(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のサイドフレームは、縁部から対向方向内側に向かって立設される第1フランジ部を備え、前記パネル部材は、両端部が前記一対の第1フランジ部にそれぞれ溶接されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
前記突出部は、一部が前記サイドフレームの縁部よりも外側に位置し、そのサイドフレームの縁部よりも外側に位置する前記突出部の一部が前記第1フランジ部に溶接されることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の車両用シート。
両端が前記一対のサイドフレームにそれぞれに連結されるリアパイプを備え、前記突出部および前記サイドフレームの溶接部分と、前記リアパイプ及び前記サイドフレームの連結部分と、の間に所定の隙間が形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車両用シートでは、補強板を配設していない領域でサイドフレームが座屈する恐れがある。サイドフレームの座屈を抑制するために補強板をサイドフレームの座屈部分の全域と重なる大きさに設定すると補強板が大型化する分、車両用シートを軽量化することができないという問題点がある。
【0005】
これに対し、本願出願人は、上述の問題点を解決するべく鋭意検討した結果、サイドフレームとシートバックフレームとの連結部分よりも下方でサイドフレームの縁部に沿ってパネル部材を溶接して、補強板を配設していない部分でサイドフレームの座屈を抑制する構成に想到した(本願出願時において未公知)。
【0006】
しかしながら、この車両用シートでは、車両後方からの負荷(例えば、他の車両が後方から衝突する力)で、シートバックフレームを背面側に押圧する力がサイドフレームに入力されると、補強板とパネル部材との間でサイドフレームが座屈するという問題点が新たに見つかった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、軽量化を図りつつ、補強板とパネル部材との間でサイドフレームが座屈することを抑制できる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の車両用シートは、シートクッションの骨格をなすシートクッションフレームと、シートバックの骨格をなすシートバックフレームと、を備えるものであり、シートクッションフレームは、シートバックフレームを回転可能な状態で連結する一対のサイドフレームと、それら一対のサイドフレームに溶接される補強板と、両端が一対のサイドフレームの縁部にそれぞれ溶接されるパネル部材と、を備え、補強板は、サイドフレーム及びシートバックフレームの連結部分の周囲に配設される本体部と、その本体部の一部から重力方向下方に向かって突出する突出部と、を備え、パネル部材は、一対のサイドフレームの板厚よりも薄い板状に形成され、本体部よりも重力方向下方に配設され、突出部は、パネル部材よりも重力方向下方に位置し、サイドフレームに溶接される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の車両用シートによれば、シートクッションフレームは、シートバックフレームを回転可能な状態で連結する一対のサイドフレームと、それら一対のサイドフレームに溶接される補強板と、両端が一対のサイドフレームの縁部にそれぞれ溶接されるパネル部材と、を備え、補強板は、サイドフレーム及びシートバックフレームの連結部分の周囲に配設される本体部と、その本体部の一部から重力方向下方に向かって突出する突出部と、を備え、パネル部材は、一対のサイドフレームの板厚よりも薄い板状に形成され、本体部よりも重力方向下方に配設され、突出部は、重力方向におけるパネル部材と本体部との間に亘って突出され、サイドフレームに溶接されるので、突出部により補強板とパネル部材との間のサイドフレームの剛性を確保できる。よって、後方からの他の車両の衝突時の力で補強板とパネル部材との間でサイドフレームが座屈することを抑制できるという効果がある。
【0010】
また、パネル部材は、サイドフレームの板厚よりも薄い板厚に設定され、突出部は、本体部の一部から突出されるので、車両用シートの重量が嵩むことを抑制できる。即ち、車両用シートを軽量にできるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の車両用シートによれば、請求項1記載の車両用シートの奏する効果に加え、突出部は、本体部からパネル部材の重力方向下方の端部よりも重力方向下方まで突出されるので、パネル部材が配設される領域のサイドフレームの剛性を突出部により確保でき、パネル部材が配設される領域のサイドフレームの剛性をパネル部材のみで確保する必要がなくなる。その結果、パネル部材の板厚を薄くして車両用シートを軽量にできるという効果がある。
【0012】
請求項3記載の車両用シートによれば、請求項1又は2に記載の車両用シートの奏する効果に加え、一対のサイドフレームは、縁部から対向方向内側に向かって立設される第1フランジ部を備え、パネル部材は、両端部が一対の第1フランジ部にそれぞれ溶接されるので、サイドフレームに溶接されたパネル部材と、第1フランジ部と、のそれぞれでサイドフレームの断面係数を高めることができる。これにより、サイドフレームが座屈することを抑制できるという効果がある。
【0013】
また、パネル部材をサイドフレームに溶接した際にサイドフレームに入力される熱を第1フランジ部に入力させることができる。これにより、パネル部材を溶接した熱でサイドフレームが撓むことを抑制できるという効果がある。
【0014】
請求項4記載の車両用シートによれば、請求項3記載の車両用シートの奏する効果に加え、突出部は、縁部から水平方向に立設される第2フランジ部を備えるので、突出部の縁部の断面係数を増やすことができる。これにより、重力方向におけるパネル部材と本体部との間でサイドフレームが座屈することを抑制しやすくできるという効果がある。
【0015】
請求項5記載の車両用シートによれば、請求項4記載の車両用シートの奏する効果に加え、第2フランジ部は、第1フランジ部の立設方向と反対方向に向かって立設されるので、第1フランジ部と第2フランジ部との立設方向の一方に向かってサイドフレームと補強板との合わせ面を反らせる力が入力される場合に、その力を第1フランジ部または第2フランジ部のどちらか一方の立設先端部を引っ張る方向に作用させることができる。これにより、サイドフレームと補強板との合わせ面が反ることを抑制できるという効果がある。
【0016】
請求項6記載の車両用シートによれば、請求項4又は5に記載の車両用シートの奏する効果に加え、シートクッションは、サイドフレームを覆設するカバー部材を備え、第2フランジ部は、カバー部材が係止される被係止部が形成され、その被係止部により第2フランジ部の表面積が大きくされるので、突設部をサイドフレームに溶接した際の熱を第2フランジ部で放熱しやすくできる。その結果、サイドフレームに入力される熱量を少なくして突設部を溶接した熱でサイドフレームが撓むことを抑制できるという効果がある。
【0017】
また、第2フランジ部にカバー部材が係止される被係止部が形成されるので、第2フランジ部にサイドフレームの断面係数を確保する役割と、カバー部材を係止する役割と、を持たせることができる。従って、サイドフレームの剛性を確保する部分と、カバー部材を係止する部分と、を別々に形成する必要がなくなるので、車両用シートが大型化することを抑制でき、車両用シートを軽量にできるという効果がある。
【0018】
請求項7記載の車両用シートによれば、請求項3から6のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、突出部は、一部がサイドフレームの縁部よりも外側に位置し、そのサイドフレームの縁部よりも外側に位置する突出部の一部が第1フランジ部に溶接されるので、補強板およびパネル部材のサイドフレームへの溶接面を第1フランジ部の同一の面に設定できる。これにより、補強板とパネル部材とをサイドフレームに溶接する作業者が補強板またはパネル部材の一方をサイドフレームに溶接した後に姿勢を変更せず補強板またはパネル部材の他方を溶接することができる。その結果、溶接作業の効率を向上できるという効果がある。
【0019】
請求項8記載の車両用シートによれば、請求項1から7のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、両端が一対のサイドフレームにそれぞれに連結されるリアパイプを備え、突出部およびサイドフレームの溶接部分と、リアパイプ及びサイドフレームの連結部分と、の間に所定の隙間が形成されるので、その所定の隙間が形成される部分のサイドフレームの剛性を弱めることができる。これにより、車両後方からの過大な負荷(例えば、他の車両が後方から衝突する力)がサイドフレームに入力された場合に、所定の隙間を座屈させて、サイドフレームの不特定箇所が座屈することを抑制できる。よって、補強板およびパネル部材の強度を必要以上に高める必要がなくなり、補強板およびパネル部材の強度設定を簡易にできるという効果がある。
【0020】
また、所定の隙間は、突出部およびサイドフレームの溶接部分と、リアパイプ及びサイドフレームの連結部分と、の間に形成され、シートバックの回転軸から補強板の本体部よりも離間する位置に形成されるので、シートバックの回転軸の周囲に配設される装置(例えば、シートバックを回転させる回転装置、又は、シートバックを所定の位置で停止させるリクライニング装置)がサイドフレームの座屈で破損することを抑制できる。
【0021】
請求項9記載の車両用シートによれば、請求項1から8のいずれかの車両用シートの奏する効果に加え、シートバックフレームは、サイドフレームの縁部よりも外側の位置でシートバックフレームの回転変位に伴って変位する突起部を備え、補強板は、突起部の変位軌跡と重なる位置に突設される規制部を備え、規制部に突起部が当接することによりシートバックフレームの回転変位が規制されるので、シートバックフレームの回転を規制した状態でシートバックフレームの回転が規制された方向に過大な力が入力される場合に規制部を撓ませてサイドフレームが座屈することを抑制できるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施形態における車両用シート1について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における車両用シート1の斜視背面図である。
図2(a)は、
図1のIIa方向視における車両用シート1の側面図であり、
図2(b)は、
図1のIIb方向視における車両用シート1の背面図であり、
図2(c)は、
図2(a)のIIc−IIc線における車両用シート1の断面模式図である。
【0024】
なお、以下の説明では、
図2(a)に示す状態の車両用シート1に対して、紙面左側を前方側として、紙面右側を後方側として、紙面上側を上方側として、紙面下側を下方側として、紙面奥側を右方側として、紙面手前側を左方側としてそれぞれ説明する。さらに、図中の矢印F−B,U−D,L−Rは、車両用シート1の前後方向,上下方向,左右方向をそれぞれ示している。
【0025】
また、
図1では、車両用シート1のサイドカバー部材2a及び背面カバー部材3aが分解された状態が図示され、
図2(a)から
図2(c)では、サイドカバー部材2a及び背面カバー部材3aが取り外された状態が図示される。さらに、
図2(b)及び
図2(c)では、サイドフレーム21と補強板22の突出部22bとの溶接部分R1が2点鎖線で囲われて図示され、サイドフレーム21とパネル部材23との溶接部分R2が2点鎖線で囲われて図示される。
【0026】
図1及び
図2に示すように、車両用シート1は、車両(例えば、自動車、鉄道車両)に搭載されるシートである。車両用シート1は、着座者が着座するシートクッション2と、着座者の背もたれとなるシートバック3と、着座者の頭部を支えるヘッドレスト4と、を主に備える。
【0027】
なお、シートクッション2は、その内部にシートクッション2の骨格をなすシートクッションフレーム20を備え、シートバック3は、その内部にシートバック3の骨格をなすシートバックフレーム30を備える。また、シートバックフレーム30とシートクッションフレーム20との連結部分の左右方向(矢印L−R方向)外側にはサイドカバー部材2aが覆設され、シートバックフレーム30とシートクッションフレーム20との連結部分の後方には、背面カバー部材3aが覆設される。
【0028】
シートクッションフレーム20は、金属性の複数の部材から構成される。また、シートクッションフレーム20は、シートバックフレーム30を回転可能な状態で連結する左右一対のサイドフレーム21と、それら一対のサイドフレーム21に溶接される補強板22と、両端が一対のサイドフレーム21の縁部にそれぞれ溶接されて一対のサイドフレームを連結するパネル部材23と、両端が一対のサイドフレーム21のそれぞれに挿通して連結されるリアパイプ24と、サイドカバー部材2aが係合される係合部材25と、を主に備える。
【0029】
サイドフレーム21は、板状に形成される本体部21aと、その本体部21aの縁部から立設される第1フランジ部21bと、を主に備える。また、一対のサイドフレーム21は、本体部21aの板面を対向させた状態で配設される。
【0030】
本体部21aは、板面を左右方向(矢印F−B方向)に向けた状態で配設される。また、本体部21aには、後述するシートバックフレーム30の軸部31、及び、リアパイプ24の端部が挿通される貫通穴(図示せず)が形成され、それぞれの貫通穴に軸部31、及び、リアパイプ24が連結される。これにより、一対のサイドフレーム21はリアパイプ24により連結される。
【0031】
第1フランジ部21bは、一対のサイドフレーム21の本体部21aの対向方向内側に向かって本体部21aの縁部から立設される。これにより、サイドフレーム21の断面係数を高めることができる。
【0032】
補強板22は、円環形状を径方向に半分に分割した外形に形成される環状部22aと、その環状部22aの周方向の一端から重力方向下方に向けて突出する突出部22bと、環状部22aの内周縁から立設される係合部22cと、環状部22aの外周縁の2箇所から径方向外側に突設される規制部22dと、を主に備えて形成される。また、補強板22は、一対のサイドフレーム21の対向方向外側に配設される。
【0033】
環状部22aは、シートバックフレーム30(シートバック3)からサイドフレーム21に入力される負荷でシートバックフレーム30とサイドフレーム21との連結部分が撓むことを抑制する部材であり、本体部21aに挿通されるシートバックフレーム30の軸部31の周囲に配設される。
【0034】
なお、補強板22の全体の板厚T1(
図2(c)参照)は、サイドフレーム21の板厚T2(
図2(c)参照)よりも厚く形成される(T1>T2)。また、環状部22aは、円環形状に形成される中心がシートバックフレーム30の軸部31と同軸上に設定され、サイドフレーム21の本体部21aに溶接される。さらに、環状部22aは、軸部31の後方側(矢印B方向側)周囲を取り囲む位置に配設される。これらにより、軸部31の後方側周囲の剛性を高めて、軸部31がサイドフレーム21に対して後方に押圧される場合にサイドフレーム21が座屈することを抑制できる。
【0035】
突出部22bは、軸部31よりも下方(矢印D方向)に位置する環状部22aの一端側から下方および前方(矢印F方向)に向かう斜め方向に突設される。突出部22bは、側面視において突設方向と直交する方向の幅が環状部22aの径方向における幅よりも小さく設定される。よって、突出部22bを形成することで車両用シート1の重量が嵩むことを抑制できる。
【0036】
突出部22bは、本体部21aの縁部よりも外側に位置する一端側がサイドフレーム21の本体部21aの縁部に沿って形成される。また、突出部22bは、一端側が本体部21aの縁部から立設される第1フランジ部21bの基端部分(本体部21a側)と溶接される。
【0037】
突出部22bは、一端側の縁部から本体部21aと反対側(第1フランジ部21bの立設方向と反対方向)に向かって立設される第2フランジ部22b1を備える。突出部22bは、第2フランジ部22b1が形成される分、断面係数を向上できる。よって、突出部22bが溶接される部分(溶接部分R1)の周囲の本体部21aが車両の後方からの負荷で座屈することを抑制できる。
【0038】
第2フランジ部22b1は、サイドフレーム21の第1フランジ部21bの立設方向と反対方向に向かって立設されるので、第1フランジ部21bと第2フランジ部22b1との立設方向(矢印L−R方向)の一方に向かってサイドフレーム21と補強板22との合わせ面を反らせる力が入力される場合に、その力を第1フランジ部21b又は第2フランジ部22b1のどちらか一方の立設先端部を引っ張る方向に作用させることができる。これにより、サイドフレーム21と補強板22との合わせ面が左右方向(矢印L−R方向)に反ることを抑制できる。
【0039】
係合部22cは、背面側(矢印B方向側)に傾倒する位置のシートバック3を起立させる回転方向(
図2(a)左回り)にシートバック3を付勢するリターンスプリングSP1の一端を係止する部分であり、本体部21a側と反対側に向かって立設される。なお、リターンスプリングSP1は、螺旋状に複数回巻かれて形成され、複数回巻かれた内側の一端が略U字状に湾曲され、その湾曲部分に係合部22cが挿入(係合)される。
【0040】
また、リターンスプリングSP1は、他端側が後述する突設部32に係止され、背面側(矢印B方向側)に傾倒する位置のシートバック3を起立させる回転方向(
図2(a)左回り)に付勢する。
【0041】
2箇所の規制部22dは、シートクッション2に対して回転するシートバック3の回転を規制する部分であり、後述するシートバックフレーム30の突設部32の回転軌跡上に形成される。なお、2箇所の規制部22dのうちの一方は、背面側(矢印B方向側)に傾倒する位置のシートバック3を起立させる回転方向(
図2(a)左回り)に回転されるシートバック3の回転を規制し、2箇所の規制部22dのうちの他方は、起立する位置のシートバック3を背面側に傾倒させる回転方向(
図2(a)右回り)に回転されるシートバック3の回転を規制する。
【0042】
パネル部材23は、左右方向(矢印L−R方向)に長い矩形の板状に形成され、長手方向の両端が一対のサイドフレーム21の第1フランジ部21bの背面側にそれぞれ溶接される。従って、パネル部材23が溶接される分、サイドフレーム21の縁部の断面係数を高めることができる。
【0043】
パネル部材23は、サイドフレーム21に配設される補強板22の環状部22aよりも下方に配設される。よって、環状部22aを配設していない領域であっても、車両の後方からの負荷でサイドフレーム21が座屈することをパネル部材23により抑制できる。
【0044】
突出部22bは、重力方向(矢印U−D方向)においてパネル部材23と環状部22aとの間に亘って配設される。従って、重力方向におけるパネル部材23と環状部22aとの間の本体部21aの剛性を突出部22bにより確保できる。その結果、後方からの他の車両の衝突時の力で重力方向における補強板22とパネル部材23との間で本体部21aが座屈することを抑制できる。
【0045】
さらに、突出部22bは、下方(矢印D方向)及び前方(矢印F方向)に向かう斜め方向に突設された先端がパネル部材23よりも下方に位置する。よって、パネル部材23が配設される領域のサイドフレーム21の剛性を突出部22bにより確保でき、パネル部材23が配設される領域のサイドフレーム21の剛性をパネル部材23のみで確保する必要がなくなる。その結果、パネル部材23の板厚を薄くして車両用シート1を軽量にできる。
【0046】
なお、パネル部材23の板厚T3(
図2(c)参照)は、サイドフレーム21の板厚T2(
図2(c)参照)よりも薄く設定される(T2>T3)。これにより、パネル部材23が追加された場合でも、車両用シート1の重量が嵩むことを抑制できる。
【0047】
パネル部材23は、両端が第1フランジ部21bの基端側(第1フランジ部21bと本体部21aとの連結側)と隙間を隔てる位置に配置され、第1フランジ部21bの背面側(矢印B方向側)の側面に溶接される。よって、溶接位置を本体部21aから離間させて、パネル部材23をサイドフレーム21に溶接した際にサイドフレーム21に入力される熱を本体部21aよりも第1フランジ部21bに入力させやすくできる。その結果、パネル部材23を溶接した熱を本体部21aに入力しにくくして本体部21aが撓むことを抑制できる。
【0048】
さらに、本実施形態では、パネル部材23が一対のサイドフレーム21の対向方向内側に向かって立設される第1フランジ部21bに溶接されるので、パネル部材23が本体部21aに直接溶接される場合に比べて、第1フランジ部21bの本体部21aからの立設寸法を調整(大きく)することで、パネル部材23をサイドフレーム21に溶接した際にサイドフレーム21に入力される熱を本体部21aよりも第1フランジ部21bに入力させやすくできる。よって、パネル部材23を溶接した熱が本体部21aに入力しにくくして本体部21aが撓むことを抑制できる。
【0049】
この場合、第1フランジ部21bは、一対のサイドフレーム21の対向方向内側に向かって立設されるので、第1フランジ部21bの本体部21aからの立設寸法を調整した際に車両用シート1の外形が大きくなることを抑制できる。
【0050】
また、パネル部材23は、パネル部材23の両端が第1フランジ部21bの基端側(第1フランジ部21bと本体部21aとの連結側)と隙間を隔てる位置に配置され、第1フランジ部21bの背面側(矢印B方向側)の側面に溶接されるので、パネル部材23の加工精度、第1フランジ部21bの加工精度、及び、一対のサイドフレーム21の組み立て精度、の各精度の誤差の範囲を大きくできる。これにより、車両用シート1の製造にかかる製造コストを小さくできる。
【0051】
リアパイプ24は、サイドフレーム21に連結されるシートバックフレーム30よりも下方(矢印D方向)であって、本体部21aに配設される補強板22と異なる領域に配設される。また、上述したように、リアパイプ24は、両端が一対のサイドフレーム21のそれぞれに挿通して連結される。従って、車両の後方からの負荷でサイドフレーム21が左右方向に座屈することを抑制できる。
【0052】
なお、突出部22b及びサイドフレーム21の溶接部分R1と、リアパイプ24及びサイドフレーム21の連結部分と、の間には、隙間S1(
図2(a)参照)が形成される。その隙間S1は、本体部21a(サイドフレーム21)の縁部の点A(
図2(a)参照)を中心とする周方向に設定される。なお、本体部21aの縁部の点Aは、サイドフレーム21のシートバックフレーム30との連結部分が背面側に押圧される際に、本体部21aに作用する力の中心と同一の位置に設定される。
【0053】
係合部材25は、シートバックフレーム30とサイドフレーム21との連結部分よりも前方側(矢印F方向側)に配設され、本体部21aに溶接される。係合部材25は、板状に形成され、板厚方向に貫通する係合孔25aを備える。
【0054】
係合孔25aは、サイドカバー部材2aを係合させる孔である。これにより、シートバックフレーム30とシートクッションフレーム20との連結部分にサイドカバー部材2aを配設する際に係合孔25aにサイドカバー部材2aの被係合部(図示しない)を係合させてサイドカバー部材2aを車両用シート1に配設できる。
【0055】
シートバックフレーム30は、金属性の複数の部材から構成される。また、シートバックフレーム30は、左右方向に突出する一対の軸部31及び突設部32を主に備える。
【0056】
軸部31は、円柱状に形成され、その中心軸が左右方向(矢印L−R方向)に向いた状態で配設される。また、一対の軸部31は、円柱の中心軸が同軸上に設定され、一対のサイドフレーム21のそれぞれに挿入されて軸支される。従って、シートバックフレーム30(シートバック3)は、軸部31の中心を軸に回転可能とされる。
【0057】
突設部32は、断面がクランク状に屈曲する板状に形成され、一端側がシートバックフレーム30に溶接され、他端側がシートバックフレーム30の左右方向(矢印L−R方向)外側に向かって突出される。これにより、突設部32は、シートバックフレーム30の回転変位に伴って軸部31の中心を軸に変位される。
【0058】
突設部32は、サイドフレーム21の縁部よりも外側に配設される。さらに、突設部32は、クランク状に屈曲する中央部の変位軌跡が2箇所の規制部22dと重なる位置に設定される。これらにより、突設部32が変位された場合に突設部32がサイドフレーム21に当接することを抑制でき、さらに、補強板22の規制部22dに突設部32を当接させてシートバックフレーム30の回転を規制できる。
【0059】
従って、突設部32を規制部22dに当接させて、シートバックフレーム30の回転を規制した状態でシートバックフレーム30の回転が規制された方向に過大な力が入力される場合には、規制部22dを撓ませてサイドフレーム21が座屈することを抑制できる。
【0060】
さらに、突設部32には、他端側の先端部にリターンスプリングSP1の他端が係止される。従って、突設部32に、リターンスプリングSP1を係止する役割と、規制部22dに当接させてシートバック3の回転を規制する役割と、を持たせることができる。これにより、シートバックフレーム30に配設される部品点数を削減して、車両用シート1を軽量にできる。
【0061】
以上のように構成される車両用シート1によれば、補強板22は、サイドフレーム21及びシートバックフレーム30の連結部分の周囲に配設される環状部22aと、その環状部22aの一端から下方(矢印D方向)及び前方(矢印F方向)に向かって突出する突出部22bと、を備え、パネル部材23は、一対のサイドフレーム21の板厚よりも薄い板状に形成され、環状部22aよりも下方に配設され、突出部22bは重力方向(矢印U−D方向)におけるパネル部材23と環状部22aとの間に亘って突出され、サイドフレーム21に溶接されるので、重力方向におけるパネル部材23と環状部22aとの間の本体部21aの剛性を突出部22bにより確保できる。よって、後方からの他の車両の衝突時の力で補強板22とパネル部材23との間で本体部21aが座屈することを抑制できる。
【0062】
また、パネル部材23は、上述したように突出部22bによりサイドフレーム21の剛性を確保することでサイドフレーム21の板厚よりも薄い板厚に設定でき、突出部22bは、環状部22aの一部(一端)から突出されるので、車両用シート1の重量が嵩むことを抑制できる。即ち、車両用シート1を軽量にできる。
【0063】
突出部22bは、第2フランジ部22b1側の縁部がサイドフレーム21の縁部よりも外側に位置し、突出部22bの本体部21aとの当接側の側面が第1フランジ部21bの背面側(サイドフレーム21の縁部)と溶接される。パネル部材23は、第1フランジ部21bの背面側に溶接される。よって、補強板22及びパネル部材23のサイドフレーム21への溶接面を第1フランジ部21bの同一の面に設定できる。これにより、補強板22とパネル部材23とをサイドフレーム21に溶接する作業者が補強板22又はパネル部材23の一方をサイドフレーム21に溶接した後に姿勢を変更せず補強板22又はパネル部材23の他方を溶接できる。その結果、溶接作業の効率を向上できる。
【0064】
突出部22b及びサイドフレーム21の溶接部分R1と、リアパイプ24及びサイドフレーム21の連結部分と、の間に隙間S1(
図2(a)参照)が形成されるので、その隙間S1が形成される部分のサイドフレーム21の剛性を弱めることができる。これにより、車両後方からの過大な負荷(例えば、他の車両が後方から衝突する力)がサイドフレーム21に入力された場合に、隙間S1の領域を座屈させて、サイドフレーム21の不特定箇所が座屈することを抑制できる。よって、補強板22及びパネル部材23の強度を必要以上に高める必要がなくなり、補強板22及びパネル部材23の強度設定を簡易にできる。
【0065】
また、隙間S1は、突出部22b及びサイドフレーム21の溶接部分R1と、リアパイプ24及びサイドフレーム21の連結部分と、の間に形成され、シートバック3の回転軸から環状部22aよりも離れた位置に形成されるので、隙間S1の領域でサイドフレーム21が座屈した場合に、その座屈によりシートバック3の回転軸の周囲に配設される装置(例えば、シートバック3を回転させる回転装置、又は、シートバック3を所定の位置で停止させるリクライニング装置)が破損することを抑制できる。
【0066】
次いで、
図3を参照して、第2実施形態における車両用シート1について説明する。上記第1実施形態では、サイドカバー部材2aをサイドフレーム21に配設される係合部材25の係合孔25aに係合させる場合について説明したが、第2実施形態における車両用シート1では、サイドカバー部材202aが第2フランジ部222b1に形成される貫通孔222b2に係合される場合について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0067】
図3は、第2実施形態における車両用シート1の背面図である。なお、
図3は、
図2(b)における背面図に対応する。また、
図3では、サイドカバー部材202aの内側に配設される被係合部202a1が鎖線で図示される。
【0068】
図3に示す様に、第2実施形態における第2フランジ部222b1には、板厚方向に貫通する貫通孔222b2が複数箇所(本実施形態では2箇所)に形成される。
【0069】
また、サイドフレーム21とシートバックフレーム30との連結部分に配設されるサイドカバー部材202aは、サイドフレーム21側が開口する箱状に形成され、その内側に円柱状に突出する被係合部202a1が複数箇所(本実施形態では2箇所)に形成される。
【0070】
被係合部202a1は、サイドカバー部材202aがサイドフレーム21とシートバックフレーム30との連結部分に配設される場合に貫通孔222b2と対応する位置に形成される。被係合部202a1は、貫通孔222b2と略同一の直径に形成され、貫通孔222b2内側に挿入可能とされる。なお、本実施形態では、貫通孔222b2は、第2フランジ部222b1の板厚よりも小さい直径に設定される。
【0071】
これにより、サイドカバー部材202aをサイドフレーム21とシートバックフレーム30との連結部分に配設する際に貫通孔222b2の内側に被係合部202a1を挿通することで被係合部202a1を貫通孔222b2に係合させることができる。従って、第2フランジ部222b1に、サイドフレーム21の剛性を高める役割と、サイドカバー部材202aを係合させる役割とを持たせることができる。
【0072】
その結果、サイドカバー部材202aを係合させる係合部材25をサイドフレーム21に配設する必要がなくなり、その分、車両用シート1を軽量にできる。
【0073】
また、サイドフレーム21に比べて板厚が厚い第2フランジ部222b1に第2フランジ部222b1の板厚よりも小さい直径の貫通孔222b2が形成されるので、第2フランジ部222b1の表面積を拡大できる。従って、サイドフレーム21に突設部222bを溶接した際に第2フランジ部222b1に入力される溶接の熱を放熱しやすくできる。その結果、サイドフレーム21に突設部222bを溶接した際の熱で本体部21aが撓むことを抑制できる。
【0074】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0075】
上記第1実施形態では、補強板22の板厚T1がサイドフレーム21の板厚T2よりも厚く形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、補強板22の剛性がサイドフレーム21の剛性よりも高いものであればよい。
【0076】
例えば、補強板22の環状部22aの断面を連続する波状に湾曲させて補強板22の剛性をサイドフレーム21の剛性よりも高められるものであれば、補強板22の板厚T1をサイドフレームの板厚T2よりも小さくしても良い。この場合、補強板22の板厚T1を薄くできる分、車両用シート1を軽量にできる。
【0077】
上記第1実施形態では、突出部22bとサイドフレーム21との溶接と、パネル部材23とサイドフレーム21との溶接と、を別々に行う場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、突出部22bとサイドフレーム21との溶接と、パネル部材23とサイドフレーム21との溶接と、を同時に行うものでもよい。この場合、溶接を同時に行うことができる分、溶接作業の効率を向上できる。
【0078】
上記第1実施形態では、第2フランジ部22b1と第1フランジ部21bとの立設方向が反対方向に立設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2フランジ部22b1を第1フランジ部21bと同一の方向に立設させてもよい。
【0079】
なお、この場合、突出部22bとサイドフレーム21との溶接を第2フランジ部22b1の立設先端部とサイドフレーム21とで溶接することが好ましい。これによれば、突出部22bとサイドフレーム21との溶接部分R1と、パネル部材23とサイドフレーム21との溶接部分R2と、を近づけることができるので、突出部22bとサイドフレーム21との溶接作業と、パネル部材23とサイドフレーム21との溶接作業と、の作業効率を向上できる。
【0080】
上記第2実施形態では、第2フランジ部222b1に貫通する貫通孔222b2が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、サイドカバー部材202aが係止される部分が第2フランジ部222b1の立設先端部に切り欠いて、又は、突設して形成されるものであってもよい。