【実施例】
【0037】
実施例1.糞便試料の分離および精製
糞便試料200mgに緩衝溶液として10mMのトリス−塩酸(pH8以上)400μlおよび界面活性剤としてナトリウムドデシルスルフェート(SDS、AMRESCO)を緩衝溶液の体積基準の濃度が6%(v/v)になるように添加し、糞便試料および検測対象の破砕のために100μmガラスビード0.4g(DAIHAN科学)を投入した後、50Hzの条件で5分間ビードビーティング(Scientific Industries)を行った。その後、8,000rpmで1分間遠心分離(LABOGENE)して上層液を移し替え、分離された上層液に2.5Mの硫酸ナトリウム(Na
2SO
4、Sigma−Aldrich)溶液を添加して均一に混合されるように攪拌した後、再び8,000rpmで1分間遠心分離した。1分後、液体上段に不純物が浮かぶと、下段の溶液のみを新しいチューブに移した。移された溶液は、ブームテクノロジー(Boom technology)を用いて核酸を抽出した(文献[US005234809A]参考])。
【0038】
実施例2.界面活性剤の濃度に応じた糞便試料からのバクテリアおよび核酸の回収率の確認
2.1.界面活性剤の濃度を異にして糞便試料を分離および精製
糞便試料からSDS濃度に応じたバクテリアおよび核酸の回収率を確認するために、糞便試料200mgに10
6cfu/mlの濃度で準備したサルモネラ(salmonella、ATCC)または10
6cfu/mlの濃度で抽出した黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus、ATCC)のDNAを追加し、SDSを緩衝溶液の体積基準の各濃度が1.2%、3%、4%、5%、6%、10%、20%になるように添加することを除いては、前記実施例1のような全体工程を行った(
図1の(d)参照)。
【0039】
2.2.分離された試料から全体バクテリア量、バクテリア回収率、核酸回収率の測定
核酸抽出はブームテクノロジーを用いて核酸を抽出し、分離された核酸は全体バクテリア量を測定するためにユニバーサルバクテリアプライマ(Universal Bacteria primer)を用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行ってその量を比較し、バクテリアおよび核酸回収率は((抽出されたバクテリアまたは核酸の濃度)/(初期に添加されたバクテリアまたは核酸の濃度)*100(%))を用いて計算した。
【0040】
実験結果、SDSが6%の濃度で添加された場合において、全体バクテリア量の測定(
図1の(a)参照)、バクテリア回収率(
図1の(b)参照)、核酸回収率(
図1の(c)参照)が最も優れた効果を示した。また、糞便試料の抽出において最も多く用いられるMO BIO社で販売するキットと比較した時にも、全体緩衝溶液の体積基準の6%のSDSを用いた時に最も回収率が高く測定されることを確認した。
【0041】
実施例3.硫酸ナトリウム溶液の濃度に応じた糞便試料からのバクテリア回収量の確認
3.1.硫酸ナトリウム溶液の濃度を異にして糞便試料を分離および精製
効果的に糞便試料を分離しつつ核酸を抽出できる硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)溶液の濃度を確認するために、硫酸ナトリウム溶液の濃度別(0.25M(0.1X)、1.25M(0.5X)、および2.5M(1X)に異にして添加したことを除いては、前記実施例1のような全体工程を行った(
図2の(b)参照)。
【0042】
3.2.分離された試料から全体バクテリア量の測定
前記実施例2.2.に記載された方法によって全体バクテリア回収量を測定した結果、2.5M(最終濃度0.7M)の硫酸ナトリウム溶液を用いた場合の全体バクテリア回収量が最も高く示され(
図2の(a)参照)、2.5Mの場合にのみ糞便試料が溶液上段に浮かぶ結果を示した(
図2の(b)参照)。
【0043】
実施例4.熱処理に応じた核酸抽出量の確認
精製ステップ前に糞便試料に熱処理が必要であるか否かを確認するために(蓋が自ずから開かれない)40℃の条件で時間別(処理しない、5分、10分および20分)に熱処理を行ったことを除いては、前記実施例1および2のような全体工程を行って核酸抽出量を確認した。
【0044】
実験結果、現在の糞便を分離する過程で糞便試料を熱処理して核酸抽出を行う商業化されたキットのうちキアゲン社のキットとは異なり、糞便試料に熱処理をしないもの(0分)が核酸抽出量、バクテリア回収率およびDNA回収率が高く測定されることを確認した(
図3の(a)〜(c)参照)。
【0045】
実施例5.遠心分離強さに応じた核酸抽出量の確認
糞便試料を分離するための効果的な遠心分離強さを確認するために、遠心分離を行う強さを2,000rpm、4,000rpm、6,000rpmおよび8,000rpmの条件に異にすることを除いては、前記実施例1および2のような全体工程を行った。
【0046】
実験結果、遠心分離強さを8,000rpmの条件で遠心分離を行う場合、Ct(Threshold of Cycle)値が最も低く示され(
図4の(a)参照)、最も多い量の核酸が存在することを確認した。
【0047】
実施例6.対象試料の種類に応じたバクテリアおよび核酸回収率の確認
犬の糞便とヒトの糞便に応じたバクテリアおよび核酸の回収率を確認するために、各試料に対して前記実施例1および2と同様の実験を行う一方、試料の種類に関係なく最も多く用いられるMO BIO社のキットで同一の結果内容を測定した。
【0048】
実験結果、MO BIO社のキットと比較した時、全体バクテリア回収量、バクテリア回収率および核酸回収率の部分においていずれも優れた性能を示すことを確認した。
【0049】
実施例7.試料の量に応じたバクテリアおよび核酸回収率の確認
現在商業化されたキットは約200〜250mgの試料を用いるように求められているが、より少ない量の試料においても核酸抽出が可能であることを確認するために、犬とヒトの糞便2種の試料の量を異にすること、すなわち、10mg(糞便10mg+蒸留水190μl)、20mg(糞便20mg+蒸留水180μl)、50mg(糞便50mg+蒸留水150μl)、100mg(糞便100mg+蒸留水100μl)、150mg(糞便150mg+蒸留水50μl)、200mg(糞便200mg)および250mg(糞便250mg)の試料を用いたことを除いては、前記実施例1および2のような全体工程を行い、全体バクテリア回収量、バクテリア回収率および核酸回収率を比較した。
【0050】
実験結果、犬の糞便試料は50mg以上、ヒトの糞便試料は100mg以上が含まれた場合に不純物の分離が可能であり、これは、いずれも既存の販売中の商業キットが要求する試料の量より顕著に少ない試料の量だけで核酸の検出が可能であることを示し、糞便の量に関係なくいずれも優れた性能を示すことを確認した(
図6参照)。
【0051】
実施例8.血液試料の分離および精製の観察
前記糞便試料の分離に用いられた方法を複雑な試料のうち一つである血液(全血)試料にも適用して不純物の除去を確認した。商業化されたキットに勧められる血液試料の量は200μlであるため、試料の体積を200μlを基準にして実験を行った。
【0052】
ヒトの全血を用いて、各々20μl(全血20μl+蒸留水180μl)、50μl(全血50μl+蒸留水150μl)、100μl(全血100μl+蒸留水100μl)および200μl(全血200μl)を準備した。前記準備した試料を前記実施例1に記載された方法によって不純物を分離および精製した。実験結果、全血が100μl以上含まれた試料から不純物が分離および精製されることを確認した(
図7の(a)参照)。
【0053】
血液100μl試料を用いて、前記実施例2に記載された方法を用いて核酸回収率を確認した。実験結果、アデノウイルスはキアゲン社のDNAミニキットに対比して70%の回収率を示し、グラム陽性バクテリアの場合はキアゲン社のDNAミニキットを基準に約40倍の回収率を示した(
図7の(b)参照)。
【0054】
実施例9.土壌試料の分離および精製の観察
前記糞便試料の分離に用いられた方法をまた他の複雑な試料のうち一つである土壌試料にも適用して不純物の除去を確認した。先ず、それぞれ異なる場所から採取した2種の土壌試料250mgに蒸留水を100μl添加した試料を準備し、前記実施例1に記載された方法によって不純物を分離および精製した。実験結果、2種の土壌の両方から不純物の分離および精製が行われたことを確認した(
図8の(a)参照)。
【0055】
土壌250mg試料を用いて、前記実施例2に記載された方法を用いて核酸回収率を確認した。実験結果、2種の土壌試料の両方でグラム陽性バクテリアのうち一つである黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対してMO BIO社のキットを基準に約2倍の回収率を示した(
図8の(b)参照)。
【0056】
実施例10.ビード大きさに応じた糞便試料からの核酸抽出の確認
ガラスビードを用いた糞便試料の破砕ステップにおいて、様々なビード大きさに応じた糞便試料からの核酸抽出率を確認するために次のような実験を行った。
【0057】
直径2mm、0.5mmおよび0.1mmのビードとこれらのビードの2mm+0.5mm、2mm+0.1mm、0.5mm+0.1mm混合物を各々同量添加し、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を同一の濃度で入れた糞便を破砕した後、糞便に存在する核酸抽出率と黄色ブドウ球菌核酸回収率を確認した(
図9参照)。
【0058】
実験結果、直径2mmのビードでは糞便の破砕が部分的によく行われないことを確認し、これは核酸抽出率においても他の大きさのビードに比べて低い効率を示した。したがって、核酸回収効率に優れたビードの大きさは直径0.1mm〜0.5mm大きさのビードまたはこれらの混合物であることを確認した。
【0059】
実施例11.濾過および熱処理による核酸抽出の確認
11.1.濾過による試料の精製
既存の複雑試料を分離する方法において、糞便試料および複雑試料を破砕した後に行われる遠心分離を用いた第1精製過程を非遠心分離方法を用いて精製することができる。第1精製過程が濾過に代替できるか否かを確認するために次のような実験を行った。
【0060】
前記実施例1において遠心分離の代わりに濾過を用いる方法を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法により実験を行った。実施例1に記載した方法により糞便試料および複雑試料対象を破砕した後、ビードおよび大きい不純物が抜け出ない隙間のある物体を通過させて1次精製された溶液を得た。前記精製された溶液を既存の遠心分離を用いて再精製過程を経、再精製された溶液から核酸回収を行った。
【0061】
三つの異なる模様および形態を有した種類の糞便試料を用いて実験した結果、核酸回収率において遠心分離方法に比べて有意な差を示さなかったため、代替可能な工程であることを確認した(
図10参照)。
【0062】
11.2.熱による試料の再精製
前記複雑試料を分離する方法には遠心分離を用いて再精製するが、遠心分離を用いずに熱処理することによって不純物を再精製した。
【0063】
糞便試料200mgをpHが8以上の緩衝剤と6%(v/v)の界面活性剤SDSと糞便試料の破壊および検測対象の破壊のための70〜100μmのガラスビード0.4gをチューブに入れ、5分間ビードビーティングを行った。その後、遠心分離を用いて大きい不純物とガラスビードを除いた溶液を新しいチューブに移し替え、2.5MのNa
2SO
4溶液を添加して熱処理を各々45℃、55℃、65℃、75℃、85℃および95℃で5分間または10分間行った後、遠心分離を用いて再精製した結果と比較観察した。また、前記温度で10分間処理した糞便試料にPCRを行って核酸抽出濃度(Total bacteria)を測定して遠心分離による試料と比較した。
【0064】
実験結果、様々な温度条件においても糞便の分離が成功的に行われることが確認し、その差は遠心分離によるものと有意な差は示さなかった(
図11の(a)参照)、同様の方法を血液試料にも適用した結果、遠心分離の代わりに熱処理によって不純物が成功的に分離されることを確認した(
図11の(b)参照)。また、糞便試料に対しPCRを行った結果、温度に影響なく全ての温度において遠心分離と類似したCt値を示すことを確認した(
図11の(c)参照)。
【0065】
11.3.濾過および熱処理による糞便試料の分離および精製
三つの異なる模様および形態を有した糞便に対して、前記実施例1において、1次遠心分離の代わりに濾過を、2次遠心分離の代わりに熱処理を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法によって実験を行った。
【0066】
実験結果、精製および再精製ステップを全て遠心分離を用いたものと類似した結果を示すことを確認し、したがって、非遠心分離を用いた複雑試料の分離および精製が可能であることを確認した(
図12参照)。
【0067】
以上、本発明についてその好ましい実施例を中心に説明した。本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者であれば、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内で変形された形態に実現できることを理解するはずである。したがって、開示された実施例は、限定的な観点でなく説明的な観点で考慮しなければならない。本発明の範囲は前述した詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出される全ての変更または変形された形態は本発明の範囲に含まれるものとして解釈しなければならない。