(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0016】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置1の構成例を示すブロック図である。本実施の形態にかかる半導体装置1は、発振周波数foの発振信号を出力する発振器であって、一次温度特性を調整可能な2種類の基準電圧Va,Vbを用いることにより、発振周波数foの一次温度特性だけでなく、発振周波数foの二次温度特性を抑制している。それにより、本実施の形態にかかる半導体装置1は、温度に依らず安定した発振周波数の発振信号を出力することができる。以下、具体的に説明する。
【0017】
図1に示すように、半導体装置1は、基準電圧生成回路11と、発振回路12と、を備える。基準電圧生成回路11は、一次温度特性を個別に調整可能な2種類の基準電圧Va,Vbを生成する。発振回路12は、RC型の発振回路であって、基準電圧Va,Vbを用いることによって、発振周波数foの発振信号CLKを出力する。
【0018】
(基準電圧生成回路11の具体的な構成例)
図2は、基準電圧生成回路11の具体的な構成例を示す図である。
図2に示すように、基準電圧生成回路11は、オペアンプA1と、抵抗素子R1,R2と、容量素子C1と、バイポーラトランジスタTR1と、スイッチ素子SW1,SW2と、を備える。本実施の形態では、バイポーラトランジスタTR1が、PNP型バイポーラトランジスタである場合を例に説明する。
【0019】
オペアンプA1の非反転入力端子には、外部からの定電圧Vconstが供給され、オペアンプA1の反転入力端子には、帰還電圧Vfbが供給され、オペアンプA1の出力端子から、定電圧Vconstと帰還電圧Vfbとの間の電位差が無くなるような電圧が出力される。なお、定電圧Vconstの温度特性は、少なくとも基準電圧Va,Vbの温度特性よりも小さければ良く、例えば、基準値から±2%程度の範囲内であればよい。
【0020】
抵抗素子R1の一端(ノードN1)は、オペアンプA1の出力端子に接続され、抵抗素子R1の他端(ノードN2)は、バイポーラトランジスタTR1のエミッタに接続されている。バイポーラトランジスタTR1のベース及びコレクタは、何れも接地電圧端子GNDに接続されている。
【0021】
スイッチ素子SW1は、抵抗素子R1上に設けられた複数のノードN4の中から何れかを選択して、外部出力端子OUTaに接続する。スイッチ素子SW1により選択された何れかのノードN4の電圧は、基準電圧Vaとして、外部出力端子OUTaを介して、基準電圧生成回路11の外部に出力される。
【0022】
スイッチ素子SW2は、抵抗素子R1上に設けられた複数のノードN3の中から何れかを選択して、オペアンプA1の反転入力端子に接続する。スイッチ素子SW2により選択された何れかのノードN5の電圧は、帰還電圧Vfbとして用いられる。
【0023】
容量素子C1は、オペアンプA1の出力端子及び反転入力端子間に設けられている。ここで、仮に容量素子C1が設けられていない場合、抵抗素子R1及びその寄生容量の影響で第二極点が低周波領域に移動するため、オペアンプA1の動作が不安定になる可能性がある。そこで、本実施の形態では、オペアンプA1の出力端子及び反転入力端子間に容量素子C1を設けることより、交流信号に対して抵抗素子R1を短絡させた状態とすることができるため、オペアンプA1の動作を安定させることができる。
【0024】
抵抗素子R2は、抵抗素子R1上のノードN3と、接地電圧端子GNDと、の間に設けられている。また、抵抗素子R2上に設けられたノードN6と外部出力端子OUTbとが接続されている。抵抗素子R2上のノードN6の電圧は、基準電圧Vbとして、外部出力端子OUTbを介して、基準電圧生成回路11の外部に出力される。
【0025】
なお、以下では、(抵抗素子R2のGND側の端とノードN6との間の抵抗値)/(抵抗素子R2の総抵抗値)を抵抗比mと称す。また、(抵抗素子R1のノードN2〜N3間の抵抗値)/(抵抗素子R1の総抵抗値)を抵抗比θと称す。また、(抵抗素子R1のノードN2とスイッチ素子SW2により選択されたノードN5との間の抵抗値)/(抵抗素子R1の総抵抗値)を抵抗比γと称す。さらに、(抵抗素子R1のノードN2とスイッチ素子SW1により選択されたノードN4との間の抵抗値)/(抵抗素子R1の総抵抗値)を、抵抗比βと称す。
【0026】
ここで、バイポーラトランジスタTR1のベース−エミッタ間電圧Vbeは、温度上昇に比例して低下する特性、即ち、負の一次温度特性を有する。そのため、基準電圧生成回路11は、スイッチ素子SW1,SW2によって接続を切り替えることにより、例えば
図3に示すように、基準電圧Va,Vbのそれぞれの一次温度特性を自由に設定することができる。
【0027】
図1に戻り、説明を続ける。
発振回路12は、周波数/電流変換回路121と、制御電圧生成回路122と、電圧制御発振回路123と、分周回路124と、を備える。
【0028】
周波数/電流変換回路121は、少なくとも基準電圧Vaによって駆動されるRC型の変換回路であって、帰還信号fCLKの周波数に応じた電流Ieを出力する。制御電圧生成回路122は、電流Ieに基づき生成された電圧Veと、基準電圧Vbと、の電位差に応じた直流の制御電圧Vctrlを生成する。電圧制御発振回路123は、制御電圧Vctrlに応じた周波数の発振信号CLKを生成する。例えば、電圧制御発振回路123は、制御電圧Vctrlが大きいほど発振周波数foの大きな発振信号CLKを生成し、制御電圧Vctrlが小さいほど発振周波数foの小さな発振信号CLKを生成する。分周回路124は、発振信号CLKをN(2以上の整数)分周して、帰還信号fCLKとして出力する。
【0029】
(発振回路12の具体的な構成例)
図4は、発振回路12の具体的な構成例を発振回路12aとして示す図である。
図4の例では、発振回路12を構成する各機能ブロックの具体的な構成が示されている。なお、
図4の例では、ボルテージフォロア125がさらに設けられている。
【0030】
ボルテージフォロア125は、基準電圧生成回路11から供給された基準電圧Vaをそのまま出力する。具体的には、ボルテージフォロア125は、オペアンプA3により構成されている。オペアンプA3の非反転入力端子には、基準電圧生成回路11からの基準電圧Vaが供給され、オペアンプA3の反転入力端子には、オペアンプA3の出力がフィードバックして供給される。
【0031】
周波数/電流変換回路121は、抵抗素子Raと、容量素子C11,C12と、スイッチ素子SW11〜SW14と、を備える。
【0032】
抵抗素子Raは、ボルテージフォロア125の出力端子と、周波数/電流変換回路121の出力端子(ノードN12)と、の間に設けられている。なお、抵抗素子Raは、抵抗値を可変に構成されている。
【0033】
スイッチ素子SW11,SW12は、ノードN12と接地電圧端子GNDとの間に直列に設けられている。スイッチ素子SW13,SW14は、ノードN12と接地電圧端子GNDとの間に直列に、かつ、スイッチ素子SW11,SW12に並列に設けられている。スイッチ素子SW11,SW14では、何れも帰還信号fCLKによってオンオフが制御される。スイッチ素子SW12,SW13では、何れも帰還信号fCLKの反転信号fCLKBによってオンオフが制御される。つまり、スイッチ素子SW11,SW14と、スイッチ素子SW12,SW13とでは、互いに相補的にオンオフが制御される。
【0034】
容量素子C11は、例えばMOM(Metal Oxide Metal)容量であって、スイッチ素子SW11,SW12間のノードと、接地電圧端子GNDと、の間に設けられている。容量素子C12は、例えばMOM容量であって、スイッチ素子SW13,SW14間のノードと、接地電圧端子GNDと、の間に設けられている。
【0035】
例えば、スイッチ素子SW11,S14がオンし、スイッチ素子SW12,SW13がオフしている場合、抵抗素子Raに流れる電流Irの電荷が容量素子C11に蓄積され、容量素子C12に蓄積された電荷が接地電圧端子GNDに向けて放出される。それに対し、スイッチ素子SW11,S14がオフし、スイッチ素子SW12,SW13がオンしている場合、抵抗素子Raに流れる電流Irの電荷が容量素子C12に蓄積され、容量素子C11に蓄積された電荷が接地電圧端子GNDに向けて放出される。
【0036】
制御電圧生成回路122は、オペアンプA2と、容量素子C2,C3と、を備える。オペアンプA2の非反転入力端子には、基準電圧生成回路11からの基準電圧Vbが供給され、オペアンプA2の反転入力端子には、周波数/電流変換回路121の出力端子(ノードN12)が接続されている。また、容量素子C2は、オペアンプA2の出力端子及び反転入力端子間に設けられている。容量素子C3は、オペアンプA2の反転入力端子と接地電圧端子GNDとの間に設けられている。つまり、
図4の例では、制御電圧生成回路122は、積分器を構成している。以下、制御電圧生成回路122を積分器122とも称す。
【0037】
容量素子C3には、周波数/電流変換回路121の出力電流Ieの電荷が蓄積される。オペアンプA2は、基準電圧Vbと、容量素子C3に蓄積された電荷に応じた電圧Veと、の電位差に応じた制御電圧Vctrlを出力する。
【0038】
ここで、発振回路12の動作が安定している場合、周波数/電流変換回路121から積分器122に向けて電流Ieが出力されていなくても、電圧Veは、基準電圧Vbと同じ値に維持される。このとき、抵抗素子Raに流れている電流Irは、電流Ieとしては用いられず、すべて電流Icとして容量素子C11,C12に向けて流れることになる。それに対し、発振回路12の動作が安定していない場合、電圧Veを基準電圧Vbと同じ値に維持するために、周波数/電流変換回路121から積分器122に向けて電流Ieが出力される。このとき、抵抗素子Raに流れている電流Irの一部又は全部が電流Ieとして用いられ、残りの電流が電流Icとして容量素子C11,C12に向けて流れることになる。
【0039】
図5は、電圧制御発振回路123の具体的な構成の一例を示す図である。
図5に示すように、電圧制御発振回路123は、奇数個(本例では3個)のインバータINV1〜INV3と、Pチャネル型のMOSトランジスタMP1と、を有する。インバータINV1〜INV3は、リング状に縦続接続されている。インバータINV3の出力信号は、電圧制御発振回路123の出力信号(発振信号CLK)として用いられる。MOSトランジスタMP1は、電源電圧端子VDDと、各インバータINV1〜INV3の高電位側電源端子と、の間に設けられ、ゲートに制御電圧Vctrlが供給される。
【0040】
ここで、制御電圧Vctrlのレベルに応じてMOSトランジスタMP1のオン抵抗を変化させることにより、インバータINV1〜INV3の駆動能力を制御することができる。それにより、電圧制御発振回路123の出力信号(発振信号CLK)の発振周波数foが制御される。
【0041】
発振回路12aのその他の構成については、発振回路12の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0042】
(発振信号CLKの安定化のメカニズム)
続いて、発振信号CLKの安定化のメカニズムについて、計算式を用いて説明する。
【0043】
上記したように、発振回路12の動作が安定している場合、周波数/電流変換回路121から積分器122に向けて電流Ieが流れていなくても、電圧Veは、基準電圧Vbと同じ値に維持される。このとき、抵抗素子Raに流れている電流Irは、電流Ieとしては用いられず、すべて電流Icとして容量素子C11,C12に向けて流れることになる。
【0044】
ここで、各容量素子C11,C12の容量値をC(合計2C)とすると、Ic=2Ve・C・fo/Nが成り立つため、Ir=2Vb・C・fo/Nが導き出される。また、オームの法則によりIr=(Va−Vb)/Raが成り立つため、(Va−Vb)/Ra=2Vb・C・fo/Nが導き出される。そのため、発振回路12の発振周波数foは、以下の式(1)のように表すことができる。
【0046】
式(1)からわかるように、発振周波数foは、電圧制御発振回路123の特性の変動により変化することはないのに対し、抵抗素子Ra及び容量素子C11,C12に依存する。ここで、容量素子C11,C12の温度特性は無視できるほどに小さいため、発振周波数foは、実質的に抵抗素子Raのみに依存すると言うことができる。そこで、本実施の形態にかかる半導体装置1は、基準電圧Va,Vbを、それぞれの一次温度特性を調整して用いることにより、抵抗素子Raの一次温度特性のみならず二次温度特性が発振周波数foに与える影響を抑制(キャンセル)している。それにより、本実施の形態にかかる半導体装置1は、発振周波数foの温度依存性を抑制することができる。以下、さらに詳細に説明する。
【0047】
基準電圧生成回路11において、抵抗素子R1の一端(アンプA1の出力端子に接続される端子)N1に流れる電流をI1、抵抗素子R1の他端(バイポーラトランジスタTR1のエミッタに接続される端子)N2に流れる電流をI2、抵抗素子R1上の任意のノードN3から抵抗素子R2に流れる電流をI3とすると、I1=I2+I3が成り立つ。
【0048】
より詳細には、電流I2,I3は、それぞれ以下の式(2)及び式(3)のように表すことができる。
【0050】
式(2)及び式(3)より、電流I1は、以下の式(4)のように表すことができる。
【0052】
抵抗素子R1上に設けられたノードN3の電圧をVn3とすると、Vn3=Vbe+I3・θR1が成り立つため、基準電圧Vbは、以下の式(5)のように表すことができる。
【0054】
また、基準電圧Vaは、以下の式(6)のように表すことができる。
【0056】
式(5)に式(3)を代入すると、基準電圧Vbは、以下の式(7)にように表すことができる。
【0058】
また、式(6)に式(4)を代入すると、基準電圧Vaは、以下の式(8)のように表すことができる。
【0060】
次に、基準電圧Vbを温度Tで一次微分、二次微分及び三次微分すると、それらの結果は、以下の式(9)、式(10)及び式(11)のように表すことができる。
【0062】
また、基準電圧Vaを温度Tで一次微分、二次微分及び三次微分すると、それらの結果は、以下の式(12)、式(13)及び式(14)のように表すことができる。
【0064】
次に、式(9)、式(10)及び式(11)をテイラー展開することにより、基準電圧Vbの一次温度係数λb、二次温度係数ξb及び三次温度係数ηbは、以下の式(15)、式(16)及び式(17)のように表すことができる。ただし、Vbe0は、電圧Vbeの基準値(例えば室温での電圧値)を表し、Vb0は、基準電圧Vbの基準値(例えば室温での電圧値)を表し、λbe、ξbe、ηbeは、それぞれ電圧Vbeの一次温度係数、二次温度係数及び三次温度係数を表している。
【0066】
また、式(12)、式(13)及び式(14)をテイラー展開することにより、基準電圧Vaの一次温度係数λa、二次温度係数ξa及び三次温度係数ηaは、以下の式(18)、式(19)及び式(20)のように表すことができる。ただし、Va0は、基準電圧Vaの基準値(例えば室温での電圧値)を表している。
【0068】
式(15)及び式(18)から分かるように、基準電圧Va,Vbの一次温度係数λa,λbには何れも−λbeが含まれるため、基準電圧Va,Vbは、正の温度特性を有することになる。そのため、スイッチ素子SW1,SW2を用いてβ,γの値を調整することにより、基準電圧Va,Vbの一次温度係数λa,λbを自由に設定することができる。
【0069】
次に、式(15)、式(16)及び式(17)を用いることにより、基準電圧Vbの一次温度係数λb、二次温度係数ξb及び三次温度係数ηbの関係は、以下の式(21)及び式(22)のように表すことができる。
【0071】
また、式(18)、式(19)及び式(20)を用いることにより、基準電圧Vaの一次温度係数λa、二次温度係数ξa及び三次温度係数ηaの関係は、以下の式(23)及び式(24)のように表すことができる。
【0073】
式(21)〜式(24)から分かるように、基準電圧Vaの二次温度係数ξa及び三次温度係数ηaは、一次温度係数λaに正比例し、基準電圧Vbの二次温度係数ξb及び三次温度係数ηbは、一次温度係数λbに正比例する。
【0074】
ここで、発振周波数foは、以下の式(25)のように表すことができる。なお、式(25)では、発振周波数foの温度係数のうち一次温度係数λf、二次温度係数ξf及び三次温度係数ηfが考慮されている。また、fo0は、発振周波数foの基準値(例えば室温での周波数)を表している。
【0076】
同様に、式(1)の発振周波数foは、以下の式(26)のように表すことができる。ただし、Ra0は、抵抗素子Raの基準値(例えば室温での抵抗値)を表し、λ
R、ξ
R、η
Rは、それぞれ抵抗素子Raの一次温度係数、二次温度係数及び三次温度係数を表している。
【0078】
式(25)及び式(26)より、以下の式(27)が成り立つ。
【0080】
式(28)の左辺を展開すると、以下の式(28)のように表される。
【0082】
さらに、式(28)は、以下の式(29)のように表すことができる。
【0084】
ここで、式(1)及び式(29)から、以下の式(30)を導き出すことができる。
【0086】
式(30)から、以下の式(31)が成り立つ。
【0088】
式(31)から、以下の式(32)が成り立つ。
【0090】
式(32)から、以下の式(33)、式(34)及び式(35)を導き出すことができる。
【0092】
式(33)より、発振周波数foの一次温度係数λfは、以下の式(36)のように表すことができる。
【0094】
仮に、発振周波数foの一次温度係数λfが0に補正された場合、式(36)から、以下の式(37)が成り立つ。
【0096】
このとき、式(34)より、発振周波数foの二次温度係数ξfは、以下の式(38)のように表すことができる。
【0098】
仮に、発振周波数foの一次温度係数λfが0に補正されるだけでなく、発振周波数foの二次温度係数ξfが0に補正された場合、式(38)から、以下の式(39)が成り立つ。
【0100】
これらの式から、基準電圧Vbの一次温度係数λbは、以下の式(40)のように導き出すことができ、基準電圧Vaの一次温度係数λaは、以下の式(41)のように導き出すことができる。
【0102】
つまり、スイッチ素子SW1,SW2を用いてβ,γの値を調整することによって、基準電圧Va,Vbの一次温度係数λa,λbを、それぞれ式(41)及び式(40)を満たすような値に設定することにより、発振周波数foの一次温度係数λf及び二次温度係数ξfを何れも抑制することができる(理想的には実質的に0に補正することができる)。
【0103】
なお、λf=0,ξf=0の場合、式(35)より、発振周波数foの三次温度係数ηfは、以下の式(42)のように表すことができる。
【0105】
式(42)に式(21),式(22),式(24)及び式(37)を代入することにより、発振周波数foの三次温度係数ηfは、以下の式(43)のように表すことができる。
【0107】
本実施の形態では、発振周波数foの三次温度係数ηfは誤差成分である。ただし、式(43)からもわかるように、抵抗素子Raが一次温度係数λ
Rの小さいTiN抵抗等により構成されている場合には、発振周波数foの三次温度係数ηfに起因する誤差は抑制される。また、バイポーラトランジスタTR1に流れる電流を小さくし、かつ、バイポーラトランジスタTR1のサイズを大きくした場合には、電圧Vbeの一次温度係数λbeが増加するため、発振周波数foの三次温度係数ηfに起因する誤差は抑制される。
【0108】
図6は、二次温度係数に対する補正を実施する前後の発振周波数のそれぞれの温度依存性を示す図である。
図6を参照すると、二次温度係数に対する補正を実施する前(即ち、一次温度係数に対する補正を実施したのみ)では、低温時及び高温時に発振周波数foが−0.2%よりも大きく変動してしまう。それに対し、二次温度係数に対する補正を実施した後では、温度変化に対する発振周波数foの変動量が、±0.03%以下に抑えられている。
【0109】
このように、本実施の形態にかかる半導体装置1は、基準電圧Va,Vbを、それぞれの一次温度特性を調整して用いることにより、抵抗素子Raの一次温度特性のみならず二次温度特性が発振周波数foに与える影響を抑制(キャンセル)することができる。それにより、本実施の形態にかかる半導体装置1は、温度によらず安定した発振周波数の発振信号を出力することができる。
【0110】
なお、特許文献2に開示された基準電圧生成回路を用いて、半導体装置1と同等の機能を実現しようとした場合、2つの基準電圧生成回路を用いて基準電圧Va,Vbを生成する必要があるため、回路規模が増大してしまう。
【0111】
本実施の形態では、基準電圧生成回路11が
図2に示す構成である場合を例に説明したが、これに限られない。基準電圧生成回路11は、一次温度特性を調整可能な基準電圧Va,Vbを生成する構成であればよい。以下、基準電圧生成回路11の変形例を、
図7を用いて簡単に説明する。
【0112】
(基準電圧生成回路11の変形例)
図7は、基準電圧生成回路11の変形例を基準電圧生成回路11aとして示す図である。基準電圧生成回路11aは、基準電圧生成回路11と比較して、スイッチ素子SW3,SW4をさらに備える。
【0113】
スイッチ素子SW3は、抵抗素子R1上に設けられた複数のノードN3の中から何れかを選択して、抵抗素子R2の一端に接続する。スイッチ素子SW4は、抵抗素子R2上に設けられた複数のノードN6の中から何れかを選択して、外部出力端子OUTbに接続する。スイッチ素子SW4により選択された何れかのノードN6の電圧は、基準電圧Vbとして、外部出力端子OUTbを介して、基準電圧生成回路11aの外部に出力される。
【0114】
基準電圧生成回路11aのその他の構成については、基準電圧生成回路11の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0115】
基準電圧生成回路11aも、基準電圧生成回路11の場合と同等程度の効果を奏することができる。特に、基準電圧生成回路11aは、スイッチ素子SW3,SW4を用いることにより、基準電圧Va,Vbの一次温度特性をさらに細かく設定することができる。
【0116】
(半導体装置1のレイアウト構成例)
図8は、半導体装置1の一部のレイアウト構成例を示す図である。
図8に示すように、下位階層であるM1層には、抵抗素子R1が配置されている。なお、抵抗素子R1は、長方形状の複数の単位抵抗R11と、それらを連結する複数の連結部R12と、によって構成されている。
【0117】
M1層に積層される層(ここでは上層)にあるM2層には、半導体装置1の構成要素間を接続する配線W1が配置されている。
図8の例では、平面視上、配線W1が、抵抗素子R1の一部を覆うように配置されている。ここで、配線W1に覆われた抵抗素子R1の部分は、配線W1によって圧迫されるため、配線W1に覆われていない抵抗素子R1の部分の抵抗値と異なる抵抗値を示す可能性がある。この場合、基準電圧Va,Vbの分解能の微分非直線性誤差(DNL;Differential Non-Linearity)が劣化してしまう可能性がある。
【0118】
そこで、本実施の形態では、平面視上、ダミー配線WDが、配線W1に覆われていない抵抗素子R1の部分を覆うようにM2層に配置されている。それにより、抵抗素子R1の全てが同じ抵抗値を示すため、基準電圧Va,Vbの分解能の微分非直線性誤差の劣化を防ぐことができる。
【0119】
(半導体装置1の別のレイアウト構成例)
図9は、半導体装置1の一部の別のレイアウト構成例を示す図である。
複数の単位抵抗R11と、それらを連結する複数の連結部R12と、によって構成された抵抗素子R1は、y軸方向に沿って往復を繰り返しながら、x軸方向に沿って延在するように配置されている。
【0120】
ここで、複数の連結部R12のうち、y軸方向に沿って繰り返される往復の折り返し地点に設けられた連結部R12aは、それ以外の連結部R12bよりも長いため、連結部R12bよりも大きな寄生抵抗を有する。それにより、基準電圧Va,Vbの分解能の微分非直線性誤差が劣化してしまう可能性がある。
【0121】
そこで、本実施の形態では、y軸方向に沿って配置される折り返し地点間の単位抵抗R11の数を例えば16個以上に制限する。それにより、複数の連結部R12に対する連結部R12aの割合を小さくして、連結部R12aの寄生容量の影響を小さくすることができるため、基準電圧Va,Vbの分解能の微分非直線性誤差の劣化を防ぐことができる。
【0122】
<実施の形態2>
図10は、実施の形態2にかかる半導体装置2の構成例を示す図である。
図10に示すように、半導体装置2は、基準電圧生成回路21と、発振回路22と、を備える。基準電圧生成回路21は、基準電圧生成回路11に対応し、発振回路22は、発振回路12に対応する。なお、
図10の例では、基準電圧生成回路21の具体的な構成例が示されている。
【0123】
基準電圧生成回路21は、オペアンプA21と、MOSトランジスタMP21〜MP23と、バイポーラトランジスタTR21〜TR23と、抵抗素子R21と、抵抗素子R22と、可変抵抗R23と、スイッチ素子SW21と、を備える。本実施の形態では、MOSトランジスタMP21〜MP23が、何れもPチャネルMOSトランジスタであって、バイポーラトランジスタTR21〜TR23が、何れもPNP型バイポーラトランジスタである場合を例に説明する。
【0124】
MOSトランジスタMP21では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインがバイポーラトランジスタTR21のエミッタに接続され、ゲートがオペアンプA21の出力端子に接続されている。バイポーラトランジスタTR21のベース及びコレクタは、何れも接地電圧端子GNDに接続されている。
【0125】
MOSトランジスタMP22では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインが、可変抵抗R23を介して、バイポーラトランジスタTR22のエミッタに電気的に接続され、ゲートがオペアンプA21の出力端子に接続されている。バイポーラトランジスタTR22のベース及びコレクタは、何れも接地電圧端子GNDに接続されている。
【0126】
オペアンプA21は、MOSトランジスタMP21のドレイン電圧と、MOSトランジスタMP22のドレイン電圧と、の電位差に応じた電圧を生成し、MOSトランジスタMP21〜MP23のそれぞれのゲートに対して出力する。
【0127】
MOSトランジスタMP23では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインが抵抗素子R21の一端(ノードN21)に接続され、ゲートにオペアンプA21の出力端子に接続されている。
【0128】
抵抗素子R21の他端(ノードN22)は、バイポーラトランジスタTR23のエミッタに接続されている。バイポーラトランジスタTR23のベース及びコレクタは、何れも接地電圧端子GNDに接続されている。
【0129】
スイッチ素子SW21は、抵抗素子R21上に設けられた複数のノードN23の中から何れかを選択して、外部出力端子OUTaに接続する。スイッチ素子SW21により選択された何れかのノードN23の電圧は、基準電圧Vaとして、外部出力端子OUTaを介して、基準電圧生成回路21の外部に出力される。
【0130】
抵抗素子R22は、抵抗素子R21上のノードN24と、接地電圧端子GNDと、の間に設けられている。また、抵抗素子R22上に設けられたノードN25と外部出力端子OUTbとが接続されている。抵抗素子R22上のノードN25の電圧は、基準電圧Vbとして、外部出力端子OUTbを介して、基準電圧生成回路21の外部に出力される。
【0131】
基準電圧生成回路21は、可変抵抗R23の抵抗値を調整することにより、MOSトランジスタMP22のソース−ドレイン間に流れる電流Ipの電流値を調整することができ、それに伴って、MOSトランジスタMP23のソース−ドレイン間に流れる電流Ipmの電流値を調整することができる。換言すると、基準電圧生成回路21は、可変抵抗R23の抵抗値を調整することにより、抵抗素子R21に流れる電流Ipmの電流値を調整することができる。
【0132】
なお、本例では、MOSトランジスタMP23のサイズが、MOSトランジスタMP22のサイズのM倍となっている。したがって、MOSトランジスタMP23のソース−ドレイン間(換言すると、抵抗素子R21)には、MOSトランジスタMP22のソース−ドレイン間に流れる電流IpのM倍の電流Ipmが流れる。
【0133】
ここで、各バイポーラトランジスタTR21〜TR23のベース−エミッタ間電圧は、温度上昇に比例して低下する特性、即ち、負の一次温度特性を有する。そのため、基準電圧生成回路21は、可変抵抗R23の抵抗値を調整したり、及び、スイッチ素子SW21によって接続を切り替えたりすることにより、基準電圧Va,Vbのそれぞれの一次温度特性を自由に設定することができる。
【0134】
発振回路22は、基準電圧Va,Vbを用いることによって、温度変化による変動が少ない安定した発振周波数foの発振信号CLKを出力する。発振回路22の具体的な構成については、発振回路12の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0135】
このように、本実施の形態にかかる半導体装置2は、半導体装置1と同等程度の効果を奏することができる。なお、本実施の形態にかかる半導体装置2は、半導体装置1の場合と異なり、オペアンプA21の出力端子及び反転入力端子間に抵抗素子を備えないため、オペアンプA21の位相余裕を容易に確保することができる。
【0136】
本実施の形態では、基準電圧生成回路21が
図10に示す構成である場合を例に説明したが、これに限られない。基準電圧生成回路21は、一次温度特性を調整可能な基準電圧Va,Vbを生成する構成であればよい。以下、基準電圧生成回路21の変形例を、
図11を用いて簡単に説明する。
【0137】
(基準電圧生成回路21の変形例)
図11は、基準電圧生成回路21の変形例を基準電圧生成回路21aとして示す図である。基準電圧生成回路21aは、基準電圧生成回路21と比較して、可変抵抗R23の代わりに抵抗素子R24を備えるとともに、スイッチ素子SW22,SW23をさらに備える。
【0138】
スイッチ素子SW22は、抵抗素子R21上に設けられた複数のノードN24の中から何れかを選択して、抵抗素子R22の一端に接続する。スイッチ素子SW23は、抵抗素子R22上に設けられた複数のノードN25の中から何れかを選択して、外部出力端子OUTbに接続する。スイッチ素子SW23により選択された何れかのノードN25の電圧は、基準電圧Vbとして、外部出力端子OUTbを介して、基準電圧生成回路21aの外部に出力される。
【0139】
基準電圧生成回路21aのその他の構成については、基準電圧生成回路21の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0140】
基準電圧生成回路21aは、スイッチ素子SW21〜SW23によって接続を切り替えることにより、基準電圧Va,Vbのそれぞれの一次温度特性を自由に設定することができる。
【0141】
<実施の形態3>
図12は、実施の形態3にかかる半導体装置3の構成例を示す図である。
図12に示すように、半導体装置3は、基準電圧生成回路31と、発振回路32と、を備える。基準電圧生成回路31は、基準電圧生成回路11に対応し、発振回路32は、発振回路12に対応する。なお、
図12の例では、基準電圧生成回路31の具体的な構成例が示されている。
【0142】
基準電圧生成回路31は、可変抵抗R31〜R36を備える。可変抵抗R31〜R33は、電源電圧端子VDDと接地電圧端子GNDとの間に直列に設けられている。可変抵抗R34〜R36は、可変抵抗R31〜R33とは独立して、電源電圧端子VDDと接地電圧端子GNDとの間に直列に設けられている。可変抵抗R31,R32間のノードの電圧は、基準電圧Vaとして、外部出力端子OUTaを介して、基準電圧生成回路31の外部に出力される。可変抵抗R34,R35間のノードの電圧は、基準電圧Vbとして、外部出力端子OUTbを介して、基準電圧生成回路31の外部に出力される。
【0143】
ここで、可変抵抗R31,R33,R34,R36と、可変抵抗R32,R35とは、互いに異なる温度特性を有している。そのため、可変抵抗R31〜R36のそれぞれの抵抗値を調整することにより、基準電圧Va,Vbのそれぞれの一次温度特性を自由に設定することができる。
【0144】
具体的には、基準電圧Va,Vbは、それぞれ、以下の式(44)及び式(45)のように表すことができる。ただし、R31_0〜R36_0は、それぞれ可変抵抗R31〜R36の基準値(例えば室温での抵抗値)を表し、λpは、可変抵抗R31,R33,R34,R36の一次温度係数を表し、λqは、可変抵抗R32,R35の一次温度係数を表している。
【0147】
式(44)から分かるように、可変抵抗R31,R32,R33のそれぞれの抵抗値を調整することにより、基準電圧Vaの一次温度係数を調整することができる。また、式(45)から分かるように、可変抵抗R34,R35,R36のそれぞれの抵抗値を調整することにより、基準電圧Vbの一次温度係数を調整することができる。
【0148】
発振回路32は、基準電圧Va,Vbを用いることによって、温度変化による変動が少ない安定した発振周波数foの発振信号CLKを出力する。発振回路32の具体的な構成については、発振回路12の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0149】
このように、本実施の形態にかかる半導体装置3は、半導体装置1と同等程度の効果を奏することができる。また、本実施の形態にかかる半導体装置3は、基準電圧生成回路を簡単な回路構成で実現することができる。
【0150】
本実施の形態では、基準電圧生成回路31が
図12に示す構成である場合を例に説明したが、これに限られない。基準電圧生成回路31は、一次温度特性を調整可能な基準電圧Va,Vbを生成する構成であればよい。
【0151】
<実施の形態4>
図13は、実施の形態4にかかる半導体装置4の構成例を示す図である。
図13に示すように、半導体装置3は、基準電流生成回路41,42と、発振回路43と、を備える。
【0152】
基準電流生成回路41は、温度特性を調整可能な基準電流Iaを生成する。基準電流生成回路42は、温度特性を調整可能な基準電流Ibを生成する。発振回路43は、基準電流Ia,Ibを用いることにより、発振周波数foの発振信号CLKを出力する。
【0153】
(基準電流生成回路41の具体的な構成例)
図14は、基準電流生成回路41の具体的な構成例を示す図である。
図14に示すように、基準電流生成回路41は、オペアンプA43と、MOSトランジスタMP41〜MP43と、バイポーラトランジスタTR41,TR42と、可変抵抗R42と、抵抗素子R43と、を備える。本実施の形態では、MOSトランジスタMP41〜MP43が、何れもPチャネルMOSトランジスタであって、バイポーラトランジスタTR41,TR42が、何れもPNP型バイポーラトランジスタである場合を例に説明する。
【0154】
MOSトランジスタMP41では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインがバイポーラトランジスタTR41のエミッタに接続され、ゲートがオペアンプA43の出力端子に接続されている。バイポーラトランジスタTR41のベース及びコレクタは、何れも接地電圧端子GNDに接続されている。
【0155】
MOSトランジスタMP42では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインが、可変抵抗R42を介して、バイポーラトランジスタTR42のエミッタに電気的に接続され、ゲートがオペアンプA43の出力端子に接続されている。バイポーラトランジスタTR42のベース及びコレクタは、何れも接地電圧端子GNDに接続されている。
【0156】
オペアンプA43は、MOSトランジスタMP41のドレイン電圧と、MOSトランジスタMP42のドレイン電圧と、の電位差に応じた電圧を生成し、MOSトランジスタMP41〜MP43のそれぞれのゲートに対して出力する。
【0157】
抵抗素子R43は、MOSトランジスタMP42のドレインと、接地電圧端子GNDと、の間に設けられている。MOSトランジスタMP43では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ドレインが外部出力端子OUTaに接続され、ゲートにオペアンプA43の出力端子に接続されている。MOSトランジスタMP43のソース−ドレイン間に流れる電流は、基準電流Iaとして、外部出力端子OUTaを介して、基準電流生成回路41の外部に出力される。なお、本例では、MOSトランジスタMP43のサイズが、MOSトランジスタMP42のサイズの1倍となっている。したがって、MOSトランジスタMP43のソース−ドレイン間には、MOSトランジスタMP42のソース−ドレイン間に流れる電流と同じ値の電流が流れる。
【0158】
基準電流生成回路41は、可変抵抗R42の抵抗値を調整することにより、MOSトランジスタMP42のソース−ドレイン間に流れる電流の値を調整することができ、それに伴って、MOSトランジスタMP43のソース−ドレイン間の電流の値を調整することができる。換言すると、基準電流生成回路41は、可変抵抗R42の抵抗値を調整することにより、基準電流Iaの電流値を調整することができる。
【0159】
ここで、バイポーラトランジスタTR41,TR42のベース−エミッタ間電圧Vbe1,Vbe2は、温度上昇に比例して低下する特性、即ち、負の一次温度特性を有する。そのため、基準電流生成回路41は、可変抵抗R42の抵抗値を調整することにより、基準電流Iaの一次温度特性を自由に設定することができる。
【0160】
(基準電流生成回路42の具体的な構成例)
図15は、基準電流生成回路42の具体的な構成例を示す図である。
図15に示すように、基準電流生成回路42は、オペアンプA44と、MOSトランジスタMP44〜MP46と、バイポーラトランジスタTR43,TR44と、可変抵抗R44と、を備える。オペアンプA44、MOSトランジスタMP44〜MP46、バイポーラトランジスタTR43,TR44、及び、可変抵抗R44は、それぞれ、オペアンプA43、MOSトランジスタMP41〜MP43、バイポーラトランジスタTR41,TR42、及び、可変抵抗R42に対応する。
【0161】
即ち、基準電流生成回路42は、基準電流生成回路41と比較して、抵抗素子R43を備えない。基準電流生成回路42のその他の構成については、基準電流生成回路41の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0162】
基準電流生成回路42は、可変抵抗R44の抵抗値を調整することにより、MOSトランジスタMP45のソース−ドレイン間に流れる電流の値を調整することができ、それに伴って、MOSトランジスタMP46のソース−ドレイン間の電流の値を調整することができる。このMOSトランジスタMP46のソース−ドレイン間の電流は、基準電流Ibとして、外部出力端子OUTbを介して、基準電流生成回路42の外部に出力される。換言すると、基準電流生成回路42は、可変抵抗R44の抵抗値を調整することにより、基準電流Ibの電流値を調整することができる。
【0163】
ここで、バイポーラトランジスタTR43,TR44のベース−エミッタ間電圧Vbe3,Vbe4は、温度上昇に比例して低下する特性、即ち、負の一次温度特性を有する。そのため、基準電流生成回路42は、可変抵抗R44の抵抗値を調整することにより、基準電流Ibの一次温度特性を自由に設定することができる。
【0164】
図13に戻り、説明を続ける。
発振回路43は、抵抗素子R41と、容量素子C41と、スイッチ素子SW41〜SW44と、コンパレータA41,A42と、SRラッチ回路L41と、インバータINV41〜INV44と、を備える。
【0165】
抵抗素子R41は、外部から基準電流Iaが供給される外部入力端子INaと、接地電圧端子GNDと、の間に設けられている。外部入力端子INaと接地電圧端子GNDとの間のノードの電圧Vrは、基準電流Iaの電流値と抵抗素子R41の抵抗値とを乗ずることによって求められ、コンパレータA41,A42のそれぞれの反転入力端子に入力される。
【0166】
スイッチ素子SW41は、外部から基準電流Ibが供給される外部入力端子INbと、ノードN41と、の間に設けられ、信号φ1によってオンオフが制御される。容量素子C41は、ノードN41と接地電圧端子GNDとの間に設けられている。スイッチ素子SW43は、容量素子C41に並列に設けられ、信号φ1の反転信号φ1Bによってオンオフが制御される。容量素子C41に蓄積された電荷に応じたノードN41の電圧Vc1は、コンパレータA41の非反転入力端子に入力される。
【0167】
スイッチ素子SW42は、外部入力端子INbとノードN42との間に設けられ、信号φ2によってオンオフが制御される。容量素子C42は、ノードN42と接地電圧端子GNDとの間に設けられている。スイッチ素子SW44は、容量素子C42に並列に設けられ、信号φ2の反転信号φ2Bによってオンオフが制御される。容量素子C42に蓄積された電荷に応じたノードN42の電圧Vc2は、コンパレータA42の非反転入力端子に入力される。
【0168】
コンパレータA41は、電圧Vc1と電圧Vrとを比較して、比較結果Vcmp1を出力する。コンパレータA42は、電圧Vc2と電圧Vrとを比較して、比較結果Vcmp2を出力する。
【0169】
図16は、発振回路43の一部の動作を示すタイミングチャートである。
図16のタイミングチャートに示すように、例えば、信号φ1がHレベルかつ信号φ1BがLレベルの場合、スイッチ素子SW41がオンかつスイッチ素子SW43がオフするため、容量素子C41には基準電流Ibの電荷が蓄積される。それにより、ノードN41の電圧Vc1は徐々に上昇する。コンパレータA41は、電圧Vc1が電圧Vr未満の場合には、比較結果Vcmp1をLレベルに維持し、電圧Vc1が上昇して電圧Vr以上になると、比較結果Vcmp1をLレベルからHレベルに切り替える。その後、信号φ1がLレベルかつ信号φ1BがHレベルになると、スイッチ素子SW41がオフかつスイッチ素子SW43がオンするため、容量素子C41に蓄積された電荷がスイッチ素子SW43を介して接地電圧端子GNDに向けて放出される。それにより、ノードN41の電圧Vc1は急峻に下降する。それにより、コンパレータA41は、比較結果Vcmp1をHレベルからLレベルに切り替える。
【0170】
同様に、例えば、信号φ2がHレベルかつ信号φ2BがLレベルの場合、スイッチ素子SW42がオンかつスイッチ素子SW44がオフするため、容量素子C42には基準電流Ibの電荷が蓄積される。それにより、ノードN42の電圧Vc2は徐々に上昇する。コンパレータA42は、電圧Vc2が電圧Vr未満の場合には、比較結果Vcmp2をLレベルに維持し、電圧Vc2が上昇して電圧Vr以上になると、比較結果Vcmp2をLレベルからHレベルに切り替える。その後、信号φ2がLレベルかつ信号φ2BがHレベルになると、スイッチ素子SW42がオフかつスイッチ素子SW44がオンするため、容量素子C42に蓄積された電荷がスイッチ素子SW44を介して接地電圧端子GNDに向けて放出される。それにより、ノードN42の電圧Vc2は急峻に下降する。それにより、コンパレータA42は、比較結果Vcmp2をHレベルからLレベルに切り替える。
【0171】
SRラッチ回路L41は、比較結果Vcmp1をセット信号として用い、かつ、比較結果Vcmp2をリセット信号として用いることにより、発振信号及びその反転信号を出力する。SRラッチ回路L41から出力された発振信号は、インバータINV41,INV42を経た後、発振信号CLKとして、発振回路43の外部に出力される。なお、インバータINV41,INV42の出力は、それぞれスイッチ素子SW41,SW42のオンオフを制御するための信号φ1,φ1Bとしても用いられる。SRラッチ回路L41から出力された発振信号の反転信号は、インバータINV43,INV44を経た後、発振信号CLKBとして、外部に出力される。なお、インバータINV43,INV44の出力は、それぞれスイッチ素子SW43,SW44のオンオフを制御するための信号φ2,φ2Bとしても用いられる。
【0172】
(発振信号CLKの安定化のメカニズム)
続いて、発振信号CLKの安定化のメカニズムについて、計算式を用いて説明する。
【0173】
基準電流Ia,Ibは、それぞれ以下の式(46)及び式(47)のように表すことができる。ただし、ΔVbe12は、電圧Vbe1と電圧Vbe2との電位差を表し、ΔVbe34は、電圧Vbe3と電圧Vbe4との電位差を表している。
【0176】
例えば、容量素子C41への充電が開始されてから電圧Vc1が電圧Vrに達するまでの時間は、信号φ1,φ1B(即ち、発振信号CLK)の半周期程度である。そのため、電圧Vc1は、以下の式(48)のように表すことができる。ただし、Cは、容量素子C41の容量値を表し、fは、発振信号CLKの周波数を表している。
【0178】
式(48)より、電圧Vrは、以下の式(49)のように表される。
【0180】
Vr=Ia×R41であるため、式(49)から以下の式(50)が導き出される。
【0182】
式(50)から、発振周波数fは、以下の式(51)のように表される。
【0184】
式(51)から分かるように、発振周波数fはIb/Iaの温度特性に依存している。ここで、式(51)におけるIb/Iaは、式(1)における(Va−Vb)/Vbの関係性と同様である。そのため、基準電流Ia,Ibのそれぞれの一次温度係数を調整することにより、抵抗素子R41の一次温度特性のみならず二次温度特性が発振周波数fに与える影響を抑制(キャンセル)することができる。
【0185】
このように、本実施の形態にかかる半導体装置4は、基準電流Ia,Ibを、それぞれの一次温度係数を調整して用いることにより、抵抗素子R41の一次温度特性のみならず二次温度特性が発振周波数fに与える影響を抑制(キャンセル)することができる。それにより、本実施の形態にかかる半導体装置4は、温度によらず安定した発振周波数の発振信号を出力することができる。
【0186】
以上のように、上記実施の形態1〜4に係る半導体装置は、基準電圧Va,Vb又は基準電流Ia,Ibを、それぞれの一次温度係数を調整して用いることにより、発振回路に設けられた抵抗素子の一次温度特性のみならず二次温度特性が発振周波数に与える影響を抑制(キャンセル)することができる。
【0187】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0188】
例えば、上記の実施の形態に係る半導体装置では、半導体基板、半導体層、拡散層(拡散領域)などの導電型(p型もしくはn型)を反転させた構成としてもよい。そのため、n型、及びp型の一方の導電型を第1の導電型とし、他方の導電型を第2の導電型とした場合、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とすることもできるし、反対に第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とすることもできる。