし、奇数枚の回転翼を備えたマルチコプタ1に適用する場合には、以上の実施形態におけるキャリブレーション処理のステップ528、530は、最も出力量が大きかったプロペラモータ1232の反対側の2つのプロペラモータ1232(最も出力量が大きかったプロペラモータ1232の中心とマルチコプタ1の中心を通る線に最も近い位置にある最も出力量が大きかったプロペラモータ1232以外の2つのプロペラモータ1232)に対応するバランス調整ユニット11のウエイト113を、1ステップ外縁側(対応する回転翼側)に移動させるようにする。
【0057】
また、以上の実施形態におけるキャリブレーション処理のステップ528、530のうちの少なくとも一方のステップは、最も出力量が大きかったプロペラモータ1232に対応するバランス調整ユニット11のウエイト113を、1ステップ内側(マルチコプタ1の中心側)に移動するステップとするようにしてもよい。なお、奇数枚の回転翼を備えたマルチコプタ1に適用する場合も同様に、ステップ528、530のうちの少なくとも一方のステップを、最も出力量が大きかったプロペラモータ1232に対応するバランス調整ユニット11のウエイト113を、1ステップ内側(マルチコプタ1の中心側)に移動するステップとしてよい。
【0058】
なお、以上の実施形態は、ジンバル2がパン、ティルトとの、2つの軸回りにカメラ3を回転するものとして説明したが、ジンバル2は、1軸または3軸回りにカメラ3を回転するものとしてもよく、この場合にも、以上の実施形態は、バランステーブルにウエイト113の位置を登録する組み合わせに各軸回りの回転角を表すステップを含めることにより同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…マルチコプタ、2…ジンバル、3…カメラ、4…操作装置、11…バランス調整ユニット、21…パン用アーム、22…カメラ支持台、111…ネジ、112…ボールネジナット、113…ウエイト、114…モータ、121…無線通信部、122…制御部、123…飛行制御部、124…ジンバル制御部、125…カメラ制御部、126…バランス制御部、127…バランステーブル、1231…マルチコプタジャイロセンサ、1232…プロペラモータ、1241…ジンバルジャイロセンサ、1242…ジンバルモータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6