(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
培養対象を付着させる担体と、内部に当該担体を収容する収容体と、当該収容体の内部にて当該収容体および当該担体を支持する支持体と、当該支持体に設けられるとともに培養装置の保持機構によって保持される被保持部とを有する担体部であって、当該支持体は、当該担体を流下する培養液を当該担体に培養液を供給する培養液供給部を有し、当該収容体は、内部に当該担体を収容する空間が形成された平板状に形成され、板面が上下方向に沿う向きに設けられるとともに、当該板面の下側に進むに従い当該板面の幅が狭まる幅狭部を有し、当該幅狭部に培養液を排出する排出口が設けられる担体部を当該培養装置の当該保持機構に保持させるステップと、
前記担体にて培養対象を培養するステップと、
前記担体から培養対象を回収するステップと
を含む培養対象回収方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の微生物培養システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
<培養システム1>
図1は、本実施の形態に係る培養システム1を示す概略構成図である。
まず、
図1を参照して、本実施の形態が適用される培養システム1の概略構成を説明する。
【0014】
図1に示すように、培養装置の一例である培養システム1は、微生物を付着させ増殖させる担体ユニット10と、担体ユニット10を押圧するローラユニット30と、担体ユニット10に培養液を供給しかつ担体ユニット10から微生物とともに培養液を回収する培養液供給ユニット50と、担体ユニット10にガスを供給するガス供給ユニット60と、担体ユニット10を照射する照射ユニット70と、担体ユニット10を支持するフレーム80と、各構成部材を制御する制御ユニット90とを有する。
【0015】
なお、以下の説明においては、
図1に示す培養システム1の上下方向を、単に上下方向ということがある。また、培養システム1の幅方向を、単に幅方向ということがある。また、培養システム1における上下方向および幅方向と交差する方向を、単に奥行方向ということがある。
【0016】
図2は、本実施の形態に係る培養システム1の概略正面図である。
次に、
図1および2を参照して、本実施の形態が適用される培養システム1の詳細構成を説明する。
【0017】
図2に示すように、担体部および培養ユニットの一例である担体ユニット10は、微生物を付着させる担体12と、担体12の外周を覆うカバー15と、担体12およびカバー15を支持する支持体17とを有する。本実施の形態においては、概形が平板状に形成された担体ユニット10内において、微生物が培養される。担体ユニット10の詳細については後述する。
【0018】
ローラユニット30は、担体ユニット10に沿って昇降する昇降部31と、昇降部31を駆動する駆動部32とを有する。ローラユニット30は、駆動部32によって昇降部31を移動させることにともない、担体ユニット10で培養された微生物を担体12から分離し、培養液とともに回収する。ローラユニット30の詳細については後述する。
【0019】
回収部および貯留部の一例である培養液供給ユニット50は、担体ユニット10に培養液を供給する第1配管51と、担体ユニット10から培養液を回収する第2配管53と、培養液を貯留するタンク55と、タンク55に貯留された培養液から微生物を分離した培養液を循環させる第3配管57と、培養液を循環させる駆動源であるポンプ59とを有する。培養液供給ユニット50は、ポンプ59によって担体ユニット10に培養液を供給し、かつ担体ユニット10において培養された微生物を培養液とともに回収する。そして、培養液供給ユニット50は、タンク55において培養液から分離することで微生物を回収する。具体的には、タンク55内において、微生物を含む培養液が、微生物を高濃度に含む沈殿と、微生物をほとんど含まない上清とに分離される。なお、図示の培養液供給ユニット50においては、ポンプ59を制御することによって、単位時間当たりの培養液の供給量を調整することができる。
ガス供給ユニット60は、炭酸ガスを圧縮して収容するガスボンベ61と、ガスボンベ61から供給される炭酸ガスを担体ユニット10に供給するガス配管63とを有する。
【0020】
図1に示すように、照射ユニット70は、担体ユニット10を挟んで奥行方向両側から担体ユニット10に向けて光を照射する第1照射パネル71および第2照射パネル73を有する。図示の例においては、第1照射パネル71および第2照射パネル73は、担体ユニット10に対向配置する略板状の形状である。第1照射パネル71および第2照射パネル73は、例えば、光源として蛍光灯、有機EL又はLED等を配列しており、微生物の増殖に適した波長や光量の光を照射するように構成されている。第1照射パネル71および第2照射パネル73が照射する光の波長は、例えば380〜780nmの範囲である。また、第1照射パネル71および第2照射パネル73は、例えば赤色光のみで増殖が可能な微生物に対しては、赤色光のみを照射できるとよい。
【0021】
図2に示すように、保持部の一例であるフレーム80は、担体ユニット10などを支持する枠部材である。図示の例におけるフレーム80は、フレーム80の上側において、担体ユニット10を装着する装着部80Aを有する。この装着部80Aに対して担体ユニット10が装着されることにより、担体ユニット10がフレーム80に支持される。図示の例においては、フレーム80に対して担体ユニット10が吊るされた状態となる。
制御ユニット90は、コンピュータなどにより構成され、培養システム1の構成部材を制御する。例えば、制御ユニット90は、ローラユニット30および培養液供給ユニット50の動作タイミングを制御する。
【0022】
培養対象とする微生物は例えば光合成微細藻類である。なお、光合成を行わずに増殖できる微生物を培養する場合は、培養システム1は照射ユニット70を備えなくてもよい。
また、培養液としては、微細藻類を通常の方法により培養して、微生物の濃度を高めることが可能な培地の希釈液であれば、特に制限されない。培地としては、例えばCHU培地、JM培地、MDM培地などの一般的な無機培地を用いることができる。さらに、培地としては、ガンボーグB5培地、BG11培地、HSM培地の各種培地の希釈液が好ましい。無機培地には、窒素源としてCa(NO
3)
2・4H
2OやKNO
3、NH
4Clが、その他の主要な栄養成分としてKH
3PO
4やMgSO
4・7H
2O、FeSO
4・7H
2Oなどが含まれる。また、培地には、微細藻類の生育に影響を与えない抗生物質等を添加してもよい。培地のpHは4〜10が好ましい。また、各種産業から排出される廃水等を利用してもよい。
【0023】
<担体ユニット10>
図3は、担体ユニット10の部分拡大図である。
図4は、
図3のIV−IVにおける断面図である。
図5(a)は担体12およびカバー15の正面図であり、(b)は
図5(a)のVb−Vbにおける断面図である。
次に、
図3乃至
図5を参照しながら、担体ユニット10の詳細構成を説明する。
上記のように、担体ユニット10は、担体12と、カバー15と、支持体17とを有する。以下、各々の構成について説明をする。
【0024】
まず、担体12について説明をする。
担体12は、微生物を培養する板状部材である。この担体12は、微生物を担持できるとともに、供給された培養液を浸透および流下させることが可能である。図示の担体12は、布部材であり、より具体的には無撚糸のパイル地により構成される。担体12の材質は特に限定されるものではなく、撚糸のパイル地、綿、絹、毛、アクリル、ポリエステル等を用いてもよい。
【0025】
図示の例において、担体12は、正面視略矩形である。また、担体12は、対向する辺同士の略中央で2つに折り曲げられている(
図5(b)参照)。担体12の寸法は、特に限定されないが、1つの担体12で効率的に微生物を培養することができるように、できるだけ大きく形成されている。例えば、担体12は、展開した際の長手方向の長さが2.5mで、幅方向の長さが1mのタオル生地を用いて、縦寸法が約1.25mになるように長手方向の略中央で折り曲げられる。
【0026】
図4に示すように、担体12は、折り曲げられ湾曲した部分である曲げ部125(湾曲部の一例)を挟んで、第1部121と第2部123とを有する形状である。第1部121および第2部123は、曲げ部125が支持体17に掛けられた状態において、各々上下方向に沿って起立して設けられる。
【0027】
次に、収容体および覆い部の一例であるカバー15について説明をする。
カバー15は、可撓性を有するシート部材の長手方向の中央を折り曲げて形成されている。カバー15は、照射ユニット70から照射する光を透過する材質により構成される。カバー15は、例えば塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、PET等の合成樹脂により構成される。
【0028】
図4に示すように、カバー15は、曲げ部155を挟んで位置する第1部151と第2部153とを有する。第1部151と第2部153は、曲げ部155が支持体17に掛けられた状態において、各々上下方向に沿って起立して設けられる。
【0029】
ここで、
図5(a)に示すように、カバー15は、支持体17に掛けられたカバー15における上下方向下側の端部である下端部156と、幅方向に延びる曲げ部155の両端から上下方向沿って略平行に延びる2つの側縁部157とを有する。なお、下端部156は、幅方向中央部が上下方向下側に向けて突出するように形成されている。言い替えると、下端部156は、両側縁部157の下端から両側縁部157の間の中央に向かって斜め下方に延びる。
【0030】
図示のカバー15は、内部に担体12を収容できる偏平な袋状に形成されている。さらに説明をすると、カバー15は、一部を除き内部を密閉可能に形成されている。図示の例においては、下端部156を融着により閉じるとともに、側縁部157を面ファスナーにより構成される固定部158で閉じられている。
【0031】
また、図示のカバー15は、曲げ部155の幅方向両端側において、上方に向けて開口し被装着体175(後述)が貫通する第1開口部159Aを有する。また、カバー15は、曲げ部155の幅方向の一方側に、上方に向けて開口し培養液供給管171E(後述)が貫通する第2開口部159Bを有する。また、カバー15は、下端部156における下方に向けて突出する部分の先端に、培養液を導出する導出口159Cを有する。この導出口159Cは、培養液を導出する第2配管53が着脱できるようになっている。
【0032】
次に、支持体17について説明をする。
図3に示すように、支持体17は、カバー15を支持するカバー支持体171と、担体12を支持する担体支持体173と、カバー15から突出し担体ユニット10に装着される被装着体175と、幅方向長さを延長する延長板176とを有する。なお、支持体17は、例えばアルミニウムなど微生物の培養を妨げない材質で形成される。
【0033】
まず、収容体支持部、供給部、および培養液供給部の一例であるカバー支持体171について説明をする。
カバー支持体171は、幅方向に延びる円柱状部材である支持ロッド171Aと、支持ロッド171Aの外周に設けられる外周体171Bと、培養液が供給される培養液供給孔171Cと、培養液が排出される培養液排出孔171Dと、培養液供給孔171Cと接続される培養液供給管171Eと、支持ロッド171Aの両端に設けられる支持ロッド端部171Fとを有する。
【0034】
ここで、外周体171Bは、支持ロッド171Aと同軸に設けられ、かつ両端が封止されて設けられる。このことにより、外周体171Bの内周面と支持ロッド171Aの外周面との間を培養液が通過可能となる。また、外周体171Bは、幅方向の一方側(
図3における右側)であって、上方を向く面に培養液供給孔171Cを有する。この培養液供給孔171Cには、培養液供給管171Eが設けられる。そして、培養液供給管171Eおよび培養液供給孔171Cを介して、外周体171B内に培養液が案内される。また、外周体171Bは、下方を向く面に複数の培養液排出孔171Dを有する。図示の例においては、複数の培養液排出孔171Dが、幅方向において予め定めた間隔で並べて配置されている。また、幅方向に並ぶ複数の培養液排出孔171Dからなる列が、2列設けられている。すなわち、
図4に示すように、2つの培養液排出孔171Dが奥行方向に並んで設けられる。この培養液排出孔171Dを介して、外周体171B内の培養液が外部に排出される。
【0035】
次に、担体支持部およびガス供給部の一例である担体支持体173について説明をする。
図3に示すように、担体支持体173は、支持ロッド171Aに沿って幅方向に延びる角柱状部材である支持柱173Aと、支持柱173Aの外周に設けられる外周体173Bと、炭酸ガスが内部を通過するガス管173Cと、炭酸ガスが供給されるガス供給孔173Dと、炭酸ガスが排出されるガス排出孔173Eと、外周体173Bにおいて担体12が縫い付けられる縫合孔173Fと、支持柱173Aの両端に設けられる支持柱端部173Gとを有する。
【0036】
図4に示すように、外周体173Bは、断面略矩形状の中空部材である。この外周体173Bの内部に、支持柱173Aおよびガス管173Cが設けられる。外周体171Bは、下側を向く面に複数のガス排出孔173Eを有する。図示の例においては、複数のガス排出孔173Eが、幅方向において予め定めた間隔で配置されている。
【0037】
また、
図3に示すように、ガス管173Cは、外周体173Bの内部において複数のガス排出孔173Eと対向する位置に配置される。また、ガス管173Cは、ガス排出孔173Eの各々に対応する位置に、ガス管供給孔173Hを有する。また、ガス管173Cの一方の端部は封止され、他方の端部は開口しガス供給孔173Dを形成する。このガス供給孔173Dには、ガス配管63が接続される。ガス配管63から供給される炭酸ガスは、ガス供給孔173Dからガス管173Cの内部に案内される。また、ガス管173C内の炭酸ガスは、ガス管供給孔173Hおよびガス排出孔173Eを介して排出される。
【0038】
次に、被保持部の一例である被装着体175について説明をする。
被装着体175は、板状部材である。被装着体175は、幅方向において支持ロッド171Aを挟む両側に設けられる。この被装着体175には、カバー支持体171の支持ロッド端部171F、担体支持体173の支持柱端部173G、および延長板176が固定される。このことにより、被装着体175を介して、カバー支持体171および担体支持体173の相対位置など各位置が固定される。さらに、担体支持体173に担体12が配置され、さらにこの担体12を覆うカバー15がカバー支持体171に配置されると、担体ユニット10全体が、単体で取り扱い可能な構造体となる。また、被装着体175は、フレーム80の装着部80Aに接続されることにより、担体ユニット10がフレーム80に対して装着される。なお、被装着体175の装着部80Aへの接続は、周知の接続技術を適用可能であり特に限定されない。例えば、被装着体175の装着部80Aへの接続は、フックなどを用いて装着部80Aに掛ける構成でもよいし、ボルト、クリップ、スナップボタンや、所謂ラッチ機構などを用いて装着部80Aに対して固定してもよい。
【0039】
次に、延長板176について説明をする。
延長板176は、板状部材である。延長板176は、被装着体175に設けられるとともに、被装着体175を挟んでカバー支持体171とは反対側に突出する向きに固定される。延長板176は、カバー15の幅方向端部を支持する。すなわち、延長板176は、カバー支持体171とともにカバー15を支持する。
【0040】
ここで、例えば、微生物を培養する期間が長くなった担体12を交換したい場合などには、フレーム80から担体ユニット10を取り外し、新たな担体ユニット10を装着することができる。なお、担体ユニット10を取り外す際に、カバー15から突出する部分である被装着体175を装着部80Aから取り外せばよいので、担体12を取り出すために、内部が培養液で濡れているカバー15を開けて手を汚したり、培養液をカバー15の外に滴下させたりすることを防止できる。付言すると、担体ユニット10から担体12を取り出す際には、固定部158を構成する面ファスナーを開くことでカバー15に開口が形成され、担体12の取り出しが可能となる。
【0041】
次に、
図4を参照しながら、担体支持体173に担体12が配置され、かつカバー支持体171にカバーが配置された状態における各構成部材の配置について説明する。すなわち、担体支持体173の外周体173Bに、担体12の曲げ部125が掛けられ、カバー支持体171の外周体171Bに、カバー15の曲げ部155が掛けられた状態について説明をする。
【0042】
図4に示すように、担体12における第1部121および第2部123は、互いに沿って配置される。さらに説明をすると、担体12における第1部121の第1部内面121A(第1面の一例)と、第2部123の第1部内面123A(第2面の一例)とは、互いに対向し、距離Ga離間する。
また、カバー15における第1部151と第2部153とは、互いに沿って配置される。さらに説明をすると、カバー15における第1部151の第1部内面151Aと、担体12における第1部121の第1部外面121Bとは、互いに対向し、距離Gb離間する。同様に、カバー15における第2部153の第2部内面153Aと、担体12における第2部123の第1部外面123Bとは、互いに対向し、距離Gb離間する。図示の例においては、距離Gbが0cm以上10cm以下になるように、カバー15の中で担体12が配置される。
【0043】
また、
図4に示すように、カバー支持体171の培養液排出孔171Dは、担体支持体173に掛けられた担体12の曲げ部125に対向する位置に設けられる。さらに説明をすると、カバー支持体171の培養液排出孔171Dの上下方向下側に、担体12の曲げ部125が位置する。図示の例においては、カバー支持体171の培養液排出孔171Dと、担体12の曲げ部125とは、距離Gc離間する。そして、カバー支持体171の培養液排出孔171Dは、担体12の曲げ部125に向けて培養液を排出する(図中矢印D1参照)。なお、カバー支持体171の培養液排出孔171Dが担体12から離間していることにより、カバー支持体171の培養液排出孔171Dに微生物などの異物が詰まり、培養液の排出が妨げられることが回避される。
【0044】
また、担体支持体173のガス排出孔173Eが、担体12の第1部121と第2部123とにより挟まれる空間に対向する位置に設けられる。さらに説明をすると、担体支持体173のガス排出孔173Eは、第1部121の第1部内面121Aと、第2部123の第2部内面123Aとにより挟まれる空間において上側から下側に向けて炭酸ガスを排出する(図中矢印D2参照)。言い替えると、担体支持体173のガス排出孔173Eは、担体支持体173の下方から2つに折り畳まれた担体12の内側に炭酸ガスを含んだ混合空気を吹き込む。なお、図示の例において、カバー15内に排出された炭酸ガスがカバー15外部へ流出することを抑制してもよいし、外部へ流出することを許容してもよい。例えば、カバー15内の炭酸ガスは、第1開口部159Aや導出口159Cなどを介して、カバー15外部へ流れてもよい。また、カバー15内の炭酸ガスを排出する排出孔をカバー15に設け、この排出孔に排出管を連結する構成でもよい。
【0045】
ここで、担体12における第1部121の第1部内面121Aおよび第2部123の第2部内面123Aは、距離Ga離間し、その間隙に向けて担体支持体173のガス排出孔173Eから炭酸ガスが排出される。このことにより、第1部121および第2部123の間にガス供給路が形成される。
【0046】
なお、担体支持体173のガス排出孔173Eから炭酸ガスが排出されることで担体12の第1部121および第2部123の間を広げる力が付与される。詳細は後述するが、ローラユニット30によって担体12が挟み込まれることにより、第1部121の第1部内面121Aおよび第2部123の第2部内面123Aの一部が接触した状態となることがある。この状態において、ガス排出孔173Eから炭酸ガスが排出されると、第1部121の第1部内面121Aおよび第2部123の第2部内面123Aを離間させる向きの力が担体12に付与される。
【0047】
また、カバー15の第1部内面151Aおよび担体12の第1部外面121Bは、距離Gb離間し、この間隙を炭酸ガスが流れることで、担体12の第1部外面121Bにも炭酸ガスが供給され易くなる。すなわち、カバー15の内部に収容されている担体12が、カバー15と接触せずに配置されることにより、担体12の外周に炭酸ガスを案内することが可能となる。
【0048】
なお、カバー15の第1部内面151Aおよび担体12の第1部外面121Bの間に間隙が形成されることにより、間隙が無い場合、すなわちカバー15の第1部内面151Aおよび担体12の第1部外面121Bが接触している場合と比較して、担体12の厚み方向に炭酸ガスが通過しやすくなる。このことにより、担体12全体に炭酸ガスが供給されやすくなる。
【0049】
また、カバー支持体171の培養液排出孔171Dが、担体支持体173に掛けられた担体12の曲げ部125に対向する位置に設けられることにより、培養液排出孔171Dから供給する培養液は、担体12の曲げ部125に供給される。この曲げ部125に供給された培養液は、第1部121および第2部123の両者に浸透させ得る。すなわち、一つの領域である曲げ部125に供給された培養液が、分岐して2つの領域である第1部121および第2部123へ浸透する。
【0050】
<担体12>
図6(a)は担体12の拡大断面図であり、
図6(b)は突起部127の説明図である。
次に、
図6(a)および(b)を参照しながら、担体12の構成についてさらに説明をする。
【0051】
図6(a)に示す担体12は、繊維により形成された平板状の部分である基体126と、基体126の表面から突出する繊維状部材、すなわち起毛部により形成された多数の突起部127とを有する。図示の突起部127は、環状部(ループ部)を有する。この突起部127は、
図6(b)に示すように、基体126に固定される根元127Aと、突起部127における基体126から最も離間した部分である先端127Bとを有する。例えば、突起部127は、繊維径1mmであり、基体126からの突出量(奥行方向長さ、距離L1参照)が約20mmである。また、担体12として単位面積当たりの保水量は0.2g/cm
2以上である。
【0052】
また、
図6(b)に示すように、突起部127が弾性変形することにともない、先端127Bは根元127Aに対して移動可能である。さらに説明をすると、先端127Bは、根元127Aを中心として揺動可能である(矢印D3参照)。言い替えると、先端127Bは、基体126に沿う方向(図中、上下方向)に移動可能であり、かつ基体126に対して進退する方向(図中、奥行方向)に移動可能である。
【0053】
また、
図6(b)に示すように、担体12が吊るされている状態、すなわち基体126が上下方向に沿って配置されている状態においては、突起部127の先端127Bが根元127Aよりも下側に位置することが可能である(距離L2参照)。いわば、担体12の毛並みが上側から下側に向かう向きである。このように、先端127Bが根元127Aよりも下側に配置された状態で担体12に培養液が供給されると、培養液が根元127A側から先端127B側に向けて流れる(矢印D4参照)。このように、先端127B側に向けて培養液が流れると、培養液および微生物が根元127A側に滞留することが抑制される。その結果、培養液および微生物の滞留にともない発生し得る、培養液および微生物の腐敗などが抑制される。
【0054】
さて、本実施形態の担体12においては、基体126に突起部127を設けることにより、担体12の表面積が大きくなる。さらに説明をすると、担体12内部あるいは担体12表面に存在する培養液における、気相と接する領域の面積が大きくなる。また、担体12の受光面積が大きくなる。これらのことにより、担体12における微生物の成長が促進され得る。
【0055】
ここで、担体12の表面積を増加させるための構成として、本実施形態とは異なる構成の例について説明をする。上記本実施形態のように、突起部127すなわち凸部を担体12に設ける構成に替えて、例えば多孔体のスポンジのように凹部を設ける構成が想定される。
【0056】
なお、先端127Bが根元127Aや基体126に対して移動可能であれば、突起部127の形状は特に限定されない。例えば、突起部127は、図示の例とは異なり環状に形成されなくてもよい。言い替えると、一端が基体126に支持され、他端が揺動可能である略円柱状、略円錐状、あるいは略角柱状の部材でもよい。付言すると、担体12は、シャーリング地により形成されてもよい。
【0057】
<ローラユニット30>
図7は、ローラユニット30を示す概略構成図である。
次に、
図2および
図7を参照しながら、ローラユニット30の詳細構成を説明する。
まず、上記のように、ローラユニット30は、担体ユニット10に沿って昇降する昇降部31と、昇降部31を駆動する駆動部32とを有する。以下、昇降部31および駆動部32について説明をする。
【0058】
まず、押圧部の一例である昇降部31について説明をする。
昇降部31は、担体ユニット10を挟み込むローラ対33と、ローラ対33の姿勢を保持する支持バー35と、ローラ対33の軸間距離を変化させる第1駆動機構37と、これらの構成部材が取り付けられるベースプレート39とを有する。
【0059】
ローラ対33は、担体ユニット10を両面から挟み込む第1ローラ331および第2ローラ333を有する。第1ローラ331は、軸部331Aと、軸部331Aに対して回転可能に取り付けられる外周部331Bと、外周部331Bの外周面に取り付けられ担体ユニット10の外表面151B(
図4参照)に押し付けられる樹脂シート331Cとを有している。同様に、第2ローラ333は、軸部333Aと、軸部333Aに対して回転可能に取り付けられる外周部333Bと、外周部333Bの外周面に取り付けられ担体ユニット10の外表面153B(
図4参照)に押し付けられる樹脂シート333Cとを有している。図示の第1ローラ331および第2ローラ333は、各々を回転させる駆動源に接続されていない所謂従動ロールである。
【0060】
支持バー35は、略円柱状の部材であり、第1ローラ331および第2ローラ333の各々を上下方向に挟んで設けられる。図示の例においては、支持バー35は、第1ローラ331および第2ローラ333を取り囲むようにベースプレート39の4隅に設けられている。この支持バー35は、第1ローラ331および第2ローラ333が湾曲することを抑制する。
【0061】
第1駆動機構37は、第1ローラ331の軸部331Aおよび第2ローラ333の軸部333Aの両端に設けられる。第1駆動機構37は、第1ローラ331の軸部331Aおよび第2ローラ333の軸部333Aを、基準位置と、基準位置よりも拡開した拡開位置との間で変化させる(図中矢印D5参照)。第1駆動機構37は、例えばソレノイド、エアシリンダなど周知の駆動装置により構成することができる。
【0062】
なお、以下の説明においては、第1ローラ331および第2ローラ333が基準位置にある状態を、ローラ対33の閉状態ということがある。この閉状態のローラ対33は、担体ユニット10を挟み込み押圧する。また、第1ローラ331および第2ローラ333が拡開位置にある状態を、ローラ対33の開状態ということがある。この開状態のローラ対33は、担体ユニット10から離間する。なお、基準位置は接近位置の一例であり、拡開位置は離間位置の一例である。
【0063】
また、図示は省略するが、第1ローラ331の軸部331Aおよび第2ローラ333の軸部333Aの両端は、各々ばねなどの弾性部材を用いてローラ対33が閉状態となるように付勢されている。そして、第1駆動機構37は、この付勢力と対向する力を第1ローラ331の軸部331Aおよび第2ローラ333の軸部333Aに付与し、ローラ対33を開状態とする。
【0064】
ベースプレート39は、第1ローラ331の軸部331Aおよび第2ローラ333の軸部333Aの両端に設けられる。図示のベースプレート39は、板状部材であり、例えばステンレス鋼などにより形成されている。
【0065】
次に、移動機構の一例である駆動部32について説明をする。
図2に示すように、駆動部32は、上下方向に沿って昇降部31を案内する案内部材371と、一端が昇降部31に接続されるワイヤ373と、ワイヤ373の他端に接続され昇降部31を上下方向に移動させる駆動力を供給する第2駆動機構375とを有する。なお、第2駆動機構375および第1駆動機構37は、移動部の一例である。
【0066】
案内部材371は、上下方向に沿って設けられる角柱状部材である。図示の例においては、第1ローラ331の軸部331Aおよび第2ローラ333の軸部333A各々の両端に設けられる。この案内部材371は、昇降部31のガイド部材であり、昇降部31のベースプレート39をスライド可能に支持する。
ワイヤ373は、金属製の線状部材である。図示の例においては、ワイヤ373は、昇降部31を吊り下げて支持する。
【0067】
第2駆動機構375は、ワイヤ373を巻き取る巻取部375Aおよび巻取部375Aを駆動するモータ375Bを有する。モータ375Bによる駆動力を受けた巻取部375Aがワイヤ373を巻き取ることにより、昇降部31が上下方向に移動する(図中矢印D6参照)。
【0068】
図8(a)はローラユニット30の動作を示す概略構成図であり、
図8(b)は
図8(a)のVIIIb内の拡大図である。なお、
図8(a)および(b)に示す状態においては、第1ローラ331および第2ローラ333は閉位置に配置されているものとする。
次に、
図1、
図2、
図7および
図8を参照しながら、ローラユニット30の動作について説明をする。
【0069】
本実施の形態におけるローラユニット30は、担体ユニット10の担体12に含まれた培養液を絞り取ることにより、培養液とともに微生物を取り出す。この担体12に含まれた培養液を絞る方法としては、例えば、担体ユニット10をフレーム80から取り外すとともに、取り外されたカバー15から担体12を取り出して、担体12を絞ることも可能である。しかしながら、本実施の形態のように、担体ユニット10をフレーム80に装着したままで、ローラユニット30を用いてカバー15とともに担体12を絞る。担体ユニット10をフレーム80に装着することにより、絞った後の担体12を用いて微生物の培養を再び行う作業を迅速に行うことができる。
【0070】
ここで、本実施形態では、ローラユニット30を用い、担体ユニット10を奥行方向、すなわち担体ユニット10の厚さ方向に圧縮する。以下、ローラユニット30が、担体ユニット10を圧縮する動作を具体的に説明する。まず、
図1に示すように、フレーム80に装着された担体ユニット10を挟んで、第1ローラ331および第2ローラ333が対峙して設けられているものとする。このとき、第1ローラ331および第2ローラ333は開位置に配置されており、各々担体ユニット10から離間しているものとする。また、第1ローラ331および第2ローラ333は、上下方向において担体ユニット10における下側領域であって、例えば担体12よりも下側の領域と対峙する(
図1参照)。
【0071】
そして、
図8(a)に示すように、第1駆動機構37が駆動することにより、第1ローラ331および第2ローラ333は閉位置に配置される。すなわち、第1ローラ331および第2ローラ333が基準位置に配置される。この基準位置に配置された第1ローラ331および第2ローラ333の間隙は、担体ユニット10の厚さよりも小さく、第1ローラ331および第2ローラ333が担体ユニット10を挟み込み押圧する。
【0072】
ここで、上述のように、担体12はパイル地からなり、カバー15は可撓性のシート部材からなる。したがって、担体ユニット10は、第1ローラ331および第2ローラ333が押圧することにともない、変形する。また、第1ローラ331および第2ローラ333が押圧することで、第1部121の第1部内面121Aおよび第2部123の第2部内面123Aの一部が接触した状態となる。なお、第1ローラ331および第2ローラ333による押圧が解除された後も、培養液の表面張力により、第1部内面121Aおよび第2部内面123Aの一部が接触した状態が維持されることがある。図示の例においては、担体支持体173のガス排出孔173Eから炭酸ガスが排出されることで、担体12の第1部121および第2部123の間が押し広げられ、接触状態が解除される。
【0073】
さて、第1ローラ331および第2ローラ333が担体ユニット10を挟み込んでいる状態で第2駆動機構375(
図2参照)を駆動させ、ワイヤ373を巻き取る。ワイヤ373が巻き取られることにともない、第1ローラ331および第2ローラ333が上昇する(矢印D11参照)。この第1ローラ331および第2ローラ333の上昇にともなって、第1ローラ331の外周部331Bおよび第2ローラ333の外周部333Bが回転する(矢印D13参照)ため、第1ローラ331および第2ローラ333が担体ユニット10に沿って円滑に上昇する。
【0074】
そして、第1ローラ331および第2ローラ333が上昇しながら担体ユニット10を押圧することによって、担体12がカバー15とともに厚さ方向に圧縮され、担体12に含まれた培養液が絞り出される。なお、
図2に示すように、絞り出された培養液は、カバー15の導出口159Cおよび導出口159Cに接続された第2配管53を通じて、タンク55に流入する。
【0075】
ここで、担体12の突起部127との関係に着目しながら、第1ローラ331および第2ローラ333の動作について説明する。
図8(b)に示すように、第1ローラ331(
図8(a)参照)および第2ローラ333は、担体ユニット10を圧縮しながら上昇する。すなわち、担体12の毛並みに逆らって第1ローラ331および第2ローラ333が移動する。したがって、
図8(b)に示すように、カバー15を介して第1ローラ331および第2ローラ333から押圧される突起部127は変形し、突起部127の先端127Bは揺動する。この突起部127の先端127Bの動きにより、突起部127に付着する微生物が培養液とともに突起部127から離れやすくなる。
【0076】
また、担体ユニット10を圧縮しながら上昇する(図中矢印D11参照)第1ローラ331および第2ローラ333の動作により、第1部内面151Aおよび第2部内面153Aと担体12の基体126との間(図中円R1内参照)に、培養液を溜め得る。このことにより、溜まった培養液(図中符号Lq参照)を用いて突起部127に付着する微生物を突起部127から引き離す、いわば突起部127を濯ぐことが可能となる。付言すると、第1ローラ331および第2ローラ333は、回転することにともない、第1ローラ331および第2ローラ333の上側の面が、担体12の基体126に近づく向きに移動する(図中矢印D13参照)。すなわち、第1ローラ331および第2ローラ333の上側の面が、培養液を基体126側に寄せる寄せ機能を有する。したがって、より多くの培養液を、第1部内面151Aおよび第2部内面153Aと担体12の基体126との間に集め得る。
【0077】
また、第1ローラ331および第2ローラ333は、担体12を収容したカバー15ごと押圧する。したがって、担体ユニット10は、微生物や培養液を第1ローラ331および第2ローラ333に付着させることや、周囲に飛散させることを回避できる。このことにより、培養液のロスを低減し、微生物の収集効率を増加させ得る。
【0078】
ここで、担体ユニット10において微生物を培養していると、カバー15の内側面(第1部内面151Aおよび第2部内面153A)に水滴が付着し、カバー15が曇ることがある。このようにカバー15が曇ると、照射ユニット70から照射され担体12に到達するはずの光が水滴に妨げられ、担体12が受ける光の光量が低減することがある。本実施の形態においては、上記のように第1ローラ331および第2ローラ333がカバー15とともに担体12を押圧することにともない、カバー15の第1部内面151Aおよび第2部内面153Aが担体12に押し当てられる。そして、第1部内面151Aおよび第2部内面153Aが担体12に押し当てられることで、第1部内面151Aおよび第2部内面153Aの液滴が除去される。このことにより、担体12に到達する光の光量が増加する。言い替えると、液滴が除去されない構成と比較して、照射ユニット70が照射する光の光量を低減させたとしても担体12に到達する光の光量を確保し得る。したがって、図示の構成においては、照射ユニット70が消費する電力を削減し得る。また、第1部内面151Aおよび第2部内面153Aの液滴が除去され曇りが取り除かれることで、カバー15を介した担体12の視認性が向上する。
【0079】
<培養システム1の動作>
図9−1は培養システム1の動作を示すフローチャートであり、
図9−2は培養システム1の回収動作を示すフローチャートである。
次に、
図9−1を参照しながら、培養システム1の動作について説明をする。なお、以下の説明においては、担体12がカバー15の内部に配置されるなどして、担体ユニット10が形成され、担体ユニット10がフレーム80に保持されているものとする。
【0080】
まず、固定部158が開放された状態で、微生物を担体12に付着させる(ステップ901)。そして、固定部158を閉じた後、培養液および炭酸ガスを供給しながら、担体12において微生物を培養する(ステップ902)。そして、ローラユニット30を駆動させながら、担体12に保持された培養液および微生物を担体12から絞りとり、タンク55を用いて回収する(ステップ903)。
【0081】
次に、
図9−2を参照しながら、培養システム1の回収動作について詳細に説明する。
なお、培養システム1が回収動作を開始する際には、ローラ対33は、上下方向において担体ユニット10の下端部156と対向する位置に配置され、かつ開状態であるものとする。
【0082】
培養システム1の回収動作、すなわち培養対象回収方法においては、まず第1駆動機構37が駆動し、ローラ対33が閉状態となる(ステップ911)。また、培養液供給ユニット50から担体ユニット10に供給される培養液の供給量を減少させる(ステップ912)。
【0083】
次に、第2駆動機構375が駆動し、ローラ対33が上昇する(ステップ913)。このローラ対33の上昇にともない、担体12に保持された微生物および培養液が担体12から絞り取られる。そして、上下方向において担体支持体173と対向する位置までローラ対33が上昇すると、第2駆動機構375が停止することでローラ対33が停止する(ステップ914)。
【0084】
次に、制御ユニット90が、ローラ対33が停止してから、担体12に予め定めた量の培養液を供給するための時間である供給時間が経過したかを判断する(ステップ915)。供給時間が経過すると(ステップ915でYES)、第2駆動機構375が駆動しローラ対33が自重で下降する(ステップ916)。このローラ対33の下降にともない、担体12に保持される微生物および培養液が担体12から絞り取られる。そして、上下方向において担体ユニット10の下端部156と対向する位置までローラ対33が下降すると、第2駆動機構375が停止することでローラ対33が停止する(ステップ917)。
【0085】
次に、制御ユニット90が、ローラ対33が2回上昇したかを判断する(ステップ918)。ローラ対33が2回上昇していない場合(ステップ918でNO)、第2駆動機構375が駆動し、ローラ対33が上昇する(ステップ913)。一方、ローラ対33が2回上昇した場合(ステップ918でYES)、ローラ対33が開状態となり(ステップ919)、培養システム1の回収動作が終了する。
【0086】
図示の例においては、ローラ対33を複数回上昇させることにより、回収される微生物の量を増加させることができる。
また、ローラ対33が上昇した後、供給時間の経過を待つ(ステップ915)ことにより、担体12に多くの培養液を保持させ、担体12によって保持された培養液を用いて担体12に付着した微生物を濯ぐことができる。
【0087】
<培養対象>
上記のように培養システム1が培養する培養対象は、クロレラやシネコキスティス、スピルリナのような運動性のないあるいは乏しい光合成微生物だけでなく、鞭毛で水中を運動するプランクトン性のユーグレナやクラミドモナス、プレウロクリシスも含まれる。言い替えると、培養システム1の培養対象となる微生物は、きわめて多様である。培養システム1の培養対象となる主な微生物群としては、例えば以下のA類、B類、C類が挙げられる。
【0088】
まず、A類として、原核生物である真正細菌と古細菌を挙げることができる。
真正細菌には、酸素非発生型の光合成細菌や酸素発生型光合成を行うシアノバクテリア、有機物質を利用する通性嫌気性発酵性細菌と非発酵性細菌、さらに無機栄養細菌、放線菌およびコリネバクテリウム、有胞子細菌を挙げることができる。光合成細菌には、ロドバクター、ロドスピリルム、クロロビウム、クロロフレクサスが挙げられる。シアノバクテリアにはシネココッカス、シネコキスティス、スピルリナ、アルスロスピラ、ノストック、アナベナ、オシラトリア、リングビア、イシクラゲ、スイゼンジノリが挙げられる。通性嫌気性発酵性細菌として大腸菌、乳酸菌が挙げられる。非発酵性細菌としてシュードモナスが挙げられる。無機栄養細菌として水素細菌が挙げられる。放線菌としてストレプトマイセスが、有胞子細菌として枯草菌が挙げられる。古細菌は好熱菌や高度好塩菌が挙げられる。好熱菌としてサーモコッカスが、高度好塩菌としてハロバクテリウムが挙げられる。その他に、グルタミン酸生産菌、リジン生産菌、セルロース生産菌などが挙げられる。
【0089】
次に、B類として、真核光合成微生物である微細藻類を挙げることができる。
微細藻類には、緑藻、トレボキシア藻、紅藻、珪藻、ハプト藻、真眼点藻、ユーグレナ、褐虫藻が挙げられる。
緑藻にはクロレラ、セネデスムス、クラミドモナス、ボトリオコッカス、ヘマトコッカス、ナンノクロリス、シュードコリシスティスが、トレボキシア藻としてパラクロレラやココミクサが挙げられる。紅藻としてシアニディオシゾン、シアニディウム、ガルディエリア、ポルフィリディウムが、珪藻としてニッチア、フェオダクティルム、キートケロス、タラシオシラ、スケレトネマ、フィツリエラが挙げられる。ハプト藻として、プレウロクリシス、ゲフィロカプサ、エミリアニア、イソクリシス、パブロバが挙げられる。真眼点藻としてナンノクロロプシス、ユーグレナとしてユーグレナが挙げられる。さらに、サンゴの共生藻である褐虫藻としてはシンビオディニウムが挙げられる。
【0090】
次にC類として、非光合成真核生物である菌類を挙げることができる。
菌類には酵母菌とコウジカビが挙げられる。また、担子菌類の菌糸培養は培養対象となる。
【0091】
なお、微生物ではないが、多細胞性海藻のうち、緑藻であるアオサやアオノリ、紅藻であるアサクサノリ、アマノリ、スサビノリ、イワノリ、その他の食用ノリも培養対象となる。さらに、緑色植物であるコケ類も培養対象となる。また、共生生物である地衣類も培養対象となる。
なお、微細藻類は、シアノバクテリアを含むものとして捉えることができる。
【0092】
<変形例>
図10(a)乃至(d)は、本実施の形態における変形例を説明する図である。
次に、
図10(a)乃至(d)を参照しながら、本実施の形態における変形例を説明する。なお、以下の説明においては、上記実施の形態で説明した構成と同一の部分には同一の符号をつけ、その詳細な説明は省略する。
【0093】
まず、上記の実施の形態においては、担体ユニット10がカバー15を備えることを説明したが、これに限定されない。例えば、
図10(a)に示すようにカバー15を用いない構成であってもよい。この構成においては、第1ローラ331(
図7参照)および第2ローラ333が、担体12を直接押圧する構成である。また、図示は省略するが、第1ローラ331および第2ローラ333が、担体12を直接押圧する構成であって、かつ第1ローラ331および第2ローラ333よりも外側をカバー15が覆う構成であってもよい。
【0094】
また、図示は省略するが、カバー15の第1部内面151Aおよび第2部内面153Aに、担体12との間に10cm以下の間隔を形成するスペーサが設けられていてもよい。このスペーサは、カバー15の第1部内面151Aおよび第2部内面153Aに取り付けられた、またはカバー15に一体成形された突起またはリブであるとよい。このことにより、第1部内面151Aおよび第2部内面153Aが担体12と接触することが抑制される。
【0095】
また、上記の実施の形態においては、カバー15が可撓性を有することを説明したが、第1ローラ331および第2ローラ333からの応力を担体12に伝達可能であればこれに限定されない。カバー15は、例えば担体12を覆う樹脂板など、シート部材と比較して変形が困難な板部材によって形成してもよい。
【0096】
また、上記の実施の形態においては、担体12が2つに折り曲げられ、曲げ部125が支持体17に掛けられることを説明したが、これに限定されない。例えば、
図10(b)に示すように、1枚の担体1200を平板状に吊るして設けてもよい。また、図示は省略するが担体12を円筒状や角筒状など平板以外の形状で構成してもよい。また、担体12の数は1つに限定されるものではなく、2以上設けられていてもよい。また、担体12が2つに折り曲げられ、曲げ部125が支持体17に掛けられる構成において、第1部121および第2部123の一部を縫い合わせてもよい。例えば、支持体17の担体支持体173を挿入する部分を残して、2つに折り曲げられた担体12の曲げ部125以外の3辺を縫合により閉じ、担体12の内部に空間を形成するよう構成してもよい。
【0097】
また、担体12における第1部121および第2部123の間、すなわち担体12における第1部121の第1部内面121Aと、第2部123の第2部内面123Aとの間に、通気性の良い芯材を配していてもよい。このことにより、第1部内面121Aおよび第2部内面123Aが接触することが抑制される。
【0098】
また、上記の実施の形態においては、カバー支持体171がカバー15を支持し、担体支持体173が担体12を支持することを説明したが、支持体17がカバー15および担体12の両者を支持することができれば、これに限定されない。例えば、
図10(b)に示すように、カバー支持体1710がカバー15および担体1200を支持する構成でもよい。
【0099】
また、上記の実施の形態においては、カバー支持体171が曲げ部125に培養液を供給したが、担体12に培養液を供給することができれば、これに限定されない。例えば、
図10(b)に示すように、カバー支持体1710が担体1200の上側端部1201に培養液を供給する態様(図中矢印D10参照)でもよい。
【0100】
また、上記の実施の形態においては、担体支持体173が炭酸ガスを担体12の内部で供給することを説明したが、担体12に対して炭酸ガスが供給されれば、これに限定されない。例えば、
図10(b)に示すように、ガス供給体1730が担体1200の両面に対して炭酸ガスを吹き付けるような構成であってもよい。さらに説明をすると、担体12を保持する構成と、炭酸ガスを供給する構成とが別に設けられてもよい。なお、図示は省略するが、カバー15を保持する構成と、培養液を供給する構成とが別に設けられてもよい。
【0101】
また、上記の実施の形態においては、ローラ対33を用いて担体12を押圧することを説明したが、担体12から培養液および微生物を離間させることが可能な部材であればローラ対33でなくてもよい。例えば
図10(c) に示すように、担体12に向けて突出する湾曲部3310を有する押圧部材3311により担体12を押圧する構成であってもよい。
【0102】
また、ローラ対33を用いる場合も、第1ローラ331および第2ローラ333の形状は特に限定されない。例えば、
図10(d)に示すようにローラ対3320における外径が最も大きい部分、すなわち担体12と接触する部分が、幅方向において不連続に形成されてもよい。
【0103】
また、上記の実施の形態においては、ローラ対33を幅方向に沿って配置し、上下方向に移動させることを説明したが、ローラ対33の向きは特に限定されない。例えば、ローラ対33を上下方向に沿って配置し、幅方向に移動させる構成であってもよい。
【0104】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。