【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、請求項1に記載された木質材ボード、および請求項12記載のような前記木質材ボードの製造方法により達成される。
【0015】
したがって、木質材ボード、特に木質粒子と、少なくとも1種のプラスチックとを備える、木/プラスチック複合材の形をとる木質材ボードが提供される。前記少なくとも1種のプラスチックは、少なくとも1種の有機化合物により官能化されていることが好ましい。前記少なくとも1種の有機化合物は、特に、木質繊維のOH基と結合を形成し得る、少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。
【0016】
本発明にかかる木質材ボードは、該ボードの少なくとも一方の側、好ましくは上側に設けられた少なくとも1つの加飾層をさらに備えてもよい。
【0017】
前記木質材ボードは、下記の工程を備える方法で製造される:
・木質粒子とプラスチック(特には、少なくとも1種の有機化合物により官能化されたプラスチック)との混合物を、第1の搬送ベルトに載せて、前駆体マット(マット状前駆体)を形成し、該前駆体マットを少なくとも1基の、第一熱処理炉に導入して予備固化処理(前固化処理:pre-consolidation)を行う工程と;
・予備固化された前記マットを、少なくとも1基のダブルベルトプレスへと移送し、さらに圧密して木質材ボードとする工程と;
・圧密された前記木質材ボードを、少なくとも1基の冷却プレスで冷却する工程。
【0018】
本発明にかかる木質材ボードは、多段階プロセス、特には3段階プロセスで形成される。その際、まず、木質粒子(例えば、木質繊維状粒子)と官能化されたプラスチック(特には、熱可塑性プラスチック)との混合物を用い、低い見かけ密度を有する予備固化されたマット(緩衝材様マット)が形成される。次いで、この低い見かけ密度を有するマット(緩衝材様マット)は、まずダブルベルトプレスで高圧高温で圧密され、その後冷却プレスで冷却される。本発明にかかる方法によれば、木/プラスチック複合材(木/プラスチックコンポジット:WPC)の形をとる木質材ボードを、床張材製造用の基板材(ベースボード)として利用可能な大きな寸法規格で、高い製造効率、したがって、より低いコストで、製造することが可能となる。
【0019】
一実施形態において、熱可塑性プラスチック、特に、ペレット、粉体又はプラスチック繊維の形をとる熱可塑性プラスチックが、前記木質粒子/プラスチックの混合物に使用される。
【0020】
前記熱可塑性プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリブチレン(PB)、これらの混合物およびこれらの共重合体を含む群から選択されることが好ましい。前記熱可塑性プラスチックとしては、PE、PPまたはこれらの混合物を用いることが特に好ましい。
【0021】
上述のように、前記熱可塑性プラスチックは、プラスチック繊維の形で用いることができる。前記プラスチック繊維は、単成分繊維の形をとるものであってもよいし、二成分繊維(複合繊維)の形を取るものであってもよい。この熱活性プラスチック繊維(バインダー繊維)は、基質中で、木質繊維又は木質粒子を結着する機能と、支持する機能の両方の役割を果たす。単成分繊維を用いる場合、ポリエチレン又は他の低い融点を有する熱可塑性プラスチックからなるものであることが好ましい。
【0022】
二成分繊維(二成分支持繊維とも称する)を使用することが特に好ましい。二成分繊維は、木質繊維板の剛性を向上させ、熱可塑性プラスチックの場合(例えば、PVCの場合)に問題となるクリープ傾向を減少させる。
【0023】
前記二成分繊維は、通常、比較的高い熱的安定性を有するプラスチック(特に、ポリエステルまたはプロピレン)で構成された支持フィラメント(芯繊維)と、前記支持フィラメントを包む(囲繞する)より低い融点を有するプラスチック(特に、ポリエチレンで構成される)から構成される。前記二成分繊維の鞘は、(部分的な)溶融後に、前記木質粒子が相互に架橋することを可能にする。本発明にかかる場合において、使用される前記二成分繊維は、特には、PP/PE,ポリエステル/PE、ポリエステル/ポリエステル等の熱可塑性プラスチックに基づく二成分繊維である。
【0024】
前記プラスチック成分自体を、異種プラスチック同士の混合物としてもよいことも同じく想定可能である。例えば、プラスチック同士の混合物は、20重量%二成分繊維:80重量%PE系繊維〜80重量%二成分繊維:20重量%PE系繊維からなるものであってもよい。一般的には、他の組成も可能である。前記プラスチック成分の組成を変えることにより、前記前駆体マットあるいはマットの固化・圧密に要する温度を変更調整することができる。
【0025】
上述のように、本発明の場合、少なくとも1種の有機化合物により官能化された少なくとも1種のプラスチックが使用される。好ましくは、前記有機化合物(例えば、単量体の形をとる有機化合物)には、少なくとも1つの官能基が付与されており、該官能基は、前記木質粒子のセルロースのOH基との少なくとも1つの結合(特に化学結合)に入り得るものである。これは、前記プラスチック(特に、プラスチック繊維)と前記木質繊維との間に化学結合を生じさせ、この化学結合によって、2つの繊維種が水と接触した際に分離することが防がれる。
【0026】
前記化合物は、少なくとも1つの官能基が、−CO
2H、−CONH
2および−COO−を含む群から選択される有機化合物であり、特には、マレイン酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、これらの無水物類またはコハク酸イミドである。
【0027】
前記単量体有機化合物(例えば、無水マレイン酸(MA))は、グラフト結合法で、非極性ベースポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)にグラフト結合されている。この場合、前記有機化合物は、複数の単量体を、例えば、二量体又は三量体の形で含んでもよく、その場合、例えば、官能化された2つの有機分子又は有機化合物が、架橋分子(例えば、官能化されていない分子の形をとる架橋分子)を介して互いに繋がっている。この点に関し、MA−スチレン−MAで構成される三量体が極めて好ましい。
【0028】
使用される前記プラスチックのグラフト結合の割合は、単量体有機化合物の0.1〜5重量%であってもよく、0.5〜3重量%であることが好ましく、1〜2重量%であることが特に好ましい。
【0029】
ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物、特には、ポリプロピレンの芯とポリエチレンの鞘とで構成される二成分繊維の形をとる混合物であって、これら非極性ベースポリマーが、それぞれ無水マレイン酸により官能化されているものを用いることが、最も好ましい。前記二成分繊維は、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート−co−イソフタレートからなるものであってもよく、必要に応じ、これにMAがグラフト結合していてもよい。
【0030】
一定割合の非修飾の(すなわち、有機化合物がグラフト結合していない)二成分繊維と、一定割合の、有機化合物により官能化されたプラスチック(すなわち、有機化合物がグラフト結合したプラスチック)との混合物を使用してもよい。例えば、一定割合のポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート−co−イソフタレート系繊維と、無水マレイン酸がグラフト結合したポリエチレン(例えば、LLDPE系繊維)との混合物を使用してもよい。
【0031】
本発明にかかる方法のさらなる実施形態では、(修飾されたものと非修飾のものをあわせて)プラスチックに対する木質粒子の混合比が木質粒子90重量%:プラスチック類10重量%〜木質粒子20重量%:プラスチック類80重量%、好ましくは木質粒子70重量%:プラスチック類30重量%〜木質粒子40重量%:プラスチック類60重量%である、木質粒子とポリマーの混合物が使用される。使用される前記木質粒子/ポリマー混合物は、例えば、44重量%の木質繊維又は木質粒子と56重量%の二成分繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート−co−イソフタレート系繊維、PP/PE系繊維等)とを有するものであってもよい。木質繊維とポリマー繊維との混合比は、50重量%:50重量%であることが特に極めて好ましい。
【0032】
本発明にかかる文脈で用いられる木質粒子とは、リグノセルロース系砕屑生成物、例えば、木質繊維、木削片(かんなくず)、木粉(おがくず)等のことを意味すると理解されたい。木質繊維を使用する場合、特には、長さ1.0mm〜20mm(好ましくは、1.5mm〜10mm)、厚さ0.05mm〜1mmの乾燥した木質繊維が使用される。使用される前記木質繊維中の水分含有率は、該木質繊維の総重量に対し、5%〜15%、好ましくは6%〜12%の範囲内である。
【0033】
同様に、使用される前記木質粒子を、平均粒子径との関連で定義することもでき、平均粒子径d50は、0.05mm〜1mmであってもよく、好ましくは0.1〜0.8mmであってもよい。
【0034】
前記木質粒子/プラスチックの混合物の所望の組成に従い、個々の成分(木質粒子とプラスチック)が、ミキサーで密に混合される。これらの成分を、例えば、ブローラインへの導入によって混合してもよい。この場合、成分が添加された箇所から、貯留容器までの経路において、搬送媒体として吹き込まれる空気により、強く混合が行われる。前記貯留容器内においても、吹き込まれる搬送空気による前記成分の強い混合が継続される。
【0035】
前記貯留容器から、前記木質粒子/プラスチックの混合物は、例えば表面圧秤で秤量された後、第1の搬送ベルト上へ、そのベルト幅にわたって均一的に吹きつけられ前駆体マットが形成される。供給される木質粒子/プラスチック混合物の量は、生成される前駆体マットの所望の層厚、及び所望の見かけ密度から導かれる。混合物散布後の状態で、前記前駆体マットの目付は、通常、3000〜10000g/m
2の範囲内あってもよく、好ましくは5000〜7000g/m
2の範囲内であってもよい。上述のように、混合物散布後の状態で、前記前駆体マットの幅は、前記第1の搬送ベルトの幅により決まる。この幅は、例えば、最大3000mmであってもよく、好ましくは最大2800mm、特に好ましくは最大2500mmの範囲内であってもよい。
【0036】
前記木質粒子/プラスチックの混合物を、第1の搬送ベルトに載せて前駆体マットを形成した後、この前駆体マットは、予備固化処理のために、少なくとも1基の第一熱処理炉へと導入される。特に好ましい実施形態において、木質粒子とプラスチックからなる前記前駆体マットは、前記少なくとも1つの熱処理炉で、使用するプラスチックの溶融温度に相当する温度か又はこれを超える温度まで加熱される。
【0037】
前記熱処理炉内の温度は、150〜250℃であってもよく、好ましくは160〜230℃、特に好ましくは160〜200℃であってもよい。前記前駆体マットの芯部温度は、100〜150℃の範囲内であることが好ましく、約130℃であることが特に好ましい。前記熱処理炉での加熱中に、前記プラスチック材の部分溶融が生じ、該プラスチック材(例えばプラスチック繊維)と前記木質繊維を密に結着させ、同時に前記前駆体マットを固化(consolidation)させる。前記前駆体マットの芯部温度が高ければ高いほど、固化の過程が加速されるので、プレスをより高速に稼働させることができる。
【0038】
前記熱処理炉内の温度は、例えば高温の空気の吹込み等によって維持される。
【0039】
本発明にかかる方法のさらなる実施形態において、予備固化された前記前駆体マットは、前記熱処理炉を出た後、40〜200kg/m
3、好ましくは60〜150kg/m
3、特に好ましくは80〜120kg/m
3の見かけ密度を有する。前記予備固化された前駆体マットの厚さは、20〜100mmであってもよく、好ましくは30〜50mm、特に好ましくは35〜45mmであってもよい。
【0040】
前記熱処理炉における前記コンベアベルト(搬送ベルト)の進行速度は、5〜15m/分の範囲内であることが特に好ましく、6〜12m/分の範囲内であることがさらに好ましい。
【0041】
前記予備固化された前駆体マットを、前記熱処理炉から出した後に、冷却、加工してもよい。例えば、典型的には、前駆体マットはトリム加工される。その際に出る廃材(特に、出る端材)は、再度粉砕して製造プロセスで再利用してもよい。この材料は所望の混合比を持つので、貯留容器に直接供給してもよい。
【0042】
本発明にかかる方法のさらなる変形例において、予備固化された前記前駆体マットは、前記少なくとも1つのダブルベルトプレスで、2〜20mm、好ましくは3〜15mm、特に好ましくは4〜10mmの厚さに圧密される。
【0043】
前記前駆体マットを前記少なくとも1つのダブルベルトプレスで圧密する際にかけられる温度は、150〜250℃、好ましくは180〜230℃、より好ましくは200〜220℃である。前記少なくとも1つのダブルベルトプレスで適用される圧力は、2MPa〜10MPaであってもよく、好ましくは3MPa〜8MPaであってもよく、特に好ましくは5〜7MPaであってもよい。前記ダブルベルトプレスの進行速度は、4〜15m/分、好ましくは6〜12m/分である。
【0044】
前記少なくとも1つのダブルベルトプレスを出た後、圧密された前記木質材ボードは、少なくとも1つの冷却プレスに導入される。ここで、圧密後の木質材ボードは、10〜100℃、好ましくは15〜70℃、特に好ましくは20〜40℃の温度に冷却される。前記少なくとも1つの冷却プレスでかけられる圧力は、前記ダブルベルトプレスにおける圧力と同等か、あるいは少なくとも、ほぼ同等である。すなわち、前記冷却プレスにおける圧力は、2MPa〜10MPa、好ましくは3MPa〜8MPa、特に好ましくは5〜7MPaである。
【0045】
繊維の復元力は大きく、ダブルベルトプレスでの圧密後に冷却プレス工程がないと、ボードがばらける可能性があるため、圧密後の木質材ボードは冷却プレスに導入される必要がある。
【0046】
圧密された前記木質材ボードは、冷却プレスを出た後の状態で2〜15mm、好ましくは3〜12mm、特に好ましくは4〜10mmの厚さを有する。
【0047】
前記冷却プレスを出た後の、圧密された木質材ボードの見かけ密度は、500〜1500kg/m
3の範囲内、好まましくは650〜1300kg/m
3、特に好ましくは800〜1100kg/m
3の範囲内である。
【0048】
例えば850kg/m
3の見かけ密度を有する木質材ボードの製造には、ダブルベルトプレス入口でのプレス温度235℃、ボード表面のプレス温度220℃として、前記ダブルベルトプレス(および前記冷却プレス)で4.5〜5MPa(45〜50bar)の圧力をかけることが好ましい。950kg/m
3の見かけ密度を有する木質材ボードの製造には、ダブルベルトプレス入口でのプレス温度235℃、ボード表面のプレス温度220℃として、前記ダブルベルトプレス(および前記冷却プレス)で5.5〜6MPa(55〜60bar)の圧力をかけることが好ましい。
【0049】
特に好ましい一実施形態において、前記本発明にかかる木質材ボードの製造方法は、下記の工程を備える:
・木質繊維とプラスチック繊維、特に、少なくとも1種の有機化合物により官能化されたプラスチックの繊維とを用意する工程;
・ブローラインで、前記木質繊維と前記プラスチック繊維との混合物を形成する工程;
・前記混合物を、フィーダーに中間蓄積(中間貯留)する工程;
・前記混合物を、第1のロール上に吹き付けて、第1の前駆体マットを形成する工程(エアレイ工程);
・前記第1の前駆体マットを解繊し、再度、その混合物を第2のロール上へ吹き付けて、第2の前駆体マットを形成する工程(エアレイ工程);
・前記第2の前駆体マットを搬送ベルト上へと移送し、該第2の前駆体マットを前記少なくとも1つの熱処理炉へ導入して、熱結着により予備固化処理してマットを供する工程;
・予備固化された前記マットを前記少なくとも1つのダブルベルトプレスへ移送し、さらに圧密してベースボードを供する工程;
・前記ベースボードを、特に前記少なくとも1つの冷却プレスの冷却ゾーンにおいて、冷却する工程。
【0050】
通常、前記木質繊維およびプラスチック繊維は、適切なベールオープナーで開梱されるベール(梱)の形で用意される。個々にベールオープナーで開梱された後、これらの繊維は、個別の秤量ユニットで秤量されて前記ブローラインへと導入される。該ブローラインでは、前記ファイバー、および他に何らかの追加成分があれば、それらの添加箇所から、前記貯留容器(フィーダー)への経路において、搬送媒体として吹き込まれる空気により、強く(はげしく)混合が行われる。木質繊維とプラスチック繊維との混合物は、表面圧秤で秤量された後、前記貯留容器(フィーダー)から、第1のロール上の第1の搬送ベルト上へ、ベルト全幅にわたって均一に吹き付けられ、第1の前駆体マットが形成される。この第1の前駆体マットは、前記第1の搬送ベルトの端の解繊装置へと進み、解繊された混合物は、第2のロール上の第2の搬送ベルト上へ吹き付けられ、第2の前駆体マットを形成する。
【0051】
かくして得られた前記前駆体マット(ここでは、前記第2の前駆体マット)は、前述の熱処理炉へ導入され、予備固化処理が行われて、予備固化された前駆体マットが形成される。次いで、これが前記少なくとも1つのダブルベルトプレスへ移送されてさらに圧密が行われ、木質材ボードが供給される。
【0052】
本発明にかかる方法により製造される木質材ボード(木/プラスチック複合材:WPC)は、5%未満、好ましくは3%未満、特に好ましくは1%未満の膨潤率によって特徴付けられる。
【0053】
本発明にかかる方法のさらなる実施形態では、前記木質粒子/プラスチック混合物に、その固化前に、前記木質材ボードに特定の特性を付与する充填剤(フィラー)や添加剤などの物質をさらに添加することが好ましいことがわかった。
【0054】
前記木質粒子/プラスチックの混合物に添加し得る適切な添加剤としては、難燃剤、発光物質、または抗菌物質などがある。適切な難燃剤は、ホスフェート類およびボレート類を含む群から選択でき、特には、ポリリン酸アンモニウム、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ホウ酸亜鉛または多価アルコールのホウ酸錯体類から選択できる。
【0055】
さらに、前記木質材ボードのUV安定性、老化特性または導電率に影響を及ぼす添加材を用いてもよい。UV安定性を向上させる公知の方法の一例として、HALS化合物として知られる化合物などの、UV安定化化合物と呼ばれるものをプラスチックに添加する方法がある。使用される抗かび剤および抗菌剤は、ポリイミン類を含むものであってもよい。
【0056】
また、前記木質粒子/プラスチックの混合物には、無機充填剤を好適に添加できる。使用される無機充填剤は、例えば、タルク、チョーク、二酸化チタン、その他、前記ボードに特定の色を付与する材料であってもよい。
【0057】
上述のように、本発明にかかる木質材ボードには、少なくとも片側、好ましくは上側に、少なくとも1つの加飾層が設けられている。
【0058】
前記少なくとも1つの加飾層は、様々な方法で実現又は構成することができる。
【0059】
例えば、第1の実施形態において、前記木質材ボードは、少なくとも1つの加飾フィルムを含む加飾層を備えてもよい。このような加飾フィルムは、少なくとも1つの熱可塑性キャリア層と、該キャリア層に印刷された少なくとも1つの加飾、または別体をなす少なくとも1つの加飾層と、少なくとも1つのポリマーシールとで構成される。
【0060】
上述のように、典型的に、加飾フィルムは、キャリア層としての、一または複数の、熱可塑性材料(特に、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリウレタン)の層で構成されている。加飾体は、このキャリア層に直接印刷してもよく、あるいはこのキャリア層上に別に加飾層として設けてもよい。前記加飾体には、さらに、例えば、ポリプロピレンフィルムやポリウレタンフィルムの形をとるポリマーシール、または別にワニス(EBCワニス)の形をとるポリマーシールが設けられている。ここで、ポリマーシールは、適切な耐摩耗性粒子を含む耐摩耗層の形で設けてもよい(これに関しては後述の記載も参照のこと)。したがって、前記加飾フィルムは、キャリア層と加飾体とシールとで構成される層集合体であって、それ自体、加飾層として使用し得る、仕上層体あるいは仕上複合体である。
【0061】
好ましくは、このような加飾フィルムは、少なくとも1種の接着剤を用いて前記木質材ボードに積層してもよく、あるいは、前記木質材ボードを製造する過程において(特に、木質繊維マットを木質材ボードに圧密する時に)該ボードへと圧着してもよい。
【0062】
さらなる実施形態において、前記木質材ボードは、加飾仕上げフィルムの形をとる加飾層を備えていてもよい。加飾仕上げフィルムは、アミノ樹脂充填加飾紙と、その上に塗布された少なくとも1つのワニス層とからなる。前記加飾紙には、(例えば、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂などの等)適当なアミノ樹脂が糊付けされているか、又は軽度に含浸されている。
【0063】
好ましくは、前記仕上げフィルムは、少なくとも1種の接着剤を用いて前記木質材ボードに積層されている。
【0064】
前記加飾仕上げフィルムを、前記木質材ボードに積層した後に、該加飾仕上げフィルムに、さらにUV硬化性および/または電子ビーム硬化性(EBC)ワニスからなる、少なくとも一層の、ワニス層を設けてもよい。
【0065】
UV硬化性および/または電子ビーム硬化性(EBC)ワニスは、特には、照射硬化性のアクリレート含有ワニスである。典型的には、使用される前記照射硬化性のワニスは、例えばポリエステル(メタ)アクリレート類、ポリエーテル(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類等のメタクリレート類を含む。また、使用されるアクリレートあるいは前記アクリレート含有ワニスは、置換された又は置換されていないモノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーを含んでもよく、特に、アクリル酸および/またはアクリルエーテル類、および/またはアクリルエステルのモノマー、オリゴマーまたはポリマーの形をとるものを含んでもよい。
【0066】
前記UV硬化性ワニスおよび/または電子ビーム硬化性(EBC)ワニスは、耐摩耗性粒子、天然繊維および/または合成繊維を含んでもよく、またさらなる添加剤を含んでもよい。前記UVワニス中に存在する前記耐摩耗性粒子(摩耗抑制性粒子)は、特に、アルミナ類(例えば、コランダム)、炭化ホウ素、二酸化ケイ素類(例えば、ガラスビーズ)および炭化ケイ素類を含む群から選択される。
【0067】
また、木質繊維、セルロース系繊維、部分的に漂白されたセルロース系繊維、ウール繊維、麻繊維、有機又は無機ポリマー繊維を含む群から選択される天然繊維又は合成繊維を、前記UVおよび/またはEB硬化性のワニスに添加してもよい。さらなる添加剤として、難燃剤および/または発光物質を添加してもよい。適切な難燃剤は、ホスフェート類およびボレート類を含む群から選択することができ、特に、ポリリン酸アンモニウム、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ホウ酸亜鉛または多価アルコールのホウ酸錯体類から選択できる。使用される発光物質は、蛍光又は燐光物質(特に、亜硫酸亜鉛およびアルミン酸アルカリ金属類)であってもよい。
【0068】
一実施形態においては、複数の照射硬化性保護層、好適には2又は3枚の保護(耐摩耗)層を設けることが好ましい。これらは、一層の上に他層を積層する形で配置または塗布される。例えば、まずUV硬化性ワニスの第1の塗膜を塗布し、次にEBCワニスの第2の塗膜を塗布して、次いで上塗りとしてEBCの第3の塗膜を塗布してもよい。これらのワニス層は、それぞれ、耐摩耗性および/またはナノ粒子を含んでもよい。前記UVワニスが耐摩耗性粒子(例えば、コランダム等)を含み、前記EBC上塗りが耐微小傷性を向上させる粒子(例えば、ヒュームドシリカからなるケイ酸塩ナノ粒子等)を含むことが特に望ましい。
【0069】
特に好ましい一実施形態において、前記耐摩耗層は、UVドライヤーにより部分的にゲル化された、コランダム含有UVワニスの第1の塗膜と、弾性中塗りとしてのEBCワニスの第2の塗膜と、ナノ粒子を含むEBC上塗りの第3の塗膜とを含む。
【0070】
それらのワニス層は、まずワニス表面に微小なシワを形成することにより艶消しを行うため、(特に、エキシマー光源を用いて)部分的に硬化され、最後にワニス構造全体が(特に、EBC源を用いて)仕上げ硬化(完全硬化)される。
【0071】
このような場合、個々の保護層(保護塗膜)の塗布量は、10g/m
2〜100g/m
2、好ましくは20g/m
2〜80g/m
2、特に好ましくは30〜50g/m
2の範囲で、異なる量であってもよく、同量であってもよい。合計の塗布量は、塗膜の数に応じて、30g/m
2〜150g/m
2、好ましくは50g/m
2〜120g/m
2の範囲で増減できる。
【0072】
前記少なくとも1つの耐摩耗層は、相互に積層配置された耐摩耗層間の付着性を向上させる、例えばイソシアネート類をベースとする、化学的架橋剤を含んでもよい。
【0073】
前記照射硬化性のワニス中に使用されるアクリレート系化合物は、その反応性により、該ワニス中に存在する耐摩耗性粒子又は添加剤を、繊維上に付着させ、あるいはこれらで繊維の鞘を形成することができる。前記木質材ボードをさらに加工する間に、前記アクリレート系化合物の反応性二重結合による化学的架橋が生じ、繊維、粒子、着色顔料、添加剤上にポリマー層が形成されて、漂白が防止される。
【0074】
上述のように、前記加飾フィルムおよび前記加飾仕上げフィルムは、前記木質材ボードへと加飾層として例えば積層プレス等において積層することができる。前記木質材ボード(特に、該木質材ボードの上側)へ積層する場合、ボード上面に、まず、適当なバインダー(例えば、ポリ酢酸ビニル(PVAc)系糊、尿素系糊、PU系ホットメルト等)が塗布される。必要な(液状)バインダーの量は、20〜50g/m
2、好ましくは30〜40g/m
2である。PU系ホットメルトを使用する場合、塗布量は、50〜150g/m
2、好ましくは70〜100g/m
2である。積層ラインの進行速度は、10〜50m/分であることが好ましく、より好ましくは20〜30m/分である。前記仕上げフィルムの場合には、前記積層プレス内における高温により、該仕上げフィルムの前記加飾紙の樹脂含浸物の残留硬化が生じる。
【0075】
本発明にかかる木質材ボードのさらに他の実施形態において、前記少なくとも1つの加飾層は、少なくとも1つのアミノ樹脂含浸加飾紙層と、任意で少なくとも1つのアミノ樹脂含浸オーバーレイ紙層とを含んでもよく、前記加飾紙層および任意の前記オーバーレイ紙層は、前記木質材ボードに圧着されていてもよい。
【0076】
加飾紙(加飾紙層)は、木質材の表面仕上げ用の単層特殊紙となり、多様な加飾を可能とする。したがって、典型的な各種木質構造のプリントのほかにも、幾何学的形状や人工物の複雑な印刷が実現できる。事実、モチーフの選択肢は無限である。最適な印刷適性を確保するため、使用される紙は、良好な平滑性及び寸法安定性を有する必要があり、同様に、必要とされる任意の合成樹脂含浸物の浸透にも適したものでなければならない。好ましくは、例えば熱硬化性合成樹脂含浸物が含浸された加飾紙が使用される。
【0077】
しばしば、前記加飾紙は、単層の耐摩耗層(オーバーレイ紙層)と共に付与される。メラミン樹脂含浸済みの薄い紙が通常、オーバーレイとして使用される。同様に、前記ラミネート(積層体)または木質材ボードの耐摩耗性を向上するため、耐摩耗粒子をオーバーレイ樹脂に混入済みのオーバーレイを設けてもよい。例えば、該耐摩耗性粒子は、アルミナ類、炭化ホウ素類、二酸化ケイ素類、炭化ケイ素類およびガラス粒子類を含む群から選択されることが好ましい。
【0078】
他の変形例において、前記少なくとも1つの加飾紙層は、前記木質材ボードの上側に載置した後、(例えば、ショートサイクルプレスで)(例えば、積層体を形成するように)圧力及び温度の作用下で圧着してもよい。
【0079】
さらなる実施形態では、前記木/プラスチック複合材ボードの下側に裏打ちを設けてもよい。適用され得る。これは、特に、前記木/プラスチック複合材ボードの上側に前記加飾層及び前記オーバーレイ層を設けた結果として働く引張力を補償する。好ましい一実施形態において、前記裏打ちは、含浸されたセルロース層の形で設けられる。例えば、前記裏打ちは、熱硬化性合成樹脂を含浸された紙として設けてもよい。特に好ましい一実施形態において、前記裏打ちの層構造は、上側に適用された加飾層及びオーバーレイ層で構成される積層体の積層構造及び各層厚に厳密に対応するものとされる。
【0080】
好ましい一実施形態では、前記加飾紙層および/またはオーバーレイ紙層と前記裏打ち層とは、ショートサイクルプレスにおける温度圧力の作用で、大きな寸法規格の前記木/プラスチック複合材ボードに一度に圧着され、積層体となる。
【0081】
典型的なショートサイクルプレスの動作条件は、例えば、圧力30〜60kg/cm
2、木質材表面での温度約165〜175℃、加圧時間6〜12秒である。
【0082】
好ましくは、本発明にかかる木/プラスチック複合材ボードを基材として使用する場合、従来の木質繊維板をベースとする積層体の製造条件よりも30℃〜40℃低い温度で、前記ショートサイクルプレスを稼働させることが好ましい。特に好ましい一実施形態において、本発明にかかる木/プラスチック複合材ボードを使用する場合、前記ショートサイクルプレス稼働時の温度は、ボード表面において、140℃〜160℃、最も好ましくはボード表面において150℃である。
【0083】
本発明にかかる木/プラスチック複合材ボードを使用する場合、前記ショートサイクルプレスにおける加圧時間は、5〜15秒であり、好ましくは、7〜12秒、より好ましくは10秒以下(例えば、9秒、8秒、7秒又は6秒)である。
【0084】
木/プラスチック複合材をベースとする積層体の製造時に、10秒を超える加圧時間を選択した場合、その木/プラスチック複合材板の構造が破壊されないよう、冷却が必要となる。これは例えば、予冷した空気により、プレス出口で前記ボードを直接冷却することによって行うことができる。さらなる選択肢として、冷却ロール、または冷却用設備(冷却ゾーン)を備えたプレスを用いて冷却してもよい。
【0085】
上述のように、本発明にかかる方法のさらなる変形例では、少なくとも1つの加飾層(特には仕上げフィルム又はアミノ樹脂含浸加飾紙層の形をとる)を、予備固化された前記前駆体マットの上側に、実際の製造工程の中で付着させてもよい。すなわち、この場合、前記予備固化された前駆体マットを、さらに圧密するために前記第1の熱処理炉から前記少なくとも1つのダブルベルトプレスへ移送する際、同時に前記少なくとも1つの仕上げフィルムが該前駆体マットの上側に配設され、その後、前記予備固化された前駆体マットが、(ダブルベルトプレスにおいて)前記少なくとも1つの仕上げフィルムと共にさらに圧密される。前記仕上げフィルムは、少なくとも1つの巻出し装置により該仕上げフィルムを、前記少なくとも1つのダブルベルトプレスへと供給することにより簡単に配設できる。
【0086】
また、複数の仕上げフィルム、例えば、2、3、4又は5枚のフィルムを配設してもよい。
【0087】
また、前記予備固化された前駆体マットを前記少なくとも1つのダブルベルトプレスへ移送する際に、少なくとも1つの剥離層を前記仕上げフィルムの上へと同時に配設してもよい。
【0088】
また、前記木質材ボードの上側に、エンボス構造を形成してもよい。これは、前記木質材ボード又は前記前駆体マットへ前記加飾層を施した直後に行うことが好ましい。
【0089】
このように、組み合わされた加圧プレートを用い、前記ショートプレスサイクルで前記木質材ボードをさらに加工する時に、表面構造、例えば木/プラスチック複合材ボードの表面構造を形成することができ、この表面構造は、任意に、前記加飾体に適合する構造(加飾調和構造と称する)とすることができる。好ましくは、前記表面構造は、前記加飾体と実質的に一体をなすものであることが好ましい。木質加飾の場合、前記構造は、木目に沿った孔構造の形をとってもよい。タイル加飾の場合、前記構造は、該加飾物に含まれる接合部充填ラインの領域における凹部であってもよい。
【0090】
ただし、前記ボードに塗膜を形成する場合、プレス温度を、30〜40℃下げる必要がある。圧縮時間を10秒未満に下げた場合と同様、この方法でも、望ましくない可塑化と結果としての変形につながり得る無用の熱が、基板に加えられることを防ぐことができきる。
【0091】
前記前駆体マットの表面の構造化にあたっては、下記の手法を採用することができる。
a. 既に構造化された仕上げフィルムを使用する。
b. 前記ダブルベルトプレスの上側ベルトと、予備固化された前記前駆体マットの上側との間に取り込まれる構造化紙を使用する。
c. ダブルベルトプレスの稼働中に、該ダブルベルトプレスの上側ベルト(相補的な構造を有するもの)を用いてエンボス構造を加工する。
【0092】
選択肢a)の構造化された仕上げフィルムは、例えば、それ自体が既に構造化されているプラスチックフィルムであってもよい。
【0093】
さらなる形態において、WPCの形をとる前記木質材ボードは、少なくとも該ボードの縁領域におけるプロファイルが、溝および/または舌状突起(tongue)を該木質材ボードの縁(側面)に付与するプロファイルを有するものとしてもよく、その場合、得られるパネル(木質材ボード)は、互いに接合でき、釘無しで、床に敷き詰めることができる。
【0094】
本発明にかかる方法により、木質粒子と少なくとも1種のプラスチック、特に、有機化合物により官能化されたプラスチックとの混合物を備える木質材ボード、特に、木/プラスチック複合材であって、前記少なくとも1種の有機化合物が、前記木質粒子のOH基との結合を形成する、木質材ボードを製造することができる。
【0095】
本発明にかかる木質材ボードは、高いプラスチック含有率により、標準的なHDFボードや、さらには、膨潤低下HDFボードと比べても、膨潤率が著しく低くなっている。高メラミン強化糊を使用したDIN EN 13329に基づく、エッジ膨潤テストにおいて、後者は、コート後の状態でエッジ膨張率(膨潤率)が約7%となるが、本発明に係る繊維板(WPC)は、コート後の状態でのエッジ膨張率は3.5%未満である。
【0096】
本発明にかかる木質材ボードは、数多くの利点を奏することができ:良好な機械的特性を維持し得ること;標準的な技術を利用できること、例えば、公知の積層プレスを用いて積層化でき、かつ/または、公知のワニス塗布ラインを用いてワニスを塗布し得ること;大きな寸法規格のボードを最適に加工し得ること;基材板および仕上げ後の床材の膨潤率がきわめて低いことなど、を挙げることができる。
【0097】
本発明にかかる木質材ボード、特に、適切な加飾及び耐摩耗層が設けられた木/プラスチック複合材ボードは、壁、床、屋根等の張材や、家具の上張材として使用することができる。好適な使用分野は、床張材及びラミネートフロアの分野である。