特許第6818040号(P6818040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818040
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】フィルム積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/48 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   B29C65/48
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-547626(P2018-547626)
(86)(22)【出願日】2017年10月20日
(86)【国際出願番号】JP2017038011
(87)【国際公開番号】WO2018079436
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-209642(P2016-209642)
(32)【優先日】2016年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村重 毅
(72)【発明者】
【氏名】細川 和人
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敏広
(72)【発明者】
【氏名】仲井 宏太
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−527157(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/148525(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/088052(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/093505(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−65/82
B32B 1/00−43/00
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の脆性フィルムを搬送させながら、該脆性フィルムに長尺状の靭性フィルムを貼り合せることを含む、フィルム積層体の製造方法であって、
該脆性フィルムに該靭性フィルムを近接させた後、該靭性フィルムの該脆性フィルムとは反対側から、気体を吹き付けることにより、該靭性フィルムと該脆性フィルムとを貼り合せることを含み、
該脆性フィルムの該靭性フィルムとは反対側に、支持ロールまたは支持台を配置し、該支持ロールまたは支持台上で、該気体の吹き付けを行う、
フィルム積層体の製造方法。
【請求項2】
前記脆性フィルムの厚みが、20μm〜300μmである、請求項1に記載のフィルム積層体の製造方法。
【請求項3】
前記気体吹き付け時の気圧が、0.01MPa〜1MPaである、請求項1または2に記載のフィルム積層体の製造方法。
【請求項4】
気体噴射口を備える気体噴射装置により、前記気体の吹き付けが行われ、
該気体噴射口と、前記脆性フィルムとの距離が、1mm〜500mmである、
請求項1から3のいずれかに記載のフィルム積層体の製造方法。
【請求項5】
前記靭性フィルムの幅が、前記脆性フィルムの幅に対して、1%〜110%である、請求項1から4のいずれかに記載のフィルム積層体の製造方法。
【請求項6】
前記靭性フィルムの脆性フィルムに対する接着力が、0.005N/25mm〜10N/25mmである、請求項1から5のいずれかに記載のフィルム積層体の製造方法。
【請求項7】
前記長尺状の靭性フィルムを送り出し、該靭性フィルムと前記脆性フィルムとを貼り合せる前に、該靭性フィルムおよび/または該脆性フィルム上に接着剤を塗布することを含む、請求項1から6のいずれかに記載のフィルム積層体の製造方法。
【請求項8】
前記靭性フィルムが接着層付き靭性フィルムとして、前記フィルム積層体の製造方法に供され、
長尺状の該靭性フィルムを送り出し、該靭性フィルム上に接着剤を塗布して接着層付き靭性フィルムを形成し、その後、該接着層付き靭性フィルムを巻き取らず、連続的に、靭性フィルムと脆性フィルムとの貼り合せを行う、
請求項1から6のいずれかに記載のフィルム積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性フィルムと靭性フィルムとを含むフィルム積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置を構成する部材、例えば、表示素子の基板、有機EL素子の封止材、前面保護板等に、ガラス材、ガラス材を含む複合材等が用いられている。また、近年、画像表示装置の軽量薄型化が進んでおり、より薄いガラス材を用いることが要求されている。元来、ガラス材はその脆弱性に起因してハンドリング性が悪いという問題を有しているが、薄型化に伴い、その問題は顕著となっている。
【0003】
そこで、ガラスフィルム等の脆性フィルムの製造においては、工程中での破損を防止してハンドリング性を確保するため、脆性フィルムを靱性フィルムで保護することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4122139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガラスフィルム等の脆性フィルムが非常に薄い場合、脆性フィルムに靱性フィルムを貼り合せる際にも、脆性フィルムが破損するという問題がある。特に、脆性フィルムが製造工程等に起因してうねりを持って搬送されている場合、貼り合せ時において、脆性フィルムにかかる圧力が一定にならず、脆性フィルムが容易に破損しやすくなる。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、脆性フィルムの破損を防止しつつ、該脆性フィルムに靭性フィルムを貼り付けることが可能なフィルム積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルム積層体の製造方法は、長尺状の脆性フィルムを搬送させながら、該脆性フィルムに長尺状の靭性フィルムを貼り合せることを含む、フィルム積層体の製造方法であって、該脆性フィルムに該靭性フィルムを近接させた後、該靭性フィルムの該脆性フィルムとは反対側から、気体を吹き付けることにより、該靭性フィルムと該脆性フィルムとを貼り合せることを含む。
1つの実施形態においては、上記脆性フィルムの厚みが、20μm〜300μmである。
1つの実施形態においては、上記気体吹き付け時の気圧が、0.01MPa〜1MPaである。
1つの実施形態においては、気体噴射口を備える気体噴射装置により、上記気体の吹き付けが行われ、該気体噴射口と、上記脆性フィルムとの距離が、1mm〜500mmである。
1つの実施形態においては、上記靭性フィルムの幅が、上記脆性フィルムの幅に対して、1%〜110%である。
1つの実施形態においては、上記靭性フィルムの脆性フィルムに対する接着力が、0.005N/25mm〜10N/25mmである。
1つの実施形態においては、上記フィルム積層体の製造方法は、上記長尺状の靭性フィルムを送り出し、該靭性フィルムと上記脆性フィルムとを貼り合せる前に、該靭性フィルムおよび/または該脆性フィルム上に接着剤を塗布することを含む。
1つの実施形態においては、上記靭性フィルムが接着層付き靭性フィルムとして、上記フィルム積層体の製造方法に供され、長尺状の該靭性フィルムを送り出し、該靭性フィルム上に接着剤を塗布して接着層付き靭性フィルムを形成し、その後、該接着層付き靭性フィルムを巻き取らず、連続的に、靭性フィルムと脆性フィルムとの貼り合せを行う。
1つの実施形態においては、上記脆性フィルムの上記靭性フィルムとは反対側に、支持ロールまたは支持台を配置し、該支持ロールまたは支持台上で、気体の吹き付けを行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、脆性フィルムの破損を防止しつつ、該脆性フィルムに靭性フィルムを貼り合せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施形態によるフィルム積層体の製造方法を説明する概略図である。
図2】本発明の1つの実施形態によるフィルム積層体の製造方法に供される脆性フィルムのうねりを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフィルム積層体の製造方法は、長尺状の脆性フィルムを搬送させながら、該脆性フィルムに長尺状の靭性フィルムを貼り合せることを含む。本発明の製造方法は、脆性フィルムに靭性フィルムを近接させた後、該靭性フィルムの脆性フィルムとは反対側から、気体を吹き付けることにより、該脆性フィルムと該靭性フィルムとを貼り合せることを含む。すなわち、本発明は、脆性フィルムと靭性フィルムとを貼り合せる際にニップロール等の押圧手段を用いないことを特徴とする。
【0011】
図1は、本発明の1つの実施形態によるフィルム積層体の製造方法を説明する概略図である。この実施形態においては、長尺状の脆性フィルム10を搬送させながら、長尺状の脆性フィルム10の上方から、脆性フィルム10に靭性フィルム20を近接させ、靭性フィルム20の上方から気体を吹き付けている。脆性フィルム10と靭性フィルム20との貼り合せは、長尺状の靭性フィルム20を供給して、連続的に行われる。なお、図示例においては、脆性フィルム10を水平方向に搬送させているが、脆性フィルム10の搬送方向は特に限定されず、該搬送方向は、例えば、斜め上方向、斜め下方向、垂直上方向、垂直下方向等に設定され得る。脆性フィルムの搬送方法としては、ロール搬送、ベルト搬送等が挙げられる。
【0012】
脆性フィルム10としては、破壊靭性値が0.1MPa/m1/2〜10MPa/m1/2であるフィルムが用いられ得、例えば、ガラスフィルム、セラミックフィルム、半導体材料、アクリル樹脂等の脆性材料からなるフィルム等が挙げられる。破壊靭性値KICは、所定サイズの脆性フィルム(幅2cm×長さ15cm)の長手方向の端部(中央部分)に5mmのクラックを入れた評価用サンプルについて、オートグラフ(例えば、島津製作所製の商品名「AG−I」;チャック間距離:10cm、引っ張り速度:10mm/min)により長手方向に引っ張り応力を加えクラックからのサンプル破断時の応力σを測定し、該応力σ、クラック長a、サンプル幅bを下記式に代入して求められる。
【数1】
【0013】
代表的には、上記脆性フィルム10は、ガラスフィルムである。該ガラスフィルムは、例えば、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃〜1600℃の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製される。上記ガラスフィルムの薄板成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。1つの実施形態においては、薄板状に成形された脆性フィルム10(例えば、ガラスフィルム)は、そのまま(すなわち、巻き取ることなく)、本発明の製造方法に供される。
【0014】
上記脆性フィルム10の厚みは好ましくは300μm以下であり、より好ましくは20μm〜300μmであり、さらに好ましくは20μm〜200μmであり、特に好ましくは20μm〜100μmである。本発明においては、非常に薄い脆性フィルム(代表的にはガラスフィルム)を用いても、該脆性フィルムの破損が防止される。「脆性フィルムの厚み」とは、靭性フィルムが貼り付けられる部分の厚みである。
【0015】
上記脆性フィルム10の幅は、好ましくは50mm〜2000mmであり、より好ましくは100mm〜1000mmである。
【0016】
上記脆性フィルム10の長さは、好ましくは100m以上であり、より好ましくは500mm以上である。本発明によれば、長い脆性フィルムを供給して、破損なく、該脆性フィルムと靭性フィルムとの貼り合せを連続的に行うことができる。
【0017】
1つの実施形態においては、上記脆性フィルム10は、うねりを有して搬送されている。ニップロール等の押圧手段を用いる従来の貼り合せ方法では、脆性フィルムがうねりを有して搬送されている場合、押圧時の脆性フィルムの破損を回避することが困難であるが、本発明の製造方法によれば、このような場合でも、脆性フィルムの破損を防止して、脆性フィルムと靭性フィルムとを貼り合せることができる。なお、本明細書において、「うねりを有して搬送される」とは、脆性フィルムを側方から見たときに、図1のように、脆性フィルムが波状に搬送されている状態をいう。
【0018】
上記うねりは、脆性フィルムを構成する材料、製造工程における製造条件等に起因して発生するものであり、その大きさは特に制限されない。図2に示すように、うねりを曲率半径Rで表せば、該曲率半径Rは、1つの実施形態においては0.3mm以上であり、別の実施形態においては7mm以上であり、さらに別の実施形態においては17mm以上であり、さらに別の実施形態においては34mm以上である。上記曲率半径Rの上限は、例えば、170mmである。
【0019】
上記靭性フィルム20としては、脆性フィルムよりも破壊靱性値が大きいフィルムが用いられ得る。靭性フィルム20としては、例えば、破壊靭性値が2MPa/m1/2〜20MPa/m1/2であるフィルムが用いられ得、例えば、任意の適切な靭性材料から構成されるフィルムが用いられ得る。1つの実施形態においては、上記靭性フィルム20として樹脂フィルムが用いられる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ナイロン、セロファン、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0020】
1つの実施形態においては、上記靭性フィルムは、接着層を付与して、接着層付き靭性フィルムとして上記製造方法に供される。上記接着層を構成する材料としては、例えば、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。また、接着層を構成する材料として、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基等の環状エーテル基を有する樹脂を用いてもよい。また、硬化性の接着剤を用いてもよい。なお、本明細書において、接着層は粘着層を含む概念であり、接着剤は粘着剤を含む概念である。
【0021】
1つの実施形態においては、接着層付き靭性フィルムを用いる場合、好ましくは、長尺状の靭性フィルムを送り出し、靭性フィルム上に接着剤を塗布して接着層を形成し、その後、接着層付き靭性フィルム(靭性フィルム/接着層の積層体)を巻き取らず、連続的に、靭性フィルムと脆性フィルムとの貼り合せを行う。
【0022】
別の実施形態においては、長尺状の靭性フィルム(例えば、接着層を含まない靭性フィルム)を送り出した後、靭性フィルムと脆性フィルムとを貼り合せる前に、靭性フィルムおよび/または脆性フィルム上に接着剤を塗布する。
【0023】
接着剤の塗布方法としては、気体ドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティング法;フレキソ印刷等の凸版印刷法、ダイレクトグラビア印刷法、オフセットグラビア印刷法等の凹版印刷法、オフセット印刷法等の平版印刷法、スクリーン印刷法等の孔版印刷法等の印刷法が挙げられる。硬化性の接着剤を用いる場合、靭性フィルムと脆性フィルムとを貼り合せた後、接着層を硬化させ得る。硬化方法としては、例えば、紫外光照射および/または加熱処理により硬化させる方法が挙げられる。紫外光照射の照射条件は、代表的には、照射積算光量が100mJ/cm〜2000mJ/cmであり、好ましくは200mJ/cm〜1000mJ/cmである。
【0024】
上記靭性フィルム20の脆性フィルム10に対する接着力は、好ましくは0.005N/25mm〜10N/25mmである。靭性フィルムの接着力は、例えば、接着層を構成する材料等により調整することができる。1つの実施形態において、靭性フィルム20を再剥離させる必要がある場合、靭性フィルム20の脆性フィルム10に対する接着力は、好ましくは0.005N/25mm〜1.0N/25mmであり、より好ましくは0.05N/25mm〜0.9N/25mmである。接着力は、靭性フィルムを脆性フィルムに貼着して30分経過後に、粘着力測定装置(例えば、インストロン型引張試験機、島津製作所社製、オートグラフ)を用い、温度23℃、湿度50%RH、剥離方向180°、剥離速度300mm/分の条件にて、測定することができる。
【0025】
上記靭性フィルム20の厚みは、好ましくは3μm〜250μmであり、より好ましくは5μm〜250μmであり、さらに好ましくは20μm〜150μmである。上記靭性フィルムが基材と接着層とから構成される場合、該基材の厚みは、好ましくは2μm〜200μmであり、より好ましくは10μm〜100μmであり、接着層の厚みは、好ましくは1μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜30μmである。
【0026】
上記靭性フィルム20の幅は、上記脆性フィルム10の幅に対して、1%〜110%である。靭性フィルムの幅は、該靭性フィルムを貼り合せる目的に応じて、適切な幅とされる。例えば、脆性フィルムの幅方向端部の補強を目的とする場合、靭性フィルムの幅は、脆性フィルムの幅に対して、好ましくは1%〜20%であり、より好ましくは2%〜15%である。また、脆性フィルムの全面を補強する場合、靭性フィルムの幅は、脆性フィルムの幅に対して、好ましくは80%〜110%であり、より好ましくは90%〜100%である。
【0027】
上記靭性フィルム20の長さは、靭性フィルム10の長さに応じて、任意の適切な長さとされ得る。
【0028】
気体の吹き付けは、脆性フィルム10と靭性フィルム20とが十分に近づいた時点で行われる。脆性フィルム10と靭性フィルム20とが接する前に気体を吹き付けてよく、脆性フィルム10と靭性フィルム20とが接した後に気体を吹き付けてもよい。脆性フィルム10と靭性フィルム20とが接する前に気体を吹き付ける場合、脆性フィルム10と靭性フィルム20との距離(気体吹き付け前の距離、あるいは、気体を吹き付けていない場合の距離)が、例えば、0mmを超えて100mm以下(好ましくは0mmを超えて50mm以下、より好ましくは0mmを超えて20mm以下)となる箇所で気体の吹き付けが行われる。気体の吹き付けにより、脆性フィルム10と靭性フィルム20とが接することとなり、脆性フィルム10と靭性フィルム20との貼り合せが完了する。
【0029】
1つの実施形態においては、脆性フィルム10の靭性フィルム20とは反対側に、支持ロールまたは支持台を配置し、該支持ロールまたは支持台上で、気体の吹き付けを行う。このようにすれば、気泡のかみこみ等なく良好に、脆性フィルムと靭性フィルムとを貼り合せることができる。なお、図1においては、脆性フィルム10の靭性フィルム20とは反対側(すなわち、脆性フィルム10の下方)に、支持ロール30を配置した例を示している。
【0030】
気体の吹き付けは、任意の適切な気体噴射装置40を用いて行われ得る。1つの実施形態においては、貼り合せる靭性フィルムの全幅に気体を吹き付けるべく、例えば、幅方向に複数配列した気体噴射口を備える気体噴射装置が用いられる。別の実施形態においては、貼り合せる靭性フィルムの幅方向の一部(例えば、中央部)に気体を吹き付けるべく、例えば、長さ方向に複数配列した気体噴射口を備える気体噴射装置が用いられる。このような形態は、脆性フィルムまたは靭性フィルムの幅方向の一部(例えば、中央部分)に接着剤を塗布する場合に有効であり、接着剤が塗布された箇所に気体を吹き付けることにより、接着剤を塗り広げることができる。また、幅方向および長さ方向に複数配列した気体噴射口を備える気体噴射装置を用いてもよい。
【0031】
気体吹き付け時の気圧は、好ましくは0.01MPa〜1Mpaであり、より好ましくは0.05MPa〜0.8MPaであり、さらに好ましくは0.1MPa〜0.6MPaである。このような範囲であれば、シワ、気泡等の発生を抑制して、良好に脆性フィルムと靭性フィルムとを貼り合せることができる。
【0032】
気体吹き付け時の脆性フィルム10と気体噴射口31との距離は、好ましくは1mm〜500mmであり、より好ましくは1.5mm〜100mmであり、さらに好ましくは2mm〜50mmである。このような範囲であれば、シワ、気泡等の発生を抑制して、良好に脆性フィルムと靭性フィルムとを貼り合せることができる。
【0033】
1つの実施形態においては、気体の噴射方向は、図示例のように、脆性フィルム10の面(より詳細には、気体衝突位置における接平面)に略直交する。この実施形態においては、脆性フィルムの面(接平面)に対する気体の噴射角度は、脆性フィルム10の搬送方向において、好ましくは75°〜105°であり、より好ましくは80°〜100°であり、さらに好ましくは85°〜95°である。別の実施形態においては、気体の噴射方向は、脆性フィルム10の面(接平面)に対して斜め方向である。この実施形態において、脆性フィルムの面(接平面)に対する気体の噴射角度は、脆性フィルム10の搬送方向において、好ましくは30°以上75°未満または105°を超えて150°以下であり、45°〜70°または110°〜135°である。なお、ここでの角度は、搬送中の脆性フィルム側方から見た脆性フィルムの面(接平面)方向を基準に、反時計回りを正(+)とする角度である。したがって、脆性フィルムの面(接平面)方向に対して90°(絶対値)未満の角度で気体を噴射することは、脆性フィルムの搬送方向下流側から上流側に向けて気体を噴射することに相当する。
【0034】
本発明よれば、上記のようにして、脆性フィルムと靭性フィルムとの貼り合せが完了し、脆性フィルムと靭性フィルムとの積層体が得られ得る。本発明の製造方法によれば、脆性フィルムにかかる負荷が非常に小さくありながらも、靭性フィルムを良好に貼り合せることができる。1つの実施形態においては、脆性フィルムと靭性フィルムとの積層体はロール状に巻き取られ得る。別の実施形態においては、靭性フィルムは脆性フィルムの一時的な保護(例えば、脆性フィルム端部をスリットする際におけるスリット部分の保護)のために貼り合せられ、その後、脆性フィルム巻き取りの前に、靭性フィルムは剥離される。また、脆性フィルムと靭性フィルムとの積層体の製造において、上記の貼り合せ方法を2度用い、脆性フィルムの両面に靭性フィルムを有する積層体を製造してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
長尺状のガラスフィルム(厚み:100μm、幅:500mm、破壊靭性値:0.7MPa/m1/2)を、支持ロール上で水平方向に搬送させながら、該ガラスフィルムの上方から、ガラスフィルムに接着層付き靭性フィルムの接着層側を近づけて接触させ、接触点において、接着層付き靭性フィルムの上方(靭性フィルム側)から気体を吹き付けた。なお、接着層付き靭性フィルムは、PET(厚み:100μm、幅25mm、破壊靭性値:3MPa/m1/2)から形成される靭性フィルムと接着層(厚み:5μm)とから構成される。接着層はガラスフィルムと靭性フィルムとを接触させる直前に、靭性フィルムにエポキシ系接着剤を塗布して形成した。また、気圧は0.4MPaとし、気体噴射口とガラスフィルムとの距離は3mmとした。なお、ガラスフィルムは、曲率半径Rが3mmのうねりを有して搬送されていた。
本実施例においては、500m以上ガラスフィルムの破損なく、ガラスフィルムと靭性フィルムとを連続的に貼り合せることが可能であった。
【0037】
[比較例1]
実施例1と同様のガラスフィルムおよび靭性フィルムを用い、これらを1対のロール間(支持ロール/ニップロール間)で貼り合せた。ニップロールのゴム硬度は70度、ロール間でかかる線圧は2000Nとした。
本比較例においては、薄ガラスの破損が生じ、ガラスフィルムと靭性フィルムとを良好に貼り合せることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法は、表示素子の基板、有機EL素子の封止材、全前保護板等に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0039】
10 脆性フィルム
20 靭性フィルム

図1
図2