【文献】
Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013年,Vol.57, No.5,p.2087-2094
【文献】
Journal of Pharmaceutical Science and Technology,1994年,Vol.48,No.2,p.86-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
式
【0004】
【化2】
の化合物プレウロムチリンは、天然に存在する抗生物質であり、例えば、担子菌類プレウロタス・ムチラス(Pleurotus mutilus)およびP.パセケリアナス(P.passeckerianus)によって生産される。例えば、The Merck Index、12版、項目7694参照。
【0005】
プレウロムチリンの主要な環状構造を有し、第1級ヒドロキシル基で置換されている多くのさらなるプレウロムチリンは、例えば、抗菌薬として開発されてきた。その顕著な抗菌活性により、WO2008/113089に開示されているアミノヒドロキシ置換シクロヘキシルスルファニルアセチルムチリンであるプレウロムチリン誘導体の1群は、特に関心を集めていることが判明した。WO2008/113089に示されているように、14−O−{[(4−アミノ−2−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−スルファニル]−アセチル}−ムチリンは、とりわけ気道および皮膚、ならびに皮膚組織の感染に関連した、グラム陽性およびグラム陰性の病原体に対するそれらの活性により、特に有用な化合物である。特に、14−O−{[(1R,2R,4R)−4−アミノ−2−ヒドロキシ−シクロヘキシルスルファニル]−アセチル}−ムチリン(以下、「BC−3781」または「レファムリン」と称する)は、ヒトにおける重篤な感染症を治療する全身使用のために開発された。BC−3781は、とりわけR.Novak、Are pleuromutilin antibiotics finally fit for human use?、Ann.N.Y.Acad.Sci.1241(2011)71〜81およびW.T.Princeら、Phase II Clinical Study of BC−3781,a Pleuromutilin Antibiotic,in Treatment of Patients with Acute Bacterial Skin and Skin Structure Infections,Antimicrobial Agents and Chemotherapy、第57巻、第5号、(2013)、2087〜2094に記載されている。後者の刊行物には、全身投与によりヒトにおける重篤な感染症を治療するためのプレウロムチリン誘導体の最初の概念実証が例示されている。レファムリンは経口および静脈内投与できる。化合物が静脈内投与される場合、注射部位に不耐性が認められる場合が多い。化合物が静脈内注入として送達される場合、注入部位の刺激がより顕著である場合が多く、それはヒト環境で軽度から中程度および重度までの範囲であり得る。局所不耐性の作用としては、疼痛、紅斑および静脈炎が挙げられる。S.H.Yalkowskyら、Journal of Pharmaceutical Sciences、第87巻、第7号、1989、787には、静脈内薬物送達に関連した製剤関連の問題が記載されており、主な副作用として、溶血、沈殿、静脈炎および疼痛が報告されている。しかし、一般にプレウロムチリンまたは特にレファムリンの製剤または製剤開発については、この先行技術文献には概説されていない。
【0006】
G.Eichenbaumら、Journal of Pharmacological and Toxicological Methods、68、2013、394には、生理学的血液pH、例えば、pH7.4で溶解度が低い化合物について、ファーストインヒューマン試験の前に、静脈内製剤の注射部位の忍容性を評価し、向上させる方法が記載されている。調査の焦点は、両性イオンのモデル化合物JNJ−Xに置かれた。しかし、BC−3781は、両性イオンでもなく、血液pHで低い溶解度も有していない。
【0007】
WO1999/30728には、注射部位の不耐性の作用を回避または低減することが意図された添加剤と組み合わせて水溶液中にダルホプリスチン/キヌプリスチンを含有する注射可能組成物について記載されている。添加剤は、緩衝溶液を包含する。しかし、前記文献は、ダルホプリスチン/キヌプリスチンの組合せ適用に関し、これらは、構造および物理化学的特性においてプレウロムチリン誘導体、例えば、BC−3781といずれもかなり異なる、2つの別個の化合物である。さらに、BC−3781は、とりわけ、耐性の高い病原体により生じる重篤な感染症を治療するために、単一の化合物として用いられる。
【0008】
さらなる先行技術文献には、注入部位の忍容性の向上に関連する別の分子の製剤開発および試験について記載されている。このような先行技術の簡単な非包括的選択を以下に列挙する:
a)S.Guptaら、Parenteral Formulation Development of Renin Inhibitor Abbott−72517、J.of Pharm.Sci.&Tech.48(2):86〜91(1994)
b)P.Simamoraら、「Studies in Phlebitis VIII:Evaluations of pH Solubilized Intravenous Dexverapamil Formulations」、PDA J.of Pharm.Sci.& Tech.50(2):123−128(1996)
c)L.Willemsら、Itraconazole oral solution and intravenous formulations:a review of pharmacokinetIcs and pharmacodynamics、Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics、2001、26、159。
【発明を実施するための形態】
【0025】
様々な媒体中のBC−3781酢酸塩の溶解度は以下の通りである:
【0027】
報告されている局所忍容性の問題は、生理学的pHで化合物の溶解度が不十分であることに関連する場合が多いが、これはBC−3781には当てはまらない。局所忍容性の問題を引き起こす他の問題は、生理学的pH(例えば、pH6.8〜7.4)での化合物の安定性の問題に関連する場合があるが、これらのpH範囲で優れた安定性が認められているため、これもやはりBC−3781には当てはまらない。
【0028】
BC−3781のpKa測定値は9.41であり、これは、化合物の大部分が生理学的pHでイオン化されることを意味する。
【0029】
したがって、緩衝化された製剤中で送達したときの、BC−3781の向上した忍容性の作用および本出願に記載の製剤概念は十分に驚くべきものである。
【0030】
原則として、緩衝溶液は、弱酸とその塩(ナトリウム塩など)または弱アルカリとその塩との組合せとして調製される。
【0031】
一態様において、製剤は、酸/塩基系を用いて調製され、該系における成分の少なくとも1つは、pKa値が2〜6の範囲内の弱酸または弱塩基であり、結果得られた該系のpHは、前記pKa値の範囲内またはそれ未満である。
【0032】
ヒトに投与される製剤の好ましいpH範囲は、3〜5.5、より好ましくは4〜5、特に好ましくは約5である。さらに好ましいpH範囲は4〜6、好ましくは5〜6である。
【0033】
さらにより好ましくは、該系は、その共役塩基、強塩基もしくは弱塩基と組み合わせた、pKa値が2から6の範囲内の1つもしくは複数の薬学的に許容される弱有機もしくは無機酸を含んでいてもよく、または該系は、pKa値が2〜6の範囲内の酸/塩基対に属する少なくとも1つの弱塩基と組み合わせた、1つもしくは複数の薬学的に許容される強有機もしくは無機酸を含んでいてもよい。
【0034】
以下の酸(またはそれらの共役塩基)は、該系の組成の一部を形成し得る酸の例である:クエン酸、酢酸、乳酸、アミノ酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、安息香酸、ヒスチジン、グルタル酸、プロピオン酸、コハク酸、ギ酸、マレイン酸、アスパラギン酸、マロン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸およびリン酸。これらの酸を、その共役塩基、別の弱酸の共役塩基または水酸化ナトリウムと組み合わせてもよい。また、上記酸の共役塩基を、適当な場合、メタンスルホン酸、塩酸、リン酸または硫酸と組み合わせてもよい。
【0035】
これらの例の中で、最も特に有利なものとしては、クエン酸、リン酸および両方の組合せ、ならびに/またはそれらの共役塩基が挙げられるが、何ら限定を意味するものではない。
【0036】
得られた混合物は、緩衝化溶液になる。
【0037】
本発明による緩衝化された製剤は、生理食塩水、5%ブドウ糖液およびそれらの混合物、最も好ましくは生理食塩水からなる群から好ましくは選択される、薬学的に許容されるビヒクルを含み得る。
【0038】
他の薬学的に許容されるビヒクルは、とりわけ10%または40%グルコース、20%キシリトール、乳酸化リンガー液(以下、「LRS」とも称する)およびそれらの混合物の水溶液である。
【0039】
BC−3781の最終製剤(薬学的に許容されるビヒクル、緩衝液およびBC−3781塩、任意選択で補助剤)は、薬学的に許容されるオスモル濃度、例えば、250〜400mosm/kgを有する。
【0040】
本発明によれば、緩衝溶液は、特に、2〜6の範囲の所望のpHに達するように、水酸化ナトリウムを所定量の酸に添加し、次いで、水を所望の体積まで添加することによる、一般的に用いられる公知の方法に従って調製され得る。
【0041】
本発明の一態様において、BC−3781の緩衝化溶液は、100mM〜1000mM、好ましくは200mM〜800mM、最も好ましくは250mM〜540mMの濃縮緩衝液を薬学的に許容される静脈内用ビヒクル中で再溶解し、優先的には薬学的に許容される塩として、例えば、酢酸塩(以下.Acと略記する)もしくはL−乳酸塩(.Laと略記する)としてBC−3781を添加し、または薬学的に許容される塩、例えば、酢酸塩またはL−乳酸塩としてBC−3781の1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは5mg/ml〜50mg/ml、最も好ましくは10mg/ml〜15mg/ml溶液を添加し、それにより最終の所望の濃度のBC−3781となることにより確立され得る。
【0042】
本発明の別の態様において、製剤の全成分、例えば、緩衝液成分および好ましくは薬学的に許容される塩としてBC−3781を、薬学的に許容される静脈内用ビヒクルに直接添加してもよい。
【0043】
本発明の一態様において、緩衝液系としては、pH範囲3〜6、好ましくはpH4〜6、最も好ましくはpH5のクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液および酢酸緩衝液、好ましくはクエン酸緩衝液およびリン酸緩衝液またはそれらの混合物、最も好ましくはクエン酸緩衝液が挙げられる。
【0044】
緩衝液系は、有機酸、例えば、クエン酸および酢酸、または無機酸、例えば、リン酸を、水または好ましくは薬学的に許容される静脈内用ビヒクルに溶解し、塩基、好ましくはアルカリ塩基、例えばKOHおよびNaOH、最も好ましくはNaOHでpHを調整することにより調製され得る。
【0045】
あるいは、緩衝液系は、適当な共役塩基、例えば、クエン酸三ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムまたは酢酸ナトリウムと共に有機酸、例えば、クエン酸および酢酸、または無機酸、例えば、リン酸を、水または好ましくは薬学的に許容される静脈内用ビヒクルに溶解することにより調製され得る。任意選択で、pHを、塩酸または水酸化ナトリウムで最終の所望のpHに(微)調製してもよい。
【0046】
任意選択で、特にグルコース、塩化ナトリウム、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、フルクトースまたはデキストラン40および70から好ましくは選択される緩衝化された製剤中の張性剤に加えて、医薬組成物は、薬学的に許容される補助剤を含有し得、この補助剤は、共溶媒、安定剤、凍結防止剤、乾燥剤、増量剤から選択される。共溶媒および可溶化剤は、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300および400)、プロピレングリコール、エタノールおよび界面活性剤、例えば、ポリソルベート80またはポリオキシエチレン化誘導体(クレモホール)などから好ましくは選択されるが、何ら限定を意味するものではない。増量剤および凍結防止剤は、単糖類、例えば、グルコース、マンニトール、フルクトースもしくはソルビトール、二糖類、例えば、ショ糖、乳糖、トレハロースもしくはマルトース、または水溶性ポリマー、例えば、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンもしくはゼラチンから好ましくは選択される。安定剤は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、アセチルシステイン、亜硫酸塩、モノチオグリセロール)から好ましくは選択される。非経口製剤で用いられる賦形剤は、Y.Mehmoodら、Open Science Journal of Pharmacy and Pharmacology、2015、3(3)、19〜27およびR.G.Strickley、Pharmaceutical Research、第21巻、第2号、201〜230により説明されている。
【0047】
緩衝化された製剤中のBC−3781のヒト用量は、10mg〜1000mg、好ましくは15mg〜500mg、最も好ましくは25mg〜300mg、例えば、150mgである。任意選択で、製剤は、治療要件に応じて、1日数回、例えば、BID、TID投与され得る。投与体積は、成人で10ml〜1000ml、好ましくは20ml〜500ml、最も好ましくは20ml〜300ml、例えば、250または300mlの範囲であり得る。
【0048】
本発明による製剤の好ましい実施形態において、緩衝液は、10mM〜20mMクエン酸緩衝液であり、製剤のpH値は、3〜5.5、好ましくはpH5であり、BC−3781の濃度は、0.2〜3mg/ml(遊離塩基形態として計算)であり、製剤は、薬学的に許容されるビヒクルを含む。
【0049】
さらに好ましい実施形態において、緩衝液は、10mMクエン酸緩衝液であり、製剤のpH値は、3〜5.5、好ましくはpH5であり、BC−3781の濃度は、0.3〜1.2mg/ml(遊離塩基形態として計算)であり、製剤は、薬学的に許容されるビヒクルを含む。
【0050】
さらに好ましい実施形態において、緩衝液は、10mMクエン酸緩衝液であり、製剤のpH値は、3〜5.5、好ましくはpH5であり、BC−3781の濃度は、0.3〜0.6mg/ml(遊離塩基形態として計算)であり、製剤は、薬学的に許容されるビヒクルを含む。
【0051】
任意選択で補助剤を含むBC−3781製剤の提示キットも本発明の文脈の範囲内であることが理解される。任意の形態の提示キットが、好適であり得る。
【0052】
例えば、緩衝液は、好ましくは薬学的に許容される静脈内用ビヒクルでのさらなる希釈のために、濃縮緩衝液としてガラスバイアル中で提供され得る。濃縮緩衝液を、薬学的に許容される静脈内用ビヒクルを充填した市販の輸液バッグまたはボトル中で所望のモル濃度まで希釈してもよい。BC−3781を濃縮液として所望の濃度または用量まで添加する。
【0053】
あるいは、濃縮緩衝液を使用して空の輸液バッグ(例えば、EVAバッグ)を満たし、薬学的に許容される静脈内用ビヒクルで所望のモル濃度まで希釈してもよく、最終的にBC−3781を溶液または固体化合物として所望の濃度で添加する。
【0054】
さらに、緩衝液は、BC−3781の再溶解のために、選択されたモル濃度で、輸液バッグまたは輸液ボトル中で、好ましくは薬学的に許容される静脈内用ビヒクル中で提供され得る。BC−3781を、例えば、溶液として緩衝化輸液バッグ/ボトルに添加してもよい。
【0055】
あるいは、BC−3781は、好ましくはいずれも薬学的に許容される静脈内用ビヒクルに基づく、緩衝ビヒクル中でのさらなる希釈のために、凍結乾燥物または濃縮液としてガラスバイアル中で提供され得る。
【0056】
さらに、提示キットは、緩衝液、薬学的に許容される静脈内用ビヒクル、任意選択で補助剤およびBC−3781を含有する、すぐに使用できる輸液バッグおよびボトルを包含し得る。
【0057】
例えば、とりわけヒト投与に適した本発明の滅菌製剤は、一般的に用いられる公知の方法、例えば、滅菌濾過、滅菌濾過および無菌充填、加熱滅菌またはγ線照射により調製され得る。選択された方法は、滅菌される化合物または溶液の安定性に依存する。例えば、BC−3781を含まない薬学的に許容される静脈内用ビヒクル中の緩衝溶液を滅菌するのに好ましい方法では、滅菌濾過され、次いで加熱滅菌される。BC−3781を含有する溶液は、好ましくは滅菌濾過され、次いで適当な容器、例えば、ガラスバイアル、ガラスボトル、輸液バッグに無菌充填される。
【0058】
上記の実施形態すべてにおいて、薬学的に許容されるビヒクルは、好ましくはNSS、LRSおよび/またはD5W、最も好ましくはNSSである。
【0059】
さらに、上記の実施形態すべてにおいて、BC−3781は、薬学的に許容される塩、特に、酢酸塩および/またはL−乳酸塩、特に好ましくは酢酸塩として好ましくは用いられる。
【0060】
本発明のさらなる態様は、微生物が介在する疾患の治療での使用のための本発明による製剤に関する。
【0061】
好ましい実施形態において、製剤は、静脈内適用により投与される。
【0062】
さらに、本発明は、本発明による注射可能製剤を含む医薬品提示形態に関する。
【0063】
さらに、本発明は、本発明による製剤が、それを必要とする対象に投与される、微生物が介在する疾患の治療方法に関する。
【0064】
本発明による方法において、製剤は、静脈内適用により好ましくは投与される。
【0065】
静脈内適用としては、ボーラス、低速ボーラスおよび持続注入を含む注入投与が挙げられる。
【0066】
以下の略語を使用する。
API 医薬品有効成分
BID bis in die(1日2回)
EP ヨーロッパ薬局方
g グラム
JP 日本薬局方
kg キログラム
l リットル
M モル
mM ミリモル
min 分
ml ミリリットル
NF 国民医薬品集
q.s. 必要量
TID ter in die(1日3回)
USP アメリカ薬局方
w/v 重量/体積
【実施例】
【0067】
臨床(ヒト)製剤またはそれらの成分を調製するために用いられる賦形剤は、薬局方等級、例えば、USPおよび/もしくはEP、ならびに/またはNFおよび/もしくはJPのものである。
【実施例1】
【0068】
ラット背部尾静脈モデルにおける忍容性を調査するために用いられる、14−O−{[(1R,2R,4R)−4−アミノ−2−ヒドロキシ−シクロヘキシルスルファニル]−アセチル}−ムチリン(BC−3781)製剤の調製
a)医薬ビヒクルの調製/購入
医薬ビヒクルNSSの調製は、0.9%(w/v)NaClを溶解することにより確立される。D5WはFresenius Kabiから購入する。
【0069】
b)緩衝液の調製
【0070】
【表2】
【0071】
c)製剤の最終調製
薬学的に許容される塩、例えば、酢酸塩またはL−乳酸塩として存在する試験化合物14−O−{[(1R,2R,4R)−4−アミノ−2−ヒドロキシ−シクロヘキシルスルファニル]−アセチル}−ムチリン(BC−3781)を、緩衝溶液、NSSまたはD5Wに溶解し、6mg/ml(遊離塩基形態として計算)の濃度にする。
【0072】
例えば、以下の量を計量する。
【0073】
【表3】
【実施例2】
【0074】
局所忍容性の違いを調査するための第1相臨床試験で用いられる製剤の調製。BC−3781の10mMクエン酸緩衝生理食塩水製剤、BC−3781生理食塩水製剤および各薬物ビヒクル(以下、「プラセボ製剤」または「プラセボ」とも称する)の調製
a)生理食塩水中のBC−3781濃縮液
BC−3781溶液の調製は、BC−3781酢酸塩を注射用水に溶解し、さらにNaClを溶解することにより達成された。滅菌濾過後、次いで溶液を無菌条件下でバイアルに充填した。
BC−3781生理食塩水バイアルの定量的組成
【0075】
【表4】
【0076】
BC−3781の他の好ましい結晶塩は、WO2011/146954に開示されている。
【0077】
b)クエン酸濃縮緩衝液
クエン酸緩衝溶液を別に調製する。クエン酸およびクエン酸三ナトリウムを注射用水に溶解し、次いでバイアルに充填する。
250mMクエン酸濃縮緩衝液のバッチ処方
【0078】
【表5】
【0079】
クエン酸濃縮緩衝液を滅菌条件下(例えば、滅菌濾過、オートクレーブ)で10mlバイアルに充填する。
250mMクエン酸緩衝液バイアルの定性的および定量的組成
【0080】
【表6】
【0081】
あるいは、クエン酸緩衝液を異なるモル濃度で調製する。
540mMクエン酸濃縮緩衝液のバッチ処方
【0082】
【表7】
【0083】
クエン酸濃縮緩衝液を滅菌条件下(例えば、滅菌濾過、オートクレーブ)で5mlバイアルに充填する。
クエン酸緩衝液バイアルの定量的組成
【0084】
【表8】
【0085】
c)臨床製剤
BC−3781輸液の必要な体積および濃度に応じて、滅菌バッグに、必要量のi)生理食塩水中のBC−3781濃縮液(実施例2a)に記載の調製物)、ii)クエン酸濃縮緩衝液(実施例2b)に記載の調製物)およびiii)市販のNSSを充填した。
【0086】
BC−3781クエン酸緩衝液製剤を調製するために250mMクエン酸濃縮緩衝液を使用する臨床製剤の調製で用いられる注入液成分の量を以下の表に示す。さらに、表は、NSSおよびNSSプラセボ製剤中のBC−3781参照製剤の調製についても列挙している。
【0087】
【表9】
【0088】
BC−3781クエン酸緩衝液製剤を調製するために540mMクエン酸濃縮緩衝液を使用する臨床製剤の調製で用いられる注入液成分の量を以下の表に示す。さらに、表は、生理食塩水および生理食塩水プラセボ製剤中のBC−3781参照製剤の調製も列挙している。
【0089】
【表10】
【0090】
臨床製剤の注入液成分を、市販の空の滅菌輸液バッグ、例えば、300mlまたは500ml EVAバッグに充填する。
【0091】
あるいは、実施例2a)に示した必要量のBC−3781濃縮液および実施例2b)に示した濃縮緩衝液を市販のプレフィルド生理食塩水輸液バッグに添加することにより、製剤を再溶解してもよい。任意選択で、添加されるBC−3781濃縮液およびクエン酸濃縮緩衝液の体積を、添加前に市販の生理食塩水輸液バッグから回収する。
【0092】
上の表に示した臨床製剤は、BC−3781生理食塩水製剤とBC−3781クエン酸緩衝生理食塩水製剤の局所忍容性の違いを評価するために用いられた。クエン酸緩衝生理食塩水製剤は、生理食塩水製剤と比較して、優れた局所忍容性を示した。
【0093】
具体的には、以下の2つの異なるBC−3781製剤
・ 1時間かけて注入される270ml中BC−3781 150mgの生理食塩水製剤
・ 1時間かけて注入される270ml中BC−3781 150mgの生理食塩水クエン酸緩衝液製剤
を、無作為化二重盲検プラセボ対照第1相臨床試験で調査した。
【実施例3】
【0094】
BC−3781塩、NaCl、クエン酸、クエン酸三ナトリウムを水に直接溶解することにより、製剤を調製してもよい。次いで、この製剤を、適当な容器、例えば、輸液バッグ、輸液ボトルに無菌条件下で充填してもよい。製剤のpHは約5であり、必要な場合、HClまたはNaOHのいずれかで厳密に5.0になるように調整してもよい。
【0095】
【表11】
【実施例4】
【0096】
バイアルおよび薬を使わないクエン酸緩衝生理食塩水バッグに充填したBC−3781濃縮液を別に調製することにより、製剤を調製してもよい。
【0097】
BC−3781濃縮液を実施例2ステップa)に記載の通り調製する。
【0098】
緩衝溶液を、別に調製し、バクテリアおよび粒子の保持のために0.45μmカートリッジを通して濾過し、適当な容器、例えば、輸液バッグまたは輸液ボトルに充填する。pHは約5である。
クエン酸緩衝生理食塩水バッグのバッチ処方
【0099】
【表12】
【0100】
得られた緩衝液容器を加熱滅菌する。
【0101】
最終的にBC−3781濃縮液バイアルの内容物を、クエン酸緩衝液輸液バッグ中で希釈(再溶解)し、最終製剤を生成する。得られたBC−3781製剤は、pH約5の10mMクエン酸緩衝生理食塩水中のBC−3781 150mgに相当する。
【実施例5】
【0102】
市販の生理食塩水バッグ中で再溶解するための、BC−3781酢酸塩を含有するクエン酸濃縮緩衝液バイアルの調製。
【0103】
a)150mMクエン酸緩衝溶液の調製
150mM濃縮緩衝液の調製は、適量のクエン酸一水和物とクエン酸三ナトリウム二水和物を水に溶解することにより行われた。得られたpHは約5である。
【0104】
【表13】
【0105】
b)150mMクエン酸緩衝液中のBC−3781酢酸塩濃縮液の調製
BC−3781酢酸塩の150mg遊離塩基等価物を150mMクエン酸緩衝液20mlに溶解し、濃度を7.5mg/mlにする。溶液を、例えば、ガラスバイアルに充填してもよい。
【0106】
例えば、250mlの市販の生理食塩水輸液バッグまたはボトル中で上記溶液20mlを再溶解することにより、pH約5の約10mMクエン酸緩衝液中のBC−3781遊離塩基150mgが得られる。
【0107】
本発明の緩衝化された製剤を、ラット尾モデルおよびヒト臨床試験においてin vivoで調査した。試験条件の詳細および驚くべき結果を以下の節に示す。
【0108】
局所忍容性を評価するためのラット尾モデルの説明
BC−3781をラット背部尾静脈に注入するための注入忍容性モデル部位を開発し、BC−3781の可能性のある臨床静脈内製剤を調査した。このために、雌のSprague Dawley(SD)ラットに、永久静脈カテーテル(BD(登録商標)G21)を挿入し、6mg/mlの濃度のBC−3781からなる様々な製剤を、最終用量75mg/kgになるまで1ml/分の一定の注入速度で注入した。血漿および尿を溶血徴候について5〜30分間チェックした。注入部位(尾静脈)での局所忍容性を、適用の24時間後にチェックした。血漿および/または尿の溶血に関する情報と共に開発されたスコアシステムを回収し、分析に使用した。
【0109】
試験した注入製剤をそれらのスコアに従ってランク付けした。BC−3781の緩衝化注入液は局所忍容性の向上を示し、pH7未満の緩衝化された製剤については、溶血が認められなかった。両作用は、生理食塩水(NSS)およびD5W中の参照製剤と比較された。
【0110】
試験の実施および結果
a)局所忍容性モデル
静脈内製剤の局所忍容性を決定するために、ラット尾静脈注入モデルを開発し、実施例1に従って調製したBC−3781製剤を試験した。このために、スコアシステムを使用して、注射部位の臨床兆候を説明した。
【0111】
注入の24時間後の背部尾静脈の目視チェックを、読み取り時点として定義した。以下のスコアを適用した:
24時間後ラット尾静脈で異常が認められなかった場合の評価 0点
若干の赤色の斑点(斑状出血) 1点
中程度の斑点 2点、および
より重度の青から暗赤色の斑点 3点。
壊死の場合は3点とした。
【0112】
実施例1に従って調製したNSSまたはD5Wに溶解したBC−3781(緩衝液なし)を参照製剤として使用した。上記の条件下でNSSおよびD5W製剤を注入することにより、検出可能な溶血および注入部位の中程度の局所刺激が生じ、製剤間で区別された。すべての製剤を盲検試料として動物の試験部位に送達させた。試験の最後に、製剤の非盲検化を行った。
【0113】
b)採血
血液を、注入終了の15分後に舌下静脈から採取し、2g、4℃で5分間遠心分離した。血漿を採取し、溶血の徴候を視覚的にチェックし、その後−20℃で貯蔵した。様々な製剤の薬物動態(PK)に対する影響を評価するために、BC−3781の血漿濃度を決定し、比較した。
【0114】
c)尿素
注入終了後、麻酔を除去した。動物は、麻酔からの覚醒中、白いティッシュのシート上の個々のケージに入れたままにした。ティッシュ上に認められたわずかな赤血球尿滴を、溶血の徴候として記録した。
【0115】
d)データ分析
各製剤についての局所忍容性モデルからのスコアを合計し、次いで対応する動物の数(n=3〜12)で割った。さらに、血漿および尿中の溶血の徴候を、製剤のランク付けで考慮した。
【0116】
ラット尾モデルでの結果
a)ラット尾静脈注入モデルで試験したBC−3781製剤
【0117】
【表14】
【0118】
製剤の調製
製剤の調製は実施例1に記載されている。活性製剤において、酢酸塩またはL−乳酸塩のいずれかとして存在する、必要量のBC−3781を、上の表に列挙した緩衝溶液、NSSまたはD5W各々に溶解した。完全な溶解後、必要な希釈物を動物に直ちに投与した。BC−3781 75mg/kg用量は、BC−3781の遊離塩基含量を指す。
【0119】
b)動物の仕様および供給源
【0120】
【表15】
【0121】
c)注入設定
尾を加熱ランプ下で5分間加熱した後、背部尾静脈に永久静脈カテーテル(BD insyte(商標)、24GA)を挿入した。カテーテル挿入後、開始用に5%、麻酔維持用(マスク)に3.5%の濃度のイソフルランをラットに麻酔した。様々なBC−3781製剤を、プログラム可能なシリンジポンプから、カテーテルが挿入されたラット背部尾静脈に注入した(1ml/分、6mg/ml、約2分)。注入終了後、カテーテルを生理食塩水0.1〜0.2mlで洗い流した。カテーテルおよびシリンジは廃棄し、接続チューブは再利用のためにエタノールで洗い流し、乾燥した。注入設定毎のグループサイズは3であった。
ラット尾モデルでの試験した製剤の結果(局所忍容性スコア、ならびに血漿および尿中の溶血)
【0122】
【表16】
【0123】
試験結果は、BC−3781緩衝化溶液の驚くべき作用を裏付けている。非緩衝化参照製剤と比較すると、試験した緩衝化溶液すべてが、良好な忍容性スコアを示している。驚くべきことに、その上、BC−3781緩衝化溶液では溶血が認められないが、非緩衝化溶液またはpH7の緩衝化溶液では、血漿および尿中に目に見える溶血が生じている。これらの驚くべき作用は、血液pHでBC−3781の溶解度が限られていることに関連しておらず、該作用は、生理学的pH(約pH7)でBC−3781の安定度が限られていることにより生じるものでもない。
【0124】
第1相臨床試験の結果
実施例2で調製したNSS中のBC−3781(270ml中BC−3781 150mg)製剤とクエン酸緩衝生理食塩水中のBC−3781(270ml中BC−3781 150mg)製剤とを比較すると、BC−3781緩衝化製剤の局所忍容性の向上が、第1相臨床試験でも確認された。試験は無作為化二重盲検プラセボ対照(生理食塩水をプラセボとして使用)であった。男性25人および女性35人の健康な対象合計60人を処置した。試験の主要エンドポイントは、最初の3日以内での中程度の疼痛および紅斑であった。製剤は1時間かけて注入され、クエン酸緩衝生理食塩水中のレファムリンを投与したとき、驚くべきことに、最初の3日間での中程度の疼痛および/または紅斑の発生は、ほぼ半減した。例えば、生理食塩水治療群では、合計150回の注入のうち、中程度の疼痛が生じたのは13回の注入(8.7%)であったが、クエン酸緩衝生理食塩水治療群では、150回の注入のうち中程度の疼痛と関連していたのはわずか6回(4%)であった。