特許第6817989号(P6817989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6817989
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】新規なメチン染料
(51)【国際特許分類】
   C09B 23/16 20060101AFI20210107BHJP
   D06P 1/00 20060101ALI20210107BHJP
   C08K 5/47 20060101ALI20210107BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20210107BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20210107BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20210107BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   C09B23/16CSP
   D06P1/00 Z
   C08K5/47
   C08L77/00
   C08L33/12
   C08F2/44 B
   C08F20/00 510
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-193285(P2018-193285)
(22)【出願日】2018年10月12日
(65)【公開番号】特開2019-73695(P2019-73695A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2018年12月10日
(31)【優先権主張番号】17196392.9
(32)【優先日】2017年10月13日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ウルリヒ・ボルスト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ミヒャエリス
(72)【発明者】
【氏名】フランク・リンケ
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/207155(WO,A1)
【文献】 特表2004−525800(JP,A)
【文献】 特表2004−534344(JP,A)
【文献】 特表2005−505092(JP,A)
【文献】 特表2005−504649(JP,A)
【文献】 特開2008−239992(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/207157(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/021833(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第03048138(EP,A1)
【文献】 有機合成化学,1978年,36(7),pp.595-609
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
C08
D06P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドのプラスチックをバルク着色するための、式(I)の染料を含む剤
【化1】
[式中、
が、水素、フッ素、塩素、COOH、またはCOORであり、
が、水素、フッ素、塩素、C〜C−アルキル、またはCFであり、
が、水素、フッ素、塩素、COOR、またはCNであり、
が、C〜C−アルキルまたはフェニルであり、
およびRがそれぞれ独立して、C〜C−アルキルであり、
が、水素、フッ素、塩素、C〜C−アルキル、またはCFであり、
が、C〜C−アルキルであり、
が、C〜C−アルキルであり、かつ
およびRが二つとも水素であることはないという条件付きである]。
【請求項2】
式(I)において、
が、水素、塩素、COOH、またはCOOCHであり、
が、水素、塩素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはCFであり、
が、水素、フッ素、塩素、COOCH、またはCNであり、
が、メチルまたはフェニルであり、
およびRが、メチルであり、
が、水素、塩素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはCFであり、かつ
およびRが二つとも水素であることはないという条件付きである
ことを特徴とする、請求項1に記載の染料を含む剤
【請求項3】
式(I)において、
が、水素、塩素、またはCOOCHであり、
が、水素またはメチルであり、
が、水素、フッ素、または塩素であり、
が、メチルであり、
およびRが、メチルであり、
が、水素、塩素、またはメチルであり、かつ
およびRが二つとも水素であることはないという条件付きである
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の染料を含む剤
【請求項4】
求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のの使用。
【請求項5】
前記プラスチックが、ナイロン−6および/またはナイロン−6.6であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記染料が、プラスチックの量を規準にして、0.0001〜1重量パーセントの量で使用されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
ポリアミドのプラスチックをバルク着色するための方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のが、少なくとも1種のプラスチックと共に、乾燥した形態で混合されるか、または粉砕され、その混合物が溶融され、均質化されることを特徴とする、ポリアミドのプラスチックをバルク着色するための方法。
【請求項8】
ポリアミドのプラスチックをバルク着色するための方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のが、少なくとも1種のプラスチックを含む溶融させたプラスチック材料に添加され、次いでそれが均質化されることを特徴とする、ポリアミドのプラスチックをバルク着色するための方法。
【請求項9】
ポリアミドのプラスチックをバルク着色するための方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のが、少なくとも1種のプラスチックを製造するためのモノマー性出発成分と混合され、前記混合物が次いで重合されることを特徴とする、ポリアミドのプラスチックをバルク着色するための方法。
【請求項10】
ポリアミドのプラスチック組成物であって、前記組成物が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1種のを含むことを特徴とする、ポリアミドのプラスチック組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の少なくとも1種のプラスチック組成物を含むことを特徴とする、成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なメチン染料、それらの調製するための方法、およびプラスチックを着色するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックを着色するための黄色染料は、既に市場に多数存在しているが、改良された性質を有する新規な染料が依然として要望されている。特に、公知の染料では、それらの堅牢性の点での改良が必要とされている。このことは、ポリアミドのバルク着色に使用する場合に特にあてはまる。
【0003】
合成ポリアミドをバルク着色しようとすると、他のプラスチックのバルク着色の場合よりも、使用する着色剤への要求性能が高くなる。合成ポリアミドの加工温度が、特にガラス繊維と組み合わせた場合においては、かなり高く、そして溶融したポリアミド、特にナイロン−6.6の化学反応性が実質的に高いので、使用する着色剤の熱安定性が、並外れて高くなければならない。顔料は、一般的に高い熱安定性を有している。しかしながら、特に、高い耐光性がさらに必要とされるような場合においては、プラスチックをバルク着色する場合における高い要求性能を満たす顔料はほとんどない。
【0004】
プラスチックを黄色の色調に着色するのに適した顔料は、従来技術からも公知である。
【0005】
(特許文献1)には、ポリアミドを黄色の色調に着色することが可能な、アゾレーキをベースとする顔料(Bayplast(登録商標)yellow G)が記載されている。
【0006】
(特許文献2)には、ポリアミドの黄色着色を得る目的で同様に使用することが可能な、ニッケルアゾバルビツル酸錯体をベースとする顔料が開示されている。
【0007】
さらには、プラスチックの黄色着色を達成するためにピグメントイエロー192(C.I.507300)を使用することも、以前から知られている。
【0008】
上述の顔料は良好な熱安定性を有してはいるものの、それらを使用したのでは、プラスチックの透明着色を達成することは不可能である。顔料はさらに、ポリマーの機械的性質を損なう恐れもある。プラスチックを黄色の透明な色調に着色する目的で油溶性染料を使用することは、従来技術からも公知である。一般的には、それらの染料によってポリマーの機械的性質が悪影響を受けることはない。
【0009】
公知のソルベントイエロー染料としては、たとえば以下のものが挙げられる:キノフタロン染料のクラスのソルベントイエロー114(C.I.47020)、クマリン染料のクラスのソルベントイエロー160:1(C.I.55165)、さらにはいずれもメチン染料のクラスであるソルベントイエロー179(N−2−((4−シクロヘキシル)フェノキシ)エチル−N−エチル−4−(2,2−ジシアノエテニル)−3−メチルアニリン)、およびソルベントイエロー93(C.I.48160)。
【0010】
しかしながら、従来技術から公知のこれらの黄色着色剤の性質は、現在存在している技術的要求に対して常に満足のいくものではなく、そして、特に、それらの堅牢性、特にそれらの熱安定性に関しては、改良の必要がある。
【0011】
さらには、良好な耐光堅牢性を有する黄色メチン染料が(特許文献3)からも公知であり、それらは上に挙げた従来技術に比較して、それらの熱安定性の点に関しても改良を示してはいるが、それにも関わらず、ポリアミドの着色における要求性能がさらに一段と高くなってきているので、それらはさらに改良する価値がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第3543512A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A0074515号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第A3 048 138号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、式(I)の新規なメチン染料に関する。
【化1】
[式中、
が、水素、ハロゲン、COOH、またはCOORであり、
が、水素、ハロゲン、またはアルキルであり、
が、水素、ハロゲン、COOH、COOR、またはCNであり、
が、アルキルまたはフェニルであり、
およびRがそれぞれ独立して、アルキルであり、
が、水素、ハロゲン、またはアルキルであり、
が、アルキルであり、かつ
が、アルキルである]
【0014】
また別な実施態様においては、本発明は、次の基を有する式(I)のメチン染料に関する:
が、水素、ハロゲン、COOH、またはCOORであり、
が、水素、ハロゲン、またはアルキルであり、
が、水素、ハロゲン、COOH、COOR、またはCNであり、
が、アルキルまたはフェニルであり、
およびRがそれぞれ独立して、アルキルであり、
が、水素、ハロゲン、またはアルキルであり、
が、アルキルであり、かつ
が、アルキルであるが、
ただし、RとRが二つとも水素であるということはないという条件付きである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
およびR〜Rの定義におけるアルキルは、たとえば直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル、特に直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル、特にはメチル、エチル、n−およびiso−プロピル、さらにはn−、iso−およびtert−ブチルを指しており、それらは、任意選択により、それぞれの場合において、同一もしくは異なった置換基、たとえばフッ素、塩素または臭素のようなハロゲンによるか、さらには、−OH、−CN、−NHまたはC〜C−アルコキシによって、一置換または多置換されていてもよい。
【0016】
、R、RおよびRにおけるハロゲンは、たとえば、フッ素、塩素または臭素を指している。
【0017】
好ましいのは、次の基を有する式(I)の染料である:
が、水素、フッ素、塩素、COOH、またはCOORであり、
が、水素、フッ素、塩素、C〜C−アルキル、またはCFであり、
が、水素、フッ素、塩素、COOR、またはCNであり、
が、C〜C−アルキルまたはフェニルであり、
およびRがそれぞれ独立して、C〜C−アルキルであり、
が、水素、フッ素、塩素、C〜C−アルキル、またはCFであり、
が、C〜C−アルキルであり、かつ
が、C〜C−アルキルである。
【0018】
また別な実施態様においては、好ましいのは、次の基を有する式(I)の染料である:
が、水素、フッ素、塩素、COOH、またはCOORであり、
が、水素、フッ素、塩素、C〜C−アルキル、またはCFであり、
が、水素、フッ素、塩素、COOR、またはCNであり、
が、C〜C−アルキルまたはフェニルであり、
およびRがそれぞれ独立して、C〜C−アルキルであり、
が、水素、フッ素、塩素、C〜C−アルキル、またはCFであり、
が、C〜C−アルキルであり、かつ
が、C〜C−アルキルであるが、
ただし、RとRが二つとも水素であるということはないという条件付きである。
【0019】
特に好ましいのは、次の基を有する式(I)の染料である:
が、水素、塩素、COOH、またはCOOCHであり、
が、水素、塩素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはCFであり、
が、水素、フッ素、塩素、COOCH、またはCNであり、
が、メチルまたはフェニルであり、
およびRが、メチルであり、かつ
が、水素、塩素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはCFである。
【0020】
特に好ましいのはさらに、次の基を有する式(I)の染料である:
が、水素、塩素、COOH、またはCOOCHであり、
が、水素、塩素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはCFであり、
が、水素、フッ素、塩素、COOCH、またはCNであり、
が、メチルまたはフェニルであり、
およびRが、メチルであり、かつ
が、水素、塩素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはCFであるが、
ただし、RとRが二つとも水素であるということはないという条件付きである。
【0021】
極めて特に好ましいのは、次の基を有する式(I)の染料である:
が、水素、塩素、またはCOOCHであり、
が、水素またはメチルであり、
が、水素、フッ素、または塩素であり、
が、メチルであり、
およびRが、メチルであり、かつ
が、水素、塩素、またはメチルである。
【0022】
極めて特に好ましいのはさらに、次の基を有する式(I)の染料である:
が、水素、塩素、またはCOOCHであり、
が、水素またはメチルであり、
が、水素、フッ素、または塩素であり、
が、メチルであり、
およびRが、メチルであり、かつ
が、水素、塩素、またはメチルであるが、
ただし、RとRが二つとも水素であるということはないという条件付きである。
【0023】
式(I)の染料は、立体異性体として存在することも可能である。式(I)としては特に、次の式(Ia)〜(Id)の四つのEおよびZ異性体を挙げることができる:
【化2】
ここで、R〜Rの置換基はそれぞれ、式(I)で特定された、一般的および好ましい定義を有している。
【0024】
さらにまた別な実施態様においては、本発明は、その中で、置換基R〜Rが式(I)で特定された、一般的および好ましい定義を有する、式(Ia)のメチン染料に関する。
【0025】
本発明における式(I)の染料を使用すると、プラスチック、特にポリアミドの黄色〜橙色の着色を達成することが可能となり、それは、この目的のために使用される公知の黄色染料に比較して、改良された耐光堅牢性および改良された熱安定性を特徴としている。さらに、本発明における染料は、驚くべきことには、公知の染料に比較して改良された色強度(colour strength)も有している。
【0026】
本発明における染料を使用すれば、今日までに公知の、プラスチックを着色するための黄色染料で達成される性能プロファイルをはるかに凌駕することが可能である。本発明はさらに、プラスチックをバルク着色するための、本発明における式(I)の染料の使用にも関する。その場合、本発明における染料は、個別に使用することもできるし、あるいは、相互に所望の混合物の形で使用することもできる。
【0027】
この場合における「バルク着色(bulk colouration)」とは、特に、溶融させたプラスチック材料の中に、たとえば、エクストルーダーの手段を用いて染料を組み入れる方法か、または、プラスチックを調製するための出発成分、たとえば重合前のモノマーに、染料をあらかじめ添加しておく方法を意味していると理解されたい。
【0028】
特に好ましいプラスチックは、以下のものである:熱可塑性プラスチック、たとえばビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミド、さらにはポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリカーボネート、ならびにポリアミド。極めて特に好ましいのは、ポリアミド、特にナイロン−6.6およびナイロン−6である。
【0029】
本発明の文脈においては、「ポリアミド」という用語は、合成品で、工業的に使用可能な熱可塑性プラスチックのための呼称として使用されており、したがって、この物質は、化学的には同類のタンパク質とは別のクラスとして区別される。重要なポリアミドのほとんどは、一級アミンから誘導されるので、その繰り返し単位は、−CO−NH−官能基からなっている。さらには、二級アミンからのポリアミド(−CO−NR−、R=有機基)もまた存在する。ポリアミドを調製するためには、特に、アミノカルボン酸、ラクタム、および/またはジアミンとジカルボン酸とが、モノマーとして使用される。
【0030】
ナイロン−6.6は通常、ヘキサメチレンジアミン(HMD)とアジピン酸とから調製される。それは、水を除去しながらの重縮合によって形成される。
【0031】
ナイロン−6は、開始剤としての水を使用して、ε−カプロラクタムを開環重合させることにより得ることができる。
【0032】
好適なビニルポリマーは、数ある内でも、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリルターポリマー、ポリメタクリレート、およびポリ塩化ビニルである。
【0033】
好適なポリエステルは、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびセルロースエステルである。
【0034】
着色対象のプラスチックは、プラスチック材料または溶融物として、個別に存在させてもよいし、あるいは相互に混合したものとして存在させてもよい。
【0035】
プラスチックをバルク着色するために使用する場合、染着のために微細に粉砕した形で本発明における染料(I)を適用するのが好ましく、分散剤を付随的に使用してもよいが、必ず使用しなければならないという訳ではない。
【0036】
プラスチックをバルク着色するために使用する場合、たとえば、重合が完了した後のプラスチックを調製するプロセスで、本発明における染料(I)を直接使用することもできる。この場合においては、本発明における少なくとも1種の染料(I)を、好ましくは、プラスチックの粒状物と乾燥した形で混合するか、または共に摩砕して、その混合物を、たとえば混合ロール上またはスクリュー中で、可塑化および均質化させるのが好ましい。しかしながら、本発明における染料(I)は、溶融した液状の材料に添加し、撹拌することにより均質に分散させてもよい。このようにしてあらかじめ着色した材料を、次いで、たとえば紡糸により剛毛や糸などにするか、あるいは押出成形または射出成形プロセスにより成形物を得てもよい。
【0037】
染料(I)は重合触媒、特にペルオキシドに対する抵抗性を有しているので、たとえばポリメタクリル酸メチル(PMMA)のようなプラスチック調製物のためのモノマー性の出発物質に本発明における染料(I)を添加し、次いで重合触媒の存在下に重合させることもまた可能である。この目的のためには、染料を、モノマー成分の中に溶解させるか、またはそれらと密に混合するのが好ましい。
【0038】
上述のプラスチック、特にポリアミドを着色するための本発明における式(I)の染料は、ポリマーの量を規準にして、好ましくは0.0001〜1重量%、特には0.01〜0.5重量%の量で使用される。
【0039】
ポリマー中には不溶性の顔料、たとえば二酸化チタンを添加することによって、相当する有用な被覆着色(covered colouration)を得ることが可能である。
【0040】
二酸化チタンは、ポリマーの量を規準にして、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で使用するのがよい。
【0041】
本発明はさらに、プラスチックをバルク着色するための方法にも関するが、その場合、少なくとも1種の式(I)の染料を、好ましくは粒状物の形態にある少なくとも1種のプラスチックと、乾燥した形で混合するか、または共に摩砕して、その混合物を、たとえば混合ロール上またはスクリュー中で、可塑化および均質化させる。
【0042】
しかしながら、本発明における染料(I)は、溶融した液状の材料に添加し、撹拌することにより均質に分散させてもよい。プラスチックの調製におけるモノマー性の出発成分に本発明における染料(I)を添加し、次いで重合させるということも同様に可能である。
【0043】
このようにしてあらかじめ着色した材料を、次いで、たとえば紡糸により剛毛や糸などにするか、あるいは押出成形または射出成形プロセスにより成形物を得てもよい。
【0044】
本発明による方法の手段により、極めて良好な耐熱性および耐光性を有する、透明もしくは艶消しで鮮明な(covered brilliant)黄色の着色が得られる。
【0045】
本発明による方法を実施するために、本発明における式(I)の染料と、他の染料、ならびに/または無機および/もしくは有機顔料との混合物を使用することもまた可能である。
【0046】
本発明はさらに、本発明における式(I)の染料を調製するための方法にも関する。
【0047】
本発明における式(I)の染料は、少なくとも1種の式(II)のアルデヒドを、
【化3】
[式中、
、R、R、RおよびRは、式(I)で規定された一般的および好ましい定義を有する]
式(III)の少なくとも1種のベンゾチアゾール誘導体と反応させることにより、調製することができる。
【化4】
[式中、
およびRは、式(I)で規定された一般的および好ましい定義を有する]
【0048】
式(II)のアルデヒド立体異性体として存在することができる。式(II)には、可能性のあるE形およびZ形の両方が含まれる。
【0049】
式(II)のアルデヒドを、式(III)のベンゾチアゾール誘導体と反応させることによる、本発明における染料(I)を調製するための方法は、自体公知の方法で実施することができる。
【0050】
本発明における染料(I)を調製するための方法は、一般的には−10〜180℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは10〜90℃の範囲の温度で実施される。
【0051】
本発明における染料(I)を調製するための方法は、一般的には900〜1100hPaの圧力、好ましくは標準圧力で実施される。
【0052】
本発明における染料(I)を調製するための方法は、少なくとも1種の溶媒の存在下に実施することもできる。好適な溶媒は、たとえば、一連のアルコールおよびホルムアミドからのものである。本発明における染料(I)を調製するための方法は、メタノール、エタノール、プロパノールのシリーズからの少なくとも1種のアルコール、および/またはジメチルホルムアミドおよびジエチルホルムアミドのシリーズからの少なくとも1種のホルムアミドの存在下に実施するのが好ましく、メタノールおよび/またはジメチルホルムアミドの存在下に実施するのが特に好ましい。
【0053】
本発明における染料(I)を調製するための方法は、少なくとも1種の塩基の存在下に実施する。好適な塩基は、たとえば、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ金属アルコキシドである。水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび/またはカリウムtert−ブトキシドを使用するのが好ましく、特に好ましいのは、水酸化ナトリウムおよび/またはカリウムtert−ブトキシドである。
【0054】
一般的には、本発明における染料(I)を調製するための方法は、次のようにして実施する:まず最初にアルデヒド(II)を仕込み、そしてベンゾチアゾール誘導体(III)を添加し、反応が完結したら、式(I)の化合物を単離する。その単離は、慣用されるプロセス、好ましくは濾過によって実施することができる。そのようにして得られた反応生成物は、任意選択により、さらなる方法工程、たとえば洗浄および乾燥によって仕上げてもよい。
【0055】
その方法を実施するためには、一般的には、アルデヒド(II)の1moleあたり、0.8〜1.5molのベンゾチアゾール誘導体(III)を使用する。アルデヒド(II)の1moleあたり0.9〜1.1molのベンゾチアゾール誘導体(III)を使用するのが好ましく、アルデヒド(II)の1moleあたり1molのベンゾチアゾール誘導体(III)を使用すれば特に好ましい。
【0056】
式(III)のベンゾチアゾール誘導体は公知であり、たとえばAlfa Acerから市販品として購入することができる。
【0057】
式(II)のアルデヒドもまた公知であって、たとえば、当業者公知の方法により2ステージ合成法で調製することができる。その場合、第一ステージa)において、式(IV)の少なくとも1種のインドール誘導体を、
【化5】
[式中、
およびRは、式(I)で規定された一般的および好ましい定義を有する]
少なくとも1種のアルキル化剤と反応させ、次いで、第二ステージb)において、第一ステージの中間体を、少なくとも1種のホルミル化剤と反応させる。
【0058】
ステージb)に記載されているタイプの反応は、Vilsmeier反応の名称で文献でも公知である。
【0059】
一般的には、ステージa)における反応は、一般式(IV)のインドール誘導体を最初に仕込み、任意選択により溶媒の存在下にアルキル化剤を添加するようにして実施される。
【0060】
反応の第一ステージa)は、一般的には10〜80℃、好ましくは20〜70℃、特に好ましくは30〜60℃の範囲の温度で実施される。
【0061】
ステージa)における反応は、一般的には900〜1100hPaの圧力、好ましくは標準圧力で実施される。
【0062】
ステージa)における反応は、少なくとも1種の溶媒の存在下に実施してもよい。好適な溶媒は、たとえば、一連のアルコールおよび水からのものである。ステージa)における反応は、溶媒としての水の存在下に実施するのが好ましい。
【0063】
原理的には、公知のすべてのアルキル化剤、たとえば硫酸ジメチル、ヨウ化メチル、またはジアゾメタンがアルキル化剤として好適である(たとえば次の文献参照:B.K.Schwetlick,Organikum,VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften,Berlin,15th edition,1977,p.260,253,674)。硫酸ジメチルを使用するのが好ましい。
【0064】
一般的には、インドール誘導体の1moleあたり、少なくとも1moleのアルキル化剤が使用される。インドール誘導体の構造にもよるが、上記の化学量論量に関連して、より高いモル量を使用してもよい。インドール誘導体(IV)の1moleあたり、好ましくは0.9〜1.1mol、特に好ましくは1molのアルキル化剤が使用される。
【0065】
ステージa)において調製された中間体は、慣用される方法、たとえば濾過によって単離することができる。ステージa)において調製された中間体は、単離することなく、次のステージb)で直接反応させるのが好ましい。
【0066】
一般的には、ステージb)における反応は次のような方法で実施される:反応溶液の形態にある、第一ステージa)から得られたアルキル化化合物を最初に仕込み、そして任意選択により少なくとも1種の溶媒の存在下にホルミル化剤を添加し、次いで、任意選択により好適な量の好適な沈殿剤を添加することによって、そのようにして調製された式(II)のアルデヒドを沈殿させ、次いでその式(II)のアルデヒドを、慣用される方法、たとえば濾過によって単離する。
【0067】
ステージb)における反応は、一般的には10〜80℃、好ましくは20〜70℃、特に好ましくは30〜60℃の範囲の温度で実施される。
【0068】
ステージb)における反応は、一般的には900〜1100hPaの圧力、好ましくは標準圧力で実施される。
【0069】
ステージb)における反応は、少なくとも1種の溶媒の存在下に実施してもよい。好適な溶媒は、たとえばホルムアミドである。好ましいのは、ジメチルホルムアミドおよびジエチルホルムアミドであり、ジメチルホルムアミドを使用するのが特に好ましい。ジメチルホルムアミドを使用する場合には、それを過剰に使用するのが特に好ましいが、そうすれば、ジメチルホルムアミドが、ホルミル化剤および溶媒として同時に機能する。
【0070】
ステージb)において使用されるホルミル化剤は、一般的には、少なくとも1種のホルムアミドと少なくとも1種のリン酸塩化物との混合物である。
【0071】
好ましいホルムアミドは、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、およびジブチルホルムアミドである。
【0072】

好ましいリン酸塩化物は、オキシ塩化リンである。
【0073】
使用されるホルミル化剤は、特に好ましくは、ジメチルホルムアミドとオキシ塩化リンとの混合物である。
【0074】
ステージ1からのアルキル化化合物の1moleあたり、一般的には少なくとも1mol、好ましくは1.1〜1.5mol、特に好ましくは1.1〜1molのホルミル化剤が使用される。
【0075】
好適な沈殿剤は、たとえばアルコール、たとえばメタノールおよび/またはエタノールである。
【0076】
使用される沈殿剤は、好ましくはメタノールおよび/またはエタノール、特にはメタノールである。
【0077】
式(IV)のインドール誘導体は、当業者には公知である。それらは、自体公知の以下の2ステージ合成で調製することができる:式(V)のアニリン誘導体を、
【化6】
[式中、
は、式(I)で規定された一般的および好ましい定義を有する]
ジアゾ化剤と反応させ、次いで、式(VI)のケトンを用いた閉環反応をさせる。
【化7】
[式中、
およびRは、式(I)で規定された一般的および好ましい定義を有する]
【0078】
そのジアゾ化反応は、一般的には、最初にアニリン誘導体を仕込み、そして0〜10℃の範囲の温度と標準圧力で水性媒体中のジアゾ化剤を添加することにより実施される。
【0079】
原理的には、各種好適なジアゾ化剤が、ジアゾ化剤として選択される。亜硝酸ナトリウム水溶液を使用するのが好ましい。
【0080】
一般的には、ジアゾ化剤は、アニリン誘導体(V)を規準にして少なくとも2moleの量で使用する。
【0081】
式(VI)のケトンを用いた閉環反応は、自体公知の方法で、ワンポット反応で実施され、そこでは、アニリン誘導体(V)のジアゾニウム塩を還元してヒドラゾンとし、そのヒドラゾンを一般式(VI)のケトンと、好ましくは40〜100℃の範囲の温度、好ましくは水溶液中で反応させ、次いで、式(IV)のインドール誘導体を、慣用される方法、好ましくは濾過によって単離し、洗浄する。
【0082】
式(V)のアニリン誘導体および式(VI)のケトンは公知であり、たとえばAlfa AcerまたはSigma−Aldrichから市販品として購入することができる。
【0083】
以下の実施例によって本発明を説明するが、本発明がそれらによって限定されることはなく、また実施例中の「部」は重量部であり、パーセントの値は重量パーセント(重量%)である。
【実施例】
【0084】
実施例1
本発明の式(I)の化合物の調製法
【化8】
[式中、R=COOCH;R=H;R=H;R、RおよびR=CH、ならびにR=H]
200mLのメタノールの中に、25.9g(=0.10mol)の式(II)のアルデヒド(ここで、R=COOCH;R=H;R、RおよびR=CHである)、および17.4g(=0.10mol)の2−ベンゾチアゾールアセトニトリルを導入した。次いで、約1gの50%水酸化カリウム水溶液を用いてpHを約10に調節し、その反応混合物を加熱して温度60℃とし、次いで約6時間撹拌した。次いでその混合物を冷却して25℃とし、その反応生成物を、Nutscheフィルター上で単離した。約300mLのメタノールおよび約1000mLの水を用い、温度90℃でそのフィルターケーキを洗浄した。洗浄した反応生成物を、真空乾燥キャビネット中、温度80℃、圧力200mbarで乾燥させた。
収量:36.6g(理論の88%に相当)、融点:244℃。
【0085】
実施例2〜7
本発明の式(I)の化合物の調製(式中、置換基R〜Rは、表1に示す定義を有している)
【0086】
【表1】
【0087】
実施例2〜7の化合物の調製および仕上げはそれぞれ、実施例1と同様にして実施したが、以下の点で異なっている。
【0088】
実施例2
実施例1で使用したアルデヒドに代えて、27.0g(=0.10mol)の式(II)のアルデヒド(ここで、R=Cl;R=Cl、ならびにR、RおよびR=CH)を使用した。
収量:32.0g(理論の75%に相当)、融点:208℃。
【0089】
実施例3
実施例1で使用したアルデヒドに代えて、23.6g(=0.10mol)の式(II)のアルデヒド(ここで、R=Cl;R=H、ならびにR、RおよびR=CH)を使用した。
収量:36.5g(理論の93%に相当)、融点:233℃。
【0090】
実施例4
実施例1で使用したアルデヒドに代えて、21.9g(=0.10mol)の式(II)のアルデヒド(ここで、R=H;R=F、ならびにR、RおよびR=CH)を使用した。
収量:28.2g(理論の75%に相当)、融点:211℃。
【0091】
実施例5
実施例1で使用したアルデヒドに代えて、21.9g(=0.10mol)の式(II)のアルデヒド(ここで、R=COOCH;R=H、ならびにR、RおよびR=CH)を使用し、そして実施例1で使用した2−ベンゾチアゾールアセトニトリルに代えて、20.9g(=0.10mol)の式(III)のベンゾチアゾールアセトニトリル誘導体(ここで、R=H、およびR=Cl)を使用した。
収量:35.1g(理論の78%に相当)、融点:218℃。
【0092】
実施例6
実施例1で使用したアルデヒドに代えて、21.9g(=0.10mol)の式(II)のアルデヒド(ここで、R=COOCH;R=H、ならびにR、RおよびR=CH)を使用し、そして実施例1で使用した2−ベンゾチアゾールアセトニトリルに代えて、18.8g(=0.10mol)の式(III)のベンゾチアゾールアセトニトリル誘導体(ここで、R=CH、およびR=H)を使用した。
収量:32.2g(理論の75%に相当)、融点:208℃。
【0093】
実施例7
実施例1で使用したアルデヒドに代えて、21.9g(=0.10mol)の式(II)のアルデヒド(ここで、R=COOCH;R=H、ならびにR、RおよびR=CH)を使用し、そして実施例1で使用した2−ベンゾチアゾールアセトニトリルに代えて、20.2g(=0.10mol)の式(III)のベンゾチアゾールアセトニトリル誘導体(ここで、R=CH、およびR=CH)を使用した。
収量:35.9g(理論の81%に相当)、融点:213℃。
【0094】
前駆体の調製
実施例8
式(II)のアルデヒドの調製
【化9】
[式中、R=COOCH;R=H、ならびにR、RおよびR=CH
a)ジアゾ化:
139.9gのp−アミノ安息香酸を、270gの30%塩酸に導入し、外部冷却によりその混合物を冷却して0℃とした。次いで、174gの、亜硝酸ナトリウムの40%水溶液を添加した。その混合物を30分間撹拌してから、約0.5gのアミドスルホン酸を用いて過剰の亜硝酸塩を除去した。
【0095】
b)ヒドラゾンの調製および閉環:
250gの水と660gの亜硫酸水素ナトリウム(39%水溶液の形態)との混合物のpHを、80gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、6.5に調節した。100gの40%水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりpHを約6.5に維持しながら、約30分かけて、ステージa)で調製したジアゾ化溶液を添加した。次いで、その反応混合物を、温度40℃で約1時間撹拌した。次いで、560gの96%硫酸、それに続けて86.1gのメチルイソプロピルケトンを滴下により添加した。その反応混合物を加熱して70℃とし、約4時間撹拌した。次いでその反応混合物を、加熱して80℃としてから、さらに約4時間撹拌した。次いで、その反応混合物を冷却して25℃とし、約800gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いてそのpHを6.5に調節した。その反応混合物を30分間撹拌し、次いでその反応生成物を、Nutscheフィルター上で単離し、2リットルの水を用いて洗浄した。
【0096】
c)アルデヒドの調製:
ステージb)からの閉環された反応生成物の湿ったプレスケーキを、1200gの水の中に導入した。次いで、約70gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、そのpHを10に調節した。200gの40%水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりそのpHを約8.5に維持しながら、1時間かけて、325gの硫酸ジメチルを滴下により添加した。その反応混合物を加熱して40℃とし、約5時間撹拌した。次いで、その反応混合物を加熱して60℃としてから、さらに1時間撹拌した。次いで、その反応混合物を静置すると、それによって、1時間以内に相分離が起きた。次いで、その水相を除去した。残存している水は、減圧下、80℃、20mbarで、その有機相から除去した。次いでその有機相に、310gのジメチルホルムアミドを滴下により添加した。次いで、263gのオキシ塩化リンを、40℃で、3時間かけて添加し、その反応混合物を5時間撹拌した。次いでその混合物を冷却して20℃とし、160gのメタノールを添加した。次いで、約200gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、そのpHを11に調節した。次いで、その反応混合物を60分間撹拌してから、その反応生成物をNutscheフィルター上で単離し、160gのメタノールおよび2000gの水を用いて洗浄した。洗浄した反応生成物を、真空乾燥キャビネット中、温度80℃、圧力200mbarで乾燥させた。
収量:176.3g(理論の68%に相当)。
【0097】
実施例9〜11
式(II)のアルデヒドの調製(式中、置換基RおよびR〜Rは、表2に示す定義を有する)
【0098】
【表2】
【0099】
実施例9
a)ジアゾ化:
ジアゾ化の調製は、実施例8a)で示したようにして実施したが、ただし、270gの30%塩酸および139.9gのp−アミノ安息香酸に代えて、268gの30%塩酸および127.6gの4−クロロアニリンを使用した。
【0100】
b)ヒドラゾンの調製
ヒドラゾンの調製およびその閉環は、実施例8b)と同様にして実施したが、ただしステップ9a)からのジアゾ化溶液を使用した。
【0101】
c)アルデヒドの調製:
ステージb)からの閉環された反応生成物の湿ったプレスケーキを、1200gの水の中に導入した。次いで、約5gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、そのpHを10に調節した。90gの40%水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりそのpHを約8.5に維持しながら、1時間かけて、153gの硫酸ジメチルを滴下により添加した。その反応混合物を加熱して40℃とし、約5時間撹拌した。次いで、その反応混合物を加熱して60℃としてから、さらに1時間撹拌した。次いで、その反応混合物を静置すると、それによって、1時間以内に相分離が起きた。次いで、その水相を除去した。残存している水は、減圧下、80℃、20mbarで、その有機相から除去した。次いでその有機相に、275gのジメチルホルムアミドを滴下により添加した。次いで、116gのオキシ塩化リンを、40℃で、3時間かけて添加し、その反応混合物を5時間撹拌した。次いでその混合物を冷却して20℃とし、160gのメタノールを添加した。次いで、約180gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、そのpHを11に調節した。次いで、その反応混合物を60分間撹拌してから、その反応生成物をNutscheフィルター上で単離し、160gのメタノールおよび2000gの水を用いて洗浄した。洗浄した反応生成物を、真空乾燥キャビネット中、温度80℃、圧力200mbarで乾燥させた。
収量:141.4g(理論の60%に相当)。
【0102】
実施例10
a)ジアゾ化:
ジアゾ化の調製は、実施例8a)に示したようにして実施した。しかしながら、270gの30%塩酸および139.9gのp−アミノ安息香酸に代えて、375gの30%塩酸および155.5gの3−フルオロアニリンを使用した。
【0103】
b)ヒドラゾンの調製および閉環:
250gの水と918gの亜硫酸水素ナトリウム(39%水溶液の形態)との混合物のpHを、120gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、6.5に調節した。140gの40%水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりpHを約6.5に維持しながら、約30分かけて、ステージa)で調製したジアゾ化溶液を添加した。次いで、その反応混合物を、温度40℃で約1時間撹拌した。次いで、776gの96%硫酸、それから120.4gのメチルイソプロピルケトンを滴下により添加した。その反応混合物を加熱して70℃とし、約4時間撹拌した。次いでその反応混合物を、加熱して80℃としてから、さらに約4時間撹拌した。次いで、その反応混合物を冷却して25℃とし、約1150gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いてそのpHを6.5に調節した。その反応混合物を30分間撹拌し、次いでその反応生成物を、Nutscheフィルター上で単離し、2リットルの水を用いて洗浄した。
【0104】
c)アルデヒドの調製:
ステージb)からの閉環された反応生成物の湿ったプレスケーキを、1200gの水の中に導入した。次いで、10gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、そのpHを10に調節した。120gの40%水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりそのpHを約8.5に維持しながら、1時間かけて、194gの硫酸ジメチルを滴下により添加した。その反応混合物を加熱して40℃とし、約5時間撹拌した。次いで、その反応混合物を加熱して60℃としてから、さらに1時間撹拌した。次いで、その反応混合物を静置すると、それによって、1時間以内に相分離が起きた。次いで、その水相を除去した。残存している水は、減圧下、80℃、20mbarで、その有機相から除去した。次いでその有機相に、350gのジメチルホルムアミドを滴下により添加した。次いで、147gのオキシ塩化リンを、40℃で、3時間かけて添加し、その反応混合物を5時間撹拌した。次いでその混合物を冷却して20℃とし、160gのメタノールを添加した。次いで、約200gの40%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、そのpHを11に調節した。次いで、その反応混合物を60分間撹拌してから、その反応生成物をNutscheフィルター上で単離し、160gのメタノールおよび2000gの水を用いて洗浄した。洗浄した反応生成物を、真空乾燥キャビネット中、温度80℃、圧力200mbarで乾燥させた。
収量:169.1g(理論の55%に相当)
【0105】
実施例11
a)ジアゾ化:
ジアゾ化の調製は、実施例8a)に示したようにして実施した。しかしながら、270gの30%塩酸および139.9gの3,4−アミノ安息香酸に代えて、375gの30%塩酸および162.0gの3,4−ジクロロアニリンを使用した。
【0106】
b)ヒドラゾンの調製および閉環:
ヒドラゾンの調製およびその閉環は、実施例10b)と同様にして実施したが、ただしステップ11a)からのジアゾ化溶液を使用した。
【0107】
c)アルデヒドの調製:
アルデヒドの調製および仕上げは、実施例10c)に示したようにして実施したが、ただし、ステージ11b)からの閉環された反応生成物の水で湿ったプレスケーキを使用した。
収量:197.2g(理論の73%に相当)
【0108】
実施例12
式(III)のベンゾチアゾール誘導体の調製
【化10】
[式中、R=H、およびR=H]
125.2gの2−アミノチオフェノールを、260mLの水の中に導入した。次いで、22mLの酢酸を滴下により添加した。次いで、その反応混合物を加熱して35℃とする。約30分間かけて、69.4gのマロノニトリルを滴下により添加し、その混合物を1時間撹拌した。次いで、50mLの30%塩酸を、滴下により添加した。次いで、その反応混合物を冷却して25℃とし、その反応生成物を、実験室用Nutscheフィルターの手段により単離した。
収量:129gの乾燥物、理論の74%
【0109】
実施例13〜15
式(III)のベンゾチアゾール誘導体の調製(式中、置換基RおよびRは、表3に示す定義を有する)
【0110】
【表3】
【0111】
実施例13〜15の化合物の調製および仕上げはそれぞれ、実施例12と同様にして実施したが、以下の点で異なっている。
【0112】
実施例13:
125.2gの2−アミノチオフェノールに代えて、159.6gの2−アミノ−5−クロロチオフェノールを使用した。
収量:110gの乾燥物、理論の69%
【0113】
実施例14:
125.2gの2−アミノチオフェノールに代えて、139.2gの2−アミノ−5−メチルチオフェノールを使用した。
収量:106gの乾燥物、理論の76%
【0114】
実施例15:
125.2gの2−アミノチオフェノールに代えて、153.2gの2−アミノ−4,5−ジメチルチオフェノールを使用した。
収量:80gの乾燥物、理論の52%
【0115】
【表4】
【0116】
実施例1〜7の本発明の化合物についてのUV/VISの測定および吸収値の結果を表4に示す。
【0117】
【表5】
【0118】
実用面での結果:
A)「熱安定性」試験法の説明
タンブルミキサー中で、それぞれ2gの試験対象染料を、1998gの、80℃で4時間かけて乾燥させておいた、Durethan B30Sタイプ(Lanxess Deutschland GmbHからの市販品)(1%のTiOを含む)のPA6粒状物と混合した。その混合物を、単軸スクリューエクストルーダー(Stork、25mmスクリュー)で、高くとも240℃の材料温度で押出し、水を用いて冷却し、Sheer製のグラニュレーターを使用して粉砕し、80℃で8時間かけて乾燥させた。そのようにして得られたプラスチック粒状物の熱安定性を、射出成形機上で、DIN EN 12877−2(「Determination of colour stability to heat during processing of colouring materials in plastics」)(method A)に従って試験した。標準としてのサンプルは、240℃、スクリュー中滞留時間2.5分で調製した。この標準サンプルと比較して、滞留時間5分、温度240〜320℃で調製した評価対象のサンプルについて、色彩的に(colouristically)評価した。dE≦3.0の総合色差(EN ISO 11664−4に従って計算)を有するサンプルを、適用した温度で安定であると評価した。
【0119】
実施例1〜7の本発明化合物、および本発明ではない従来技術の比較化合物についての熱安定性測定の結果を、表5および6に示す。
【0120】
【表6】
【0121】
【表7】