特許第6818053号(P6818053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロレアルの特許一覧

特許6818053繊維を長くする及び/又は濃くするための方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818053
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】繊維を長くする及び/又は濃くするための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20210107BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210107BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/81
   A61Q1/10
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-567054(P2018-567054)
(86)(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公表番号】特表2019-522655(P2019-522655A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2017065451
(87)【国際公開番号】WO2017220743
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2018年12月21日
(31)【優先権主張番号】1655881
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロール・ドーベルシー
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−225867(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/091513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00− 8/99
A61Q1/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞼への「つけ睫毛」の接着、又は既存のケラチン繊維への人工繊維の接着により、ケラチン物質上の、繊維を長くする及び/又は濃くするための方法であって、少なくとも
- 1種の揮発性炭化水素系油と、
- 安定剤で表面安定化されている少なくとも1種のポリマーの粒子であって、粒子のポリマーが、(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルポリマーであり、安定剤が、(メタ)アクリル酸イソボルニルホモポリマー、及び(メタ)アクリル酸イソボルニル/(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルの質量比4超で存在する(メタ)アクリル酸イソボルニルと(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルとの統計コポリマーから選択される(メタ)アクリル酸イソボルニルポリマーである、粒子と、
- 疎水性皮膜形成ポリマーと、
を含む組成物を使用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記粒子が、少なくとも揮発性炭化水素系油を含有する非水性媒体中で分散した状態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭化水素系油が、組成物の総質量に対して、20質量%〜70質量%の範囲の含有量で組成物中に存在する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマーの粒子が、組成物の総質量に対して、3質量%〜40質量%の範囲の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
粒子のポリマーが、1種(又は複数)のアクリル酸メチル及び/又はアクリル酸エチルポリマーであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子のポリマーが、エチレン性不飽和酸モノマー又はその無水物を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
粒子のポリマーが、ポリマーの総質量に対して、80質量%〜100質量%の(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキル、及び0質量%〜20質量%のエチレン性不飽和酸モノマーを含み、粒子のポリマーが、
- アクリル酸メチルホモポリマー、
- アクリル酸エチルホモポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチルコポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/無水マレイン酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸エチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/無水マレイン酸コポリマー、
- アクリル酸エチル/無水マレイン酸コポリマー
から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
安定剤が、(メタ)アクリル酸イソボルニル/(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルの質量比5以上で存在する(メタ)アクリル酸イソボルニルと(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルとの統計コポリマーであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
安定剤が、
- アクリル酸イソボルニルホモポリマー、
- アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチルの統計コポリマー、
- アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル/アクリル酸エチルの統計コポリマー、
- メタクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチルの統計コポリマー
から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
安定剤+粒子のポリマーの組合せが、安定剤+粒子のポリマーの組合せの総質量に対して、10質量%〜50質量%の重合(メタ)アクリル酸イソボルニル、及び50質量%〜90質量%の重合(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルを含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
組成物が、水を含まないことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
疎水性皮膜形成ポリマーが、炭化水素系ジブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
疎水性皮膜形成ポリマーが、組成物の総質量に対して、1質量%〜16質量%の範囲の含有量で組成物中に存在する炭化水素系ブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
疎水性皮膜形成ポリマーが、インデン炭化水素系樹脂、脂肪族ペンタジエン樹脂、ペンタンジエンとインデンとの混合樹脂、シクロペンタンジエンダイマーのジエン樹脂、イソプレンダイマーのジエン樹脂、及びそれらの混合物から選択される炭化水素系樹脂であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
疎水性皮膜形成ポリマーが、組成物の総質量に対して、5質量%〜55質量%の範囲の含有量で存在する炭化水素系樹脂であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマー及びインデン炭化水素系樹脂を含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、少なくとも1種の着色剤も含むことを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質及び/又はケラチン繊維をメイクアップする分野に関し、接着性化粧用組成物を使用する、ケラチン物質上の、特に皮膚上及び/又はケラチン繊維上の、より具体的にはケラチン繊維上の繊維を長くする及び/又は濃くするための方法を提案することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
用語「ケラチン物質」は、好ましくは、ヒトのケラチン物質、とりわけケラチン繊維を意味する。
【0003】
用語「ケラチン繊維」は、特に睫毛及び/又は眉毛を意味し、好ましくは睫毛を意味する。本発明の目的のために、この用語「ケラチン繊維」は、合成つけ睫毛にまでも及ぶ。
【0004】
本発明は、ケラチン物質をメイクアップするために最も特に有利であると分かる。
【0005】
一般に、マスカラの使用者は、長くする及び/又は濃くすることによって睫毛がよりはっきり見えるようにしようとする。
【0006】
マスカラ組成物の代替として、瞼への「つけ睫毛」の接着、又は既存のケラチン繊維への人工繊維の接着がある。
【0007】
これは、ケラチン繊維全体を実際に変容させるが、プロによる処置を必要とし、したがって毎日の使用は制限される。
【0008】
実際のところ、これらの増大用の物品は、一般に、この使用に適した接着剤組成物によってケラチン物質上に保持される。
【0009】
直面する1つの難しさは、毒物学的視点からリスクを伴うことなく(シアノアクリレート接着剤とは異なり)、皮膚又は睫毛に適用することができる良好な接着性を有する組成物を見つけ出すことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許第3014875号
【特許文献2】特許出願US-A-2002/005562
【特許文献3】特許US-A-5221534
【特許文献4】特許出願WO2008/155059
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、良好な接着効果を有しつつ、組成物の良好な広がりを得るのに十分な流動性を有する、毒物学的リスクがない組成物、とりわけ化粧用組成物を使用する、ケラチン物質上の繊維を長くする及び/又は濃くするための方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、良好な接着効果を有しつつ、組成物の良好な広がりを得るのに十分な流動性を有する、毒物学的リスクがない組成物、とりわけ化粧用組成物を使用する、瞼への「つけ睫毛」の接着、又は既存のケラチン繊維への人工繊維の接着のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、その第1の態様によれば、ケラチン物質上の、特に皮膚上及び/又はケラチン繊維上の、より具体的にはケラチン繊維上の、好ましくは睫毛又は眉毛上の、より優先的には睫毛上の、繊維を長くする及び/又は濃くするための方法であって、組成物、とりわけ化粧用組成物、特にメイクアップ組成物であって、少なくとも
- 1種の揮発性炭化水素系油と、
- 安定剤で表面安定化されている少なくとも1種のポリマーの粒子であって、粒子のポリマーが、(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルポリマーであり、安定剤が、(メタ)アクリル酸イソボルニルホモポリマー、及び(メタ)アクリル酸イソボルニル/(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルの質量比4超で存在する(メタ)アクリル酸イソボルニルと(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルとの統計コポリマーから選択される(メタ)アクリル酸イソボルニルポリマーである、粒子と、
- 好ましくは炭化水素系ブロックコポリマー、炭化水素系樹脂、及びそれらの混合物から選択される、疎水性皮膜形成ポリマーと、を含む組成物を使用することを特徴とする、方法に関する。
【0014】
有利な変形例によれば、該粒子は、少なくとも揮発性炭化水素系油を含有する非水性媒体中で分散した状態にある。
【0015】
実際のところ、大方の予想に反して、また以下の実験セクションにおいて立証されるように、本発明者らは、以下に規定される少なくとも1種の炭化水素系油、以下に規定される少なくとも1種の安定化ポリマーの少なくとも特定の粒子、及び以下に規定される少なくとも1種の特定の疎水性皮膜形成ポリマーの存在により、流動性に関して予測された特性を保持する配合物を得ることが可能になり、且つ増強されたより長く持続する接着性を得ながら、組成物の良好な広がりを得ることが有利に可能になることを見出した。
【0016】
実際に、本発明による組成物は、非常に有効な接着効果を有し、毒物学的リスクなしに、「つけ睫毛」の瞼への接着、又は人工繊維の既存のケラチン繊維への接着を可能にする。
【0017】
仏国特許第3014875号は、本発明において考慮されるもの等の粒子を記載している。しかしながら、この文献に例示される組成物は、疎水性皮膜形成ポリマーを含有せず、「つけ睫毛」の瞼への接着、又は人工繊維の既存のケラチン繊維への接着のための接着性組成物として適用されておらず、適応されていない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
疎水性皮膜形成ポリマー
前述のように、本発明によるプロセスの組成物は、少なくとも1種の疎水性皮膜形成ポリマーを含む。
【0019】
本発明に好適である疎水性皮膜形成ポリマーは、好ましくは炭化水素系ブロックコポリマー、炭化水素系樹脂、及びこれらの混合物から選択される。
【0020】
本特許出願において、用語「皮膜形成ポリマー」は、それ自体によって、又は補助的な皮膜形成剤の存在下で、巨視的に連続している付着物、好ましくは凝集性付着物、更により良好には、例えば前記付着物が、こびりつかない表面、例えばテフロン加工された又はシリコーン被覆された表面上に注ぐことによって調製される場合に、該付着物が分離し、また個別に扱うことができるような凝集性及び機械的特性を有する付着物を形成することができるポリマーを意味する。
【0021】
用語「疎水性」又は「非水溶性」ポリマーは、そのポリマーが、下記の定義に従って、水に可溶性ではないことを意味する。
【0022】
用語「水溶性ポリマー」は、そのポリマーが、室温(25℃、1気圧)で、5質量%の固形分含有量において、pHを変更することなく、水中又は50/50の体積混合比の水及びエタノール混合物中に、或いは、水及びイソプロパノールの混合物中に溶解することを意味する。ポリマーは、溶液中に入れたときに肉眼で見える沈殿物又は凝集体を形成しない場合、したがって透明な溶液を生じる場合に、可溶性と考えられる。
【0023】
1.炭化水素系ブロックコポリマー
一実施形態によれば、本発明による方法の組成物は、少なくとも1種の炭化水素系ブロックコポリマーを含むことができる。
【0024】
用語「ブロック」ポリマーは、少なくとも2つの別個のブロック、好ましくは少なくとも3つの別個のブロックを含むポリマーを意味する。
【0025】
本発明に好適である炭化水素系ブロックコポリマーは、好ましくは、油性相中に可溶性又は分散性である。
【0026】
炭化水素系ブロックコポリマーは、とりわけ、ジブロックコポリマーであってもよい。
【0027】
そのような炭化水素系ブロックコポリマーについては特許出願US-A-2002/005562及び特許US-A-5221534に記載されている。
【0028】
コポリマーは、そのガラス転移温度が好ましくは20℃未満、好ましくは0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下である少なくとも1種のブロックを有してもよい。該ブロックのガラス転移温度は、-150℃から20℃の間、とりわけ-100℃から0℃の間とすることができる。
【0029】
本発明による方法の組成物中に存在する炭化水素系ブロックコポリマーは、オレフィンの重合により形成された非晶質コポリマーであってよい。オレフィンは、とりわけ、エラストマー性のエチレン性不飽和モノマーであってもよい。
【0030】
用語「非晶質ポリマー」は、結晶形を有さないポリマーを意味する。
【0031】
挙げることができるオレフィンの例には、とりわけ1つ又は2つのエチレン性不飽和を含有し、2〜5個の炭素原子を有する、エチレン性カーバイドモノマー、例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン又はペンタジエンが含まれる。
【0032】
有利には、炭化水素系ブロックコポリマーは、スチレン及びオレフィンの、非晶質ブロックコポリマーである。
【0033】
少なくとも1つのスチレンブロックと、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン及びイソプレン又はそれらの混合物から選択される単位を含む少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマーが、とりわけ好ましい。
【0034】
好ましい一実施形態によれば、炭化水素系ブロックコポリマーは、モノマーの重合後に残っているエチレン性不飽和を減らすために水添される。
【0035】
特に、炭化水素系ブロックコポリマーは、スチレンブロック及びエチレン/C3〜C4アルキレンブロックを含有する任意選択で水添されたコポリマーである。
【0036】
好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物は、好ましくは水添され、好ましくはスチレン-エチレン/プロピレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブタジエンコポリマー及びスチレン-エチレン/ブチレンコポリマーから選択される少なくとも1種のジブロックコポリマーを含む。ジブロックポリマーはとりわけ名称Kraton(登録商標)G1701EでKraton Polymers社によって販売されている。
【0037】
上記のようなジブロックコポリマー、特にスチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマーは、有利には、炭化水素系ブロックコポリマーとして使用される。
【0038】
特に、炭化水素系ブロックコポリマーは、組成物の総質量に対して、0質量%〜18質量%の範囲、好ましくは1質量%〜16質量%の範囲、更により有利には、組成物の総質量に対して2質量%〜16質量%の含有量で組成物中に存在してもよい。
【0039】
2.炭化水素系樹脂
前述のように、特許請求される組成物は、少なくとも1種の炭化水素系樹脂、とりわけ以下に詳説されるものを含んでもよい。
【0040】
炭化水素系樹脂は、それらが含んでいるモノマーの種類に応じて以下のように分類できる低分子量のポリマーから好ましくは選択される:
- インデン炭化水素系樹脂、好ましくは、例えば、大部分のインデンモノマーとスチレン、メチルインデン、及びメチルスチレンから選択される少量のモノマーとの重合から得られる樹脂、並びにそれらの混合物。これらの樹脂は任意選択で水添されていてよい。これらの樹脂は290〜1,150g/molの範囲の分子量を有してよい。
【0041】
挙げることができるインデン樹脂の例としては、参照名Escorez 7105でExxon Chem.社によって、Nevchem 100及びNevex 100でNeville Chem.社によって、Norsolene S105でSartomer社によって、Picco 6100でHercules社によって、並びにResinallでResinall Corp.社によって販売されているもの、又は名称「Regalite」でEastman Chemical社によって販売されている水添インデン/メチルスチレン/スチレンコポリマー、特にRegalite R 1100、Regalite R 1090、Regalite R-7100、Regalite R1010炭化水素樹脂及びRegalite R1125炭化水素樹脂が挙げられる;
- 脂肪族ペンタンジエン樹脂、例えば大部分の1,3-ペンタンジエン(trans-又はcis-ピペリレン)モノマーとイソプレン、ブテン、2-メチル-2-ブテン、ペンテン、及び1,4-ペンタンジエンから選択される少量のモノマーとの重合から得られるもの、並びにそれらの混合物。これらの樹脂は1,000〜2,500g/molの範囲の分子量を有し得る。
【0042】
こうした1,3-ペンタンジエン樹脂は、例えば参照名Piccotac 95でEastman Chemical社によって、Escorez 1304でExxon Chemicals社によって、Nevtac 100でNeville Chem.社によって、又はWingtack 95でGoodyear社によって販売されている;
- ペンタンジエンとインデンとの混合樹脂、これは、上に記載のもの等のペンタンジエンモノマーとインデンモノマーとの混合物の重合から得られる、例えば参照名Escorez 2101でExxon Chemicals社によって、Nevpene 9500でNeville Chem.社によって、Hercotac 1148でHercules社によって、Norsolene A 100でSartomer社によって、並びにWingtack 86、Wingtack Extra及びWingtack PlusでGoodyear社によって販売されている樹脂、
- シクロペンタンジエンダイマーのジエン樹脂、例えばインデン及びスチレンから選択される第1のモノマーとジシクロペンタンジエン、メチルジシクロペンタンジエン、及び他のペンタンジエンダイマー等のシクロペンタンジエンダイマーから選択される第2のモノマーとの重合から得られるもの、並びにそれらの混合物。これらの樹脂、例えば参照名Betaprene BR 100でArizona Chemical Co.社によって、Neville LX-685-125及びNeville LX-1000でNeville Chem.社によって、Piccodiene 2215でHercules社によって、Petro-Rez 200でLawter社によって、又はResinall 760でResinall Corp.社によって販売されているものは、一般に500〜800g/molの範囲の分子量を有する;
- イソプレンダイマーのジエン樹脂、例えばα-ピネン、リモネンから選択される少なくとも1種のモノマーの重合から得られるテルペン系樹脂、並びにそれらの混合物。これらの樹脂は300〜2000g/molの範囲の分子量を有し得る。そのような樹脂は、例えば名称Piccolyte A115及びS125でHercules社によって、又はZonarez 7100若しくはZonatac 105 LiteでArizona Chem社によって販売されている。
【0043】
好ましい実施形態によれば、炭化水素系樹脂は、室温(20℃)で固体である炭化水素系樹脂から選択される。
【0044】
好ましい実施形態によれば、炭化水素系樹脂は、インデン炭化水素系樹脂、脂肪族ペンタジエン樹脂、ペンタンジエンとインデンとの混合樹脂、シクロペンタンジエンダイマーのジエン樹脂、及びイソプレンダイマーのジエン樹脂、並びにそれらの混合物から選択される。
【0045】
好ましくは、組成物は、前に記載された炭化水素系樹脂から、とりわけインデン炭化水素系樹脂及び脂肪族ペンタジエン樹脂、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む。好ましい一実施形態によれば、炭化水素系樹脂は、インデン炭化水素系樹脂から選択される。
【0046】
好ましい実施形態によれば、樹脂は、水添インデン/メチルスチレン/スチレンコポリマーから選択される。
【0047】
特に、Regalite R 1100 CG炭化水素樹脂、Regalite R 1100、Regalite R 1090、Regalite R-7100、Regalite R1010炭化水素樹脂及びRegalite R1125炭化水素樹脂等、名称RegaliteでEastman Chemical社によって販売されているもの等、水添インデン/メチルスチレンスチレンコポリマーが使用されてよい。
【0048】
本発明による組成物は、組成物の総質量に対して、5質量%〜50質量%、好ましくは5質量%〜45質量%、更により優先的には8質量%〜40質量%の炭化水素系樹脂を含んでいてもよい。
【0049】
本発明による方法では、炭化水素系樹脂が、インデン炭化水素系樹脂、脂肪族ペンタジエン樹脂、ペンタンジエンとインデンとの混合樹脂、シクロペンタンジエンダイマーのジエン樹脂、イソプレンダイマーのジエン樹脂、及びそれらの混合物から、好ましくはインデン炭化水素系樹脂、ペンタジエン脂肪族樹脂、及びそれらの混合物から、より優先的には、インデン炭化水素系樹脂から選択されることが好ましい。
【0050】
特に、炭化水素系樹脂は、組成物の総質量に対して、0質量%〜60質量%の範囲、好ましくは5質量%〜55質量%、更により優先的には8質量%〜55質量%の含有量で存在する。
【0051】
炭化水素系樹脂は、組成物の総質量に対して、0質量%〜70質量%の範囲、好ましくは5質量%〜55質量%、更により優先的には10質量%〜40質量%の含有量で存在する。
【0052】
特に好ましい実施形態によれば、本発明による方法の組成物は、スチレン-エチレン/プロピレンジブロックコポリマー及びインデン炭化水素系樹脂を含む。
【0053】
本発明によれば、疎水性皮膜形成ポリマーは、粒子のポリマーとは異なる。したがって、本発明による組成物は、安定剤で表面安定化されているポリマー粒子及び少なくとも1種の疎水性皮膜形成ポリマーの両方を含む。
【0054】
炭化水素系油
本発明によるプロセスの組成物は、炭化水素系油を含む。
【0055】
この油は、揮発性(25℃で測定される、0.13Pa以上の蒸気圧)であっても不揮発性(25℃で測定される、0.13Pa未満の蒸気圧)であってもよい。
【0056】
本発明による組成物は、少なくとも1種の揮発性炭化水素系油を含む。
【0057】
炭化水素系油は、室温(25℃)で液体である油(非水性化合物)である。
【0058】
用語「炭化水素系油」は、炭素及び水素原子、並びに任意選択で酸素及び窒素原子から本質的に形成され、又は更にそれらからなり、ケイ素又はフッ素原子を含有しない油を意味する。これは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含有してもよい。好ましくは、炭化水素系油は、炭素及び水素原子のみから形成されている。
【0059】
揮発性炭化水素系油は、以下から選択することができる。
8〜16個の炭素原子を有する炭化水素系油、とりわけ、
- 分岐状C8〜C16アルカン、例えば石油由来のC8〜C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られている)、例えばイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られている)、イソデカン、イソヘキサデカン及び、例えば、Isopar又はPermethylの商品名で販売されている油、
- 直鎖状アルカン、例えば、Sasol社によりParafol 12-97及びParafol 14-97の参照名でそれぞれ販売されているn-ドデカン(C12)及びn-テトラデカン(C14)、及びそれらの混合物、ウンデカン-トリデカン混合物、Cognis社による出願WO2008/155059の実施例1及び2において得られたn-ウンデカン(C11)及びn-トリデカン(C13)の混合物、並びにそれらの混合物、
- 短鎖エステル(合計で3〜8個の炭素原子を含有する)、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル又は酢酸n-ブチル、及び
- それらの混合物。
【0060】
より具体的には、揮発性炭化水素系油の含有量は、組成物の総質量に対して、20質量%〜70質量%、好ましくは30質量%〜70質量%の範囲である。
【0061】
この炭化水素系油は、全体的に又は部分的に表面安定化ポリマー粒子を有してもよく、それは特に、これらの粒子が、安定化ポリマー粒子の事前に調製された分散体の形態で組成物中に導入される場合である。この場合、組成物中に存在する炭化水素系油は、少なくともポリマー粒子の分散体の非水性媒体を表す。
【0062】
有利には、炭化水素系油は、無極性である(したがって、炭素及び水素原子のみから形成される)。炭化水素系油は、好ましくは、8〜16個の炭素原子、より良好には12〜16個の炭素原子を有する炭化水素系油、特に先に記載された無極性油から選択される。
【0063】
優先的には、炭化水素系油は、イソドデカンである。
【0064】
より具体的には、イソドデカンの含有量は、組成物の総質量に対して、20質量%〜70質量%、好ましくは25質量%〜70質量%、更により優先的には30質量%〜70質量%の範囲である。
【0065】
好ましくは、炭化水素系油、特にイソドデカンが、組成物の唯一の油を構成するか、又は組成物に存在し得る追加の油に対して優勢な質量含有量で存在する。
【0066】
したがって、特定の実施形態によれば、炭化水素系油は、本発明によるプロセスの組成物中に、組成物の総質量に対して20質量%〜70質量%、好ましくは25質量%〜70質量%、更により優先的には30質量%〜70質量%の範囲の含有量で存在し、炭化水素系油は、好ましくは、無極性であり、より優先的には揮発性であり、更により優先的には8〜16個の炭素原子を有し、又は更により良好には、イソドデカンである。
【0067】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物が1種又は複数の不揮発性油を含有する場合、それらの含有量は、有利には、組成物の総質量に対して、10質量%を超えることはなく、好ましくは5質量%を超えることはなく、より良好には組成物の総質量に対して2質量%未満であり、又は更に不揮発性油を含まない。
【0068】
ポリマー粒子
本発明によるプロセスの組成物は更には、少なくとも1種の表面安定化ポリマーの、略球状の粒子を含む。
【0069】
好ましくは、粒子は、有利には、先に規定された少なくとも1種の炭化水素系油を含有する油性媒体中で、少なくとも1種の表面安定化ポリマーの、略球状の粒子が分散した形態で組成物中に導入される。したがって、分散体は、組成物中に導入される前に別個に調製されることが好ましい。
【0070】
粒子のポリマーは、(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルポリマーである。
【0071】
(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルモノマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸tert-ブチルから選択され得る。
【0072】
アクリル酸C1〜C4アルキルモノマーが、有利には使用される。
【0073】
優先的には、粒子のポリマーは、アクリル酸メチル及び/又はアクリル酸エチルポリマーである。
【0074】
粒子のポリマーはまた、とりわけ少なくとも1個のカルボン酸、リン酸又はスルホン酸官能基を含むエチレン性不飽和酸モノマー、例えば、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸又はアクリルアミドグリコール酸、及びその塩から選択される、エチレン性不飽和酸モノマー又はその無水物を含み得る。
【0075】
好ましくは、エチレン性不飽和酸モノマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸から選択される。
【0076】
塩は、アルカリ金属、例えば、ナトリウム又はカリウムの塩;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム、マグネシウム又はストロンチウムの塩;金属塩、例えば、亜鉛、アルミニウム、マンガン又は銅;式NH4+のアンモニウム塩;第四級アンモニウム塩;有機アミンの塩、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン又はトリス(2-ヒドロキシエチル)アミンの塩;リシン又はアルギニン塩から選択され得る。
【0077】
したがって、粒子のポリマーは、ポリマーの総質量に対して、80質量%〜100質量%の(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルと、0質量%〜20質量%のエチレン性不飽和酸モノマーとを含む、又はそれらから本質的になってもよい。
【0078】
本発明の第1の実施形態によれば、ポリマーは、1種又は複数の(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルモノマーのポリマーから本質的になる。
【0079】
本発明の第2の実施形態によれば、ポリマーは、(メタ)アクリル酸C1〜C4と(メタ)アクリル酸又は無水マレイン酸とのコポリマーから本質的になる。
【0080】
粒子のポリマーは、下記から選択することができる。
- アクリル酸メチルホモポリマー、
- アクリル酸エチルホモポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチルコポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/無水マレイン酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸エチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/無水マレイン酸コポリマー、
- アクリル酸エチル/無水マレイン酸コポリマー。
【0081】
粒子のポリマーは、ポリマーの総質量に対して、好ましくは80質量%〜100質量%の(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルと、0質量%〜20質量%のエチレン性不飽和酸モノマーとを含み、粒子のポリマーは、下記から選択される。
- アクリル酸メチルホモポリマー、
- アクリル酸エチルホモポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチルコポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/無水マレイン酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸エチル/アクリル酸コポリマー、
- アクリル酸メチル/無水マレイン酸コポリマー、
- アクリル酸エチル/無水マレイン酸コポリマー。
【0082】
有利には、粒子のポリマーは、非架橋ポリマーである。
【0083】
粒子のポリマーは、好ましくは、2000〜10000000の範囲、好ましくは150000〜500000の範囲の数平均分子量を有する。
【0084】
粒子分散体の場合、粒子のポリマーは、分散体の総質量に対して、21質量%〜58.5質量%の範囲、好ましくは36質量%〜42質量%の範囲の含有量で、分散体中に存在し得る。
【0085】
安定剤は、(メタ)アクリル酸イソボルニルホモポリマー、及び(メタ)アクリル酸イソボルニル/(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルの質量比4超、好ましくは4.5超、更により有利には5以上で存在する、(メタ)アクリル酸イソボルニルと(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルとの統計コポリマーから選択される(メタ)アクリル酸イソボルニルポリマーである。有利には、前記質量比は、4.5〜19、好ましくは5から19、より具体的には5〜12の範囲である。
【0086】
したがって、特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、1種又は複数の安定剤を含み、前記安定剤は、(メタ)アクリル酸イソボルニル/(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルの質量比5以上で存在する(メタ)アクリル酸イソボルニルと(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルとの統計コポリマーである。
【0087】
有利には、安定剤は、先に記載された質量比の
- アクリル酸イソボルニルホモポリマー
- アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチルの統計コポリマー
- アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル/アクリル酸エチルの統計コポリマー
- メタクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチルの統計コポリマー
から選択される。
【0088】
安定化ポリマーは、好ましくは、10000〜400000の範囲、好ましくは20000〜200000の範囲の数平均分子量を有する。
【0089】
安定剤は、ポリマー粒子の表面と接触しており、したがって、これらの粒子を表面で安定化して、特に、これらの粒子を分散体の非水性媒体中で分散した状態で保持することが可能になる。
【0090】
有利には、分散体中に存在する安定剤+粒子のポリマーの組合せは、特に、安定剤+粒子のポリマーの組合せの総質量に対して、10質量%〜50質量%の重合(メタ)アクリル酸イソボルニル、及び50質量%〜90質量%の重合(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルを含む。
【0091】
優先的には、分散体中に存在する安定剤+粒子のポリマーの組合せは、特に、安定剤+粒子のポリマーの組合せの総質量に対して、15質量%〜30質量%の重合(メタ)アクリル酸イソボルニル、及び70質量%〜85質量%の重合(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルを含む。
【0092】
好ましくは、安定剤は、炭化水素系油中に可溶性であり、特にイソドデカン中に可溶性である。
【0093】
本発明の範囲を限定するべきではない理論に従って、本発明者らは、(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルポリマーの表面安定化が、安定剤の(メタ)アクリル酸C1〜C4アルキルポリマー粒子上への表面吸着の現象から生じるとの仮説を提唱する。
【0094】
ポリマー粒子が、事前調製された分散体の形態で組成物中に提供されるとき、このポリマー分散体の油性媒体は、第1の炭化水素系油を含む。その性質についてこの油に関して以前示されたものを参照してもよい。
【0095】
有利には、炭化水素系油は、無極性であり、好ましくは、8から16個の炭素原子を有する炭化水素系油、特に先に記載された無極性油から選択される。
【0096】
優先的には、炭化水素系油は、イソドデカンである。
【0097】
特に分散体中のポリマー粒子は、好ましくは、50〜500nmの範囲、とりわけ75〜400nmの範囲、更により良好には100〜250nmの範囲の平均サイズ、とりわけ数平均サイズを有する。
【0098】
一般に、本発明に好適であるポリマー粒子の分散体は、以下の様式で調製することができ、これは一例として示される。
【0099】
重合は、分散体で実施してもよく、すなわち、形成したポリマーを沈殿させ、形成された粒子を安定剤で保護することによる。
【0100】
第1の工程では、合成溶媒として公知の溶媒中で安定化ポリマーの構成モノマーをフリーラジカル開始剤と混合し、これらのモノマーを重合することによって、安定化ポリマーを調製する。第2の工程では、粒子のポリマーの構成モノマーを形成された安定化ポリマーに添加し、ラジカル開始剤の存在下でこれらの添加されたモノマーの重合を実施する。
【0101】
非水性媒体が不揮発性炭化水素系油である場合、重合は、無極性有機溶媒(合成溶媒)中で実施し、続いて、不揮発性炭化水素系油(これは前記合成溶媒と混和性であるべきである)を添加し、合成溶媒を選択的に留去することができる。
【0102】
したがって、安定化ポリマーのモノマー及びラジカル開始剤がそれに可溶性であり、且つ得られたポリマー粒子がそれに不溶性であり、その結果、その形成中に沈殿するような合成溶媒が選択される。
【0103】
特に、合成溶媒は、アルカン、例えばヘプタン又はシクロヘキサンから選択され得る。
【0104】
非水性媒体が揮発性炭化水素系油である場合、重合は、前記油中で直接実施することができ、したがって、これは合成溶媒としても作用する。モノマーは、フリーラジカル開始剤と同様にそれに可溶性であるべきであり、得られる粒子のポリマーはそれに不溶性であるべきである。
【0105】
モノマーは、好ましくは、重合の前に、5質量%〜20質量%の割合で合成溶媒中に存在する。モノマーの全量が、反応の開始前に溶媒中に存在してもよく、又はモノマーの一部を、重合反応が進むにつれて徐々に添加してもよい。
【0106】
ラジカル開始剤は、とりわけ、アゾビスイソブチロニトリル又はtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートであり得る。
【0107】
重合は、70℃〜110℃の範囲の温度で実施され得る。
【0108】
ポリマー粒子は、重合中に形成されると、安定剤によって表面安定化される。
【0109】
安定化は、任意の公知の手段によって、特に重合中に安定剤を直接添加することによって実施され得る。
【0110】
安定剤はまた、好ましくは、粒子のポリマーのモノマーの重合前に混合物中に存在する。しかしながら、とりわけ粒子のポリマーのモノマーも連続的に添加する場合、安定剤を連続的に添加することも可能である。
【0111】
使用されるモノマーの総質量(安定剤+粒子のポリマー)に対して、10質量%〜30質量%、好ましくは15質量%〜25質量%の安定剤が使用され得る。
【0112】
ポリマー粒子の分散体は、有利には、分散体の総質量に対して、30質量%〜65質量%、好ましくは40質量%〜60質量%の固体を含む。
【0113】
したがって、本発明によるプロセスの組成物は、組成物の総質量に対して、3質量%〜40質量%、より優先的には4質量%〜35質量%の先に記載したポリマー粒子を含んでいてもよい(固体として表された含有量)。
【0114】
着色剤
本発明による方法で使用される組成物は、少なくとも1種の着色剤を含んでもよい。
【0115】
この(又はこれらの)着色剤は、好ましくは、粉末状物質、脂溶性染料及び水溶性染料、並びにそれらの混合物から選択される。
【0116】
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1種の粉末状着色剤を含む。粉末状着色剤は、顔料及び真珠光沢剤、好ましくは顔料から選択することができる。
【0117】
顔料は、白色又は有色であっても、無機及び/又は有機であっても、コーティングされていてもいなくてもよい。無機顔料の中では、金属酸化物、特に、任意選択で表面処理された二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛又は酸化セリウム、更には酸化鉄、酸化チタン又は酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物及びフェリックブルーを挙げることができる。挙げられる有機顔料の中には、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、及びコチニールカルミン系又はバリウム、ストロンチウム、カルシウム若しくはアルミニウム系のレーキがある。
【0118】
真珠光沢剤は、チタンで又はオキシ塩化ビスマスでコーティングされたマイカ等の白色真珠光沢顔料、酸化鉄でコーティングされたチタンマイカ等の有色真珠光沢顔料、特にフェリックブルー又は酸化クロムでコーティングされたチタンマイカ、上に挙げた種類の有機顔料でコーティングされたチタンマイカ、更にオキシ塩化ビスマス系の真珠光沢顔料から選択することができる。
【0119】
脂溶性染料は、例えば、Sudan Red、D&C Red 17、D&C Green 6、β-カロテン、ダイズ油、Sudan Brown、D&C Yellow 11、D&C Violet 2、D&C Orange 5、キノリンイエロー及びアナトーである。
【0120】
好ましくは、本発明による組成物中に含有される顔料は、金属酸化物から選択される。より優先的には、本発明による組成物中に含有される顔料は、とりわけ名称Sunpuro Black酸化鉄C33-7001(登録商標)でSun社によって販売されているもの等の酸化鉄から選択される。
【0121】
したがって、特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種の着色剤も含み、着色剤は、好ましくは、粉末状材料、特に顔料、より具体的には、酸化鉄等の金属酸化物から選択される。
【0122】
特定の実施形態によれば、本発明による方法の組成物は、有機顔料、例えばカーボンブラック粒子を含んでもよい。
【0123】
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明による方法の組成物は、カーボンブラック粒子を顔料として含む。
【0124】
着色剤は、組成物の総質量に対して0.01質量%から30質量%、特に組成物の総質量に対して1質量%〜22質量%の範囲の含有量で存在してよい。
【0125】
好ましくは、着色剤は、組成物の総質量に対して1質量%以上、有利には、組成物の総質量に対して両端を含めて3質量%〜22質量%の間の含有量で存在する1種又は複数の金属酸化物から選択される。
【0126】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明による方法の組成物は、着色剤を含まない。
【0127】
添加剤
本発明によるプロセスで使用される組成物は、追加の揮発性又は不揮発性シリコーン油、繊維、増量剤、抗酸化剤、防腐剤、香料、殺菌活性剤、中和剤、皮膚軟化剤、保湿剤、微量元素、軟化剤、捕捉剤、酸性化又は塩基性化剤、親水性又は親油性活性剤、コアレッサー、ビタミン、増粘剤、及びそれらの混合物から選択される活性剤等の任意の化粧用活性剤も含んでよい。
【0128】
本発明による方法で使用される組成物中に存在する添加剤の性質及び量を、所望される組成物の化粧特性が添加剤によって影響を受けないように調整することは、当業者にとって常法の範囲内である。
【0129】
本組成物は、組成物の総質量に対して、好ましくは5質量%未満の水、更により良好には2質量%未満の水、又は更には1質量%未満の水を含み、とりわけ、水を含まない。
【0130】
好ましい実施形態によれば、本発明による方法の組成物は、睫毛用製品の形態である。
【0131】
別の実施形態によれば、本発明のプロセスの組成物は、有利には眉毛用の製品の形態であってよい。
【0132】
本発明による組成物は、好ましくは、ケラチン繊維、とりわけ睫毛をメイクアップするための組成物の形態である。
【0133】
このような組成物は、とりわけ、当業者の一般知識に従って調製される。
【0134】
特許請求の範囲を含めた説明全般にわたって、用語「を含む」は、特段の指定がない限り、「少なくとも1つを含む」と同義であると理解されるべきである。
【0135】
用語「…から…の間」及び「…〜…の範囲」は、特段の指定がない限り、両端を含むと理解されるべきである。
【0136】
説明及び例において、百分率は、別段の指示がない限り質量による百分率である。このように、百分率は、組成物の総質量に対する質量により示される。成分は、当業者であれば容易に決めることができる順序及び条件下で混合される。
【実施例】
【0137】
I.分散体の調製の実施例
(実施例1)
第1の工程では、イソドデカン1300g、アクリル酸イソボルニル337g、アクリル酸メチル28g及びtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(Akzo社製のTrigonox 21S)3.64gを反応器に入れた。アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチルの質量比は、92/8である。混合物を、アルゴン下で撹拌しながら90℃に加熱した。
【0138】
2時間反応させた後に、イソドデカン1430gを反応器供給原料に添加し、混合物を90℃に加熱した。
【0139】
第2の工程では、アクリル酸メチル1376g、イソドデカン1376g及びTrigonox 21S 13.75gの混合物を2時間30分にわたって流し込み、混合物を7時間反応させた。次いで、イソドデカン3.3リットルを添加し、イソドデカンの一部を蒸発させて、50質量%の固体含有量を得た。
【0140】
92%のアクリル酸イソボルニル及び8%のアクリル酸メチルを含有する統計コポリマー安定剤で安定化された、アクリル酸メチル粒子のイソドデカン中の分散体が得られた。
【0141】
油性分散体は、全体(安定剤+粒子)で80%のアクリル酸メチル及び20%のアクリル酸イソボルニルを含有する。
【0142】
分散体のポリマー粒子は、約160nmの数平均サイズを有する。
【0143】
分散体は、室温(25℃)で7日間貯蔵した後に安定である。
【0144】
(実施例2)
以下を使用して、実施例1の調製方法に従って、イソドデカン中のポリマーの分散体を調製した:
【0145】
工程1:アクリル酸イソボルニル275.5g、アクリル酸メチル11.6g、アクリル酸エチル11.6g、Trigonox 21 2.99g、イソドデカン750g;続いて、反応後に、イソドデカン750gを添加。
【0146】
工程2:アクリル酸メチル539.5g、アクリル酸エチル539.5g、Trigonox 21S 10.8g、イソドデカン1079g。反応後に、イソドデカン2リットルを添加し、蒸発させて、35質量%の固体含有量を得る。
【0147】
アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル/アクリル酸エチル(92/4/4)統計コポリマー安定剤で安定化された、アクリル酸メチル/アクリル酸エチル(50/50)コポリマー粒子のイソドデカン中の分散体が得られた。
【0148】
油性分散体は、全体(安定剤+粒子)で40%のアクリル酸メチル、40%のアクリル酸エチル及び20%のアクリル酸イソボルニルを含有する。
【0149】
分散体は、室温(25℃)で7日間貯蔵した後に安定である。
【0150】
(実施例3)
以下を使用して、実施例1の調製方法に従って、イソドデカン中のポリマーの分散体を調製した:
【0151】
工程1:アクリル酸イソボルニル315.2g、アクリル酸メチル12.5g、アクリル酸エチル12.5g、Trigonox 21 3.4g、イソドデカン540g、酢酸エチル360g;続いて、反応後に、イソドデカン540g及び酢酸エチル360gを添加。
【0152】
工程2:アクリル酸メチル303g、アクリル酸エチル776g、アクリル酸157g、Trigonox 21S 11g、イソドデカン741.6g及び酢酸エチル494.4g。反応後に、イソドデカン/酢酸エチル混合物(60/40質量/質量)3リットルを添加し、酢酸エチルを全て蒸発させ、イソドデカンを一部蒸発させて、44質量%の固体含有量を得る。
【0153】
アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル/アクリル酸エチル(92/4/4)統計コポリマー安定剤で安定化された、アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸(24.5/62.8/12.7)コポリマー粒子のイソドデカン中の分散体が得られた。
【0154】
油性分散体は、全体(安定剤+粒子)で10%のアクリル酸、20%のアクリル酸メチル、50%のアクリル酸エチル及び20%のアクリル酸イソボルニルを含有する。
【0155】
分散体は、室温(25℃)で7日間貯蔵した後に安定である。
【0156】
(実施例4)
以下を使用して、実施例1の調製方法に従って、イソドデカン中のポリマーの分散体を調製した:
【0157】
工程1:アクリル酸イソボルニル315.2g、アクリル酸メチル12.5g、アクリル酸エチル12.5g、Trigonox 21 3.4g、イソドデカン540g、酢酸エチル360g;続いて、反応後に、イソドデカン540g及び酢酸エチル360gを添加。
【0158】
工程2:アクリル酸メチル145g、アクリル酸エチル934g、アクリル酸157g、Trigonox 21S 12.36g、イソドデカン741.6g及び酢酸エチル494.4g。反応後に、イソドデカン/酢酸エチル混合物(60/40質量/質量)3リットルを添加し、酢酸エチルを全て蒸発させ、イソドデカンを一部蒸発させて、44質量%の固体含有量を得る。
【0159】
アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル/アクリル酸エチル(92/4/4)統計コポリマー安定剤で安定化された、アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸(11.7/75.6/12.7)コポリマー粒子のイソドデカン中の分散体が得られた。
【0160】
油性分散体は、全体(安定剤+粒子)で10%のアクリル酸、10%のアクリル酸メチル、60%のアクリル酸エチル及び20%のアクリル酸イソボルニルを含有する。
【0161】
分散体は、室温(25℃)で7日間貯蔵した後に安定である。
【0162】
(実施例5)
以下を使用して、実施例1の調製方法に従って、イソドデカン中のポリマーの分散体を調製した:
【0163】
工程1:アクリル酸イソボルニル48g、アクリル酸メチル2g、アクリル酸エチル2g、Trigonox 21 0.52g、イソドデカン57.6g、酢酸エチル38.4g;続いて、反応後に、イソドデカン540g及び酢酸エチル360gを添加。
【0164】
工程2:アクリル酸メチル98g、アクリル酸エチル73g、無水マレイン酸25g、Trigonox 21S 1.96g、イソドデカン50.4g及び酢酸エチル33.60g。反応後に、イソドデカン/酢酸エチル混合物(60/40質量/質量)1リットルを添加し、酢酸エチルを全て蒸発させ、イソドデカンを一部蒸発させて、46.2質量%の固体含有量を得る。
【0165】
アクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル/アクリル酸エチル(92/4/4)統計コポリマー安定剤で安定化された、アクリル酸メチル/アクリル酸エチル/無水マレイン酸(50/37.2/12.8)コポリマー粒子のイソドデカン中の分散体が得られた。
【0166】
油性分散体は、全体(安定剤+粒子)で10%の無水マレイン酸、30%のアクリル酸メチル、40%のアクリル酸エチル及び20%のアクリル酸イソボルニルを含有する。
【0167】
分散体は、室温(25℃)で7日間貯蔵した後に安定である。
【0168】
(実施例6)
以下を使用して、実施例1の調製方法に従って、イソドデカン中のポリマーの分散体を調製した:
【0169】
工程1:メタクリル酸イソボルニル48.5g、アクリル酸メチル4g、Trigonox 21 0.52g、イソドデカン115g;続いて、反応後に、イソドデカン80gを添加。
【0170】
工程2:アクリル酸メチル190g、Trigonox 21S 1.9g、イソドデカン190g。反応後に、イソドデカン1リットルを添加し、イソドデカンを一部蒸発させて、48質量%の固体含有量を得る。
【0171】
メタクリル酸イソボルニル/アクリル酸メチル(92/8)統計コポリマー安定剤で安定化された、アクリル酸メチルポリマー粒子のイソドデカン中の分散体が得られた。
【0172】
油性分散体は、全体(安定剤+粒子)で80%のアクリル酸メチル及び20%のメタクリル酸イソボルニルを含有する。
【0173】
分散体は、室温(25℃)で7日間貯蔵した後に安定である。
【0174】
II.繊維用の組成物の例
本発明に従う以下の組成物1〜6は、繊維を長くする及び/又は濃くするために本発明による方法で使用するため、下記記載の通りに調製した。
【0175】
成分を混合し、次いで、80〜85℃の温度での高温条件下で、Rayneri型装置で1時間撹拌して分散させる。
【0176】
【表1】
【0177】
実施された測定及び結果
乾燥中の接着性の評価方法
乾燥中の接着性を、Rheo社により商品名TA-TX2iで販売されているテクスチャーアナライザーを用いて、20℃で評価する。
【0178】
ピペット操作が可能な場合、配合物の30μlの液滴を、コントラストカード(Byko)上に置く。次いで平らな鋼ビーズを、5mm・秒-1の接近速度及び1Nの力で、5秒の接触時間で、液滴と接触させる。次いで、ビーズを5mm・秒-1の同じ速度で後退させる。この動作を50回繰り返す。
【0179】
この値が2.5N超であるとき、接着性は十分に高いと考えられる。
【0180】
粘度測定
組成物の粘度は、定性的に測定した。したがって、試験された組成物が液体であるか、粘性であるか、又は粘性が高いかを、定性的に決定した。
【0181】
したがって、試験された組成物の稠度を、室温でピペットにより観察した。
【0182】
【表2】
【0183】
本発明による組成物は、液体から粘性が高い範囲に及び、したがって、皮膚及び繊維に適用することができる。
【0184】
乾燥中の接着性の測定値は、非常に良好であった。これらは、全て2.5超である。
【0185】
このように、本組成物は、繊維を長くする及び/又は濃くすることを可能にする、本発明による方法において有利に使用することができる。